説明

電子部品内蔵コネクタ

【課題】保持部材と雄型端子との隙間からモールド材が漏れ出すことを抑制し、電気的接続の信頼性を向上することができる電子部品内蔵コネクタを提供すること。
【解決手段】インナプレート40の端子挿入口50に雄型端子41を挿入し雄型端子41に電子部品を接続してなる被収容部品を、雄型端子41に接続される雌型端子を収容する雌型端子収容部が形成されたコネクタケースの部品収容室内に収容し、被収容部品と部品収容室との隙間にモールド材を充填してなるもので、端子挿入口50が雄型端子41の当接部67が突き当たる突当部59を有しており、突当部59と当接部67とに、沿面距離を増加させる凹凸嵌合部71を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を内蔵する電子部品内蔵コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品内蔵コネクタには、部品収容室と雌側端子金具を装着するための端子収容室とが設けられたコネクタハウジングを有するものがある。このコネクタでは、まず、保持部材に雄側端子金具を保持すると共に雄側端子金具に電子部品を接続して装着部品とする。そして、この装着部品をコネクタハウジングの部品収容室に収容し、部品収容室内に充填材をモールドするようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ハウジングに装着され、他のコネクタと結合する結合端子が基台に配置されてなる少なくとも1個のコネクタと、このコネクタが取り付けられてなるとともに結合端子と電気的に接続された接続部材が収納された筐体と、を備え、コネクタの背面側からは基台と結合端子との間及び基台とハウジングとの間に、接着性充填材が充填されてなるとともに、筐体内には絶縁性樹脂が充填されてなる防水コネクタボックスも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
更に、第1及び第2ハウジングと、これらに収容される第1及び第2接続端子と、これらに接続される複数の電線とを備え、両接続端子に接続された複数の電線の端末部が、第1樹脂モールド部により一体的に封止されて端子挿入口内に収容され、端子挿入口及びこれらの側壁に形成された連通孔が、端子挿入口及び連通孔に充填された第2樹脂モールド部により密封された防水コネクタも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−335004号公報
【特許文献2】特開2008−146844号公報
【特許文献3】特開2005−166347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の電子部品内蔵コネクタでは、雄側端子金具を保持部材に保持する場合に、雄側端子金具を保持部材の端子装着孔内に、その位置決め片が端子係合壁に当接するまで挿入するようになっている。また、このとき、保持部材の端子装着孔に形成された突起に、雄側端子金具の金属ランスが係合することで雄側端子金具が保持部材から抜け止めされるようになっている。ところで、雄側端子金具と端子装着孔とには隙間があり、この隙間から、毛細管現象により、硬化前の液状の充填材が端子収容室側に漏れ出すおそれがある。充填材が端子収容室側に漏れ出して硬化すると、雄側端子金具と雌側端子金具との電気的接続を阻害し、その信頼性に影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
また、特許文献2,3に記載の技術においても、上記と同様に、充填した液状の充填材が端子の接続部側に漏れ出して硬化し、相手方コネクタとの接続時における電気的接続の信頼性に影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、保持部材と雄型端子との隙間からモールド材が漏れ出すことを抑制することができ、電気的接続の信頼性を向上することができる電子部品内蔵コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1) 保持部材の端子挿入口に雄型端子を挿入し該雄型端子に電子部品を接続してなる被収容部品を、前記雄型端子に接続される雌型端子を収容する雌型端子収容部が形成されたコネクタケースの部品収容室内に収容し、前記被収容部品と前記部品収容室との隙間にモールド材を充填してなる電子部品内蔵コネクタであって、
前記保持部材の前記端子挿入口は、前記雄型端子の当接部が突き当たる突当部を有しており、
該突当部と前記当接部とに、沿面距離を増加させる沿面距離増加部を設けたことを特徴とする電子部品内蔵コネクタ。
【0010】
(2) 前記沿面距離増加部は、前記突当部と前記当接部とに形成された凹凸嵌合部であることを特徴とする上記(1)に記載の電子部品内蔵コネクタ。
【0011】
(3) 前記保持部材の前記端子挿入口は、前記雄型端子の厚さ方向の両面及び幅方向の両面が圧接する周壁部を有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の電子部品内蔵コネクタ。
【0012】
上記(1)の構成の電子部品内蔵コネクタでは、保持部材の端子挿入口の突当部と、これに当接する雄型端子の当接部とに、沿面距離増加部が設けられている。このため、この沿面距離増加部で沿面距離が増加することになる。よって、突当部と当接部との隙間からモールド材が漏れ出すことを抑制できる。したがって、モールド材が端子接続を阻害することを防止できるため、電気的接続の信頼性を向上することができる。
【0013】
上記(2)の構成の電子部品内蔵コネクタでは、沿面距離増加部が凹凸嵌合部である。このため、簡素な形状で沿面距離を増加させることができる。
【0014】
上記(3)の構成の電子部品内蔵コネクタでは、保持部材の端子挿入口の周壁部が、雄型端子の厚さ方向の両面及び幅方向の両面に圧接する。このため、これらの隙間からモールド材が漏れ出すことを抑制できる。したがって、電気的接続の信頼性を更に向上することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、保持部材と雄型端子との隙間からモールド材が漏れ出すことを抑制することができ、電気的接続の信頼性を向上することができる電子部品内蔵コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る電子部品内蔵コネクタを示す断面図である。
【図2】実施形態に係る電子部品内蔵コネクタに雌型端子を嵌合接続した状態を示す断面図である。
【図3】実施形態に係る電子部品内蔵コネクタを示す分解斜視図である。
【図4】実施形態に係る電子部品内蔵コネクタの被収容部品を示す分解斜視図である。
【図5】実施形態に係る電子部品内蔵コネクタの被収容部品を示す分解断面図である。
【図6】実施形態に係る電子部品内蔵コネクタを示すもので、(a)はインナプレート及び雄型端子の分解斜視図、(b)は(a)のA部拡大斜視図である。
【図7】実施形態に係る電子部品内蔵コネクタのインナプレートを示す部分拡大断面図である。
【図8】実施形態に係る電子部品内蔵コネクタの雄型端子を示す部分拡大図である。
【図9】実施形態に係る電子部品内蔵コネクタのインナプレート及び雄型端子を示す斜視図である。
【図10】実施形態に係る電子部品内蔵コネクタを示すもので、(a)はインナプレート及び雄型端子の断面図、(b)は(a)のB部拡大斜視図である。
【図11】実施形態に係る電子部品内蔵コネクタの被収容部品を示す分解斜視図である。
【図12】実施形態に係る電子部品内蔵コネクタの被収容部品を示す斜視図である。
【図13】実施形態に係る電子部品内蔵コネクタを示すもので、(a)はコネクタケース及び被収容部品の分解斜視図、(b)は(a)の断面図である。
【図14】実施形態に係る電子部品内蔵コネクタを示すもので、(a)はコネクタケース及び被収容部品の組付状態を示す斜視図、(b)は(a)の断面図である。
【図15】実施形態に係る電子部品内蔵コネクタを示すもので、(a)はコネクタケース及び被収容部品のモールド後を示す斜視図、(b)は(a)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は実施形態に係る電子部品内蔵コネクタを示す断面図、図2は実施形態に係る電子部品内蔵コネクタに雌型端子を嵌合接続した状態を示す断面図、図3は実施形態に係る電子部品内蔵コネクタを示す分解斜視図、図4は実施形態に係る電子部品内蔵コネクタの被収容部品を示す分解斜視図、図5は実施形態に係る電子部品内蔵コネクタの被収容部品を示す分解断面図、図6は実施形態に係る電子部品内蔵コネクタを示すもので、(a)はインナプレート及び雄型端子の分解斜視図、(b)は(a)のA部拡大斜視図、図7は実施形態に係る電子部品内蔵コネクタのインナプレートを示す部分拡大断面図、図8は実施形態に係る電子部品内蔵コネクタの雄型端子を示す部分拡大図、図9は実施形態に係る電子部品内蔵コネクタのインナプレート及び雄型端子を示す斜視図、図10は実施形態に係る電子部品内蔵コネクタを示すもので、(a)はインナプレート及び雄型端子の断面図、(b)は(a)のB部拡大斜視図、図11は実施形態に係る電子部品内蔵コネクタの被収容部品を示す分解斜視図、図12は実施形態に係る電子部品内蔵コネクタの被収容部品を示す斜視図、図13は実施形態に係る電子部品内蔵コネクタを示すもので、(a)はコネクタケース及び被収容部品の分解斜視図、(b)は(a)の断面図、図14は実施形態に係る電子部品内蔵コネクタを示すもので、(a)はコネクタケース及び被収容部品の組付状態を示す斜視図、(b)は(a)の断面図、図15は実施形態に係る電子部品内蔵コネクタを示すもので、(a)はコネクタケース及び被収容部品のモールド後を示す斜視図、(b)は(a)の断面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る電子部品内蔵コネクタ11は、コネクタケース12と、コネクタケース12の部品収容室13に収容される被収容部品14と、被収容部品14と部品収容室13との隙間に充填されるモールド材15とを有している。図2に示すように、電子部品内蔵コネクタ11は、部品点数低減による簡素化及び軽量化のため雌型端子16が直接接続される、所謂直差し構造になっている。電子部品内蔵コネクタ11は、防水型のコネクタである。
【0020】
図1〜図3に示すように、コネクタケース12には、その長さ方向の一側に、角筒状部20と底部21とを有し角筒状部20の底部21とは反対側が開口部22とされた有底角筒状部23が形成されている。この有底角筒状部23は、コネクタケース12の長さ方向に沿っており、その内側が部品収容室13となっている。
【0021】
図1及び図2に示すように、コネクタケース12には、その長さ方向の他側に、雌型端子16を収容する雌型端子収容部25が形成されている。雌型端子収容部25には、有底角筒状部23とは反対側に開口部26を有する雌型端子収容穴27が複数カ所(具体的には二カ所)形成されている。これらの雌型端子収容穴27は、コネクタケース12の長さ方向に沿っており、有底角筒状部23の底部21を貫通して部品収容室13内に開口している。
【0022】
雌型端子収容穴27は、開口部26側の大穴部28と、大穴部28よりも断面積が小さい中間位置の小穴部29と、小穴部29より幅の狭い底部21側の保持穴部30とを有している。保持穴部30は、部品収容室13に開口する端部が部品収容室13側ほど幅が広くなるように面取りされている。雌型端子16は、開口部26から挿入されて雌型端子収容穴27内に収容される。その際に、雌型端子16は、その先端の箱部32が小穴部29内に位置し、基端側のシール部33が大穴部28に密着状態で嵌合する。
【0023】
有底角筒状部23の底部21の部品収容室13側の底面には、雌型端子収容部25の複数の雌型端子収容穴27同士の間位置に漏受穴35が形成されている。また、この底面には、雌型端子収容穴27よりも外側にも漏受穴36が複数形成されている。加えて、有底角筒状部23の角筒状部20の底部21側には、角筒状部20の他の部分よりも一回り小さい環状壁部37が形成されている。
【0024】
図4及び図5に示すように、被収容部品14は、インナプレート(保持部材)40と、インナプレート40に保持される複数(具体的には二つ)の雄型端子41と、雄型端子41に接続されてインナプレート40に保持される電子部品42とを有している。電子部品42には、コンデンサ、抵抗あるいはダイオード等の素子部品が適宜選択的に内蔵される。
【0025】
インナプレート40は、合成樹脂製のものである。インナプレート40は、矩形板状の底板部44と、底板部44の周縁部から厚さ方向一側に延出する角筒状壁部45と、角筒状壁部45の四隅から底板部44とは反対側に延出する保持壁部46とを有している。底板部44の保持壁部46とは反対側の端縁部には、側方に突出する環状突起47が全周にわたって形成されている。環状突起47の外周部は、図1に示す有底角筒状部23の環状壁部37の内周部よりも若干量ながら一回り大きく形成されている。
【0026】
図5及び図6に示すように、底板部44の保持壁部46側の内面には、保持壁部46側に突出して角筒状壁部45に繋がる肉盛部48が複数カ所(具体的には二カ所)形成されている。底板部44には、これら肉盛部48の位置に、厚さ方向に貫通する端子挿入口50が形成されている。また、図5に示すように、底板部44の保持壁部46とは反対側の先端面には、端子挿入口50同士の間に漏受穴52が形成されている。この先端面には、端子挿入口50よりも外側にも複数の漏受穴53が形成されている。
【0027】
図7に示すように、端子挿入口50は、肉盛部48側の幅広周壁部55と、この幅広周壁部55より幅の狭い中間周壁部56とを有している。また、端子挿入口50は、この中間周壁部56より幅の狭い幅狭周壁部57と、この幅狭周壁部57より幅の広い先端周壁部58とを有している。中間周壁部56の幅狭周壁部57側の段状の突当部59には、奥側ほど幅が狭くなるV字状の凹部60が、幅狭周壁部57の幅方向両側それぞれに形成されている。
【0028】
図4に示すように、雄型端子41は、一定の板厚を有している。雄型端子41は、金属製であり、図5に示すように、一定幅のベース板部63と、ベース板部63の幅方向中間位置から一側に突出する当接板部64とを有している。また、雄型端子41は、当接板部64の幅方向中間位置からベース板部63とは反対側に延出するタブ65を有している。また、雄型端子41は、ベース板部63の幅方向の一端からタブ65とは反対方向に延出するリード部66を有している。
【0029】
図8に示すように、当接板部64のタブ65側の段状の当接部67には、先端側ほど幅が狭くなるV字状の凸部68がタブ65の幅方向両側それぞれに形成されている。また、タブ65の当接板部64側の幅方向両側には幅方向外側に突出する係止突起69が形成されている。
【0030】
図9及び図10に示すように、二つの雄型端子41が、互いのリード部66を反対側に位置させた姿勢で、インナプレート40の端子挿入口50に挿入されて圧入される。雄型端子41は、端子挿入口50に圧入される前の挿入状態で、図7に示す端子挿入口50の幅広周壁部55、中間周壁部56、幅狭周壁部57及び先端周壁部58内に配置され、これらで圧入時の倒れが規制される。
【0031】
図10に示すように、雄型端子41は端子挿入口50に圧入された状態で、図10(b)に示すように、ベース板部63が幅広周壁部55内に配置される。また、この圧入状態で、当接板部64が中間周壁部56内に配置され、タブ65が幅狭周壁部57内に配置される。雄型端子41が端子挿入口50に圧入された状態で、タブ65は、図10(a)に示すように、インナプレート40の底板部44から保持壁部46とは反対側に突出する。
【0032】
図10(b)に示すように、雄型端子41は、圧入時に、当接板部64の当接部67の二カ所の凸部68が、端子挿入口50の突当部59に形成された二カ所の凹部60に嵌合して当接する。言い換えれば、雄型端子41の二カ所の凸部68はインナプレート40に突き当たって密着する当接部67に形成されている。また、インナプレート40の端子挿入口50の二カ所の凹部60は、雄型端子41の当接部67が突き当たって密着する突当部59に形成されている。これら凸部68と凹部60が互いに嵌合する凹凸嵌合部(沿面距離増加部)71となっている。突当部59と当接部67とに設けられた凹凸嵌合部71は、平坦な当接部を平坦な突当部に突き当てる場合と比べて沿面距離を増加させている。
【0033】
なお、端子挿入口50の中間周壁部56は、その内側に配置される当接板部64の外周面よりも若干量ながら一回り小さくされている。よって、中間周壁部56は、圧入状態で当接板部64の厚さ方向の両面及び幅方向の両面に圧接する。つまり、中間周壁部56は、圧入により、潰れるように変形して当接板部64の全周にわたって環状に密着する。また、幅狭周壁部57も、その内側に配置されるタブ65の外周面よりも若干量ながら一回り小さくされている。よって、幅狭周壁部57も、圧入状態でタブ65の厚さ方向の両面及び幅方向の両面に圧接する。つまり、幅狭周壁部57も、圧入により、潰れるように変形してタブ65の全周に環状に密着する。
【0034】
また、両側の係止突起69間の幅は、幅狭周壁部57の幅よりも広くされている。これにより、雄型端子41は係止突起69が幅狭周壁部57と先端周壁部58との間の段差面に当接することになる。よって、雄型端子41は、インナプレート40に対して抜け止めされている。
【0035】
図11に示すように、インナプレート40に一対の雄型端子41を装着した状態で、図12に示すように、電子部品42が配置される。その際に、電子部品42は、一対の雄型端子41のリード部66の間に配置される。また、電子部品42はインナプレート40の四カ所の保持壁部46で保持される。この状態で各リード部66が電子部品42の各側面に溶接又は半田付けで簡易的に接続される。このようにして、インナプレート40の二カ所の端子挿入口50に一対の雄型端子41を挿入し、これら雄型端子41に電子部品42を接続してなる被収容部品14が出来上がる。
【0036】
図13及び図14に示すように、被収容部品14が雄型端子41のタブ65を先頭にして、コネクタケース12の有底角筒状部23の角筒状部20内に開口部22から挿入される。その際に、有底角筒状部23の環状壁部37の内周部より一回り大きいインナプレート40の環状突起47が環状壁部37に圧入され嵌合される。これにより、環状突起47は潰れるように変形して環状壁部37に密着する。それと共に、インナプレート40の底板部44が有底角筒状部23の底部21に当接する。このようにして、被収容部品14がコネクタケース12の部品収容室13内に収容される。
【0037】
この収容状態で、図14に示すように、被収容部品14の雄型端子41のタブ65は、雌型端子収容穴27の保持穴部30を通って小穴部29内に突出することになる。このとき、タブ65は、保持穴部30で厚さ方向の両側及び幅方向の両側から保持される。また、この収容状態で、被収容部品14のインナプレート40の漏受穴52がコネクタケース12の漏受穴35と対向する。複数の漏受穴53も複数の漏受穴36と対応するもの同士が対向する。
【0038】
次に、図15に示すように、被収容部品14とコネクタケース12の部品収容室13との隙間に開口部22からモールド材15を溶融状態で充填する。なお、モールド材15としては、エポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、シリコンゴム等、モールドできる種々の材料を用いることができる。
【0039】
このようにモールド材15を充填するとき、図14(b)に示すように、被収容部品14のインナプレート40の環状突起47が全周にわたってコネクタケース12の角筒状部20内の環状壁部37に環状に密着している。このため、これらの隙間からモールド材15が毛細管現象による浸透・浸入により漏れ出すのが抑制される。また、このとき、図10に示すように、雄型端子41は当接板部64の外周部が全周にわたって環状に端子挿入口50の中間周壁部56に密着している。このため、これらの隙間から同様にモールド材15が漏れ出すのが抑制される。
【0040】
また、雄型端子41は当接部67の凸部68が端子挿入口50の凹部60に嵌合してこれらの間の沿面距離が増加されている。このため、これらの隙間から同様にモールド材15が漏れ出すのが抑制される。更に、雄型端子41はタブ65の外周部が全周にわたって環状に端子挿入口50の幅狭周壁部57に密着している。このため、これらの隙間から同様にモールド材15が漏れ出すのが抑制される。
【0041】
しかも、図14(b)に示すように、コネクタケース12の底部21とインナプレート40の底板部44とには、漏受穴35,36,52,53が形成されている。このため、例え、モールド材15が漏れ出したとしても、これらの漏受穴35,36,52,53にモールド材15が収容され、雌型端子収容穴27側に漏れ出すのが抑制される。
【0042】
図15に示すように、被収容部品14とコネクタケース12の部品収容室13との隙間に充填されたモールド材15が硬化することで電子部品内蔵コネクタ11が完成する。図2に示すように、この電子部品内蔵コネクタ11の雌型端子収容穴27内に雌型端子16が挿入される。その際に、雌型端子収容穴27内に突出する雄型端子41のタブ65が箱部32に嵌合する。これにより、雌型端子16と雄型端子41つまり電子部品42とが電気的に接続される。また、このとき、雄型端子41のシール部33が雌型端子収容穴27の大穴部28に嵌合して雌型端子収容穴27を密封する。
【0043】
以上、説明したように、上記実施形態に係る電子部品内蔵コネクタ11によれば、インナプレート40の端子挿入口50の突当部59と、これに当接する雄型端子41の当接部67とに、凹凸嵌合部71が設けられている。このため、この凹凸嵌合部71で沿面距離が増加することになる。よって、突当部59と当接部67との隙間から溶融状態のモールド材15が漏れ出すことを抑制できる。その結果、モールド材15が雌型端子収容穴27側に漏れ出すのを抑制することができる。したがって、後に硬化するモールド材15が雄型端子41と雌型端子16との嵌合接続を阻害することを防止できる。これにより、電気的接続の信頼性を向上することができる。
【0044】
また、凹凸嵌合部71で沿面距離を増加させるため、簡素な形状で沿面距離を増加させることができる。
【0045】
また、インナプレート40の端子挿入口50の中間周壁部56及び幅狭周壁部57が、雄型端子41の当接板部64及びタブ65の厚さ方向の両面及び幅方向の両面に圧接する。このため、これらの隙間からモールド材15が漏れ出すことを抑制できる。したがって、電気的接続の信頼性を更に向上することができる。
【0046】
上記実施形態では、凹凸嵌合部71が、雄型端子41に凸部68をインナプレート40に凹部60を有する場合を例にとり説明したが、雄型端子41に凹部をインナプレート40に凸部を有していても良い。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0048】
11 電子部品内蔵コネクタ
12 コネクタケース
13 部品収容室
14 被収容部品
15 モールド材
16 雌型端子
25 雌型端子収容部
40 インナプレート(保持部材)
41 雄型端子
42 電子部品
50 端子挿入口
56 中間周壁部
57 幅狭周壁部
59 突当部
60 凹部
67 当接部
68 凸部
71 凹凸嵌合部(沿面距離増加部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部材の端子挿入口に雄型端子を挿入し該雄型端子に電子部品を接続してなる被収容部品を、前記雄型端子に接続される雌型端子を収容する雌型端子収容部が形成されたコネクタケースの部品収容室内に収容し、前記被収容部品と前記部品収容室との隙間にモールド材を充填してなる電子部品内蔵コネクタであって、
前記保持部材の前記端子挿入口は、前記雄型端子の当接部が突き当たる突当部を有しており、
該突当部と前記当接部とに、沿面距離を増加させる沿面距離増加部を設けたことを特徴とする電子部品内蔵コネクタ。
【請求項2】
前記沿面距離増加部は、前記突当部と前記当接部とに形成された凹凸嵌合部であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品内蔵コネクタ。
【請求項3】
前記保持部材の前記端子挿入口は、前記雄型端子の厚さ方向の両面及び幅方向の両面が圧接する周壁部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品内蔵コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−134007(P2012−134007A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285089(P2010−285089)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】