説明

電気化学デバイス

【課題】 資材費が低減でき、自己放電不良がなく直流抵抗が低い電気化学デバイスを提供する。
【解決手段】 正極電極板および負極電極板の集電体に金属箔を用い、セパレータを介して積層する正極電極板および負極電極板ならびに電解液を含む電気化学素子と、正極電極板および負極電極板にそれぞれ電気的に接続される正極外部端子板2および負極外部端子板3と、電気化学素子を内蔵し周縁部にて密閉する外装フィルムシート4とを有し、それぞれの正極活物質電極シートおよび負極活物質電極シートに少なくとも1つの貫通孔を有し、正極電極板および負極電極板の面積に対して開孔率が0.1%以上10%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン二次電池などの電気化学デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラミネートフィルムによる外装構造を有する充放電可能な電源機能を有する電気化学デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池などがあり、また近年は、電気二重層キャパシタの正極とリチウムイオン二次電池の負極とを組み合わせたハイブリッドタイプのキャパシタ(以下ハイブリッドキャパシタ)も知られている。
【0003】
上述したような電気化学デバイスは、石油埋蔵量問題および地球温暖化等環境への配慮から、電気自動車などのモータ駆動用のエネルギー源、あるいはエネルギー回生システムのキーデバイスとして、さらには無停電電源装置、風力発電、太陽光発電への応用など、様々な新しい用途への適用が検討されており、次世代のデバイスとしてその期待度の高いデバイスである。
【0004】
近年、エネルギー源、エネルギー回生用途への適用において電気化学デバイスへのさらなる高エネルギー密度化および低抵抗化が求められている。
【0005】
電気二重層キャパシタは、一般に使用する電解液の種類により、水系電解液タイプと、非水系電解液タイプとに分類されるが、単一の電気二重層キャパシタの耐電圧は、水系電解液タイプの場合で1.2V程度、非水系電解液タイプの場合でも2.7V程度である。電気二重層キャパシタが蓄積可能なエネルギー容量を増加させるためには、この耐電圧をさらに高くすることが重要であるが、構成上困難である。
【0006】
一方、リチウムイオン二次電池は、リチウム含有遷移金属酸化物を主成分とする正極、リチウムイオンを吸蔵し、脱離しうる炭素材料を主成分とする負極、およびリチウム塩を含む有機系電解液とから構成されている。リチウムイオン二次電池を充電すると、正極からリチウムイオンが脱離して負極の炭素材料に吸蔵され、放電したときは逆に負極からリチウムイオンが脱離して正極の金属酸化物に吸蔵される。リチウムイオン二次電池は電気二重層キャパシタに比べて高電圧、高容量であるという性質を有するが、一方でその内部抵抗が高く、低抵抗化が困難であるという課題を持つ。
【0007】
ハイブリッドタイプのキャパシタは、正極に活性炭を用い、負極にリチウムイオンを吸蔵・脱離しうる炭素材料を用いている。充放電時に負極においてリチウムイオンの吸蔵、脱離反応を伴うことから、キャパシタ内部で実際に生じる両電極間の電位差は、負極にリチウム金属を用いた場合により近い、より卑な値にて推移する。従って、従来の正極、負極に活性炭を用いた電気二重層キャパシタと比較してより高耐電圧化することができ、よって蓄積可能なエネルギー量を電気二重層キャパシタに比較して大きく増加させる(高エネルギー化)ことが可能であり、且つ低抵抗であることから、これらの課題を解決するデバイスとして有力である。
【0008】
電気化学デバイスの高エネルギー化に関する解決策としては特許文献1〜3に記載の方法が提案されており、負極由来のリチウムを含有させる技術を応用することで、ハイブリッドキャパシタの作製及び高エネルギー化も可能となる。
【0009】
特許文献1〜3には、以下のことが提案されている。特許文献1には、(1)正極が金属酸化物を含み、(2)負極が芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって水素原子/炭素原子の原子比が0.5〜0.05であるポリアセン系骨格構造を有する不溶不融性基体(PAS)であり、(3)負極PASに対し、電池内に含まれる総リチウム量が500mAh/g以上であり、かつ負極由来のリチウムが100mAh/g以上であり、負極由来のリチウムとして、電池組立後リチウムを負極PASに担持せしめた事を特徴とする有機電解質電池が記載されている。特許文献2には、(1)正極が金属酸化物を含み(2)負極が芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって水素原子/炭素原子の原子比が0.5〜0.05であるポリアセン系骨格構造を有する不溶不融性基体(PAS)であり、(3)負極PASに対し、電池内に含まれる総リチウム量が500mAh/g以上であり、かつ負極由来のリチウムが100mAh/g以上であり負極由来のリチウムが、負極板同一平面かつ外周部の全部あるいは一部に配置されたリチウムと負極PASあるいは負極集電体との少なくとも一部の直接な接触により担持された事を特徴とする有機電解質電池が記載されている。特許文献3には、(1)正極が金属酸化物を含み(2)負極が芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって水素原子/炭素原子の原子比が0.5〜0.05であるポリアセン系骨格構造を有する不溶不融性基体(PAS)であり、(3)負極PASに対し、電池内に含まれる総リチウム量が500mAh/g以上であり、かつ負極由来のリチウムが100mAh/g以上であり負極由来のリチウムが、負極板の断面方向に配置されたリチウムと負極PASのリチウムに面する側の集電体もしくはPASとの直接的な接触により担持された事を特徴とする有機電解質電池が記載されている。
【0010】
実用化されているリチウム二次電池は、グラファイト等の炭素材料を負極に、LiCoO,LiMn等のリチウム含有金属酸化物を正極に用い、電池組立後、充電することにより正極のリチウム含有金属酸化物から負極にリチウムを供給し、更に放電では負極リチウムを正極に戻すという、ロッキングチェア型である。また、予め電池内に正極由来、負極由来のリチウムを含有させ、該リチウムから正極または負極に挿入することによる高容量化により高エネルギー化が達成されている。具体的には負極上にリチウム金属を貼り合わせ、正極とセパレータとともに電池セル内に挿入し、電解液を注液することにより、電気的な接触により負極に予めリチウムを挿入する方法である。しかしながら、各負極にリチウム金属箔を貼り合わせしないといけないこと、またリチウム金属箔の厚み限界があるため負極電極の厚みが厚くなり設計上の制約が出てしまうことが課題である。
【0011】
特許文献1〜3の改善策として特許文献4には、正極、負極並びに電解液としてリチウム塩の非プロトン性有機溶媒溶液を備えた有機電解質電池であって、正極集電体及び負極集電体が、それぞれ表裏面を貫通する孔を備え、負極活物質がリチウムを可逆的に担持可能であり、負極由来のリチウムが負極あるいは正極と対向して配置されたリチウムとの電気化学的接触により担持され、かつ該リチウムの対向面積が負極面積の40%以下である有機電解質電池が記載されている。
【0012】
積層型、捲回型構造をとる電池において、正極集電体及び負極集電体に表裏面を貫通する孔を備えたパンチングメタルやエキスパンドメタルを用いることで、負極あるいは正極と対向して配置されたリチウムとの電気化学的接触により複数枚の活物質にリチウムイオンが積層方向に移動し挿入される。このことにより、リチウム金属箔の厚みによる設計の制約や各電極に貼り合わせをしなくてもいいというように改善がなされた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−162159号公報
【特許文献2】特開平8−162160号公報
【特許文献3】特開平8―162161号公報
【特許文献4】特許第3485935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献4記載の正極および負極の集電体に貫通孔を有するエキスパンドメタルやパンチングメタルを用いる工法は、積層した電極、捲回し複数枚重なりあった電極間も貫通孔を介してリチウムイオンが移動し各電極由来リチウムから各電極へ挿入が可能となるため高エネルギー化に有用な方法であるが、集電性悪化による内部抵抗増加が課題である。最も今後期待される電気自動車などのモータ駆動用のエネルギー源、あるいはエネルギー回生システムにおいては高エネルギーが求められる上に高出力が必須であるため、電池の内部抵抗増加は大きな課題である。集電体に貫通孔を有するエキスパンドメタル、パンチングメタルを用いるため集電性悪化による電池の内部抵抗の増加が課題となる。またエキスパンドメタル、パンチングメタルの資材コストは箔集電体に対して約10倍であり、製品コスト高となる。金型で成形する開孔径は大きく、塗工時片面塗工では電極スラリーが抜け落ちるためマルチコーターによる両面同時塗工が必須となるが、両面同時塗工は片面塗工と比較し、塗工厚みが難しくバラツキも大きくなる。また塗工前の状態で集電体に孔を有するため集電体の強度が箔集電体と比較し著しく劣る為、塗工時の加工スピードの調整等配慮が必要となるなど、電極製造工程も煩雑化し、製造コスト高となることも否定できない。
【0015】
すなわち、本発明の技術的課題は、資材費が低減でき、自己放電不良がなく直流抵抗が低い電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の電気化学デバイスは、正極電極板および負極電極板の集電体に金属箔を用い、セパレータを介して積層する前記正極電極板および前記負極電極板ならびに電解液を含む電気化学素子と、前記正極電極板および前記負極電極板にそれぞれ電気的に接続される正極外部端子板および負極外部端子板と、前記電気化学素子を内蔵し周縁部にて密閉する外装フィルムシートとを備える電気化学デバイスであって、それぞれの前記正極活物質電極シートおよび前記負極活物質電極シートに少なくとも1つの貫通孔を有し、前記正極電極板および前記負極電極板の面積に対して開孔率が0.1%以上10%以下であることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明の電気化学デバイスは、前記貫通孔の孔径は、0.01mm以上2mm以下であることを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明の電気化学デバイスは、前記貫通孔が、レーザ加工または金型によるプレス加工により形成されることを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明の電気化学デバイスは、前記電気化学デバイスが、リチウムイオン二次電池またはハイブリッドキャパシタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、資材費が低減でき、自己放電不良がなく直流抵抗が低い電気化学デバイスの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のハイブリッドキャパシタの形状および内部構成を示す図で、図1(a)は平面図、図1(b)は側面図、図1(c)は図1(a)のAーA断面図。
【図2】本発明のハイブリッドキャパシタの内部の電極体の構成を示す図で、図2(a)は正極電極板の平面図、図2(b)はセパレータの平面図、図2(c)は負極電極板の平面図。
【図3】本発明のハイブリッドキャパシタの電極体の斜視図。
【図4】外部端子板を取り付けた本発明のハイブリッドキャパシタの電極体の斜視図。
【図5】本発明のハイブリッドキャパシタの負極にリチウムを挿入するリチウム挿入用電極板とリチウム挿入用外部端子の平面図。
【図6】本発明のハイブリッドキャパシタの電極体にリチウム挿入用電極板をセットした斜視図。
【図7】本発明のリチウム挿入用電極板を内蔵したハイブリッドキャパシタの平面図。
【図8】本発明のハイブリッドキャパシタのレーザ加工により貫通孔を形成した電極板の平面図。
【図9】従来のハイブリッドキャパシタの円状パンチングメタルに活物質電極シートを形成した電極板の平面図。
【図10】従来のハイブリッドキャパシタのエキスパンドメタルに活物質電極シートを形成した電極板の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の電気化学デバイスの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
本発明の電気化学デバイスは、セパレータを介して対向する正極活物質電極シートと集電体を備える正極電極板と、リチウムを可逆的に吸蔵・脱離可能な負極活物質電極シートと集電体を備える負極電極板と、リチウム塩含有の有機電解液を含む電気化学素子ならびに、正極電極板および負極電極板にそれぞれ電気的に接続される正極外部端子板および負極外部端子板ならびに、電気化学素子を内蔵し、周縁部にて密閉する外装フィルムシートを有している。リチウムを可逆的に吸蔵・脱離可能な負極活物質電極シートには、負極電極板に対して積層方向に配置するリチウムから電気化学的手法によりリチウムが挿入される。それぞれの正極電極板および負極電極板の活物質が塗工されている部分に、少なくとも1つの貫通孔を有し、正極電極板および負極電極板の面積に対して空孔率が0.1%以上10%以下の貫通孔を形成し、その貫通孔を介し負極活物質電極シートにリチウムが挿入される。
【0024】
さらに、本発明の電気化学デバイスは、貫通孔が、予めアルミニウム、ステンレス等の集電体上に正極活物質電極シートが塗工された正極電極板の正極活物質電極シートおよび、予め銅、ニッケル、ステンレス等の集電体上に負極活物質電極シートが塗工された負極電極板の負極活物質電極シートに、レーザマーカによるレーザ加工、又は金型によるプレス加工等で形成されている。
【0025】
本発明の電気化学デバイスでは、正極活物質電極シート及び負極活物質電極シートに貫通孔を形成し、その貫通孔を介し、予めリチウム挿入用電極板から負極活物質電極シートにリチウムを挿入することで、高容量化が可能となる。また活物質電極シートにのみ貫通孔を形成することで、集電性、接触抵抗が改善されるため電気化学デバイスの低抵抗化が図れる。さらに貫通孔を有する高価なエキスパンドメタルやパンチングメタル等を集電体に用いず、金属箔を用いることで資材費の低減、電極塗工の製造コスト低減が出来る。本発明により従来の課題を解決し、高容量、低抵抗、低コスト化が図られた電気化学デバイスを提供出来る。
【0026】
図8は、本発明のハイブリッドキャパシタのレーザ加工により貫通孔を形成した電極板の平面図である。これは本発明の実施の形態に係る電気化学デバイスの構成の例を図示したもので、特にハイブリッドキャパシタの場合について示したものである。しかし、それ以外の電気化学デバイスであるリチウムイオン二次電池の場合であっても、用いられる正極活物質電極シート、負極活物質電極シートの配置や外部端子板に設けた構成、金属箔を内蔵した外装フィルムシートの構成には特段の相違はなく、いずれの場合であっても適用できる。
【0027】
図1は、本発明のハイブリッドキャパシタの形状および内部構成を示す図で、図1(a)は平面図、図1(b)は側面図、図1(c)は図1(a)のAーA断面図である。ハイブリッドキャパシタ1の上側および下側は外装フィルムシート4によって被覆されており、一方の短辺から正極外部端子板2および負極外部端子板3がそれぞれ延出していて、図1(b)に示す通り、この正極外部端子板2と負極外部端子板3は上側および下側の外装フィルムシート4の間からそれぞれ外部に導出している。また、図1(c)に示す通りハイブリッドキャパシタ1の内部には、後述する電極体5が内蔵されている。正極電極板は、正極集電体に正極活物質電極シートが塗工されている。負極電極板は、負極集電体に負極活物質電極シートが塗工されている。正極電極板と負極電極板には、それぞれ正極外部端子板2と負極外部端子板3が接続されている。上側と下側の外装フィルムシート4の間には電解液が充填されており、電極体5は電解液に浸漬された状態となっている。
【0028】
外装フィルムシート4は、上側および下側より電極体5を内蔵しているが、周縁部では上側と下側の外装フィルムシート4同士が互いに接着して電解液を含む内容物を密封し、その漏出を防ぐ構成となっている。また、正極外部端子板2および負極外部端子板3が外部に導出する位置(接合部)では、各外部端子板の周囲を被覆して封止する構成となっている。従って、ハイブリッドキャパシタ1は、外装フィルムシート4同士の接着、および外装フィルムシート4による正極外部端子板2と負極外部端子板3の接合部の周囲の被覆によって完全に密封されている。
【0029】
図2は、本発明のハイブリッドキャパシタの内部の電極体の構成を示す図で、図2(a)は正極電極板の平面図、図2(b)はセパレータの平面図、図2(c)は負極電極板の平面図である。図2(a)に示す正極電極板6は正極活物質電極シート8と正極集電体からなり、このうち正極活物質電極シート8は、一般的にはアルミニウムやアルミニウム合金などの金属箔からなる集電体の片面もしくは両面に、炭素材料を主成分とする活物質を多量に含む電極合剤層であって、バインダおよび導電剤を含むことが多い。正極集電体は一般には正極活物質電極シート8を塗工する集電体の一部を延出させたものであるが、何らかの薄い金属体を正極集電体に溶接や圧着などの方法により固定したものでもよい。そして、正極活物質電極シート8の面にレーザ加工により両面が貫通するレーザ加工貫通孔11が形成されている。
【0030】
図2(b)に示すセパレータ10は絶縁性の薄板であり、一般には正極活物質電極シート8、負極活物質電極シート9よりもやや大きく構成され、電解液が浸透しやすい素材であることが必要である。
【0031】
図2(c)に示す負極電極板は負極活物質電極シート9と負極集電体からなり、このうち負極活物質電極シート9は、一般的には銅や銅合金などの金属箔からなる集電体の片面もしくは両面に、炭素材料を主成分とする活物質を多量に含む電極合剤層であって、バインダおよび導電剤を含むことが多い。負極集電体は一般には負極活物質電極シート9を塗工する集電体の一部を延出させたものであるが、何らかの薄い金属体を負極集電体に溶接や圧着などの方法により固定したものでもよい。そして、負極活物質電極シート9の面にレーザ加工により両面が貫通するレーザ加工貫通孔11が形成されている。なお図2(c)では正極活物質電極シート8と同一形状とした場合を示しているが、両者の面積や形状は同一でなくても構わない。
【0032】
電極体は、上から図2(b)に示すセパレータ、図2(c)に示す負極電極板、図2(b)に示すセパレータ、図2(a)に示す正極電極板の順で積層したものである。上側の外装フィルムシートの内部の接着層と最上部の負極電極板の間、正極電極板と負極電極板の間および最下部の負極電極板と下側の外装フィルムシートの内部の接着層の間には、必ずセパレータが1枚ずつ挿入されている。すなわち、外装フィルムシート内において電極体の構成は、セパレータ/負極電極板/セパレータ/正極電極板/セパレータ/・・/セパレータ/正極電極板/セパレータ/負極電極板/セパレータ、となっている。
【0033】
図3は、本発明のハイブリッドキャパシタの電極体の斜視図である。電極体5は、セパレータを介して正極電極板と負極電極板を積層して構成されている。この正極電極板と負極電極板の一方の短辺から、正極延出部および負極延出部がそれぞれ引き出されている。
【0034】
図4は、外部端子板を取り付けた本発明のハイブリッドキャパシタの電極体の斜視図である。電極体5に、正極外部端子板2と負極外部端子板3とを取り付けた構成となっている。電極体5の一方の短辺から延出している複数枚の正極延出部と正極外部端子板2が、また同じく延出している複数枚の負極延出部と負極外部端子板3が超音波溶接により接合されている。接合方法は、超音波溶接に限られるものではなく、抵抗溶接、レーザ溶接などでもよい。
【0035】
図5は、本発明のハイブリッドキャパシタの負極にリチウムを挿入するリチウム挿入用電極板とリチウム挿入用外部端子の平面図である。リチウム挿入用電極板12とリチウム挿入用外部端子14とが超音波溶接により接合されている。接合方法は、超音波溶接に限られるものではなく、抵抗溶接、レーザ溶接などでもよい。またリチウム挿入用電極板12は、銅などの金属箔からなる集電体に金属リチウム13を貼り合わせ固定されている。負極活物質電極シートへのリチウム挿入後は、リチウム挿入用電極板を取り出すことが望ましいが、挿入量にあわせた金属リチウムを用い消費させればリチウム挿入用電極板から延伸している電極板部分で切断してもよい。
【0036】
図6は、本発明のハイブリッドキャパシタの電極体にリチウム挿入用電極板をセットした斜視図である。リチウム挿入用外部端子14を取り付けたリチウム挿入用電極板12の金属リチウム13を貼り合わせした面と、電極体が対向するように配置した。リチウム挿入用電極板12の集電体として、貫通孔を有するパンチングメタルやエキスパンドメタル等をもちいれば金属リチウムを貼り合わせした面を必ずしも電極体と対向する方向にする必要はないが、電極体と対向する方がリチウムを挿入するうえで好ましい。
【0037】
図7は、本発明のリチウム挿入用電極板を内蔵したハイブリッドキャパシタの平面図である。リチウム挿入用外部端子14を取り付けたリチウム挿入用電極板の金属リチウムを貼り合わせした面と、正極外部端子板2、負極外部端子板3を取り付けた電極体が対向するように配置し、電極体を外装フィルムシート4に内蔵し、電解液を注入して密閉している。外装フィルムシートは、金属箔とポリオレフィン系フィルムを貼り合わせたラミネートフィルムを使用できる。外装フィルムシートの内側には熱可塑性樹脂が形成され、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、酸変性プロピレン、エチレンーメタクリル酸共重合体等が使用できる。
【0038】
ここで、本発明の実施の形態における、積層型のハイブリッドキャパシタの製造方法の例を以下に説明する。正極電極板は、アルミニウム箔またはステンレス箔等からなる金属箔の集電体に、炭素材料を主成分とする活物質とバインダ、および導電剤を混合してシート状にした正極活物質電極シートを、一体化させたものである。この活物質となる炭素原料としては、木材、鋸屑、椰子殻、パルプ廃液などの植物系物質、石炭、石油重質油、またはそれらを熱分解して得られる石炭系および石油系ピッチ、石油コークス、カーボンエアロゲル、タールピッチなどの化石燃料系物質、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデンなどの合成高分子系物質など各種のものが用いられる。これらの炭素原料を炭化した後に、ガス賦活法もしくは薬品賦活法によって賦活し、比表面積が700m/g〜3000m/gの炭素系活物質を得る。この活物質の比表面積はとくに1000m/g〜2000m/gの場合が好ましい。また、バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー等の含フッ素系樹脂、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム系バインダ、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂などが用いられ、正極活物質電極シートの全体の3質量%〜20質量%程度のバインダを含んで作製させるのが好ましい。このバインダとしては、上記の物質の中では特にポリテトラフルオロエチレンが耐熱性、耐薬品性、作製されるシート状の分極性電極層の強度の観点から好ましい。また、導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、天然黒鉛、熱膨張黒鉛炭素繊維などから選択される物質を、正極活物質電極シートの全体の5質量%〜30質量%程度添加することが好ましい。
【0039】
負極電極板は、銅箔、ニッケル箔またはステンレス箔等からなる金属箔の集電体に、炭素材料を主成分とする活物質とバインダ、および導電剤を混合してシート状にした負極活物質電極シートを、一体化させたものである。炭素材料を主成分とする活物質としては、リチウムイオンのドープ、脱ドープが可能な、グラファイト、不定形炭素などの炭素系材料を用いることができる。導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックのようなカーボンブラック、天然黒鉛、熱膨張黒鉛炭素繊維が好ましく、負極活物質電極シートの全体の5〜30重量%程度添加するのが好ましい。またバインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー等の含フッ素系樹脂、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム系バインダ、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂などが用いられ、特にポリフッ化ビニリデンが耐熱性、耐薬品性、シート強度の観点から好ましい。負極活物質電極シートの全体の3〜20重量%程度のバインダを含んで作製させるのが好ましい。
【0040】
本発明に使用する正極集電体および負極集電体である金属箔は、従来使用していたパンチングメタルやエキスパンドメタルと価格を比べると、10分の1以下であり、資材費が低減するので好ましい。
【0041】
次に、正極電極板を作製する方法の例について説明する。以下の例では活物質となる炭素原料としてフェノール樹脂を用い、バインダ物質としてポリテトラフルオロエチレン、また導電剤としてケッチェンブラックを選択している。まず、フェノール樹脂を炭化し、賦活して作製した活性炭粉末とポリテトラフルオロエチレンからなるバインダ、およびケッチェンブラックの三者を混練し、次いで圧延を行ってシート状の活物質電極層を成形する。こうして得られた正極活物質電極シートを、アルミニウムまたはステンレスの粗面化された集電体箔に導電性カーボンペーストを用いて接着する。さらに加熱乾燥することで一体化し、これを正極電極板とする。この際に集電体箔に予め延出部を1箇所形成しておき、そこには正極活物質電極シートを接着しないようにすれば、外部端子板に接続する正極電極板を形成することができる。
【0042】
正極電極板は、上記の方法ではなく、正極活物質電極シートと集電体とを重ね合わせて圧延することにより、これらを互いに圧着させる方法で作製してもよい。またこの正極活物質電極シートは集電体の片面に接着してもよいし、両面に接着してもよい。さらに、メチルセルロースやポリフッ化ビニリデンなどのバインダを溶媒に溶解した溶液に、上記活物質や導電剤を混合、分散させてスラリーとし、このスラリーを集電体の片面あるいは両面に塗工する方法により、正極電極板を作製してもよい。
【0043】
次に、負極電極板を作製する方法の例について説明する。以下の例では活物質となる炭素原料として難黒鉛化炭素材料を用い、バインダ物質としてポリテトラフルオロエチレン、また導電剤としてケッチェンブラックを選択している。まず難黒鉛化炭素材粉末と上記ポリテトラフルオロエチレンからなるバインダ、およびケッチェンブラックの三者を混練し、次いで圧延を行ってシート状の活物質電極層を成形する。こうして得られた負極活物質電極シートを、銅、ニッケルまたはステンレス集電体箔に導電性カーボンペーストを用いて接着する。さらに加熱乾燥することで一体化し、これを負極電極板とする。この際に集電体箔に予め延出部を1箇所形成しておき、そこには負極活物質電極シートを接着しないようにすれば、外部端子板に接続する負極電極板を形成することができる。
【0044】
負極電極板は、上記の方法ではなく、負極活物質電極シートと集電体とを重ね合わせて圧延することにより、これらを互いに圧着させる方法で作製してもよい。またこの負極活物質電極シートは集電体の片面に接着してもよいし、両面に接着してもよい。さらに、メチルセルロースやポリフッ化ビニリデンなどのバインダを溶媒に溶解した溶液に、上記活物質や導電剤を混合、分散させてスラリーとし、このスラリーを集電体の片面あるいは両面に塗工する方法により、負極電極板を作製してもよい。
【0045】
また、正極電極板と負極電極板の間や、外装フィルムシートと負極電極板の間に設置されるセパレータは、厚さが薄く、しかも電子絶縁性およびイオン透過性が高い材料が好ましい。セパレータの構成材料はとくに限定されるものではないが、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの不織布、もしくはビスコースレイヨンや天然セルロースの抄紙などが好適に使用される。セパレータは作製する電気化学デバイスの種別に応じてその構成材料を選定することが好ましい。
【0046】
次に、正極および、負極活物質電極シートへの貫通孔の作製方法の例を説明する。レーザによる加工は、市販のグリーンレーザマーカなどを用い、ドライルーム中で活物質電極シートに複数の貫通孔を形成した。レーザによる貫通孔形成の際には、基材が高温になるため、不活性ガス雰囲気やドライエアー環境下で加工することが望ましい。貫通孔の円心間距離に応じ、加工順序を調整することが好ましい。使用するレーザマーカは、波長1064nmのYAG・YVO4レーザでも加工が可能であるが、波長が短く(一例として532nm)、光レーザの吸収率が良いグリーンレーザを用いることが好ましい。プレスによる加工は、活物質電極シートに加工する形状に合わせて金型を作製し、油圧式のプレス機を用いて、作製された正極および、負極活物質電極シートに貫通孔の加工を施すのが好ましい。
【0047】
正極および負極の各活物質電極シートの寸法形状や枚数は、必ずしも同一である必要はない。
【実施例】
【0048】
以下、実施例および比較例について説明する。なお実施例1〜18および比較例1〜3は電気化学デバイスとしてハイブリッドキャパシタを、実施例19および比較例4はリチウムイオン二次電池をそれぞれ作製し、各種評価を行ったものである。
【0049】
(実施例1)
正極活物質である比表面積が1500m/gのフェノール系活性炭の粉末92質量部と、導電剤として黒鉛8質量部混合した粉末に対し、バインダとしてスチレン−ブタジエンゴム3質量部、カルボキシルメチルセルロース3質量部、溶媒として水200質量部となるように加え、混練してスラリーを得た。次いでエッチング処理により両表面が粗面化された厚さ20μmのアルミニウム箔を集電体として、その両面に上記スラリーを均一に塗工し、その後乾燥させて圧延プレスし、分極性電極層の厚みが両側にそれぞれ30μmの正極活物質電極シートを得た。この正極電極板の厚みは80μmであった。また正極活物質電極シートの端面の一部は集電体がタブ状に延出して取り出せるように電極板を形成しており、その部分の集電体の両面には正極活物質電極シートが形成されておらず、アルミニウム箔が露出していた。作製した正極電極板の正極活物質電極シート面にレーザマーカにて、ドライエアー環境下で開孔径0.05mm、正極電極板の面積に対し、開孔率が1%になるように、貫通孔の配列は並列型とし加工を施し、正極活物質電極シートの両面を貫通する孔を形成した。このときの貫通孔の円心間距離は0.44mmであった。
【0050】
負極活物質である難黒鉛化材料粉末88質量部と、導電剤としてアセチレンブラック6質量部混合した粉末に対し、バインダとしてスチレン−ブタジエンゴム5質量部、カルボキシルメチルセルロース4質量部、溶媒として水200質量部となるように加え、混練してスラリーを得た。次いで厚さ10μmの銅箔を集電体として、その両面に上記スラリーを均一に塗工し、その後乾燥させて圧延プレスし、分極性電極層の厚みが両側にそれぞれ20μmの負極活物質電極シートを得た。この負極電極板の厚みは50μmであった。また負極活物質電極シートの端面の一部は集電体がタブ状に延出して取り出せるように電極板を形成しており、その部分の集電体の両面には負極活物質電極シートが形成されておらず、銅箔が露出していた。正極電極板と同様にし、作製した負極電極板の負極活物質電極シート面にレーザマーカにて、ドライエアー環境下で開孔径0.05mm、負極電極板の面積に対し、開孔率が1%になるように、貫通孔の配列は並列型とし加工を施し、負極活物質電極シートの両面を貫通する孔を形成した。正極同様貫通孔の円心間距離は0.44mmであった。
【0051】
セパレータとして、厚さ35μmの天然セルロース材の薄板を使用した。このセパレータの寸法形状は、上記電極板の延出部を除いた形状よりも少しだけ大きくなるように構成した。
【0052】
次いで、セパレータ、負極電極板、セパレータ、正極電極板、セパレータの順番でこれら三者を積層し、電極体を得た。この電極体の最上部と最下部にはそれぞれ必ずセパレータが1枚ずつ配置されるようにした。本実施例では、1試料あたりの積層した正極電極板は4枚、負極電極板は5枚、セパレータは10枚であり、延出部を除いたその寸法は、正極活物質電極シートが53mm×70mm、負極活物質電極シートが55mm×72mm、セパレータが57mm×74mmであった。また、電極板に形成した延出部は、それぞれの活物質電極シートの同一短辺から延出し、延出部の寸法は、それぞれ9mm×12mmであった。
【0053】
正極外部端子板は、長さ20mm、幅10mm、厚さ0.2mmのアルミニウム材を使用し、負極外部端子板は、長さ20mm、幅10mm、厚さ0.2mmのニッケル材を使用した。外装フィルムシートから導出している領域は、長さ10mm、幅10mmであった。外装フィルムシートと熱接着する面には、酸変性ポリオレフィン樹脂からなるシーラントが両面に施されているものを使用した。
【0054】
次に、電極体から延出している正極延出部および負極延出部を各々束ね、一括して外部端子板の端部にそれぞれ超音波溶接により固定した。銅箔に金属リチウムを貼り合わせリチウム挿入用電極板を作製し、延出する銅箔にリチウム挿入用外部端子を超音波溶接により固定した。作製したリチウム挿入用電極板を、外部端子板を溶接させた電極体の上面に、金属リチウムが電極体と対向するように配置させた。2枚の外装フィルムシートで電極体を包み込み、正極・負極外部端子板およびリチウム挿入用外部端子を配置する2辺の短辺を含む3辺の周縁部を熱圧着し、内面に形成した酸変性ポリオレフィン樹脂からなる熱可塑性樹脂層を接合させて袋状とした。この外装フィルムシートの内面の熱可塑性樹脂層の厚みは40μmであった。
【0055】
袋状にした2枚の外装フィルムシートの内部に電極体を内蔵し、電解液を注入した。電解液は、六フッ化リン酸リチウムをプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1の割合で混合させた混合溶媒に溶解させ、1.0mol/lの濃度に調製したものを使用した。電解液を注入した後に、2枚の外装フィルムシートの残る1辺を、真空雰囲気中にて熱圧着により封止した。電気化学的手法によりリチウム挿入用電極板から負極の活物質電極シートにリチウムを挿入した。挿入量は、負極活物質重量に対し400mAh/gとした。リチウム挿入完了後、ラミネート短辺を開封し、リチウム挿入用電極板を取り出した。開封したラミネート辺を真空雰囲気中にて再度熱圧着し封止した。
【0056】
以上の方法により、積層型のハイブリッドキャパシタを得た。この方法により作製したハイブリッドキャパシタは50個であった。
【0057】
(比較例1〜3:従来技術による場合)
実施例1と同様の方法により、ハイブリッドキャパシタ50個を、以下に説明するそれぞれの条件ごとに作製した。作製したハイブリッドキャパシタの寸法形状は実施例1の場合と全く同一である。
【0058】
比較例1〜3は、従来技術である特許文献4に記載の類似の構成を、ハイブリッドキャパシタの作製に適用したものである。図9は、従来のハイブリッドキャパシタの円状パンチングメタルに活物質電極シートを形成した電極板の平面図である。図10は、従来のハイブリッドキャパシタのエキスパンドメタルに活物質電極シートを形成した電極板の平面図である。比較例1、2は図9に示すように、プレス加工したパンチングメタルを用いた集電体に、そして比較例3は図10に示すように、箔を網目(菱型)状に機械加工したエキスパンドメタルを用いた集電体に、実施例1と同じ活物質含有スラリーを用い、マルチコーターにより塗工を施し、各電極板を得た。比較例1〜3において、正極集電体は厚み20μmのアルミニウムであり、正極活物質電極シートの厚みが両側にそれぞれ30μmで、この正極電極板の厚みは80μmであった。負極集電体は厚み10μmの銅であり、負極活物質電極シートの厚みが両側にそれぞれ20μmで、この負極電極板の厚みは50μmであった。
【0059】
また、比較例1では開孔径1mm、開孔率10%、貫通孔配列を並列型としたこのときの円心間距離は2.80mmであった。比較例2では比較例1と同様開孔径1mmで、開孔率を30%とした。円心間距離は1.62mmであった。各活物質電極シート以外は、本発明と同様の条件で、ハイブリッドキャパシタ50個ずつ作製した。
【0060】
比較例3は、比較例1、2とは異なり網目状の貫通孔を有するエキスパンドメタルを集電体として使用し、比較例2と同じ開孔率が30%のものを使用した。
【0061】
(実施例2〜6、比較例4〜6:開孔率)
実施例1と同様の方法により、ハイブリッドキャパシタ50個を、以下に説明するそれぞれの条件ごとに作製した。作製したハイブリッドキャパシタの寸法形状は実施例1の場合と全く同一であった。
【0062】
実施例1の試料と、実施例2〜6、比較例4〜6の試料の異なる点は、各活物質電極シートに形成された貫通孔の電極板の面積に対する開孔率だけであった。比較例4では0.05%、実施例2では0.1%、実施例3では0.5%、実施例4では2%、実施例5では5%、実施例6では10%、比較例5では20%、比較例6では30%であった。これらの試料によって、開孔率による違いの評価を行った。
【0063】
(実施例7〜12、比較例7〜8:開孔径)
実施例1と同様の方法により、ハイブリッドキャパシタ50個を、以下に説明するそれぞれの条件ごとに作製した。作製したハイブリッドキャパシタの寸法形状は実施例1の場合と全く同一であった。
【0064】
実施例1の試料と、実施例7〜12、比較例7〜8の試料の異なる点は、各活物質電極シートに形成された開孔径だけであった。比較例7では0.005mm、実施例7では0.01mm、実施例8では0.03mm、実施例9では0.1mm、実施例10では0.2mm、実施例11では1mm、実施例12では2mm、比較例8では3mmであった。これらの試料によって、開孔径による違いの評価を行った。
【0065】
(実施例13:加工方法)
実施例11と同様の方法により、ハイブリッドキャパシタ50個を、以下に説明するそれぞれの条件ごとに作製した。作製したハイブリッドキャパシタの寸法形状は実施例11の場合と全く同一である。
【0066】
実施例11の試料と、実施例13の試料の異なる点は、各活物質電極シートを形成された貫通孔の形成方法だけであった。実施例13では金型を使用したプレス加工であった。これらの試料によって、貫通孔の形成方法の異なりによる違いの評価を行った。
【0067】
(実施例14、比較例9:電気化学デバイスの種類)
実施例1と同様の方法により、ハイブリッドキャパシタ50個を、以下に説明するそれぞれの条件ごとに作製した。実施例14における試料と、実施例1の試料の異なる点は、電気化学デバイスの種類であった。正極活物質に実施例1のフェノール系活性炭ではなくコバルト酸リチウム(LiCoO)を、セパレータに実施例1のセルロース系ではなくポリエチレン系セパレータを用いた。これら以外に関しては、実施例1と同じ材料を用い同様の工法でリチウムイオン二次電池を50個作製し、実施例14とした。比較例9は、図10に示すように、箔を網目(菱型)状に機械加工した比較例3と同じ集電体に実施例14と同じ活物質含有スラリーを用い、マルチコーターにより塗工を施し、各活物質電極シートを得た。比較例9において、正極集電体は厚み20μmのアルミニウムであり、正極活物質電極シートの厚みが両側にそれぞれ30μmで、この正極電極板の厚みは80μmであった。負極集電体は厚み10μmの銅であり、負極活物質電極シートの厚みが両側にそれぞれ20μmで、この負極電極板の厚みは50μmであった。各集電体以外は、実施例14と同様の条件でリチウムイオン二次電池を50個作製し、比較例9とした。
【0068】
(評価方法)
実施例1〜14、および比較例1〜9において作製した電気化学デバイスは、それぞれ以下の評価を行った。つまり、絶縁抵抗測定評価、直流抵抗(以下DC−Rと呼ぶ)測定評価、容量測定評価、自己放電測定評価の4種類である。実施例1〜14および比較例1〜9では電気化学デバイスを各50個ずつ作製していた。
【0069】
絶縁抵抗測定評価は、溶接により外部端子板取り付け済み電極体に、単位面積当たり1kg/cmの接圧を掛けた状態で、絶縁抵抗測定機を用い、正極外部端子板/負極外部端子板間に測定電圧100Vを印加し、絶縁抵抗を測定した。絶縁抵抗の合否判定は200MΩ以上を合格とした。評価数に対する不良数から不良率を算出した。
【0070】
直流抵抗測定評価は、電気化学デバイスを充放電装置にて所定の定電圧で1時間充電した後、電流値20Cで放電した際のDC−Rを測定した。DC−Rの選別規格は、比較例1から抜き取った20個について測定した直流抵抗値の平均値+3σの値以下とした。選別規格より大きいものは不良とし、評価数に対する不良数から不良率を算出した。実施例14および比較例9は、リチウムイオン二次電池であるため不良選別の対象外とした。
【0071】
容量測定評価は、電気化学デバイスを充放電装置にて所定の定電圧で1時間充電した後、電流値20Cで使用下限電圧まで放電した際の電流容量を測定した。容量の選別規格は、比較例1から抜き取った20個について測定した容量平均値の90%以上とした。選別規格より小さいものは不良とし、評価数に対する不良数から不良率を算出した。実施例14および比較例9は、リチウムイオン二次電池であるため不良選別の対象外とした。
【0072】
自己放電測定評価は、電気化学デバイスを充放電装置にて所定の定電圧で1時間充電した後、端子間を開回路にした状態で、高温槽にて60℃で72時間放置した後の端子間電圧を測定した。自己放電の選別規格は、比較例1から抜き取った10個について測定した電圧平均値−3σの値以上とした。選別規格より小さいものは不良とし、評価数に対する不良数から不良率を算出した。
【0073】
以上の方法により、実施例1〜14、比較例1〜9における各々の試料の条件ごとに、絶縁抵抗測定評価、DC−R測定評価、容量測定評価、自己放電測定評価の4種類の評価をそれぞれ行った。平均容量、平均DC−R、総合不良率、総合結果と容量不良、DC−R不良、絶縁不良、自己放電不良を表1に示す。
【0074】
【表1】

1)「−」は、その条件が対象外であることを示す。
2)総合結果欄には不良がない場合は「○」印を、不良発生の場合は「×」印を記し、その不良の内容を備考欄に記す。
3)容量不良、DC−R不良、絶縁不良、自己放電不良の各項目の数値は、各々の評価における不良の数を、%を単位として示したものである。
【0075】
表1に示された、各々の試料の条件に対する4種類の試験の評価結果から、以下のことが分かった。即ち、電気化学デバイスでは、本発明のように、活物質電極シート面にレーザ加工を施し、その貫通孔を介しリチウム挿入用電極板から負極活物質電極シートにリチウムを挿入した場合に、絶縁抵抗測定、DC−R測定、容量測定、自己放電測定の評価において、いずれも良好な結果が得られた。特に実施例1の平均DC−Rは、比較例1に対し約20%の低抵抗化と良好な結果が得られた。これは、外部端子板と複数枚の延出部に貫通孔が無く、集電性、接触抵抗が比較例1より優れているためだと考えられる。また実施例1では、内部抵抗低減により放電時の電圧ドロップが改善されるため容量の減少量も比較的少なく、比較例1と同等の容量が得られた。比較例1〜3に関しては、複数枚の電極板部分(活物質電極シートが無い部分である延出部)に機械加工で形成した貫通孔のバリがセパレータを介して電極板間の絶縁不良が発生していることが分かった。またDC−Rのばらつきも大きく、DC−R不良が発生していることが分かった。(比較例1〜3)。
【0076】
各活物質電極シートに設ける貫通孔の開孔率は、それぞれの電極板の面積に対して0.1%以上10%以下であると容量不良、DC−R不良、絶縁不良、自己放電不良が発生せず好適であることがわかった(実施例1〜6)。開孔率が0.1%より小さい場合には、リチウム挿入用電極板から負極活物質電極シートへのリチウム挿入の際、開孔率が低いことによりリチウム挿入が不均一となる恐れがあり、負極活物質電極シート表面上へのリチウムデンドライド形成によりセパレータを介して電極間の微細ショートによる自己放電不良が発生したと考えられる(比較例1〜4)。一方、10%よりも大きい場合には、加工による貫通孔形成で活物質が消失したため容量が大きく減少し、容量不良が多くなったと考えられる(比較例5、6)。
【0077】
また、この貫通孔の開孔径は、0.01mm以上2mm以下であると容量不良、DC−R不良、絶縁不良、自己放電不良が発生せず好適であることがわかった(実施例1、7〜12)。開孔径が0.01mmより小さい場合には、レーザ加工による活物質電極シートへの貫通孔形成においてレーザマーカ装置の印字加工分解能よりも小さくなるため制御が難しく電極への加工時の不良が発生した(比較例7)。したがって、印字加工分解能が上がれば、開孔径が0.01mmより小さい場合であっても好適である可能性がある。一方、2mmよりも大きい場合は、活物質電極シートへ加工した貫通孔の円心間距離が大きくなり、リチウム挿入用電極板から負極活物質電極シートへのリチウム挿入の際、リチウム挿入が不均一となる恐れがあり、負極活物質電極シート表面上へのリチウムデンドライド形成によりセパレータを介して電極間の微細ショートによる自己放電不良が発生したと考えられる(比較例8)。開孔径が3mmの場合でも、比較例8で実施した開孔率を上げることで円心間距離を短くすることは可能ではあるが、開孔率を上げることによる容量損失が発生すると考えられる。
【0078】
なお、加工方法としては、金型を用いたプレス加工においても良好な結果が得られた(実施例13)。金型を用いたプレス加工は、今回結果は掲載していないが、開孔径0.5mm以下となる加工は困難であり、レーザマーカによる加工が好適であると考える。このように開孔径、開孔率に合わせ適切な加工方法を選択することが望ましい。
【0079】
さらに、電気化学デバイスであればリチウムイオン二次電池、ハイブリッドキャパシタのいずれにも本発明を適用することが可能であり、ハイブリッドキャパシタと同様に容量不良、DC−R不良、絶縁不良、自己放電不良が発生せず好適であることがわかった。(実施例1、14)。平均DC−Rと自己放電不良に関して実施例1〜14と比較例1〜9を比べると、実施例1〜14の電気化学デバイスは、自己放電不良がなく平均DC−Rが低いことがわかった。
【0080】
これより、資材費が低減でき、自己放電不良がなく直流抵抗が低い電気化学デバイスの提供が可能できることが確認できた。
【0081】
以上説明したように、本発明の電気化学デバイスでは、正極活物質電極シート及び負極活物質電極シートに、空孔率が0.1%以上10%以下の貫通孔を形成し、その貫通孔を介して、予めリチウム挿入用電極板から負極活物質電極シートにリチウムを挿入することで、集電性、接触抵抗の改善により電気化学デバイスの低抵抗化が出来た。また、上記の各実施例の説明は、本発明の実施の形態に係る場合の効果について説明するためのものであって、これによって特許請求の範囲に記載の発明を限定し、あるいは請求の範囲を減縮するものではない。また、本発明の各部構成は上記の実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 ハイブリッドキャパシタ
2 正極外部端子板
3 負極外部端子板
4 外装フィルムシート
5 電極体
6 正極電極板
7 負極電極板
8 正極活物質電極シート
9 負極活物質電極シート
10 セパレータ
11 レーザ加工貫通孔
12 リチウム挿入用電極板
13 金属リチウム
14 リチウム挿入用外部端子
15 電極板
16 活物質電極シート
17 パンチングプレス貫通孔
18 エキスパンドメタル貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極電極板および負極電極板の集電体に金属箔を用い、セパレータを介して積層する前記正極電極板および前記負極電極板ならびに電解液を含む電気化学素子と、前記正極電極板および前記負極電極板にそれぞれ電気的に接続される正極外部端子板および負極外部端子板と、前記電気化学素子を内蔵し周縁部にて密閉する外装フィルムシートとを備える電気化学デバイスであって、それぞれの正極活物質電極シートおよび負極活物質電極シートに少なくとも1つの貫通孔を有し、前記正極電極板および前記負極電極板の面積に対して開孔率が0.1%以上10%以下であることを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項2】
前記貫通孔の孔径は、0.01mm以上2mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
前記貫通孔が、レーザ加工または金型によるプレス加工により形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記電気化学デバイスが、リチウムイオン二次電池またはハイブリッドキャパシタであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−159642(P2011−159642A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17524(P2010−17524)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】