説明

電極端子の固定構造およびその固定方法

【課題】 再加熱時の位置ズレを防ぐため接着剤を併用する実装において、接着剤が厚い膜層の状態で固化することを防止でき、端子パッドに対して電極端子を隙間なく接面でき、はんだ付けを確実に行い得る電極端子の固定構造およびその固定方法を提供すること
【解決手段】 副基板1は回路パターン上へ電子部品を表面実装することで一つの機能部品になる。基板表面には電極端子4を表面実装するための端子パッド2を形成し、その電極端子4を接面させる表面領域に凹部3を設ける。端子パッド2は2つを並べた2ピースとし、両パッド21,22の間にパターンがない凹所領域を形成して凹部3とする。組み立て実装は、端子パッド2に予めはんだペーストを塗布し、凹部3には熱硬化性の接着剤5を塗布し、次に電極端子4,各電子部品を所定に搭載してこれをリフロー炉に通す。次に副基板1の電極端子4を主基板へ接面させて搭載し、再びリフロー炉に通す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極端子の固定構造およびその固定方法に関するもので、より具体的には、リフロー工程によりはんだ付けする表面実装に係わり、主基板上に副基板を搭載してリフロー炉を通すような再度の加熱工程を有する組み立てにおける電極端子の取り付け支持の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路の実装技術に関して、回路の一部を副基板に構成してモジュール化し、この副基板を主基板に実装する手法がある。例えば、特許文献1,2などに具体例が示されているように、コンピュータ装置では、電源部のDC/DCコンバータなどを副基板に構成してモジュール化し、これをメインボード(主基板)に実装することが行われている。
【0003】
モジュール化した副基板の実装は、特許文献1などに見られるように、接続ピンおよび位置決めピンを副基板に組み付けておき、それらのピンにより主基板と接続する構成がある。しかし、係る構成では、ピンを立てるための孔加工が必要になり、工数やコスト,小型化の面で不利がある。このため、特許文献2などに見られるように、電子部品は基板に表面実装するように、主基板との間に電極端子つまり接続用のチップ部品を介在させる構成としている。
【0004】
基板の組み立て実装は、リフロー工程によりはんだ付けする方法を採ることが多い。この方法は、基板上の各パターンに予めはんだペーストを印刷等により塗布しておき、次に各電子部品を所定に搭載して、これをリフロー炉に通すことによりはんだ付けを行う。
【特許文献1】特開2004−79776号公報
【特許文献2】特開2002−76566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、モジュール化した副基板は、主基板に実装する際はリフロー工程を再度受けることから、再度の加熱により副基板の側ではんだが再溶融あるいは半溶融し、電極端子が動いて位置ズレする問題がある。このため、電極端子の実装には、熱硬化性の接着剤を併用することが行われている。つまり、熱硬化性の接着剤を副基板のパターン面(端子パッド)の近辺(レジスト部位)へ塗布しておき、電極端子を端子パッド上に搭載した際に接面の一部が接着剤に貼り合わさる構成とし、はんだ付け時に固着させるようにしている。したがって、再度のリフロー工程の際に端子パッド側のはんだが再溶融しても接着剤による貼り合わせ側はそのまま固着しており、電極端子の位置ズレを防止できる。
【0006】
しかし、電極端子の実装に熱硬化性の接着剤を併用することでは、端子パッドに接面させたはずの電極端子が浮き上がった状態に固着し、はんだ付け不良を起こすことがある。これは、熱硬化性の接着剤は硬化温度がはんだの溶融温度よりも低く、塗布した接着剤が厚い膜層の状態で固化してしまうことがあり、このため、接着剤の膜厚が厚い場合に端子パッドとの間に隙間ができてしまい、両者間にはんだを密に充填できず、はんだ付けが疎になる不良を起こす。
【0007】
この発明は上記した課題を解決するもので、その目的は、再加熱における位置ズレを防ぐため接着剤を併用する実装において、塗布した接着剤が厚い膜層の状態で固化することを防止でき、端子パッドに対して電極端子を隙間なく接面でき、はんだ付けを確実に行い得る電極端子の固定構造およびその固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電極端子の固定構造は、主基板および副基板の両者に、電極端子を表面実装するための端子パッドを形成し、電極端子を介在させて副基板を主基板上に実装して電気的に接続する電極端子の固定構造において、副基板には電極端子を接面させる表面領域に凹部を設け、当該凹部に熱硬化性の接着剤が塗布させる構成とする。
【0009】
また、端子パッドは第1パッド,第2パッドの2つを並べた2ピースとし、両パッドの間に導体パターンやレジストパターンがない領域を形成して凹部としたり、あるいはまた、端子パッドは略中央部に導体パターンやレジストパターンがない領域を形成して凹部とする構成を採るとよい。
【0010】
また、本発明に係る電極端子の固定方法では、電極端子主基板および副基板の両者に、電極端子を表面実装するための端子パッドを形成し、電極端子を介在させて副基板を主基板上に実装して電気的に接続する電極端子の固定方法であって、副基板には電極端子を接面させる表面領域に凹部を設け、当該凹部に熱硬化性の接着剤を塗布し、そして端子パッドに予めはんだペーストを塗布しておき、次に電極端子を所定に搭載して副基板をリフロー炉に通し、リフロー工程を完了した後に当該副基板上の電極端子を主基板の端子パッドへ接面させて搭載し、これら両基板を再びリフロー炉に通すようにした。
【0011】
したがって本発明では、電極端子を接面させる表面領域に設けた凹部へ接着剤を塗布し、そこへ電極端子を搭載するので、凹部へ塗布した接着剤は、電極端子の重さ、または部品マウンタの抑え力により凹部の領域に広がる。このため、電極端子は副基板のはんだ部位(端子パッド)に密着する。次に、この状態でリフロー炉に通すことから、はんだペーストが溶融して電極端子がはんだ付けになり電気的に接続する。そして、凹部では接着剤が硬化して電極端子の対応部位が固着する。熱硬化性の接着剤は加熱時にはいったん流動性が増す時期があり、凹部で拡散する向きに流れようとする。これは電極端子に対しては引き寄せる向きに作用し、密着する向きに力を発現することになる。このため、より良好なはんだ付けを行うことの助けになる。
【0012】
さらに、この組み立て実装した副基板は、電極端子を主基板の端子パッド上に搭載して両基板を再びリフロー炉に通すので、この加熱によりはんだは再溶融するが、電極端子は接着剤により固着しているので動くことがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電極端子の固定構造およびその固定方法では、電極端子を接面させる表面領域に凹部を設け、そこへ接着剤を塗布するので、凹部へ塗布した接着剤は、電極端子の重さ、または部品マウンタの抑え力により凹部の領域に広がる。このため、電極端子は副基板のはんだ部位(端子パッド)に密着し、再加熱における位置ズレを防ぐため接着剤を併用する実装において、塗布した接着剤が厚い膜層の状態で固化することを防止できる。すなわち、端子パッドに対して電極端子を隙間なく接面でき、はんだ付けが疎になる不良を防ぐことができ、はんだ付けを確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態を示す副基板の平面図である。本実施の形態において、副基板1は、所定の回路パターンを形成してあり電子部品を表面実装することでDC/DCコンバータを構成し、モジュール化した一つの機能部品になる。
【0015】
副基板1には表裏に回路パターンが形成してあり、その表裏に電子部品を搭載するようになっている。図1に示す一方の表面には、後述する電極端子を表面実装するための端子パッド2を形成し、当該部位へ電極端子を介在させて主基板上に表面実装して電気的に接続するようになっている。この場合、主基板には電極端子との対応位置に端子パッドを形成しておき、例えばコンピュータ装置のメインボード(主基板)に実装することを想定している。
【0016】
副基板1は、例えば厚さ1mmの積層基板を使用して13.4×33mmの外形寸法に形成している。そして、電極端子は銅材料などからなり、図4に示すように直方体形状に形成してあって(電極端子4)、例えば1.5mm角の断面で長さは2.3mmのチップ形状に形成している。
【0017】
本発明に係る電極端子の固定構造は、この副基板1に適用してあり、副基板1には電極端子を接面させる表面領域に凹部3を設け、その凹部3に熱硬化性の接着剤を塗る構成を採る。つまり、電極端子を接面させる端子パッド2の部位に凹部3を設ける。端子パッド2は図2に拡大して示すように、第1パッド21,第2パッド22の2つを並べた2ピースとし、両パッド21,22の間に導体パターンやレジストパターンがない領域を形成し、当該部位が凹部3になる。
【0018】
また、端子パッド2は2ピースの構成に限らなく、例えば図3に示すように、1つの略方形形状に形成することもよい。この略方形形状の端子パッド2は、略中央部に導体パターンやレジストパターンがない領域を形成してあり、当該部位が凹部3になる。何れにしても凹部3には熱硬化性の接着剤を塗る。
【0019】
図4は、端子パッドに対する電極端子の実装を説明する斜視図である。副基板1の組み立て実装は、リフロー工程によりはんだ付けする方法を採る。つまり、副基板1上の各パターンに、予めはんだペーストを印刷等により塗布しておき、次に各電子部品を所定に搭載して、これをリフロー炉に通すことによりはんだ付けを行う。
【0020】
ここで本発明にあっては、はんだペーストの塗布に伴い、凹部3へ熱硬化性の接着剤5を塗布し、そして電極端子4を端子パッド2の上に搭載する。凹部3へ塗布した接着剤5は、電極端子4の重さ、または部品マウンタの抑え力により凹部3の領域に広がる。このため、電極端子4は副基板1のはんだ部位(端子パッド)に密着する。次に、この状態でリフロー炉に通すことから、はんだペーストが溶融して電極端子4の接面側は、端子パッド2との重畳面についてはんだがのり、はんだ付けが完了して電気的に接続する。そして、凹部3では接着剤5が硬化して電極端子4の対応部位が固着する。熱硬化性の接着剤5は加熱時にはいったん流動性が増す時期があり、凹部3で拡散する向きに流れようとする。これは電極端子4に対しては引き寄せる向きに作用し、密着する向きに力を発現することになる。このため、より良好なはんだ付けを行うことの助けになる。
【0021】
この場合、接着剤5は凹部3に塗布し、はんだペーストの塗布領域とは分けているので、リフロー工程の際に溶けたはんだ,接着剤5の両者が混ざり合ってしまうことがなく、両者を共に機能させることができる。
【0022】
次に、この組み立て実装した副基板1は、図6(a),(b)に示すように、電極端子4を介在させて主基板7上に表面実装する。これにはやはりリフロー工程によりはんだ付けする方法を採り、主基板6には電極端子4との対応位置に端子パッド7を形成してあって、それら端子パッド7に予めはんだペーストを印刷等により塗布しておく。そして、副基板1の電極端子4を主基板6の端子パッド7上に搭載し(図6(a)参照)、両基板をリフロー炉に通す(図6(b)参照)。このとき、リフロー炉での加熱によりはんだは再溶融するが、電極端子4は接着剤5により固着しているので動くことはない。
【0023】
さらに、この組み立て実装した副基板は、電極端子を主基板の端子パッド上に搭載して両基板を再びリフロー炉に通すので、この加熱によりはんだは再溶融するが、電極端子は接着剤により固着しているので動くことがない。
【0024】
このように本発明にあっては、電極端子4は、副基板1へは熱硬化性の接着剤5を併用して表面実装しており、凹部3へ塗布した接着剤5は、電極端子4の重さ、または部品マウンタの抑え力により凹部3の領域に広がり、電極端子4は副基板1のはんだ部位(端子パッド2)に密着する。したがって、再加熱における位置ズレを防ぐため接着剤5を併用する実装において、塗布した接着剤5が厚い膜層の状態で固化することを防止できる。すなわち、端子パッド2に対して電極端子4を隙間なく接面でき、はんだ付けが疎になる不良を防ぐことができ、はんだ付けを確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態を示す副基板の平面図である。
【図2】端子パッド部位を拡大して示す平面図である。
【図3】端子パッド部位の他例を拡大して示す平面図である。
【図4】端子パッドに対する電極端子の実装を説明する斜視図である。
【図5】端子パッドに対する電極端子の実装を説明する側面図である。
【図6】主基板に対する組み付け作業を説明する側面図であり、(a)は副基板の搭載作業を示し、(b)はリフロー工程での状態を示す。
【符号の説明】
【0026】
1 副基板
2,7 端子パッド
21 第1パッド
22 第2パッド
3 凹部
4 電極端子
5 接着剤
6 主基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主基板および副基板の両者に、電極端子を表面実装するための端子パッドを形成し、前記電極端子を介在させて前記副基板を前記主基板上に実装して電気的に接続する電極端子の固定構造において、
前記副基板には前記電極端子を接面させる表面領域に凹部を設け、当該凹部に熱硬化性の接着剤が塗布されることを特徴とする電極端子の固定構造。
【請求項2】
前記端子パッドは第1パッド,第2パッドの2つを並べた2ピースとし、両パッドの間に導体パターンやレジストパターンがない領域を形成して前記凹部とすることを特徴とする請求項1に記載の電極端子の固定構造。
【請求項3】
前記端子パッドは略中央部に導体パターンやレジストパターンがない領域を形成して前記凹部とすることを特徴とする請求項1に記載の電極端子の固定構造。
【請求項4】
主基板および副基板の両者に、電極端子を表面実装するための端子パッドを形成し、前記電極端子を介在させて前記副基板を前記主基板上に実装して電気的に接続する電極端子の固定方法であって、
前記副基板には前記電極端子を接面させる表面領域に凹部を設け、当該凹部に熱硬化性の接着剤を塗布し、そして前記端子パッドに予めはんだペーストを塗布しておき、次に前記電極端子を所定に搭載して前記副基板をリフロー炉に通し、リフロー工程を完了した後に当該副基板上の電極端子を前記主基板の端子パッドへ接面させて搭載し、これら両基板を再びリフロー炉に通すことを特徴とする電極端子の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−305904(P2007−305904A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134957(P2006−134957)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000237721)FDK株式会社 (449)
【Fターム(参考)】