説明

電子部品実装装置

【課題】ノズルヘッドの回転中心を容易に算出できると共に、カメラの光学倍率も算出できる電子部品実装装置を提供する。
【解決手段】基板搬送装置の基板上にXテーブル、Yテーブルを介して位置決め可能に設けられたジョイントブロックに交換可能に取り付けられるノズルユニット12を備え、このノズルユニット12がロータリー式のノズルヘッド20と、これを回転駆動する駆動装置33と、ノズルヘッド20を撮影するカメラと、基板搬送装置とXテーブル、Yテーブルと駆動装置33とカメラとを制御すると共にカメラによって撮影された画像情報に基づいて、ノズルヘッド20の基準位置からのズレを算出し、ノズルヘッド20の位置を校正可能なコントローラーを備えた電子部品実装装置であって、ノズルヘッド20の軸方向に面する面にカメラで撮影可能な2つのマーカーMを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子部品を基板に連続的に実装するロータリー式のノズルヘッドを備えた電子部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロータリー式のノズルヘッドを備えた電子部品実装装置は、経時的使用によって、あるいは部品に応じて行われるノズルヘッド交換の際に、装置基準に対してノズルヘッドの位置がズレる場合がある。このように装置基準に対してノズルヘッドの位置がズレると実装基板の製品品質が低下するため、このズレを校正して基準位置に対するノズルヘッドの位置を正確に合わせなければならない。
【0003】
とりわけ、小型部品のように実装頻度が高く生産性が求められる「高速タイプ」のノズルヘッドや、IC部品のように高い実装精度が求められる「高精度タイプ」や「汎用タイプ」のノズルヘッドを共通のプラットホームで交換しながら使用する場合に、ノズルヘッドを交換する際に生ずる位置ズレに加えて、高速で稼動するノズルヘッドの熱による構成部品の変形の影響も加わるため、電子部品実装装置を様々な方法で校正する技術が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
図8はロータリー式のノズルヘッドを備えたノズルユニットの正断面図、図9は図8を下方から見た図である。図8、図9において、ノズルユニット12は図示しない移送装置に交換可能に取り付けられるジョイントプレート29を備えている。ジョイントプレート29にはアーム部30を介して鉛直下方にシャフト31が取り付けられている。このシャフト31にベアリング34を介してノズルヘッド20が回転可能に取り付けられている。ノズルヘッド20は円環状のノズルケーシング35と、複数(8個)のノズル18とで構成され、ノズル18は図示しない駆動部を介して各々が回転可能かつ昇降可能に支持されている。各ノズル18は、ノズル先端部に順次部品を吸着して、実装すべき基板に部品を装着する。ノズルケーシング35には駆動ギヤ41がシャフト31を中心にして固定され、この駆動ギヤ41に噛合するピニオン42をモーター40で駆動してノズルヘッド20をシャフト31を中心に回転させる。
【0005】
ここで、このノズルユニット12を使用した後に、異なるノズルユニット12に交換した場合に、新しいノズルユニット12の位置が、それまで装着していたノズルユニット12の位置に対してズレを生ずることがある。そのため、ジョイントプレート29にノズル18の先端まで延びるマーカー部材38を設け、マーカー部材38の下面に、基準となる2つのマーカーM,Mを付している。このマーカーM,Mを下方から図示しないカメラで撮影して、撮影された2つのマーカーM,M間の距離Lから光学倍率を算出すると共に、撮影されたマーカーM,Mの位置を基準にして、ノズル18に保持された部品の相対位置を計測することにより、交換後のノズルヘッド20とそれまで取り付けられていたノズルヘッド20とのズレを把握して、最終的にノズル18に保持された部品の位置を校正している。
【0006】
また、図10、図11に示す従来技術のように、図8、図9に示したノズルヘッド20のシャフト31の下端部にノズル18と同じ長さのマーカー部材380を設けたものもある。この従来技術ではマーカー部材380の下面であって、熱による影響が少ないノズルヘッド20の回転中心に基準マーカーMを設け、この基準マーカーMを下方から図示しないカメラで撮影して基準位置とし、ノズル18に保持された部品の相対位置を計測することにより、交換後のノズルユニット12とそれまで取り付けられていたノズルユニット12とのズレを把握して、最終的にノズル18に保持された部品の位置を校正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−199630号公報
【特許文献2】特開平08−327325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図8、図9に示す従来の電子部品実装装置にあっては、2つのマーカーM,Mにより撮影するカメラの光学倍率を算出できることができるが、ノズルヘッド20の回転中心を計測するために、複数のノズル18を取り付けるノズルヘッド20のノズル18の挿通孔36の一つにジグノズルGを取り付ける必要があり、また、熱変形による誤差を補正するために経時変化によるソフトウエア処理が必要となる。
また、図10、図11に示す従来の電子部品実装装置にあっては、上述したようにヘッドの回転中心にマーカーMを設けているため、マーカーMが熱変形による影響を受けにくいメリットがあるが、ノズルヘッド20の回転中心を計測するため、及び、カメラの光学倍率を算出するためにジグノズルGを設ける必要がある。
【0009】
そこで、この発明は、ノズルヘッドの回転中心を容易に算出できると共に、カメラの光学倍率も算出できる電子部品実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、電子部品が実装される基板(例えば、実施形態における基板16)の基板搬送装置(例えば、実施形態における基板搬送装置14)と、この基板搬送装置の基板上に移送装置(例えば、実施形態におけるXテーブル7、Yテーブル3)を介して位置決め可能に設けられたジョイントブロック(例えば、実施形態におけるジョイントブロック11)と、このジョイントブロックに交換可能に取り付けられるノズルユニット(例えば、実施形態におけるノズルユニット12)とを備え、このノズルユニットが円周上に配置された複数のノズル(例えば、実施形態におけるノズル18)を有するロータリー式のノズルヘッド(例えば、実施形態におけるノズルヘッド20)と、このノズルヘッドを回転駆動する駆動装置(例えば、実施形態における駆動装置33)と、前記ノズルヘッドを軸(例えば、実施形態におけるR軸)方向から撮影するカメラ(例えば、実施形態におけるカメラ21)と、前記基板搬送装置と前記移送装置と前記駆動装置と前記カメラとを制御すると共に前記カメラによって撮影された画像情報に基づいて、前記ノズルヘッドの基準位置(例えば、実施形態における回転中心O、基準角度α)からのズレを算出し、前記ノズルヘッドの位置を校正可能な制御装置(例えば、実施形態におけるコントローラー24)を備えた電子部品実装装置であって、前記ノズルヘッドの軸方向に面する面に前記カメラで撮影可能な2つのマーカー(例えば、実施形態におけるマーカーM)を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載した発明は、前記マーカーは前記ノズルの先端部と同一焦点距離内に位置するマーカー部材(例えば、実施形態におけるマーカー部材38)に付されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載した発明は、前記マーカー部材はノズルヘッドの直径方向に回転中心から振り分けて2つ設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載した発明は、前記制御装置は、前記ノズルヘッドの一回転中に前記カメラにより少なくとも3回撮影された前記マーカーに関する画像から、前記ノズルヘッドの実際の回転中心(例えば、実施形態における回転中心O)を求め、この実際の回転中心と前記ノズルヘッドの機械的な回転中心(例えば、実施形態におけるR軸)とのズレを求め、このズレから前記ノズルヘッドの実際の回転中心への校正量を算出することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載した発明は、前記制御装置は、前記2つのマーカーから前記カメラの光学倍率を算出することを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載した発明は、前記制御装置は、前記ノズルヘッドが回転の初期位置にあるときの前記2つマーカーを結ぶ線分から、前記ノズルヘッドの回転方向での基準角度(例えば、実施形態における基準角度α)を求め、この基準角度と前回使用したノズルヘッドの基準角度との角度ズレから校正量を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載した発明によれば、交換可能にされた各ノズルユニットの回転駆動部分であるノズルヘッドに2つのマーカーを設けたことにより、ジョイントブロックに対して取り付けられる毎に、そのノズルユニットのノズルヘッド固有のズレを算出して、交換されるユニット毎に校正を行うことができる。よって、カメラの光学倍率、ノズルヘッドの実際の回転中心、角度基準、ノズルの位置情報を算出できる。また、ジグノズルを用いる必要がないため、ジグノズルの精度によるバラツキがなくなる。
請求項2に記載した発明によれば、カメラによって撮影されたノズルの位置とマーカーの位置とが光軸上で軸方向にズレなく撮影することができる。
請求項3に記載した発明によれば、何れのマーカーも回転するノズルヘッドに対して同程度に回転方向での移動量を確保できる。
請求項4に記載した発明によれば、ノズルヘッド、つまり各ノズルの実際の回転中心をマーカーに関する画像から求めることでノズルの回転方向での軌跡を特定でき、正確にズレのない位置で電子部品を基板に実装できる。
請求項5に記載した発明によれば、カメラの光学倍率を各ノズルユニット毎にノズルに近い位置で把握して、交換されたノズルユニット毎に正確に距離情報を算出できる。
請求項6に記載した発明によれば、初期位置において各ノズルユニット毎の回転方向の角度ズレを正確に把握して、交換されたノズルユニット毎に正確に回転方向の角度情報を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施形態の電子部品実装装置の斜視図である。
【図2】図1の要部を示す正断面図である。
【図3】図1の要部を示す下面図である。
【図4】実際の回転中心を求める説明図である。
【図5】基準角度を示す図である。
【図6】この発明の第2実施形態の図2に相当する正断面図である。
【図7】この発明の第2実施形態の図3に相当する下面図である。
【図8】従来技術の電子部品実装装置の要部を示す正断面図である。
【図9】図8の下面図である。
【図10】他の従来技術の図8に相当する正断面図である。
【図11】図10の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態の電子部品実装装置を図1〜図5に基づいて従来技術と同一部分に同一符号を付して説明する。
図1に示すように電子部品実装装置1は基台2の幅方向(X方向)の両側部に奥行き方向(Y方向)に延びるYテーブル3,3を備えている。各Yテーブル3には、上部に設けたテーブル台4にサーボモーター5によって回転するボールネジ6が設けられている。
一対のYテーブル3,3のうち図1の左側のYテーブル3のサーボモーター5は手前側に、右側のYテーブル3のサーボモーター5は奥側に設けられている。Yテーブル3のボールネジ6,6にはX方向に延びるXテーブル7の両端部が設けられている。
【0019】
Xテーブル7は、X方向に延びる部材であり、テーブル本体8がYテーブル3,3のボールネジ6,6に螺合し、Yテーブル3,3のボールネジ6,6の回転によりY方向に沿って移動する。Xテーブル7にはサーボモーター9によって駆動するボールネジ10が設けられ、このボールネジ10にジョイントブロック11が螺合している。ジョイントブロック11に、負圧により電子部品を吸着し正圧で解放する8本のノズル18を備えたノズルユニット12が着脱可能に設けられている。
【0020】
各Yテーブル3にはY方向に沿って開口部13が形成され、各開口部13に掛け渡すようにして、基台2の前側にX方向に延びる基板搬送装置14が設けられている。基板搬送装置14は一対のレール15,15を備え、このレール15,15上をX方向に沿って、電子部品が実装される基板16が搬送される。したがって、ジョイントブロック11はXテーブル7及びYテーブル3を介して基板搬送装置14の基板上に位置決め可能に設けられる。
【0021】
基台2の上部の前側には左から順に廃棄部品を収納する電子部品廃棄箱17と複数のノズル18を収容するノズルステーション19とノズルユニット12のノズルヘッド20を、後述する回転軸であるR軸方向の下方から照明した状態で撮影するカメラ21が配置されている。
電子部品廃棄箱17はノズル18に吸着された電子部品が基板16実装されないで残った場合、ノズル18に吸着された電子部品が不良である場合等に、これらの電子部品を、該当するノズル18から受け取り収容する。
【0022】
また、カメラ21の右側には、電子部品が配置されたテープを巻き出す復数のテープフィーダー22からなる部品供給装置23が設けられている。部品供給装置23の各テープフィーダー22から巻き出されるテープ上の各電子部品が、ノズルユニット12のノズルヘッド20のノズル18により吸着されて基板16の所定位置に実装される。
【0023】
基台2の前面左下部にはコントローラー24が配置されている。コントローラー24はYテーブル3のサーボモーター5及びXテーブル7のサーボモーター9の動作を制御すると共に、ノズル18の負圧、正圧供給動作及びノズル18の軸であるT軸を中心とした駆動部による回転動作、昇降動作に加えて、ノズルユニット12のモーター40を介して回転方向の動きを制御する。また、コントローラー24は部品供給装置23のテープフィーダー22の巻き出し制御を行い、基板搬送装置14の基板16の搬送タイミング、搬送速度を制御する。
【0024】
更に、カメラ21の操作もコントローラー24によって行われ、カメラ21で撮影された映像がカメラ21から送られるとこの画像情報に基づいて、ノズルユニット12の交換や、熱変形から生ずる基準位置からのズレを算出し校正に必要な演算を行う。
基台2の前面には左右のYテーブル3間に凹部25が設けられ、この凹部25が部品供給装置23を載置した図示しない台車の受け入れ空間として形成されている。
【0025】
図2に示すように、ジョイントブロック11に交換可能に取り付けられるノズルユニット12は、ジョイントブロック11に取り付けられるジョイントプレート29と、ジョイントプレート29に固定されたアーム部30と、このアーム部30に取り付けられ鉛直下方に延びるシャフト31を回転軸(R軸)としたロータリー式のノズルヘッド20と、このノズルヘッド20をシャフト31を中心にして回転させる駆動装置33を備えている。
【0026】
ノズルヘッド20は、シャフト31とシャフト31に外装されたベアリング34と、このベアリング34を介して回転可能に支持されるノズルケーシング35とで構成されている。ノズルケーシング35にはシャフト31を中心にして円周方向に8箇所の装着孔36が設けられ、各装着孔36にノズル18が図示しない駆動部を介して昇降可能かつノズル18の軸線(T軸)を中心に回転可能に支持されている。尚、ノズル18の先端部は先細りに形成されている。
【0027】
ノズルケーシング35には駆動ギヤ41がシャフト31を中心にしてシャフト31を取り囲むように固定され、この駆動ギヤ41にモーター40の軸に取り付けたピニオン42が噛合している。よって、モーター40を駆動するとピニオン42、駆動ギヤ41を介してノズルケーシング35がシャフト31のR軸を中心に回転し、各ノズル18は図示しない駆動部を介してノズルケーシング35の装着孔36の内部で昇降可能かつT軸中心で回転可能となる。
【0028】
図3に示すように、ノズルケーシング35の下端にはエンドプレート37が取り付けられている。エンドプレート37は各ノズル18の突出を許容している。エンドプレート37の下面には直径方向に配列された四対のノズル18,18のうちの一対のノズル18,18の配置位置を結ぶ線分(エンドプレート37の直径)上に、ノズル18の先端まで延びる円柱状のマーカー部材38が一対設けられている。
【0029】
各マーカー部材38の下面は、ノズル18の下端面と一致する位置にあり、マーカー部材38とノズル18先端部とをカメラ21の光軸上で軸方向にズレがなく同一焦点距離に置くようにしている。
【0030】
各マーカー部材38の端面の中心位置にカメラ21で下方から撮影可能なマーカーMが付されている。よって、2つのマーカーMは距離Lだけ離れた状態となっている。各マーカーMはシャフト31のR軸に対して振り分けて等間隔に設けられ、何れのマーカーMも回転するノズルヘッド20に対して同程度に回転方向での移動量を確保できるようなっている。ここで、各マーカーMはカメラ21で撮影した際に認識できる色彩や刻印で形成されている。尚、図2では、マーカーMを太線として示す。
【0031】
次に、ノズル18に吸着された基板認識用のカメラ21によりマーカーM,Mを撮影して、ノズルヘッド20の実際の回転中心、つまりノズル18の公転の中心の位置関係と初期位置での回転ズレを校正する方法について説明する。
【0032】
以下に示す校正方法では、先ずノズルヘッド20の実際の回転中心が基準位置からどの程度ズレているか検出し、更に、ノズルヘッド20の回転初期の原点である回転角度がゼロ(deg)の位置が、前回使用したノズルヘッド20(あるいは基準の位置)の回転初期の原点である回転角度がゼロ(deg)の位置と、回転方向でどのくらいズレているのかを算出する。
ここで、マーカーMは2つ設けられており、各マーカーMを結ぶ線分の中点は本来ならばノズルヘッド20の回転中心、つまりシャフト31のR軸であるが、実際には回転中心が図1の鎖線のようにズレている場合があるからである。
【0033】
図4はノズルヘッド20の実際の回転中心Oを求める手法を示している。マーカーMは2つ設けられているが、これらマーカーM,Mは異なる形状、異なる大きさとした方がよい。これら両方のマーカーM,Mを用いて回転中心Oを求める。
ノズルヘッド20が一回転する間にマーカーM,Mをカメラ21により3回撮影する。撮影された3つの画像の各々から、各マーカーM,Mの中点を求め、各マーカーM,M間の各中点の位置を3つの点A,B,Cとして認識する。
【0034】
このとき、点A,B,Cを結んだ三角形を作成し、三角形の各辺AB,BC,CAの中点から内側に向かう垂線を引いた場合にこれらが交わる点Oが三角形の外心、つまり三角形に外接する円の中心となる。この点Oが実際のノズルヘッド20の回転中心Oとなる。 これにより幾何学的にノズルヘッド20の実際の回転中心Oを求めることができる。
【0035】
したがって、コントローラー24はノズルヘッド20の実際の回転中心Oとノズルヘッド20の見かけ上の回転中心であるR軸とのズレを求め、このズレからノズルヘッド20の実際の回転中心Oへの校正量を算出することができる。このようにしてソフトウエア処置を施さなくても幾何学的に回転中心Oを算出できる。
そして、2つのマーカーMの距離Lが既値であるため、カメラ21で撮影された画像から求めたマーカーM,M間の距離L’を算出すれば、これら距離Lと距離L’の比からカメラ21の光学倍率が算出される。
【0036】
また、図5に示すように、任意のノズルヘッド20(シャフト31)の回転初期の原点である回転角度がゼロ(deg)の位置において、2つのマーカーM,Mを撮影して2つのマーカーM,Mを結ぶ直線の基準角度αを算出する。この例では、ジョイントプレート29の中心を通る水平方向の線分に対する傾きとしている。
この基準角度αと、交換前のノズルユニット21のノズルヘッド20の基準角度αとの角度ズレを算出して、今回のノズルヘッド20の回転方向での校正量を算出することができる。尚、前回使用されたノズルユニット12のノズルヘッド20の基準角度αとの角度ズレから校正量を算出したが、設定された基準の角度と各ノズルヘッド20の基準角度αとの角度ズレを算出して校正量としてもよい。
よって、マーカーMから各ノズル18までの距離を正確に計測し、ノズル18に吸着された電子部品の回転方向での正確な位置情報を算出することができる。
また、今回使用されるノズルヘッド20の基準角度αの角度ズレ分を加味してノズル18に保持された電子部品のT軸に対する保持角度を校正することができる。
【0037】
したがって、この実施形態によれば、電子部品実装装置1のノズルユニット12をジョイントブロック11から外して新しいノズルユニット12を取り付けた場合や、経時的使用によってノズルヘッド20の温度が上昇して熱によりノズル18の位置寸法にズレが生じるような場合であっても、2つのマーカーM,Mを設けたことにより、新しいノズルユニット12が取り付けられる毎に、また熱などによりズレが生ずる毎に、ズレを算出して、交換されるノズルユニット12毎、あるはズレが生じた際に校正を行うことができる。
【0038】
具体的には、ノズルヘッド20の回転初期の原点である回転角度がゼロ(deg)においてカメラ21によりマーカーM,Mの撮影を行うだけで、撮影された画像はコントローラー24に取り込まれて基準角度αが求められ、コントローラー24によりノズルヘッド20の前回使用したノズルユニット12のノズルヘッド20に対する(あるいは設定された基準の角度に対する)角度ズレが算出されこのズレ量を校正できる。
【0039】
また、取り込まれた2つのマーカーM,Mの画像のマーカー間距離L’と実際のマーカーM間の距離Lからカメラの光学倍率が算出できるので、カメラ21の光学倍率を各ノズルユニット12毎にノズル18に近い位置で把握して、交換されたノズルユニット12毎に正確に位置情報を算出できる。
【0040】
つまり、ジョイントブロック11に対して新しいノズルユニット12が取り付けられる毎に、そのノズルユニット12のノズルヘッド20固有のズレを算出して、交換されるノズルユニット12毎に校正を行うことができる。また、ジグノズルを用いる必要がないため、ジグノズルの精度によるバラツキがなくなる。
【0041】
次に、ノズル18がR軸周りに一周するまでの間に2つのマーカーM,Mを3回撮影することで得られた各画像のマーカーM,M間の3つの中点の位置から、図4に示すように、実質的なノズルヘッド20の実際の回転中心O(各ノズル18の公転中心)を求め、その実際の回転中心Oとのズレ量を校正分として、ノズル18に保持された電子部品の正確な位置を割り出すことができる。よって、ノズル18の回転方向での軌跡を特定でき、正確にズレのない位置で電子部品を基板16に実装できる。このようにして、回転部分に設けた2つのマーカーMによってジグノズルを特別に設けなくても、電子部品の位置を正確に校正することができる。
【0042】
図6、図7はこの発明の第2実施形態を示している。
この電子部品実装装置1’は図6、図7に示すノズルユニット12’の構成が異なっている。図6に示すように、この電子部品実装装置1’のノズルユニット12’は、ジョイントブロック11に取り付けられたジョイントプレート29’と、ジョイントプレート29’に固定されたアーム部30’と、このアーム部30’に支持され鉛直下方に延びるシャフト31’(R軸)を回転軸としたノズルヘッド20’と、このノズルヘッド20’をシャフト31を中心にして回転させる駆動装置33’を備えている。駆動装置33’はモーター40’と駆動ギヤ41’とピニオン42’とで構成されている。
【0043】
ノズルヘッド20’は、シャフト31’とシャフト31’に一体固定されるノズルケーシング35’とで構成されている。シャフト31’を回転可能に支持するベアリング34’はアーム部30’に内装されている。シャフト31’の上端部はアーム部30’から上方に突出し、この突出部に駆動ギヤ41’が取り付けられ、駆動ギヤ41’にモーター40’のピニオン42’が噛合している。
【0044】
ノズルケーシング35’にはR軸を中心にして周方向に8箇所の装着孔36’が設けられ、各装着孔36’にノズル18’が図示しない駆動部を介して昇降可能かつノズル18の軸線(T軸)を中心に回転可能に支持されている。よって、モーター40’を駆動するとピニオン42’、駆動ギヤ41’、ベアリング34’を介してシャフト31’がアーム部30’内で回転すると、ノズルケーシング35’がR軸を中心に回転し、各ノズル18’は図示しない駆動部を介してノズルケーシング35’の装着孔36’の内部で昇降可能かつ回転可能となる。
【0045】
図7に示すように、ノズルケーシング35’の下面には直径方向に配列された四対のノズル18’,18’のうちの一対のノズル18’,18’の配置位置を結ぶ線分(ノズルケーシング35’の直径)上に、ノズル18’の先端まで延びる円柱状のマーカー部材38’が一対設けられている。
【0046】
各マーカー部材38’の下面は、ノズル18’の下端面と一致する位置にあり、この下面の中心位置にマーカーM’が付されている。よって、2つのマーカーM’は距離Lだけ離れた状態となっている。各マーカーM’はノズルケーシング35’のR軸に対して振り分けて等間隔に設けられている。ここで、各マーカーM’はカメラ21で撮影した際に認識できる色彩や刻印で形成されている。尚、図6では、マーカーM’を太線として示す。
【0047】
この実施形態においても、2つのマーカーM,Mを回転駆動するノズルヘッド20’に設けることで、2つのノズルユニット12’においても、2つのマーカーM’,M’の距離Lと画像での距離からカメラ21の光学倍率を簡単に算出できる。また、2つのマーカーM’,M’により基準角度αを求め、前回用いたノズルユニット12’の基準角度α(あるいは設定された基準の角度に対する)に対するズレ量を算出して校正量を求め、ノズル18’に吸着された電子部品の相対角度を校正することができる。また、ノズルヘッド20’の実際の回転中心Oを求め、これを基準として、ノズル18’に保持された電子部品の位置情報を校正することができる。
【0048】
よって、電子部品実装装置1’のノズルユニット12’をジョイントブロック11から外して新しいノズルユニット12’を取り付けた場合や、経時的使用によってノズルヘッド20’の温度が上昇して熱により寸法のズレが生じるような場合であっても簡単に正確な迅速な校正を行うことができる。
とりわけ、この実施形態においては、ベアリング34’がアーム部30’内に設けられているため、ノズルヘッド20’が小型化できるメリットがある。
【0049】
尚、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、ノズルの数は8個に限られない。また、マーカーM,Mは同様の形、大きさとしたが、2つのマーカーM,Mの形や大きさを異なるものとすることで、撮影した画像からノズルヘッド20の回転中心Oを求める場合の各マーカーMの認識精度を高めることができる。
マーカーM,Mの画像を3回撮影した場合を例にしたが、撮影回数は4回以上であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
16 基板
14 基板搬送装置
3 Yテーブル(移送装置)
7 Xテーブル(移送装置)
11 ジョイントブロック
12,12’ ノズルユニット
18,18’ ノズル
20,20’ ノズルヘッド
33,33’ 駆動装置
R 軸
21 カメラ
O 実際の回転中心
α 基準角度
24 コントローラー(制御装置)
M,M’ マーカー
38、38’ マーカー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装される基板の基板搬送装置と、この基板搬送装置の基板上に移送装置を介して位置決め可能に設けられたジョイントブロックと、このジョイントブロックに交換可能に取り付けられるノズルユニットとを備え、このノズルユニットが円周上に配置された複数のノズルを有するロータリー式のノズルヘッドと、このノズルヘッドを回転駆動する駆動装置と、前記ノズルヘッドを軸方向から撮影するカメラと、前記基板搬送装置と前記移送装置と前記駆動装置と前記カメラとを制御すると共に前記カメラによって撮影された画像情報に基づいて、前記ノズルヘッドの基準位置からのズレを算出し、前記ノズルヘッドの位置を校正可能な制御装置を備えた電子部品実装装置であって、前記ノズルヘッドの軸方向に面する面に前記カメラで撮影可能な2つのマーカーを設けたことを特徴とする電子部品実装装置。
【請求項2】
前記マーカーは前記ノズルの先端部と同一焦点距離内に位置するマーカー部材に付されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装装置。
【請求項3】
前記マーカー部材はノズルヘッドの直径方向に回転中心から振り分けて2つ設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子部品実装装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ノズルヘッドの一回転中に前記カメラにより少なくとも3回撮影された前記マーカーに関する画像から、前記ノズルヘッドの実際の回転中心を求め、この実際の回転中心と前記ノズルヘッドの見かけ上の回転中心とのズレを求め、このズレから前記ノズルヘッドの実際の回転中心への校正量を算出することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の電子部品実装装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記2つのマーカーから前記カメラの光学倍率を算出することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の電子部品実装装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記ノズルヘッドが回転の初期位置にあるときの前記2つマーカーを結ぶ線分から、前記ノズルヘッドの回転方向での基準角度を求め、この基準角度と前回使用したノズルヘッドの基準角度との角度ズレから校正量を算出することを特徴とする請求項項1〜請求項4の何れかに一項に記載の電子部品実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−134258(P2012−134258A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283784(P2010−283784)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(500548884)三星テクウィン株式会社 (156)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Techwin Co., Ltd
【住所又は居所原語表記】28 Sungju−dong,Changwon−city,Kyongsangnam−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】