説明

電子部品保持具

【課題】保持した電子部品を容易に取り外すことができ、しかも、全体の大きな変形により電子部品の破損や脱落を抑制できる電子部品保持具を提供する。
【解決手段】枠体1と、この枠体1内に遊嵌されて薄化された半導体ウェーハ4を着脱自在に保持する保持板6と、これら枠体1と保持板6とを連結する緩衝連結層8とを備え、枠体1、保持板6、及び緩衝連結層8に可撓性をそれぞれ付与する。保持板6の表面には、半導体ウェーハ4用の粘着層7を積層して粘着する。作業や搬送の際、振動が生じて枠体1に作用しても、緩衝連結層8が振動を吸収して発生加速度を低くし、保持板6に振動が伝達されるのを抑制防止するので、枠体1と保持板6とが共に大きく変形することがない。したがって、振動等に伴い、半導体ウェーハ4が破損したり、保持板6から脱落するのを有効に防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハに代表される電子部品を着脱自在に保持する電子部品保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話に代表される電子機器の小型化や軽量化が図られ、この小型化や軽量化の実現のため、電子機器のデバイスやディスプレイ等に薄化が要望されているが、この要望を満たすためには、半導体ウェーハや液晶用のガラス基板を可能な限り薄化する必要がある。
【0003】
しかしながら、半導体ウェーハやガラス基板を薄化すると、脆く割れ易くなるので、製造時の取り扱いや搬送に支障を来たすおそれがある。この点に鑑み、従来においては、金属、セラミック、プラスチック等の材料を使用して平坦で硬質の支持基板を形成し、この支持基板上に薄化された半導体ウェーハやガラス基板を重ねて貼り合わせ、剛性を確保した状態で作業したり、搬送するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−333100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における電子部品保持具は、以上のように構成され、硬質の支持基板上に薄化された半導体ウェーハやガラス基板が単に重ねて貼着されるので、剛性を確保することができるものの、取り外しが困難になるという問題がある。このような問題を解消する手法としては、支持基板を変形させて半導体ウェーハやガラス基板を取り外す方法が検討されているが、この方法の場合には、搬送時の振動等に伴い、支持基板全体が大きく変形し、その結果、半導体ウェーハやガラス基板が破損したり、支持基板から脱落するという問題が新たに生じることとなる。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、保持した電子部品を容易に取り外すことができ、しかも、全体の大きな変形により電子部品の破損や脱落を抑制することのできる電子部品保持具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、電子部品を着脱自在に保持するものであって、
枠体と、この枠体内に隙間を介して嵌め入れられ、電子部品を着脱自在に保持する保持板と、これら枠体と保持板とを連結する緩衝連結層とを含み、
枠体、保持板、及び緩衝連結層に可撓性をそれぞれ付与し、保持板の表面に電子部品用の粘着層を設けたことを特徴としている。
【0008】
なお、保持板を中空に形成して電子部品の表裏面を露出させるようにし、枠体の裏面と保持板の裏面との間に緩衝連結層を架設することができる。
また、保持板の表面に、光線の照射により粘着性が低下する光硬化性の粘着層を積層することもできる。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における電子部品には、少なくとも単数複数の半導体ウェーハ(シリコンウェーハ等)、ガラス基板、半導体チップ、回路素子等が含まれる。この電子部品は、薄く脆い部品が主ではあるが、厚い部品を特に排除するものではない。枠体は、リング形、中空の矩形や多角形等を特に問うものではない。さらに、保持板や緩衝連結層は、円形、楕円形、矩形、多角形、リング形、枠形等に形成することができる。
【0010】
本発明によれば、各種作業や搬送等の際、振動が生じて電子部品保持具の枠体に作用しても、緩衝連結層が振動を吸収して保持板に振動が伝達されるのを抑制するので、別体の枠体と保持板とが共に大きく変形することが少ない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保持した電子部品を容易に取り外すことができるという効果がある。また、電子部品保持具全体の大きな変形により、電子部品の破損や脱落を有効に抑制することができる。
また、保持板を中空に形成して電子部品の表裏面を露出させるようにし、枠体の裏面と保持板の裏面との間に緩衝連結層を架設すれば、基板の両面をそれぞれ露出させることができるので、表裏両面に回路が形成された基板の導通検査等が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電子部品保持具の実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【図2】本発明に係る電子部品保持具の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図3】本発明に係る電子部品保持具の第2の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る電子部品保持具の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における電子部品保持具は、図1や図2に示すように、作業者に握持操作される中空の枠体1と、この枠体1内に遊嵌されて薄化された半導体ウェーハ4を保持する保持板6と、これら枠体1と保持板6とを緊張して連結する緩衝連結層8とを備え、薄化された半導体ウェーハ4の剛性を確保した状態で各種作業や搬送に供される。
【0014】
枠体1と保持板6は、共に所定の材料を使用して形成され、変形可能な可撓性がそれぞれ付与される。これらの材料としては、半導体ウェーハ4の変形や損傷を防止可能な剛性と可撓性とが確保されるのであれば、特に限定されるものではないが、例えばポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル樹脂、ガラス繊維混練の材料等があげられる。
【0015】
枠体1は、図1に示すように、基本的には半導体ウェーハ4や保持板6よりも拡径の平面略リング形の平板に形成され、保持板6を隙間2を介して外側から包囲しており、外周部の一部3が直線的に切り欠かれて方向性の識別や位置決めに使用される。
【0016】
半導体ウェーハ4は、図1や図2に示すように、基本的には平面円形にスライスされて100μm以下の厚さにバックグラインドされ、表裏面のうち、少なくとも表面に回路パターンが形成されており、外周部の一部が直線的に切り欠かれて方向性の識別や位置決め用のオリフラ5とされる。
【0017】
保持板6は、図1や図2に示すように、半導体ウェーハ4と同程度の大きさを有する平面円形の平板に形成され、表面に半導体ウェーハ4用の粘着層7が積層して粘着されており、この粘着層7の表面に半導体ウェーハ4が着脱自在に粘着保持される。粘着層7は、例えば所定の光線(紫外線等)の照射により粘着剤が硬化し、粘着性が低下する光硬化性の材料を使用して平面円形に形成される。
【0018】
緩衝連結層8は、同図に示すように、所定の材料を使用して可撓性を有する平面円形に形成され、枠体1と保持板6の裏面にそれぞれ接着されており、半導体ウェーハ4に対する衝撃を緩衝するよう機能する。この緩衝連結層8は、光や熱に対して安定で引張り伸び率の小さいポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等からなる薄い樹脂フィルム、シリコーン系、ウレタン系、オレフィン系、フッ素系のエラストマーを使用して弾性変形可能な薄膜に成形される。
【0019】
上記構成において、電子部品保持具の保持板6に薄化された半導体ウェーハ4を保持させる場合には、保持板6の粘着層7に半導体ウェーハ4を重ねてローラ等で押圧すれば、保持板6に半導体ウェーハ4を保持させ、剛性を確保することができる。このような剛性の確保された状態で、半導体ウェーハ4は各種作業や搬送に供される。
【0020】
係る作業や搬送の際、振動が生じて枠体1に作用することがあるが、緩衝連結層8が撓んで振動を吸収し、発生加速度を低くして保持板6に振動が伝達されるのを抑制防止するので、枠体1と保持板6とが共に大きく変形することがない。したがって、作業や搬送時の振動等に伴い、半導体ウェーハ4が破損したり、保持板6の粘着層7から脱落するのを有効に防ぐことができる。
【0021】
次に、電子部品保持具の保持板6から半導体ウェーハ4を取り外す場合には、電子部品保持具を上下逆に反転して半導体ウェーハ4を下方に向け、この半導体ウェーハ4を図示しない吸着プレート等に水平に真空吸着させ、その後、保持板6の粘着層7に所定の光線を照射しながら枠体1を上方に曲げれば良い。
【0022】
すると、枠体1を変形させる外力が緩衝連結層8に作用して引っ張るので、保持板6が弓なりに変形して半導体ウェーハ4から剥離し、この剥離により、半導体ウェーハ4を円滑かつ確実に取り外すことができる。
【0023】
次に、図3は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、保持板6を中空のリング形に区画形成して半導体ウェーハ4の表裏両面をそれぞれ露出させるようにし、枠体1の裏面と保持板6の裏面との間に、中空のリング形に区画形成した緩衝連結層8を架設して接着するようにしている。
【0024】
保持板6は、半導体ウェーハ4よりもやや拡径のリング形に区画形成され、表面に平面リング形の粘着層7が積層粘着されており、この粘着層7の表面に半導体ウェーハ4の回路パターンが形成されない周縁部が着脱自在に粘着保持される。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0025】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、半導体ウェーハ4の表裏両面をそれぞれ露出させることができるので、表裏両面に回路パターンが形成された半導体ウェーハ4の厚さ方向の導通検査が可能になるのは明らかである。さらに、保持板6の粘着層7と半導体ウェーハ4との接触面積が減少するので、半導体ウェーハ4の汚染防止が期待できる。
【0026】
なお、上記実施形態では枠体1の外周部の一部3を直線的に切り欠いたが、何らこれに限定されるものではない。例えば、外周部の一部3に半円形の切り欠きを形成して方向性の識別や位置決めに使用しても良い。また、保持板6を自己粘着性の材料を使用して形成し、保持板6と粘着層7とを一体化しても良い。
【符号の説明】
【0027】
1 枠体
2 隙間
4 半導体ウェーハ(電子部品)
6 保持板
7 粘着層
8 緩衝連結層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を着脱自在に保持する電子部品保持具であって、枠体と、この枠体内に隙間を介して嵌め入れられ、電子部品を着脱自在に保持する保持板と、これら枠体と保持板とを連結する緩衝連結層とを含み、
枠体、保持板、及び緩衝連結層に可撓性をそれぞれ付与し、保持板の表面に電子部品用の粘着層を設けたことを特徴とする電子部品保持具。
【請求項2】
保持板を中空に形成して電子部品の表裏面を露出させるようにし、枠体の裏面と保持板の裏面との間に緩衝連結層を架設した請求項1記載の電子部品保持具。
【請求項3】
保持板の表面に、光線の照射により粘着性が低下する光硬化性の粘着層を積層した請求項1又は2記載の電子部品保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−205817(P2010−205817A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47830(P2009−47830)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】