説明

電気化学エネルギー源及びこのような電気化学エネルギー源を備える電子装置

本発明は、基板と該基板上に堆積された少なくとも1つのスタックを有する改善された電気化学エネルギー源に関し、前記スタックは、第1電極、第2電極、及び該第1電極と該第2電極とを分離する中間の固体電解質を有する。本発明は、このような電気化学エネルギー源を備える電子装置にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された電気化学エネルギー源に関する。本発明は、このような電気化学エネルギー源を備える電子装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解質に基づく電気化学エネルギー源は、従来技術において知られる。これらの(平面的)エネルギー源、又は「固体バッテリ」は、化学エネルギーを電気エネルギーに効率的に変換し、携帯用電子装置の電源として使用され得る。小さなスケールにおいて、このようなバッテリは、電気エネルギーを例えばマイクロ電子モジュール、より詳細には集積回路(IC)に供給するために使用され得る。この例は、国際特許出願公開WO00/25378に開示され、固体薄膜微小バッテリが特定の基板上に直接作製される。この作製プロセスの間、第1電極、中間の固体電解質、及び第2電極は、基板上にスタックとして続いて堆積される。既知の微小バッテリは、一般に他の固体バッテリと比較して優れた性能を示すが、既知の微小バッテリは、いくつかの欠点を有する。国際特許出願公開WO00/25378の既知の微小バッテリの主要な欠点は、少なくとも部分的にスタックを囲む遮蔽パッケージをスタックに適用するとき、このパッケージが、動作中の両方の電極の著しい膨張及び収縮により、一般に容易にひびが入るであろうということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上記欠点の少なくとも1つを被ることのない改善された電気化学エネルギー源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、冒頭に記載の電気化学エネルギー源を提供することにより達成され得、これは、基板、及び該基板に堆積される少なくとも1つのスタックを有し、該スタックは、第1電極、第2電極、及び該第1電極及び第2電極を分離する中間の固体電解質を有し、少なくとも1つの電子伝導性バリア層が、基板とスタックとの間に堆積され、該バリア層は、スタックのアクティブな種の前記基板への拡散を少なくとも実質的に排除するために適用され、エネルギー源は、少なくとも部分的にスタックを囲う少なくとも1つの材料層と、スタックの膨張及び収縮の間、周囲の材料層のストレスを低下させるため、スタックと周囲の材料層との間に位置されるストレス低減手段とを更に有する。周囲の材料層とスタックとの間に材料ストレス低減手段を適用することにより、電気化学エネルギー源の動作時の電極の膨張及び収縮による電気化学エネルギー源周囲の材料層及びスタックの境界の材料ストレスの組み合わせは、補正され得る。周囲の層及び/又はスタックの劣化、特にひび割れ又は破壊は、このように防がれる。本発明による電気化学エネルギー源に材料ストレス低減手段を提供することにより、電気化学源の設計の自由度が著しく向上され得る。特に、使用可能な周囲の層の選択の自由度は、材料ストレス低減手段の適用により向上される。それゆえ本発明による電気化学エネルギー源において、少なくとも部分的にスタックを覆うため、非常に硬い周囲層を適用することは、考えられる。少なくとも部分的にスタックを囲む材料層は、様々な性質を持ち得る。周囲材料層は、本発明による電気化学エネルギー源の長期的な性能を保証するようにスタックを保護するため、スタック内のアクティブな種を保持するために適用されるパッケージとして役立つ、並びに/又はパッケージの周囲の酸素及び窒素のような大気の化合物がスタックに入るのを回避するために適用され得る。
【0005】
しかしながら、周囲材料層は、他の目的、例えば本発明による電気化学エネルギー源の2つの異なるスタックを分離するスペーサとして役立ち得ることも考慮される。
【0006】
第1電極は、好ましくは陽極を有し、第2電極は、好ましくは陰極を有する。陽極及び陰極の両方が、基板上へのスタックの体積の間に堆積されることは、一般的である。好ましくは、本発明によるエネルギー源の少なくとも1つの電極は、水素(H)、リチウム(Li)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)又は周期表の1族若しくは2族に割り当てられるいずれかの他の適切な元素のうちの少なくとも1つのアクティブな種を保存するために適用される。その結果、本発明によるエネルギーシステムの電気化学エネルギー源は、様々な挿入(インターカレーション)機構に基づき得、それゆえ例えばLiイオンバッテリ、NiMHバッテリ等の異なる種類のバッテリを形成することに適している。好ましい実施例において、少なくとも1つの電極、より好ましくは陽極が、C,Sn,Ge,Pb,Zn,Bi,Sb,Li及び好ましくはドープされたSiのうちの1つを有する。これらの材料の組み合わせは、電極を形成するためにも使用され得る。好ましくはn型又はp型のドープされたSi、又はドープされたSi関連の化合物、例えばSiGe若しくはSiGeCが使用される。電極の材料が、インターカレーション、及び上記反応性の種の保存に適用される場合、他の適切な材料、好ましくは、周期表の12乃至16族の1つの割り当てられる他の適切な元素も、陽極として適用され得る。上記の材料は、特にリチウムイオンバッテリに適用されることに適している。水素ベースのエネルギー源が適用される場合、陽極は、水素化物生成材料、例えばAB5タイプの材料、特にLaNi5、及びマグネシウムベースの合金、特にMgxTi1-xを有する。
【0007】
リチウムイオンベースのエネルギー源の陰極は、少なくとも1つの金属酸化物ベースの材料、例えばLiCoO,LiNiO,又はこれらの組み合わせ、例えばLi(NiCoMn)Oを有する。水素ベースのエネルギー源の場合、陰極は、好ましくは、Ni(OH)及び/又はNiM(OH)を有し、Mは、例えばCd,Co,又はBiのグループから選択される1又はそれより多くの元素により形成される。
【0008】
好ましい実施例において、第1電極及び第2電極の少なくとも1つの電極は、少なくとも1つの電流コレクタを有する。電極端子として電流コレクタを使用することは、一般に知られている。例えばLiイオンバッテリの場合、(陰極として振る舞う)LiCoO電極が適用されるとき、好ましくは、アルミニウム電流コレクタが、LiCoO電極に接続される。代替として、又は付加的に、少なくとも1つの電流コレクタが、Al,Ni,Pt,Au,Ag,Cu,Ta,Ti,TaN,及びTiNのうちの少なくとも1つから作られる。他の種類の電流コレクタ、例えば好ましくはドーピングされた半導体材料、例えばSi,Ga,InPは、電流コレクタとして役立つために使用され得る。電子伝導性バリア層が適用される場合、このバリア層は、陽極に対する電流コレクタとして機能するために使用され得る。より好ましくは、各電流コレクタの少なくとも一部が、本発明によるエネルギー源の電子モジュール又は装置との促進された接続を可能にするため、周囲の材料層により覆われないままである。(電流コレクタの一部に加えて)スタックの外部表面の他の部分は、中程度の締め方で周囲の材料層により好ましくは完全に覆われる。特に好ましい実施例において、電流コレクタの少なくとも1つは、隣接した電極が堆積される導電性基板により形成される。一般に(他のものの中で)エネルギー源を支持する第1基板及び電流コレクタの集積化は、本発明によるエネルギー源の比較的簡素な構成をもたらす。更に、エネルギー源を製造する態様も、少なくとも1つのプロセスステップが削減され得るので、より簡素になる。本発明によるエネルギーシステムの比較的簡素な製造方法は、更に著しいコストの節約をもたらし得る。この文脈において、通常、第1電極は、陽極及び(第1)電流コレクタを有し、第2電極は、陰極及び(第2)電流コレクタを有することが意図される。しかしながら、代替としてスタックが、第1電流コレクタ、第1電流コレクタに堆積される電解質、電解質に堆積される陰極、及び陰極に堆積される第2電流コレクタを有することも、当業者に想定される。したがって、別個の陽極層は、スタックの製造の間に堆積されない。しかしながら、陽極は、電気化学源の動作の間、一般に第1電流コレクタにおいて、実際には第1電流コレクタと電解質との間で形成されるであろう。例えばリチウムイオンタイプのバッテリを製造する間、金属リチウムは、第1電流コレクタに堆積され、それから実質的にバッテリの陽極材料として振る舞う。この文脈において、順スタック(陽極が基板に向けられる)及び逆スタック(陰極が基板に向けられる)の両方とも、本発明による電気化学エネルギー源に組み込まれ得ることは、留意されたい。
【0009】
本発明によるエネルギー源に適用される電解質は、イオン伝導機構か、又は非電子伝導機構、例えば水素(H)、リチウム(Li)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)に対するイオン導電体に基づき得る。固体電解質が一般に使用されるであろう。しかしながら、液体電解質、又は固体及び液体の混合状態の電解質、例えばゲルベースのポリマを適用することも考慮される。更に、ポリマベースの電解質も使用され得る。固体電解質として、Li伝導体の一例は、リチウム燐オキシナイトライド(LiPON)である。他の既知の固体電解質、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、タングステン酸リチウム(LiWO)、リチウムゲルマニウムオキシナイトライド(LiGeON)、LiLaTa12(ガーネット型のクラス)、Li14ZnGe16(lisicon)、LiN、βアルミナ、又はLi1.3Ti1.7Al0.3(PO(nasicon型)も、リチウム導電性固体電解質として使用され得る。
【0010】
本発明は、本発明による少なくとも1つの電気化学エネルギー源を備える電子装置にも関する。このような電子装置の例は、シェーバであり、電気化学エネルギー源は、例えばバックアップ(又は予備)電源として機能し得る。本発明によるエネルギーシステムを有するバックアップ電源を供給することにより向上され得る他の用途は、例えば携帯用無線モジュール(例えば携帯電話、無線モジュール等)、(自律型)マイクロシステムのセンサ及びアクチュエータ、エネルギー及び光管理システム、並びにアンビエントインテリジェンス用のデジタル信号プロセッサ及び自律型装置である。この列挙は、制限的なものとして考慮されないことは明らかであり得る。本発明によるエネルギー源が組み込まれ得る(又はその逆の)電子装置の他の例は、いわゆる「システム・イン・パッケージ」(SiP)である。システム・イン・パッケージにおいて、1つ又は複数の電子部品及び/又は装置、例えば集積回路(IC)、チップ、ディスプレイ等は、本発明による電気化学エネルギー源の基板、特に単結晶シリコン導電性基板に少なくとも部分的に埋め込まれる。
【0011】
本発明は、以下の非制限的な例により図示される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1a】図1aは、従来技術から知られるリチウムイオンバッテリの放電された状態の概略的な断面図を示す。
【図1b】図1bは、図1aによるリチウムイオンバッテリの充電された状態の概略的な断面図を示す。
【図1c】図1cは、図1aによるリチウムイオンバッテリの放電された状態の概略的な断面図を示し、バッテリにおける局部的な材料ストレスが示される。
【図1d】図1dは、図1aによるリチウムイオンバッテリの充電された状態の概略的な断面図を示し、バッテリにおける局部的な材料ストレスが示される。
【図2a】図2aは、本発明によるリチウムイオンバッテリの放電された状態の概略的な断面図を示す。
【図2b】図2bは、図2aによるリチウムイオンバッテリの充電された状態の概略的な断面図を示す。
【図3a】図3aは、本発明による他のリチウムイオンバッテリの放電された状態の概略的な断面図を示す。
【図3b】図3bは、図3aによる他のリチウムイオンバッテリの充電された状態の概略的な断面図を示す。
【図4】図4は、本発明による更なるリチウムイオンバッテリの充電された状態の概略的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1aは、従来技術から知られるリチウムイオンバッテリの放電された状態の概略的な断面図を示す。バッテリ1は、陽極3(電流コレクタを含む)、固体電解質4、及び陰極5(電流コレクタを含む)からなるスタック2を有し、バッテリスタック2は、1又はそれより多くの電子部品(図示略)が埋め込まれ得るシリコン基板6の上に堆積される。既知のバッテリ1において、陽極3はアモルファスシリコン(a−Si)からなり、陰極5は、金属酸化物、例えばLiCoO,LiMnO,LiNiO等からなる。使用される電解質4は、LiPONからなり得る。バッテリスタック2と基板6との間のタンタルからなるリチウムバリア層7が、基板6に堆積される。この例において、保護的なパッケージ39は、スタック2における全てのアクティブな種を保護することができるようにスタック2を囲む。したがって、スタック2により最初に含まれるリチウムイオン(又は他のアクティブな種)の基板6への拡散は、リチウムイオンバリア層7により妨げられ得る。保護的パッケージ39は、好ましくは、少なくとも1つの絶縁材料からなり、ラミネートの代替の層を有し得、前記代替の層の各層は、金属、ポリマ、及びシリカ質化合物の材料のグループから選択される少なくとも1つの材料からなる。保護的パッケージ39のラミネートに適用され得る代替の層の例は、交互な態様で互いの上に堆積される窒化シリコン(N)層及びシリカ(O)層からなるいわゆるNONON層構成である。ラミネートは、一般に、更なる金属層も有し、これは、スタック2により含まれる移動する反応性の種及び大気の化合物の両方に対して一般に実質的に不浸透性である。個々の層3,4,5,7の堆積は、例えばCVD,PVD,又は(湿式)化学堆積により達成され得る。示されるようなリチウムイオンバッテリ1の放電された状態において、陽極3は、収縮状態にあり、陰極5は、膨張状態にある。図1bは、図1aによるリチウムイオンバッテリの充電された状態の概略的な断面図を示す。この図において、(充電された)陽極3が膨張され、一方陰極5が収縮されていることが明らかに示される。図1c及び図1dに示されるように、材料ストレスが、バッテリ1の動作の間にバリア層7において増加され、結果として、バリア層7によるスタックの信頼できる遮蔽に影響を与え、短期的及び長期的の両方で、バッテリ1の性能の悪化をもたらすほど、材料ストレスが大きくなりすぎる場合、バリア層は一般に破壊(又はひび割れ)され得る。
【0014】
図2a及び図2bの各々は、放電状態及び充電状態のそれぞれに対する、本発明によるリチウムイオンバッテリ8の概略的な断面図を示す。バッテリ8は、(電流コレクタを含む)陽極10、固体電解質11、及び(電流コレクタを含む)陰極12からなるスタック9を有し、バッテリスタック9は、1又はそれより多くの電子部品(図示略)が埋め込まれ得るシリコン基板13に堆積される。本発明によるバッテリ8において、陽極10は、好ましくはアモルファスシリコン(a−Si)からなり、陰極12は、好ましくは金属酸化物、例えばLiCoO,LiMnO,LiNiO等からなる。この例において、使用される電解質4は、LiPONからなる。バッテリスタック9と基板13との間のリチウムバリア層14は、基板13上に堆積される。バリア層14は、好ましくはタンタル、チタン、窒化タンタル、及び窒化チタンからなる。この説明的な例において、バリア層14は、スタック9における全てのアクティブな種を保持することができるように、スタック9を完全に囲う。したがって、スタック9により始めに含まれていたリチウムイオン(又は他のアクティブな種)の基板13又は他の媒体への拡散は、リチウムイオンバリア層14により軽減され得る。更に、個々の層10,11,12,14の堆積は、例えばCVD,PVD又は(湿式)化学堆積により達成され得る。本発明によるバッテリ8において、バリア層14における材料ストレスの著しい増加を回避し、したがってバッテリ8の動作の間の陽極10及び陰極12の膨張及び収縮によるバリア層14の破壊を回避するため、2つの材料ストレス低減空洞15が、スタック9(の側壁)及びバリア層14の間に適用され、これによりスタック9とバリア層14との間の境界は、選択的に遮られる。この文脈において、図2a及び2bに示されるスタック全体の体積が、陽極及び陰極の材料の平衡された選択により、バッテリ動作の間、実質的に一定であるであろう(図2a及び2bを参照されたい)。この全体積がバッテリ動作の間、実質的に一定ではない場合、好ましくは更なる材料ストレス低減空洞(図示略)がスタック9の上部に適用される。材料ストレス低減空洞を適用することにより、バリア層14の期待される寿命は、一般に比較的長く保持され得る。
【0015】
図3a及び3bの各々は、本発明によるリチウムイオンバッテリの放電された状態及び充電された状態のそれぞれの概略的断面図を示す。図3a及び図3bに示されるバッテリ16は、構造的に多かれ少なかれ図2a及び2bに示されるバッテリ8に類似し、(電流コレクタを含む)陽極18、固体電解質19、及び(電流コレクタを含む)陰極20からなるスタック17を有し、バッテリスタック17は、1又はそれより多くの電子部品(図示略)が埋め込まれ得るシリコン基板21上に堆積される。本発明によるバッテリ16において、陽極18は、好ましくはアモルファスシリコン(a−Si)からなり、陰極20は、好ましくは金属酸化物、例えばLiCoO,LiMnO,LiNiO等からなる。この例において使用される電解質4は、好ましくはLiPONからなる。バッテリスタック18と基板21との間のリチウムイオンバリア層22は、基板21上に堆積される。バリア層22は、好ましくはタンタル、チタン、窒化タンタル、及び窒化チタンからなる。バリア層22は、スタック17により始めに含まれるアクティブな種の基板21への拡散を排除するように適用される。側壁及び上部表面の両方は、上部に遮蔽するバリア層24が堆積される可撓性絶縁層23により覆われる。両方のバリア層22,24は、単一の集積層を形成し得る。しかしながら、両方のバリア層22,24が異なる材料から形成されることも想定される。一般に、遮蔽するバリア層24は、スタック17におけるアクティブな種を保持するためにも適用されるであろう。しかしながら、スタック17に含まれるリチウムイオンがバッテリ16の周囲の大気化合物と相互作用するのを回避するため、遮蔽するバリア層24が適用されることは、当業者にも想像可能である。すなわち、スタック17に含まれる(リチウムの)アクティブな種と大気化合物、特に酸素分子、窒素分子、及び水との間の相互作用は、バッテリ1の性能を著しく悪化させるであろう。この例において、遮蔽するバリア層24は、封止として役立ち、上部にタンタル層が堆積されるシリカ層のラミネート(図示略)により形成され得る。導電性のタンタル層は、リチウムイオン及び大気化合物の両方に対して実質的に非浸透性であるので、化学的障壁として役立つ。好ましくはパリレンからなる可撓性層22を適用することは、バッテリ動作の間、スタック17により生成される変形エネルギーのかなりの部分を吸収し、これは、遮蔽バリア層24の材料ストレスの著しい増加を回避するので有利である。このように、バリア層24が損なわれていない、したがって、バッテリ16の性能が、比較的信頼できる態様で保証され得る。
【0016】
図4は、本発明による他のリチウムイオンバッテリ25の充電された状態の概略的な断面図を示す。バッテリ25は、1又はそれより多くの電子部品27、例えばICが埋め込まれるシリコン基板26を有する。基板26の上部に下部バリア層28及び下部誘電層29が続けて堆積される。下部バリア層28は、好ましくは、タンタル、チタン、窒化タンタル、又は窒化チタンからなり、絶縁性下部誘電層29は、好ましくは酸化物、例えば酸化シリコンからなる。下部誘電層29の上部に複数のスタック30a,30b,30c,30dが堆積され、各2つのスタック30a,30b,30c,30dの2つの積み重ねが堆積される。各スタックは、陽極31a,31b,31c,31dと、陽極31a,31b,31c,31dに結合される電流コレクタ(図示略)と、固体電解質32a,32b,32c,32dと、陰極33a,33b,33c,33dと、陰極33a,33b,33c,33dに結合される電流コレクタ(図示略)とを有する。各スタック30a,30b,30c,30dの陽極31a,31b,31c,31dは、この図に示されるバッテリ25において、充電された(膨張した)状態にある。各積み重ねのスタック30a,30b,30c,30dは、中間の誘電層34a、34bにより相互に分離され、この積み重ねは、バッテリ25の動作の間、陽極31a,31b,31c,31d及び陰極33a,33b,33c,33dの膨張及び収縮を平衡させることができるように、可撓性スペーサ35により相互に分離される。スタックは、電気的に直列及び/又は並列(図示略)に結合され得る。スタック30a,30b,30c,30dのアセンブリは、上部バリア層36により遮蔽される。上部バリア層36は、好ましくはタンタル、チタン、窒化タンタル、又は窒化チタンからなり、したがって、比較的硬い層になるであろう。比較的硬い上部バリア層36とスタック30a,30b,30c,30dのアセンブリの側壁及び上部表面との間の物理的接着は、バッテリ25の動作の間の陽極31a,31b,31c,31d及び陰極33a,33b,33c,33dの膨張及び収縮により、上部バリア層35のひび割れが一般に容易に生じるので、望ましくないと考えられる。それゆえ、スタック30a,30b,30c,30dのアセンブリの側壁は、上記膨張及び収縮を補償するため、各々が可撓性要素37a,37bにより覆われる。材料ストレス低減空洞38は、本発明によるバッテリ25の動作の間、基板26に垂直な方向の、スタック30a,30b,30c,30dの結果として全体の体積変化を補償するため、スタック30a,30b,30c,30dのアセンブリの上部表面と周囲の上部バリア層35との間に適用される。このように保護的上部バリア層35の材料ストレスの不利な増加は、回避され得るか、又は少なくとも低減され得、結果としてスタック30a,30b,30c,30dの最適な遮蔽、したがって、バッテリ25の最適な性能は、比較的長く維持され得る。
【0017】
上記実施例が本発明を制限するのではなく説明し、当業者は、請求項の範囲から逸脱することなく多くの代替の実施例を設計することができるであろうということは、留意されるべきである。請求項において、括弧内に位置されるいかなる参照符号も、請求項を制限するとして解釈されるべきではない。「有する」という動詞及びこの活用形の使用は、請求項で述べられた以外の要素又はステップの存在を排除しない。要素に対する単数形の表記は、このような要素の複数の存在を排除しない。ある手段が、相互に異なる従属請求項において繰り返されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示さない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
第1電極、
第2電極、及び
前記第1電極及び前記第2電極を分離する中間の固体電解質
を有する、前記基板上に堆積された少なくとも1つのスタックと、
前記スタックのアクティブな種の前記基板への拡散を少なくとも実質的に排除するように適用される、前記基板と前記スタックとの間に堆積される少なくとも1つの電子伝導性バリア層と、
を有する電気化学エネルギー源であって、
前記スタックの少なくとも部分的に周囲にある少なくとも1つの材料層と、前記スタックの膨張及び収縮の間、前記周囲材料層のストレスを低減するため、前記スタックと前記周囲材料層との間に位置されるストレス低減手段とを更に有する、電気化学エネルギー源。
【請求項2】
前記第1電極が陽極を有する、及び/又は前記第2電極が陰極を有することを特徴とする、請求項1に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項3】
前記陽極及び前記陰極の両方が、H,Li,Be,Mg,Cu,Ag,Na及びKのうちの少なくとも1つのアクティブな種を保存するために適用される、請求項2に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項4】
前記陽極及び前記陰極の少なくとも1つがC,Sn,Ge,Pb,Zn,Bi,Li,Sb,及び好ましくはドープされたSiのうちの少なくとも1つからなることを特徴とする、請求項2又は3に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項5】
前記第1電極及び前記第2電極のうちの少なくとも1つの電極が少なくとも1つの電流コレクタを有することを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項6】
前記少なくとも1つの電流コレクタが、Al,Ni,Pt,Au,Ag,Cu,Ta,Ti,TaN,及びTiNのうちの少なくとも1つからなる、請求項5に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項7】
前記ストレス低減手段が、前記スタックと前記周囲材料層との間に形成される少なくとも1つのストレス低減空洞を有することを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項8】
前記ストレス低減手段が、複数のストレス低減空洞を有することを特徴とする、請求項7に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項9】
前記ストレス低減手段が、少なくとも1つの可撓性要素を有することを特徴とする、請求項1乃至8の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項10】
前記ストレス低減手段が、複数の可撓性要素を有することを特徴とする、請求項9に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項11】
前記少なくとも1つの可撓性要素が、少なくとも1つのポリマ、特にパリレンを有することを特徴とする、請求項9又は10に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項12】
前記ストレス低減手段が異なるスタックを分離するために適用されることを特徴とする、請求項1乃至11の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項13】
前記周囲材料層が、前記スタックの外部表面を少なくとも部分的に覆うパッケージを有する、請求項1乃至12の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項14】
前記パッケージが前記スタックにより含まれる要素を電気的に絶縁することを特徴とする、請求項13に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項15】
前記少なくとも1つのバリア層がTa,TaN,Ti,及びTiNのうちの少なくとも1つからなることを特徴とする、請求項1乃至14の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項16】
前記基板がSi及び/又はGeを有することを特徴とする、請求項1乃至15の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか一項に記載の少なくとも1つの電気化学エネルギー源を備える電子装置。
【請求項18】
少なくとも1つの電子部品、特に集積回路が、前記電気化学エネルギー源の前記基板に少なくとも部分的に埋め込まれることを特徴とする、請求項17に記載の電子装置。
【請求項19】
前記電子装置及び前記電気化学エネルギー源が、システム・イン・パッケージを形成することを特徴とする、請求項17又は18に記載の電子装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−503957(P2010−503957A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527937(P2009−527937)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053628
【国際公開番号】WO2008/032252
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】