説明

電気ケトル

【課題】ケトルの注ぎ口から蒸気を外部に排出するケトルにおいて、液体が蒸気センサーの温度検出を妨げることを抑制したケトル。
【解決手段】ケトル本体11と、ケトル本体10の開口12を覆う蓋体28と、を有する電気ケトル10において、ケトル本体11内で発生した蒸気を導通させる蒸気通路40は、ケトル本体11の注ぎ口20と対応する位置に形成された注水口33を経て供給するための液体供給路36の開閉弁57の下流側と連通され、導通された蒸気を液体供給路36を通り注水口33から外部に排出させる第1蒸気通路40aと、蒸気センサー24と対向する位置に形成されたケトル本体11の開孔21及び蓋体28の蒸気口34と連通され蒸気を取っ手部23の内部に設けられた蒸気センサー24にも導通させる第2蒸気通路40bを有し、蒸気口33は第1蒸気通路40aより高い位置に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気を導通する蒸気通路が蓋体に形成され、電気ケトル内で発生した蒸気を注ぎ口側から排出させることができる電気ケトルに関し、詳しくは、蒸気通路を逆流した液体により蒸気センサーの温度検出が妨げられることを抑制した構造を有する電気ケトルに関する。
【背景技術】
【0002】
電気ケトルは、持ち運びが簡単で手軽にお湯、コーヒーなどを沸かすことができるものとして広く普及されている。この電気ケトルは、例えば、所定量の水などを入れて加熱する電熱部を有するケトル本体と、この電気ケトル本体の電熱部へ電力を供給する外部電源コードが接続された給電台とを有し、この給電台にケトル本体をセットして、電源スイッチをオンすることによって、湯などを沸かすことができる構成となっている。
【0003】
また、蓋が本体から着脱可能であり、ケトル本体を蓋体によって密封してケトルが転倒した際に内容物が流失しないような構成のものも知られている。このような電気ケトルにおいては、沸騰時にケトル本体内で発生した蒸気を外部に排出するための構造が蓋体内に設けられ、蒸気は蓋体上部に設けられた蒸気口から排出されるようにされている。例えば、下記特許文献1に開示された電気ケトルの蓋体の上面には外部に蒸気を排出するための蒸気孔が形成され、蓋体の内部には、蒸気を蒸気孔に導くための蒸気通路が形成されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1に記載の電気ケトルでは、ヒータにより湯沸かしを行う器体と、この器体の蓋体と、器体の外まわりに設けたハンドルと、器体内で発生する蒸気を導入して蒸気センサに接触させるハンドル上部のセンサ室と、を備えたハンディタイプの電気ケトルにおいて、器体側からハンドル上部内に蒸気を導入し排出を図る蒸気通路の途中からセンサ室を分岐させて、蒸気通路よりセンサ室に分岐し流入する蒸気が蒸気センサに接触するようにし、前記蒸気通路とセンサ室との蒸気通路上流側の分岐点に、蒸気通路下流側に延びて蒸気通路からセンサ室への蒸気の流入域を規制するように蒸気通路側とセンサ室側とを部分的に仕切る仕切り壁を設けた構成とされている。
【0005】
このような構成とすることで、下記特許文献1に記載の電気ケトルによれば、蓋体により、湯沸かし時に器体から生じる蒸気を位置や範囲を制限して外部に放出させながら、外部への放出が制限されることにより生じる蒸気圧にて、器体で発生する蒸気の一部を器体側からハンドル側の蒸気通路に流入させて排出させる途中で、蒸気通路から分岐したセンサ室にも流入させて蒸気センサに接触させて沸騰を検知させる際に、蒸気通路とセンサ室との蒸気通路上流側の分岐点に蒸気通路下流側に向け延びる仕切り壁によりセンサ室への蒸気の流入域を規制し、センサ室には仕切り域を残した片寄った範囲から適量流入させるので、結露水が過剰にならずに流入蒸気との拮抗なくスムーズに蒸気通路に戻しながら、センサ室内に片寄って流入した蒸気に反片寄り側に回り込む流れを与えながら、新しい蒸気を次々と蒸気センサに接触させることができる。このため、電気ケトル内の最新の温度を正確に測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−291418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の電気ケトルにおいては、ケトル内部で発生した蒸気を蒸気通路を通じて効率よく蒸気センサに導くとともに、抽出口や蓋体の操作部から離れた蓋体後部から蒸気が放出されるので、人の手や顔が位置する機会の多い抽出口側から離れた安全な位置から蒸気を外部に放出し、使用上の安全を図るとされている。
【0008】
一方、従来の電気ケトルは、上記特許文献1に記載の電気ケトルに代表されるように、蒸気を排出する蒸気通路の出口となる蒸気放出口は蓋体の上面側に形成されているので、沸騰中もしくは沸騰直後に蓋体に設けられた開閉スイッチを操作したり、注ぐために手を添えたりしてしまったとき、蒸気によりやけどをするおそれがある。
【0009】
そのため、電気ケトル内で発生した蒸気を注ぎ口側から排出させるために、蓋体内に注ぎ口側へと連通する新たな蒸気通路を形成し、この蒸気通路に蒸気を導通させるようにすることで、蓋体の上面から蒸気が排出されないような構成とすることが考えられる。このようにすることで、使用者が蓋体を操作する際に、誤って蒸気にふれることを抑制し、安全性を高めることができる。
【0010】
しかし、蓋体に注ぎ口側へと連通される蒸気通路を形成した場合、電気ケトルを使用して液体を注いだ後、定位置に戻すとき、勢いよく戻してしまうと、注ぎ口や液体を注ぐための通路に残っていた大量の液体が蒸気通路を逆流し、この逆流した液体によって蒸気センサに続く蒸気の通り道を塞いでしまうことがあるばかりか、その液体が蒸気センサに付着してしまうおそれもある。このように、蒸気口が塞がれてしまうと、この液体が蒸気を遮り、蒸気センサーに蒸気が触れることを妨害してしまうため、容器内の温度を正確に測定することが困難となるおそれがある。さらに、温度検知ができないことにより、液体を沸騰し続けてしまうことや、空焚きしてしまうおそれも生じる。
【0011】
本発明は、このような従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、使用者の安全性を考え、蒸気を注ぎ口側から排出させる構造を有するケトルであって、蒸気通路を逆流した液体が蒸気口を塞ぐことを抑制し、また、蒸気センサに液体が付着することを抑制したケトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の電気ケトルは、上方に開口を有すると共に前記開口の一部に外側に屈曲した注ぎ口が形成され、内部に所定量の液体が収容されるケトル本体と、前記ケトル本体に収容された前記液体を加熱する加熱手段と、前記ケトル本体の前記開口を覆う着脱自在な蓋体と、を有する電気ケトルにおいて、前記ケトル本体の前記注ぎ口と対向する外側には、取っ手部が形成され、前記ケトル本体には、前記取っ手部の前記蓋体が取り付けられる側と前記取っ手部とが連通した開孔が形成され、前記蓋体が装着される側の前記取っ手部の内部には蒸気センサーが設けられ、前記蓋体は、前記ケトル本体に収容された前記液体を前記ケトル本体の前記注ぎ口と対応する位置に形成された注水口を経て供給するための液体供給路と、前記液体供給路と前記ケトル本体との間に形成された、液体を前記液体供給路に導くための液体供給口と、前記液体供給口の開け閉めを行う開閉弁と、前記ケトル本体内で発生した蒸気を導通させる蒸気通路と、前記蒸気通路と前記ケトル本体との間に形成された、蒸気を蒸気通路に導くための蒸気導通口と、前記蒸気センサーと対向する位置に形成された蒸気口と、を有し、前記蒸気通路は、前記液体供給路の前記開閉弁の下流側と連通され、導通された蒸気を前記液体供給路を通り前記注水口から外部に排出させる第1蒸気通路と、前記ケトル本体の前記開孔及び前記蓋体の前記蒸気口と連通され前記蒸気を前記蒸気センサーにも導通させる第2蒸気通路を有し、前記蒸気口は、前記第1蒸気通路より高い位置に形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る電気ケトルは、請求項1に係る電気ケトルにおいて、前記蒸気口の断面積の大きさは、前記第1蒸気通路の断面積の最も狭い部分の大きさに比べ狭く形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る電気ケトルは、請求項1又は2に係る電気ケトルにおいて、前記蒸気導通口は、前記取っ手部と近接する位置に形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項4に係る電気ケトルは、請求項1〜3のいずれかに係る電気ケトルにおいて、前記第2蒸気通路と前記蒸気導通口との間には、液漏れ抑制機構を有する中空の箱状の蒸気弁室が設けられ、前記蒸気弁室の上面部には、前記蒸気導通口が形成され、前記蒸気弁室の内部には、前記蒸気導通口を閉塞可能な大きさの閉塞部材が載置され、前記蒸気弁室と前記閉塞部材との間には、蒸気が通過可能な隙間通路が形成され、前記蒸気弁室の底面部には、前記隙間通路と連通する蒸気開口が形成され、前記液漏れ抑制機構は、前記ケトル本体が傾いたとき、前記蒸気導通口が前記閉塞部材によって閉塞されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項5に係る電気ケトルは、請求項1〜4のいずれかに係る電気ケトルにおいて、前記蒸気通路には、少なくとも一つの負圧弁が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に係る電気ケトルでは、蓋体内に蒸気通路が形成され、蒸気が蓋体の注水口からケトル本体の注ぎ口に向かい外部に排出される安全性の高い電気ケトルであっても、蒸気センサーと連通する蒸気口が液体供給路と導通される蒸気通路に比べて、高い位置に形成されている。そのため、請求項1に係る電気ケトルによれば、逆流した液体が蒸気口に到達し難くなり、蒸気口が塞がれることを抑制することができる。その結果、蒸気が蒸気センサーに接触できないという不具合を抑制でき、電気ケトル内の液体の正確な温度を検出することができるとともに、沸騰を確実に制御でき空焚き等を抑制することができる。
【0018】
請求項2に記載の電気ケトルによれば、液体供給路と導通される蒸気通路の断面積の最も狭い部分の大きさは、蒸気口の断面積の大きさより狭く形成されているので、蒸気通路から液体が逆流し難くなっており、また、逆流した液体の量も蒸気口が塞がれるほど多くないため、蒸気口が塞がれることも抑制することもできる。
【0019】
請求項3の電気ケトルによれば、蒸気導通口は、取っ手部と近接した位置に形成されているので、取っ手部内に設けられた蒸気センサーに近い位置の蒸気を蒸気センサーによって検知させることができ、ケトル本体内の沸騰の状態を正確に得ることができる。また、正確な温度を得ることもできる。
【0020】
請求項4に係る電気ケトルによれば、電気ケトルが転倒したような場合、液漏れ抑制機構により蒸気導通口からケトル本体の液体が溢れ、液体供給路と連通する蒸気通路に漏れ出し、注水口から漏れることを抑制することができる。さらに、蒸気口と連通する蒸気通路にもあふれ出すことを抑制するので、液体が蒸気口を塞いだり、蒸気センサーに付着したりすることを抑制することができる。
【0021】
請求項5に記載の電気ケトルによれば、蒸気通路に蒸気が冷えて溜まった水や、注水しきれず蒸気通路まで戻ってきた液体を負圧弁を介してケトル本体内に戻すことができるので、不要な液漏れを抑制することができる。また、負圧弁は複数個設けられていてもよく、液体を効率よくケトル本体内に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態1に係る電気ケトルの分解斜視図である。
【図2】図1の給電台を除き組み立てた状態のII−II線での断面図である。
【図3】図3Aは蓋体のみの断面図であり、図3Bは蓋体を裏から見た斜視図である。
【図4】図2のIV部の拡大図である。
【図5】実施形態2に係る電気ケトルを示す図4に対応した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための電気ケトルを例示するものであって、本発明をこの電気ケトルに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
[実施形態1]
図1〜図4を参照して、本発明の実施形態1に係る電気ケトル10を説明する。電気ケトル10は、図1及び図2に示すように、上方が開口し底部に加熱手段としての加熱ヒータ17が配置され、所定量の水などの液体が収容されるケトル本体11と、このケトル本体11が載置され、ケトル本体11の加熱ヒータ17に給電する給電台60と、ケトル本体11の上部開口12を覆い、着脱機構や開閉機構等が設けられた着脱自在な蓋体28と、ケトル本体11の側壁部に使用者が把持可能な取っ手部23とを設けた構成となっている。なお、本実施形態では、加熱ヒータ17への給電のために給電台60が設けられた場合について説明するが、これに限らずケトル本体11内に給電可能な構成を設けるようにしてもよい。
【0024】
図1及び図2に示すように、ケトル本体11は、上部開口12及び下部開口13を有し、所定の直径で形成された筒状体のフレーム14と、このフレーム14の外周側壁15面に外方へ突出し、把持可能な例えば「コの字」型の取っ手部23とを備え、耐熱性を有する樹脂成型体で形成されている。このケトル本体11は、上部開口12側には蓋体28が着脱自在に装着され、下部開口13側には中央が開口された底蓋16により閉塞されている。この底蓋16には加熱ヒータ17が本体側給電器18とともに装着され、加熱ヒータ17上には液体が収容される容器19が設置されている。この容器19は、蓋体28が装着されることにより、液密になるように形成されている。
【0025】
ケトル本体11には、上部開口12近傍の内壁にあって、取っ手部23が形成されている部分に取っ手部23に内蔵された蒸気センサー24に通じる開孔21が形成されている。この取っ手部23は、ケトル本体11と一体に形成された取っ手部材27と、この取っ手部材27を覆う取っ手カバー25とで構成され、取っ手部23内は中空に形成されている。そして、この中空部内に、蒸気センサー24の検出値を入力して加熱ヒータ17を制御する不図示の制御手段が収納されており、蒸気センサー24と制御手段とは、図示しないリード線で接続されている。また、この取っ手部23には、取っ手カバー25の外側に加熱ヒータ17への通電をオン・オフする電源スイッチ26が配設されている。
【0026】
さらに、取っ手部23は、蒸気センサー24からの検出値を入力して加熱ヒータ17を制御する制御手段(図示省略)が収容されている。この制御手段は、マイクロコンピュータ及びメモリなどを有し、メモリには、蒸気温度が所定値になったときに、加熱ヒータ17への通電を停止させる基準値(例えば85℃)が記憶されている。このように基準値を設定しておくことにより、制御手段は、検知された蒸気温度が基準値に達したときに、加熱ヒータ17への加熱を停止させる制御を行うので、液体を所望の温度(例えば沸騰温度)に加熱することができ、また、液体が沸騰し続けることを抑制することができる。
【0027】
次に、ケトル本体11が載置される給電台60について説明する。給電台60は、図1に示すように、中央に開口62を有し上面にケトル本体が設置される浅底の給電台座61と、給電台座61内に設けられ、給電台座61の中央の開口62から突出する給電器スタンド63と、不図示の電気コネクタとで構成されている。給電台座61は、ケトル本体11の直径と略同じ直径の略円形状に形成された底部と、この底部の周囲から立設した背低の側壁部とを有し上方が開口した浅底の容器からなり、樹脂成型体で形成されている。電気コネクタは給電台60の略中心部に固定されている。この電気コネクタには、リード線が接続されて、このリード線の先端にプラグコネクタが接続されている。そして、給電台60の給電器スタンド63とケトル本体11の本体側給電器18とが電気的に接続され、通電されることで、ケトル本体11の加熱ヒータ17を加熱することができる。
【0028】
次に、図2〜図4を参照して蓋体について説明する。蓋体28は、図2及び図3に示すように、中板29と、この中板29の周囲の上下方向にそれぞれ延在された所定高さを有する外周壁30と、外周壁30の上方に装着される上蓋31と、外周壁30の下方に装着される複数個の孔が形成された内蓋32とで形成されている。外周壁30には、ケトル本体11の容器19内の液体を注ぎ口20へと注水するための注水口33と、この注水口33の反対側に、ケトル本体11内で発生した蒸気を取っ手部23内の蒸気センサー24に導くための蒸気口34が形成されている。また、蓋体には、開閉機構53の開閉操作部材54、着脱機構50の一対のつまみ部材37a、37bが形成され、上蓋からこれらを操作できるように上蓋の一部が開口されている。さらに、ケトル本体11に形成された注ぎ口20を覆うように形成された注口蓋38が上蓋31の注ぎ口20と対応する部分と蓋体28の中板29の注ぎ口20に対応する部分とが延在されて形成されている。また、蓋体28の注ぎ口20と近接する部分には、容器19内の液体を注ぎ口20へと導く液体供給路36とこの液体供給路36と容器19とを接続する液体供給口35が形成されているが、詳細については後述する。
【0029】
中板29と外周壁30との間には、容器19内で発生した蒸気の通り道となる蒸気導通口45が形成された蒸気弁室39が設けられている。また、蓋体28の内部には中板29を天井とした蒸気通路40が形成され、この蒸気通路40は、ケトル本体11の注ぎ口20と連通する第1蒸気通路40aと、蓋体28に形成された蒸気口34と連通する第2蒸気通路40bで形成されている。なお、蒸気通路40についての詳細は後述する。
【0030】
開閉操作部材54は、上蓋31から突出した操作片55と、開閉弁57と接触するテーパー状に形成された接触部を有する開閉弁押動部56とで構成されている。また、開閉弁57は、蓋体28の液体供給口35を塞ぐことができる大きさで形成され、この開閉弁57の略中央部には開閉弁押動部56の接触部と接触する突起部58が形成されている。そして、開閉操作部材54を前後に移動させることで、テーパー状に形成された開閉弁押動部56の接触部が開閉弁57の突起部58をテーパーの角度に沿って上下に移動させることで液体供給口35の開閉を行うことができる。また、この開閉弁57が下方に移動することで、ばね59が押し縮められる。
【0031】
そして、容器19内の液体を注ぐときには、開閉操作部材54を注ぎ口20側へと移動させることで、開閉弁押動部56の接触部のテーパーが開閉弁57の突起部58を押し下げ、開閉弁57もそれに伴い下方へ移動し、液体供給口35が開き、液体が液体供給路36へと流れることができる。また、使用後は、開閉機構53の開閉操作部材54を注ぐときに移動させた方向とは反対側に移動させ、開閉弁押動部56を移動させ接触部のテーパーが開閉弁57の突起部58を押し下げる力が外れることで、開閉弁57と内蓋32との間に設けられ、押し縮められたばね59の弾性力により、開閉弁57が上方へ移動し、液体供給口35を閉じることができる。
【0032】
次に、蓋体28の内部に形成された蒸気通路40について説明する。蒸気通路40は、図2〜図4に示すように、容器19内で発生した蒸気を導通させる部分であり、蒸気を外部に排出させるとともに、蒸気センサー24に導くためのものである。
【0033】
蒸気通路40は、蓋体28の内部に形成された中板29を天井部41として、液漏れ抑止機構43が設けられる部材43aを底面とし、蓋体28の外周壁30を側面として形成されている。また、蒸気通路40は、第1蒸気通路40aと第2蒸気通路40bで形成され、第1蒸気通路40aは、蓋体28の注水口33に連通される液体供給路36と連通され、第2蒸気通路40bは、ケトル本体11の取っ手部23内に設けられた蒸気センサー24に蒸気が導かれるように、蓋体28の蒸気口34及びケトル本体11の開孔21と連通している。
【0034】
また、第1蒸気通路40aと液体供給路36との間には、蓋体28の中板29の第1蒸気通路40aと液体供給路36との間となる部分を所定の大きさで内蓋32側に突出させ、この突出させた部分の中央部分に第1蒸気通路40aと液体供給路36とが連通する筒状の連通孔42が形成される。この連通孔42の断面は、矩形状や円形状、楕円形状でもよく、また他の形状でもよい。
【0035】
ここで、蒸気の流れについて説明すると、容器19内の液体を沸かす場合、液体供給口35は開閉弁57によって閉じられている。そして、容器19内の液体が沸騰し、蒸気が発生してくると、蒸気は、蒸気弁室39を通り蒸気導通口45からそれぞれの蒸気通路40へ導かれる。その後、第2蒸気通路40bでは、蒸気の一部が蓋体28の蒸気口34及び、ケトル本体11の開孔21を通過し、蒸気センサー24に到達し、蒸気温度が検出される。一方、他の蒸気は、第1蒸気通路40aを通り、連通孔42を通り抜け、液体供給路36へと導かれる。液体供給路36へと導かれた蒸気は、蓋体28の注水口33を通り、ケトル本体11の注ぎ口20から外部へ放出される。このようにすることで、使用者が誤って蒸気にふれるおそれが少なくなり、安全性を高めることができる。
【0036】
一方、液体を注ぐ場合は、開閉機構53によって開閉弁57を下方へ移動させ、液体供給口35を開放させる。そして、取っ手部23を把持し、ケトル10を傾けることで、容器19内の液体は、液体供給口35から液体供給路36へと導かれ、その後、蓋体28の注水口33を通過し、ケトル本体11の注ぎ口20から液体を注ぐことができる。なお、液体を注ぐ場合は、すでに沸騰は終了しているが、蒸気の発生が続いている場合がある。しかし、その状態であっても、蒸気は注ぎ口20から外部へ排出されるので、沸騰時と同様の安全性を得られる。
【0037】
ここで、液体を注いだ後、ケトル10を所定の位置に戻すとき、注ぎ口20や液体供給路36に残っている液体は、液体供給口35から容器19内に戻されるが、ケトル10を勢いよく戻したり、ケトル10を傾けた状態で開閉弁57が閉じてしまったような場合、大量の液体が、液体供給口35を通り過ぎ、連通孔42を通過し第1蒸気通路40aに侵入する場合が発生する。そして、第2蒸気通路40bに侵入した液体が、蓋体28の蒸気口34もしくはケトル本体11の開孔21を塞いでしまうおそれがある。さらに、その液体が蒸気センサー24に付着してしまうおそれもある。このような状態が発生すると、蒸気センサー24が、蒸気温度を検知できなくなり、容器19内の液体の温度を正確に測定することができなくなり、さらに、温度検知ができないことにより、液体が沸騰し続けたり、また、空焚きをするおそれもある。
【0038】
そこで、実施形態1のケトルでは、図4に示すように、第1蒸気通路40aの天井部41の高さに比べ、蒸気口34の高さが高くなるように形成されている。このようにすることで、逆流した液体が蒸気口34に到達し難くなる。そのため、大量の液体が第2蒸気通路40bまで侵入したとしても、蒸気口34が液体によって塞がれることを抑制することができる。なお、図4では、ギャップgが形成される程度の差があるように形成されているが、第1蒸気通路40aの天井部41の高さよりも蒸気口34が高く形成されていればよい。また、第1蒸気通路40aの天井部41と蒸気口34の高さが同じでもよい。
[実施形態2]
次に、実施形態2に係るケトルについて説明する。実施形態1のケトルは、蒸気口への液体の侵入を抑制するために、第1蒸気通路に比べ、蒸気口の高さを高く形成した場合を説明したが、実施形態2では、蒸気口の断面の大きさに比べ、第1蒸気通路の断面の大きさを小さくした場合について説明する。なお、実施形態2のケトルは、実施形態1のケトルに比べ第1蒸気通路の構造が異なるのみなので、実施形態1と共通する構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0039】
実施形態2のケトルは、図5に示すように、蒸気通路40に液体が逆流し難くするために、液体供給路36と第1蒸気通路40aの断面の大きさが最も狭くなる連通孔42の断面の大きさA1を、蒸気口34の断面の大きさA2より小さくなるよう(A1<A2)に形成されている。このようにすることにより、液体供給路36と導通される第1蒸気通路40aの断面の最も狭い連通孔42の断面の大きさは、蒸気口34の断面の大きさより小さく形成されているので、第1蒸気通路40aから液体が逆流し難くなっており、また、逆流した液体の量も蒸気口34が塞がれるほど多くないため、蒸気口34が塞がれることも抑制することもできる。
【0040】
なお、蒸気口34の断面の大きさを連通孔42の断面の大きさと比較したが、これに限らず、第1蒸気通路40aの最も狭くなる部分の断面の大きさが、蒸気口34の断面の大きさより小さくなるように形成されればよい。
【符号の説明】
【0041】
10…ケトル
11…ケトル本体
15…外周側壁
19…容器
20…注ぎ口
21…開孔
23…取っ手部
24…蒸気センサー
26…電源スイッチ
28…蓋体
29…中板
30…外周壁
31…上蓋
32…内蓋
33…注水口
34…蒸気口
35…液体供給口
36…液体供給路
38…注口蓋
39…蒸気弁室
40…蒸気通路
40a…第1蒸気通路
40b…第2蒸気通路
41…天井部
42…連通孔
43…液漏れ抑止機構
45…蒸気導通口
46…載置部
47…隙間通路
48…液溜め部
49…戻し弁
50…着脱機構
53…開閉機構
54…開閉操作部材
55…操作片
56…開閉弁押動部
57…開閉弁
58…突起部
59…ばね
60…給電台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口を有すると共に前記開口の一部に外側に屈曲した注ぎ口が形成され、内部に所定量の液体が収容されるケトル本体と、
前記ケトル本体に収容された前記液体を加熱する加熱手段と、
前記ケトル本体の前記開口を覆う着脱自在な蓋体と、
を有する電気ケトルにおいて、
前記ケトル本体の前記注ぎ口と対向する外側には、取っ手部が形成され、
前記ケトル本体には、前記取っ手部の前記蓋体が取り付けられる側と前記取っ手部とが連通した開孔が形成され、
前記蓋体が装着される側の前記取っ手部の内部には蒸気センサーが設けられ、
前記蓋体は、前記ケトル本体に収容された前記液体を前記ケトル本体の前記注ぎ口と対応する位置に形成された注水口を経て供給するための液体供給路と、
前記液体供給路と前記ケトル本体との間に形成された、液体を前記液体供給路に導くための液体供給口と、
前記液体供給口の開け閉めを行う開閉弁と、
前記ケトル本体内で発生した蒸気を導通させる蒸気通路と、
前記蒸気通路と前記ケトル本体との間に形成された、蒸気を蒸気通路に導くための蒸気導通口と、
前記蒸気センサーと対向する位置に形成された蒸気口と、を有し、
前記蒸気通路は、前記液体供給路の前記開閉弁の下流側と連通され、導通された蒸気を前記液体供給路を通り前記注水口から外部に排出させる第1蒸気通路と、
前記ケトル本体の前記開孔及び前記蓋体の前記蒸気口と連通され前記蒸気を前記蒸気センサーにも導通させる第2蒸気通路を有し、
前記蒸気口は、前記第1蒸気通路より高い位置に形成されていることを特徴とするケトル。
【請求項2】
前記蒸気口の断面積の大きさは、前記第1蒸気通路の断面積の最も狭い部分の大きさに比べ狭く形成されていることを特徴とする請求項1に記載のケトル。
【請求項3】
前記蒸気導通口は、前記取っ手部と近接する位置に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のケトル。
【請求項4】
前記第2蒸気通路と前記蒸気導通口との間には、液漏れ抑制機構を有する中空の箱状の蒸気弁室が設けられ、
前記蒸気弁室の上面部には、前記蒸気導通口が形成され、
前記蒸気弁室の内部には、前記蒸気導通口を閉塞可能な大きさの閉塞部材が載置され、
前記蒸気弁室と前記閉塞部材との間には、蒸気が通過可能な隙間通路が形成され、
前記蒸気弁室の底面部には、前記隙間通路と連通する蒸気開口が形成され、
前記液漏れ抑制機構は、前記ケトル本体が傾いたとき、前記蒸気導通口が前記閉塞部材によって閉塞されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のケトル。
【請求項5】
前記蒸気通路には、少なくとも一つの負圧弁が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のケトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−170707(P2012−170707A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36842(P2011−36842)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】