説明

電子素子材料の中間体および機能層形成方法

【課題】スパッタリングによる機能層の形成時における損傷を軽減しつつ生産性を向上し得る電子素子材料の中間体を提供する。
【解決手段】スパッタリングによって基板100の表面100aに所定の機能層が形成されて構成される電子素子材料の製造に用いられる電子素子材料の中間体であって、スパッタリングの実行時に発生する異常放電を誘導する導電性の放電誘導膜102aが機能層の形成以前における基板100の外周縁部の所定部位に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリングによって基板の表面に所定の機能層が形成されて構成される電子素子材料の製造に用いられる電子素子材料の中間体、およびスパッタリングによって基板の表面に所定の機能層を形成する機能層形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スパッタリングによって基板の表面に所定の機能層を形成して電子素子材料を製造する方法として、特開平11−329884号公報に開示された磁気抵抗型薄膜磁気ヘッドの素材(磁気ヘッド材料)の製造方法(以下、単に「製造方法」ともいう)が知られている。この製造方法では、まず、アルミナ膜が成膜されている基板(アルチック基板)の表面にTi等の導電膜を成膜する。次いで、スパッタリング装置内の所定位置において、各膜を成膜した基板の外周面および外縁上面をアースに接続された金属製の基板ホルダで押さえるようにして保持する。次いで、スパッタリングによって導電膜(アルミナ膜)の上に磁性膜を形成する。この場合、静電気に起因する電荷が磁性膜に生じたとしても、導電膜、基板ホルダおよびアースからなる放電経路によってその電荷が放電される結果、磁性膜の帯電が防止される。したがって、この製造方法では、磁性膜の帯電に起因する基板ホルダと磁性膜との間の放電の発生によって磁性膜に欠陥が生じる事態が防止されている。
【特許文献1】特開平11−329884号公報(第3頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記の製造方法には、以下の問題点がある。すなわち、上記した磁気ヘッド材料を製造する際には、スパッタリングによって数多くの機能層を基板上に形成する必要がある。したがって、磁気ヘッド材料の生産性を向上させる上で、スパッタリングによって1つの機能層を形成するのに要する時間の短縮が重要な要素となっている。このため、特に厚みの厚い機能層を基板上に形成する際には、印加電圧の電圧値を大きく設定してスパッタリングレート(単位時間当りの膜材料の堆積量)を上昇させることにより、スパッタリングの処理時間の短縮が図られている。しかしながら、印加電圧が高い電圧値となったときには、基板に対して異常放電(火花放電)が発生することがあり、この異常放電によって基板が損傷してその一部または全部が材料として使用できなくなるおそれがあるという問題点が存在する。
【0004】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、スパッタリングによる機能層の形成時における損傷を軽減しつつ生産性を向上し得る電子素子材料の中間体および機能層形成方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく本発明に係る電子素子材料の中間体は、スパッタリングによって基板の表面に所定の機能層が形成されて構成される電子素子材料の製造に用いられる電子素子材料の中間体であって、前記スパッタリングの実行時に発生する異常放電を誘導する導電性の放電誘導膜が前記機能層の形成以前における前記基板の外周縁部の所定部位に形成されている電子素子材料の。
【0006】
この場合、前記所定部位としての前記外周縁部における互いに離間した複数の帯状の部位に前記放電誘導膜を形成することができる。
【0007】
また、前記放電誘導膜を金属で構成することができる。
【0008】
また、本発明に係る機能層形成方法は、基板の表面に所定の機能層が形成されて構成される電子素子材料を製造する際に当該所定の機能層をスパッタリングによって形成する機能層形成方法であって、前記スパッタリングの実行時に発生する異常放電を誘導する導電性の放電誘導膜を前記機能層の形成以前における前記基板の外周縁部の所定部位に形成して中間体を作製し、当該中間体にスパッタリングを実行することによって前記所定の機能層を形成する。
【0009】
この場合、前記基板における前記表面の全域に導電性材料で被膜を形成し、前記所定部位にマスクを形成し、当該マスクによって遮蔽される部分を除く部分の前記被膜をエッチングによって除去して前記所定部位に前記放電誘導膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電子素子材料の中間体および機能層形成方法によれば、基板の外周縁部に導電性の放電誘導膜を形成して中間体を構成し、その中間体にスパッタリングを実行することによって所定の機能層を形成することにより、導電性を有する放電誘導膜を基板の表面よりもスパッタリング装置の電極側に突出させることができるため、電極に印加させる電圧の値を高く設定したことに起因して異常放電が発生したとしても、その異常放電を放電誘導膜に確実に誘導することができる。このため、異常放電によって電子素子材料に損傷を受けたとしても、その損傷部分を一般的には使用されない基板の外周縁部に止めることができる。また、大きな異常放電が発生して電子素子材料における放電誘導膜の形成部分の周囲を含む比較的大きな部分に損傷を受けたとしても、その際の電子素子材料の損傷部分の面積を、同程度の異常放電によって電子素子材料の中央部に損傷を受けたと仮定したときの損傷面積よりも十分に小さく抑えることができる。したがって、この中間体および機能層形成方法によれば、放電誘導膜を備えていない構成、および放電誘導膜を備えていない中間体を用いる方法と比較して、実質的な電子素子材料の損傷を十分に軽減することができる結果、電子素子材料の損傷による最終製品としての電子素子を製造する際の歩留まりの低下を十分に小さく抑えることができる。
【0011】
また、本発明に係る電子素子材料の中間体によれば、基板の外周縁部における互いに離間した複数の帯状の部位に放電誘導膜を形成したことにより、スパッタリング装置内のどの箇所において異常放電が発生したとしても、その異常放電をいずれかの部位に形成された放電誘導膜に確実に誘導することができる。
【0012】
また、本発明に係る電子素子材料の中間体によれば、放電誘導膜を導電性が高い金属で構成したことにより、異常放電を放電誘導膜によって確実に誘導することができる。
【0013】
また、本発明に係る機能層形成方法によれば、基板における表面の全域に導電性材料で被膜を形成し、基板の外周縁部における所定部位にマスクを形成し、マスクによって遮蔽される部分を除く部分の被膜をエッチングによって除去して放電誘導膜を形成することにより、基板における任意の部分に任意の大きさの放電誘導膜を正確に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る電子素子材料の中間体および機能層形成方法の最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
最初に、電子素子材料製造装置1(以下、単に「製造装置1」ともいう)の構成について説明する。図1に示す製造装置1は、スパッタリング装置2、および放電誘導膜形成装置3を備えて、電子素子材料300(図12参照)を製造可能に構成されている。ここで、電子素子材料300は、磁気ヘッド(本発明における電子素子の一例)の製造用の材料であって、この電子素子材料300を裁断することによって複数の磁気ヘッドが製造される。
【0016】
スパッタリング装置2は、スパッタリングによって基板100の表面に機能層101(図12参照)を形成する装置(一例として、DCマグネトロンスパッタリング装置)であって、図2に示すように、真空容器11、基板保持部12、真空ポンプ13、ガス供給部14、カソード電極15a、アノード電極15b(以下、カソード電極15aおよびアノード電極15bを区別しないときには「電極15」ともいう)、電源部16および制御部17を備えて構成されている。
【0017】
真空容器11は、基板保持部12、各電極15および、機能層101や後述する放電誘導膜102aの形成材料であるターゲット50を収容可能に構成されている。この場合、放電誘導膜102aの形成に際しては、上記のターゲット50として、本発明における導電性材料の一例としてのAuが用いられる。
【0018】
基板保持部12は、図11に示すように、基板100(および、後述する中間体200)を載置可能な載置台12aと、載置台12aに載置した基板100(または中間体200)を固定する固定部材12bとを備えて構成されている。真空ポンプ13は、制御部17の制御に従い、真空容器11内の空気を排気して真空容器11内を真空状態に維持する。ガス供給部14は、制御部17の制御に従い、不活性ガス(一例として、ArおよびNの混合ガス)を真空容器11内に供給する。カソード電極15aおよびアノード電極15bは、相互に絶縁されると共に、電源部16にそれぞれ接続されている。電源部16は、制御部17の制御に従い、両電極15間に電圧Vを印加する。制御部17は、真空ポンプ13、ガス供給部14、電源部16を制御する。
【0019】
一方、放電誘導膜形成装置3は、中間体200の作製に用いられる装置であって、図3に示すように、レジスト層形成装置21、露光装置22、現像装置23、エッチング装置24およびレジスト除去装置25を備えて構成されている。ここで、中間体200は、基板100の表面100aに各種の機能層101を形成して電子素子材料300を製造する一連の工程中において作製される部材、つまり電子素子材料300の製造に用いられる部材であって、図10に示すように、基板100の外周縁部における互いに離間した4つの帯状で円弧状の部位(本発明における所定部位)に膜厚が0.1μm未満(例えば0.05μm)の放電誘導膜102aが形成されて構成されている。この場合、放電誘導膜102aは、スパッタリング装置2を用いてスパッタリングを行う際に発生する異常放電の放電先となる機能、つまり異常放電を誘導する機能を有している。
【0020】
レジスト層形成装置21は、基板100の表面100aに形成された金属層102(本発明における被膜:図4参照)の上にレジスト材を例えばスピンコート法によって塗布することにより、レジスト層103(図5参照)を形成する。露光装置22は、基板100の表面100aにおける放電誘導膜102aの形成部分を遮蔽するマスク110(図6参照)を基板100の上方に位置させた状態でレジスト層103に対して露光用の光Lを照射することにより、放電誘導膜102aの形成部分に対応する形状の潜像をレジスト層103内に形成する。
【0021】
現像装置23は、潜像が形成されたレジスト層103における光Lの非照射部分(つまり、潜像が形成された部分)を残して、光Lの照射部分(つまり、潜像が形成された部分を除く部分)のレジスト材を除去することにより、金属層102上にレジストパターン103a(本発明におけるマスク:図7参照)を形成する。エッチング装置24は、現像装置23によって形成されたレジストパターン103aをマスクとして用いて金属層102に対してエッチングを行うことにより、レジストパターン103aによって遮蔽された部分を除く部分の金属層102を除去する。レジスト除去装置25は、レジストパターン103a(つまりレジスト材)を除去して中間体200を作製する。
【0022】
次に、製造装置1を用いて、本発明に係る機能層形成方法に従って基板100の表面100aに機能層101を形成して電子素子材料300を製造する方法について、図面を参照して説明する。この場合、基板100は、一例として、アルティック(Al−TiC)で円板状に構成されると共に、表面100aに非導電性を有する酸化アルミニウム(アルミナ)の薄膜が予め形成されている。なお、電子素子材料300は、実際には、基板100の表面100aに複数の機能層101が形成されて構成されているが、発明の理解を容易とするため、以下、1つの機能層101を基板100の表面100aに形成する例について説明する。
【0023】
機能層101の形成に先立ち、基板100に放電誘導膜102aを形成して中間体200を作製する。具体的には、図11に示すように、まず、基板100をスパッタリング装置2における基板保持部12の載置台12aに載置する。次いで、固定部材12bを用いて基板100を固定する。続いて、基板100が固定された基板保持部12を真空容器11内にセットする。次いで、ターゲット50としてのAuをカソード電極15aの上部(アノード電極15bの近傍)にセットする。続いて、図外の操作部を操作して、両電極15間に印加する電圧Vの値や印加時間、および真空容器に供給させる不活性ガスの混合比や流量等のスパッタリング条件を設定した後に、スパッタリング処理の開始を指示する。この際に、制御部17が、真空ポンプ13を制御して、真空容器11内の空気を排気させた後に、ガス供給部14を制御して、真空容器11内に不活性ガス(一例として、Ar:30sccm+N:40sccmの混合ガス)を供給させる。
【0024】
次いで、制御部17は、電源部16を制御して、両電極15間に電圧Vを印加させる。この際に、両電極15間に印加されている電圧Vによって真空容器11内のArおよびNの混合ガスがイオン化(プラズマ化)される。これにより、真空容器11内においてイオン化したArおよびNがターゲット50に向けて高速移動してターゲット50の表面に衝突することにより、ターゲット50を構成しているAu原子が弾き出されて、基板100の表面に堆積(付着)する。続いて、制御部17は、所定時間が経過した時点で、電源部16を制御して、電圧Vの供給を停止させる。これにより、図4に示すように、基板100の表面100aにAuからなる金属層102が形成される。
【0025】
次いで、基板保持部12を真空容器11から取り出して、金属層102が形成された基板100を基板保持部12から取り外す。続いて、その基板100を放電誘導膜形成装置3のレジスト層形成装置21にセットして、レジスト層形成装置21を作動させる。この際に、レジスト層形成装置21は、図5に示すように、レジスト材を金属層102の上(基板100の表面100a)に塗布することにより、レジスト層103を形成する。次いで、金属層102の上にレジスト層103が形成された基板100を露光装置22にセットして、露光装置22を作動させる。この際に、露光装置22は、図6に示すように、マスク110を基板100の上方に位置させた状態でレジスト層103に対して露光用の光Lを照射することにより、放電誘導膜102aの形成部分に対応する形状の潜像をレジスト層103内に形成する。
【0026】
続いて、レジスト層103内に潜像が形成された基板100を現像装置23にセットして、現像装置23を作動させる。この際に、現像装置23は、潜像が形成されたレジスト層103を現像して、図7に示すように、金属層102上にレジストパターン103aを形成する。次いで、レジストパターン103aが形成された基板100をエッチング装置24にセットして、エッチング装置24を作動させる。この際に、エッチング装置24は、レジストパターン103aをマスクとして用いて金属層102に対してエッチングを行うことにより、図8に示すように、レジストパターン103aによって遮蔽された部分を除く部分の金属層102を除去する。続いて、エッチングの終了した基板100をレジスト除去装置25にセットして、レジスト除去装置25を作動させる。この際に、レジスト除去装置25は、図9に示すように、金属層102の上に残っているレジストパターン103a(レジスト材)を除去する。これにより、中間体200の作製が完了する。
【0027】
次に、中間体200に機能層101を形成する。この場合、図11に示すように、中間体200を基板保持部12に固定して、その基板保持部12を真空容器11内にセットすると共に、機能層101用のターゲット50を真空容器11内にセットする。次いで、操作部を操作して、スパッタリング条件を設定する。この場合、例えば、厚みの厚い機能層101を形成する際には、スパッタリングの処理時間の短縮を図るために、スパッタリングレートを上昇させるべく電圧Vの値を高く設定する。続いて、操作部を操作して、スパッタリングの開始を指示する。次いで、制御部17が、上記した制御と同様にして真空ポンプ13、ガス供給部14および電源部16を制御する。この際に、イオン化されたArおよびNの混合ガスがターゲット50に向けて高速移動してターゲット50の表面に衝突することにより、ターゲット50を構成している原子が弾き出されて、基板100の表面に堆積する。
【0028】
ここで、この機能層形成方法では、基板100の外周縁部に導電性を有する放電誘導膜102aを形成した中間体200に対してスパッタリングを行うことによって機能層101を形成している。したがって、導電性を有する放電誘導膜102aが基板100の表面100aよりも電極15側に突出しているため、上記したように電圧Vの値を高く設定したことに起因して異常放電が発生したとしても、放電誘導膜102a(特に放電誘導膜102aの角部)がその異常放電の放電先となって、異常放電が放電誘導膜102aに誘導される。一方、放電誘導膜102aが形成されている基板100の外周縁部、つまり電子素子材料300の外周縁部は、一般的に、電子素子(この例では、磁気ヘッド)の製造には使用されない。したがって、この機能層形成方法では、中間体200を用いることにより、例えば図12に示すように、異常放電によって電子素子材料300における放電誘導膜102aの形成部分に損傷を受けたとしても(同図に示す損傷部分301参照)、その損傷による最終製品としての電子素子を製造する際の歩留まりの低下を確実に防止することが可能となっている。
【0029】
また、図13に示すように、大きな異常放電が発生して電子素子材料300における放電誘導膜102aの形成部分の周囲を含む比較的大きな部分に損傷を受けたとしても、その際の損傷部分の面積(同図に示す損傷部分302参照)が、同程度の異常放電によって電子素子材料300の中央部に損傷を受けたと仮定したときの損傷面積(同図に破線で示す損傷部分303参照)よりも十分に小さく抑えられる。したがって、この機能層形成方法では、中間体200を用いることにより、大きな異常放電が発生した場合においても、放電誘導膜102aを備えていない構成と比較して、電子素子材料300の損傷による最終製品としての電子素子を製造する際の歩留まりの低下が十分に小さく抑えられる。
【0030】
次いで、制御部17は、所定時間が経過した時点で、電源部16を制御して、電圧Vの供給を停止させる。これにより、図12に示すように、基板100の表面100aに機能層101が形成されて、電子素子材料300が完成する。
【0031】
このように、この中間体200および機能層形成方法によれば、基板100の外周縁部に導電性を有する放電誘導膜102aを形成して中間体200を構成し、その中間体200に対してスパッタリングを行うことによって機能層101を形成することにより、導電性を有する放電誘導膜102aを基板100の表面100aよりも電極15側に突出させることができるため、両電極15間に印加させる電圧Vの値を高く設定したことに起因して異常放電が発生したとしても、その異常放電を放電誘導膜102aに確実に誘導することができる。このため、異常放電によって電子素子材料300に損傷を受けたとしても、その損傷部分を一般的には使用されない基板100の外周縁部に止めることができる。また、大きな異常放電が発生して電子素子材料300における放電誘導膜102aの形成部分の周囲を含む比較的大きな部分に損傷を受けたとしても、その際の電子素子材料300の損傷部分の面積を、同程度の異常放電によって電子素子材料300の中央部に損傷を受けたと仮定したときの損傷面積よりも十分に小さく抑えることができる。したがって、この中間体200および機能層形成方法によれば、放電誘導膜102aを備えていない構成、および放電誘導膜102aを備えていない中間体を用いる方法と比較して、実質的な電子素子材料300の損傷を十分に軽減することができる結果、電子素子材料300の損傷による最終製品としての電子素子を製造する際の歩留まりの低下を十分に小さく抑えることができる。
【0032】
また、この中間体200および機能層形成方法によれば、基板100の外周縁部における互いに離間した4つの帯状の部位に放電誘導膜102aを形成したことにより、真空容器11内のどの箇所において異常放電が発生したとしても、その異常放電をいずれかの部位に形成された放電誘導膜102aに確実に誘導することができる。
【0033】
また、この中間体200および機能層形成方法によれば、放電誘導膜102aを導電性が高い金属で構成したことにより、異常放電を放電誘導膜102aによって確実に誘導することができる。
【0034】
また、この機能層形成方法によれば、基板100における表面100aの全域に金属層102を形成し、基板100の外周縁部における所定部位にレジストパターン103aを形成し、レジストパターン103aによる遮蔽部分を除く部分の金属層102をエッチングによって除去して放電誘導膜102aを形成することにより、基板100における任意の部分に任意の大きさの放電誘導膜102aを正確に形成することができる。
【0035】
なお、本発明は上記の構成に限定されない。例えば、放電誘導膜102a用のターゲット50としてAuを用いた例について上記したが、これに限定されず、Ag、Cu、Ni、Fe、CoおよびTi等の導電率の高い各種の金属、およびこれらの合金を用いて放電誘導膜102aを形成することができる。また、金属以外の導電性材料を用いて放電誘導膜102aを形成することもできる。また、磁気ヘッド製造用の電子素子材料300の製造に用いる中間体200に適用した例について上記したが、半導体素子製造用の電子素子材料のように、スパッタリングによって機能層を形成して構成される各種の電子素子材料の製造に用いられる中間体に本発明を適用することができる。
【0036】
また、基板100の外周縁部における4つの帯状の部位に放電誘導膜102aを形成した中間体200を例に挙げて説明したが、放電誘導膜102aを形成する部位の数や形状は、任意に規定することができる。例えば、図14に示すように、基板100の外周縁部における8つの帯状の部位に放電誘導膜102aを形成した中間体400を採用することができる。また、図15に示すように、基板100の外周縁部の全域、つまり外周縁部の環状の部位に放電誘導膜102aを形成した中間体500を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】電子素子材料製造装置1の構成を示す構成図である。
【図2】スパッタリング装置2の構成を示す構成図である。
【図3】放電誘導膜形成装置3の構成を示す構成図である。
【図4】金属層102を形成した状態の基板100の断面図である。
【図5】レジスト層103を形成した状態の基板100の断面図である。
【図6】露光処理を行っている状態を説明するための説明図である。
【図7】レジストパターン103aを形成した状態の基板100の断面図である。
【図8】エッチング処理を行っている状態を説明するための説明図である。
【図9】中間体200の概略構成を示す構成図である。
【図10】中間体200の平面図である。
【図11】中間体200をセットした状態の基板保持部12の平面図である。
【図12】電子素子材料300の平面図である。
【図13】異常放電による損傷を受けた電子素子材料300の平面図である。
【図14】中間体400の平面図である。
【図15】中間体500の平面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 電子素子材料製造装置
2 スパッタリング装置
21 レジスト層形成装置
22 露光装置
23 現像装置
24 エッチング装置
100 基板
100a 表面
101 機能層
102 金属層
102a 放電誘導膜
103a レジストパターン
200,400,500 中間体
300 電子素子材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリングによって基板の表面に所定の機能層が形成されて構成される電子素子材料の製造に用いられる電子素子材料の中間体であって、
前記スパッタリングの実行時に発生する異常放電を誘導する導電性の放電誘導膜が前記機能層の形成以前における前記基板の外周縁部の所定部位に形成されている電子素子材料の中間体。
【請求項2】
前記放電誘導膜は、前記所定部位としての前記外周縁部における互いに離間した複数の帯状の部位に形成されている請求項1記載の電子素子材料の中間体。
【請求項3】
前記放電誘導膜は、金属で構成されている請求項1または2記載の電子素子材料の中間体。
【請求項4】
基板の表面に所定の機能層が形成されて構成される電子素子材料を製造する際に当該所定の機能層をスパッタリングによって形成する機能層形成方法であって、
前記スパッタリングの実行時に発生する異常放電を誘導する導電性の放電誘導膜を前記機能層の形成以前における前記基板の外周縁部の所定部位に形成して中間体を作製し、当該中間体にスパッタリングを実行することによって前記所定の機能層を形成する機能層形成方法。
【請求項5】
前記基板における前記表面の全域に導電性材料で被膜を形成し、前記所定部位にマスクを形成し、当該マスクによって遮蔽される部分を除く部分の前記被膜をエッチングによって除去して前記所定部位に前記放電誘導膜を形成する請求項4記載の機能層形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2008−231498(P2008−231498A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72046(P2007−72046)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】