説明

電気コネクタ

【課題】本発明は電気コネクタ10が相手コネクタによりこじられても、シェル60が変形し難く、接続不良を起こし難く、安定した接続が得られる電気コネクタ10を提供する。
【解決手段】本目的は、2つ以上若しくは1つの相手コネクタが着脱自在に嵌合される電気コネクタ10であって、相手コネクタと接触する接触部26と基板に実装する接続部22を有する所要数のコンタクト20と、コンタクト20が保持・配列されるインシュレータ30と、インシュレータ30を覆うとともに相手コネクタが入る嵌合口62を形成するシェル60とを備える電気コネクタ10において、相手コネクタが挿入される側で、かつ、基板実装側とは反対側のシェル60の少なくとも挿入口部分に強化部66を設けることを特徴とする電気コネクタ10により達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パソコンや携帯電話やデジタルカメラや音楽プレーヤー等の電子機器・電気機器に使用される電気コネクタに関するもので、特に、相手コネクタと嵌合可能で、こじりに対しても強い電気コネクタの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電気コネクタは、少なくとも前記相手コネクタと接触する所要数のコンタクトと、該コンタクトが保持・配列されるインシュレータと、該インシュレータを覆うシェルとを備えている。前記電気コネクタには、前記シェルによって形成された2つの嵌合口を有しており、2つの前記嵌合口に、2つの嵌合部を有する1つの前記相手コネクタが入る場合と、どちらか一方の前記嵌合口に、1つの嵌合部を有する1つの前記相手コネクタが入る場合がある。従来、2つの前記嵌合口を有する電気コネクタに関する基本構造としては、特許文献1が挙げられ、特許文献1の電気コネクタに対するこじり対策としては、特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−17165号公報
【特許文献2】特開2009−277497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記電気コネクタは、一般的に、前記相手コネクタを抜去する際には上方向(基板実装側と反対方向)と左右方向にこじられることがあった。前記シェルは、加工性や小型化を考慮し、0.2〜0.4mm程度の厚さで製作されることが多く、この厚さで、かつ、特許文献1のような構造ではこじられた場合に変形してしまうことがあった。特許文献2のようにどちらか一方の嵌合口内に突出する当接部を設けた構造では、当接部が突出した側では相手コネクタの嵌合部をクリアランスがなく挟持できるので、左右方向のこじりに対しては効果がある。しかし、当接部が突出していない嵌合口側にはこじりについての効果がないし、特許文献2の構造(当接部の有無にかかわらず)では、上方向へのこじりに対しては弱い。また、特許文献2の構造の当接部を左右両側に設けることは、加工上、難しい。さらに、2つの嵌合部を有する相手コネクタの嵌合の場合、嵌合口と嵌合部との形状が互いに合った形状(クリアランスがない)にできるので、左右方向のこじりには強いが、上方向のこじりには弱い。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、電気コネクタが相手コネクタによりこじられても、シェルが変形し難く、接続不良を起こし難く、かつ、簡単な構造であるのでコストアップにも繋がることがなく、安定した接続が得られる電気コネクタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、請求項1記載のように、2つ若しくは1つの相手コネクタが着脱自在に嵌合される電気コネクタであって、前記相手コネクタと接触する接触部と基板に実装する接続部を有する所要数のコンタクトと、該コンタクトが保持・配列されるインシュレータと、該インシュレータを覆うとともに前記相手コネクタが入る嵌合口を形成するシェルとを備える電気コネクタにおいて、前記相手コネクタが挿入される側で、かつ、基板実装側とは反対側の前記シェルの少なくとも挿入口部分に強化部を設けることを特徴とする電気コネクタにより達成できる。
【0007】
請求項2の電気コネクタは、前記強化部は、前記シェルと別体とし、かつ、前記シェルとの二重構造にすることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタにある。また、請求項3の電気コネクタは、前記強化部は、前記シェルを折り返すことで二重構造にすることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタにある。さらに、請求項4の電気コネクタは、前記強化部を、前記シェルのほぼ全幅に設けることを特徴とする請求項1,2または3記載に電気コネクタにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電気コネクタによると、次のような優れた効果を得られる。本発明の電気コネクタでは、前記電気コネクタが相手コネクタによりこじられても、シェルの変形がし難く、接続不良を起こし難く、かつ、簡単な構造であるのでコストアップにも繋がることがなく、安定した接続を得ることができ、8Nの力でこじられても変形しない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による電気コネクタの相手コネクタが挿入される側かつ基板実装側の反対側から見た斜視図である。
【図2】本発明による電気コネクタの相手コネクタが挿入される側かつ基板実装側から見た斜視図である。
【図3】本発明による電気コネクタの相手コネクタが挿入される側の反対側かつ基板実装側の反対側から見た斜視図である。
【図4】コンタクトの斜視図である。
【図5】インシュレータの相手コネクタが挿入される側かつ基板実装側から見た斜視図である。
【図6】インシュレータの相手コネクタが挿入される側かつ基板実装側の反対側から見た斜視図である。
【図7】シェルの相手コネクタが挿入される側かつ基板実装側の反対側から見た斜視図である。
【図8】シェルの相手コネクタが挿入される側の反対側かつ基板実装側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特徴は、請求項1記載のように、2つ若しくは1つの相手コネクタが着脱自在に嵌合される電気コネクタ10であって、前記相手コネクタと接触する接触部26と基板に実装する接続部22を有する所要数のコンタクト20と、該コンタクト20が保持・配列されるインシュレータ30と、該インシュレータ30を覆うとともに前記相手コネクタが入る嵌合口62を形成するシェル60とを備える電気コネクタ10において、前記相手コネクタが挿入される側で、かつ、基板実装側とは反対側の前記シェル60の少なくとも挿入口部分に強化部66を設けることを特徴とする電気コネクタ10であり、つまり、前記強化部66を設けることによりこじり対策を施したものである。
【0011】
図1〜図8に基づいて、本発明の電気コネクタの一実施例を説明する。図1は相手コネクタが挿入される側かつ基板実装側の反対側から見た電気コネクタの斜視図である。図2は相手コネクタが挿入される側かつ基板実装側から見た電気コネクタの斜視図である。図3は相手コネクタが挿入される側の反対側かつ基板実装側の反対側から見た電気コネクタの斜視図である。図4はコンタクトの斜視図である。図5は相手コネクタが挿入される側かつ基板実装側から見たインシュレータの斜視図である。図6は相手コネクタが挿入される側かつ基板実装側の反対側から見たインシュレータの斜視図である。図7は相手コネクタが挿入される側かつ基板実装側の反対側から見たシェルの斜視図である。図8は相手コネクタが挿入される側の反対側かつ基板実装側から見たシェルの斜視図である。
【0012】
本発明の電気コネクタ10は、主にコンタクト20とインシュレータ30とシェル60とを備えている。以下、それぞれの部位について説明する。
【0013】
まず、前記コンタクト20について説明する。前記コンタクト20は金属製であり、公知技術のプレス加工によって製作され、この材料としてはバネ性や導電性等が要求されるので、黄銅やベリリウム銅やリン青銅等を挙げることができる。
【0014】
前記コンタクト20は、略クランク形状であり、主に、プリント基板と接続する接続部22と、前記インシュレータ30の本体部40に保持される固定部24と、前記相手コネクタのコンタクトと接触する接触部26とを有している。本実施例では、前記コンタクト20と前記インシュレータ30とを一体成型することで、前記コンタクト20を前記インシュレータ30に固定しているが、圧入や引っ掛け(ランス)や溶着等により固定してもよい。また、本実施例では、前記接触部26は前記インシュレータ30の嵌合部50の嵌合溝52に保持される。さらに、本実施例では、前記接続部22は表面実装タイプ(SMTタイプ)にしているが、ディップタイプであってもよい。さらに、本実施例では、前記コンタクト20は1つの種類のコンタクトのみであるが、各コネクタの形状に応じて複数の種類のコンタクトであってもよい。
【0015】
次に、前記インシュレータ30について説明する。前記インシュレータ30は電気絶縁性のプラスチックであり、公知技術の射出成形によって製作され、この材料としては寸法安定性や加工性やコスト等を考慮して適宜選択するが、一般的にはポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリアミド(66PA、46PA)や液晶ポリマー(LCP)やポリカーボネート(PC)やポリフェニレンサルファイド(PPS)やこれらの合成材料を挙げることができる。
【0016】
前記インシュレータ30は、大別すると、本体部40と前記本体部40から突出した2つの嵌合部50とを有している。前記本体部40には、前記インシュレータ30を前記シェル60に固定するための固定手段を適宜設ける。本実施例では、固定手段として、前記本体部40の長手方向両端面に、前記シェル60の切欠部64と係合するための突起部42を設けている。前記突起部42を前記シェル60の切欠部64に係合することで、前記インシュレータ30を前記シェル60に固定することができる。また、前記嵌合部50には、コンタクト20を配列するための前記コンタクト20と同数の挿入溝52が設けられている。本実施例では、一体成型により前記コンタクト20を前記インシュレータ30に固定しているが、圧入や引っ掛け(ランス)等により固定する場合は、前記挿入溝52と連設する形で前記本体部40に前記コンタクト20と同数の挿入孔(図示なし)を設け、前記コンタクト20を前記挿入孔に挿入し固定する。さらに、本実施例では、2つの嵌合部50が同一形状であるが、各相手コネクタの形状に応じた2つの異種形状の嵌合部であってもよい。
【0017】
次に、前記シェル60について説明する。前記シェル60は金属製であり、公知技術のプレス加工によって製作され、この材料としてはEMI特性やバネ性や強度等が要求されるので、ステンレス鋼(SUS)や黄銅やベリリウム銅やリン青銅等を挙げることができる。
【0018】
前記シェル60には、2つ若しくは1つの前記相手コネクタが入る2つの嵌合口62が形成されている。2つの前記嵌合口62は、2つ若しくは1つの前記相手コネクタの形状に合致する形状であり、2つの前記嵌合口62の境となる箇所では、2つ若しくは1つの前記相手コネクタの形状に合致するように前記シェル60を高さ方向に狭める形状となっている。前記嵌合口62の形状・大きさは、前記相手コネクタの形状に合致し、かつ、相手コネクタが挿入できれば、如何なるものでもよく、加工性や強度や挿入性や寸法安定性等を考慮して適宜設計する。
【0019】
前記シェル60には、前記インシュレータ30を前記シェル60に固定するための固定手段を適宜設ける。本実施例では、固定手段として、前記インシュレータ30の突起部42に対応する位置に、前記インシュレータ30の突起部42と係合する切欠部64が設けられている。前記切欠部64に前記インシュレータ30の突起部42を係合することで、前記シェル60に前記インシュレータ30を固定することができる。前記切欠部64の形状・大きさは、前記突起部42が挿入でき、前記シェル60に前記インシュレータ30が固定できれば如何なるものでもよく、強度や加工性や保持力等を考慮して適宜設計する。また、本実施例では、前記シェル60は底面部に設けた接続部68によりプリント基板に接続されるが、前記シェル60がプリント基板に接続できればどのような手段でもよい。
【0020】
また、前記シェル60には、相手コネクタが挿入される側に、相手コネクタを嵌合させる際に相手コネクタを誘い易くする誘い部70が設けられている。前記誘い部70は、前記相手コネクタを前記嵌合口62内に案内できれば如何なる形状・大きさであってもよく、コネクタの小型化や強度や加工性等を考慮して適宜設計するが、本実施例では前記相手コネクタが挿入される側の端面(所謂挿入口)より延出し、かつ、外側方向に折曲げている。前記誘い部70を設ける箇所と個数は、誘い易さやバランスやコネクタの小型化を考慮して適宜設計しているが、本実施例では、図1のように、前記誘い部70を5箇所に設けている。
【0021】
また、基板実装側とは反対側の前記シェル60には、前記相手コネクタのロック用突起が係合する係合孔72が設けられている。前記係合孔72は、前記相手コネクタのロック用突起と係合することで、前記相手コネクタを保持するものである。前記係合孔72の形状・大きさ及び位置は、前記相手コネクタを保持できれば如何なるものでもよく、保持力や強度や加工性等を考慮して適宜設計する。さらに、基板実装側とは反対側の前記シェル60には、嵌合時に前記相手コネクタの奥行き方向の位置を制限するためのストッパー74が設けられている。前記ストッパー74は、奥行き方向の位置決めを行うもので、その役割や強度や加工性等を考慮して適宜設計するが、本実施例では基板実装側とは反対側の前記シェル60から前記嵌合口62内へ突出するように設けられている。本実施例では、前記ストッパー74はシェル60との一体構造としているが、役割を満足すれば別体として設けてもよい。
【0022】
また、前記シェル60には、前記相手コネクタが挿入される側の反対側に、前記インシュレータ30の位置を固定させると共にシェル60から外れないようにするための保持部76が設けられている。前記保持部76は、前記インシュレータ30を前記シェル60内に挿入した後、前記インシュレータ30の外面に接するように折り曲げることにより前記インシュレータ30を前記シェル内に保持するものである。前記保持部76の形状・大きさは、前記インシュレータ30を前記シェル60内に保持できれば如何なるものでもよいが、保持力や加工性や強度やコネクタの小型化等を考慮して適宜設計している。本実施例では、前記保持部76はシェル60との一体構造としているが、保持できれば別体として設けてもよい。さらに、前記シェル60には、前記相手コネクタが挿入される側の反対側に、外部からの電磁波による悪影響を低減させるためのバックシールド78が設けられている。前記バックシールド78は、前記インシュレータ30を前記シェル60内に挿入した後、略直角に折り曲げることにより電磁波による悪影響を低減させるものである。前記バックシールド78の形状・大きさは、上記役割や強度や加工性等を考慮して適宜設計している。本実施例では、前記バックシールド78は前記シェル60との一体構造としているが、電磁波による悪影響の低減が図れれば別体として設けてもよい。
【0023】
次に、今回の発明のポイントである強化部66について説明する。前記強化部66は、前記相手コネクタが挿入される側で、かつ、基板実装側とは反対側の前記シェル60の少なくとも挿入口部分に設けられている。前記強化部66を設けることで、こじり対策を施している。本実施例では、前記強化部66は、基板実装側とは反対側の前記シェル60を挿入口から延出させると共に180°外側へ折り返して二重構造にしているが、こじられても前記シェル60が変形しなければ、内側へ折り返して二重構造にしてもよい。また、本実施例では、前記強化部66は前記シェル60との一体の構造としているが、こじられても前記シェル60が変形しなければ、前記強化部66を別体として設けてもよい。さらに、本実施例では、前記強化部66は、前記シェル60との二重構造としているが、こじられても前記シェル60が変形しなければ、前記シェル60との二重構造でなくてもよい。また、前記強化部66の形状・大きさは、こじり対策やコネクタの小型化や強度や加工性等を考慮して適宜設計する。なお、本実施例では、前記強化部66を基板実装側とは反対側の前記シェル60の挿入口のほぼ全幅に設けている。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の活用例としては、パソコンや携帯電話やデジタルカメラや音楽プレーヤー等の電子機器・電気機器に使用される電気コネクタに活用され、特に、相手コネクタにより電気コネクタがこじられた際にシェルが変形し難く、接続不良となり難い構造に関するものである。
【符号の説明】
【0025】
10 電気コネクタ
20 コンタクト
22 接続部
24 固定部
26 接触部
30 インシュレータ
40 本体部
42 突起部
50 嵌合部
52 挿入溝
60 シェル
62 嵌合口
64 切欠部
66 強化部
68 接続部
70 誘い部
72 係合孔
74 ストッパー
76 保持部
78 バックシールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ若しくは1つの相手コネクタが着脱自在に嵌合される電気コネクタであって、
前記相手コネクタと接触する接触部と基板に実装する接続部を有する所要数のコンタクトと、該コンタクトが保持・配列されるインシュレータと、該インシュレータを覆うとともに前記相手コネクタが入る嵌合口を形成するシェルとを備える電気コネクタにおいて、
前記相手コネクタが挿入される側で、かつ、基板実装側とは反対側の前記シェルの少なくとも挿入口部分に強化部を設けることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記強化部は、前記シェルと別体とし、かつ、前記シェルとの二重構造にすることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記強化部は、前記シェルを折り返すことで二重構造にすることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記強化部を、前記シェルのほぼ全幅に設けることを特徴とする請求項1,2または3記載の電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−216204(P2011−216204A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80464(P2010−80464)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000208835)第一電子工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】