説明

電気・電子部品

【課題】密着性、耐久性に優れた接着剤により接着された金属と樹脂からなる電気・電子部品を提供する。
【解決手段】イソシアネート化合物を含む液(A)とエチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)とからなる接着剤により金属と樹脂とを貼り合わせてなる電気・電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密着性、耐久性に優れた接着剤により金属と樹脂とを貼り合わせてなる電気・電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICタグはRFID(Radio Frequency Identification)タグの1種であり、個体の識別が可能な情報を保持するICチップとアンテナ回路を埋め込み、専用の読み取り機を用いて無線通信により非接触での情報の読み取りが可能となっている。
【0003】
ICタグは小型であり、単体毎の認識が可能であることから、近年では、製品等の工場での工程管理や、流通情報の管理等、様々な分野において利用されている。
【0004】
RFIDタグに用いられるアンテナ回路は、一般に回路としての機能を付与する金属箔と、金属箔を支持するための樹脂フィルムとが貼り合された構成からなる。このような回路用部品は、工業的には帯状の金属箔と帯状の樹脂フィルムとを接着剤を介して貼り合せ、金属箔に回路を形成し、所望形状に打ち抜くことによって製造されている。
【0005】
近年、ICタグは小型化、薄型化の要求が高まっており、ドライラミネートにより貼り合わせる方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−147064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に提案されたICタグは、接着剤の耐久性が余り良くないため温度、湿度が高い環境で使用されると金属箔と樹脂フィルムの接着が不充分であり、密着性、耐久性に劣るという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、イソシアネート化合物を含む液(A)とエチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)とからなる接着剤により金属と樹脂とを貼り合わせると密着性、耐久性に優れた電気・電子部品が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、イソシアネート化合物を含む液(A)とエチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)とからなる接着剤により金属と樹脂とを貼り合わせてなる電気・電子部品に関するものである。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の電気・電子部品は、イソシアネート化合物を含む液(A)とエチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)とからなる接着剤により金属と樹脂とを貼り合わせてなるものである。
【0012】
本発明で用いる金属としては、例えばアルミニウム、銅、金、鉄、ステンレス、これら金属の合金等が挙げられ、導電性を有することからアルミニウム、銅が好ましい。
【0013】
また、金属の形状としては例えば板、箔、棒等が挙げられ、回路部品が得られることから金属箔が好ましい。
また、回路部品が得られることから、金属はアルミニウム箔、銅箔が好ましい。
【0014】
金属箔の厚みは5〜100μmが好ましく、回路部品が得られることから5〜50μmがより好ましい。
【0015】
本発明で用いる樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリテトラフルオロエチレン、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、及びポリフッ化ビニル等のフッ素樹脂;ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン系樹脂鹸化物、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂等を挙げることができ、耐熱性が高いことからポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレンが好ましい。
【0016】
また、樹脂の形状としては、例えば板、フィルム、棒、パイプ等が挙げられ回路部品が得られることから樹脂フィルムが好ましい。
【0017】
また、剛性が向上することから樹脂フィルムは、延伸フィルムであることが好ましい。
回路部品が得られることから、樹脂はポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリプロピレンフィルムが好ましい。
また、樹脂フィルムの厚みは2〜200μmであることが好ましく、回路部品が得られることから5〜100μmがより好ましい。
また、本発明の電気・電子部品は、金属箔と樹脂フィルムが貼り合わされてなる回路用部品であることが好ましい。
【0018】
本発明で用いる接着剤は、イソシアネート化合物を含む液(A)とエチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)とからなる接着剤である。
該接着剤層の厚みは、1〜20μmであることが好ましく、回路部品が得られることから5〜15μmがより好ましい。
【0019】
本発明に用いる該液(A)としては、イソシアネート化合物を含む液状物であれば如何なるものを用いることもでき、例えばイソシアネート化合物と有機溶剤とからなる溶液、イソシアネート化合物と水とからなる水溶液,懸濁液、液状イソシアネート化合物等を挙げることができ、その中でも塗布性に優れることからイソシアネート化合物と有機溶剤とからなる溶液であることが好ましい。
【0020】
そして、該液(A)を構成するイソシアネート化合物としては、例えば芳香族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、及びこれらのポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。
【0021】
芳香族イソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート(2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m−、p−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’−、2,4’−、または2,2’−ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’−トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω′−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、ナフタレンジイソシアネート(1,5−、1,4−又は1,8−ナフタレンジイソシアネートもしくはその混合物)(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、等が挙げられる。
【0022】
脂肪族イソシアネート化合物としては、例えばトリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプエート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば単環式脂環族ジイソシアネート、架橋環式脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0024】
単環式脂環族ジイソシアネートとしては、例えば1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート)、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4′−、2,4′−又は2,2′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)もしくはこれらの混合物)(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(1,3−または1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)(水添XDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート(水添TDI)、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート(水添TMXDI)等を挙げることができる。
【0025】
架橋環式脂環族ジイソシアネートとしては、例えばノルボルネンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ジイソシアナートメチルビシクロヘプタン、ジ(イソシアナートメチル)トリシクロデカン等が挙げられる。
【0026】
これらのポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記イソシアネート化合物の多量体(2量体、3量体、5量体、7量体、ウレチジンジオン、ウレイトンイミン、イソシヌレート変性体、ポリカルボジイミド等)、ウレタン変性体(例えば、上記イソシアネート化合物又は多量体におけるイソシアネート基の一部をモノオールやポリオールで変性又は反応したウレタン変性体など)、ビウレット変性体(例えば、上記イソシアネート化合物と水との反応により生成するビウレット変性体など)、アロファネート変性体(例えば、上記イソシアネート化合物と、モノオール又はポリオール成分との反応より生成するアロファネート変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記イソシアネート化合物とジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン(例えば、上記イソシアネート化合物と炭酸ガス等との反応により生成するオキサジアジントリオンなど)などを挙げることができる。
【0027】
これらの誘導体のうち、3官能以上のイソシアネート基を形成できる誘導体、例えば、3個以上の活性水素原子を有する成分と上記イソシアネート化合物とのアダクト体が好ましい。3個以上の活性水素原子を有する成分としては、3官能以上のポリオール、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどのC3−12脂肪族ポリオールなどが挙げられる。なお、このようなアダクト体は、未反応モノマーの含有量が少ないアダクト体が好ましい。未反応モノマー含有量の少ないアダクト体は、反応生成物を慣用の分離精製方法、例えば、薄膜蒸留や抽出などを用いて製造できる。アダクト体のイソシアネート含量は、例えば、1〜30重量%、好ましくは3〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%程度である。
【0028】
上記のイソシアネート化合物は単独で用いてもよいし、2種以上で用いてもよい。
【0029】
具体的商品としては、「コロネートL」、「コロネートHL」、「コロネート2030」、「コロネート2031」、「ミリオネートMR」、「ミリオネートMTL」(商品名、日本ポリウレタン株式会社製)、「タケネートD−102」、「タケネートD−110N」、「タケネートD−200」、「タケネートD−202」、「タケネート300S」、「タケネート500」(商品名、武田薬品株式会社製)、「スミジュールN3300」、「スミジュールT−80」、「スミジュール44S」、「スミジュールPF」、「スミジュールL」、「スミジュールN」、「デスモジュールL」、「デスモジュールIL」、「デスモジュールN」、「デスモジュールHL」、「デスモジュールT65」、「デスモジュール15」、「デスモジュールR」、「デスモジュールRF」、「デスモジュールSL」、「デスモジュールZ4273」(商品名、住化バイエルウレタン株式会社製)等が挙げられる。
【0030】
中でも、特に耐久性に優れる電気・電子部品が得られることから、芳香族イソシアネート化合物が好ましく、特にジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びこれらイソシアネート化合物のアダクト体が好ましく、さらにジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート及び/またはトリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体が好ましい。
【0031】
また、本発明で用いる該液(A)は、耐久性に優れる電気・電子部品が得られることから3官能以上のイソシアネート化合物を含むものであることが好ましい。
【0032】
該液(A)がイソシアネート化合物の溶液である場合の有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤、塩化メチレン等の塩素系有機溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤を挙げることができ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上でもよい。中でも、塗布性に優れることから、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、塩化メチレンが好ましく、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0033】
イソシアネート化合物を含む液(A)中のイソシアネート化合物の濃度は、塗布性に優れることから1〜100重量%が好ましく、10〜100重量%が更に好ましい。
【0034】
該液(A)の製造方法としては、特に制限は無く公知の方法を用いることができ、例えばイソシアネート化合物、有機溶剤を室温混合する方法、加熱混合する方法等が挙げられ、室温混合する方法が好ましく用いられる。
【0035】
本発明で用いる該液(B)は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液であれば如何なるものを用いることもでき、例えばエチレン−酢酸ビニル系共重合体と有機溶剤からなる溶液、エチレン−酢酸ビニル系共重合体と水からなる懸濁液、液状エチレン−酢酸ビニル系共重合体等を挙げることができ、その中でも塗布性に優れることからエチレン−酢酸ビニル系共重合体と有機溶剤とからなる溶液であることが好ましい。
該液(B)を構成するエチレン−酢酸ビニル系共重合体は、例えばケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらの混合物でもよい。
【0036】
本発明に用いるエチレン−酢酸ビニル系共重合体中の酢酸ビニル残基単位は、接着性に優れることから15〜70重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜50重量%、特に好ましくは20〜45重量%である。
【0037】
さらに、本発明に用いるエチレン−酢酸ビニル系共重合体のJIS K6924−1(1997年版)に準拠して測定したメルトマスフローレート(以下、MFRという。)は、金属と樹脂を貼り合せ易いことから50〜10000g/10分であることが好ましく、60〜5000g/10分がさらに好ましく、60〜2400g/10分が特に好ましい。
【0038】
また、本発明で用いるエチレン−酢酸ビニル系共重合体は、特に接着強度に優れることから、ビニルアルコール残基単位を0.01〜10モル%含むことが好ましく、0.1〜5.0モル%含むことが更に好ましい。
【0039】
該エチレン−酢酸ビニル系共重合体は、例えば高圧重合法、エマルジョン重合法、または溶液重合法により製造される。また、ケン化エチレン−酢酸ビニル系共重合体は、例えばエチレン−酢酸ビニル系共重合体中の酢酸ビニル残基単位を加水分解し、ビニルアルコール残基単位にケン化することにより得ることができる。この際、例えば、高圧法により製造されたエチレン−酢酸ビニル系共重合体を加水分解する方法としては、水酸化ナトリウム等のアルカリ又は酸を触媒として加水分解反応を行う方法を挙げることができ、具体的には良溶媒にエチレン−酢酸ビニル系共重合体を溶解させて均一系で反応を行う均一ケン化法、メタノール、エタノールのような貧溶媒中でペレット又は粉体のまま不均一系で反応を行う不均一ケン化法等が挙げられる。
【0040】
本発明においてエチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)を構成する場合もある有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤、塩化メチレン等の塩素系有機溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤を挙げることができ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上でもよい。そして、金属と樹脂を貼り合せ易いことからトルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、塩化メチレンが好ましく、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0041】
エチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)中のエチレン−酢酸ビニル系共重合体の濃度は、金属と樹脂を貼り合せ易いことから1〜90重量%が好ましく、10〜75重量%が更に好ましく、10〜50重量%が特に好ましい。
【0042】
本発明に用いるエチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)を製造するには、特に制限は無く公知の方法を用いることができ、例えばエチレン−酢酸ビニル系共重合体、有機溶剤を室温混合する方法、加熱混合する方法等が挙げられ、溶解が早いことから加熱混合する方法が好ましく用いられる。加熱混合する際の温度は30〜150℃が好ましく、特に好ましくは50〜110℃である。
【0043】
本発明において、イソシアネート化合物を含む液(A)とエチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)の配合比は接着することが可能であれば如何なるものでもよく、特に密着性に優れることからイソシアネート化合物を含む液(A)の量は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)100重量部に対し、0.01〜150重量部であることが好ましく、0.1〜100重量部であることがさらに好ましく、0.1〜60重量部であることが特に好ましい。
そして、これらを混合配合する際に特に制限は無く公知の方法を用いることができ、例えばイソシアネート化合物を含む液(A)とエチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)を室温混合する方法、加熱混合する方法等が挙げられ、室温混合する方法が好ましく用いられる。
【0044】
本発明で用いる接着剤の速乾性を高めるためには、ウレタン化反応触媒を含むことが好ましく、該ウレタン化反応触媒としては、特に限定は無く公知のものを用いることができる。例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等のアミン系触媒、テトラメチル錫、テトラオクチル錫、ジメチルジオクチル錫、トリエチル錫塩化物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート等の錫系触媒等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。添加することが好ましいウレタン化反応触媒の配合量としては、本発明で用いる接着剤の速乾性が向上することから、エチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)100重量部に対して0.0001〜1重量部が好ましく、0.001〜0.5重量部がさらに好ましく、0.001〜0.1重量部が特に好ましい。
【0045】
また、本発明で用いる接着剤には、耐久性に優れることからカルボジイミド化合物を含むことが好ましく、該カルボジイミド化合物としては、分子内に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物であれば如何なるものでもよく、例えばN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジ(o−トルイル)カルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド等の一官能性カルボジイミド化合物;p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、p−フェニレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、p−フェニレン−ビス(メシチルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)等の二官能性カルボジイミド化合物;多官能性カルボジイミド化合物等が挙げられ、その中でも多官能性カルボジイミド化合物が好ましい。該一官能性カルボジイミド化合物としては、例えば(商品名)スタバクゾールI(RheinChemie社製)、該多官能性カルボジイミド化合物としては、例えば(商品名)エラストスタブH01(日清紡社製)、(商品名)スタバクゾールP(RheinChemie社製)、(商品名)スタバクゾールP−400(RheinChemie社製)等の商品名で一般的に知られているカルボジイミド化合物が挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は1種又は2種以上が使用できる。また、添加することが好ましいカルボジイミド化合物の配合量としては、電気・電子部品の耐久性が向上することから、エチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)100重量部に対して0.01〜5.0重量部添加することが好ましく、0.05〜3.0重量部がさらに好ましく、0.1〜2.0重量部が特に好ましい。
【0046】
さらに、本発明で用いる接着剤には、着色を抑制できることから酸化防止剤を含むことが好ましく、該酸化防止剤としては、何ら制限はなく、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、より大きな効果を発現するために2種以上を併用して用いることができる。また、添加することが好ましい酸化防止剤の配合量としては、エチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)100重量部に対して0.001〜1.0重量部が好ましく、0.001〜0.5重量部がさらに好ましく、0.001〜0.1重量部が特に好ましい。
【0047】
そして、これらの酸化防止剤の中でも、着色を抑制する効果が大きいことから、フェノール系酸化防止剤である2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)が好ましい。
【0048】
本発明で用いる接着剤には本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を含有していても良い。各種添加剤としては、例えば、染料、有機顔料、無機顔料、無機補強剤、可塑剤、アクリル加工助剤等の加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、ワックス、結晶核剤、可塑剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、防徽剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填材、有機充填材等を挙げることができる。
【0049】
本発明の電気・電子部品は、イソシアネート化合物を含む液(A)とエチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)とからなる接着剤により金属と樹脂とを貼り合わせてなる。貼合せる方法に特に制限はなく、例えばグラビアコーター、ビードコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ロールコーター、スピンコーター等を用いることができる。
【0050】
本発明の電気・電子部品は、例えば回路用部品、アンテナ回路、ICカード部品、ICタグ部品、太陽電池用部品、ホットカーペット用部品、電池用部品、電子ペーパー用部品、電磁波シールド用部品、タッチパネル用部品、電子ペーパー用部品、液晶ディスプレイ用部品、有機EL用部品、フレキシブルプリント基板等に用いることができ、中でも回路部品、アンテナ回路、ICタグ部品、ICカード部品として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明の電気・電子部品は耐久性に優れており、様々な分野で有用である。
【実施例】
【0052】
以下に実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明の理解を助けるための例であって本発明はこれらの実施例により何等の制限を受けるものではない。尚、用いた試薬等は断りのない限り市販品を用いた。
【0053】
(試薬等)
実施例、比較例の中で用いた試薬等は、以下の略号を用いて表す。
【0054】
<エチレン−酢酸ビニル系共重合体>
EVA−1;ウルトラセン(登録商標)726−2(酢酸ビニル残基単位含量33重量%、MFR=700g/10分)、東ソー株式会社製。
【0055】
<イソシアネート化合物を含む液>
イソシアネート化合物を含む液(A1);(商品名)コロネートL(トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンからなるアダクト体の酢酸エチル溶液、イソシアネート含量13.4重量%)、日本ポリウレタン工業株式会社製。
【0056】
<樹脂フィルム>
PET−1;ポリエチレンテレフタレートフィルム、メリネックス(登録商標)タイプS(厚み:100μm)、帝人デュポンフィルム株式会社製。
PI−1:ポリイミドフィルム、UPILEX(登録商標)75S(厚み75μm)、宇部興産株式会社製 。
【0057】
<金属箔>
Cu−1;銅箔CU−113253(厚み:40μm)、株式会社ニラコ製。
Al−1;アルミニウム箔AL−013253(厚み:40μm)、株式会社ニラコ製。
【0058】
(物性試験法)
<密着性>
金属と樹脂とを貼り合せた試験片を25mm幅に切り出し、剥離強度を測定し、密着性を評価した。装置は、引張試験機((商品名)テンシロンRTE−1210、オリエンテック製)を用いた。
【0059】
<湿熱試験>
高温高湿器((商品名)ETAC HI FLEX FX4200、楠本化成株式会社製)を用いて、温度85℃、相対湿度85%RHの条件で試験片を500時間放置した。
【0060】
<ヒートサイクル試験>
エスペック株式会社製 冷熱衝撃装置TSA−71L−Aを用いて85℃で30分、常温で5分、−40℃で30分を1サイクルとして接着試験片に熱衝撃を加えて、接着片の剥離等を観察した。
【0061】
実施例1
3リットルの撹拌翼付きセパラブルフラスコに、メタノールを1000ml、EVA−1を300g、水酸化ナトリウムを5g入れ、45℃に加温して2時間ケン化反応を行った。反応後内容物をろ過し、メタノールで洗浄した後、中和、水洗、真空乾燥してケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAOH−1と記す。)を得た。EVAOH−1は、酢酸ビニル残基単位含量32.3重量%、ビニルアルコール残基単位0.1モル%、MFR=680g/10分であった。
【0062】
0.5リットルのセパラブルフラスコに、トルエンを85重量部、得られたEVAOH−1を15重量部入れ、撹拌しながら70℃に加温して1時間かけて溶解した後冷却し、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液を得た。
【0063】
得られたケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液100重量部に対し、イソシアネート化合物を含む液(A1)を5重量部添加して混合し接着剤を調製した。
【0064】
<銅箔の積層>
スピンコーター((商品名)1H−DX、ミカサ株式会社製)を用いて、得られた接着剤を樹脂フィルムPET−1に塗布し、乾燥機((商品名)SPH−101、エスペック株式会社製)中で100℃、1分間乾燥後、金属箔Cu−1と貼り合せ積層体を得た。
【0065】
得られた積層体を100℃、24時間エージングした後、密着性を評価したところ、剥離強度は15N/25mmであり、優れた密着性を示した。
【0066】
また、得られた積層体の湿熱試験を行い湿熱試験後の接着強度を測定したところ、湿熱試験後の接着強度は初期の接着強度の80%以上を示し、得られた積層体は優れた耐湿熱性を示した。
【0067】
<アンテナ回路の製造>
クリーンルーム内で、得られた積層体、アンテナ回路パターンの順に円形石英ガラス製基板上にポリイミドテープを用いて固定した。次に、得られた積層体を固定した上記の石英ガラス製基板をスピンコーターにセットし、レジスト液6mlを得られた積層体上に流延し、レジスト液が一様にコートされた積層体を得た。
【0068】
この積層体を円形石英ガラス製基板に固定したまま、波長365nmのUV光で15秒間露光し、その後、上記のガラス製基板を回転させた状態で現像液を流延し、現像を行い、引き続き、水洗、窒素を吹き付けながら乾燥させた。
【0069】
得られた現像済みの積層体を室温で30分間、エッチング液で処理し、水洗、レジスト層の剥離をアセトンで行い、アンテナ回路パターンが形成された電気・電子部品であるアンテナ回路が得られた。
【0070】
<回路部品の試験>
本回路部品は200回のヒートサイクル試験で、銅箔が剥離せず耐寒性及び耐熱衝撃性に優れていた。
【0071】
実施例2
スピンコーター((商品名)1H−DX、ミカサ株式会社製)を用いて、実施例1で得られた接着剤を樹脂フィルムPI−1に塗布し、乾燥機((商品名)SPH−101、エスペック株式会社製)中で100℃、1分間乾燥後、金属箔Cu−1と貼り合せ積層体を得た。
【0072】
得られた積層体を100℃、24時間エージングした後、実施例1と同様に密着性、耐湿熱性を評価した。剥離強度は12N/25mmであり、湿熱試験後の接着強度は初期の接着強度の80%以上を示し、得られた積層体は優れた密着性、耐湿熱性を示した。
【0073】
<回路部品の製造>
クリーンルーム内で、得られた積層体、回路パターンの順に円形石英ガラス製基板上にポリイミドテープを用いて固定した。次に、得られた積層体を固定した上記の石英ガラス製基板をスピンコーターにセットし、レジスト液6mlを得られた積層体上に流延し、レジスト液が一様にコートされた積層体を得た。
【0074】
この積層体を円形石英ガラス製基板に固定したまま、波長365nmのUV光で15秒間露光し、その後、上記のガラス製基板を回転させた状態で現像液を流延し、現像を行い、引き続き、水洗、窒素を吹き付けながら乾燥させた。
【0075】
得られた現像済みの積層体を室温で30分間、エッチング液で処理し、水洗、レジスト層の剥離をアセトンで行い、回路パターンが形成された電気・電子部品である回路部品が得られた。
【0076】
実施例1と同様にして得られた回路部品は200回のヒートサイクル試験で、銅箔が剥離せず耐寒性及び耐熱衝撃性に優れていた。
【0077】
実施例3
スピンコーター((商品名)1H−DX、ミカサ株式会社製)を用いて、実施例1で得られた接着剤を樹脂フィルムPET−1に塗布し、乾燥機((商品名)SPH−101、エスペック株式会社製)中で100℃、1分間乾燥後、アルミニウム箔Al−1と貼り合せ積層体を得た。
【0078】
得られた積層体を100℃、24時間エージングした後、実施例1と同様に密着性、耐湿熱性を評価した。剥離強度は25N/25mmであり、湿熱試験後の接着強度は初期の接着強度の80%以上を示し、得られた積層体は優れた密着性、耐湿熱性を示した。
【0079】
実施例1と同様にして得られたアンテナ回路は200回のヒートサイクル試験で、アルミニウム箔が剥離せず耐寒性及び耐熱衝撃性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の電気・電子部品は、密着性、耐久性に優れており、様々な分野において極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート化合物を含む液(A)とエチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)とからなる接着剤により金属と樹脂とを貼り合わせてなることを特徴とする電気・電子部品。
【請求項2】
金属が金属箔であることを特徴とする請求項1に記載の電気・電子部品。
【請求項3】
金属箔の厚みが5〜100μmであることを特徴とする請求項2に記載の電気・電子部品。
【請求項4】
金属箔がアルミニウム箔及び/又は銅箔であることを特徴とする請求項2又は3に記載の電気・電子部品。
【請求項5】
樹脂が樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電気・電子部品。
【請求項6】
樹脂フィルムの厚みが2〜200μmであることを特徴とする請求項5に記載の電気・電子部品。
【請求項7】
樹脂フィルムがポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム及び/又はポリプロピレンフィルムであることを特徴とする請求項5又は6に記載の電気・電子部品。
【請求項8】
接着剤層の厚みが1〜20μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電気・電子部品。
【請求項9】
エチレン−酢酸ビニル系共重合体を含む液(B)がケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電気・電子部品。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の電気・電子部品からなることを特徴とする回路用部品。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の電気・電子部品からなることを特徴とするアンテナ回路。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の電気・電子部品からなることを特徴とするICタグ部品。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の電気・電子部品からなることを特徴とするICカード部品。

【公開番号】特開2013−93424(P2013−93424A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234155(P2011−234155)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】