説明

電子輸送性材料および発光素子

【課題】有機および無機の青色発光材料ための発光層ホスト材料および正孔ブロック電子輸送材料、電子輸送材料等として用いることができる電子輸送性材料を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される電子輸送性材料
【化1】


(式中、R1からR4はフッ素またはメチル基を示し、R5からR8は水素、フッ素およびメチル基から成る群から独立して選択される基を示し、およびArは炭素数20以下の置換または未置換のアリール基またはヘテロアリール基であって、2つ以下の独立した環が連接した基、または2つの環が縮合した1つの環からなる基を示す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の低分子アモルファス性電子輸送性材料および発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物のキャリア輸送材料を用いた発光素子には、蛍光および/またはリン光性有機発光材料を用いた有機エレクトロルミネセント(以下有機ELと略す)発光素子とナノ粒子半導体や無機半導体薄膜等の無機発光材料を発光層に含み、有機キャリア輸送材料と複合した有機無機ハイブリッド型発光素子がある。
【0003】
これらの発光素子の典型的な構成例では基板上の陽極上に、正孔注入層、電子ブロック正孔輸送層、発光層、正孔ブロック電子輸送層、電子輸送層、陰極の順に構成されている。また、基板上に陰極から順に構成する逆構成の素子もある。
【0004】
陽極と陰極間に積層された各層は正孔および電子の輸送能力を有するキャリア輸送材料からなる。発光層材料にはキャリア輸送性の他に高い蛍光またはリン光発光性を有する材料が用いられている。
【0005】
これらの発光素子は整流性を有し直流駆動で発光する。素子に直流電圧が印加されると陽極から正孔、陰極から電子が注入され、注入された正孔と電子がそれぞれ発光層に輸送され再結合することにより発光する。交流駆動の際は順バイアス時に発光する。
【0006】
陽極材料はITO(インジウム錫複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)等の透明導電膜、金や白金からなる導電性の高い半透明金属薄膜、高導電性の導電性高分子膜等が用いられている。
【0007】
陽極に使われる一般的な透明導電膜のイオン化エネルギーは5eV程度前後であり、青色発光材料のイオン化エネルギーは6eV程度前後の材料が多いため、透明導電膜から発光層へ直接正孔注入の際には1eV程度のエネルギーギャップがある。
【0008】
正孔注入層は陽極と発光層間に挿入され、該エネルギーギャップを小さくし、陽極から発光層への正孔注入効率を高める。正孔注入層は単独または複合して陽極上に0.5nm〜100nm程度の厚さで1層以上積層され用いられる。正孔注入材料はイオン化エネルギーが5〜7eVの半導体膜等が用いられる。例えばアモルファスシリコン、アモルファス窒化カーボン、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化ニッケル等の無機半導体の真空蒸着、イオンプレーティング、CVD、スパッタリング若しくはゾルゲル法等により成膜された膜、または導電率を半導体領域に調整したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体(PEDOT:PSSと略)の膜やポリアニリン系の導電性高分子材料の塗布膜、または銅フタロシアニンやオリゴチオフェン、バックミンスターフラーレン等の有機半導体や4,4’,4’’−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニル-アミン(2−TNATAと略)等の芳香族3級アミン化合物の蒸着膜や塗布膜である。さらにこれらの有機半導体材料に2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4−TCNQと略、電子親和力5.24eV)や2−(6−ジシアノメチレン−1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロ−6H−フタレン−イリデン)マロノニトリル等のアクセプタや臭化テトラフェニルアンチモンやFeCl3等のルイス酸をドープし、より低抵抗化した膜等が挙げられる。
【0009】
その他、電子親和力が5.4eV程度のヘキサデカフルオロ銅フタロシアニン等、電子親和力が陽極と発光層のイオン化エネルギーの間にある材料を正孔注入材料として用いることもできる。
【0010】
また、透明導電膜上にトリフルオロメタン等の電子吸引性プラズマ重合膜等をnmオーダーの厚さで非常に薄く積層したり、フッ素系シランカップリング剤等で透明導電膜表面を処理することによっても透明導電膜表面のイオン化エネルギーを大きくし正孔注入層とすることができる。
【0011】
電子ブロック正孔輸送層は正孔注入層と発光層間に5〜30nm程度の厚さで設け、陽極から発光層への正孔輸送を促進するとともに発光層に注入された電子が陽極へ漏れ出すのを防ぐために設けられる。電子ブロック正孔輸送材料としては、正孔注入層のイオン化エネルギー以上、かつ発光層のイオン化エネルギー以下の範囲のHOMO(最高被占軌道)レベルを持ち、かつ発光層の電子親和力より大きいLUMO(最低空軌道)レベルを持つ低分子や高分子の芳香族3級アミン系材料が主に用いられる。
【0012】
また、発光層にリン光材料が用いられる場合は電子ブロック正孔輸送材料による消光を防ぐために、リン光材料の最低励起3重項レベルよりも大きな最低励起3重項レベルを有するワイドエネルギーギャップ材料が要求される。
【0013】
有機EL発光素子の発光層は、蛍光またはリン光発光性の発光材料を含む膜が5〜100nm程度の厚さで形成される。発光層は単独材料で形成されても、ホスト材料に発光材料がドープされても良い。通常、発光材料の濃度消光やエキシマ発光を防ぐために、ホスト材料にドープされて形成されることが多い。発光材料としては、蛍光発光性のアントラセン誘導体、ベンゾアントラセン誘導体、スチリル誘導体、カルバゾール誘導体、ポリフルオレン系共重合体、ポリフェノキサジン共重合体等の各種公知の低分子および高分子の蛍光発光材料や、リン光発光性のイリジウム錯体、プラチナ錯体等の重原子を含むリン光錯体からなるリン光材料等、赤、青、緑、白等の各種EL発光色を有する材料が単独で、または発光材料より大きなエネルギーギャップを有し、発光材料からのEL発光を吸収しないホスト材料中に混合され用いられる。
【0014】
ホスト材料としては発光材料より大きなエネルギーギャップを有し、かつ同等以上のイオン化エネルギーを有し、かつ同等以下の電子親和力を有する両極性(アンバイポーラー)材料を用いることが好ましいが、後で述べる電子ブロック正孔輸送材料や正孔ブロック電子輸送材料を使用することも可能である。
【0015】
有機のキャリア輸送材料と無機発光層を組み合せたり、有機の発光層ホスト材料中に無機発光材料を含む有機−無機ハイブリッド型発光素子では、CdS、ZnSe、ZnS、ZnO、CdO、In23、SnO2等の無機半導体をベースとする薄膜や微粒子またはナノロッドからなる蛍光体が単独でまたは有機キャリア輸送材料と複合されて発光層に用いられる。無機半導体中には、必要に応じてMn、Tb、Eu等の発光中心やAg、Cu、Al、Ga、Cl、As等のドナーやアクセプタ準位を形成する材料等が添加されている。
【0016】
色純度の良い青色発光材料では、HOMOのエネルギーレベル(イオン化エネルギー)とLUMOのエネルギーレベル(電子親和力)のギャップが3eV程度以上必要になる。
【0017】
近年開発された無機半導体の量子ドット発光材料の例としては、CdSeの直径2〜6nm程度の半導体ナノ粒子からなるコア(核)の周囲にZnSをエピタキシャル成長させ励起子閉じ込め用のシェル(殻)とし、さらに表面をトリオクチルホスフィンオキサイド等の鎖状分子で修飾し有機溶媒に分散可能にした材料があり、85%程度の発光量子収率が報告されている(非特許文献1〜5)。
【0018】
量子ドットを混ぜ込んでスピンコートした有機電子ブロック正孔輸送材料の膜は、その混ぜ込む濃度により相分離し、膜面上に1〜2層の量子ドット層が形成される。その後発光層や正孔ブロック電子輸送層を積層すると有機−無機ハイブリッド型発光素子が形成される。
【0019】
有機電子ブロック正孔輸送層や有機発光層、または正孔ブロック電子輸送層中で生じた励起子のエネルギーは量子ドットに吸収され量子ドットのコアからの発光を得ることができる。
【0020】
正孔ブロック電子輸送層は、発光層の正孔輸送能力が電子輸送能力より強く、陰極側の近くに発光領域がある場合に陰極への正孔の漏れと励起子エネルギーの陰極による吸収を防いで発光効率を高めるために、発光層に接した陰極側に5〜50nm程度の厚さで設けられる。
【0021】
発光素子用の正孔ブロック電子輸送材料は、発光材料よりも最低0.3eV以上、望ましくは0.7eV以上大きいイオン化エネルギーと、発光層からの可視発光を吸収しない3.1eV以上の大きいエネルギーギャップを有する材料が求められる。
【0022】
そのため、通常の青色発光材料のイオン化エネルギーは6eV台であるため、青色発光素子用の正孔ブロック電子輸送材料としては7eV以上の大きなイオン化エネルギーを有する電子輸送材料が求められていた。
【0023】
従来は、正孔ブロック電子輸送材料として、バソフェナントロリン、バソクプロイン、
2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)(TPBIと略)、またはトリアジン誘導体(特許文献1〜3)等の含窒素ヘテロ環化合物等が用いられている。しかし、これらの材料は平面的な分子構造で蒸着膜が結晶化し易く安定性が不十分な場合が多かった。また、溶液中では結晶化し易いために湿式成膜ができない場合が多かった。そのため、真空蒸着ができるだけでなく湿式成膜法を適用した場合においても平滑な膜が成膜できる高アモルファス性の電子輸送材料で、かつガラス転移温度が150℃以上の高耐熱性を有する材料が求められている。
【0024】
特許文献1から3ではトリアジン環間の2つのフェニレン基にはそれぞれ1つのメチル基や脂肪族基、ハロゲン、シアノ基の置換基を有しても良いと記載されている。具体的には後述の発明を実施するための最良の形態で詳しく述べるが、各フェニレン環上のメチル置換基の数が各1つの例が記述されているのみであり、フェニレン環面同士は必ずしも直交できず共役が2つのトリアジン環間に広がり紫外領域の大きなエネルギーギャップは得られない問題があった。
【0025】
コア/シェル型の量子ドット蛍光体のシェル層や無機半導体発光層にはZnO系やZnS系のn型半導体が良く用いられている。量子ドットのコアに用いられるCdSeのイオン化エネルギーは約6.5eV、シェルのZnO層は6.6eV、ZnS層は7.0eVであることより発光層のホスト材料や正孔ブロック電子輸送材料に使う材料は、7.0eV程度のイオン化エネルギーを有する材料が望ましい。また、ZnO層とZnS層の電子親和力の値はともに3.4eVであるので、Al電極(イオン化エネルギー4.28eV)から電子注入するためには電子親和力の値が3.4〜4.0eV程度の材料が量子ドットへの電子注入のために望ましいと考えられる。しかし、従来適当なエネルギーレベルと成膜性を有する有機の発光層ホスト材料や正孔ブロック電子輸送材料はほとんど知られていなかったため使われていなかった。
【0026】
電子輸送層は、陰極から正孔ブロック電子輸送材料までの電子移動のエネルギー障壁や抵抗を低下させために、1〜50nm程度の厚さで設けられる。
【0027】
電子輸送層に用いる材料の例としては、オキサジアゾール環、トリアゾール環、トリアジン環、キノリン環、フェナントロリン環、ピリミジン環、ピリジン環、イミダゾール環カルバゾール環等の含窒素ヘテロ環を1つ以上含む化合物や錯体が挙げられる。具体例としてはバソクプロインやバソフェナントロリン等の1,10−フェナントロリン誘導体、1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(以下、TPBIと略する)等のベンズイミダゾール誘導体、ビス(10−ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体、8−ヒドロキシキノリンAl錯体、ビス(2−メチル−8−キノリナート)−4−フェニルフェノレートアルミニウム等の金属錯体、4,4’−ビスカルバゾールビフェニル等が挙げられる。
【0028】
その他、芳香族ホウ素化合物、芳香族シラン化合物、フェニルジ(1−ピレニル)ホスフィン等の芳香族ホスフィン化合物等も用いられている。さらにそれらをより低抵抗化するためにそれらの化合物や錯体、有機金属等の膜にCs、Na、Li、Ba等のアルカリ金属やアルカリ土類金属をドナーとしてドープし、キャリア密度を増し、低抵抗化することも行なわれている。
【0029】
陰極は通常低抵抗で、光反射率が高いAlやAgが使われる。光透過性陰極を形成する場合は、10nm程度の金属陰極上に透明電極材料等が積層される。有機発光材料の電子親和力は通常3eV程度の材料が多く、効率的な電子注入のためには発光層界面に3eV以下の低仕事関数材料が用いられる。Yb等の希土類やLi、Ba、Cs等のアルカリ金属、アルカリ土類金属や、それらの塩や錯体を陰極の有機層界面に用いる。そのため水分があると局部電池を形成し腐食し易く非発光スポットが生じ易い問題があった。
【0030】
今後、水分に比較的安定な高仕事関数な陰極材料でも電子注入が容易に可能な青色発光材料が開発されるとすると、6eV以上の高イオン化エネルギーの陽極と電子ブロック正孔輸送材料を用い、エネルギーギャップ3eVとして、7eV程度の大きなイオン化エネルギーと、4eV程度の大きな電子親和力を有する青色有機発光材料が必要になる。その場合、発光層のホスト材料や正孔ブロック電子輸送層は電子親和力4eV程度の材料が必要になる。そのような従来に無い大きな電子親和力を有する青色発光材料、発光層ホスト材料や正孔ブロック電子輸送層材料が開発されるとイオン化エネルギー4eV以上のAl(4.28eV)やAg(4.26eV)等の比較的安定な金属のみを陰極に用いることができるようになりEL発光素子の安定性向上が期待できる。
【0031】
また、EL発光素子の各有機膜の成膜法に関する量産技術は、低分子有機材料においては薄膜の膜厚制御性、均一性に優れた真空蒸着法が通常用いられる。その他、大面積基板にも適用可能な昇華転写法(非特許文献6)も試みられている。
【0032】
真空蒸着用の低分子有機EL材料は、分子量が小さいため単純で平面的な構造を持った分子であり結晶化し易く、スピンコートやインクジェット等の湿式成膜法に用いた場合には溶液の蒸発乾燥中に速やかに結晶成長が生じ凹凸の不均質な膜になる場合が多かった。
【0033】
しかし近年、低分子材料の成膜性の改良の取り組みが行なわれ、量産性に優れた連続ノズルプリンティング法によるディスプレイの作製も行なわれている(非特許文献7、8)。今後、溶媒への溶解性、湿式成膜での成膜性、耐熱性等が改良された低分子EL用の材料が増えれば湿式成膜法で赤、青、緑の低分子発光材料を大面積基板に塗り分け塗布する方式によるELディスプレイパネルの生産も可能になる。
【0034】
さらには真空昇華精製可能、かつ高溶解性の材料が設計できれば、カラムクロマトグラフィーによる精製の他に真空昇華も可能となり、高純度で特性の優れた材料を得ることができる。このような材料は通常の低分子材料で行なわれる真空蒸着成膜だけでなく、溶媒に溶かし単独で、または他の低分子材料や高分子材料と混合して、大面積基板に適したインクジェット法や連続ノズルプリンティング法、凸版印刷法等の大面積基板での量産性に優れた印刷法にも適用できるようになり、材料の利用範囲を大きく広げることができる。
【0035】
また、従来真空蒸着法で製造していたレーザー昇華転写用ドナーシート(非特許文献6)を量産性に優れたインクジェット法(非特許文献9〜12)やキャップコート法、スリットコート法、凸版印刷法(非特許文献13)等の塗布印刷法で成膜し製造することも可能になる。
【非特許文献1】Seth Coe,Wing-Keung Woo,Moungi Bawendland Vladlmir Bulovic, Nature,Vol402,800(2002).
【非特許文献2】Sumit Chaudhary,Mihrimah Ozkan andWarren C.W.Chan, Applied physics letters,84,2925 (2004).
【非特許文献3】M.Anni,L.Manna,R.Cingolani,D.Valerini,A.Creti and m.Lomascolo,Applied physics letters,85,4169(2004).
【非特許文献4】Yanqin Li,Aurora Rizzo,Marco Mazzeo,Luigi Carbone, Liberato Manna,Roberto Cingolani and Giuseppe Gigli, Applied physics letters,97,113501(2005).
【非特許文献5】Peter T.Kazlas, Jonathan S. Steckel, Marshall Cox, Caroline Roush, Dorai ramprasad, Craig Breen, Mead Misic,Vincent diFilippo, Maria Anc, John Ritter,and Seth Coe-Sullivan,SID07 DIGEST P-176(2007).
【非特許文献6】Takashi Hirano,keisuke matsuo, Kokichi Kohinata, Koji Hanawa, Tatsuya Matsumi,Eisuke Matsuda, Ryoko Matsuura, Tadashi Ishibashi, Akihiko Yoshida, and Tatsuya Sasaoka, SID07 DIGEST 53.2(2007).
【非特許文献7】M.Masuichi,M.Kawagoe,Y.Takamura,H.Adachi,Y,Fujimoto, and M.Ueno,SID05, DIGEST,30.1(2005).
【非特許文献8】W.F.Feehery,SID07 DIGEST, 69.1(2007).
【非特許文献9】T.FUNAMOTO, Y. Matsueda, O. Yokoyama, A. Tsuda, H. Takeshita, A. Miyashita, SID 02 DIGEST, 27.5L(2002).
【非特許文献10】T. Shimoda, SID 03 DIGEST, 39.1(2003).
【非特許文献11】David Albertalli, SID 05 DIGEST, 30.3(2005).
【非特許文献12】Tadashi Gohda, Yuhki Kobayashi, Kiyoshi Okano, Satoshi Inoue, Ken Okamoto,Satoshi Hashimoto, Emi Yamamoto, Haruyuki Morita, Seiichi Mitsui and Mitsuhiro Koden, SID 06 DIGEST, 58.3(2006).
【非特許文献13】E. Kitazume, K. Takeshita, K. Murata, Y. Qian, Y. Abe, M. Yokoo, K. Oota, T. Taguchi,SID06DIGEST, 41.2(2006).
【特許文献1】米国特許第6057048号明細書
【特許文献2】米国特許第6225467号明細書
【特許文献3】米国特許第6229012号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
本発明は、有機および無機の青色発光材料のための発光層ホスト材料および正孔ブロック電子輸送材料、電子輸送材料等として適切に用いることができるワイドエネルギーギャップの電子輸送性材料を提供することを目的とする。
【0037】
さらに、本発明の目的は、有機溶媒に対し高い溶解性を有する本発明の化合物を含有する印刷インク用の固体または液体の組成物を提供することを目的とする。
【0038】
さらには、蒸着および湿式成膜可能な電子輸送性材料を用いて効率の良いワイドエネルギーギャップの青色発光を可能とする発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明の一態様によれば、下記式(1)
【0040】
【化4】

【0041】
(式中、R1からR4はフッ素またはメチル基を示し、R5からR8は水素、フッ素およびメチル基から成る群から独立して選択される基を示し、およびArは炭素数20以下の置換または未置換のアリール基またはヘテロアリール基であって、2つ以下の独立した環が連接した基、または2つの環が縮合した1つの環からなる基を示す)
の構造で示される電子輸送性材料が提供される。
【0042】
また、本発明の他の態様によれば、上記電子輸送性材料を少なくとも1種以上含有することを特徴とするインク用組成物が提供される。
【0043】
さらに、対向する電極間若しくは陽極と陰極との間の少なくとも1層に有機または無機の発光材料を含有する発光素子において、前記対向する電極間若しくは陽極と陰極との間に形成された少なくとも1層が本発明による電子輸送性材料を含むことを特徴とする発光素子が提供される。
【発明の効果】
【0044】
本発明による新規電子輸送性材料は、真空蒸着および湿式成膜可能な青色発光素子に適したワイドエネルギーギャップの低分子電子輸送性材料である。
【0045】
本発明による新規電子輸送性材料は、電子親和力が大きく電子輸送性の2つのトリアジン環の間にビフェニレン基を有する構造を持ち、該ビフェニレン基のR1からRの置換基はフッ素やメチル基で置換した構造が可能である。電子吸引性のフッ素は電子親和力とイオン化エネルギーの値を大きくする効果を有し、電子供与性のメチル基はそれらの値を小さくする効果に寄与する。
【0046】
また、R9からR18の1つ以上の基に対しても電子吸引性のフッ素、トリフルオロメチル基等で置換したり、電子供与性のメチル基やメトキシ基等で置換することができる。
【0047】
1からR18の電子吸引性および電子供与性置換基の選択と組み合わせにより、本発明の材料の電子親和力とイオン化エネルギーの値を、発光材料や陰極のエネルギーレベルに合わせて容易に調整することができる。
【0048】
例えば式R1からR8にフッ素を選択した(A)の化合物のように、4.0eV以上の大きな電子親和力と、7.3eV以上の大きなイオン化エネルギーを有する材料にすることも可能であるため、7eV程度の大きいイオン化エネルギーを有する発光材料に対しても正孔ブロック電子輸送材料として機能させることができる。
【0049】
また、本発明の材料の電子親和力をAl等の比較的安定な陰極材料の仕事関数と近づければ、水分で劣化し易いアルカリ金属等の低仕事関数材料を陰極材料に含ませずに電子注入が容易に行なえる効果も期待できる。
【0050】
また、本発明による新規電子輸送性材料はR1からR4の4つの置換基を有し、これらは立体障害が比較的大きいフッ素またはメチル基であるため、ビフェニレン基の各フェニレン環面をほぼ直交させることができる。従って、ビフェニレン基を非共役化することにより、青色発光を吸収しない3eVよりも大きなHOMO−LUMO間エネルギーギャップを得ることができるため、400nm以上の可視領域に実質的な光吸収がなく、発光材料の発光に悪影響を与えない。
【0051】
また、本発明の化合物は蛍光を発しないため、発光層のホスト材料や発光層に隣接する層に用いた際に、発光ドーパントのEL発光スペクトルに悪影響を与えない。
【0052】
さらに、本発明による電子輸送性材料は、トリアジン環間のビフェニレン基の各フェニレン環面がほぼ直交することにより分子構造が非平面的となり分子の結晶性の抑制とアモルファス性向上に効果があり、有機溶媒に対する溶解性と成膜性を向上することができる。
【0053】
トリアジン環に置換するアリール基またはヘテロアリール基上に置換基を有することにより、アモルファス性と有機溶媒に対する溶解性をさらに向上することができ容易にインク化し湿式成膜できる効果を有する。
【0054】
また、本発明の電子輸送性材料は、分子量を1200以下、さらに好ましくは900〜1000の熱架橋性基の無い構造とした場合には真空蒸着成膜も可能であり、多様な成膜方法や工程に対応可能となる。蒸留や昇華による精製を行なうことも可能となり高純度材料を提供することが可能となり電子輸送性材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0056】
本発明によれば、式(1)
【0057】
【化5】

【0058】
(式中、R1からR4はフッ素またはメチル基を示し、R5からR8は水素、フッ素およびメチル基から成る群から独立して選択される基を示し、およびArは炭素数20以下の置換または未置換のアリール基またはヘテロアリール基であって、2つ以下の独立した環が連接した基、または2つの環が縮合した1つの環からなる基を示す)
で示される化合物が提供される。
【0059】
本発明による電子輸送性材料は、式(1)におけるR1からR4位に比較的立体障害の大きい置換基を有する。そのため、フェニレン環面同士は直交し、共役が2つのトリアジン環間に広がらない。従って、青色発光を吸収しない3eVよりも大きなHOMO−LUMO間エネルギーギャップを得ることができ400nm以上の可視領域に実質的に吸収がない材料となり、可視領域の発光スペクトルを有する発光材料の発光を吸収せず悪影響を与えない。
【0060】
さらに、トリアジン環を置換するアリール基またはヘテロアリール基上に置換基を有することにより結晶化が阻害され、高いアモルファス性と有機溶媒に対する高い溶解性を有する。
【0061】
本発明の化合物の合成は、下記合成反応式(a)、または下記合成反応式(b)のように行なうことができる。しかしながら、これらの例に限定されるわけではない。
【0062】
【化6】

【0063】
【化7】

【0064】
ここで、Ar基、Ar1基、Ar2基は、炭素数6から10のトリル基、フェニル基やナフチル基等のアリール基、またはピリジル基、カルバゾリル基等のヘテロアリール基を骨格として有する。また該Ar基、Ar1基、Ar2基の骨格には置換基として、フッ素、炭素数1から8のメチル基、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基およびオクチル基等のアルキル基や、炭素数2から8のビニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、メトキシ基、オキシぺンテニル基等のアルコキシ基、またはフェニル基やトリル基、フルオロフェニル基、ヘプチルフェニル基等の置換フェニル基、チオニルフェニル基等の置換アリール基や、フェニルピリジル基等の置換ヘテロアリール基を有していてもよい。また、Ar基、Ar1基、Ar2基の骨格を、ビニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等の炭素数2から8のアルケニル基や、ペンテニルオキシ基、ヘキセニルオキシ基、オクテニルオキシ基、ビニルオキシエーテル基、1,2,2−トリフルオロビニルオキシ基等の反応性2重結合を有するアルコキシ基や、エポキシ基、オキセタン基で置換することにより、熱や光、触媒、架橋剤による架橋重合性を付与することができる。従って、有機溶剤に不溶化することも可能である。
【0065】
置換基R1〜R8の具体的な例を表1のX1〜X5で示す。置換基Arの具体的な例を表2のY1〜Y38で示す。
【0066】
式(1)の化合物は表1のX1〜X5を置換基として有するビフェニル誘導体化合物と、表2のAr基を置換基として有するニトリル誘導体、またはAr1基、Ar2基を置換基として有するトリアジンクロライド誘導体を原料とした任意の組み合わせの反応により合成することができる。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2−1】

【0069】
【表2−2】

中でも、R1からR4がフッ素である式(2)
【0070】
【化8】

【0071】
(式中、R5からR8は水素、フッ素およびメチル基からなる群から独立して選択される基を示し、R9からR18は水素、フッ素、炭素数1〜8のアルキル基およびアルコキシ基炭素数2から8のアルケニル基、トリフルオロメチル基、並びに置換または未置換のフェニル基、チエニル基、ピリジル基およびカルバゾリル基から成る群から選択される基を示す)
の構造で示されることを特徴とした電子輸送性材料が好ましい。
【0072】
本発明の式(2)で示される化合物は、式(1)のR1からR4がフッ素で置換された化合物であり、その立体障害によりビフェニレン基を非平面化させるだけでなく、その電子吸引性によりメチル基の場合よりもさらに電子親和力を大きくでき、LUMOのレベルを下げ正孔ブロック電子輸送層に用いた場合には正孔ブロック能力を高めることができる。
【0073】
式(2)の化合物中のトリアジン環を置換する各フェニル基の置換位置R9からR18中の少なくとも1つ以上がメチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、オクチル基等の炭素数1から8のアルキル基や、メトキシ等のアルコキシ基等で置換されることによりアモルファス性と有機溶媒に対する溶解性を向上することができ、1wt%以上の濃度でのインク化を可能となる。
【0074】
また、置換基R9からR18の1つ以上の基を電子吸引性のフッ素、トリフルオロメチル基で置換するとイオン化エネルギーと電子親和力をさらに大きくすることができ、組み合わせる発光材料に合わせてエネルギーレベルを調整することができる。
【0075】
また、式(A)
【0076】
【化9】

【0077】
で表されることを特徴とする電子輸送性材料は、さらに式(2)のR5からR8の置換基もフッ素で置換した化合物で、電子親和力を4eVの大きな値にすることができる。また、式(A)の化合物は1mlのトルエンに対し約0.1gの高濃度に溶解可能であるので、高濃度のインクを印刷に用いることにより、環境負荷の大きい有機溶媒の使用量を減らすことも可能となる。
【0078】
本発明による電子輸送性材料は、置換基の種類と数の限定により400nm以上の可視領域に実質的に光吸収のない3.1eV以上の大きなエネルギーギャップと、6eV程度のイオン化エネルギーを有する青色発光材料に対し有効に働く7eV程度以上の大きなイオン化エネルギーとを有する電子輸送性材料である。
【0079】
ここで、本発明の式(1)で示される電子輸送性材料と似た以下の式(3)、および例えば式(F)の構造の化合物が特許文献1から3に記載されている。
【0080】
【化10】

【0081】
【化11】

【0082】
しかしながら、これらの化合物は、本発明の式(1)のR1〜R4位に当たる位置全てに置換基を有しないため、フェニレン環面同士は必ずしも直交できず、2つのフェニレン基が回転して成す面が平面化し共役が2つのトリアジン環間に広がることができる。そのため、青色発光素子の発光スペクトル中の400nm付近の短波長成分の一部を吸収するエネルギーギャップとなり、本発明による式(1)の電子輸送性材料のように青色発光スペクトル全体の吸収の無い紫外領域の大きなエネルギーギャップを有する材料とすることができ難い。
【0083】
本発明のインク組成物は、有機溶剤中に式(1)の電子輸送性材料を含む。本発明の式(1)の電子輸送性材料はトリアジン環の置換基により、結晶化が阻害され、高いアモルファス性と有機溶媒に対する高い溶解性を有する。本発明のインク組成物には、用途に応じて、他の種類のキャリア輸送材料および発光材料を少なくとも1種以上含むこともできる。
【0084】
本発明の発光素子は、対向する電極間若しくは陽極と陰極との間の少なくとも1層に有機または無機の発光材料を含有する発光素子において、前記対向する電極間若しくは陽極と陰極との間に形成された少なくとも1層が式(1)に示す本発明の電子輸送性材料を含む。例えば、発光層においてホスト材料として、正孔ブロック電子輸送層における材料として、また電子輸送層における電子輸送材料として、本発明の電子輸送性材料を用いることができる。
【0085】
本発明の発光素子は、発光材料として以下に記載する有機EL発光素子の作製中に記載する有機発光材料を用いることができる。また、CdS、ZnSe、ZnS、ZnO、
CdO、In23、SnO2、TiO2、SiC等の無機半導体をベースとする無機半導体の薄膜、または例えば直径10nm以下の無機半導体の微粒子や、例えば直径数nmから数百nmの無機半導体のナノロッドやナノワイヤ等の無機発光材料を含むこともできる。これら無機材料としては、背景技術に記載したような塗布可能な無機半導体の量子ドット発光材料を好ましく用いることができる。例えば、CdSeの直径2〜6nm程度の半導体ナノ粒子からなるコア(核)の周囲にZnSをエピタキシャル成長させ励起子閉じ込め用のシェル(殻)とし、さらに表面をトリオクチルホスフィンオキサイド等の鎖状分子で修飾し有機溶媒に分散可能にした材料である。
【0086】
続いて、本発明の電子輸送性材料を用いて主に有機EL発光素子を作製する場合について、図1から図4の図面を参照しながら説明する。
【0087】
本発明の有機EL素子においては、式(1)で示す本発明の化合物を、対向する電極間若しくは陽極と陰極との間の少なくとも1層に有機発光材料を含有する有機EL発光素子において、前記対向する電極間若しくは陽極と陰極との間に形成された少なくとも1層に用いることができるが、より好ましくは発光層のホスト材料、または正孔ブロック電子輸送層、または電子輸送層中の少なくとも1層に用いることができる。
【0088】
図1は、本発明の一態様に係る有機EL発光素子の断面図を示す。図1中、基板1上には、透明電極等からなる陽極2が形成され、陽極2上には、正孔注入層3、発光層4、および陰極5が順次積層されて有機EL発光素子が構成されている。陽極2は配線6を介して電源7に電気的に接続され、陰極5は基板上に形成された端子部8に接続され、さらに配線9を介して電源7に電気的に接続されている。任意に、陰極5の上にパッシベーション層13を設けてもよい。
【0089】
図2は、本発明の他の態様に係る有機EL発光素子の断面図を示す。図2に示す有機EL発光素子では、図1に示す有機薄膜EL素子の正孔注入層3の上に、電子ブロック正孔輸送層10が積層されている。
【0090】
図3は、本発明の他の態様に係る有機EL発光素子の断面図を示す。図3に示す有機EL発光素子では、図2に示す有機薄膜EL素子の発光層4の上に、正孔ブロック電子輸送層11が積層されている。
【0091】
さらに図4に示す有機EL発光素子は、図3に示す素子の発光層4と陰極5との間に、電子輸送層12が形成された構造を有している。
【0092】
これら図1〜図4に示す本発明の有機薄膜EL素子は、主に有機発光層中のホスト材料、正孔ブロック電子輸送層、または電子輸送層中に式(1)の本発明の電子輸送性材料を含有している。
【0093】
以下、本発明の有機薄膜EL素子について、より詳細に説明する。
【0094】
本発明の有機EL発光素子で用いられる基板の種類としては、金属箔、半導体、および絶縁透明性の基板を用いることができる。
【0095】
金属箔からなる基板を構成する材料としては、銅材、アルミニウム材、インバー材、ステンレス材、およびチタン材等の箔、鉄合金系またはジルコニウム合金系等のアモルファス金属テープ等の基板を挙げることができる。この基板にポリイミド等の有機絶縁膜、または窒化アルミニウム等の窒化膜、アルミナ等の酸化物膜、酸窒化シリコン等の酸窒化物膜、無機ガラス膜等の無機絶縁膜を塗布、スパッタリング、化学蒸気堆積法、陽極酸化等の手法で形成することにより、フレキシブルであり、高い水蒸気バリア性および酸素バリア性、高熱伝導性を有する基板とすることができる。
【0096】
半導体からなる基板の例としては、シリコン、シリコンカーバイト等の単結晶ウエハー基板を挙げることができる。p型およびn型の半導体層をエピタキシャル成膜し、微細なCMOS駆動回路等を形成してマイクロディスプレイ等に用いることもできる。
【0097】
絶縁透明性の基板の例としては、ガラスや、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルム、繊維強化エポキシ樹脂等の透明絶縁性基板を挙げることができる。
【0098】
以下、絶縁透明性の基板1を用いて、有機EL発光素子を陽極側から順に作製する場合を例にしてさらに詳しく説明する。ここで、光を取り出す絶縁透明性の基板1は、色のコントラストの調整や耐性向上のために着色されていてもよい。あるいは絶縁性透明基板1上に円偏光フィルタ、多層膜反射防止フィルタ、紫外線吸収フィルタ、RGBカラーフィルタ、蛍光波長変換フィルタ、およびシリカコーティング層等を設けてもよい。
【0099】
次に基板1の上に陽極2を形成する。陽極2は基板側から光を取り出す場合には透明電極等を用いることができる。
【0100】
透明電極の例としては、ITOやアルミニウムをドープした酸化亜鉛の非晶質または微結晶の透明酸化物導電体からなる膜や、アクセプタをドープしたポリアニリン、ポリピロールおよびポリチオフェン等の低抵抗な導電性高分子膜等を挙げることができる。透明電極は基板側から表示を見る場合に用いられる。透明電極として可視光線透過率が80%以上で表面抵抗が1〜50Ω/□程度の透明導電膜が通常用いられるが、単純マトリクス駆動のためには、より低抵抗の膜を用いることが望ましい。より低抵抗の膜とするために、銀と銅等との合金からなる10nm程度の厚さの層を、ITO、インジウム亜鉛複合酸化物、酸化チタン、酸化錫等を成分とする非晶質または微結晶の透明導電膜で挟み、1Ω/□以下の透明電極として用いることもできる。これらの透明電極は、真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により、上記絶縁性透明基板上に形成される。また、透明電極のラインに接して、Cr、Cu、Al、Ag等を主成分とする金属からなる金属バスラインを設け低抵抗化することもできる。
【0101】
陽極2が陰極側から光を取り出すトップエミッション構造の素子の場合には、表示コントラストの高い黒色電極や、発光効率を高められる光反射性電極を用いることもできる。
【0102】
黒色電極材料の例としては、グラファイト等の炭素系膜や白金黒膜、その他モリブデンやタングステン、銅等の酸素が化学量論比から不足した黒色金属酸化物膜が表面に形成された金属電極が挙げられる。
【0103】
反射電極の例としては、ガラス等の透明基板、半導体ウエハー等の不透明基板上にアルミニウム、クロム、ニッケル、プラチナ等の光反射性金属膜を成膜し、さらにそれらの金属膜上にITO(インジウム錫複合酸化物)やIZO(インジウム亜鉛複合酸化物)等の透明導電膜、または酸化タングステン、酸化モリブデン等の金属酸化物半導体膜を積層した構成のものを挙げることができる。
【0104】
次に、陽極2上に正孔の注入を促進するために正孔注入層3を1層以上積層する。本発明の有機EL発光素子の正孔注入層3に用いる材料は、背景技術で述べた材料を0.5〜100nm程度の厚さで用いることができる。次に積層する電子ブロック正孔輸送層10や有機発光層4を蒸着で形成する場合は、有機溶媒に可溶な既知の正孔注入材料を使うことができる。有機発光層4を印刷法等の芳香族溶媒を用いた湿式法で形成する場合には、印刷に用いるトルエン等の芳香族溶媒に難溶な酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、セレン、シリコン等の無機半導体材料や、トルエンに不溶な有機蒸着材料、またはトルエン等の有機溶剤に溶解させてスピンコート、ディップコート、ロールコート、ブレードコート、キャップコート、インクジェット印刷、凸版印刷、ノズルプリンティング法等の方法により塗布した後、光や熱で架橋不溶化することが可能な高分子材料を用いることが望ましい。
【0105】
トルエン等の芳香族溶媒に難溶な蒸着材料としては青色の銅フタロシアニン等の誘導体、緑色の塩素化および臭素化銅フタロシアニン等の誘導体、赤色のキナクリドン誘導体等が挙げられるが、これらを50nm以上蒸着し正孔注入層として用いることにより、カラーフィルタ機能を持たせEL発光スペクトルを補正することも可能である。
【0106】
塗布後、光や熱で架橋不溶化することが可能な高分子材料の例としては式(G)に示す関東化学株式会社製のHT−1(イオン化エネルギー5.8eV、電子親和力2.5eV)等を挙げることができる。これらは光や熱で架橋する反応性2重結合を有し、かつ正孔輸送性の芳香族3級アミンを含む平均分子量1万〜50万程度の高分子を用いることができる。
【0107】
【化12】

【0108】
(式中、nは重合度を表す整数である)。
【0109】
さらにこれらの有機正孔注入輸送層は、上記したF4−TCNQ等のアクセプタ材料を1〜10wt%程度混合し低抵抗化し用いることができる。
【0110】
次に、電子ブロック正孔輸送層10を必要に応じて積層する。電子ブロック正孔輸送層10は、発光層中の電子が陽極側に抜けることを抑制し、発光効率を高めるために5〜50nm程度の厚さで積層される。しかしながら、発光層中での正孔と電子の再結合領域が陰極側よりの場合は省略することもできる。逆に正孔と電子の再結合領域が陽極側よりの場合は発光層と電子ブロック正孔輸送層との界面に正孔と電子が蓄積し易くなる。界面に正孔と電子が蓄積すると界面付近の分子に高電界がかかり分極を生じたり、不可逆的な劣化反応の原因になると考えられる。そのため、電子ブロック正孔輸送層と発光層とのイオン化エネルギー差が小さい材料を選択し発光層にスムーズに正孔が注入され界面に正孔が蓄積しないようにすることが望ましい。
【0111】
電子ブロック正孔輸送層10に用いる材料は、背景技術で述べたエネルギーレベルの関係を有する芳香族3級アミン系低分子系の正孔材料や高分子材料を用いることができる。
【0112】
芳香族3級アミン系低分子系の正孔材料の例としてはN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(イオン化エネルギー5.4eV、電子親和力2.3eV)や4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTAと略、イオン化エネルギー5.7eV、電子親和力2.4eV)やN,N’−カルバゾリル−3,5−ベンゼン(m−CPと略、イオン化エネルギー6.1eV、電子親和力2.4eV)等が挙げられる。これらの材料は真空蒸着により成膜できる。
【0113】
続く工程での発光層の成膜を印刷法等の湿式成膜で行なう場合には、式(G)の高分子のような架橋材料を用いて発光層の溶媒に不溶化して用いることが望ましい。
【0114】
次に、正孔注入層または電子ブロック正孔輸送層上に発光層4を積層する。
本発明の式(1)の電子輸送性材料は単独で湿式成膜性を有しており、また、実質的に可視光を吸収しないことから、発光層に用いる場合はホスト材料として用いることができる。具体的には表1のX1からX5と表2のY1からY45の任意の組み合わせの材料を用いることができる。
【0115】
さらに具体的には表1のX1と表2のY1の組み合わせで実施例に合成法を記載した式(A)の化合物や、X2とY1の組み合わせで同様に合成できる式(H)の化合物等を挙げることができる。
【0116】
【化13】

【0117】
【化14】

【0118】
これらのホスト材料に、青、緑、赤、白、赤外などの発光波長領域で発光する低分子または高分子の蛍光材料やリン光材料からなる発光ドーパントを、0.5〜50wt%程度の濃度で本発明の式(1)の電子輸送性材料と混合し発光層4とすることもできる。
【0119】
その際、発光ドーパントが会合性でエキシマ発光を形成し発光波長が長波長化する場合は、発光ドーパントを0.5〜5wt%程度の濃度で混合する。高濃度でもエキシマ発光を形成しない場合は、発光ドーパントを5〜50wt%程度の濃度で混合することができる。しかしながら、高濃度で膜が結晶化し易くなる場合には、25wt%以下の濃度で添加する。発光ドーパントのLUMOとHOMOのエネルギーレベルの両方が、ホスト材料のLUMOのエネルギーレベルからHOMOのエネルギーレベルの値の範囲内に収まることが、ホスト材料からドーパントへのキャリア移動のために望ましい。しかし、HOMOかLUMOの一方のレベルが収まらない場合には、発光層内へのキャリア注入と、ドーパント間でのキャリアホッピングによる発光層内でのキャリア移動が可能となるよう、少なくとも5wt%以上、好ましくは10wt%以上の濃度で発光ドーパントを混合する。または、キャリア移動が可能となるHOMOまたはLUMOのエネルギーレベルを有する他の低分子および高分子のキャリア輸送材料を混合することが望ましい。
【0120】
また、キャリアバランスやインクの粘度を調整するために、他の低分子正孔輸送材料やポリ(N−ビニルカルバゾール)や、ポリ(N−(4−ビニルフェニル)カルバゾール)等の高分子正孔輸送材料、その他の電子輸送材料を混合して発光層を形成してもよい。
【0121】
以下に、発光層において本発明の電子輸送性材料にドープすることができる青、緑、赤、黄色の発光材料の例を式(I)から式(Y)の低分子化合物、式(Z)の高分子発光材料で例示するが、本発明はこれらの色や材料に限定されるものではない。
【0122】
青色発光ドーパント化合物の例としては、式(I)、式(J)のアントラセン誘導体化合物、および式(K)のペリレン誘導体化合物、および式(L)、式(M)のリン光Ir錯体が挙げられる。
【0123】
【化15】

【0124】
(式中、Rは水素または炭素数4以下のアルキル基またはアルコキシ基またはトリフルオロメチル基を表す)。
【0125】
【化16】

【0126】
(式中、Rは水素または炭素数4以下のアルキル基またはアルコキシ基またはトリフルオロメチル基を表す)。
【0127】
【化17】

【0128】
(式中、Rは炭素数4以下のアルキル基またはアルコキシ基またはトリフルオロメチル基を表す)。
【0129】
【化18】

【0130】
【化19】

【0131】
緑色発光ドーパント化合物の例としては、式(N)のキナクリドン誘導体、式(O)、式(P)、式(Q)および式(R)のベンゾアントラセン誘導体、式(S)のリン光Ir錯体等が挙げられる。
【0132】
【化20】

【0133】
(式中、Rは水素または炭素数4以下のアルキル基またはアルコキシ基またはトリフルオロメチル基を表す)。
【0134】
【化21】

【0135】
【化22】

【0136】
(式中、Rは水素または炭素数4以下のアルキル基またはアルコキシ基またはトリフルオロメチル基を表す)。
【0137】
【化23】

【0138】
【化24】

【0139】
【化25】

【0140】
赤色発光ドーパントの例としては、式(T)に構造を示す9,14−ジフェニル−ベンズ[5,6]インデノ[1,2,3−cd]ペリレン、式(U)、式(V)に構造を示すリン光Ir錯体を挙げることができる。
【0141】
【化26】

【0142】
【化27】

【0143】
(式中、acacはアセチルアセトネート配位子を表す)。
【0144】
【化28】

【0145】
(式中、acacはアセチルアセトネート配位子を表す)。
【0146】
黄色発光ドーパントの化合物の例としては、式(W)のルブレンや式(X)、式(Y)のリン光Ir錯体が挙げられる。
【0147】
【化29】

【0148】
【化30】

【0149】
(式中、acacはアセチルアセトネート配位子を表す)。
【0150】
【化31】

【0151】
(式中、acacはアセチルアセトネート配位子を表す)。
【0152】
白色発光の単層発光層を得るためには、青色、緑色、赤色発光ドーパントを概ね、青色>緑>赤の順に濃度を調整して、エネルギー移動により白色発光させることができる。または青発光層、緑発光層、赤発光層の3層を積層し白色発光層を形成することができる。さらに黄色発光ドーパントを単層発光層に添加することにより演色係数を向上させ、また赤色ドーパントへのエネルギー移動効率を上げることも可能である。
【0153】
また、本発明の電子輸送性材料に混合する正孔輸送材料、発光ドーパントとしては高分子材料を用いることもできる。
【0154】
例えば正孔輸送性高分子青色発光ドーパントとしては関東化学株式会社製の式(Z)で示すN−アリールカルバゾール誘導体の共重合体等を用いることができる。
【0155】
【化32】

【0156】
(ここでl、mはモノマーの組成比を表す整数であり、nは重合度を表す整数である)
また、逆に本発明の電子輸送性材料を電子輸送性ドーパントとして用い、他の低分子および高分子発光材料や発光層用ホスト材料に5〜50wt%未満の濃度でドープすることもできる。
【0157】
また、発光ドーパントを有機材料または無機半導体からなる量子ドットに換えて有機ホスト材料中にドープした場合や、発光性半導体薄膜を発光層に用いた場合は、有機無機ハイブリッドEL発光素子を作製することができる。
【0158】
発光層4は真空蒸着、レーザー転写、連続ノズルプリンティング、インクジェット、スリットコート、スピンコート、凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等の適当な成膜方法により成膜することが可能であり、好ましくは5〜100nmの厚さに成膜する。
【0159】
次に、発光層4と陰極5との間に必要に応じて正孔ブロック電子輸送層11が積層される。
【0160】
正孔ブロック電子輸送層11は有機発光層4への電子注入効率を高めたり、陰極5への正孔の漏れと励起子エネルギーの陰極5による吸収を防ぎ発光効率を高めるために、発光層に接した陰極側に積層される。正孔ブロック電子輸送層11は真空蒸着、レーザー転写、塗布印刷等の方法で100nm以下、好ましくは5〜50nm程度の厚さで積層される。
【0161】
しかし、発光層4の電子輸送性が正孔輸送性よりも高く、電子ブロック正孔輸送層発光層10を設け発光層4中での正孔と電子の再結合領域が陽極側に寄っている場合は、正孔ブロック電子輸送層11を省略することもできる。
【0162】
正孔ブロック電子輸送層11に用いる材料は、ダイポールモーメントが小さく電子移動度が大きく、LUMOの状態密度が大きく、LUMOのエネルギーレベル(電子親和力)が発光層4における発光材料またはホスト材料のLUMOのエネルギーレベル(電子親和力)と同程度から陰極材料のフェルミレベル(仕事関数)との間にあることが好ましい。さらに好ましくは発光層との界面での電子の蓄積を防ぐために、発光材料またはホスト材料のLUMOのエネルギーレベルに近いことが望ましい。
【0163】
また、発光層4と接する正孔ブロック電子輸送層11のイオン化エネルギーが発光層4における発光材料およびホスト材料のイオン化エネルギーより少なくとも0.3eV以上大きく、かつ発光層材料とエキサイプレックスを形成せず成膜性が良い材料が好ましい。
【0164】
正孔ブロック電子輸送層11には、本発明の式(A)や式(H)等の式(1)の電子輸送性材料や、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジル−3−イル)フェニル)ボラン等の有機ホウ素化合物を用いることができる。
【0165】
また、発光層4が電子輸送性ホスト材料中に正孔輸送性ドーパントを高濃度にドープして構成され、発光層4中でドーパント間のホッピング移動が可能な場合では、発光層の電子輸送性ホスト材料のみを発光層4上に積層し正孔ブロック電子輸送材料として用いることもできる。この場合には、発光層のホスト材料のイオン化エネルギーは、ドープされた発光材料よりも少なくとも0.5eV以上、より好ましくは0.7eV以上大きなホスト材料を使用することが望ましい。
【0166】
次に、正孔ブロック電子輸送層11上には、必要に応じて電子輸送層12が1〜50nmの厚さで積層される。
【0167】
電子輸送層12は低駆動電圧化や有機層の膜厚を増し欠陥を生じ難くする目的で設けられる。電子輸送層材料は、その電子親和力が正孔ブロック電子輸送材料の電子親和力と陰極のイオン化エネルギーの間にある材料を用いることが望ましい。
【0168】
電子輸送層12に用いる材料の例は、本発明の式(1)の電子輸送性材料、バソクプロイン、バソフェナントロリン、フェニルジ(1-ピレニル)ホスフィン、ビス(10−ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体、8-ヒドロキシキノリンAl錯体、2,2’,2’’−(1,3,5−フェニレン)−トリス(1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール)等のイミダゾール誘導体、1,3−ビス[2−(2,2’−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン等のビピリジン誘導体、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジル−3−イル)フェニル)ボラン等の有機ホウ素化合物等が挙げられる。また、これらの材料にCs、Na、Li、Ba等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のドナー材料を共蒸着でドープしキャリア密度を増しより低抵抗化した膜を用いることがより好ましい。
【0169】
続いて、発光層4上に直接陰極5を形成する。発光層4上に正孔ブロック電子輸送層11や電子輸送層12を積層した場合には、正孔ブロック電子輸送層11上または電子輸送層12上に陰極5を形成する。
【0170】
EL発光素子の陰極5は、陰極5が接する発光層4、または正孔ブロック電子輸送層11、または電子輸送層12の電子親和力より小さいイオン化エネルギーを有する界面を有することが望ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属のドナー材料をドープした低抵抗の電子輸送層12を有しない場合には、通常3.2eV以下のイオン化エネルギーを有する電子放出性の高い低仕事関数な陰極面を形成する。
【0171】
低仕事関数陰極面としてはLi、Na、K、Cs等のアルカリ金属、Mg、Ca、Sr、Baからなるアルカリ土類金属、Yb等の希土類金属等の低仕事関数金属元素を1原子層以上積層し、その上に安定なAlやAgの膜を100nm〜300nmの厚さで形成する。
【0172】
希土類のYbは2.6eVの低仕事関数であるが、水分に対しアルカリ金属やアルカリ土類金属よりも安定なため陰極材料として好ましい。
【0173】
低仕事関数金属元素の面の形成方法は、低仕事関数金属元素のフッ化物等の塩や、酸化物、窒化物等の低仕事関数元素を含む化合物を数nm以下の厚さに蒸着やスパッタリングして、一部が分解し付着することにより形成することもできる。または低仕事関数金属元素を1種以上含有する合金を用いることもできる。しかし、これらの低仕事関数材料は水分により腐食しやすくダークスポット発生の原因になるため厳重な防湿対策が必要となる。
【0174】
本発明の式(A)に示す電子親和力が4eVの電子輸送性材料を、陰極に接する正孔ブロック電子輸送層11や電子輸送層12に用いたEL発光素子の場合は、陰極5に要求される仕事関数の値は4eV程度で良く、従来より低仕事関数金属成分の割合を減らした比較的安定な材料を用いることもできる。
【0175】
上述の陰極5は、用いる材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、およびイオンプレーティング法、スパッタリング法等により形成することができる。
【0176】
多成分合金で陰極5を構成する場合は、抵抗加熱蒸着法により10-2Paオーダー以下の真空下で、成分ごとに別々の蒸着源から、水晶振動子式膜厚計でモニターしながら共蒸着法により形成する。あるいは、合金材料を少量ずつフラッシュ蒸着することにより形成することができる。また、合金ターゲット等を用いてスパッタリング法等により形成することもできる。
【0177】
本発明の有機EL素子を単純マトリクス駆動ディスプレイにおいて用いる場合であって、図5の模式図に示すように陰極5をストライプ状に形成する必要がある場合には、スリット状に穴の開いたマスクを基板に密着させて蒸着する。あるいは、陰極形成部全面に蒸着した後、レーザーアブレーション法や、イオンビームエッチング法や、リアクティブエッチング法でストライプ状に分離するか、ストライプ状に逆テーパーレジスト隔壁を形成した基板面に陰極を蒸着で行なうことにより、陰極5のストライプ状パターンを形成することができる。
【0178】
陰極5の金属膜の厚さを5〜10nmの厚さに形成した場合は、可視光を透過でき陰極側を発光表示面とすることもできる。
【0179】
陰極側から表示が行われる素子構成とする場合は、EL発光素子に用いられる正孔ブロック電子輸送層11、電子輸送層12は、少なくとも本発明の化合物のEL発光波長領域において、実質的に透明である必要がある。
【0180】
以上、基板1側から順に、陽極2、正孔注入層3、電子ブロック正孔輸送層10、発光層4、正孔ブロック電子輸送層11、電子輸送層12、および陰極5を積層した構造について示したが、本発明の有機EL素子は、基板側から順に、陰極、電子輸送層、正孔ブロック電子輸送層、発光層、電子ブロック正孔輸送層、正孔注入層、および陽極を積層した構造であってもよい。
【0181】
本発明の有機EL素子には、水分や酸素による有機層や電極の劣化を防止するために、有機層および電極上を覆うパッシベーション層13を形成することが好ましい。
【0182】
このパッシベーション層13に用いられる材料は、ガスバリア性および水蒸気バリア性の高い材料であれば特に制限はないが、SiO2、SiOx、GeOx、MgO、Al23、TiO2、ITO、InZnxy、およびInGaxZnyz等のアモルファス酸化物を挙げることができる(添字のx,y,zは組成比を表し、これら酸化物の組成は、化学量論比からずれていることもある)。その他、MgF2、LiF、BaF2、AlF3等のフッ化物、ZnS等の硫化物等の無機化合物を挙げることができる。よりバリア性を高めるためにはAl等の難腐食性の高バリア性金属をパッシベーション層13上にさらに蒸着またはスパッタ成膜することが望ましい。
【0183】
パッシベーション層13は、これらの材料を、蒸着法、反応性蒸着法、CVD法、スパッタリング法、およびイオンプレーティング法等の方法により、単体でまたは複合化させて積層して成膜することにより形成される。
【0184】
さらにこのパッシベーション層13が傷付くのを保護するために、このパッシベーション層13を覆うように、プラスチック板およびプラスチックフィルム、金属箔とプラスチックのラミネートフィルム、金属板および金属箔、またはガラス板等の封止板14を、十分水分を除いた低吸湿性の光硬化性接着剤、エポキシ系接着剤、架橋エチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤シート等の接着性樹脂、または低融点ガラス等の接着材料15で接着する。
【0185】
また、パッシベーション層13の表面や、封止板14の発光層4側の面に、酸化カルシウム、酸化バリウム等の乾燥剤や、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、および有機金属類等からなるゲッター剤の層(図示せず)を形成してもよい。
【0186】
以上のように構成される本発明の有機薄膜EL素子は、正孔注入層2の側を正として直流電圧を印加することにより発光する。また、交流電圧、パルス電圧を印加した場合でも正孔注入層2側に正の電圧が印加されている間は発光する。
【0187】
また、本発明の有機薄膜EL素子を、基板1の上に2次元的に配列することにより、文字や画像を表示することが可能な薄型ディスプレイを形成することができる。
【0188】
さらに、図5の模式図に示すように赤、青、緑の3色の発光層のサブピクセルライン(それぞれ26,27,28)を形成し、3色の発光素子を2次元配列したカラーディスプレイとすることができる。
【0189】
他にも、赤、青、緑、白の4色の発光素子のサブピクセルラインまたはドットを2次元配列したカラーディスプレイや、白色発光モノクロディスプレイ上のサブピクセルに対応する赤、青、緑の3色カラーフィルタを積層するか、若しくは赤、青、緑、透明のカラーフィルタを積層しカラーディスプレイを作製することもできる。
【0190】
さらに白色発光中の青色発光成分を緑画素、および青色と緑色発光成分を赤画素に変換する蛍光変換型フィルタを白色発光素子とカラーフィルタ間に積層することによって、より光利用効率の高いカラーディスプレイを作製することもできる。
【実施例】
【0191】
実施例1
4,4’−ビス{2,4−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−6−イル}−2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニル(化合物A)の合成
(中間体合成例1)
2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニル−4,4’−ジカルボン酸の合成
アルゴン雰囲気下、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニル5.0g(16.8mmol)を脱水テトラヒドロフラン55mLに溶解した後、−70℃以下に冷却した。ここに1.6Mのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液21ml(33.6mmol)を滴下し、同温度で1時間攪拌して熟成した。アニオン化終了後、−70℃で二酸化炭素をバブリングしながら5時間攪拌した。さらに室温に戻し12時間攪拌した。
【0192】
反応終了後、得られた白色ゲル状の反応混合物を6N塩酸水溶液に注ぎ、エーテルで抽出した。有機層を分取し無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。得られた粉末状の結晶をヘキサンで洗浄し、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニル−4,4’−ジカルボン酸6.0g(92.7%)を得た。
【0193】
得られた化合物の分析を直接導入−四重極質量分析計(DI−Ms)で行い、386(M+)、342(M+−CO2)、298(M+−CO2)のピークが得られ、C14248に相当する計算値386に分子イオンピーク(M+)が一致した。
【0194】
(中間体合成例2)
2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニル−4,4’−ジカルボン酸クロリドの合成
2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニル−4,4’−ジカルボン酸4.0g(10.4mmol)と塩化チオニル12mlからなる懸濁液にN−ジメチルホルムアミド1〜2mlを加え、反応系が均一になるまで14時間還流攪拌した。
【0195】
反応終了後、反応混合物から過剰の塩化チオニルを除き、得られたオイル状物をガラスチューブオーブンにより減圧蒸留し、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニル−4,4’−ジカルボン酸クロリド4.05g(92.4%)を得た。
【0196】
蒸留温度140℃/0.08mmHg
(合成例)
4,4’−ビス{2,4−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−6−イル}−2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニル(化合物A)の合成
アルゴン雰囲気下、4−tert−ブチル−ベンゾ二トリル6.39g(40.2mmol)、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニル−4,4’−ジカルボン酸クロリド4.05g(9.6mmol)およびクロロホルム40mlからなる溶液を0〜−5℃に冷却した。ここに5塩化アンチモン5.72g(19.1mmol)を滴下し、1時間掛けて徐々に室温に戻した。さらに、反応混合物を8時間還流攪拌した後、反応系内から減圧下で溶媒を留去し、オキサジアニウム塩を得た。このオキサジアニウムを粉砕し、0℃に冷却した後、攪拌下、28%アンモニア水100mlを滴下し、徐々に室温に戻しながら12時間攪拌した。
【0197】
反応終了後、生じた沈殿物を桐山ロートでろ過して集め、水洗し、次いでメタノール洗浄した。得られた白色沈殿物をクロロホルム200ml中に懸濁させた後、室温で2時間攪拌し、目的物を抽出した。さらに不溶物をろ過操作により除いた後、ろ液を回収した。この抽出操作を2回繰り返した後、得られたろ液を濃縮し、黄色フォーム状結晶の粗生成物を得た。さらにこの粗生成物をヘキサン−塩化メチレン混合溶媒(8:1〜6:1)を溶出液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、アセトンで再結晶することにより、4,4’−ビス{2,4−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−6−イル}−2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニル1.89g(収率:20.0%)を得た。
【0198】
得られた化合物はエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)にて985(M++1)のピークが得られ目的化合物C585286の分子量984に一致した。
【0199】
NMRのシグナルは以下に示す。
【0200】
1H−NMR(400MHz,d−CDCl3):δ:1.41(s、36H)、7.60(d、J=8.7Hz、8H)、8.63(d、J=8.7Hz、8H)
19F−NMR:(376MHz,d−CDCl3):δ:137(s、4F)、140(s、4F)
<化合物Aの吸収スペクトル>
化合物A30mgをバックスメタル社製Bu−6Moボートに入れ、真空蒸着装置にセットし1E−5Torr下385℃に通電加熱して、石英板上で約59nmの厚さで蒸着を行なうことにより、平滑で透明なアモルファス膜が得られた。この膜を島津社製UV−3600分光光度計で吸収スペクトルを測定した結果を図6に示す。吸収端波長375nm(3.31eV)で可視光の吸収が無かった。
【0201】
<熱分析>
化合物Aのガラス転移温度(Tg)と融点(Tm)を、セイコー電子工業製EXSTAR6000シリーズDSC6220により測定した。20℃/分の条件で昇温してTmは350℃〜364℃(ピーク365℃)であった。急冷し再度昇温しTgを測定した結果、Tgは177℃(転移始め)〜192℃(転移終わり)であった。
【0202】
<溶解度>
化合物Aは、室温でトルエン1mlに0.1gの濃度まで溶解し、インク化することが容易であった。
【0203】
<湿式成膜性>
トルエンに1wt%の濃度で溶かしスピンコート成膜が可能で透明で平滑な膜が得られた。
【0204】
<化合物Aのエネルギーレベル測定>
化合物Aを1mlのトルエンに20mg溶解し、1000rpmでITO透明電極ガラス上にスピンコートし、住友重機械アドバンストマシナリー製イオン化ポテンシャル測定装置にてイオン化エネルギーを測定した結果、7.33eVであった。
【0205】
吸収スペクトルから求めた吸収端エネルギーを差し引き電子親和力は4.02eVであった。
【0206】
実施例2 化合物Aを発光層ホスト、正孔ブロック電子輸送層に用い蒸着で形成したEL素子の作製例
厚さ0.7mmのガラス基板1上に、マグネトロンスパッタリング法により厚さ150nmのITO膜を成膜し陽極2とする。常法によりウエットエッチングを行い、ITO膜をパターニングした。この基板をアルカリ洗剤により超音波洗浄した後、さらに純水で洗浄し、乾燥させ、紫外線洗浄を行った。
【0207】
続いて、ITO膜上に、MoO3をマグネトロンスパッタ法により成膜し厚さ1nmの1層目の正孔注入輸送層3を形成した。
【0208】
次に、このMoO3正孔注入層上に、式(G)で示されるHT−1にF4−TCNQを5wt%混合し、トルエンに約1wt%溶解したインクを調製した。このインクを凸版印刷法により発光部に塗布して厚さ10nmの膜を成膜した。その後窒素雰囲気下30秒間365nmの紫外線を照射し架橋してトルエン不溶性の2層目の正孔注入層3を積層した。
【0209】
さらに2層目の正孔注入層3上にHT−1のインクをトルエンに約1wt%溶解したインクを凸版印刷法により発光部に塗布し厚さ20nm積層し、窒素雰囲気下200℃で30秒間365nmの紫外線を照射して架橋しトルエン不溶性の電子ブロック正孔輸送層10とした。
【0210】
次に式(H)の化合物と式(M)で示すリン光青色発光Ir錯体(Firpicと略)をそれぞれ2nm/s、0.2nm/sの真空蒸着速度で共蒸着し70nmの厚さの発光層4を積層した。
【0211】
続いて式(H)の化合物のみを10nmの厚さで真空蒸着し正孔ブロック電子輸送層11を積層した。
【0212】
さらに化合物(A)とYbを10:1の蒸着速度比で10nmの厚さで真空蒸着し電子輸送層12を積層した。
【0213】
最後にYbを0.5nmの厚さで真空蒸着した後Alを200nmの厚さで真空蒸着し積層して陰極5を積層した。
【0214】
この発光素子に12Vの直流電圧を印加すると青色EL発光を得られる。
【0215】
実施例3 発光層を塗布法で成膜した素子の作製例
実施例2と同様に電子ブロック正孔輸送層10までを形成した後に、式(A)の化合物中に式(M)で示すFirpicを8mol%の濃度で混合し、トルエンに約2wt%の濃度で溶かしたインクをスピンコート法により80nmの厚さで成膜して、不要な部分を拭き取り真空加熱乾燥し発光層4とした。
【0216】
次に式(A)の化合物のみを10nmの厚さで真空蒸着し正孔ブロック電子輸送層11を積層した。
【0217】
続いて化合物(A)とYbを10:1の蒸着速度比で10nmの厚さで真空蒸着し電子輸送層12を積層した。
【0218】
最後にYbを0.5nmの厚さで真空蒸着した後Alを200nmの厚さで真空蒸着し陰極5を積層した。
【0219】
この発光素子に12Vの直流電圧を印加すると青色EL発光が得られる。
【0220】
実施例4 量子ドットを用いた有機−無機複合EL発光素子の作製例
実施例2と同様に電子ブロック正孔輸送層10までを形成した後に、化合物(A)と2nmのCdSeを核としZnSを殻にした量子ドットと、トリオクチルホスフィンオキサイドとトリオクチルホスフィンでキャップした青色発光コロイド粒子とを重量比1:5で混合したクロロホルム溶液をインクジェット法により発光層4として80nmの厚さで積層し窒素中300℃でアニールした。
【0221】
次に式(A)の化合物のみを10nmの厚さで真空蒸着し正孔ブロック電子輸送層11を積層した。
【0222】
最後にYbを1nmの厚さで真空蒸着した後Alを200nmの厚さで真空蒸着し陰極5を積層した。
【0223】
この発光素子に12Vの直流電圧を印加すると青色EL発光が得られる。
【0224】
実施例5 無機薄膜半導体を用いた有機−無機複合EL発光素子の例
厚さ1mmのp型シリコン基板1をアルカリ洗剤により超音波洗浄した後、さらに純水で洗浄し、乾燥させ、紫外線洗浄を行った。
【0225】
次に、基板1上に、TiO膜をスパッタ法により正孔注入層3とし厚さ約1nm積層した。
【0226】
続いて、この正孔注入層上に、Agを1mol%程度含むZnSを真空蒸着により50nmの厚さで成膜した。続けてZnSを100nmの厚さで真空蒸着した。さらにAlを1mol%含むZnSを50nmの厚さで真空蒸着した後、硫黄雰囲気中500℃以上でアニールを行い、ZnS蛍光体膜からなる青色発光層4を形成した。アニールによりAgとAlを熱拡散させ、それぞれの濃度がZnに対し0.05〜0.1mol%程度となるように混合した結果、青色蛍光領域を発光層4内部に形成した。
【0227】
次に式(A)の化合物のみを10nmの厚さで真空蒸着し正孔ブロック電子輸送層11とした。
【0228】
さらに式(A)の化合物とYbを10:1の蒸着速度比で10nmの厚さで真空蒸着し電子輸送層12とした。
【0229】
最後にYbを0.5nmの厚さで真空蒸着した後Alを200nmの厚さで真空蒸着し積層して陰極とする。この発光素子に12Vの直流電圧を印加すると青色EL発光が得られる。
【0230】
実施例6 本発明の電子輸送性材料をポリマー発光材料にドーパントとして用いた発光素子の例
実施例2と同様に電子ブロック正孔輸送層までを形成した後に、式(H)で示す化合物と、式(Z)の正孔輸送性高分子青色発光材料と、電子輸送材料としてトリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジル−3−イル)フェニル)ボランを重量比6:2:2で混合した固形分2wt%のトルエンインクをスピンコート法により成膜して不要な部分を拭き取り、真空加熱乾燥し、80nmの厚さの発光層4とした。
【0231】
次に式(H)の化合物のみを10nmの厚さで真空蒸着し正孔ブロック電子輸送層11を積層した。
【0232】
続いて化合物(A)とYbを10:1の蒸着速度比で10nmの厚さで真空蒸着し電子輸送層12を積層した。
【0233】
最後にYbを0.5nmの厚さで真空蒸着した後Alを200nmの厚さで真空蒸着し陰極5を積層した。
【0234】
この発光素子に12Vの直流電圧を印加すると長波長のエキシマ発光が生ぜず純度の良い青色EL発光が得られる。
【0235】
実施例7
実施例6の式(H)で示す化合物に換えて表1のX3と表2のY1の組み合わせの化合物を用いた素子を作製し、同様に青色発光が得られる。
【0236】
比較例1
実施例4において、正孔ブロック電子輸送層11と電子輸送層12を除いた以外、同様の素子を作製した。この素子に12Vの直流電圧を印加すると、実施例6の素子に比べ電流密度が増大するが、発光はほとんど得られない。
【0237】
比較例2
実施例5において、正孔ブロック電子輸送層11と電子輸送層12を除いた以外、同様の素子を作製した。この素子に12Vの直流電圧を印加すると、実施例6の素子に比べ電流密度が増大するが、発光はほとんど得られない。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機EL素子の断面図。
【図2】本発明の他の実施形態に係る有機EL素子の断面図。
【図3】本発明のさらに他の実施形態に係る有機EL素子の断面図。
【図4】本発明のさらに他の実施形態に係る有機EL素子の断面図。
【図5】本発明のさらに他の実施形態に係る有機EL素子の模式図。
【図6】本発明の一実施例に係る有機EL素子で用いられる化合物の吸収スペクトル。
【符号の説明】
【0239】
1…基板
2…陽極
3…正孔注入層
4…発光層
5…陰極
6…配線
7…電源
8…端子部
9…配線
10…電子ブロック正孔輸送層
11…正孔ブロック電子輸送層
12…電子輸送層
13…パッシベーション層
14…封止板
15…接着材料
26…レジスト隔壁
27…赤色発光層
28…緑色発光層
29…青色発光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の構造で示されることを特徴とする電子輸送性材料。
【化1】

(式中、R1からR4はフッ素またはメチル基を示し、R5からR8は水素、フッ素およびメチル基から成る群から独立して選択される基を示し、およびArは炭素数20以下の置換または未置換のアリール基またはヘテロアリール基であって、2つ以下の独立した環が連接した基、または2つの環が縮合した1つの環からなる基を示す)
【請求項2】
式(2)の構造で示されることを特徴とする請求項1に記載の電子輸送性材料。
【化2】

(式中、R5からR8は水素、フッ素およびメチル基からなる群から独立して選択される基を示し、R9からR18は水素、フッ素、炭素数1〜8のアルキル基およびアルコキシ基、炭素数2〜8のアルケニル基、トリフルオロメチル基、並びに置換または未置換のフェニル基、チエニル基、ピリジル基およびカルバゾリル基から成る群から選択される基を示す)
【請求項3】
式(A)で表されることを特徴とする請求項1に記載の電子輸送性材料。
【化3】

【請求項4】
有機溶媒中に、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子輸送性材料を少なくとも1種以上を含むことを特徴とするインク組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の材料に加えて、他の種類のキャリア輸送材料および発光材料を少なくとも1種以上含むことを特徴とする請求項4に記載のインク組成物。
【請求項6】
対向する電極間若しくは陽極と陰極との間の少なくとも1層に有機または無機の発光材料を含有する発光素子において、前記対向する電極間若しくは陽極と陰極との間に形成された少なくとも1層が請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子輸送性材料を含むことを特徴とする発光素子。
【請求項7】
前記無機の発光材料が無機半導体の薄膜、または無機半導体微粒子、または無機半導体からなるナノロッド若しくはナノワイヤを含有する発光素子であることを特徴とする請求項6に記載の発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−141059(P2010−141059A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315065(P2008−315065)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(591045677)関東化学株式会社 (99)
【Fターム(参考)】