説明

電子部品、及び電子装置

【課題】電解質が電極を介して常時金属層に接触しない電気化学セル等の電子部品を提供する。
【解決手段】凹状容器2は、凹部13を有しており、当該凹部13の底部には底面に金属層11を有する貯留部17が形成されている。金属層11の上には、炭素を導電材とする集電体18aが形成され、その上に電極6が固定されている。
一方、封口板3は、コバール等の合金が使用され、中央部が湾曲することで凹んだ貯留部310(第2の凹部)が形成されている。貯留部310の凹み側には、封口板3の全面に渡ってニッケルメッキによる金属層15が形成され、金属層15の上には炭素を導電材とする集電体18bが形成され、その上に負極として使用される電極5が固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品及び電子装置に関し、例えば、電気二重層キャパシタや非水電解質電池などの電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、電解質中のイオンを分極することにより蓄電し、これを放電することにより電力を供給するデバイスである。
この蓄放電機能により、電気二重層キャパシタは、例えば、電子機器の時計機能や半導体メモリなどのバックアップ電源、マイクロコンピュータやICメモリなどの電子装置の予備電源などに用いられている。
特に表面実装が可能な電気二重層キャパシタは、小型化・薄型化が可能であるため、薄型の携帯端末に適している。
このような小型化・薄型化の要望に応えるため、下記の特許文献1では、次に説明するように、凹部を有する容器に分極用の電極と電解質を収納し、開口部を封口板で封止した電気二重層キャパシタが提案されている。
【0003】
図9は、従来の電気二重層キャパシタ100の側面断面図である。
凹部113が形成されたセラミックス製の凹状容器102の底面には、金属層111が設けてあり、金属層111の上面には正極電極106が接合している。金属層111は、凹状容器102を貫通して凹状容器102の底面の正極端子112に電気的に接続しており、このため、正極電極106は、金属層111を介して正極端子112に電気的に接続している。
また、封口板103は、金属製の接合金属層108により凹部113の開口部に接合し、凹部113を封口している。
封口板103の下側の面には、集電体として機能する金属層115が形成されており、金属層115の表面には負極電極105が接合している。
凹状容器102の側面には、接合金属層108と凹状容器102の底面の負極端子110を接続する金属層109が形成されている。
そして、負極電極105は、金属層115、接合金属層108、金属層109を介して負極端子110に電気的に接続している。
【0004】
負極電極105と正極電極106の間には、これらの短絡を防ぐセパレータ107が設けられており、また、これら負極電極105、正極電極106、セパレータ107には、電解質が含浸されている。
そして、電気二重層キャパシタ100は、負極端子110、正極端子112に電圧を加えると蓄電し、当該蓄電した電荷を放電して時計機能の維持やメモリなどに電力を供給する。
【0005】
このような、電気二重層キャパシタ100では、負極電極105や正極電極106に含浸している電解質が、凹状容器102に形成された金属層111や封口板103に形成された金属層115と常時接触している状態である。
このため、金属層111、115が常時接触している電解質により影響を受けることで電気二重層キャパシタ1の性能が低下する可能性がある。
【0006】
このような電解質の常時接触による影響を無くすためには、特定の材料の使用や処理が必要になっていた。
例えば、凹部113の金属層111は、下地となるタングステンの層を形成し、その上にアルミニウムの層を形成している。
これは、次の理由による。即ち、金属層111は、集電体として使用するため、電圧がかかっても電解質に溶け出さない物質で形成する必要がある。正極の集電体の場合、このような物質として、アルミニウムがあるが、アルミニウムは凹状容器102の焼成温度(1000[℃]以上が好ましい)に耐えることができない。
そこで、高温に耐えうるタングステンで下地を作っておき、凹状容器102の焼成後、タングステンの下地の上にアルミニウムの層を形成することにしたものである。
しかし、アルミニウムの薄膜を凹部113の底面に形成するには、真空蒸着などのドライプロセスを用いる必要があり、コストが高くなるという問題があった。
【0007】
このような問題は電気二重層キャパシタだけでなく、非水電解質電池など、他の種類の電子部品を構成する電気化学セルについても同様な問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−216952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、電解質が電極を介して常時金属層に接触しない電気化学セル等の電子部品を提供すること、及び、電気化学セル等の電子部品の生産性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)請求項1に記載の発明では、凹状容器と封口板とから構成され、空洞部を有する容器と、前記空洞部内における前記凹状容器の底に形成された第1の金属層と、前記空洞部内に配設された第1の電極と、炭素を導電材とする樹脂によって形成され、前記第1の電極を前記第1の金属層に電気的に接続すると共に、前記第1の電極を前記凹状容器の内側底面に配設する第1の集電体と、前記封口板の前記空洞部側に形成された第2の金属層と、前記第1の電極と所定距離をおいて前記空洞部内に配設された第2の電極と、炭素を導電材とする樹脂によって形成され、前記第2の電極を前記第2の金属層に電気的に接続すると共に、前記第2の電極を前記封口板に配設する第2の集電体と、前記第1の電極、及び第2の電極に含浸した電解質と、を具備したことを特徴とする電子部品を提供する。
(2)請求項2記載の発明では、前記封口板は、内側の底面に第2の凹部が形成され、前記第2の金属層及び前記第2の集電体は、前記第2の凹部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品を提供する。
(3)請求項3記載の発明では、前記封口板は、前記凹状容器に接続される外周平板部と、中央平板部と、前記外周平板部の内周と前記中央平板部の外周を連続的に接続する環状溝部から構成され、前記第2の金属層と前記集電体及び前記第2の電極は、前記中央平板部に配設されている、ことを特徴とする請求項1に記載の電子部品を提供する。
(4)請求項4記載の発明では、前記第2の金属層と前記集電体及び前記第2の電極は、前記環状溝部と前記中央平板部とで形成される凹み内に配設されている、ことを特徴とする請求項3に記載の電子部品を提供する。
(5)請求項5記載の発明では、前記凹状容器は、内側の底面に第1の凹部が形成され、前記第1の金属層及び前記第1の集電体は、前記第1の凹部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品を提供する。
(6)請求項6記載の発明では、前記第1の集電体は、炭素を導電材とする部材が層状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのうちの何れか1の請求項に記載の電子部品を提供する。
(7)請求項7記載の発明では、請求項1から請求項6までのうちの何れか1つの請求項に記載の電子部品と、前記電子部品に蓄電する蓄電手段と、所定の機能を発揮する他の電子部品と、前記蓄電した電荷を用いて前記他の電子部品に電力を供給する電力供給手段と、を具備したことを特徴とする電子装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、凹部底面及び封口板に炭素を主成分とする集電体により電極を固着しているので、電解質が電極を介して常時金属層に接触することを回避すると共に、電気化学セル等の電子部品の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る電気二重層キャパシタを説明するための図である。
【図2】実施形態における封口板に集電体を形成する方法を説明するための図である。
【図3】実施形態における集電体の形成方法を説明するための図である。
【図4】実施形態における集電体の形成方法を説明するための図である。
【図5】凹状容器側の各変形例を説明するための図である。
【図6】封口板側の変形例を説明するための図である。
【図7】封口板側の他の変形例を説明するための図である。
【図8】凹状容器の貫通電極に対する変形例を説明するための図である。
【図9】従来の電気二重層キャパシタを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)実施形態の概要
図1(a)に示したように、電気二重層キャパシタ1は凹状容器2と、封口板3を備えている。
凹状容器2は、凹部13を有しており、当該凹部13の底部には底面に金属層11(第1の金属層)を有する貯留部17(第1の凹部)が形成されている。金属層11は、タングステンで構成されており、凹状容器2の焼成温度に耐えることができる。金属層11の上には、炭素を導電材とする集電体18a(第1の集電体)が形成され、その上に正極として使用される電極6(第1の電極)が固定されている。
一方、封口板3は、コバール等の合金が使用され、図1(c)に示すように、中央部が湾曲することで外側に凹んだ貯留部310(第2の凹部)が形成されている。貯留部310の凹み側には、封口板3の全面に渡ってニッケルメッキによる金属層15(第2の金属層)が形成され、金属層15の上面(図面では下側)には炭素を導電材とする集電体18b(第2の集電体)が形成され、その上面に負極として使用される電極5(第2の電極)が固定されている。
電極6と電極5の間には短絡防止のためのセパレータ7が配置され、電極6、5とセパレータ7には電解質が含浸されている。
【0014】
集電体18aと電極6、集電体18bと電極5は、次のようにして形成される。
凹状容器2を焼成後、炭素を導電材とする導電ペースト(樹脂)を貯留部17に供給する。
一方、貯留部310を形成した封口板3に金属層15を形成した後、炭素を導電材とする導電ペースト(樹脂)を貯留部310に供給する。
導電ペーストは、固化後に所定の厚さ、例えば10〜40μmとなるように貯留部17、310に供給することで、電極6、5に含浸させた電解質が金属層11、金属層15と常時接触することが回避される。
【0015】
貯留部17、310を設けたのは、導電ペーストが液状であるため、周囲に漏れて短絡の原因とならないように貯留部17、貯留部310に集めるためである。
その後、導電ペーストを加熱して固化させることで集電体18a、18bが形成される。その際に導電ペーストの上に電極6、電極5を置いて加熱することで、電極6が固着された集電体18a、電極5が固着された集電体18bが形成される。
【0016】
このように、導電ペーストを加熱、固化させて集電体18a、18bを形成することで、電極6、5を強固に固着させ、電極6、5と集電体18a、18bとの電気的接続、及び機械的接続を保つことができる。
特に、電気二重層キャパシタ1の使用中における充放電の繰り返しや耐電圧以上の電圧印加により、電極5、6に含浸させた電解液が分解して気泡が生じることで、電極5、6が膨張(接着面と平行な方向の膨張)することを抑制することができる。これにより、電極6、5が集電体18a、18bから剥がれたり、膨張により電極6、5が他の部分に接触することが防止される。
また、製造時において、導電ペーストの上に電極6を置く場合、導電ペーストの表面張力によって電極6が貯留部17の中央に位置決めされるため、電極6の位置決めが簡単となり、これによっても生産性が向上する。
【0017】
さらに、集電体として使用できる物質としてアルミニウムのほかに炭素があるが、本実施形態のように、電極6(陽極)側の金属層11の上に導電ペーストを供給して加熱すると集電体18aが形成されるため、タングステンで構成された金属層11に対してアルミニウムを真空蒸着するなどのドライプロセスを経る必要がない。そのため、製造コストの低減や製造プロセスの簡略化などを図り、電気二重層キャパシタ1の生産性を高めることができる。
【0018】
導電ペーストの粘度は、約400dPa・sであるが、作業性が悪いので、シンナー等の低沸点溶媒を用いて希釈することができる。この希釈によって、粘度は、約40dPa・s以下に低減できる。この様に、作業性を考え、導電ペーストの粘度を下げた場合、溶剤を伴って導電性のペーストが壁面を這い上がり、這い上がった状態で、乾燥固化させた場合に、壁面が導電性の状態にあり、電極を積層した場合に、ショートする危険性があったが、それを回避する効果がある。
【0019】
また、CVD法により、不定形または、結晶性の炭素質の被膜を形成することが可能である。
例えば、気相成長炭素の種となるニッケル系触媒粒子を含む分散溶液を塗布し、溶媒を乾燥させた後、管状炉内で600℃以上1600℃以下の温度に加熱し、メタンやアセチレンやその他の炭化水素を含むガスを還元雰囲気下で流入することで、形成が可能である。
また、この時、成型する気相成長炭素が単層、または、複層のチューブ状の炭素であっても良い。さらに、炭素質の被覆を加熱処理によって、結晶化を促進したり、更に、賦活処理をすることで、比表面積を増やすことが可能である。この時、電極6と集電体18aを一体に形成することが出来るので、作業性が高まる。
【0020】
(2)実施形態の詳細
本実施形態の電子部品を構成する電気化学セルについて、電気二重層キャパシタを例に図面を参照して説明する。
図1(a)は、実施形態に係る電気二重層キャパシタ1の側面断面図で、図1(b)は平面図、図1(c)は電極5を取り付けた封口板3の断面斜視図である。
電気二重層キャパシタ1は、図1(b)に示すように、直方体形状を有しており、大きさは、例えば、高さが1[mm]以下、縦が2.5[mm]程度、横が3.0[mm]程度の直方体形状を有している。
なお、電気二重層キャパシタ1を含め他電気化学セルの外形は、上面からみた形状として円形や楕円形とすることも可能である。この場合、方形として説明する凹部13や電極5、6、セパレータ7等の各部も円形や楕円形としてもよく、方形でもよい。
【0021】
電気二重層キャパシタ1は、凹部13を有する凹状容器2、下側の面に金属層15が形成された封口板3(厚さは、0.1[mm]程度)、負極として使用される電極5、正極として使用される電極6、セパレータ7、接合金属層8、金属層11、集電体18a、貫通電極21、貫通電極22、端子10、端子12、及び、電極5、6及びセパレータ7に含浸させた電解質(図示せず)などを用いて構成されている。
端子10、12は、表面実装のための端子であり、以下では、端子10、12の側を下方向、封口板3の側を上方向とする。
なお、図1(a)では、部材の接合関係が分かりやすいように、電極5、セパレータ7、電極6の間に間隙を図示しているが、凹部13にこれらの部材を隙間なく詰め込んでもよい。
【0022】
凹状容器2は、例えば、アルミナを用いたセラミックスで構成されており、グリーンシートと呼ばれる柔軟性を有するセラミックスのシート材41〜45を複数枚重ねて焼成して一体化することにより形成される。焼成後の各シートの厚みは100〜300μmとすることが出来る。また、同一の厚みであると、シートを用意する際の管理上の手間が減り望ましい。図1(a)では、シート材41〜45の接合部を破線で示してある。
グリーンシートには、凹部13と貯留部17に対応する開口部と貫通電極21、22を設置する貫通孔に対応する孔が形成されており、これらグリーンシートを厚さ方向に積層して焼成することにより、凹部13と貫通電極21、22用の貫通孔を有する凹状容器2が形成される。ここで、貫通電極の直径は、約100μmとすることが出来る。また、各層に形成された貫通電極21と貫通電極22が、グリーンシートを積層する際に、ずれた際の誤差を吸収する目的で、各グリーンシートの上面に予めタングステン(W)製の導体印刷を施すことができる。
【0023】
より詳細には、シート材41、42には、貫通電極21、22の形状に対応する貫通孔が形成されており、シート材43には、貫通電極21の形状に対応する貫通孔と貯留部17の形状に対応する開口部が形成されており、シート材44〜45には、貫通電極21の形状に対応する貫通孔と凹部13の形状に対応する開口部が形成されている。
【0024】
凹部13は、上方から見ると矩形の断面を有しており、凹部13の底部には、底面に金属層11が形成された凹型形状の貯留部17が形成されている。
金属層11は、貯留部17の底面に対応するシート材42の表面に導体印刷し、凹状容器2を焼成することにより形成される。
ここでは、金属層11の大きさを必要最低限としてコストを低減している。なお、貯留部17の底面全体に金属層11を形成してもよい。
導体印刷は、例えば、タングステンなどの耐食性があり、凹状容器2の焼成に耐えうる高融点の金属材料を含むインキでスクリーン印刷することにより行われる。
【0025】
タングステンは、融点が高く、また、酸化しにくく、更に、セラミックス面との適度な密着極度を有し、焼成後も実用的な電気抵抗を有するため、凹部13に形成する電極として適している。
しかし、タングステンを正極の集電体として使用する場合、電極6に含浸させた電解質に常時接した状態となるため、電圧を印加すると電解質中に電気化学的に溶け出す。
そこで、当該溶出を防止するために、少なくとも電解質が含浸される電極6と常時接触する全面(本実施形態では、貯留部17の全面)を導電ペーストによる集電体18aで被覆している。
【0026】
集電体18aの厚さは、電極6に含浸した電解質の影響を金属層11が影響を受けないだけの所定の厚さに設定されており、導電ペーストを塗布する際に調整される。
具体的には、集電体18aの所定の厚さは、通常5〜100μmの範囲で設定され、好ましくは、10〜40μmに設定される。
この集電体18aの塗布の厚みは、5μm以上の厚さとすることで金属層11が電極に含浸した電解質で影響を受けることを回避できるが、塗布の厚みが薄い場合(10μm未満)には、電気抵抗にバラツキが多く、概して抵抗が高くなりやすいので、10μm以上に設定される。また、厚すぎる場合にも全体の電気抵抗が高くなると共に、電気二重層キャパシタ1の厚みに影響するため、100μm以下、好ましくは40μm以下に設定されている。
導電ペーストは、2回以上の複数回塗布することが好ましく、最後の塗布により設定された集電体18aの所定厚さに調整される。このように導電ペーストを複数回塗布することで、導電ペースト中の溶媒が乾燥する際にできる「す穴」を2回目以降のペーストの塗布によって塞ぐことができ、全体の「す穴」の量を減らすことができる。
導電ペーストの膜塗布の方法は、転写、スクリーン印刷、インクジェット、ディスペンサーによる塗布、ポッディング等による。
【0027】
導電ペーストは、貯留部17の底の全面に塗布することで、自身の表面張力によって内部側面の壁面にそって凹形のメニスカス形状に形成されるものの、液状のペーストの中心部の厚みを平坦化する効果もある。
電気化学的に、電子は、導体の鋭利な先端部に集中する傾向がある。電気化学デバイスを充放電する際に、電子が、この導体の鋭利な先端部に集中すると、その先端部の周囲にのみ、電力が集中し、劣化が促進されることが危惧される。
そこで、本発明のペーストを塗布することで、鋭利部位を無くし、電子の集中を無くすことで、電極の劣化を避けることが期待できる。
【0028】
金属層11の上には、導電ペーストを固化した集電体18aが形成されている。
金属層11は、厚みを有するが、導電ペーストにより金属層11の厚みが均され、表面が平らな集電体18aが得られる。
導電ペーストは、炭素材料と溶媒を含んだフェノール系樹脂をペースト状に加工したものを用いる。炭素材料は、導電性を付与するために添加されている。炭素材料としては、黒鉛の粉末、無定形炭素(カーボンブラック)の何れか、あるいは、両方を混合して用いることができる。
加熱により溶媒を乾燥させてフェノール系樹脂成分を重合(固化)させると、フェノール系の樹脂をバインダーとし、炭素を導電体とする樹脂製の集電体18aが形成される。
【0029】
ここで、一般に負極の集電体の場合、ニッケル、銅、真鍮、亜鉛、スズ、金、ステンレス、タングステン、アルミニウムなど、多くの金属を用いることができるが、正極の集電体は、電解質に集電体が溶け出さないようにするために、アルミニウム、チタン、ニオブなどのプラグメタルと呼ばれる金属を用いる必要がある。正極の集電体としては、これら金属以外では、炭素を用いることができ、本実施形態では、炭素材を含む導電ペーストを用いることにした。導電ペーストを用いると、プラグメタルの薄膜を真空蒸着などで形成する必要がないため、工程が大幅に簡略化される。
【0030】
導電ペーストは、カーボン類の中では結晶性の高い黒鉛とカーボン類の中でも無定形のカーボンブラックの2種類を混合し、更に、フェノール系樹脂を主成分とする結着剤を含有する。このフェノール系樹脂には、ホルムアルデヒドを代表とするアルデヒドとフェノールを含むその誘導体を用いることができる。また、フェノール系樹脂以外にも、水ガラスやエポキシ等を用いることができる。
【0031】
貯留部17は、凹部13の底部の中央に形成され、貯留部17の深さは、電極6の厚さよりも小さく設定されており、貯留部17の内周は、電極6の外周より導電ペーストのメニスカス19a(後述)の程度大きく設定されている。貯留部17は、導電ペーストが固化する前に飛び散ったり、はみ出したりして短絡の原因となるのを防ぐために設けられている。
貯留部17は、絶縁性のシート材42、43で形成された導電ペーストを保持するための溜め部として機能している。
【0032】
ここで、メニスカス19aは、導電ペーストを貯留部17に貯留した際に、表面張力によって導電ペーストの表面に生じる凹面である。
電気二重層キャパシタ1を製造する際に、貯留部17に液体状の導電ペーストを貯留し、その表面に電極6を置くと、メニスカス19aによって電極6が貯留部17の中央に位置決めされる。
【0033】
その後、加熱して導電ペーストを固化すると、集電体18aが形成されると共に電極6が貯留部17の中央に強固に固定される。さらに、電極6が導電ペーストの表面張力によって形成される凹面に固定されるため、電極6を容易かつ正確に位置決めすることができる。
このように、本実施形態では、正極集電体18aの形成に真空蒸着などのドライプロセスが必要ないほか、電極6の位置決めも容易なため、電気二重層キャパシタ1の製造コストの低減と生産性の向上を図ることができる。
【0034】
電極6は、活性炭を主成分とする電極活物質をシート状に形成して矩形に切断することにより形成されており、例えば、天然素材ではヤシガラ、人造材料では、石炭ピッチ、石油ピッチやフェノール系樹脂の炭化物をそれぞれ水蒸気や化学薬品または電気学的に賦活したものが用いられる。
【0035】
凹状容器2の凹部13の下には、先に説明したように孔の空いたシート材41、42を積層することにより、凹部13の底面と凹状容器2の底面に開口部を有する貫通孔が形成されている。
そして、当該貫通孔には、金属層11と端子12を電気的に接続する円柱形状の貫通電極22が形成されている。
貫通電極22の外径と貫通孔の内径は同じに設定されており、貫通電極22と貫通孔の内壁の間には間隙が生じないようになっている。貫通電極は、VIAとも呼ばれる。
【0036】
貫通電極22の直径は、0.1〜0.3[mm]程度である。また、各シート材の層間に、中間電極28が導体印刷により設けられている。中間電極28により、例えば、貫通孔の精度が十分でなかったり、あるいは、シート材の積層がずれた場合であっても、確実に貫通電極22を形成することができる。なお、後述する貫通電極21の構成も同様である。
【0037】
貫通電極22は、この貫通孔にタングステンなどの金属粉末を主成分とする金属ペーストを充填して焼結させたり、カーボン等の導電ペーストを注入して固化させたり、あるいは、金属製の棒材や板材を挿入することにより形成される。金属製の棒材としては、例えば、アルミニウム、ステンレススチール、タングステン、ニッケル、銀、金、あるいは、炭素を含む導電性樹脂などを用いることができる。電極6は、金属層11、貫通電極22を介して端子12に電気的に接続している。
【0038】
凹部13の開口部の端部には、封口板3と凹状容器2を接合する金属層である金属層9と接合金属層8が形成されている。
接合金属層8は、ニッケルで形成することができ、開口部の端部の全周に形成された金属層9(メタライズ層)の上に形成することができる。また、金属層9(メタライズ層)にろう材(ニッケル、金、銀、銀−銅など)の層を介して、コバール等で出来たシールリングを取り付け、その上に、接合金属層8を形成することもできる。接合金属層8は、封口板3と凹状容器2の間の気密性を確保するためのものである。
【0039】
金属層9(メタライズ層)は、タングステンの導体印刷で形成し、セラミックスの焼成時に形成することができ、ロウ材を介して、コバール(Co:17、Ni:29、Fe:54の比率の合金)で構成されたシールリングを金属層9(メタライズ層)の上に配置し、コバール製の金属リングを凹状容器2の端部に設置してロウ材を溶融し溶着させることにより形成され、その後、接合金属層8、例えば、純ニッケル、やリンを添加したニッケル、さらに、ホウ素を添加したニッケル等をメッキ等によって形成することができる。
後述するように、金属層15が形成された封口板3を凹部13の開口部に設置して加熱すると、接合金属層8が溶けて金属層15と融着し、凹部13が封口板3により封口される。
【0040】
凹状容器2には、孔をあけたシート材41〜45を積層することにより、凹部13を囲む側壁内に、凹部13の開口部の端部と凹状容器2の底面に開口部を有する貫通孔が形成されている。
そして、当該貫通孔には、接合金属層8と端子10を電気的に接続する円柱形状の貫通電極21が形成されている。
貫通電極21の外径と貫通孔の内径は同じに設定されており、貫通電極21と貫通孔の内壁の間には間隙が生じないようになっている。
貫通電極21の材質や形成方法、及び中間電極28を用いて接合することなどは貫通電極22と同様である。
【0041】
端子10、12は、タングステンを含むインキなどで導体印刷して焼成した後、その表面に金やニッケルなどをメッキして形成されている。更に、ニッケルメッキの上に、防錆のため金やスズ等の金属をメッキすることが出来る。
メッキには、電解メッキ、無電解メッキなどがあり、また、真空蒸着などの気相法によって形成してもよい。
これにより、端子10、12の高いハンダ濡れ性が確保され、電気二重層キャパシタ1を基板に良好に表面実装することができる。
なお、本実施形態では、端子10、12を凹状容器2の外側底面部に設けたが、外側側面部に形成したり、あるいは、外側底面から側面に連続して形成してもよい。
端子10、12は、貫通孔に貫通電極21、22を設置した後に形成する。
また、端子10、12を凹状容器2の底部の端部まで形成しないようにすると、大判のシート材で電気二重層キャパシタ1を同時に多数形成する場合に、これらを切り分けするときに端子10、12の剥がれなどを防止することができる。
【0042】
封口板3は、コバールなどで構成された金属部材である。コバールは、セラミックスと熱膨張率がおおよそ等しいため、リフロー時に電気二重層キャパシタ1を加熱した場合に封口板3と凹状容器2の間に発生する応力を抑制することができる。
封口板3は、図1(b)、(c)に示されるように、電極5に対応する中央部の領域において、両平面が共に外側(一方の側)に湾曲することで、貯留部310である凹みが形成され、この貯留部310(凹み)内に電極5が収容及び固定される。
この貯留部310は、凹部13に形成した貯留部17と同様に、導電ペーストが固化する前に飛び散ったり、はみ出したりして短絡の原因となるのを防ぐために設けられている。
【0043】
貯留部310は、電極5の形状よりも、導電ペーストのメニスカス19b程度大きく設定された四角形状に形成されている。貯留部310の凹みは封口板3をプレス加工することで形成される。
そして、この貯留部310による凹みを含めて、封口板3の下側の面全体にニッケルメッキによる金属層15が形成されている。なお、この金属層15は、封口板3を接合金属層8に良好に接合するために形成されるものであるため、必ずしも封口板3の全面に渡り形成する必要はなく、少なくとも環状の金属層8に対応する部分、すなわち、封口板3の外周側に所定幅で環状に金属層15を形成するようにしてもよい。
金属層15は、金属をメッキによって、形成しても良い。湿式のメッキのほか、スパッタリングや溶射などの乾式プロセスを用いることができる。
メッキ材質としては、ニッケル(Ni),銅(Cu),スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、リン(P),ホウ素(B)の何れか、または同時に含むものが良く、例えば、銅とスズの合金を用いることができる。また、表面の下面で、濃度勾配を持っていても良い。この時、銅とスズの原子比は、Cu:Sn=80:20〜1:99の範囲にすることができる。特に、Cu:Su比が、55:45〜1:99が望ましい。
原子の濃度勾配を持たせる場合、最下面(封口板に接する側)にニッケルのリッチ層を形成し、その後、銅のリッチ層、続いて、スズのリッチ層(Sn)、さらに、亜鉛(Zn)と濃度勾配を伴って形成することができる。
例えば、ニッケル(Ni)と亜鉛(Zn)の合金メッキや、スズ(Sn)と亜鉛(Zn)の合金めっきを用いることができる。
その際、メッキは帯状の金属(フープ材)を連続でメッキする方法や、帯状の金属(フープ材)を打ち抜いた後の金属材料の個片をバレル等の装置を用いて、バッチ処理することも出来る。
メッキ層の厚さは、0.2μm以上が好ましく、0.6μm以上がさらに好ましい。また、バレル等でメッキする場合は、ピンホール等が生成する場合もあり、メッキの平均膜厚は、5μm以上が好ましい。ただし、10μm以上のメッキを用いてもコストが上がるだけで、溶着する際に改善の効果は見られない。
【0044】
封口板3の、貯留部310による凹み全体には、導電ペーストを固化した集電体18bが形成され、この集電体18bにより、貯留部310内に、電極活物質で構成された電極5が強固に固着されている。
集電体18bは、集電体18aを構成する導電ペーストと同じ導電ペーストを使用して、同様の厚さで、同様に形成されると共に、電極5を固着する。
すなわち、貯留部310の底面(凹み部分)全面に所定の厚さで導電ペーストを塗布し、その表面に電極5を置くことで、電極5はメニスカス19bによって貯留部310の中央部に位置決めされる。その後、加熱処理により導電ペーストを固化すると、集電体18bが形成されると共に電極5が貯留部310の中央に強固に固定される。さらに、電極5が導電ペーストの表面張力によって形成される凹面に固定されるため、電極5を容易かつ正確に位置決めすることができる。
また導電ペースト(集電体18b)を上記した所定の厚さとすることで、電極5に含浸した電解質が金属層15に影響を与えることが回避される。
【0045】
集電体18bにより電極5を貯留部310に固着した封口板3は、その金属層15が接合金属層8にろう付けされることで、封口板3が凹部13の開口部に物理的、及び電気的に接合している。
ろう付けは、封口板3を加圧しながら加熱することにより溶解し、封口板3と凹状容器2を接合する。
より具体的には、ローラ電極を封口板3の縁部に適当な圧力で接触させ、通電しながら回転走行させるパラレルシーム溶接を用いることができる。接触抵抗により接合金属層8が加熱され、加圧と加熱が行われる。パラレルシーム溶接以外にも、レーザーによる加熱溶接も可能である。
【0046】
パラレルシーム溶接を行う場合、接合金属層8と封口板3の相性がよい材料を選択するのが望ましく、例えば、接合金属層8に電解ニッケル、無電解ニッケルを用いた場合は、封口板3は、コバールに電解ニッケル、または無電解ニッケルを施したものを用いる。
または、その逆に、接合金属層8に電解ニッケルを用いた場合は、封口板3は、コバールに無電解ニッケルを施したものを用いる。これにより、必要以上に溶接パワーを上げなくて済む。更に、無電解ニッケルを行う場合は、各種還元剤を用いることができる。例えば、ジメチルアミンボラン、次亜リン酸、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウムなどが挙げられる。ここで、ろう材として、メッキに用いたニッケルを溶融させる際、ニッケルの融点が低い方が望ましい。そこで、メッキの際の還元剤には次亜リン酸を用いることで、仕上がったメッキの化学組成が、「Ni:90%−96%、P:4%−10%」である場合に、ホウ素を含有する場合に比較して、融点が低いので、ろう付けに適する。
また、接合金属層8のシールリングをセラミックスのメタライズ層に固着させるためには、金ろう、銀ろうなどのろう材やハンダ材を用いることも可能である。
【0047】
このように封口板3の金属層15が接合金属層8にろう付けされることで、電極5は、集電体18b、金属層15、接合金属層8、貫通電極21を介して端子10に電気的に接続する。
【0048】
電極5、6は、凹部13と封口板3により構成される空洞部内で対面しており、電極5、6の間には、電極5、6の接触による短絡を防止するためのセパレータ7が設置されている。
セパレータ7の材質としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製樹脂に多くの気孔を伴うマイクロポーラスフィルムを用いたり、さらに、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、変性PEEK、などの耐熱性樹脂などの表面に親水性を付与した材料からなる不織布、またはガラス繊維を用いることができる。またセルロース系のセパレータを用いてもよい。
セパレータ7は、電極5と電極6との短絡防止機能を備える他、より多くの電解質を含ませておく機能、すなわち、電解質の高い保液機能を備えていることが好ましい。本実施形のセパレータ7としては、PTFEを使用するが、保液機能の観点からはガラス繊維が最も望ましい。
【0049】
また、セパレータ7の形状としては、外周部が上側、又は下側に湾曲している形状としてもよい。この場合のセパレータ7は、湾曲した外周部の内側側面が電極5、又は電極6の側面と対向するように配置される。これにより、電極5と電極6との接触を、より確実に回避することができる。
【0050】
凹部13と封口板3より構成される空洞部内には電解質が、、電極5、6、及びセパレータ7に含浸した状態で封入されている。
電解質は、例えば、PC(プロピレンカーボネート)やSL(スルホラン)などの非水溶媒に(CH3)・(CH4)3N・BF4などの支持塩を溶かした溶液で構成されている。このように本実施形態では支持塩として液体を用いるが、ゲル状や固体状の電解質を用いることも可能である。封止方法にも依存するが、電解質として、液体の溶媒を用いる場合は、沸点が200℃以上あることが望ましい。更に、封口時に印加された熱によって蒸気圧が上がらないことが望ましい。電解液中に沸点が100℃未満の低沸点の溶媒を添加することはできるが、少なくとも樹脂の融点における蒸気圧が0.2MPa−G以下が望ましい。電解液を注入する場合、電解液を凹部13に注液後、減圧や加熱や加圧を単独又は組み合わせることによって、電解質を電極5、6の細部にまで含浸させることができる。
【0051】
以上のように構成された電気二重層キャパシタ1を、端子10を負極、端子12を正極として基板に表面実装し、例えば、携帯電話のメモリやクロックのバックアップ電源として使用することができる。
この場合、携帯電話は、主電源の電池を装着すると同時に電気二重層キャパシタ1を充電しておき、電池交換時や主電源の電圧が低下した場合に、電気二重層キャパシタ1に蓄積された電荷を放電してメモリに電力を供給したり、クロック等の機能を保持する。
【0052】
次に、集電体18a、18bの形成と、電気二重層キャパシタ1の組み立て方法について説明する。
図2は、封口板3に集電体18bを形成する方法を説明するための図である。
まず、図2(a)に示すように、コバールを材料とする長方形の板をプレス加工することで貯留部310を備えた封口板3を形成する。そして、凹み側の全面にニッケルメッキを施して金属層15を形成する。
【0053】
そして、図2(b)に示すように、封口板3の凹んだ側を上に向け、貯留部310に集電体18bとなる導電ペーストを供給する。導電ペーストの供給量は、貯留部310の底面の全てを満たし、外周部にメニスカス19bが形成されると共に、上記した所定厚さとなるように設定される。
【0054】
次いで、図2(c)に示すように、集電体18bとなる導電ペーストの液面に電極5を置く。すると、導電ペーストのメニスカス19bにより、自動的に電極5が貯留部310の中央部に位置する。
その後、180[℃]程度の温度で加熱処理をすると、導電ペーストが固化して集電体18bとなり、電極5が貯留部310の中央部に強固に固定され、電極5が集電体18bで固定された封口板3側の部品が完成する。
【0055】
この封口板3側の部品が完成した後、凹状容器2にろう付けする前の段階で、電極5に電解質を含浸させる。
但し、電極5に予め電解質を含浸させておくのではなく、封口板3をろう付けするために凹状容器2にセットする段階で含浸するようにしてもよい。すなわち、凹状容器2の電極6に電解質を含浸させる際に、電極6とセパレータ7の含浸量分だけでなく、電極5用の電解質分を含めて凹部13に注入(電解質が凹部と電極6間に満たされた状態)しておく。そして、封口板3側の部品を凹状容器2にセットすることで、電解質が毛細管現象により電極5に含浸するようにしてもよい。
【0056】
なお、大きなコバールの板材に1度のプレス加工で複数の貯留部310を形成し、その後封口板3のサイズに切断することで複数の封口板3を一度に製造するようにしてもよい。
さらに、複数プレス成形した貯留部310に金属層15を形成した後に切断してもよい。
また、複数プレス成形した貯留部310に金属層15を形成し、各貯留部310に導電ペーストの供給と電極5を配置して加熱処理をした後に、各個別の封口板3に切断するようにしてもよい。
【0057】
図3、図4の各図は、集電体18aの形成方法を説明するための図である。
まず、図3(a)に示したように、接合金属層8、金属層9、貫通電極21、22、金属層11、端子10、12が形成された凹状容器2を用意する。
そして、貯留部17に集電体18aとなる導電ペーストを供給する。導電ペーストの供給量は、貯留部17の底面の全てを満たし、メニスカス19aが形成される程度に設定されている。
【0058】
図3(b)は、貯留部17に導電ペーストを供給する前に凹状容器2を上方から見た図である。この図3(b)に示したように、貯留部17の底部には、金属層11が円形に形成されている。なお、金属層11の形状は矩形など任意でよい。
図3(c)は、凹状容器2に導電ペーストを供給したところを上方から見た図である。凹状容器2の中央に集電体18aとなる導電ペーストが貯留されている。
次に、図4(a)に示したように、集電体18aとなる導電ペーストの液面に電極6を置く。すると、導電ペーストのメニスカス19aによって電極6が貯留部17の中央部に位置する。
そして、180[℃]程度の温度に加熱すると、導電ペーストが固化して集電体18aとなり、電極6が貯留部17の中央部に固定される。
【0059】
次に、図4(b)に示すように、電極6の上にセパレータ7を置き、凹部13内に電解質を供給することで、電極6とセパレータ7に電解質を含浸させる。
そして、図4(c)に示すように、図2で説明した封口板3側の部品を、電極5が凹部13側となるようにして、凹部13の開口部に載せ、封口板3側の金属層15と凹状容器2側の接合金属層8とをろう付けすることで、電気二重層キャパシタ1が完成する。
【0060】
なお、集電体18a、18bを形成する場合、導電ペーストを貯留部17、貯留部310に供給して固化させる工程を複数回行って(即ち、複数回に分けて塗布することで)、集電体18a、18bを層状に形成することもできる。
この場合、貯留部17、貯留部310に導電ペーストを供給して加熱して固化し、その上に更に導電ペーストを供給して加熱して固化する工程を、最上層の下の層まで繰り返す。
そして、最上の層を形成する際は、最上層となる導電ペーストを供給して、その液面に電極6、電極5を設置してから加熱して最上層の導電ペーストを固化させることで、最上層の導電ペーストにより電極6、電極5を固着させる。このようにして、集電体18a、18bは、層状に形成される。
【0061】
また、導電性のペーストの厚みが薄い場合においても、導電ペーストの厚みの差や分布によって、電気抵抗にバラツキが生じるため、程度は低いが、電力の集中が起こる。
そのため、導電ペーストを塗布する際は、上述したように設定した所定の厚さで均一な厚みに塗布することが重要である。塗布後、加熱することで、ペーストに含まれる硬化成分の主剤と固化の促進剤が化学反応によって、重合し、カーボン同士が接触することで電子導電性のネットワークを有する集電体18a、18bが形成される。
【0062】
そのとき、導電ペーストの粘度を下げる目的で、有機溶媒を加えることがあり、その溶媒が気化する際に気泡を生じ、直径数μm程度の小径な連通孔(す穴)を形成することがある。
または、導電ペーストの塗布時に巻き込んだ雰囲気の中のガス成分をも上述の小径な連通孔を形成することがある。この連通孔を介して、電解質が金属層11、15と接する場合、その連通孔から金属層11、15の金属が溶出し、活性炭の表面で、還元され金属となる場合がある。
このような金属の溶解と析出を回避するため、導電ペーストの塗布後、減圧することより、気泡を脱泡することで、前出の連通孔(す穴)の生成を抑制するという効果を得ることができる。
また、導電ペーストは複数回に分けて、設定した所定の厚さの均一な厚みに塗布することでも、前出の連通孔の生成を抑制するという効果を得ることができる。この時、少なくとも、2回以上に分けて塗布することがよく、より望ましくは、3回以上の塗布が望ましい。
【0063】
なお、互いに連続する封口板3側の部品(封口板3、金属層15、集電体18b、電極5)を複数形成した後に切断する場合について上述したが、同様に、電極6を集電体18aで固着した凹状容器2の連続体を形成した後に、各凹状容器2側の部品(図4(a)の状態)に切断するようにしてもよい。
さらに、切断前の各凹状容器2側の部品の各々にセパレーター7を配置すると共に電解質を含浸させ、その上に切断前の封口板3側の部品をかぶせ、封口板3側の金属層15と凹状容器2側の接合金属層8とをろう付けすることで、複数の電気二重層キャパシタ1の連続対を形成した後、個々の電気二重層キャパシタ1に切断するようにしてもよい。
【0064】
なお、以上説明した実施形態では、凹状容器2をアルミナを主成分とするセラミックスで構成したが、例えば、耐熱性樹脂、ガラス、ガラスセラミックス(結晶化ガラス)などの耐熱材料で構成することも可能である。
凹状容器2をガラスやガラスセラミックスで形成する場合は、低融点のガラスやガラスセラミックスに導体印刷により配線を施し、積層した後、低温で焼成する。
凹状容器2を樹脂で構成する場合、貫通電極21、22をインサート成型することも可能である。
【0065】
また、貫通電極22について、シート材42での直径をシート材41での直径よりも大きく設定すると、リフロー時に加熱して凹部13の圧力が上昇した場合であっても、当該圧力が貫通電極22に作用し、貫通電極22が凹状容器2から抜け落ちることを防止することができる。
同様に、貫通電極21について、シート材45での直径をシート材41〜44での直径よりも大きく設定することもできる。
【0066】
以上に説明した実施形態により、次のような効果を得ることができる。
(1)導電ペーストを固化させて集電体18a、集電体18bを形成することで、電極6、5に含浸させた電解質が、それぞれ金属層11、15に常時接触することが回避される。
(2)炭素材で正極の集電体18a、及び負極の集電体18bを形成することができる。
(3)導電ペーストを固化させて集電体18a、集電体18bを形成するため真空蒸着などのドライプロセスが必要ない。
(4)凹部13の底部に貯留部17を設けることにより、また、封口板3に貯留部310を設けることにより、液体状の導電ペーストを貯留することができ、導電ペーストのはみ出しなどを防止することができる。
(5)貯留した液体状の導電ペーストの上に電極6、電極5を置くことにより、電極6、電極5を導電ペーストの表面張力によって容易に位置決めすることができる。
(6)導電ペーストの固化により集電体18a、18bに電極6、5を強固に固着することができる。
(7)電気二重層キャパシタ1の使用中における電極6、5の膨張を抑制することができる。
(8)電極6、5が集電体18a、18bから剥がれたり、膨張により電極6、5が他の部分に接触することが防止される。
【0067】
以上、本実施形態における電気二重層キャパシタ1では、貯留部17、貯留部310の全面に導電ペーストを塗布して集電体18a、18bを形成する場合について説明したが、集電体18a、18bの形状や、塗布面の形状、塗布状態等について、次の変形例を採用するようにしてもよい。
以下、凹状容器2側の各変形例について図5を参照し、封口板3側の各変形例について図6、図7を参照して説明するが、説明した実施形態の例を含め、凹状容器2の何れか1つの形態と、封口板3の何れか1つの形態とを組み合わせることで電気二重層キャパシタ1を構成することができる。
【0068】
図5は、凹状容器2側における、凹状容器2と集電体18aの変形例について表したものである。
図5(a)に示した変形例では、凹部13に段部(貯留部17)を作らずに、凹部13の下部を貯留部とした例である。
この変形例では、貯留部17のための段部が不要になり、凹部13の一番底の面積を大きくすることができるため、電極6を大きくすることができる。また、説明した実施形態と同じサイズの電極6を用いる場合には、相対的に電気二重層キャパシタ1を小型化することができる。
【0069】
図5(b)に示した変形例では、図5(a)と同一形状の凹状容器2を用いるが、導電ペーストを凹部13の底面全体及び側面(図5(a)のメニスカス19a部分)にまで塗布するのではなく、面電極6を設置する領域に対応した領域(底の面)に限定して導電ペーストを塗布して集電体18aを形成した例である。この変形例の場合、底面全体と側面に塗布する場合に比べて導電ペーストの粘性を高くすることが好ましい。
なお、この変形例の場合、その製造方法として、凹部13の底部分に導電ペーストを塗布するのではなく、粘性の高い導電ペーストを所定厚さに電極6の底面に塗布し、この電極6を凹状容器2に配置するようにしてもよい。
【0070】
図6は、封口板3側における、封口板3と集電体18bに関する変形例について表したものである。なお、図6では、電気二重層キャパシタ1の断面を表す図1に合わせて、電極5を下向きにした状態をあらわしているが、封口板3に導電ペーストを塗布して電極5を固着する場合には、図2で説明したように電極5を上側にして形成を行う。
また、図6及び図7(後述)の各封口板3は、凹状容器2にろう付けされる面(外周部分の金属層15の面)と、電極5の集電体18bと反対側の面(開放面)との間隔が異なるため、各変形例における当該間隔に合わせて、使用する凹状容器2(実施例及び各変形例における凹状容器2)における凹部13の深さを調整する。
【0071】
説明した実施形態における封口板3は、盤面中央部全体をプレス加工により湾曲させることで形成したが、図6(a)に示す変形例では、電極5を取り付けない側の(電気二重層キャパシタ1の外周面をなす側)の面を平板状のままとし、電極5を取り付ける側のみに凹部を形成し貯留部310としたものである。この凹部の形成は、プレス加工、エッチング加工、レーザー加工、切削等によることができる。
この変形例によれば、電気二重層キャパシタ1の封口板3側の外面を平面状にすることができる。凹部による貯留部310の形成により、実施形態と同様に、メニスカス19bによる位置決め等の効果を得ることができる。
【0072】
図6(b)は、平板状の封口板3を使用し、導電ペーストを封口板3の底面全体に塗布するのではなく、図5(b)の例と同様に、電極5を設置する領域に対応した領域に限定して導電ペーストを塗布することで集電体18bを形成した例である。この変形例の場合においても、図5(b)の場合と同様に、導電ペーストの粘性を高くすることが好ましい。
また、この変形例の場合も図5(b)の場合と同様に、粘性の高い導電ペーストを所定厚さに電極5の底面に塗布し、この電極5を封口板3に配置するようにしてもよい。
【0073】
図6(c)は、図6(a)の変形例に比べて深さが浅い凹部を封口板3に形成したものである。この場合の凹部の深さは導電ペーストを塗布する厚さよりも浅くしてある。このため、導電ペーストを電極5に対応するの位置から大きくずれて塗布したり、はみ出したりすることが防止される。
なお、この変形例では、凹部の深さよりも導電ペーストの厚さが大きいため、導電ペーストの周面は、凹状のメニスカス19bではなく、表面張力により凸型の湾曲面が形成される。この凸型の湾曲面は、図5(b)、図6(b)の場合も同様である。
【0074】
図6(d)は、実施形態で説明した封口板3と同様にプレス加工によって板全体が外側(一方の側)に湾曲した凹部により貯留部310が形成されるが、この変形例の貯留部310は実施形態よりも凹みが深く形成されている。そして、導電ペーストは貯留部310の側面全体に塗布されることで、集電体18bも側面全体に形成されている。
なお、貯留部310の深さを図6(d)の変形例よりも更に深くすることで、電極5全体が貯留部310内に収容されるようにしてもよい。
図6(d)の変形例及び更にその変形例によれば、凹状容器2の厚さを薄くすることができ、シート材41〜を重ねる枚数を減らすことで製造効率を上げることができる。
【0075】
図6(e)は、実施形態における凹状容器2が凹部13と貯留部17の2段階の凹みになっているのと同様に、湾曲による2段階の凹みを封口板3に形成したものである。そして、導電ペーストは中央に形成した2段目の凹み内に塗布する。
この変形例によれば、1段目の凹みと2段目の凹みにより形成される段差部分がバネとして作用し、内部圧力の増加を吸収する等、この後図7で説明する変形例と同様の効果を得ることができる。
【0076】
図7は、バネ性を備えた封口板3と集電体18bに関する変形例について表したものである。この図7も図6と同様に、電気二重層キャパシタ1の断面を表す図1に合わせて、電極5を下向きにした状態をあらわしているが、封口板3に導電ペーストを塗布して電極5を固着する場合には、図2で説明したように電極5を上側にして形成を行う。
この変形例にかかる封口板3は、図7(a)、(b)に示されるように、外周平板部3a、環状溝部3b、及び、中央平板部3cとから構成されている。
外周平板部3aは凹状容器2にろう付けされる外周部である。
中央平板部3cは、集電体18bと電極5が配設される平板部であり、電極5の形状に対応して4隅にRが形成された長方形に構成されている。
環状溝部3bは、この外周平板部3aと連続して形成された4隅にRが形成された長方形上の環状溝であり、この環状溝部3bに連続して中央平板部3cが形成されている。環状溝部3bは、板材全体が湾曲し、一方の面が凹むことで環状の溝が形成され、反対側の面が凸面を形成することで、側断面が蛇腹形状に形成されている。
【0077】
環状溝部3bは、図7に示されるように、断面の外側が外周平板部3aに連続し、内側が中央平板部3cに連続している。すなわち、環状溝部3bは、外周平板部3aの内周と中央平板部3cの外周を連続的に接続している。
そして、溝側を構成する両側面の長さ(深さ)は、外側よりも内側の方が長く形成されることで、外周平板部3aと中央平板部3cとは同一平面ではなく異なる平面に位置するようになっている。
なお、外周平板部3a、中央平板部3cが同一平面上に位置するように環状溝部3bの溝を構成する両側面の深さ(長さ)を均しくするようにしてもよく、また、内側よりも外側のほうが長くなるように構成するようにしてもよい。
本変形例における封口板3は、原材料(後述する)となる板材をプレス加工することにより形成される。
【0078】
図7(a)に示した変形例では、形成した環状溝の反対側に金属層15を形成し、環状溝部3bの内側側面と中央平板部3cで形成される凹部を導電ペーストの貯留部として使用することで、図1で説明した実施形態や図6(a)、(c)〜(e)で説明した変形例と同様に、集電体18となる導電ペーストの塗布や電極5の配置に関する同様の効果をうることができる。
なお、図7(a)の例では、導電ペーストの外周面は環状溝部3bの内側の側面との表面張力によりメニスカス19bが形成される場合について表示しているが、図6(d)に示した変形例と同様に、外周面は環状溝部3bの内側の側面全体に(図7(a)の例よりも、より上部(図面下側)まで)導電ペーストを塗布するようにしてもよい。
【0079】
図7(b)に示した変形例では、図7(a)とは反対側の面、すなわち、形成した環状溝部3bにより溝が形成されている側に金属層15を形成し、図6(b)で説明した変形例と同様に、中央平板部3cに粘性の高い導電ペーストを塗布し、その上に電極5を配置したものである。
【0080】
本変形例の封口板3によれば、外周平板部3aと中央平板部3cの両者に延設する環状溝部3bが形成されることにより、この環状溝部3bがバネ構造として機能し、凹状容器2と封口板3で密封された電気二重層キャパシタ1内の圧力上昇を吸収したり、上昇した圧力がリフロー後に低下した場合に元の状態に復元したりすることができる。
このように、環状溝部3bによるバネ構造の採用により、電解質に低沸点溶媒を使用することや、高耐圧の電気二重層キャパシタ1を製造することが可能になる。
【0081】
すなわち、従来の電気二重層キャパシタ1では凹状容器2と封口板3を接続するリフローにおいて、鉛を含有しないハンダを用いる場合、260℃程度に加熱する必要があり、その際の温度上昇によっても沸点を超えない電解質を使用する必要があり、電解質の選択範囲を狭めていた。
また、電解質の耐電圧以上の電圧を印加すると、電極5、6に含浸している電解質の分解によって気泡が生じ、その気泡によって電極5、6が膨れる可能性がある。特に、電気二重層キャパシタ1の耐圧を2.6Vから3.3Vにすると電極5、6が膨張する可能性が高くなっていた。
このような問題に対して、本変形例における環状溝部3bによるバネ構造を採用した封口板3を使用することにより、電気二重層キャパシタ1内の圧力増加を吸収すると共に、膨張しようとする電極5、6を押さえつけることによって、低沸点溶媒を電解質に使用することができ、また耐圧を上げることが可能になる。
【0082】
ここで、本変形例による封口板3を採用することで使用可能な電解質(低沸点溶媒)としては、非プロトン性の極性溶媒を用いることが好ましく、中でも鎖状エステル、鎖状エーテル、グリコールエーテル、鎖状カーボネートがより好ましく、鎖状エステル、鎖状カーボネートが特に好ましい。
【0083】
鎖状エステルとしては、例えば、ギ酸メチル(HCOOCH3、MP:−99.8℃、BP:31.8℃)、ギ酸エチル(HCOOC2H5、MP:−80.5℃、BP:54.3℃)、ギ酸プロピル(HCOOC3H7、MP:−92.9℃、BP:81.3℃)、ギ酸nブチル(HCOO(CH2)3CH3、MP:−90℃、BP:106.8℃)、ギ酸イソブチル(HCOO(CH2)CH(CH3)2、MP:−95℃、BP:98℃)、ギ酸アミル(HCOO(CH2)4CH3、MP:−73.5℃、BP:130℃)等のギ酸エステル、酢酸メチル(H3CCOOCH3、MP:−98.5℃、BP:57.2℃)、酢酸エチル(H3CCOOC2H5、MP:−82.4℃、BP:77.1℃)、酢酸−n−プロピル(H3CCOO(CH2)2CH3、MP:−92.5℃、BP:101.6℃)、酢酸イソプロピル(H3CCOO(CH)(CH3)2、MP:−69.3℃、BP:89℃)、酢酸−n−ブチル(H3CCOO(CH2)3CH3、MP:−76.8℃、BP:126.5℃)、酢酸イソブチル(H3CCOO(CH2)CH(CH3)2、MP:−98.9℃、BP:118.3℃)、酢酸第二ブチル(H3CCOO(CH)(CH3)(CH2CH3)、MP:−99℃、BP:112.5℃)、酢酸−n−アミル(H3CCOO(CH2)4(CH3)、MP:−75℃、BP:147.6℃)、酢酸イソアミル(H3CCOO(CH2)2(CH)(CH3)2、MP:−78.5℃、BP:142.5℃)、酢酸メチルイソアミル(H3CCOO(CH2)(CH3)(CH2)(CH)(CH3)2、MP:−63.8℃、BP:146.3℃)、酢酸第二ヘキシル(H3CCOO(CH)(CH3)(CH2)3(CH3)、MP:−63.8℃、BP:146.3℃)等の酢酸エステル、プロピオン酸メチル(H3CCH2COO(CH3)、MP:−87℃、BP:79.7℃)、プロピオン酸エチル(H3CCH2COO(C2H5)、MP:−73.9℃、BP:99.1℃)、プロピオン酸−n−ブチル(H3CCH2COO(CH2)3CH3、MP:−89.55℃、BP:145.4℃)、プロピオン酸イソアミル(H3CCH2COO(CH2)2CH(CH3)2、MP:−73℃、BP:160.3℃)等のプロピオン酸エステル、酪酸メチル(H3C(CH2)2COO(CH3)、MP:−95℃、BP:102.3℃)、酪酸エチル(H3C(CH2)2COO(CH2)(CH3)、MP:−93.3℃、BP:121.3℃)、酪酸−n−ブチル(H3C(CH2)2COO(CH2)3(CH3)、MP:−91.5℃、BP:166.4℃)、酪酸イソアミル(H3C(CH2)2COO(CH2)2(CH)(CH3)2、MP:−73.2℃、BP:184.8℃)等の酪酸エステル等の脂肪族モノカルボン酸エステルが挙げられる。
鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(H5C2OCOOC2H5、MP:−43℃、BP:127℃)、エチルメチルカーボネート(H5C2OCOOCH3、MP:−55℃、BP:108℃)等が挙げられる。
【0084】
一方、バネ構造を有する本変形例の封口板3を形成する材料としては、耐食形合金として、スプロン(SPRON:登録商標)、ハステロイ(HASTELLOY:登録商標)、エルジロイ(Elgiloy:登録商標)、インコネル(Inconel:登録商標)、NI(ニッケル)を32.5wt%以上含む耐食合金などが使用可能である。
スプロンはコバルト−ニッケル合金、ハステロイはニッケル基にモリブデンやクロムを多く加えることで耐食性や耐熱性を高めた合金(50Ni−Mo−Cr−Fe)、エルジロイはコバルト,クロム,鉄,ニッケルを含む合金、インコネルはニッケルをベースとし、鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等の合金(72Ni−15Cr−Fe他)、である。
【0085】
また、Fe−Ni系合金として、42−アロイ(Fe−42Ni)、コバール(Fe−29Ni−17Co)、インバー(Fe−36Ni)、エリンバー(ニッケル36%、鉄52%、コバルト12%の合金)、NI(ニッケル)を29wt%以上含むFe−Ni系合金が使用可能である。
【0086】
以上説明した本変形例(図6(e)の変形を含む)における封口板3の材料については、いずれもバネ性を備えた材料として適しているが、とくに、スプロン、インバー、エリンバーがバネ性が優れているので好ましい。
【0087】
次に、凹状容器2の貫通電極21、22に対する変形例について、図8を参照して説明する。
図8(a)に示す変形例では、貫通電極21、22を有さず、凹状容器2の側面に形成した配線によって電極5、6を端子10、12に接続している。他の構成は、先に説明した実施形態と同様である。
金属層11は、貯留部17の底面からシート材42の表面に沿って凹状容器2の外部に貫通し、凹状容器2の側面を経て、凹状容器2の底面に形成された端子12に電気的に接続している。
【0088】
金属層11は、貯留部17の底面において必要最低限の大きさに形成されているが、底面全体に形成してもよい。なお、導電ペーストにより金属層11の厚み分が均され、平らな集電体18aが得られる。
金属層9は、凹状容器2の上端面で接合金属層8に接合すると共に、凹状容器2の側面を経て、凹状容器2の底面に形成された端子10に電気的に接続している。
凹状容器2の側面では、シート材41〜44の上面に補助電極が設けてあり、側面での電気的接続がより確実となるようにしている。
このように、貫通電極を用いない方式で凹状容器2を構成することもできる。
【0089】
図8(b)は、貫通電極を導電ペーストで形成した例である。
シート材42に、貯留部17の底面から金属層11に至る貫通孔を形成しておき、貯留部17に導電ペーストを注入すると、導電ペーストが貫通孔に侵入して固化し、貫通電極61が形成される。
また、導電ペーストの注入後、減圧することにより、貫通電極61の位置にペーストと一緒に巻き込んだ気泡を脱泡することができる。
集電体18aと貫通電極61は、一体形成されるため、電極6は、集電体18a、貫通電極61、金属層11を経由して端子12に電気的に接続する。
また、この例では、接合金属層8と端子10は、貫通電極21により電気的に接続している。
なお、図8(b)の変形例において、集電体18aと金属層11との電気的接続を貫通電極61で行うとともに、接合金属層8と端子10を貫通電極21ではなく、図8(a)と同様に金属層9で電気的に接続してもよい。
【0090】
以上説明した本実施形態及び各変形例では、電子部品を構成する電気化学セルとして、電気二重層キャパシタを例として説明したが、電子部品を非水電解質電池など、他の種類の電気化学セルとすることも可能である。
例えば、負極に、金属リチウムによって活性化された酸化ケイ素(50wt%)と導電助剤(40wt%)とポリアクリル酸系の結着剤(20wt%)で構成された電極シートを用い、正極に、リチウム−マンガン−酸素の元素がスピネル型の結晶構造を有する活物質(85wt%)と導電助剤(10wt%)とPTFE系の結着剤(5wt%)で構成された電極シートを用い、ガラス繊維で出来たセパレーターと、1MのLiN(SO2CF3)2をPC(プロピレンカーボネート)に溶解して電解液で構成される電池が可能である。ここで、正極と負極の大きさは、長さ1mm×幅1.5mm×厚み0.2mmとすることができる。
更に、上述の正極活物質以外にも、Li4Ti5O12、Li4Mn5O12、LiCoO2など用いることもできる。また、負極の活物質として、Li−Si−O、Li−ALなどを用いることもできる。
加えて、PCにLiBF4を1M溶解した電解液などを用いることで、リチウムイオン電池を構成することができる。この時、各活物資に、導電助剤や結着剤を併用できる。
【符号の説明】
【0091】
1 電気二重層キャパシタ
2 凹状容器
3 封口板
3a 外周平板部
3b 環状溝部
3c 中央平板部
310 貯留部
5 電極
6 電極
7 セパレータ
8 接合金属層
9 金属層
10 端子
11 金属層
12 端子
13 凹部
15 金属層
17 貯留部
18a、18b 集電体
19a、19b メニスカス
21、22 貫通電極
28 中間電極
41〜45 シート材
61 貫通電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状容器と封口板とから構成され、空洞部を有する容器と、
前記空洞部内における前記凹状容器の底に形成された第1の金属層と、
前記空洞部内に配設された第1の電極と、
炭素を導電材とする樹脂によって形成され、前記第1の電極を前記第1の金属層に電気的に接続すると共に、前記第1の電極を前記凹状容器の内側底面に配設する第1の集電体と、
前記封口板の前記空洞部側に形成された第2の金属層と、
前記第1の電極と所定距離をおいて前記空洞部内に配設された第2の電極と、
炭素を導電材とする樹脂によって形成され、前記第2の電極を前記第2の金属層に電気的に接続すると共に、前記第2の電極を前記封口板に配設する第2の集電体と、
前記第1の電極、及び第2の電極に含浸した電解質と、
を具備したことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記封口板は、内側の底面に第2の凹部が形成され、
前記第2の金属層及び前記第2の集電体は、前記第2の凹部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記封口板は、前記凹状容器に接続される外周平板部と、中央平板部と、前記外周平板部の内周と前記中央平板部の外周を連続的に接続する環状溝部から構成され、
前記第2の金属層と前記集電体及び前記第2の電極は、前記中央平板部に配設されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第2の金属層と前記集電体及び前記第2の電極は、前記環状溝部と前記中央平板部とで形成される凹み内に配設されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記凹状容器は、内側の底面に第1の凹部が形成され、
前記第1の金属層及び前記第1の集電体は、前記第1の凹部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項6】
前記第1の集電体は、炭素を導電材とする部材が層状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのうちの何れか1の請求項に記載の電子部品。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのうちの何れか1つの請求項に記載の電子部品と、
前記電子部品に蓄電する蓄電手段と、
所定の機能を発揮する他の電子部品と、
前記蓄電した電荷を用いて前記他の電子部品に電力を供給する電力供給手段と、
を具備したことを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−4864(P2013−4864A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136457(P2011−136457)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】