説明

電気ヒータおよび該ヒータを用いた半導体排ガス処理装置

【課題】 発熱抵抗体の発熱能力を最大限発揮させることができると共に、リード線の断線や保護管の破損を防止して長時間安定して使用することが可能な電気ヒータを提供する。
【解決手段】 セラミックからなる筒状の保護管12と、螺旋状に巻回され、保護管12内に挿入されてなる発熱抵抗体14と、保護管12内に流し込まれたキャスタブル16aが固化して保護管12内部を密閉した絶縁層16とで構成されていることを特徴とする。かかる構成により、発熱抵抗体の絶縁性を確保することができると共に、ヒートショックに起因する保護管の破損を防止することができる。このため、電気ヒータの耐久性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1000℃以上の高温で長時間使用することが可能な電気ヒータと該ヒータを用いた半導体排ガス処理装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶等の製造プロセスで使用される様々な種類のフッ素化合物のガス(以下、「PFCs等」という)は、地球温暖化係数(GWP)がCO2に比べて数千〜数万倍と非常に大きく、大気寿命もCO2に比べて数千〜数万年と長い(つまり極めて分解され難い安定な化合物である)ことから、大気中へ少量排出した場合でも、その影響は甚大なものとなる。
【0003】
このため、このようなPFCs等を含む半導体排ガスは、入口スクラバ,出口スクラバおよび前記入口スクラバと出口スクラバとの間に配設された排ガス処理塔などを備える半導体排ガス処理装置で熱酸化分解を行なった後、大気中へと排出されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ここで、従来の電気加熱式の半導体排ガス処理装置では、図6に示すような電気ヒータを用いて前記半導体排ガスを熱酸化分解していた。すなわち、有底筒状の金属製或いはセラミック製保護管2の内部に、ニクロム線やカンタル(サンドビックAB社登録商標;以下同じ)線などの金属線を螺旋状に巻回した発熱抵抗体3を配設すると共に、当該保護管2の内部にマグネシア粉末などのセラミック粉末4を充填した片持ち式の電気ヒータ1が用いられていた。
【0005】
この電気ヒータ1は、螺旋状の発熱抵抗体3の両端部に接続されたリード線5a及び5bを介して発熱抵抗体3に電流を流すことにより当該発熱抵抗体3が発熱し、排ガス処理塔内部の温度を800℃程度の高温に加熱するものであり、この熱で排ガス処理塔内部を通過するPFCs等を熱酸化分解していた。
【特許文献1】特開2004−349442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような電気ヒータ1を用いた半導体排ガス処理装置では、電気ヒータ1を1000℃近い温度で発熱させて使用した場合や長時間稼働させた場合、発熱抵抗体3の保護管2底部側端部に接続したリード線5aが発熱抵抗体3の発する熱によって損傷し、最悪の場合にはリード線5aが断線して電気ヒータ1が使用できなくなるという問題があった。
【0007】
また、保護管2の内部には、発熱抵抗体3からの熱伝導をよくすると共に、発熱抵抗体3の短絡を防止すべくマグネシア(MgO)粉末などのセラミック粉末4が充填されているが、このセラミック粉末4が充填された保護管2は管壁が薄いため、特に保護管2を耐蝕性に優れるセラミックスで構成した場合には、電気ヒータ1を1000℃近い温度で発熱させたり、当該ヒータ1の発熱と冷却とを繰り返した場合、ヒートショックによって保護管2にクラックが発生し、電気ヒータ1が損傷するという問題があった。したがって、従来の電気ヒータ1では、発熱抵抗体3の発熱能力を最大限まで引き出すことができず、最大で800℃程度までしか昇温させることができなかった。このため、このような電気ヒータ1を用いた半導体排ガス処理装置では、パーフルオロカーボンなど特に分解が困難なPFCsを完全に分解することができないという問題があった。
【0008】
それゆえに、本発明の主たる課題は、発熱抵抗体の発熱能力を最大限発揮させることができると共に、リード線の断線や保護管の破損を防止して長時間安定して使用することが可能な電気ヒータを提供することである。
【0009】
また、本発明の更なる課題は、このような電気ヒータを用い、長時間連続運転が可能であり、パーフルオロカーボンなどの特に分解が困難な化合物をも分解・除害することが可能な半導体排ガス処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載した発明は、「セラミックからなる筒状の保護管12と、螺旋状に巻回され、保護管12内に挿入された発熱抵抗体14と、保護管12内に流し込まれたキャスタブル16aが固化して保護管12内部を密閉した絶縁層16とで構成されている」ことを特徴とする電気ヒータ10である。
【0011】
この発明では、保護管12内部にスラリー状のキャスタブル16aを流し込み、該キャスタブル16aを固化して保護管12内部を隙間なく密閉する絶縁層16を形成しているので、発熱時に発熱抵抗体14が空気に触れて酸化するのを防止することができる。
【0012】
また、保護管12内ではこの絶縁層16によって発熱抵抗体14が挿入時の形状のまましっかりとホールドされているので、発熱により発熱抵抗体14が軟化した場合であっても、この発熱抵抗体14どうしが接触してショートするのを防止することができる。
【0013】
さらに、このキャスタブル16aは電気抵抗が極めて大きく、かかるキャスタブル16aでその表面全体が被覆された発熱抵抗体14では、近接する発熱抵抗体14間に電流が流れてショートするのを完全に防止することができる。
【0014】
そして、このようにキャスタブル16aを固化して絶縁層16を設けることによって、保護管12内部の絶縁層16と保護管12の管壁とが一体化するようになり、しかも電気ヒータ10全体の熱容量が大きくなるので、ヒートショックに起因する保護管12の破損を防止することができる。
【0015】
請求項2に記載した発明は、「セラミックからなる有底筒状の保護管12B(12)と、金属線14aが互いに略並行するようその長手方向中心部Cで二つ折りされ、且つ螺旋状に巻回されて保護管12B内に挿入された発熱抵抗体14B(14)と、保護管12Bの開口12bから流し込まれたキャスタブル16aが固化して保護管12B内部を密閉した絶縁層16とで構成されている」ことを特徴とする電気ヒータ10B(10)である。
【0016】
この発明では、金属線14aをその長手方向中心部Cで二つ折りにして該金属線14aどうしが互いに略並行するようにした後、さらに螺旋状に巻回して(長手方向中心部C側から)保護管12B内に挿入して発熱抵抗体14Bを構成しているので、当該発熱抵抗体14Bの両端部は共に保護管12Bの開口12b側に配設されることとなる。つまり、発熱抵抗体14Bに接続するリード線18を保護管12Bの内部深くにまで挿入する必要がなく、発熱抵抗体14Bの発する熱によって当該リード線18が損傷するのを防止することができる。この結果、発熱抵抗体14Bの発熱能力を十分に発揮させることができ、例えば、金属線14aとしてカンタル線を使用した場合には、概ね1,200℃程度の高温にて電気ヒータ10を作動させることができる。また、保護管12Bの内部では発熱抵抗体14Bが螺旋状に配設されているので、発熱抵抗体14Bが保護管12B全体を均一に加熱することができる。
【0017】
また、特筆すべき点は、上述した請求項1に記載の発明と同様に、保護管12B内部にスラリー状のキャスタブル16aを流し込み、該キャスタブル16aを固化して保護管12B内部を隙間なく密閉する絶縁層16を形成した点にある。このような絶縁層16を形成することによって、発熱時に発熱抵抗体14Bが空気に触れて酸化するのを防止すると共に、発熱により発熱抵抗体14Bが軟化した場合であっても、発熱抵抗体14Bどうしが接触してショートするのを防止することができる。また、キャスタブル16aは電気抵抗が極めて大きく、かかるキャスタブル16aでその表面が完全に被覆された発熱抵抗体14Bでは、近接する発熱抵抗体14B(金属線14a)間に電流が流れてショートするのを防止することができる。そして、保護管12B内部の絶縁層16と保護管12Bの管壁とが一体化するようになり、しかも電気ヒータ10B全体の熱容量が大きくなるので、ヒートショックに起因する保護管12Bの破損を防止することができる。
【0018】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載の電気ヒータ10において、「保護管12内部を密閉する絶縁層16の中心軸上に、貫通孔20Aまたは空洞20Bが形成されている」ことを特徴とするもので、これにより、電気ヒータ10への通電を停止して当該電気ヒータ10を冷却する際、電気ヒータ10内部の放熱を促進することができる。
【0019】
請求項4に記載した発明は、「請求項1乃至3のいずれかに記載の電気ヒータ10を具備し、半導体排ガスGを熱分解する排ガス処理塔26と、排ガス処理塔26に供給する半導体排ガスGを予め薬液で洗浄して可溶性成分や粉塵を除去する入口スクラバ24と、排ガス処理塔26で分解した半導体排ガスG中の有害成分を除去する出口スクラバ28とで構成されている」ことを特徴とする半導体排ガス処理装置22である。
【0020】
本発明の半導体排ガス処理装置22では、上述した各発明の電気ヒータ10を使用しているので、排ガス処理塔26内の温度を概ね1,200℃程度の高温に保持して長時間連続運転することができる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の電気ヒータによれば、発熱抵抗体の絶縁性を確保することができると共に、ヒートショックに起因する保護管の破損を防止することができる。このため、電気ヒータの耐久性を向上させることができる。
【0022】
また、請求項2に記載の電気ヒータによれば、上記効果に加え、電気ヒータが片持ち式の場合であっても、発熱抵抗体に接続するリード線を保護管の内部深くにまで挿入する必要がなく、発熱抵抗体の発する熱によって当該リード線が損傷するのを防止することができるので、発熱抵抗体の発熱能力を最大限まで発揮させることができる。
【0023】
請求項3に記載の電気ヒータによれば、当該電気ヒータを冷却する際に、電気ヒータ内部の放熱を促進することができ、長時間高熱に曝されることに起因する発熱抵抗体や絶縁層の劣化を遅延させることができる。
【0024】
請求項4に記載の半導体排ガス処理装置によれば、耐久性の高い電気ヒータを使用しているので、半導体排ガス処理装置のメンテナンス周期(とりわけ電気ヒータのメンテナンス周期)を延長することができると共に、排ガス処理塔内の温度を概ね1,200℃程度の高温に保持して長時間連続運転することができるので、パーフルオロカーボンなどの特に分解が困難な化合物をも分解・除害することができる。
【0025】
したがって、発熱抵抗体の発熱能力を最大限発揮させることができ、リード線の断線や保護管の破損を防止して長時間安定して使用することが可能な電気ヒータを提供することができると共に、このような電気ヒータを用い、長時間連続運転が可能であり、パーフルオロカーボンなどの特に分解が困難な化合物をも分解・除害することが可能な半導体排ガス処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を図面に従って説明する。図1は本発明における第1実施例の電気ヒータ10A(10)の概要を示した断面図である。この図が示すように、本発明の電気ヒータ10Aは、大略、保護管12A(12)、発熱抵抗体14A(14)および絶縁層16などで構成されている。
【0027】
なお、各符号において、各部位を上位概念で示す場合にはアルファベットの枝番をつけずアラビア数字のみで示し、各部位を区別する必要がある場合(すなわち下位概念で示す場合)にはアルファベット大文字の枝番をアラビア数字に付して区別する。
【0028】
保護管12Aは、アルミナ(Al23),シリカ(SiO2)および窒化ケイ素(Si34)などのセラミックからなり、その軸方向(長手方向)両端部が開口し、且つ内部に発熱抵抗体14Aを収容してこれを保護する筒状の容器体である。
【0029】
ここで、保護管12を構成するセラミックとしては、後述する絶縁層16を構成するキャスタブル16aと同一または類似の成分を用いるのが好ましい。こうすることにより、保護管12と絶縁層16とをより強固に一体化させることができるようになるからである。
【0030】
発熱抵抗体14Aは、電気ヒータ10Aの発熱源となるものであり、ニクロム線やカンタル線などの金属線14aからなり、その長手方向中央部分を螺旋状に巻回したものである。この発熱抵抗体14Aを構成する金属線14aの両端部には、リード線18が接続されており、このリード線18を介して発熱抵抗体14Aに図示しない電源が接続されている。
【0031】
絶縁層16は、発熱抵抗体14Aを配設した保護管12A内部を隙間なく密閉して発熱抵抗体14Aの絶縁性を確保する層である。
【0032】
この絶縁層16は、発熱抵抗体14Aが挿入された保護管12の開口からスラリー状のセラミック耐火材すなわちキャスタブル16aを流し込み、該キャスタブル16aを固化することによって形成される。このようにスラリー状のキャスタブル16aを流し込んで絶縁層16を形成しているので、保護管12内部を当該キャスタブル16aで隙間なく充填することができる。
【0033】
ここで、キャスタブル16aとは、セラミックス粉体、すなわちアルミナ(Al23)やシリカ(SiO2)或いはこれらの混合物等を所定量の水で混練したものである。このうち1,000℃以上の高温における耐熱性や寸法安定性あるいは熱膨張率の小ささなどを考慮した場合には、キャスタブル16aとしてアルミナとシリカとが所定の割合で固溶したムライト質のものを用いるのが好ましい。また、これらの条件に加えてさらに絶縁性をより一層高めたい場合には、キャスタブル16aとして電気抵抗の大きいアルミナを主体としたものを用いるのが好ましい。
【0034】
なお、本実施例の電気ヒータ10Aでは、図1に示すように、この絶縁層16の中心軸上に長手方向にて絶縁層16を貫通する貫通孔20Aが設けられている。このような貫通孔20Aを設けることにより、電気ヒータ10Aへの通電を停止して当該電気ヒータ10Aを冷却する際、電気ヒータ10A内部の放熱を促進でき、長時間高熱に曝されることに起因する発熱抵抗体14Aや絶縁層16の劣化を遅延させることができる。また、この貫通孔20A内に熱電対などの検温手段(図示せず)を配置すれば、当該検出手段が検出した温度に基づいて発熱抵抗体14Aに供給する電力を制御することもできる。
【0035】
この貫通孔20Aは、キャスタブル16aを流し込みこれを固化して絶縁層16を形成するのと同時に完成するようにしても良いし、絶縁層16a完成後に穿設するようにしてもよい。前者の場合、キャスタブル16a中の水分を蒸発させてこれを固化する際、貫通孔20Aを介してキャスタブル16a中の水分を短時間で蒸発させることができるので、電気ヒータ10Aを効率よく製造することができる。
【0036】
次に、以上のように構成された電気ヒータ10Aの作用について説明する。本実施例の電気ヒータ10Aを使用する際には、リード線18を図示しない電源に接続して発熱抵抗体14Aに電力を供給する。すると、発熱抵抗体14Aが発熱を開始する。
【0037】
本実施例の電気ヒータ10Aでは、保護管12A内部にスラリー状のキャスタブル16aを流し込み、該キャスタブル16aを固化して保護管12A内部(より詳しくは貫通孔20Aを除く部分)を隙間なく密閉する絶縁層16を形成しているので、発熱時に発熱抵抗体14Aが空気に触れて酸化するのを防止することができる。
【0038】
また、保護管12A内ではこの絶縁層16によって発熱抵抗体14Aが挿入時の形状のまましっかりとホールドされているので、発熱により発熱抵抗体14Aが軟化した場合であっても、この発熱抵抗体14Aどうしが接触してショートするのを防止することができる。
【0039】
さらに、このキャスタブル16aは電気抵抗が極めて大きく、かかるキャスタブル16aでその表面全体が被覆された発熱抵抗体14Aでは、近接する金属線14a間に電流が流れてショートするのを完全に防止することができる。
【0040】
そして、このようにキャスタブル16aを固化して絶縁層16を設けることによって、保護管12A内部の絶縁層16と保護管12Aの管壁とが一体化するようになり、しかも電気ヒータ10A全体の熱容量が大きくなるので、ヒートショックに起因する保護管12Aの破損を防止することができる。すなわち、電気ヒータ10Aの耐久性を向上させることができる。
【0041】
以上の結果、本実施例の電気ヒータ10Aでは発熱抵抗体14Aの発熱能力を最大限まで発揮させることができる。
【0042】
次に、図2に示す第2実施例の電気ヒータ10B(10)について説明する。上述した第1実施例の電気ヒータ10Aと異なる点は、保護管12および発熱抵抗体14の形状を変更し、片持ち式とした点にある。なお、これら以外の部分は第1実施例と同じであるので、前記第1実施例の説明を援用して本実施例の説明に代える。
【0043】
保護管12B(12)は、アルミナ(Al23),シリカ(SiO2)および窒化ケイ素(Si34)などのセラミックからなり、その軸方向(長手方向)一端に開口12bが設けられ、且つ内部に発熱抵抗体14を収容してこれを保護する有底筒状の容器体である。
【0044】
発熱抵抗体14B(14)は、電気ヒータ10の発熱源となるものであり、ニクロム線やカンタル線などの金属線14aをその長手方向中心部Cで二つ折りにして該金属線14aどうしが互いに略並行するようにした後、さらに螺旋状に巻回したものである(図3参照)。この発熱抵抗体14Bを構成する金属線14aの両端部には、リード線18を介して図示しない電源が接続されている。
【0045】
次に、以上のように構成された電気ヒータ10Bの作用について説明する。本実施例の電気ヒータ10Bを使用する際には、リード線18を図示しない電源装置に接続して発熱抵抗体14に電力を供給する。すると、発熱抵抗体14が発熱を開始する。
【0046】
本実施例の電気ヒータ10Bでは、金属線14aをその長手方向中心部Cで二つ折りにして該金属線14aどうしが互いに略並行するようにした後、さらに螺旋状に巻回して長手方向中心部C側から保護管12B内に挿入して発熱抵抗体14Bを構成しているので、当該発熱抵抗体14Bの両端部は共に保護管12Bの開口12b側に配設されることとなる。つまり、このような片持ち式の電気ヒータ10Bであっても、発熱抵抗体14Bに接続するリード線18を保護管12Bの内部深くにまで挿入する必要がなく、発熱抵抗体14Bの発する熱によって当該リード線18が損傷するのを防止することができる。この結果、発熱抵抗体14Bの発熱能力を最大限まで発揮させることができ、例えば、金属線14aとしてカンタル線を使用した場合には、概ね1,200℃程度の高温にて電気ヒータ10Bを作動させることができる。
【0047】
また、保護管12Bの内部では発熱抵抗体14Bが螺旋状に配設されているので、発熱抵抗体14Bが保護管12B全体を均一に加熱することができる。
【0048】
さらに、上述した第1実施例の電気ヒータ10Aと同様に、保護管12B内部にスラリー状のキャスタブル16aを流し込み、該キャスタブル16aを固化して保護管12B内部を隙間なく密閉する絶縁層16を形成しているので、発熱時に発熱抵抗体14Bが空気に触れて酸化するのを防止すると共に、発熱により発熱抵抗体14Bが軟化した場合であっても、発熱抵抗体14Bどうしが接触してショートするのを防止することができる。また、キャスタブル16aは電気抵抗が極めて大きく、かかるキャスタブル16aでその表面が完全に被覆された発熱抵抗体14Bでは、近接する金属線14a間に電流が流れてショートするのを防止することができる。そして、保護管12B内部の絶縁層16と保護管12Bの管壁とが一体化するようになり、しかも電気ヒータ10B全体の熱容量が大きくなるので、ヒートショックに起因する保護管12Bの破損を防止することができる。
【0049】
なお、上述の実施例では、発熱抵抗体14Bを挿入した保護管12Bの内部を密閉するようにキャスタブル16aを充填して絶縁層16を形成する場合を示したが、図4に示すように、保護管12B内部を密閉する絶縁層16の中心軸上に、保護管12Bの底部近傍から開口12bに向けて空洞20Bを設けるようにしてもよい。こうすることにより、電気ヒータ10Bへの通電を停止して当該電気ヒータ10Bを冷却する際、電気ヒータ10B内部の放熱を促進することができ、長時間高熱に曝されることに起因する発熱抵抗体14Bの劣化を遅延させることができる。また、この空洞20B内に熱電対などの検温手段(図示せず)を配置すれば、当該検出手段が検出した温度に基づいて発熱抵抗体14Bに供給する電力を制御することもできる。
【0050】
なお、この空洞20Bは、キャスタブル16aを流し込みこれを固化して絶縁層16を形成するのと同時に完成するようにしても良いし、絶縁層16a完成後に穿設するようにしてもよい。前者の場合、キャスタブル16a中の水分を蒸発させてこれを固化する際、空洞20Bを介してキャスタブル16a中の水分を短時間で蒸発させることができるので、電気ヒータ10Bを効率よく製造することができる。
【0051】
次に、以上のような電気ヒータ10を用いた半導体排ガス処理装置について説明する。本発明の電気ヒータ10を用いた半導体排ガス処理装置22は、半導体や液晶等の製造装置(図示せず)から排出される半導体排ガスG中のPFCs等を熱酸化分解する装置であり、図5に示すように、大略、入口スクラバ24,排ガス処理塔26および出口スクラバ28などで構成されている。
【0052】
ここで、半導体や液晶等の製造装置から配管30を介して半導体排ガス処理装置22に導入される半導体排ガスGは、その大部分がキャリアガスやパージガス等として使用されたN2やAr或いは添加ガスとして使用されたO2,H2やNH3,CH4などPFCs等以外のガスで構成されており、これに様々な種類のPFCs等が少量加わったものである。このように半導体排ガスG中におけるPFCs等の占める割合は他のガスに比べてわずかではあるが、「背景技術」で述べたように、PFCs等は地球温暖化係数(GWP)がCO2に比べて数千〜数万倍と非常に大きく、大気寿命もCO2に比べて数千〜数万年と長いことから、大気中へ少量排出した場合であってもその影響は甚大なものとなる。
【0053】
入口スクラバ24は、排ガス処理塔26に導入する半導体排ガスGに含まれる粉塵,酸性ガス(例えば、SiH4やSiHF3)および水溶性のPFCs等(例えば、代替ガスとして期待されているCOF2)などを当該排ガスG中から除去するためのものであり、直管型のスクラバ本体24aと、スクラバ本体24a内部の頂部近傍に設置され、アルカリ液、酸性液或いは水などの薬液を霧状にして噴射するスプレーノズル24bとで構成されている。
【0054】
排ガス処理塔26は、半導体排ガスG中のPFCs等を電熱加熱方式にて熱酸化分解する装置であり、内部に電気ヒータ10が配設された排ガス分解処理室26aを備える。また、この排ガス処理塔26の下部には、排ガス分解処理室26aにて熱分解した半導体排ガスGを排出するガス排出部26bが開設されている。
【0055】
出口スクラバ28は、排ガス処理塔26を通過した半導体排ガスGを洗浄し、当該排ガスGの熱分解によって生じた粉塵や酸性ガス(例えば、HF)などを除去するためのものであり、内部の空間を複数のメッシュで仕切られた短管型のスクラバ本体28aと、スクラバ本体28a内部の頂部近傍に設置され、アルカリ液、酸性液或いは水などの薬液を霧状にして噴射するスプレーノズル28bとで構成されている。
【0056】
そして、この出口スクラバ28の頂部には、排ガス送給配管32が取着されており、この排ガス送給配管32の途中に設けられたファン34によって出口スクラバ28から大気中に向けて処理済の半導体排ガスGを排出するようにしている。
【0057】
以上のように構成された半導体排ガス処理装置22によれば、電気ヒータ10として上述したものを使用しているので、排ガス処理塔26内の温度を概ね1,200℃程度の高温に保持して連続運転することができ、パーフルオロカーボンなどの特に分解が困難な化合物をも分解・除害することができる。また、上述のように耐久性の高い電気ヒータ10を使用しているので、半導体排ガス処理装置22のメンテナンス周期(とりわけ電気ヒータ10のメンテナンス周期)を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例(第1実施例)の電気ヒータを示す部分断面図である。
【図2】本発明の他の実施例(第2実施例)の電気ヒータを示す部分断面図である。
【図3】第2実施例の発熱抵抗体を示す正面図である。
【図4】第2実施例の変形例を示す部分断面図である。
【図5】本発明の半導体排ガス処理装置を示す概略図である。
【図6】従来の電気ヒータを示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10…電気ヒータ
12…保護管
12b…開口
14…発熱抵抗体
14a…金属線
16…絶縁層
16a…キャスタブル
18…リード線
20A…貫通孔
20B…空洞
22…半導体排ガス処理装置
24…入口スクラバ
26…排ガス処理塔
28…出口スクラバ
C…金属線の長手方向中心部
G…半導体排ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックからなる筒状の保護管と、
螺旋状に巻回され、前記保護管内に挿入された発熱抵抗体と、
前記保護管内に流し込まれたキャスタブルが固化して前記保護管内部を密閉した絶縁層とで構成されていることを特徴とする電気ヒータ。
【請求項2】
セラミックからなる有底筒状の保護管と、
金属線が互いに略並行するようその長手方向中心部で二つ折りされ、且つ螺旋状に巻回されて前記保護管内に挿入された発熱抵抗体と、
前記保護管の開口から流し込まれたキャスタブルが固化して前記保護管内部を密閉した絶縁層とで構成されていることを特徴とする電気ヒータ。
【請求項3】
前記保護管内部を密閉する絶縁層の中心軸上に、貫通孔または空洞が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気ヒータ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気ヒータを具備し、半導体排ガスを熱分解する排ガス処理塔と、
前記排ガス処理塔に供給する半導体排ガスを予め薬液で洗浄して可溶性成分や粉塵を除去する入口スクラバと、
前記排ガス処理塔で分解した半導体排ガス中の有害成分を除去する出口スクラバとで構成されていることを特徴とする半導体排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−59061(P2007−59061A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229903(P2005−229903)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(592010106)カンケンテクノ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】