説明

電子部品

【課題】シールドケースのアース用接続部の位置精度が良い。
【解決手段】電子部品本体2と、ケース開口20a側より電子部品本体2に被せることによって電子部品本体2の外周に配置し、ケース開口20aより下方に突出するグランドピン25a,26aを有するシールドケース20とを備えた光コネクタ1であって、シールドケース20に位置被規制部27,28を設け、電子部品本体2に位置被規制部27,28を適正な位置に規制する位置規制部10,11を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドケースを有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来例の電子部品として、特許文献1に開示されたものがある。この電子部品である光コネクタ100は、図9に示すように、電子部品本体101と、この電子部品本体101の外周を被うシールドケース110とを備えている。電子部品本体101は、光ファイバ接続筒部102aを有するハウジング102と、このハウジング102の後面に配置された一対の光トランシーバ(FOT:Fiber Optical Transceiver)103とを備えている。光ファイバ接続筒部102aの前方部は、シールドケース110より突出している。光ファイバ接続筒部102aの後端面は、一対の光トランシーバ103に近接位置で対向している。
【0003】
シールドケース110は、図10(a)、(b)に詳しく示すように、下面側がケース開口110aとされた箱形状である。シールドケース110は、そのケース開口110a側より電子部品本体101に被せることによって、電子部品本体101の外周に配置されている。シールドケース110には、ケース開口110aより下方に突出するアース用接続部であるグランドピン111a〜111cが設けられている。シールドケース110の後面には、左右一対の押圧部112が設けられている。シールドケース110の各押圧部112の下方には、応力対処部113をそれぞれ設けている。各応力対処部113は、内面側に突出する突部形状であり、押圧部112から伝達される応力の分散、吸収、又は緩和を図る。
【0004】
各グランドピン111a〜111cは、光トランシーバ103のリード部103aと共に、基板120の所定の導体部(図示せず)に半田付け等によって接続される。
【0005】
上記従来例では、各光トランシーバ103から外部に射出される電磁波、及び、外部から各光トランシーバ103に入射する電磁波をシールドケース110でシールドするため、電磁波に起因する悪影響を極力防止できる。又、各光トランシーバ103を保持する各押圧部112からの応力を応力対処部113で分散、吸収するため、応力に起因するシールドケース110の下方側の変形を防止し、グランドピン111aの位置変移を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−52153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来例の光コネクタ100では、シールドケース110が電子部品本体101の外周に単に被せられているため、何らかの理由によってシールドケース110の後面に外開き方向の外力(押圧部112に起因しない外力)が作用すると、シールドケース110の後面が容易に外開き方向に変移する。シールドケース110の後面が外開き方向に変移すると、シールドケース110の後面のグランドピン111aが正規位置より変移するため、シールドケース110のグランドピン111aの位置精度を確保することができないという問題がある。シールドケース110のグランドピン111aの位置精度が悪いと、基板実装時に基板120上の他の部品と干渉する恐れがあり、スムーズな基板実装作業を行うことができない。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、シールドケースのアース用接続部の位置精度を確保することができる電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電子部品本体と、ケース開口側より前記電子部品本体に被せることによって前記電子部品本体の外周に配置し、ケース開口より下方に突出するアース用接続部を有するシールドケースとを備えた電子部品であって、前記シールドケースに位置被規制部を設け、前記電子部品本体に前記位置被規制部を適正な位置に規制する位置規制部を設けたことを特徴とする。
【0010】
前記位置規制部は、前記アース用接続部が設けられた前記シールドケースの面の外開き方向と、前記アース用接続部が設けられた前記シールドケースの面の左右方向とを規制することが好ましい。
【0011】
前記シールドケースの一面は、複数の分割ケース片部に分割され、複数の前記分割ケース片部に前記アース用接続部が設けられており、前記位置被規制部と前記位置規制部は、前記アース用接続部が設けられた前記各分割ケース片部にそれぞれ設けられたものに適用することが好ましい。
【0012】
前記電子部品本体は、ハウジングと、電子素子と、前記ハウジングに装着され、前記電子素子を前記ハウジングに固定する電子素子カバーとを備え、前記電子素子カバーに前記位置規制部を設けたものに適用しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、何らかの理由によってシールドケースに外開き方向の外力が作用しても、シールドケースの外開き方向の変移がシールドケースの位置被規制部と電子部品本体の位置規制部によって阻止されるため、シールドケースが外開き方向に変移しない。従って、シールドケースのアース用接続部の位置精度が良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示し、光コネクタの前面側からの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、光コネクタの後面側からの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、光コネクタの前面側からの分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、図2のA−A線断面図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、(a)は電子素子カバーの取付け直前の要部斜視図、(b)は電子素子カバーの取付け状態の要部側面図である。
【図6】本発明の一実施形態を示し、(a)光コネクタの要部後面図、(b)は図2のB−B線断面図である。
【図7】本発明の一実施形態を示し、シールドケースを電子部品本体の上方より装着する過程の斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態を示し、シールドケースを電子部品本体の上方より装着する過程の要部斜視図である。
【図9】従来例の光コネクタの断面図である。
【図10】(a)従来例のシールドケースの斜視図、(b)は従来例のシールドケースの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図3において、電子部品である光コネクタ1は、電子部品本体2と、この電子部品本体2の外周を覆うシールドケース20とを備えている。
【0017】
電子部品本体2は、ハウジング3と、一対のレンズ4と、一対の電子素子である光トランシーバ(FOT:Fiber Optical Transceiver)5と、電子素子カバー6と、オプションピン7とを備えている。
【0018】
ハウジング3は、図4に示すように、内部に仕切壁30を有する。ハウジング3内には、この仕切壁30を境としてコネクタ嵌合室31と部品収容室32が設けられている。コネクタ嵌合室31には、相手側コネクタ(図示せず)が嵌合される。尚、図1〜図3では、コネクタ嵌合室31にダストキャップ8が装着された状態が示されている。ダストキャップ8は、相手コネクタ(図示せず)の未装着時に、コネクタ嵌合室31への塵埃等の侵入を防止するために使用される。
【0019】
仕切壁30には、コネクタ嵌合室31に向かって円筒状の光ファイバ位置決め部33が一対突出されている。相手側コネクタ(図示せず)が嵌合されると、相手側コネクタ(図示せず)の一対の光ファイバ(図示せず)の先端部が各光ファイバ位置決め部33によって位置決めされる。各光ファイバ位置決め部33の内部は、部品収容室32に貫通されている。
【0020】
ハウジング3の仕切壁30より部品収容室32側の底部には、ピン圧入スリット(図示せず)が設けられている。ピン圧入スリット(図示せず)は、部品収容室32の底面に開口している。ハウジング3の仕切壁30より部品収容室32側の上壁部には、センタースリット35が設けられている。センタースリット35は、部品収容室32の上面に開口している。
【0021】
一対のレンズ4は、各光ファイバ位置決め部33の開口に臨むようにして部品収容室32に配置されている。一対のレンズ4は、ハウジング3のセンタースリット35の延長線上の位置を少なくとも空けて並列配置されている。
【0022】
一対の光トランシーバ5は、各レンズ4の後端位置で部品収容室32に配置されている。一対の光トランシーバ5は、例えば一方が発光素子であり、他方が受光素子である。各光トランシーバ5は、下方に突出する複数のリード部5aを有する。各リード部5aは、実装する基板(図示せず)の対応する導体部に半田付け等によって接続される。一対の光トランシーバ5は、ハウジング3のセンタースリット35の延長線上の位置を少なくとも空けて並列配置されている。
【0023】
電子素子カバー6は、一対の光トランシーバ5の双方の後面に配置されている。電子素子カバー6は、図5に示すように、上下位置に挟持壁部6a,6bを有する。電子素子カバー6は、この上下位置の挟持壁部6a、6bでハウジング3の上下の突出壁37a,37bを挟持することによってハウジング3に固定されている。電子素子カバー6によって一対の光トランシーバ5がハウジング3に固定されている。電子素子カバー6の中央位置には、カバー側スリット6cが設けられている。カバー側スリット6cは、電子素子カバー6の上端面に開口して下方に向かって垂直に延びているが、下端面にまで達していない。カバー側スリット6cは、ハウジング3のセンタースリット35の延長線上に位置する。つまり、ハウジング3のセンタースリット35及びその延長線上の空間を利用してシールドケース20の下記する仕切ケース部24が配置されている。
【0024】
各電子素子カバー6の後面には、図6〜図8に詳しく示すように、位置規制部10,11がそれぞれ設けられている。後方から見て左側の位置規制部10は、上方に突出する左側壁部10aと後壁部10bから上面視L字状に構成されている。後方から見て右側の位置規制部11は、上方に突出する右側壁部11aと後壁部11bから上面視逆L字状に構成されている。
【0025】
オプションピン7は、必要に応じて組み付けされるオプション部材である。オプションピン7は、導電性の金属板より形成されている。オプションピン7は、係止孔7aを有する。オプションピン7は、ハウジング3のピン圧入スリット(図示せず)に圧入される。オプションピン7は、その係止孔7aがシールドケース20の係止突部24bに係止することによってシールドケース20に導通される。オプションピン7の各ピン部は、実装する基板(図示せず)のアース用導体部に半田付け等によって接続される。
【0026】
シールドケース20は、導電性の金属板を打ち抜き、折り曲げ加工して形成されている。シールドケース20は、下方面がケース開口20aとされた略箱状である。シールドケース20は、上面ケース部21と左右の側面ケース部22と後面ケース部23を有すると共に、内部の後方を中央で仕切るように配置された仕切ケース部24とを備えている。後面ケース部23は、2枚の分割された分割ケース片部25,26より構成されている。仕切ケース部24は、2枚の分割ケース片部25,26の少なくとも一方の中央側の端面より折り曲げることによって形成されている。仕切ケース部24の先端面には、係止突部24bが設けられている。
【0027】
各側面ケース部22と仕切ケース部24と各分割ケース片部25,26の下端には、アース用接続部であるグランドピン22a,24a,25a,26aが下方に向かって突設されている。各グランドピン22a,24a,25a,26aは、実装する基板(図示せず)のアース用導体部に半田付け等によって接続される。
【0028】
左右の側面ケース部22には、内側への折り曲げによって係止爪22bがそれぞれ設けられている。各係止爪22bはハウジング3に係止されている。これによって、シールドケース20は電子部品本体2より外れないようになっている。
【0029】
各分割ケース片部25,26には、内側への折り曲げによって位置被規制部27,28がそれぞれ設けられている。左側の位置被規制部27には、その先端部の左端にテーパ面27aが形成されている(図6(b)参照)。右側の位置被規制部28には、その先端部の右端にテーパ面28aが形成されている(図6(b)参照)。左右の位置被規制部27,28は、図4及び図6(a)、(b)に示すように、電子素子カバー6の左右の位置規制部10,11にそれぞれ係止されている。
【0030】
次に、シールドケース20の装着作業を説明する。図7に示すように、シールドケース20を、そのケース開口20a側より電子部品本体2に被せる。すると、シールドケース20の両方の側面ケース部22と後面ケース部23が電子部品本体2の外周を徐々に被うと共に、仕切ケース部24がハウジング3のセンタースリット35より部品収容室32に入り込む。そして、シールドケース20の上面ケース部21が電子部品本体2の上面に当接する位置まで被せると、各係止爪22bがハウジング3に係止される。又、仕切ケース部24の下端面が電子素子カバー6のカバー側スリット6cの下端近くまで入り込み、仕切ケース部24が一対の光トランシーバ5の間を仕切る。
【0031】
オプションピン7を装着する場合には、オプションピン7をハウジング3のピン圧入スリット(図示せず)より圧入する。圧入完了位置まで圧入すると、オプションピン7の係止孔7aに仕切ケース部24の係止突部24bが係止する。オプションピン7の上部は、各光トランシーバ7の前面に配置される。
【0032】
このようなシールドケース20の装着過程において、図8に示すように、左右の位置被規制部27,28が電子素子カバー6の左右の位置規制部10,11にそれぞれ係止される(図4及び図6(a)、(b)参照)。
【0033】
何らかの理由によってシールドケース20の後面ケース部23に外開き方向の外力が作用しても、後面ケース部23の外開き方向の変移がシールドケース20の位置被規制部27,28と位置規制部10,11の後壁部10b、11bによって阻止されるため、シールドケース20が外開き方向(図4のA矢印方向)に変移しない。
【0034】
図6(b)に示すように、電子素子カバー6の一対の位置規制部10,11の左側壁部10a及び右側壁部11aが位置被規制部27,28に突き当たることによってシールドケース20の後面ケース部23の左右方向(図6(a)のB矢印方向)の変移を規制する。
【0035】
ここで、後面ケース部23は2つの分割ケース片部25,26に分割されているため、各側面ケース部22の外開き方向の変移によって各分割ケース片部25,26は互いに離間する方向に変移し易い。しかし、左側の位置被規制部27及び左側壁部10aによって左側の分割ケース片部25を中央寄りに規制し、右側の位置被規制部28及び右側壁部11aによって右側の分割ケース片部26を中央寄りに規制するため、左右の分割ケース片部25,26が互いに離間する方向(後面ケース部23のB左右方向)に変移しない。以上より、シールドケース20のグランドピン25a,26aの位置精度を確保することができる。従って、光コネクタ1の基板実装時に、基板(図示せず)上の他の部品と干渉する恐れがなく、スムーズな実装作業を行うことができる。
【0036】
位置被規制部27,28の先端部で、且つ、変移し易い方向にはテーパ面27a,28aを設けたので、シールドケース20の装着過程で、仮に位置被規制部27,28が正規の位置より互いに離間する方向にシフトした位置に位置しても、テーパ面27a,28aによって正規の位置にガイドされるため、装着作業がスムーズである。
【0037】
一対の光トランシーバ5の間は、仕切ケース部24によって仕切られるので、一対の光トランシーバ5間の互いの電磁ノイズによる悪影響をも防止できる。
【0038】
尚、この実施形態では、電子部品は光コネクタ1であるが、本発明は、光コネクタ1以外の電子部品にも適用できるのはもちろんである。
【0039】
尚、この実施形態では、左側の位置規制部10は、上方に突出する左側壁部10aと後壁部10bから上面視L字状に構成されているが、右側壁部を追加して上面視コ字状に構成しても良い。後方から見て右側の位置規制部11は、上方に突出する右側壁部11aと後壁部11bから上面視逆L字状に構成されているが、左側壁部を追加して上面視コ字状に構成しても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 光コネクタ(電子部品)
2 電子部品本体
3 ハウジング
5 光トランシーバ(電子素子)
6 電子部品カバー
10、11 位置規制部
20 シールドケース
20a ケース開口
22a,24a,25a,26a グランドピン(アース用接続部)
23 後面ケース部
25,26 分割ケース片部
27,28 位置被規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品本体と、ケース開口側より前記電子部品本体に被せることによって前記電子部品本体の外周に配置し、前記ケース開口より下方に突出するアース用接続部を有するシールドケースとを備えた電子部品であって、
前記シールドケースに位置被規制部を設け、前記電子部品本体に前記位置被規制部を適正な位置に規制する位置規制部を設けたことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
請求項1記載の電子部品であって、
前記位置規制部は、前記アース用接続部が設けられた前記シールドケースの面の外開き方向と、前記アース用接続部が設けられた前記シールドケースの面の左右方向とを規制することを特徴とする電子部品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の電子部品であって、
前記シールドケースの一面は、複数の分割ケース片部に分割され、複数の前記分割ケース片部に前記アース用接続部が設けられており、
前記位置被規制部と前記位置規制部は、前記アース用接続部が設けられた前記各分割ケース片部にそれぞれ設けられたことを特徴とする電子部品。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電子部品であって、
前記電子部品本体は、ハウジングと、電子素子と、前記電子素子を前記ハウジングに取り付ける電子素子カバーとを備え、
前記電子素子カバーに前記位置規制部を設けたことを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−9749(P2012−9749A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146285(P2010−146285)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】