説明

電子装置およびそれを用いた半導体装置、ならびに半導体装置の製造方法

【課題】薄い接合膜であっても比較的低温での溶融接合が可能な電子装置およびそれを用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体チップ1は、半導体基板11と、この半導体基板11の表面に形成され、AuからなるバンプB1と、このバンプB1の頂面の全域に形成され、TiWからなる拡散防止膜14と、この拡散防止膜14上に形成され、他の装置の電気接続部との接合のための接合膜15とを有している。接合膜15は、Snからなる。Snは、単体の状態の融点がAu−Sn合金の融点よりも低いが、Auに対する拡散係数が高い。TiWは、Auに対する拡散係数が低く、バンプB1の材料であるAuと接合膜15の材料であるSnとの拡散を防止するから、接合膜15はSn単体の状態に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体チップや配線基板などの電子装置およびそれを用いて構成した半導体装置、ならびに半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップに別の半導体チップを接合したり、半導体チップを配線基板の表面にフリップチップボンディングしたりして構成される半導体装置では、半導体チップの表面に金(Au)や銅(Cu)からなるバンプが設けられる。このバンプの頂面には、バンプ材料よりも融点(溶融温度)の低い接合用の金属膜としての錫(Sn)やインジウム(In)の薄膜が形成されていて、相手側の半導体チップや配線基板との接合時には、この接合用金属膜が加熱溶融させられ、その後に冷却硬化させられる。これにより、相手側装置との機械的接合および電気的接続が達成される。
【0003】
接合用金属膜は、可能な限り薄膜に形成されることが望まれ、具体的には、0.1〜5μmの範囲の薄膜とする必要がある。これは、接合用金属膜を厚膜にすると、半導体装置の使用時の発熱によって体積膨張が生じたり、溶融および拡散して他の装置への悪影響が生じたりするうえ、溶融接合時の安定性も損なわれるからである。
【特許文献1】特開2002−289768号公報
【特許文献2】特開2003−133508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、バンプの材料(具体的にはAuまたはCu)は拡散しやすい金属であるため、接合用金属膜の大半が合金膜(たとえば、Au−Sn合金膜)となっていて、接合用金属膜の材料の単体の状態の融点(たとえば、Sn単体の融点は232℃)よりも高融点(たとえば、280℃)となってしまっている。そのため、溶融接合時には、高温の熱処理が必要になり、半導体チップの特性への悪影響が懸念される。
【0005】
この問題は、接合用金属膜を厚膜にすることによって解決できるが、その場合には上述のとおりの不具合が生じることになる。
そこで、この発明の目的は、薄い接合膜であっても比較的低温での溶融接合が可能な電子装置およびそれを用いた半導体装置を提供することである。
さらに、この発明の他の目的は、素子特性への影響を抑制しつつ、半導体チップを半導体基板に接合することができる半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板と、基板の表面に形成され、第1金属材料(たとえば、AuまたはCu)からなるバンプと、このバンプの頂面に形成され、単体の状態の融点が上記第1金属材料との合金の融点よりも低い第2金属材料(たとえばSn、InまたはSn−In合金)からなり、他の装置の電気接続部との接合のための接合膜と、上記バンプの頂面と上記接合膜との間に介在され、上記第1金属材料に対する拡散係数が上記第2金属材料よりも低い第3金属材料(たとえば、TiW)からなり、上記バンプの頂面の少なくとも一部を覆うように形成された拡散防止膜とを含むことを特徴とする電子装置である。
【0007】
ここで、「単体の状態」とは、第1金属材料と第2金属材料との合金(とくに相互拡散により生じる合金)が形成されていない状態を意味し、単一金属元素からなっている場合のほか、第2金属材料が第1金属材料以外の金属元素を含む合金の場合も含む。
上記の構成によれば、拡散防止膜上に形成された接合膜は、薄膜の状態でも、バンプの材料との相互拡散が生じないので、その材料金属である第2金属材料の単体の状態が保持される。したがって、薄い接合膜でありながら、低融点で溶融させることができ、他の装置の電気接続部との接合時において、比較的低温での溶融接合が可能になる。
【0008】
また、上記接合膜を構成する第2金属材料は、上記拡散防止膜を構成する第3金属材料よりも融点の低い材料であることが好ましい。
請求項2記載の発明は、上記拡散防止膜は、上記バンプの頂面全域を覆っており、上記接合膜の全部が上記拡散防止膜上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電子装置である。
【0009】
この構成によれば、バンプの材料と接合膜の材料との相互拡散を確実に阻止できるから、接合膜は、その全域において比較的低融点の第2金属材料単体の状態に保持されることになり、低温での溶融接合が可能になる。
請求項3記載の発明は、上記拡散防止膜は、上記バンプの頂面の一部を覆うとともに残余の部分を露出するように形成されており、上記接合膜は、上記拡散防止膜上に形成された部分と、上記バンプの頂面に接して形成された部分とを有していることを特徴とする請求項1記載の電子装置である。
【0010】
この構成によれば、接合膜において拡散防止膜上に形成された部分は第2金属材料単体の状態に保持され、バンプの頂面に接して形成された部分は相互拡散によって第1および第2金属材料の合金膜となる。そして、第2金属材料単体の部分は、低温での溶融接合に寄与し、合金膜の部分はバンプと接合膜との接合強度の向上(ひいては相手側装置との接合強度の向上)に寄与することになる。こうして、低温での溶融接合と充分な接合強度とを両立できる。
【0011】
請求項4記載の発明は、上記基板は、半導体基板であり、上記電子装置は、半導体チップであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電子装置である。
この構成により、低温での溶融接合が可能なバンプを有する半導体チップが得られる。
請求項5記載の発明は、上記基板は、絶縁基板上に配線導体が形成された配線基板であり、上記バンプは、上記配線導体に接合された状態で上記配線基板上に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電子装置である。
【0012】
この構成により、低温での溶融接合が可能なバンプを有する配線基板が得られる。この配線基板に対して、上記バンプを利用して半導体チップ等の他の電子装置を接合することができる。
請求項6記載の発明は、それぞれバンプを有する第1半導体チップおよび第2半導体チップをバンプ同士を接合させて結合したチップ・オン・チップ構造の半導体装置であって、上記第1半導体チップおよび第2半導体チップのうちの少なくともいずれか一方が、請求項4記載の電子装置からなっていることを特徴とする半導体装置である。
【0013】
この構成により、チップ・オン・チップ構造の半導体装置が得られ、両チップのバンプ間の接合を低温の溶融接合工程によって行える。
請求項7記載の発明は、絶縁基板上に配線導体が形成された配線基板と、この配線基板に上記バンプを対向させて上記配線導体に接合された請求項4記載の電子装置とを含むことを特徴とする半導体装置である。
【0014】
この構成により、いわゆるフリップチップ接合型の半導体装置が得られ、配線基板上への半導体チップのフリップチップ接合を、低温の溶融接合工程によって行える。
請求項8記載の発明は、半導体基板(たとえば半導体ウエハ)にバンプを介して半導体チップを接合させることによって半導体装置を製造するための方法であって、上記バンプが上記半導体基板および半導体チップの少なくともいずれか一方の表面に形成されており、上記バンプが第1金属材料からなり、このバンプの頂面に単体の状態の融点が上記第1金属材料との合金の融点よりも低い第2金属材料からなる接合膜が形成されており、上記バンプの頂面と上記接合膜との間に、上記バンプの頂面の一部を覆うとともに残余の部分を露出するように、上記第1金属材料に対する拡散係数が上記第2金属材料よりも低い第3金属材料からなる拡散防止膜が形成されており、上記接合膜は、上記拡散防止膜上に形成された部分と、上記バンプの頂面に接して形成された部分とを有しており、上記方法は、上記半導体チップが上記バンプを挟んで上記半導体基板上に配置された状態で、上記第2金属材料の単体の状態の融点以上であって、上記第1金属材料および第2金属材料の合金の融点未満の第1温度に上記接合膜を加熱することにより、上記半導体チップを上記半導体基板に仮接合させる仮接合工程と、この仮接合工程の後に、上記第1金属材料および第2金属材料の合金の融点以上の第2温度に上記接合膜を加熱することにより、上記半導体チップを上記半導体基板に本接合させる本接合工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0015】
この方法によれば、仮接合工程では、比較的低温での加熱によって、拡散防止膜上の接合膜(第2金属材料単体の状態の膜)を溶融させることによって、半導体チップと半導体基板との接合が達成される。その後、比較的高温での加熱によって、バンプの頂面に接している接合膜(第1および第2金属材料の合金膜)を溶融させることによって、接合膜と拡散防止膜との間の接合強度不足を補って、半導体チップを半導体基板に強固に接合させることができる。
【0016】
請求項9記載の発明は、上記高温加熱工程は、複数個の半導体チップを上記半導体基板上に仮接合させた後に行われることを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法である。
この方法によれば、仮接合された複数個の半導体チップに関して、上記本接合工程を一括して行うことができるから、製造工程を短縮することができるうえ、半導体基板および半導体チップが経験することになる高温加熱プロセスの数が少なくなるから、それらに形成された素子の特性を良好に保持することができる。
【0017】
たとえば、半導体ウエハに複数個の半導体チップを上記仮接合によって接合した後、これらの複数個の半導体チップに対して上記本接合を一括して行い、その後に、1個以上の所定個数の半導体チップを含む領域毎に半導体基板を切断(ダイシング)して個片化すれば、複数個のチップ・オン・チップ構造の半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を説明するための図解的な断面図である。この半導体装置は、いわゆるチップ・オン・チップ構造を有していて、親チップ1上に子チップ2,3を接合して構成されている。親チップ1および子チップ2,3はいずれも半導体チップ(たとえばシリコンチップ)であり、親チップ1の活性面(デバイスが形成された活性領域側表面)に子チップ2,3の活性面を対向させたフェース・ツー・フェース状態で接合されている。より具体的には、親チップ1は、活性面を上方に向けた姿勢でリードフレーム5のアイランド部6にダイボンディングされており、この親チップ1の上面に、子チップ2,3がフェースダウン姿勢で接合されている。親チップ1は、外部接続用のパッド(図示せず)を活性面に有しており、このパッドがリードフレーム5のリード部7に、ボンディングワイヤ8を介して電気接続されている。そして、親チップ1、子チップ2,3、ボンディングワイヤ8およびリードフレーム5が、封止樹脂9によって封止されて、半導体パッケージが構成されている。リード部7の一部は、封止樹脂9から露出し、外部接続部(アウターリード部)として機能する。
【0019】
親チップ1および子チップ2,3の活性面には、複数のバンプB1,B2,B3がそれぞれ形成されている。親チップ1のバンプB1と子チップ2のバンプB2とが互いに接合され、また、親チップ1のバンプB1と子チップ3のバンプB3とが互いに接合されている。これにより、親チップ1および子チップ2はバンプB1,B2を介して電気的に接続され、かつ、機械的に接合されている。同様に、親チップ1および子チップ3は、バンプB1,B3を介して電気的に接続され、かつ、機械的に接合されている。
【0020】
図2は、親チップ1に形成されたバンプB1の詳しい構成を説明するための断面図である。親チップ1の本体部をなす半導体基板(たとえばシリコン基板)11の表面には、たとえば、多層配線構造が形成されている。その最上層の配線層(または金属パッド)12の一部は、表面保護膜13に形成された開口から露出しており、この開口を覆うように、たとえば金(Au)からなるバンプB1が、表面保護膜13から隆起して形成されている。このバンプB1の頂面には、バンプB1の材料の拡散を防止するための拡散防止膜14が全域に形成されており、この拡散防止膜14上に、たとえば錫(Sn)からなる接合膜15が形成されている。つまり、接合膜15は、その全部が拡散防止膜14上に形成されている。接合膜15は、その膜厚が、0.1μm以上、5μm以下とされる。
【0021】
接合膜15の材料であるSn(融点は232℃)は、バンプB1の材料であるAuよりも融点が低く、かつ、バンプB1の材料であるAuとの合金(Au−Sn。融点は280℃)よりも、単体の状態の方が融点が低い。また、バンプB1は、拡散防止膜14の材料よりも低融点の材料からなる。
拡散防止膜14は、たとえば、TiW膜からなる。この拡散防止膜14の材料であるTiWは、バンプB1の材料であるAuに対する拡散係数が、接合膜15の材料であるSnよりも低い。また、拡散防止膜14の膜厚は、200Å以上とされる。拡散防止膜14の膜厚が200Å未満であると、AuやSnの拡散防止が不十分になる。
【0022】
バンプB1の形成は、めっき工程によって行える。また、拡散防止膜14の形成は、めっき工程またはスパッタ工程によって行える。さらに、接合膜15の形成は、めっき工程またはスパッタ工程によって行える。
子チップ2,3のバンプB2,B3は、たとえば、Auで構成されている。これらのバンプB2,B3に関しては、その表面に、バンプB1の場合と同様な拡散防止膜や接合膜が設けられていてもよいが、一般的には、これらは必要ではない。
【0023】
親チップ1に子チップ2,3を接合するときには、バンプB1とバンプB2,B3とを位置合わせしてそれらの頂面を互いに突き合わせる。その後、たとえば、親チップ1が加熱されることにより、接合膜15が、その材料であるSnの融点以上の温度に加熱される。これにより、接合膜15が溶融するから、その後に、加熱を停止すれば、接合膜15が冷却して固化し、バンプB1とバンプB2,B3とが接合されることになる。
【0024】
拡散防止膜14の働きにより、その上に形成されている接合膜15は、バンプB1の材料との相互拡散が生じることなく、Sn単体の状態に保持される。したがって、接合膜15は、Au−Sn合金の融点よりも遙かに低い温度(232℃程度)の加熱で容易に溶融させることができる。これにより、低温での溶融接合工程によって良好な接合を達成できるから、親チップ1や子チップ2,3に形成された素子の特性を良好に保持することができる。
【0025】
図3(a)は、バンプB1の他の構成例を示す断面図であり、図3(b)はその平面図である。この構成例では、拡散防止膜14が、バンプB1の頂面の中央領域のみに形成されており、バンプB1の頂面の周縁部領域は露出している。そして、接合膜15は、拡散防止膜14を覆うとともに、バンプB1の頂面の露出領域をも覆うように形成されている。すなわち、この構成例では、接合膜15は、拡散防止膜14の上に位置する中央領域に存在する単体領域15Aと、バンプB1の頂面に接触した環状領域(周縁部領域)に存在する合金領域15Bとを有している。単体領域15Aは、バンプB1の材料であるAuとの相互拡散が生じないので、単体のSnで構成されている。したがって、この単体領域15Aの融点は、約232℃である。合金領域15Bは、バンプB1の材料であるAuとの相互拡散により生じたAu−Sn合金で構成されている。したがって、この合金領域15Bの融点は、約280℃である。
【0026】
上記のような構造は、拡散防止膜14をバンプB1の頂面の全域に形成した後に、その拡散防止膜14をリソグラフィ工程によってパターニングすることによって形成できる。
Snからなる接合膜15とTiWからなる拡散防止膜14との接合強度(密着性)は必ずしも良くない。そこで、単体領域15Aを利用してバンプ間の仮接合工程を行い、その後に、合金領域15Bを利用して本接合工程を行うことにより、充分な接合強度が得られる。
【0027】
親チップ1に子チップ2,3を接合するときには、バンプB1とバンプB2,B3とを位置合わせしてそれらの頂面を互いに突き合わせ、たとえば、親チップ1を加熱することにより、接合膜15が、その材料であるSnの融点以上の温度(ただし、Au−Snの融点よりも低い温度)に加熱される。これにより、接合膜15の単体領域15Aが溶融するから、その後に、加熱を停止すれば、接合膜15が冷却して固化し、バンプB1とバンプB2,B3とが仮接合されることになる。
【0028】
親チップ1に接合すべき全ての子チップ2,3を仮接合した後に、親チップ1を加熱して、接合膜15を、合金領域15Bを溶融させることができる温度(約280℃以上)に加熱する。これにより、合金領域15Bが溶融するから、その後に加熱を停止すれば、接合膜15が冷却して固化し、合金領域15BにおいてバンプB1とバンプB2,B3とが強固に接合される。こうして、拡散防止膜14が介在する単体領域15Aにおける接合強度不足が、拡散防止膜14の介在のない合金領域15Bにおける接合によって補われることにより、本接合が達成される。
【0029】
高温の溶融接合工程となる本接合工程は、全ての子チップ2,3を親チップ1に接合した後に行われるので、1回のみの工程となる。したがって、親チップ1および子チップ2,3に対する加熱回数を最小限に抑えることができるから、それらに形成された素子の特性を良好に保持できる。
図4(a)は、バンプB1のさらに他の構成例を示す断面図であり、図4(b)はその平面図である。この構成例では、拡散防止膜14が、バンプB1の頂面の中央部および周縁部を露出させ、残余の環状領域を覆う環状パターンに形成されている。このような、拡散防止膜14は、拡散防止膜14をバンプB1の頂面の全域に形成した後に、リソグラフィ工程によってパターニングすることにより得られる。
【0030】
接合膜15は、上記のような拡散防止膜14を覆い、さらに、バンプB1の露出部分に接するように形成される。したがって、接合膜15は、拡散防止膜14よりも内側の中央領域に対応する中央合金領域151と、拡散防止膜14上の領域である環状の単体領域152と、拡散防止膜14よりも外側の周縁合金領域153とを有することになる。単体領域152は、Sn単体の領域であり、中央合金領域151および周縁合金領域153は、バンプB1の材料と接合膜15の材料との相互拡散により生じたAu−Sn合金からなる領域である。
【0031】
親チップ1および子チップ2,3の接合工程は、図3の構成例の場合と同様である。ただし、図4の構成例の場合には、バンプB1の中央部および周縁部において、拡散防止膜14の介在のない強固な接合が得られるので、接合強度をさらに向上することができる。
図5(a)は、バンプB1のさらの他の構成例を示す断面図であり、図5(b)はその平面図である。この構成例では、図4の構成の場合と同様な環状の第1拡散防止膜14(膜厚200Å以上)がバンプB1の頂面に形成され、この第1拡散防止膜14を覆い、さらにバンプB1の頂面の露出部分を覆うように第1接合膜15(膜厚0.1μm〜5μm)が形成されており、さらに、第1接合膜15上に、その中央領域を覆うとともに周縁の環状領域を露出させる第2拡散防止膜24(膜厚200Å以上)が形成され、さらに、この第2拡散防止膜24および第1接合膜15の露出部分を覆うように第2接合膜25(膜厚0.1μm〜5μm)が積層して形成されている。第1および第2拡散防止膜14,24は、たとえば、いずれも、TiWからなる。また、たとえば、第1接合膜15は、Snからなり、第2接合膜25はSn−In合金からなる。Sn−In合金の融点は、約200℃である。
【0032】
第1拡散防止膜14よりも外方の領域では、バンプB1の材料であるAuと、第1接合膜15の材料であるSnと、第2接合膜25の材料であるSn−Inとの拡散が生じていて、この領域は、Au−Sn−In合金領域31となっている。この合金領域31の内側であって、第2拡散防止膜24よりも外方の環状の領域では、第1接合膜15の材料であるSnと第2接合膜25の材料であるSn−In合金との相互拡散が生じていて、この領域は、SnリッチなSn−In合金領域32となっている。また、第2拡散防止膜24上の領域は、Sn−In合金の単体領域(Au元素が実質的に混入していない状態の領域)33となっている。さらに、第1拡散防止膜14と第2拡散防止膜24との間の領域(SnリッチなSn−In合金領域32の内側)は、Sn単体領域34となっている。そして、第2拡散防止膜24の直下の中央領域であって、第1拡散防止膜14よりも内側の領域では、バンプB1の材料であるAuと第1接合膜15の材料であるSnとの相互拡散が生じ、この領域は、Au−Sn合金領域35となっている。
【0033】
この構成の場合、SnリッチなSn−In合金領域32は、約200℃程度の加熱で溶融させることができるから、上記の仮接合工程をより低温で行うことができる。
図6は、この発明の他の実施形態に係る半導体装置の構成を説明するための図解的な断面図である。この半導体装置は、配線基板40の表面に半導体チップ50,60をフリップチップ接合して構成されている。配線基板40は、絶縁性基板41と、この絶縁性基板41上に形成された配線導体(たとえば、Cuからなる)42と、この配線導体42上に突出して形成された複数のバンプB40とを備えている。絶縁性基板41の表面は、バンプB40の部位を除き、レジストまたは樹脂(以下「レジスト等」という。)44で被覆されている。
【0034】
半導体チップ50,60は、活性面を配線基板40の表面に対向させたフェースダウン姿勢で配線基板40に接合されている。これらの半導体チップ50,60の活性面には、バンプB50,B60がそれぞれ複数設けられている。これらのバンプB50,B60は、レジスト等44に形成された開口から露出しているバンプB40にそれぞれ接合されており、これにより、半導体チップ50,60の配線基板40への接合が達成されている。
【0035】
図7は、配線基板40のバンプB40の近傍の構成を拡大して示す図解的な断面図である。バンプB40は、たとえば、配線導体42上に形成されたAuめっき層で構成されている。このバンプB40の頂面は、たとえばTiWからなる膜厚200Å以上の拡散防止膜70によって全域が被覆されており、この拡散防止膜54上にたとえばSnからなる膜厚0.1μm以上5μm以下の接合膜55が形成されている。すなわち、バンプB40に関連する構成は、上述の図2に示されたバンプB1に関連する構成と同様になっている。
【0036】
したがって、バンプB40の材料と接合膜55の材料との相互拡散が生じることはなく、接合膜55は、Sn単体の膜となっている。したがって、Snの融点(約232℃)程度の低温の加熱によって接合膜55を溶融させることができ、半導体チップ50,60のバンプB50,B60をバンプB40に接合することができる。
半導体チップ50,60のバンプB50,B60は、たとえば、Auで構成されている。これらのバンプB50,B60の表面にも拡散防止膜と接合膜との積層構造を形成してもよいが、通常は不要である。
【0037】
拡散防止膜54と接合膜55との密着力のみでは接合強度が不足する場合には、バンプB40上に、図3、図4または図5の場合と同様な積層構造を設ければよい。この場合には、まず、比較的低温(たとえば232℃前後)の加熱によって接合膜15,25の単体領域の溶融を生じさせて、接合すべきすべての半導体チップ50,60を配線基板40に仮接合し、その後に、短時間の高温加熱(280℃程度)によってAu−Sn合金部分やAu−Sn−In合金部分の溶融を生じさせて、本接合を行えばよい。
【0038】
図8は、この発明のさらに他の実施形態に係る半導体装置の製造工程を説明するための図解的な斜視図である。この実施形態では、チップ・オン・チップ構造の半導体装置が製造される。具体的に説明すると、半導体ウエハ(たとえばシリコンウエハ)Wには、複数個の半導体チップに対応した複数のチップ領域Aが予め形成され、このチップ領域Aには、上述の図3、図4または図5に示す積層膜を頂面に有するバンプBが予め形成されている。この状態の半導体ウエハWに対して、自動実装機械によって、複数個の半導体チップCが複数のチップ領域Aにそれぞれ順次配置されていく。半導体チップCの下方に向けられた活性面には、バンプBに接合すべきバンプ(図示せず)が形成されている。
【0039】
複数個の半導体チップCを複数のチップ領域Aに順次配置していくとき、半導体ウエハWは、上記仮接合工程に対応した所定の低温(たとえば、232℃前後)に保持される。これにより、バンプB上では、接合膜の単体部分が溶融して、半導体チップCのバンプと仮接合されることになる。
半導体ウエハW上の所定の複数のチップ領域A(たとえば、すべてのチップ領域A)に半導体チップCを仮接合し終えると、次に、半導体ウエハWは、上記本接合工程に対応した所定の高温(たとえば、280℃程度)に所定の短時間だけ加熱される。これにより、接合膜の合金部分が溶融し、強固な結合が達成される。半導体ウエハWが280℃程度の高温に加熱されるのは、本接合工程における短時間に限定されるから、半導体ウエハWや半導体チップCに形成された素子特性に対する影響を最小限に抑制しつつ、半導体チップCを半導体ウエハWに接合することができる。
【0040】
その後、半導体ウエハWは、スクライブラインLに沿って切断され、チップ領域Aごとに分離される。これにより、チップ・オン・チップ構造の半導体装置の個片が複数個得られることになる。
以上、この発明の3つの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、上記の実施形態では、親チップ1、配線基板40および半導体ウエハWの側に設けられるバンプの頂面に拡散防止膜および接合膜を形成することとしたが、子チップ2,3、半導体チップ50,60および半導体チップCの側に設けられるバンプの頂面に拡散防止膜および接合膜を設けることとし、親チップ1、配線基板40および半導体ウエハW側のバンプの頂面には、拡散防止膜および接合膜を設けないようにしてもよい。
【0041】
また、上記の実施形態では、互いに接合されるバンプがいずれもAuからなっている例について説明したが、バンプの材料は、たとえば、Cuであってもよく、互いに接合されるバンプの材料が共通している必要もない。すなわち、たとえば、AuバンプとCuバンプとが接合膜を介して接合されてもよい。
また、互いに接合される電子装置(配線基板または半導体チップ)の両方にバンプを設けておく必要はなく、いずれか一方にのみバンプを設けておいてもよい。たとえば、配線基板上に半導体チップをフリップチップ接合する場合に、半導体チップ側にのみバンプを設けておき、このバンプを配線基板上に配線導体に接合するようにしてもよい。この場合には、半導体チップ側のバンプの頂面に、拡散防止膜および接合膜の積層構造を形成しておけばよい。
【0042】
さらに、上記の実施形態では、接合膜の材料として、SnおよびSn−In合金を例示したが、これらのほかにも、インジウム(In)を用いることができる。一般に、バンプの頂面に、バンプの材料よりも低融点の接合膜を形成すればよい。より具体的には、接合膜/バンプの材料の組み合わせとしては、Sn/Au、Sn/Cu、In/Au、In/Cu、In/Snなどを例示できる。
【0043】
また、上記の実施形態では、拡散防止膜としてTiW膜を例示したが、ほかにも、Ni膜、Ti膜およびCr膜などを拡散防止膜として用いることができる。ただし、いずれの薄膜の場合にも、十分な拡散防止機能を得るためには、200Å以上の膜厚とすることが好ましい。
また、上記図6および図7の構成の場合、Cuからなる配線導体42とAuからなるバンプB40との間にNi層を介在させて、これらの間の相互拡散を抑制することが好ましい。
【0044】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を説明するための図解的な断面図である。
【図2】上記半導体装置を構成する親チップに形成されたバンプの詳しい構成を説明するための断面図である。
【図3】(a)は上記バンプの他の構成例を示す断面図であり、(b)はその平面図である。
【図4】(a)は上記バンプのさらに他の構成例を示す断面図であり、(b)はその平面図である。
【図5】(a)は上記バンプのさらに他の構成例を示す断面図であり、(b)はその平面図である。
【図6】この発明の他の実施形態に係る半導体装置の構成を説明するための図解的な断面図である。
【図7】図6の半導体装置における配線基板側のバンプの近傍の構成を拡大して示す図解的な断面図である。
【図8】この発明のさらに他の実施形態に係る半導体装置の製造工程を説明するための図解的な斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 親チップ
2,3 子チップ
13 表面保護膜
14 拡散防止膜
15 接合膜
15A 単体領域
15B 合金領域
24 拡散防止膜
25 接合膜
31 Au−Sn−In合金領域
32 SnリッチなSn−In合金領域
33 Sn−In合金の単体領域
34 Sn単体領域
35 Au−Sn合金領域
40 配線基板
41 絶縁性基板
42 配線導体
44 レジストまたは樹脂
50,60 半導体チップ
54 拡散防止膜
55 接合膜
70 拡散防止膜
151 中央合金領域
152 単体領域
153 周縁合金領域
B1,B2,B3 バンプ
B40,B50,B60 バンプ
A チップ領域
B バンプ
C 半導体チップ
L スクライブライン
W 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
基板の表面に形成され、第1金属材料からなるバンプと、
このバンプの頂面に形成され、単体の状態の融点が上記第1金属材料との合金の融点よりも低い第2金属材料からなり、他の装置の電気接続部との接合のための接合膜と、
上記バンプの頂面と上記接合膜との間に介在され、上記第1金属材料に対する拡散係数が上記第2金属材料よりも低い第3金属材料からなり、上記バンプの頂面の少なくとも一部を覆うように形成された拡散防止膜とを含むことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
上記拡散防止膜は、上記バンプの頂面全域を覆っており、
上記接合膜の全部が上記拡散防止膜上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
上記拡散防止膜は、上記バンプの頂面の一部を覆うとともに残余の部分を露出するように形成されており、
上記接合膜は、上記拡散防止膜上に形成された部分と、上記バンプの頂面に接して形成された部分とを有していることを特徴とする請求項1記載の電子装置。
【請求項4】
上記基板は、半導体基板であり、
上記電子装置は、半導体チップであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電子装置。
【請求項5】
上記基板は、絶縁基板上に配線導体が形成された配線基板であり、
上記バンプは、上記配線導体に接合された状態で上記配線基板上に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電子装置。
【請求項6】
それぞれバンプを有する第1半導体チップおよび第2半導体チップをバンプ同士を接合させて結合したチップ・オン・チップ構造の半導体装置であって、
上記第1半導体チップおよび第2半導体チップのうちの少なくともいずれか一方が、請求項4記載の電子装置からなっていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
絶縁基板上に配線導体が形成された配線基板と、
この配線基板に上記バンプを対向させて上記配線導体に接合された請求項4記載の電子装置とを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
半導体基板にバンプを介して半導体チップを接合させることによって半導体装置を製造するための方法であって、
上記バンプが上記半導体基板および半導体チップの少なくともいずれか一方の表面に形成されており、上記バンプが第1金属材料からなり、このバンプの頂面に単体の状態の融点が上記第1金属材料との合金の融点よりも低い第2金属材料からなる接合膜が形成されており、上記バンプの頂面と上記接合膜との間に、上記バンプの頂面の一部を覆うとともに残余の部分を露出するように、上記第1金属材料に対する拡散係数が上記第2金属材料よりも低い第3金属材料からなる拡散防止膜が形成されており、上記接合膜は、上記拡散防止膜上に形成された部分と、上記バンプの頂面に接して形成された部分とを有しており、
上記方法は、
上記半導体チップが上記バンプを挟んで上記半導体基板上に配置された状態で、上記第2金属材料の単体の状態の融点以上であって、上記第1金属材料および第2金属材料の合金の融点未満の第1温度に上記接合膜を加熱することにより、上記半導体チップを上記半導体基板に仮接合させる仮接合工程と、
この仮接合工程の後に、上記第1金属材料および第2金属材料の合金の融点以上の第2温度に上記接合膜を加熱することにより、上記半導体チップを上記半導体基板に本接合させる本接合工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
上記高温加熱工程は、複数個の半導体チップを上記半導体基板上に仮接合させた後に行われることを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−54311(P2006−54311A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234707(P2004−234707)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】