説明

電子部品用支持装置および表面実装機

【課題】吸着ノズルによる吸着時に電子部品に加えられる衝撃を価格がそれほど高くなることがないように緩和させる。
【解決手段】吸着ノズル17によって電子部品を吸着する部品吸着位置に設けられ、電子部品を有するテープフィーダ5を支持する電子部品支持部21を備える。電子部品支持部21を支持する衝撃吸収部22を備える。衝撃吸収部22に、電子部品の吸着時に電子部品支持部21が下方に移動する緩衝機構32を備えさせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着ノズルが電子部品に接触するときの衝撃を緩和する電子部品用支持装置およびこの電子部品用支持装置を備えた表面実装機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品をプリント配線板に実装するために用いる表面実装機は、電子部品を吸着ノズルによって吸着して移動させる構成が採られている。この種の表面実装機において、電子部品の実装効率を向上させるためには、吸着ノズルの昇降速度を高速度で動作させ、電子部品を吸着ノズルによって吸着するときの時間を可能な限り短縮することが必要である。しかし、吸着ノズルの昇降時、特に下降速度を速くすると、電子部品に吸着ノズルが接触したときに衝撃が加えられ、電子部品が破損してしまうおそれがある。
【0003】
電子部品に大きな衝撃が加えられることがないようにしながら実装効率を向上させるためには、例えば特許文献1や特許文献2に記載されているように、衝撃を吸収する緩衝機構を吸着ノズル側に設けることが考えられる。
特許文献1に開示されている緩衝機構は、吸着ノズルにおける電子部品に接触するノズル本体を弾性変形可能な弾性体によって支持する構造が採られている。この緩衝機構を備えた吸着ノズルにおいては、ノズル本体が電子部品に衝突したときに弾性体の弾発力に抗して後退することによって、電子部品に加えられる衝撃が緩和される。
【0004】
特許文献2に記載されている緩衝機構は、吸着ノズルを昇降させる吸着ヘッドに複数のモータを設け、これらのモータによって吸着ノズルの下降速度を吸着時に低下させることができるように構成されている。
なお、吸着ノズルを使用して電子部品を吸着し移動させる装置としては、上述した表面実装機の他に、電子部品を検査装置に装填するためのICハンドラがある。
【特許文献1】特開2007−80970号公報
【特許文献2】特開2006−147640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に開示されているような緩衝機構を備えた表面実装機は、緩衝機構の分だけ吸着ノズルや吸着ヘッドの構造が複雑になるために製造コストが高くなってしまう。
そして近年の表面実装機やICハンドラは、高速化の為に多数の吸着ノズルを持つ構成になっており、複数の吸着ノズルを一つのヘッドユニットに取付けて複数の電子部品を同時に移動させる構成が採られている。
【0006】
このため、この種の装置においては、吸着ノズルの個数と同数だけ緩衝機構を装備しなければならないから、価格が高くなってしまう。しかも、吸着ノズルに緩衝機構を設ける場合、多種多様な電子部品を吸着するためには予備の吸着ノズルをさらに多数備える必要があり、これらすべての予備の吸着ノズルにも緩衝機構を組み込まなければならないから、さらに価格が高くなってしまう。
【0007】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、吸着ノズルによる吸着時に電子部品に加えられる衝撃を緩和するに当たって、複数の吸着ノズルを使用する場合でも価格がそれほど高くなることがない電子部品用支持装置を提供することを第1の目的とし、この装置を備えることにより実装効率の向上を図ることが可能な表面実装機を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る電子部品用支持装置は、吸着ノズルによって電子部品を吸着する部品吸着位置に設けられ、前記電子部品を有する部品供給部材を支持する電子部品支持部と、前記電子部品支持部を支持する衝撃吸収部とを備え、前記衝撃吸収部に、電子部品の吸着時に前記電子部品支持部が下方に移動する緩衝機構を備えさせたものである。
この発明の構成により、前記電子部品支持部を支持する前記衝撃吸収部を備えることで、従来よりも安価で電子部品に加えられる衝撃を緩和する構成が可能となる。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した電子部品用支持装置において、前記緩衝機構を、前記電子部品支持部を昇降自在に支持するガイド部材と、前記吸着ノズルが電子部品を吸着する工程で前記電子部品支持部を吸着ノズルの下降する速度より低い速度で下降させる駆動装置とによって構成したものである。
この発明の構成により、前記電子部品支持部を支持する前記衝撃吸収部を吸着ノズルの下降する速度より低い速度で下降させることで、電子部品に加えられる衝撃をより精度高く小さくすることが可能となる。
【0010】
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載の電子部品用支持装置において、前記駆動装置を、吸着ノズルが電子部品を吸着して上昇するときに電子部品支持部が吸着ノズルの上昇する速度より低い速度で上昇する構成としたものである。
この発明の構成により、前記電子部品支持部を支持する前記衝撃吸収部を吸着ノズルの上昇する速度より低い速度で上昇させることで、吸着ノズルが電子部品を引き上げるときの部品に係る加速度を低減することが可能となる。このため、従来よりも安定した電子部品の実装が可能となり、更に従来よりもより高速な吸着ノズルの引き上げが可能となるため、実装スピードが高速化される。
【0011】
請求項4に記載した発明に係る表面実装機は、請求項1ないし請求項3のうちいずれか一つに記載した電子部品用支持装置および前記部品供給部材を有する電子部品供給装置と、前記部品供給部材の電子部品を複数の吸着ノズルによって吸着して移動させる部品移動装置と、この部品移動装置によって電子部品が実装されるプリント配線板を支持する基板搬送装置とを備えているものである。
【0012】
請求項5に記載した発明は、請求項4に記載した表面実装機において、前記電子部品供給装置、部品移動装置および基板搬送装置が搭載される基台を備え、前記部品供給部材をテープフィーダによって構成し、前記電子部品供給装置を、前記テープフィーダと、このテープフィーダと前記基台との間に介装された前記電子部品用支持装置とによって構成したものである。
【0013】
請求項6に記載した発明は、請求項5に記載した表面実装機において、前記電子部品用支持装置の電子部品支持部を、前記基台に対して移動可能な台車に昇降自在に支持されかつ前記テープフィーダが取付けられるアームと、このアームが着脱自在に取付けられる基台側の支持部材とによって構成したものである。
【0014】
請求項7に記載した発明は、請求項4に記載した表面実装機において、前記部品供給部材を、多数の電子部品を水平方向に並べて収納するトレイによって構成し、前記電子部品供給装置を、前記トレイを前記部品吸着位置と収納位置との間で移動させるトレイフィーダによって構成し、前記電子部品用支持装置の電子部品支持部を、前記部品吸着位置において前記トレイを支持するトレイ用支持部材によって構成したものである。
【0015】
請求項8に記載した発明は、請求項4に記載した表面実装機において、前記電子部品供給装置、部品移動装置および基板搬送装置が搭載される基台を備え、前記部品供給部材をテープフィーダによって構成し、前記電子部品供給装置を、前記基台に対して移動可能な台車と、この台車に前記電子部品用支持装置を介して支持された前記テープフィーダとによって構成したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吸着ノズルが下降して電子部品に接触するときに衝撃吸収部の動作により電子部品支持部とともに部品供給部材が下がることによって、電子部品に加えられる衝撃が緩和される。
前記部品供給部材としては、電子部品を吸着位置に一つずつ順次供給する構造のもの(以下、単にパーツフィーダ型の部品供給部材という)や、多数の電子部品を水平に並べて吸着位置で保持する構造のもの(以下、単にトレイ型の部品供給部材という)を用いることができる。
【0017】
前記パーツフィーダ型の部品供給部材を使用する場合は、複数の部品供給部材を電子部品支持部に支持させ、また前記トレイ型の部品供給部材を使用する場合には、少なくとも一つの部品供給部材を電子部品支持部に支持させることによって、複数の電子部品を一つの電子部品支持部に支持させることができる。
このように複数の電子部品を電子部品支持部に支持させた状態においては、これらの電子部品を複数の吸着ノズルによって吸着し、移動させることができる。
【0018】
この場合、個々の吸着ノズルが各電子部品に接触するときに電子部品に加えられる衝撃は、上述したように衝撃吸収部の緩衝動作により電子部品支持部が下がることによって緩和される。すなわち、複数の吸着ノズルを使用する場合であっても一つの衝撃吸収部によって衝撃を緩和することができる。
したがって、本発明によれば、吸着ノズルによる吸着時に電子部品に加えられる衝撃を緩和するに当たって、複数の吸着ノズルを使用する場合でも価格がそれほど高くなることがない電子部品用支持装置を提供することができる。
【0019】
また、本発明によれば、吸着ノズル側に緩衝機構を設けなくてよいから、緩衝機構を備えていない単純な構造の吸着ノズルを使用することができ、吸着ノズル側の部材、すなわち吸着ノズルが取付けられる吸着ヘッドや、複数の吸着ヘッドを並べて支持するヘッドユニットなどをコンパクトに形成することができるという利点もある。
【0020】
本発明に係る電子部品用支持装置は、表面実装機に装備することができる。この電子部品用支持装置を備えた表面実装機は、上述したように吸着ノズルによる電子部品の吸着時に電子部品に加えられる衝撃が緩和されるから、吸着ノズルを高速で下降させて実装効率を向上させることができる。また、この表面実装機は、一つの衝撃吸収部で全ての吸着ノズルにおいて緩衝作用が得られるから、吸着ノズル毎に緩衝機構を備える場合に較べて低いコストで製造することができる。
したがって、この発明によれば、上述した電子部品用支持装置を備えることにより実装効率のさらなる向上を図ることが可能な表面実装機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施例)
以下、本発明に係る電子部品用支持装置およびこの装置を備えた表面実装機の一実施例を図1〜図9によって詳細に説明する。
図1〜図5に示す表面実装機1は、基台2の上で図1において左右方向(以下、この方向を単にX方向という)に延在するコンベア3を備えている。なお、この実施例においては、図1において下側を表面実装機1の前側といい、図1において上側を表面実装機1の後側という。
前記コンベア3は、プリント配線板4をX方向に(例えば図1において右側から左側に)移動させるためのものである。この実施例においては、コンベア3によって請求項4記載の発明でいう基板搬送装置が構成されている。
【0022】
基台2における図1において上下方向(以下、この方向を単にY方向という)の両端部には、電子部品(図示せず)を供給するための多数のテープフィーダ5が装填されている。この実施例においては、テープフィーダ5によって本発明でいう電子部品を有する部品供給部材が構成されている。
前記多数のテープフィーダ5は、従来からよく知られているものと同じ構造のもので、多数の電子部品を収納したテープ(図示せず)をY方向に送り、部品吸着部5a(図1および図2参照)に位置決めする構成が採られている。これらのテープフィーダ5は、後述する電子部品用支持装置6(図2〜図5参照)を介して前記基台2の上に搭載されている。
【0023】
この実施例による表面実装機1は、その前側の2箇所と後側の2箇所とにそれぞれ部品供給部Pが形成されるように、4台の電子部品用支持装置6が装備されている。すなわち、この表面実装機1は、多数のテープフィーダ5と電子部品用支持装置6とからなる電子部品供給装置7が基台2上の4箇所に搭載されている。
また、基台2上には、前記テープフィーダ5上の電子部品をプリント配線板4に実装するための部品移動装置8と、この部品移動装置8に吸着・保持された電子部品を下方から撮像するための撮像装置9などが設けられている。
【0024】
前記部品移動装置8は、前記コンベア3の上方でY方向に延在する2本の固定レール11,11と、これらの固定レール11にY方向へ移動自在に支持された可動レール12と、この可動レール12にX方向へ移動自在に支持されたヘッドユニット13と、前記可動レール12をY方向に移動させるY方向ヘッドユニット移動装置14と、ヘッドユニット13をX方向に移動させるX方向ヘッドユニット移動装置15などによって構成されている。Y方向ヘッドユニット移動装置14とX方向ヘッドユニット移動装置15とは、それぞれボールねじ軸14a,15aをサーボモータ14b,15bによって回転させ、被駆動部材(可動レール12やヘッドユニット13)に取付けられたボールねじナット14c,15cを移動させる構造のものである。
【0025】
前記ヘッドユニット13には、電子部品を吸着するための複数の吸着ヘッド16がX方向に等間隔おいて並ぶように設けられている。これらの吸着ヘッド16の下端部には、電子部品を吸着するための吸着ノズル17が取付けられている。この実施例による吸着ノズル17は、部品吸着時の衝撃を緩和するための緩衝機構を備えていないものが用いられている。
【0026】
また、前記複数の吸着ヘッド16は、図示してはいないが、前記吸着ノズル17を昇降させるための昇降装置と、吸着ノズル17を上下方向の軸線回りに回転させるための回転装置とを備えている。これらの吸着ヘッド16に取付けられた吸着ノズル17は、前記テープフィーダ5の部品吸着部5aに上方から接近し、部品吸着部5aに位置決めされている電子部品に接触する。このように吸着ノズル17が電子部品に接触することによって、電子部品が吸着ノズル17に吸着されることになる。以下においては、吸着ノズル17が電子部品に向けて下降を開始してから電子部品に接触するまでの工程を単に電子部品の吸着時という。
【0027】
テープフィーダ5を支持する電子部品用支持装置6は、図2に示すように、テープフィーダ5を下方から支える構成が採られている。すなわち、この電子部品用支持装置6は、吸着ノズル17によって電子部品を吸着する部品吸着位置A(図1参照)に設けられている。なお、図2は、電子部品用支持装置6に1台のテープフィーダ5を装填した状態で描いてある。
この実施例による電子部品用支持装置6は、図2〜図5に示すように、前記テープフィーダ5が装填される電子部品支持部21と、この電子部品支持部21を支持する衝撃吸収部22とを備えており、前記基台2に取付けられている。
【0028】
前記電子部品支持部21は、図2、図3および図5に示すように、下方に向けて開放する断面コ字状に形成された支持用フレーム23(図5参照)に位置決め部材23a〜23cおよびテープフィーダ接続用コネクタ24などを取付けることによって形成されている。これらの位置決め部材23a〜23cとコネクタ24とは、各テープフィーダ5がX方向に所定の間隔をおいて並ぶように構成されている。
【0029】
前記コネクタ24は、テープフィーダ5内の電装部品(図示せず)と基台2側の表面実装機用制御装置(図示せず)とを接続するためのものである。
前記支持用フレーム23は、図5に示すように、同図において左右方向(X方向)に延在するフィーダ支持用プレート25と、このプレート25の両端部に取付けられた一対のサイドプレート26とによって構成されている。
【0030】
前記衝撃吸収部22は、図5に示すように、前記電子部品支持部21(フィーダ支持用プレート25)の下方近傍においてフィーダ支持用プレート25を支承する上部プレート31と、この上部プレート31とともに前記電子部品支持部21を電子部品の吸着時に所定のタイミングで下方に移動させる電動式の緩衝機構32とを備えている。
前記上部プレート31は、前記フィーダ支持用プレート25の長手方向(X方向)の一端部から他端部に至るような長さの平板状に形成されており、水平に延在するように後述する緩衝機構32の下部プレート33に支持されている。
【0031】
前記上部プレート31の長手方向の一端部と他端部とには、複数の高さ調節用ボルト34がそれぞれ螺着されている。これらの高さ調節用ボルト34の上端部は、フィーダ支持用プレート25に横方向への移動が規制された状態で回転自在に接続されている。高さ調節用ボルト34における上部プレート31より下に突出する下端部には、ロックナット35が螺着されている。すなわち、この高さ調節用ボルト34の高さ(上部プレート31にねじ込む量)を変えることによって、吸着ノズル17によって電子部品が精度高く正しく吸着されるように、電子部品支持部21およびテープフィーダ5の高さや水平に対する傾斜角度などを調整することができる。
【0032】
前記緩衝機構32は、図5に示すように、前記上部プレート31を上下方向に移動自在に支持するガイド部材36と、上部プレート31を上下方向に駆動する駆動装置37とによって構成されている。
ガイド部材36は、前記上部プレート31にスライドガイド38を介して接続された前記下部プレート33と、この下部プレート33のX方向の両端部から下方に延在する脚部材39とによって構成されている。
【0033】
前記スライドガイド38は、前記上部プレート31に固定された円柱状のガイドロッド38aと、このガイドロッド38aが移動自在に嵌入した状態で下部プレート33に固定された円筒状のスライダ38bとを備えている。このスライドガイド38は、上部プレート31が下部プレート33に対して上下方向、すなわち吸着ノズルが部品吸着動作のために上下する方向と略同一方向にのみ移動できるように上部プレート31の移動方向を規制しており、電子部品が精度高く正しく吸着できるようになっている。前記ガイドロッド38aと前記スライダ38bとは、いわゆる直動式のボール軸受やすべり軸受を構成するように形成することができる。
【0034】
前記下部プレート33は、前記上部プレート31と略同じ長さを有する平板状に形成されている。前記脚部材39の下端部は、前記基台2に固定されている。すなわち、前記下部プレート33は、前記脚部材39を介して前記基台2に支持、固定されている。
【0035】
前記駆動装置37は、前記下部プレート33に取付けられたサーボモータ41と、このサーボモータ41の回転を昇降動作に変換するためのボールねじ機構42と、サーボモータ41の回転速度を制御するとともに回転方向を切換えるコントローラ(図示せず)とによって構成されている。
サーボモータ41は、回転軸41aの軸線が上下方向と平行になるとともに、回転軸41aの上端部が下部プレート33の貫通穴33a内に臨む状態で下部プレート33の下面に取付けられている。
【0036】
前記ボールねじ機構42は、サーボモータ41と同一軸線上に位置付けられており、前記回転軸41aの上端部に一体に回転するように接続されたボールねじ軸42aと、このボールねじ軸42aに螺合するとともに上部プレート31に固定されたボールねじナット42bとから構成されている。すなわち、この駆動装置37を備えた衝撃吸収部22においては、サーボモータ41がコントローラによる制御によって動作し、その回転軸41aが一方に回転することによって、上部プレート31と電子部品支持部21とが上下方向の一方に移動し、前記回転軸41aが他方に回転することによって、上部プレート31と電子部品支持部21とが上下方向の他方に移動する。
【0037】
電子部品支持部21には、多数のテープフィーダ5が装填されているから、サーボモータ41が回転することによって、全てのテープフィーダ5が同時に上昇または下降することになる。
前記コントローラは、電子部品の吸着時(吸着ノズル17が電子部品を吸着する工程)には、テープフィーダ5が所定位置まで上昇し、その後、テープフィーダ5が吸着ノズル17の下降する速度より低い速度で下降するように、サーボモータ41を動作させる。このように電子部品の吸着時にテープフィーダ5が下降することによって、電子部品に吸着ノズル17が接触したことによって加えられる衝撃を緩和することができる。このコントローラは、表面実装機1による実装動作を制御する制御装置によって構成することができる。
【0038】
ここで、サーボモータ41の動作を制御するコントローラの構成、言い換えれば衝撃吸収部22の動作を図6〜図9によって説明する。
図6および図7は、電子部品用支持装置6の動作を説明するためのフローチャートである。図8および図9は、電子部品用支持装置6の構成を模式的に示すもので、一つのテープフィーダ5を電子部品用支持装置6に支持させた状態で描いてある。また、図8および図9においては、吸着ノズル17とテープフィーダ5の高さの変化を時系列的に表した(A)〜(J)によって示し、電子部品を符号100で示す。これらの図において、前記図1〜図5によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0039】
電子部品100の吸着時には、先ず、図6に示すフローチャートのステップS1に示すように、表面実装機1に設けられている4箇所の部品供給部Pのうち、電子部品100を吸着する対象となる部品供給部Pを判別する。そして、ステップS2に示すように、対象となる部品供給部Pの電子部品用支持装置6において、テープフィーダ5を元の位置H0 から予め定めた所定距離H1 だけ上昇させる{図8(A)〜(B)}。
【0040】
次に、ステップS3〜S6に示すように、部品移動装置8のヘッドユニット13を移動させ、吸着ノズル17とテープフィーダ5の部品吸着部5aとの距離が予め定めた距離Dに達したときに、吸着ヘッド16に下降動作を開始させる。吸着ヘッド16を下降させるときの速度は、後述するステップS7〜S9で設定する。
ステップS7においては、吸着ノズル17と目標位置(上昇前のテープフィーダ5の部品吸着部5aであって前記位置H0 )との距離H2 を求める。
【0041】
ステップS8〜S9においては、前記距離H2 が予め定めた所定距離(指定値)に達した後、吸着ノズル17が現在位置から前記目標位置まで下降するときの吸着ノズル17の下降速度を決めるために第1の速度カーブV1を取得する。この第1の速度カーブV1は、吸着ノズル17の高さ毎に複数種類設定してメモリ(図示せず)に記憶させてあり、コントローラが吸着ノズル17の現在位置に対応するものをメモリから読み出す。
【0042】
この実施例による第1の速度カーブV1は、図10に示すように、吸着ノズル17の下降速度が一定の割合で低下するように設定されている。図10は吸着ノズル17とテープフィーダ5の上昇・下降時の速度変化を示すグラフである。図10においては、吸着ノズル17の速度変化を実線で示し、テープフィーダ5の速度変化を破線で示してある。吸着ノズル17は、前記第1の速度カーブV1に倣う速度で下降する。
【0043】
前記第1の速度カーブV1を取得した後、ステップS10において、第1の速度カーブV1に基づいてテープフィーダ5の下降速度を決めるために第2の速度カーブV2(図10参照)を求める。この第2の速度カーブV2は、第1の速度カーブV1によって設定される下降速度を、吸着ノズル17が電子部品100に接触するまでの期間の全域において所定の割合(1/N)で除算することによって求める。そして、ステップS11において、テープフィーダ5を前記第2の速度カーブV2に倣う速度で上昇前の位置H0 に達するまで下降させる{図8(C)〜(E)}。
【0044】
すなわち、テープフィーダ5は、吸着ノズル17の下降する速度より低い速度で下降する。なお、テープフィーダ5の下降する速度は、テープフィーダ5が下降している途中であって、前記位置H0 に到達する直前に吸着ノズル17がテープフィーダ5上の電子部品100に接触するように設定されている。このため、吸着ノズル17は、下降している電子部品100に上方から接触することになる。吸着ノズル17が電子部品100に接触した後は、僅かな時間だけ吸着ノズル17が電子部品100を下方へ押圧する。このときは、電子部品100を保持するテープが僅かに撓むことになるから、電子部品100に過大な荷重が加えられることはない。
【0045】
吸着ヘッド16とテープフィーダ5の下降動作は、吸着ノズル17が電子部品100に接触した直後に完了し(ステップS12)、引き続いて吸着ノズル17に電子部品100が負圧によって吸着される(ステップS13)。
前記ステップS13において電子部品100が吸着ノズル17に吸着された後、図7に示すフローチャートのステップS14に示すように、コントローラは、吸着ノズル17が現在位置から予め定めた目標位置(図9に示す位置H0−H1)まで上昇するときの吸着ノズル17の上昇速度を決めるために第3の速度カーブV3を取得する。
【0046】
この第3の速度カーブV3もメモリに記憶させてあり、コントローラによってメモリから読み出される。この実施例による第3の速度カーブV3は、図10に示すように、吸着ノズル17の上昇速度が一定の割合で増大するように設定されている。吸着ノズル17は、この第3の速度カーブV3に倣う速度で上昇する。
【0047】
このように第3の速度カーブV3を取得した後、ステップS15において、吸着ヘッド16を前記第3の速度カーブV3に倣う速度で上昇させ、ステップS16において、第3の速度カーブV3に基づいてテープフィーダ5の上昇速度を決めるために第4の速度カーブV4(図10参照)を求める。この第4の速度カーブV4は、第3の速度カーブV3によって設定される上昇速度を、吸着ノズル17が目標位置に上昇するまでの期間の全域において所定の割合(1/N)で除算することによって求める。そして、ステップS17において、テープフィーダ5を前記第4の速度カーブV4に倣う速度で前記目標位置まで上昇させる{図9(F)〜(H)}。
【0048】
すなわち、テープフィーダ5は、吸着ノズル17の上昇する速度より低い速度で上昇する。テープフィーダ5が前記目標位置に達した後、ステップS17〜S18に示すように、テープフィーダ5を元の位置H0 に下降させる{図9(I)〜(J)}。
このような衝撃吸収部22の緩衝動作は、ヘッドユニット13に設けられている各吸着ヘッド16において吸着動作を行う毎に実施される。
【0049】
上述したように構成された電子部品用支持装置6を備えた表面実装機1においては、吸着ノズル17が下降して電子部品に接触するときに衝撃吸収部22の動作により電子部品支持部21とともにテープフィーダ5が下がるから、電子部品に加えられる衝撃が緩和される。
この実施例においては、4台ある電子部品用支持装置6のそれぞれにおいて、複数の吸着ノズル17においてそれぞれ電子部品を吸着するときに生じる衝撃を一つの衝撃吸収部22によって緩和することができる。
【0050】
したがって、この実施例によれば、吸着ノズル17による吸着時に電子部品に加えられる衝撃を緩和するに当たって、複数の吸着ノズル17を使用しているにもかかわらず価格がそれほど高くなることがない電子部品用支持装置6を提供することができる。
また、この実施例によれば、吸着ノズル側に緩衝機構を設けなくてよいから、緩衝機構を備えていない単純な構造の吸着ノズル17を使用することができ、吸着ノズル側の部材、すなわち吸着ノズル17が取付けられる吸着ヘッド16や、複数の吸着ヘッド16を並べて支持するヘッドユニット13などをコンパクトに形成することができるという利点もある。
【0051】
この実施例による表面実装機1は、上述した電子部品用支持装置6を備えているから、電子部品に大きな衝撃が加えられることがないようにしながら、吸着ノズル17を高速で下降させて実装効率を向上させることができる。
したがって、この実施例によれば、上述した電子部品用支持装置6を備えることにより実装効率のさらなる向上とコストダウンとを図ることが可能な表面実装機1を提供することができる。
【0052】
この実施例による緩衝機構32は、前記電子部品支持部21を昇降自在に支持するガイド部材36と、前記吸着ノズル17が電子部品を吸着する工程で前記電子部品支持部21を吸着ノズル17の下降する速度より低い速度で下降させる駆動装置37とによって構成されている。
このため、この実施例によれば、電動式の駆動装置37によって電子部品を下降させることができ、電子部品が下降している途中で吸着ノズル17を接触させることができる。
【0053】
前記駆動装置は、サーボモータ41を動力源としているから、緩衝機構32による電子部品支持部21の下降速度を容易に制御することができる。
したがって、この実施例による電子部品用支持装置6によれば、電子部品の下降速度を電子部品のサイズや種類に対応した適正な速度になるように精度よく制御することができる。
【0054】
この実施例による電子部品用支持装置6は、衝撃吸収式の吸着ノズルが既に装備されている表面実装機に搭載することができる。この場合は、吸着ノズル側と部品供給部側との両方で衝撃をさらに緩和することができる。
【0055】
この実施例による緩衝機構32の駆動装置37は、吸着ノズル17が電子部品を吸着して上昇する工程でテープフィーダ5が吸着ノズル17の上昇する速度より低い速度で上昇するように構成されている。このため、この実施例においては、電子部品が上昇しながら吸着ノズル17によってテープフィーダ5から引き上げられるから、吸着ノズル17が上昇する工程で電子部品が吸着ノズル17から脱落するようなことをも防ぐことができる。
【0056】
特に、吸着ノズルとしてノズル本体が弾性体の弾発力に抗して後退可能に構成された衝撃吸収式のものを使用する場合は、効果が顕著に現れる。これは以下の理由による。
この実施例による表面実装機1を含めて一般的な表面実装機1において、吸着ノズルが上昇するときの速度は、上述した速度カーブV3のように、初速度0から所定の最大速度まで漸次増大するように設定されている。
【0057】
一方、前記弾性体は、吸着ノズルが電子部品を吸着したときに弾性変形する。この吸着ノズルに電子部品を吸着させた後に吸着ノズルが上昇するときには、先ず、前記弾性体の弾性変形が解消されるように弾性体が復元し、その後、ノズル本体が上昇するようになる。このようにノズル本体が上昇することによって、電子部品がテープフィーダ5から上方に引き上げられる。
【0058】
従来の表面実装機においては、前記弾性体が復元しているときには、吸着ノズルの上昇する速度が漸次増大しているにもかかわらずノズル本体と電子部品とは停止しており、前記復元が完了した瞬間に電子部品がそのときの吸着ノズルの上昇速度で引き上げられていた。このため、電子部品が上昇するときの加速度が著しく大きくなるために、吸着ノズルから脱落してしまうおそれがあった。
【0059】
しかし、この実施例によれば、前記弾性体が復元しているときに前記駆動装置37による駆動によって電子部品を吸着ノズルより低い速度で上昇させることができる。すなわち、テープフィーダ5、電子部品および吸着ノズルのノズル本体が一体に上昇している状態で、前記弾性体の復元が完了し、電子部品が吸着ノズル17によってテープフィーダ5から上に引き上げられる。
【0060】
このため、弾性体の復元が完了した瞬間にそのときの吸着ノズルの上昇速度を初速度として電子部品が上方へ引き上げられる従来の表面実装機に較べて、電子部品の上昇時の加速度が小さくなり、電子部品が脱落し難くなる。
この実施例による表面実装機1は、このように吸着後に電子部品が脱落し難い電子部品用支持装置6を備えているから、電子部品の脱落が原因で停止するようなことは殆ど無く、実装効率を高く保つことができる。また、ノズルの上昇速度を高速化することが可能となり、部品実装をより高速化することができる。
【0061】
(第2の実施例)
上述した第1の実施例では、テープフィーダ5を表面実装機1の基台2に支持させる例を示したが、テープフィーダ5は、図11〜図16に示すように、台車51に支持させることができる。これらの図11〜図16に示す台車51を備えた表面実装機によって、本発明の請求項6に記載した表面実装機が構成されている。これらの図において、前記図1〜図5によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。なお、図11〜図16には図示してはいないが、この実施例を実施する際に用いる表面実装機は、図1に示した表面実装機1とは、電子部品供給装置7の構成が異なるだけで他の構成は同一のものである。また、これらの図においては、表面実装機の中央部(プリント配線板4が位置する実装部)を指向する方向を台車51の前方として矢印Fで示す。
【0062】
図11〜図16に示す台車51は、多数のテープフィーダ5(図示せず)と、各テープフィーダ5に送るテープのテープリール52とが装填された状態で走行できるように形成されている。すなわち、この台車51は、表面実装機1(図示せず)の基台2に対して移動可能に構成されている。
【0063】
この台車51は、図11に示すように、複数の車輪53を有する台車本体54と、この台車本体54の上端部に前方(表面実装機1に近接する一方)へ突出するように設けられたアーム55とを備えている。
台車本体54には、テープリール52を回転可能に支持するための支持装置56が設けられている。
【0064】
前記アーム55は、台車本体54の上端部に昇降自在に支持されている。このアーム55は、通常は台車本体54から取外されることはないが、図12と図14〜図16に示すアーム55は、台車本体54から取外した状態で描いてある。
このアーム55は、左右一対のアーム本体57,57の前端部どうしをフィーダ支持用プレート25(図11,12参照)により接続することによって形成されている。
【0065】
フィーダ支持用プレート25には、多数のテープフィーダ5を所定位置に位置決めするとともに固定するための位置決め部材23a〜23dと、テープフィーダ接続用コネクタ24とが設けられている。このコネクタ24は、テープフィーダ5内の電装部品と基台2側の表面実装機用制御装置(図示せず)とを接続するためのものである。このコネクタ24は、前記アーム55を後述する基台2側の支持部材61に装着することによって、基台2側の制御装置(図示せず)に電気的に接続される。
また、このアーム55は、後述する支持部材61に着脱自在に取付けることができるように形成されている。
【0066】
前記支持部材61は、前記アーム55と協働して本発明でいう電子部品支持部21を構成するもので、図16に示すように、衝撃吸収部22を介して基台2に支持されている。図16は、図15におけるXVI−XVI線断面図である。
この実施例による支持部材61の左右方向(X方向)の両端部には、図13に示すように、前記アーム55の両端部を支持するために、ガイドレール62とガイド溝63とからなる嵌合部64が設けられている。これらの嵌合部64は、前記アーム55のアーム本体57が後方からスライドして嵌合できるように形成されており、アーム本体57が嵌合した状態において、アーム本体57の支持部材61に対する上下方向への移動を規制する。
【0067】
この実施例による衝撃吸収部22は、図14に示すように、電動式の緩衝機構32のみによって構成されている。この緩衝機構32は、支持部材61と基台2との間に介装された2つのスライドガイド38と、2つのボールねじ機構42を有する駆動装置37とによって構成されている。これらのスライドガイド38とボールねじ機構42とは、下方から見て略四角形状を呈する支持部材61の対角線上に位置するように配設されている。
【0068】
前記スライドガイド38は、支持部材61が基台2に対して上下方向にのみ移動するように構成されている。
2つのボールねじ機構42のボールねじ軸(図示せず)どうしは、第1の伝動用ベルト65を有する伝動機構によって互いに連動するように連結されている。この実施例による駆動装置37は、前記第1の伝動用ベルト65が巻掛けられている従動プーリ66に第2の伝動用ベルト67によりサーボモータ41の動力を伝達することによって、2つのボールねじ機構42を同時に駆動する構成が採られている。
【0069】
すなわち、この衝撃吸収部22においては、サーボモータ41による駆動によって支持部材61が昇降し、これに伴って台車51のアーム55と、このアーム55に装填されているテープフィーダ5とが同時に昇降する。
【0070】
この実施例による電子部品用支持装置6を有する表面実装機は、台車51のアーム55に取付けられたテープフィーダ5によって電子部品が供給される。前記アーム55は、基台2側の支持部材61に取付けられた状態でこの支持部材61と一体に昇降することができる。このため、この実施例によれば、基台2側に設けられている緩衝機構32を使用して台車51側の電子部品に加えられる衝撃を緩和することができる。
【0071】
したがって、台車51には緩衝機構32が設けられていないから、台車51の重量が重くなることはなく、台車51を移動させ難くなることはない。台車51は、1台の表面実装機に対して複数用意しておき、適宜交換して使用するものである。この実施例によれば、基台2側に緩衝機構32が設けられており、一つの緩衝機構32を複数の台車51で使用することができるようになるから、台車51毎に緩衝機構を装備する場合に較べて製造コストを低減することができる。
【0072】
(第3の実施例)
表面実装機1に電子部品を供給するに当たっては、トレイフィーダを用いることができる。トレイフィーダを用いる場合の一実施例を図17〜図19によって詳細に説明する。これらの図17〜図19に示すトレイフィーダ71を備えた表面実装機によって、本発明の請求項7に記載した表面実装機が構成されている。図17〜図19において、前記図1〜図5によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。なお、図17〜図19には図示してはいないが、この実施例を実施する際に用いる表面実装機は、図1に示した表面実装機1とは、電子部品供給装置7の構成が異なるだけで他の構成は同一のものである。また、これらの図においては、表面実装機の中央部を指向する方向をトレイフィーダ71の前方として矢印Fで示す。
【0073】
図17に示すトレイフィーダ71は、基台2との接続部分の構造が異なる他は従来からよく知られているものと同じ構造のものである。このトレイフィーダ71は、図17に示すように、多数の電子部品が載せられたトレイ72(図18参照)を収納するトレイストッカ73と、前記トレイ72をトレイストッカ73内の収納位置と前方の部品吸着位置Aとの間で移動させるトレイ用移動装置74とによって構成されている。
【0074】
トレイ72には、図示してはいないが、多数の電子部品をX方向とY方向とに並べて収納する部品収納部が設けられている。この実施例においては、このトレイ72によって本発明でいう部品供給部材が構成されている。
前記トレイストッカ73は、複数のトレイ72を上下方向に重ねた状態で収納するとともに、これらのトレイ73を上下方向に移動する昇降装置(図示せず)を備えている。トレイ73は、前記昇降装置による駆動によって、後述するトレイ用移動装置74のガイドレール75と同じ高さに位置付けられ、トレイ用移動装置74によって部品吸着位置Aに引き出される。
【0075】
トレイ用移動装置74は、トレイ72の前端部に突設されている係合片72a(図18参照)に係合する爪部材76(図17参照)を電動式のスライド機構77によってY方向に平行移動させる構成が採られている。スライド機構77は、従来からよく知られているトレイフィーダに用いられているものと同じ構造のもので、図17に示すように、ベースプレート78上のY方向レール79と、このレール79に移動自在に支持されるとともに前記爪部材76が設けられたスライダ80と、このスライダ80をベルト81,82によって駆動するサーボモータ83などによって構成されている。前記ベースプレート78は、図18に示すように、基台2に複数の支柱84を介して支持されている。
【0076】
前記ガイドレール75は、トレイ72の左右方向(X方向)の両端部を移動自在に支承した状態で前後方向(Y方向)に移動させることができるように構成されている。この実施例によるガイドレール75は、トレイストッカ73に近接するように位置する後側ガイドレール85と、部品吸着位置A側に位置する前側ガイドレール86とに分割されて形成されている。
【0077】
後側ガイドレール85は、前記ベースプレート78に支持、固定されている。
前側ガイドレール86は、図19に示すように、衝撃吸収部22の上部プレート31に固定されており、衝撃吸収部22を介して基台2に支持されている。この実施例による衝撃吸収部22は、前記上部プレート31と、この上部プレート31を支持する電動式の緩衝機構32とによって構成されている。この実施例においては、前記前側ガイドレール86によって、本発明でいう電子部品支持部21が構成されているとともに、本発明の請求項7記載の発明でいうトレイ用支持部材が構成されている。
【0078】
この実施例による緩衝機構32は、前記上部プレート31と基台2との間に介装された2つのスライドガイド38と、2つのボールねじ機構42を有する駆動装置37とによって構成されている。これらのスライドガイド38とボールねじ機構42とは、下方から見て略四角形状を呈する上部プレート31の対角線上に位置するように配設されている。
前記スライドガイド38は、上部プレート31が基台2に対して上下方向のみに移動するように構成されている。
【0079】
2つのボールねじ機構42のボールねじ軸42a,42aどうしは、伝動用ベルト87を有する伝動機構によって互いに連動するように連結されている。この実施例による駆動装置は、前記伝動用ベルト87にサーボモータ41の動力を伝達することによって、2つのボールねじ機構42を同時に駆動する構成が採られている。
すなわち、この衝撃吸収部22においては、サーボモータ41による駆動によって上部プレート31が昇降し、これに伴ってトレイフィーダ71の前側ガイドレール86と、この前側ガイドレール86に載せられているトレイ72とが同時に昇降する。
【0080】
この実施例においては、多数の電子部品を水平方向に並べて収納するトレイ72によって部品供給部材が構成され、前記トレイ72を部品吸着位置Aと前記収納位置との間で移動させるトレイフィーダ71によって電子部品供給装置7が構成されている。
このため、この実施例においては、電子部品を吸着するときにトレイ72が下がることによって、電子部品に加えられる衝撃が緩和される。したがって、この実施例によれば、トレイフィーダ71を使用する表面実装機において、実装効率の向上とコストダウンとを図ることができる。
【0081】
(第4の実施例)
上述した各実施例では衝撃吸収部22が表面実装機の基台2に支持されている例を示したが、テープフィーダ5を移動させるために台車を使用する場合は、図20〜図22に示すように、衝撃吸収部22を台車に設けることができる。図20〜図22において、前記図1〜図5によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。これらの図20〜図22に示すアーム91を有する台車が接続された表面実装機によって、本発明の請求項8に記載した表面実装機が構成されている。なお、図20〜図22には図示してはいないが、この実施例を実施する際に用いる表面実装機は、図1に示した表面実装機とは、電子部品供給装置7の構成が異なるだけで他の構成は同一のものである。また、これらの図においては、表面実装機の実装部を指向する方向を台車の前方として矢印Fで示す。
【0082】
図20〜図22は、テープフィーダ支持用台車のアーム部分のみを描いたものである。これらの図において符号91で示すアームは、図示していない台車の一部として構成されたものであり、台車の上端部に前方(表面実装機を指向する方向)へ突出するように取付けられる。この実施例においては、アーム91を有する台車によって本発明でいう電子部品用支持装置6が構成されている。アーム91が設けられる台車としては、前記図11に示した台車51と同等のものを用いることができる。
【0083】
アーム91は、左右一対のアーム本体92,92と、これらのアーム本体92の前端部に衝撃吸収部22(図21参照)を介して支持された電子部品支持部21とから構成されている。
前記アーム本体92は、台車の台車本体に昇降可能に支持されており、基台2側に設けられている台車接続部(図示せず)に接続されることによって、上下方向に位置決めされるように構成されている。
【0084】
この実施例による衝撃吸収部22は、図21に示すように、アーム本体57の前端部に取付けられた下部プレート33を有する緩衝機構32と、電子部品支持部21のフィーダ支持用プレート25を支承する上部プレート31とによって構成されている。
この実施例による緩衝機構32は、図21および図22に示すように、上部プレート31と下部プレート33との間に介装された2つのスライドガイド38と、2つのボールねじ機構42を有する駆動装置37とによって構成されている。なお、図22は、前記下部プレート33を取外した状態で描いてある。前記スライドガイド38とボールねじ機構42とは、下方から見て略四角形状を呈する上部プレート31の対角線上に位置するように配設されている。
【0085】
前記スライドガイド38は、上部プレート31が下部プレート33に対して上下方向のみに移動するように構成されている。
2つのボールねじ機構42のボールねじ軸42aどうしは、第1の伝動用ベルト93を有する伝動機構によって互いに連動するように連結されている。この実施例による駆動装置37は、前記第1の伝動用ベルト93が巻掛けられている従動プーリ94に第2の伝動用ベルト94によりサーボモータ41の動力を伝達することによって、2つのボールねじ機構42を同時に駆動する構成が採られている。
【0086】
前記電子部品支持部21は、図20に示すように、前記上部プレート31に支承されたフィーダ支持用プレート25と、このプレート25に設けられた位置決め部材23a〜23dおよびテープフィーダ接続用のコネクタ24などによって構成されている。前記コネクタ24は、テープフィーダ5内の電装部品と基台2側の表面実装機用制御装置(図示せず)とを接続するためのものである。このコネクタ24は、前記アーム91を基台2側の台車接続部に接続することによって、前記表面実装機用制御装置に電気的に接続される。
【0087】
すなわち、この実施例においては、前記サーボモータ41による駆動によって前記上部プレート31が昇降し、これに伴って電子部品支持部21と、この電子部品支持部21に装填されているテープフィーダ5とが同時に昇降する。
この実施例による緩衝機構32のサーボモータ41は、電子部品支持部21に搭載されるテープフィーダ5の重量に対応する性能のものが選択されて装備されている。例えば、重量が重いテープフィーダ5が多く装填される場合は、相対的に出力が大きいサーボモータ41が搭載され、軽量なテープフィーダ5が多く装填される場合には、相対的に出力が小さいサーボモータ41が搭載される。
【0088】
この実施例においては、アーム91を有する台車によって電子部品用支持装置6が構成されている。このため、台車に緩衝機構32が設けられているから、台車に装填可能なテープフィーダ5の重量に対応した適正な緩衝性能を有する表面実装機を提供することができる。
【0089】
上述した各実施例においては、サーボモータ41の動力で動作する緩衝機構32を使用する例を示したが、本発明に係る緩衝機構は、吸着ノズル17が電子部品に接触したときにゴムやばねなどからなる弾性部材が弾性変形することによって電子部品支持部21が下がるように構成することができる。
【0090】
また、上述した各実施例に示す表面実装機1は、吸着ノズル17として、衝撃を吸収する緩衝機構を備えていないものを用いているが、衝撃吸収部22の緩衝機構32と衝撃吸収式の吸着ノズルとを併用してもよい。衝撃吸収式の吸着ノズルを併用することによって、電子部品に加えられる衝撃をより一層低減することができる。
【0091】
加えて、上述した各実施例では本発明に係る電子部品用支持装置6を表面実装機1に適用した例を示したが、この電子部品用支持装置6は、ICハンドラの電子部品収納部に適用することができる。ICハンドラは、未検査の電子部品を電子部品収納部と検査装置との間で移動させるためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る表面実装機の構成を示す平面図である。
【図2】電子部品用支持装置の後斜め上方から見た斜視図である。
【図3】電子部品用支持装置の前斜め下方から見た斜視図である。
【図4】電子部品用支持装置の底面図である。
【図5】電子部品用支持装置の断面図で、同図は図4におけるV−V線断面図である。
【図6】電子部品用支持装置および表面実装機の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】電子部品用支持装置および表面実装機の動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】部品吸着時の動作を説明するための図である。
【図9】吸着ノズルが上昇するときの動作を説明するための図である。
【図10】吸着ノズルとテープフィーダの昇降時の速度変化を示すグラフである。
【図11】テープフィーダ支持用台車と電子部品用支持装置とを示す斜視図である。
【図12】電子部品用支持装置を示す斜視図である。
【図13】台車のアームが取外された電子部品用支持装置を示す斜視図である。
【図14】緩衝機構の斜め下方から見た斜視図である。
【図15】電子部品用支持装置の平面図である。
【図16】電子部品用支持装置の断面図で、同図は図15におけるXVIーXVI線断面図である。
【図17】トレイフィーダと電子部品用支持装置とを示す斜視図である。
【図18】電子部品用支持装置の前斜め上方から見た斜視図である。
【図19】電子部品用支持装置の前斜め下方から見た斜視図である。
【図20】電子部品用支持装置の後斜め上方から見た斜視図である。
【図21】電子部品用支持装置の前斜め下方から見た斜視図である。
【図22】電子部品用支持装置の前斜め下方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0093】
1…表面実装機、2…基台、3…コンベア、5…テープフィーダ、6…電子部品用支持装置、7…電子部品供給装置、8…部品移動装置、17…吸着ノズル、21…電子部品支持部、22…衝撃吸収部、31…上部プレート、32…緩衝機構、33…下部プレート、36…ガイド部材、37…駆動装置、38…スライドガイド、41…サーボモータ、51…台車、55,91…アーム、61…支持部材、71…トレイフィーダ、72…トレイ、86…前側ガイドレール、100…電子部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着ノズルによって電子部品を吸着する部品吸着位置に設けられ、前記電子部品を有する部品供給部材を支持する電子部品支持部と、
前記電子部品支持部を支持する衝撃吸収部とを備え、
前記衝撃吸収部は、電子部品の吸着時に前記電子部品支持部が下方に移動する緩衝機構を備えている電子部品用支持装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子部品用支持装置において、前記緩衝機構は、前記電子部品支持部を昇降自在に支持するガイド部材と、
前記吸着ノズルが電子部品を吸着する工程で前記電子部品支持部を吸着ノズルの下降する速度より低い速度で下降させる駆動装置とによって構成されている電子部品用支持装置。
【請求項3】
請求項2記載の電子部品用支持装置において、前記駆動装置は、吸着ノズルが電子部品を吸着して上昇するときに電子部品支持部を吸着ノズルの上昇する速度より低い速度で上昇させる構成が採られている電子部品用支持装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちいずれか一つに記載の電子部品用支持装置および前記部品供給部材を有する電子部品供給装置と、
前記部品供給部材の電子部品を複数の吸着ノズルによって吸着して移動させる部品移動装置と、
この部品移動装置によって電子部品が実装されるプリント配線板を支持する基板搬送装置とを備えている表面実装機。
【請求項5】
請求項4記載の表面実装機において、前記電子部品供給装置、部品移動装置および基板搬送装置が搭載される基台を備え、
前記部品供給部材はテープフィーダによって構成され、
前記電子部品供給装置は、前記テープフィーダと、このテープフィーダと前記基台との間に介装された前記電子部品用支持装置とによって構成されている表面実装機。
【請求項6】
請求項5記載の表面実装機において、前記電子部品用支持装置の電子部品支持部は、前記基台に対して移動可能な台車に昇降自在に支持されかつ前記テープフィーダが取付けられるアームと、
このアームが着脱自在に取付けられる基台側の支持部材とによって構成されている表面実装機。
【請求項7】
請求項4記載の表面実装機において、前記部品供給部材は、多数の電子部品を水平方向に並べて収納するトレイによって構成され、
前記電子部品供給装置は、前記トレイを前記部品吸着位置と収納位置との間で移動させるトレイフィーダによって構成され、
前記電子部品用支持装置の電子部品支持部は、前記部品吸着位置において前記トレイを支持するトレイ用支持部材によって構成されている表面実装機。
【請求項8】
請求項4記載の表面実装機において、前記電子部品供給装置、部品移動装置および基板搬送装置が搭載される基台を備え、
前記部品供給部材はテープフィーダによって構成され、
前記電子部品供給装置は、前記基台に対して移動可能な台車と、
この台車に前記電子部品用支持装置を介して支持された前記テープフィーダとによって構成されている表面実装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−129635(P2010−129635A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300654(P2008−300654)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】