説明

電気化学デバイス

【課題】集電膜の上面と蓄電素子の一方極側の面との間の接続抵抗(導通抵抗)の増加を回避できる電気化学デバイスを提供する。
【解決手段】電気化学デバイス10は、ケース11の第1凹部11aの底面11a1に蓄電素子13の第1電極シート13aの下面の輪郭よりも小さな開口輪郭を有し、且つ、所定の深さD11bを有する第2凹部11bが形成され、集電膜19が第2凹部11bの深さよりも小さな厚さT19を有していて該第2凹部11bの底面11b1に設けられ、第1凹部11aの底面11a1と集電膜19の上面との間に第2凹部11bの深さD11bから集電膜19の厚さT19を減じた寸法(=D11b−T19)に相当する深さを有する接着剤貯留部ARが形成され、第1導電性接着層20が該接着剤貯留部ARに充填されるようにして設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電可能な蓄電素子を封入した電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートパソコンやビデオカメラやデジタルカメラ等の電子機器には、メモリバックアップ等の用途に適した電源として、表面実装可能な電気化学デバイス、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等が用いられている。
【0003】
この電気化学デバイスは、一般に、凹部を有する絶縁性ケースと、ケースの凹部を水密及び気密に閉塞した導電性リッドと、リッドによって閉塞された凹部内に封入された充放電可能な蓄電素子及び電解液と、ケースの実装面に設けられた正極端子及び負極端子と、正極端子と蓄電素子の正極側とを電気的に接続するための正極配線と、負極端子と蓄電素子の負極側とを電気的に接続するための負極配線とを備えている(特許文献1及び2を参照)。
【0004】
また、蓄電素子の一方極側の面がケースの凹部の底面に向き合い、且つ、他方極側の面がリッドの下面に向き合う構造にあっては、通常、ケースの凹部の底面には集電膜が設けられていて、集電膜の上面に導電性接着層を介して蓄電素子の一方極側の面が電気的に接続され、且つ、リッドの下面に別の導電性接着層を介して蓄電素子の他方極側の面が電気的に接続されている(特許文献2を参照)。
【0005】
さらに、集電膜の上面に導電性接着層を介して蓄電素子の一方極側の面を電気的に接続するとき、並びに、リッドの下面に別の導電性接着層を介して蓄電素子の他方極側の面を電気的に接続するとき、即ち、蓄電素子を配置する工程では、集電膜の上面に塗布された未硬化の導電性接着剤に蓄電素子の一方極側の面を押し当てて該導電性接着剤を硬化させ、これに前後して、リッドの下面に塗布された未硬化の導電性接着剤に蓄電素子の他方極側の面を押し当てて該導電性接着剤を硬化させる手法が採用されている。
【0006】
ところで、集電膜の上面に導電性接着層を介して蓄電素子の一方極側の面を電気的に接続し、且つ、リッドの下面に別の導電性接着層を介して蓄電素子の他方極側の面を電気的に接続した構造にあっては、両者の接続に同じ導電性接着剤を用いても、集電膜の上面と蓄電素子の一方極側の面との間の接続抵抗(導通抵抗)が、リッドの下面と蓄電素子の他方極側の面との間の接続抵抗(導通抵抗)よりも高くなる傾向がある。
【0007】
詳しく述べれば、リッドはそれ自体がコバール等の導電性材料から成り、且つ、単独部品として作製されるものであるため、その下面に平滑性を得易い。依って、リッドの下面に塗布された未硬化の導電性接着剤に蓄電素子の他方極側の面を押し当てるときに両面にある程度の平行度が確保できていれば、導電性接着層の厚さが薄くなっても、リッドの下面と蓄電素子の他方極側の面との実質的な導通面積は変わらない。
【0008】
一方、集電膜はアルミニウム等の導電性材料から成るものの、ケースの凹部の底面に溶射等の手法によって後付けされたものであるため、リッドの下面のような平滑性をその上面に得ることは難しい。依って、集電膜の上面に塗布された未硬化の導電性接着剤に蓄電素子の一方極側の面を押し当てるときに両面にある程度の平行度が確保できていても、導電性接着層の厚さが薄くなると、該導電性接着層に厚さが零の部分や零に近い部分が現れて集電膜の上面と蓄電素子の一方極側の面との実質的な導通面積が低下し、これにより集電膜の上面と蓄電素子の一方極側の面との間の接続抵抗(導通抵抗)が増加する。
【0009】
このような接続抵抗(導通抵抗)の増加は、電気化学デバイスの内部抵抗の増加に基づく充放電特性の低下に繋がるため、大電流化を実現する意味からも回避することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−278068号公報
【特許文献2】特開2006−222221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、集電膜の上面と蓄電素子の一方極側の面との間の接続抵抗(導通抵抗)の増加を回避できる電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は、第1凹部を有する絶縁性ケースと、前記第1凹部を水密及び気密に閉塞した導電性リッドと、前記第1凹部の底部に設けられた集電膜と、前記リッドによって閉塞された前記第1凹部内に封入された充放電可能な蓄電素子及び電解液とを備え、前記集電膜の上面に第1導電性接着層を介して前記蓄電素子の一方極側の面が電気的に接続され、且つ、前記リッドの下面に第2導電性接着層を介して前記蓄電素子の他方極側の面が電気的に接続された電気化学デバイスにおいて、前記第1凹部の底面には、前記蓄電素子の一方極側の面の輪郭よりも小さな開口輪郭を有し、且つ、所定の深さを有する第2凹部が形成され、前記集電膜は、前記第2凹部の深さよりも小さな厚さを有していて該第2凹部の底面に設けられ、前記第1凹部の底面と前記集電膜の上面との間には、前記第2凹部の深さから前記集電膜の厚さを減じた寸法に相当する深さを有する接着剤貯留部が形成され、前記第1導電性接着層は、前記接着剤貯留部に充填されるようにして設けられている、ことをその特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接着剤貯留部の存在によって第1導電性接着層の全体に十分な厚さを確保できるため、該第1導電性接着層に従来のような厚さが零の部分や零に近い部分が現れること、つまり、集電膜の上面と蓄電素子の一方極側の面との実質的な導通面積が低下することを防止して、集電膜の上面と蓄電素子の一方極側の面との間の接続抵抗(導通抵抗)が増加することを確実に回避できる。
【0014】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明を適用した電気化学デバイス(第1実施形態)の外観斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した電気化学デバイスのS11−S11線に沿う拡大断面図である。
【図3】図3は、図1に示したケースの拡大上面図である。
【図4】図4(A)及び図4(B)は、図2に示した第1導電性接着層の具体的な態様を示す図2対応の部分拡大図である。
【図5】図5は、本発明を適用した電気化学デバイス(第2実施形態)の図2対応の断面図である。
【図6】図6は、本発明を適用した電気化学デバイス(第3実施形態)の図2対応の断面図である。
【図7】図7は、本発明を適用した電気化学デバイス(第4実施形態)の図2対応の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《第1実施形態》
図1〜図3は、本発明を適用した電気化学デバイス(第1実施形態)を示す。同図に示した電気化学デバイス10は、絶縁性ケース11と、導電性リッド12と、蓄電素子13と、正極端子14と、負極端子15と、正極配線16と、負極配線17と、を具備しており、ケース11には正極端子14と負極端子15と正極配線16と負極配線17が設けられている他、結合リング18と集電膜19が設けられている。
【0017】
〈ケース11の構成〉
ケース11は、アルミナ等の絶縁性材料から、所定の長さ、幅及び高さを有する直方体形状を成すように形成されており、その下面が実装面として利用される。また、ケース11には、矩形状の開口輪郭を有し、且つ、所定の深さを有する第1凹部11aが形成されている。さらに、第1凹部11aの底面11a1の略中央には、後記第1電極シート13aの下面輪郭よりも小さな矩形状の開口輪郭を有し、且つ、所定の深さD11bを有する第2凹部11bが形成されている。さらに、ケース11を上から見たときの4つの角部には、上面輪郭が略1/4円を成す切り欠き11cが上下方向に形成されている。
【0018】
正極端子14は、金等の導電性材料から、ケース11の長さ方向の一端面の中央から下面に及ぶ断面L字形を成すように、且つ、所定の幅を有するように形成されている。負極端子15は、金等の導電性材料から、ケース11の長さ方向の他端面の中央から下面に及ぶ断面L字形を成すように、且つ、正極端子14と略同じ幅を有するように形成されている。
【0019】
図示を省略したが、ケース11の材料等を原因として、該ケース11の側面及び下面に正極端子14及び負極端子15を直接形成しても十分な密着力が得られない場合には、該側面及び下面に対する正極端子14及び負極端子15の密着力を高めるための密着補助層(例えば、ケース11側から順にタングステン膜とニッケル膜とが並ぶもの等)を予めケース11の側面及び下面の端子形成位置に形成しておくと良い。
【0020】
正極配線16は、タングステン等の導電性材料から、ケース11の長さ方向の一端面の中央から集電膜19の下面に至るように該ケース11の内部に形成されている。詳しくは、図3に示したように、正極配線16は、正極端子14と略同じ幅を有する矩形状部(符号無し)と、該矩形状部から内側に延びる計3本の帯状部16aと、各帯状部16aの端から集電膜19に向かって延びる計3個の柱状部16bとを有している。また、各柱状部16bの位置はケース11の第2凹部11bの底面11b1において異なっている。さらに、矩形状部におけるケース11の長さ方向の一端面から露出する部分は、正極端子14の側面部分に電気的に接続されており、各柱状部16bの上端は、集電膜19の下面に電気的に接続されている。
【0021】
図示を省略したが、正極配線16の各柱状部16bの材料等を原因として、該各柱状部16bの上端と集電膜19の下面とに十分な導電性が得られない場合には、該各柱状部16bの上端と集電膜19の下面との導電性を高めるための導電補助層(例えば、各柱状部16bの上端側から順にニッケル膜と金膜が並ぶもの等)を予め各柱状部16bの上端に形成しておくと良い。
【0022】
負極配線17は、タングステン等の導電性材料から、ケース11の長さ方向の他端面の中央から該ケース11の上面に至るようにその一部がケース11の内部に形成され他部がケース11の側面及び上面に形成されている。詳しくは、図3に示したように、負極配線17は、負極端子15と略同じ幅を有しケース11内に位置する矩形状部(符号無し)と、該矩形状部から外側に延びケース11内に位置する計2本の帯状部17aと、各帯状部17aと連続してケース11の2つの切り欠き11cの内面上に位置する計2本の帯状部17bと、各帯状部17bと連続してケース11の上面上に位置する計2個の扇状部17cとを有している。また、矩形状部におけるケース11の長さ方向の他端面から露出する部分は、負極端子15の側面部分に電気的に接続され、各扇状部17cの上面は、結合リング18の下面に電気的に接続されている。
【0023】
結合リング18は、コバール(鉄−ニッケル−コバルト合金)等の導電性材料から、ケース11の上面輪郭よりも僅かに小さな矩形状の上面輪郭を有するように形成されている。また、結合リング18は矩形状の開口輪郭を有する内孔18aを有しており、該内孔18aの開口輪郭はケース11の第1凹部11aの開口輪郭と略一致している。この結合リング18は、内孔18aが第1凹部11aと略合致するようにケース11の上面に接合材を介して結合されているため、該内孔18aは第1凹部11aの上部と利用されている(以下、結合リング18の内孔18aを含めてケース11の第1凹部11aと称する)。
【0024】
図示を省略したが、ケース11の材料等を原因として、該ケース11の上面に結合リング18を接合材、例えば、金−銅合金等のロウ材を用いて直接結合しても十分な結合力が得られない場合には、該上面に対する結合リング18の結合力を高めるための結合補助層(例えば、ケース11の上面側から順にタングステン膜とニッケル膜とが順に並ぶもの等)を予めケース11の上面のリング結合位置に形成しておくと良い。また、結合リング18が電解液に対する耐食性が低い材料から成る場合には、電解液に対する耐食性を高めるための耐食性膜(例えば、結合リング18の表面側からニッケル膜と金膜が順に並ぶものや、この金膜を白金や銀やパラジウム等の他の金属膜に変えたもの等)を予め結合リング18の表面(少なくとも上下面と内孔18aの内面)に形成しておくと良い。
【0025】
集電膜19は、アルミニウム等の導電性材料から、ケース11の第2凹部11bの底面11b1に形成されており、その矩形状の上面輪郭は第2凹部11bの開口輪郭と略一致している。この集電膜19はケース11の第2凹部11bの底面11b1に後付けされたもので、その形成には、該集電膜19の材料やケース11の材料等に応じて、溶射等の厚膜形成手法の他、CVD等の薄膜形成手法を利用できる。また、集電膜19の厚さT19は、ケース11の第2凹部11bの深さD11bよりも小さい。そのため、第1凹部11aの底面11a1と集電膜19の上面との間には、第2凹部11bの深さD11bから集電膜19の厚さT19を減じた寸法に相当する深さを有する接着剤貯留部ARが形成されている。さらに、電気化学デバイス10の高さ増加を抑制する観点からすれば、後記導電性接着剤の種類にもよるが、接着剤貯留部ARの好ましい深さは5〜100μmである。例えば、第2凹部11bの深さD11bが50μmで集電膜19の厚さT19が30μmの場合には、接着剤貯留部ARの深さは20μmとなる。
【0026】
図示を省略したが、集電膜19の上面輪郭は、第2凹部11bの開口輪郭よりも僅かに小さくても良い。また、集電膜19の上面輪郭は矩形状に限らず、矩形の4つの角に丸みがある形状や楕円または楕円に近い形状等であっても良い。
【0027】
〈リッド12の構成及び結合方法〉
リッド12は、コバール(鉄−ニッケル−コバルト合金)等の導電体材料から、好ましくは、コバール母材の上下面にニッケル膜を有するクラッド材やコバール母材の下面にニッケル膜を有するクラッド材や、これらのニッケル膜を白金や銀や金やパラジウム等の金属膜に変えたクラッド材等から、結合リング18の上面輪郭と略一致した矩形状の上面輪郭を有するように形成されている。図面には、リッド12の中央部分が矩形状に盛り上がったものをリッド12として示してあるが、平板状のものを該リッド12として用いても良い。
【0028】
このリッド12は、ケース11の第1凹部11aの内側に蓄電素子13を配置した後に、その下面の外周部分を結合リング18の上面に電気的に導通するように結合され、該結合によってケース11の第1凹部11aは水密及び気密に閉塞される。因みに、結合リング18に対するリッド12の結合には、シーム溶接やレーザ溶接等の直接接合法を利用できる他、導電性接合材を介在した間接接合法を利用できる。
【0029】
〈蓄電素子13の構成及び配置方法〉
蓄電素子13は、矩形状の第1電極シート13aと、矩形状の第2電極シート13bと、両電極シート13a及び13bの間に介装された矩形状のセパレートシート13cと、から構成されている。
【0030】
第1電極シート13aの下面輪郭は、ケース11の第1凹部11aの上面輪郭よりも小さく、且つ、第2凹部11bの開口輪郭よりも大きい。第2電極シート13bの上面輪郭は、ケース11の第1凹部11aの上面輪郭よりも小さく、且つ、第1電極シート13aの下面輪郭と略一致している。セパレートシート13cの上面輪郭は、ケース11の第1凹部11aの上面輪郭よりも僅かに小さく、且つ、第1電極シート13aの下面輪郭及び第2電極シート13bの上面輪郭よりも僅かに大きい。
【0031】
また、第1電極シート13a及び第2電極シート13bは活性炭や黒鉛(グラファイト)やPAS(ポリアセン系半導体)等の活物質から成り、セパレートシート13cはガラス繊維やセルロース繊維やプラチック繊維等を主材料とした多孔質シートから成る。因みに、第1電極シート13aと第2電極シート13bの材料は電気化学デバイス10の種類によって同じ場合と異なる場合とがあり、例えば、電気化学デバイス10が電気二重層キャパシタの場合は第1電極シート13aと第2電極シート13bの材料は同じで、電気化学デバイス10がリチウムイオンキャパシタの場合は第1電極シート13aと第2電極シート13bの材料は異なる。
【0032】
この蓄電素子13は、リッド12によって閉塞された第1凹部11aの内側に、図示省略の電解液と一緒に封入されている。因みに、電解液の組成は電気化学デバイス10の種類によって異なり、例えば、電気化学デバイス10が電気二重層キャパシタの場合は電解質塩が溶媒に溶解した電解液が用いられ、電気化学デバイス10がリチウムイオンキャパシタの場合はリチウム塩が溶媒に溶解した電解液が用いられる。
【0033】
蓄電素子13を構成する第1電極シート13aと第2電極シート13bに使用時の極性が定まっていない場合(例えば、電気化学デバイス10が電気二重層キャパシタの場合)、即ち、第1電極シート13aを正極と負極の一方として選択的に使用でき、且つ、第2電極シート13bを正極と負極の他方として選択的に使用できる場合には、ケース11の第1凹部11aの内側に蓄電素子13を配置するときにその挿入順序を気にする必要は無い。
【0034】
一方、蓄電素子13を構成する第1電極シート13aと第2電極シート13bに使用時の極性が予め定まっている場合(例えば、電気化学デバイス10がリチウムイオンキャパシタの場合)は、ケース11の第1凹部11aの内側に蓄電素子13を配置するときにその挿入順序に注意する。例えば、第1電極シート13aの極性が正極に定められ、且つ、第2電極シート13bの極性が負極に定められている場合には、正極側の第1電極シート13aが集電膜19の上面と向き合い、且つ、負極側の第2電極シート13bがリッド12の下面と向き合うようにする。
【0035】
図2から分かるように、蓄電素子13の第1電極シート13aの下面は、接着剤貯留部ARに充填されるようにして設けられた第1導電性接着層20を介して集電膜19の上面に電気的に接続されている。一方、蓄電素子13の第2電極シート13bの上面は、リッド12の下面に設けられた第2導電性接着層21を介して該リッド12の下面に電気的に接続されている。第1導電性接着層20及び第2導電性接着層21は導電性接着剤の硬化物であり、該導電性接着剤には、好ましくは、導電性粒子を含有した熱硬化性接着剤、例えば、炭素粒子(カーボンブラック)や黒鉛粒子(グラファイト粒子)等を含有したエポキシ系接着剤等が利用できる。
【0036】
ここで、蓄電素子13を配置する方法について、(1)第1電極シート13aと第2電極シート13bとセパレートシート13cが一体物として作製されていない場合と、(2)第1電極シート13aと第2電極シート13bとセパレートシート13cを一体物として作製されている場合を例に挙げて説明する。因みに、電解液の注入は、リッド12が結合リング18に結合される前の適当なタイミングで行われる。
【0037】
前記(1)の場合には、ケース11の接着剤貯留部ARに第1導電性接着層20用の導電性接着剤を所定量充填し、続いて、該導電性接着剤に第1電極シート13aの下面を相対的に押し当てて密着させ、続いて、第1電極シート13aを乾燥させ、且つ、導電性接着剤を硬化させる。接着剤貯留部ARに充填された導電性接着剤に第1電極シート13aの下面を押し当てるときの該第1電極シート13aの位置は、図3に2点鎖線で示すように、第1電極シート13aの下面の外周部分が第1凹部11aの底面11a1に向き合うようにする。そして、第1電極シート13aの上面にセパレートシート13cを載置して電解液を注入する。これに前後して、リッド12の下面に前記と同じ第2導電性接着層21用の導電性接着剤を所定厚さで塗布し、続いて、該導電性接着剤に第2電極シート13bの上面を相対的に押し当てて密着させ、続いて、第2電極シート13bを乾燥させ、且つ、導電性接着剤を硬化させる。そして、リッド12の下面の外周部分を結合リング18の上面に重ねると同時に、第2電極シート13bの下面をセパレートシート13cの上面に重ね合わせる。そして、リッド12を結合リング18に結合する。
【0038】
また、前記(2)の場合には、ケース11の接着剤貯留部ARに第1導電性接着層20用の導電性接着剤を所定量充填し、続いて、該導電性接着剤に一体物(蓄電素子13)の第1電極シート13aの下面を相対的に押し当てて密着させる。そして、リッド12の下面に前記と同じ第2導電性接着層21用の導電性接着剤を所定厚さで塗布し、続いて、該導電性接着剤に一体物(蓄電素子13)の第2電極シート13bの上面を相対的に押し当てて密着させる。各導電性接着剤の硬化は個別に行うか、或いは、一括(同時)に行う。そして、リッド12を結合リング18に結合する。
【0039】
何れの配置方法の場合も、「ケース11の接着剤貯留部ARに第1導電性接着層20用の導電性接着剤を所定量充填するステップ」では、接着不良を生じないためにも、接着剤貯留部ARの容積よりも僅かに多い量の導電性接着剤を該接着剤貯留部ARに充填する。
【0040】
「第1電極シート13aの下面を相対的に押し当てるステップ」で、第1電極シート13aの下面の外周部分が第1凹部11aの底面11a1に接するように押し当てた場合には、図4(A)に示したように、余剰の導電性接着剤SMは第1電極シート13aの下面の外側(第1凹部11aの底面11a1上)にはみ出してそのまま硬化する。即ち、この場合には、第1電極シート13aの下面の外周部分が第1凹部11aの底面11a1に直接的に接する態様となり、該第1電極シート13aの下面の外周部分を除く領域が第1導電性接着層20の上面に密着する。余剰の導電性接着剤SMが第1電極シート13aの下面の外側にはみ出す量は、接着剤貯留部ARに充填された導電性接着剤の量に依存するが、はみ出し量が図4(A)に示した態様よりも少なくても多くても、第1電極シート13aの下面が電気的接続を行うのに十分な面積をもって第1導電性接着層20の上面に密着することには変わりはない。
【0041】
また、「第1電極シート13aの下面を相対的に押し当てるステップ」で、第1電極シート13aの下面の外周部分が第1凹部11aの底面11a1に接しないように押し当てた場合には、図4(B)に示したように、余剰の導電性接着剤SMは第1電極シート13aの下面の外周部分下にはみ出してそのまま硬化する。即ち、この場合には、第1電極シート13aの下面の外周部分が第1導電性接着層20における接着剤貯留部ARから第1凹部11aの底面11a1上に張り出した一部に接する態様となり、該第1電極シート13aの下面の略全域が第1導電性接着層20の上面に密着する。余剰の導電性接着剤SMが第1電極シート13aの下面の外周部分下にはみ出す量は、接着剤貯留部ARに充填された導電性接着剤の量と押し当て力に依存するが、はみ出し量が図4(B)に示した態様よりも少なくても多くても、第1電極シート13aの下面が電気的接続を行うのに十分な面積をもって第1導電性接着層20の上面に密着することには変わりはない。
【0042】
〈電気化学デバイス10(第1実施形態)によって得られる効果〉
前記電気化学デバイス10によれば、以下の(効果1)〜(効果3)を得ることができる。
【0043】
(効果1)前記電気化学デバイス10は、ケース11の第1凹部11aの底面11a1に、蓄電素子13の第1電極シート13aの下面の輪郭よりも小さな開口輪郭を有し、且つ、所定の深さD11bを有する第2凹部11bが形成され、集電膜19が、第2凹部11bの深さよりも小さな厚さT19を有していて該第2凹部11bの底面11b1に設けられ、第1凹部11aの底面11a1と集電膜19の上面との間に、第2凹部11bの深さD11bから集電膜19の厚さT19を減じた寸法(=D11b−T19)に相当する深さを有する接着剤貯留部ARが形成され、第1導電性接着層20が、該接着剤貯留部ARに充填されるようにして設けられている。
【0044】
即ち、接着剤貯留部ARの存在によって第1導電性接着層20の全体に十分な厚さ(=D11b−T19)を確保できるため、該第1導電性接着層20に従来のような厚さが零の部分や零に近い部分が現れること、つまり、集電膜19の上面と蓄電素子13の第1電極シート13aの下面との実質的な導通面積が低下することを防止して、集電膜19の上面と蓄電素子13の第1電極シート13aの下面との間の接続抵抗(導通抵抗)が増加することを確実に回避できる。
【0045】
(効果2)第1導電性接着層20を図4(A)に示した態様、即ち、第1電極シート13aの下面の外周部分が第1凹部11aの底面11a1に直接的に接する態様とすれば、第1導電性接着層20の厚さ(=D11b−T19)を第2凹部11bの深さD11bと集電膜19の厚さT19の少なくとも一方によって規定できるため、該第1導電性接着層20の厚さの管理が容易である。
【0046】
(効果3)第1導電性接着層20を図4(B)に示した態様、即ち、第1電極シート13aの下面の外周部分が第1導電性接着層20における接着剤貯留部ARから第1凹部11aの底面11a1上に張り出した一部に接する態様とすれば、第1電極シート13aの下面と第1導電性接着層20の上面との密着面積を増加できるため、集電膜19の上面と蓄電素子13の第1電極シート13aの下面との実質的な導通面積を増加させ、該導通面積の増加によって集電膜19の上面と蓄電素子13の第1電極シート13aの下面との間の接続抵抗(導通抵抗)を低下できる。
【0047】
《第2実施形態》
図5は、本発明を適用した電気化学デバイス(第2実施形態)を示す。同図に示した電気化学デバイスが、前記《第1実施形態》で説明した電気化学デバイス10と異なるところは、ケース11の構成に関し、
・第1凹部11aの底面11a1に第2凹部11bを形成するのではなく、第1凹部11 aの底面11a1に矩形枠状のスペーサSP1を配置して、該スペーサSP1の内側空 間によって第2凹部11bを形成した点
にある。ケース11の他の構成、リッド12の構成及び結合方法、蓄電素子13の構成及び配置方法は、前記《第1実施形態》で説明した電気化学デバイス10と同じである。
【0048】
スペーサSP1の矩形状の上面輪郭は第1凹部11aの底面11a1の上面輪郭と略一致し、その内孔(符号無し)の開口輪郭は図2に示した第2凹部11bの開口輪郭と同じで、その厚さは図2に示した第2凹部11bの深さD11bと同じである。また、スペーサSP1の材料は、絶縁性材料であれば、ケース11と同じ材料であっても良いし、ケース11と異なる材料であっても良い。さらに、スペーサSP1は、第1凹部11aの底面11a1に集電膜19を形成した後に該第1凹部11aの底面11a1に配置しても良いし、第1凹部11aの底面11a1に集電膜19を形成する前に該第1凹部11aの底面11a1に配置しても良い。さらに、スペーサSP1は、第1凹部11aの底面11a1に非接着で載置するだけでも良いし、第1凹部11aの底面11a1に熱硬化性接着剤、例えば、エポキシ系接着剤等を介して固定しても良い。
【0049】
〈電気化学デバイス(第2実施形態)によって得られる効果〉
前記電気化学デバイスによれば、前記《第1実施形態》の〈電気化学デバイス10(第1実施形態)によって得られる効果〉で説明した(効果1)〜(効果3)に加えて、以下の(効果4)を得ることができる。
【0050】
(効果4)ケース11それ自体に第2凹部11bを形成する必要が無くなるため、該ケース11の構造を簡素化できる。特に、ケース11をアルミナ等のセラミックスから作製する場合には、非穴あきの未焼成セラミックシートと穴あきの未焼成セラミックシートを適当数積み重ねてから圧着して焼成する工程が必要となるが、積み重ねシート数を減らして工程を簡略化できると共にケース11の部品単価を低減できる。
【0051】
《第3実施形態》
図6は、本発明を適用した電気化学デバイス(第3実施形態)を示す。同図に示した電気化学デバイスが、前記《第1実施形態》で説明した電気化学デバイス10と異なるところは、ケース11の構成に関し、
・第1凹部11aの深さを浅くして、該第1凹部11aと第2凹部11bとの間に、蓄電 素子13の第1電極シート13aの下面輪郭と略一致した矩形状の開口輪郭を有し、且 つ、所定の深さを有する第3凹部11dを形成した点
・蓄電素子13の第1電極シート13aの下面の外周部分を、第3凹部11dに嵌め込ん で配置した点
にある。ケース11の他の構成、リッド12の構成及び結合方法、蓄電素子13の構成及び配置方法は、前記《第1実施形態》で説明した電気化学デバイス10と同じであるが、第1導電性接着層20の態様は図4(A)に示した態様と図4(B)に示した態様と若干異なるため以下に補足する。
【0052】
接着剤貯留部ARには該接着剤貯留部ARの容積よりも僅かに多い量の導電性接着剤が充填されるため、第1電極シート13aの下面の外周部分が第3凹部11dの底面11d1に接するように押し当てた場合には、図4(A)に示した態様と同様に、余剰の導電性接着剤は第1電極シート13aの下面の外側(第1凹部11aの底面11a1上)にはみ出してそのまま硬化する。また、第1電極シート13aの下面の外周部分が第3凹部11dの底面11d1に接しないように押し当てた場合には、図4(B)に示した態様と同様に、余剰の導電性接着剤は第1電極シート13aの下面の外周部分下にはみ出してそのまま硬化する。
【0053】
第3凹部11dは蓄電素子13の第1電極シート13aの位置決めをその役割とするものであるため、その深さは、先に述べた第1導電性接着層20の態様に拘わらず、第1電極シート13aの下面の外周部分が嵌り込んで前記役割を果たせる最小限の値であれば良い。
【0054】
〈電気化学デバイス(第3実施形態)によって得られる効果〉
前記電気化学デバイスによれば、前記《第1実施形態》の〈電気化学デバイス10(第1実施形態)によって得られる効果〉で説明した(効果1)〜(効果3)に加えて、以下の(効果5)を得ることができる。
【0055】
(効果5)第1凹部11aと第2凹部11bとの間に形成された第3凹部11dに、蓄電素子13の第1電極シート13aの下面の外周部分を嵌め込んで配置しているため、接着剤貯留部ARに充填された導電性接着剤に蓄電素子13の第1電極シート13aの下面を押し当てるときに該第1電極シート13aの位置を簡単に決定できる。しかも、蓄電素子13の第1電極シート13aが第3凹部11dによって保持されているため、電気化学デバイスを表面実装するときや表面実装後の電気化学デバイスに振動等の外力が加わったときでも、第1導電性接着剤20との協働によって、第1電極シート13a、ひいては蓄電素子13の位置ずれを防止できる。
【0056】
《第4実施形態》
図7は、本発明を適用した電気化学デバイス(第4実施形態)を示す。同図に示した電気化学デバイスが、前記《第3実施形態》で説明した電気化学デバイスと異なるところは、ケース11の構成に関し、
・第1凹部11aの底面11a1に第2凹部11bを形成し、且つ、第1凹部11aと第 2凹部11bとの間に第3凹部11dを形成するのではなく、第1凹部の底面11a1 に矩形枠状のスペーサSP2を配置して、該スペーサSP2の内側空間によって第2凹 部11bを形成し、該該スペーサSP2の内孔(符号無し)の上部に形成した段差によ って第3凹部11dを形成した点
にある。ケース11の他の構成、リッド12の構成及び結合方法、蓄電素子13の構成及び配置方法は、前記《第3実施形態》で説明した電気化学デバイスと同じである。
【0057】
スペーサSP2の矩形状の上面輪郭は第1凹部11aの底面11a1の上面輪郭と略一致し、その内孔(符号無し)の開口輪郭は図2に示した第2凹部11bの開口輪郭と同じで、その厚さは図2に示した第2凹部11bの深さD11bと同じである。また、スペーサSP2の内孔の上部(上面と内孔との境界縁)には断面L字形の段差が設けられていて、該段差によって蓄電素子13の第1電極シート13aの下面輪郭と略一致した矩形状の開口輪郭を有し、且つ、所定の深さを有する第3凹部11dが形性されている。さらに、スペーサSP2の材料は、絶縁性材料であれば、ケース11と同じ材料であっても良いし、ケース11と異なる材料であっても良い。さらに、スペーサSP2は、第1凹部11aの底面11a1に集電膜19を形成した後に該第1凹部11aの底面11a1に配置しても良いし、第1凹部11aの底面11a1に集電膜19を形成する前に該第1凹部11aの底面11a1に配置しても良い。さらに、スペーサSP2は、第1凹部11aの底面11a1に非接着で載置するだけでも良いし、第1凹部11aの底面11a1に熱硬化性接着剤、例えば、エポキシ系接着剤等を介して固定しても良い。
【0058】
〈電気化学デバイス(第4実施形態)によって得られる効果〉
前記電気化学デバイスによれば、前記《第1実施形態》の〈電気化学デバイス10(第1実施形態)によって得られる効果〉で説明した(効果1)〜(効果3)と、前記《第3実施形態》の〈電気化学デバイス(第3実施形態)によって得られる効果〉で説明した(効果5)に加えて、以下の(効果6)を得ることができる。
【0059】
(効果6)ケース11それ自体に第2凹部11b及び第3凹部11dを形成する必要が無くなるため、該ケース11の構造を簡素化できる。特に、ケース11をアルミナ等のセラミックスから作製する場合には、非穴あきの未焼成セラミックシートと穴あきの未焼成セラミックシートを適当数積み重ねてから圧着して焼成する工程が必要となるが、積み重ねシート数を減らして工程を簡略化できると共にケース11の部品単価を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタに限らず、充放電可能な蓄電素子を用いた他の電気化学デバイス、例えば、レドックスキャパシタやリチウムイオン電池等に広く適用でき、該適用によって前記[発明を解決しようとする課題]に記した目的を達成できる。
【符号の説明】
【0061】
10…電気化学デバイス、11…ケース、11a…第1凹部、11a1…第1凹部の底面、11b…第2凹部、11b1…第2凹部の底面、11d…第3凹部、11d1…第3凹部の底面、12…リッド、13…蓄電素子、13a…第1電極シート、13b…第2電極シート、19…集電膜、20…第1導電性接着層、21…第2導電性接着層、AR…接着剤貯留部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1凹部を有する絶縁性ケースと、前記第1凹部を水密及び気密に閉塞した導電性リッドと、前記第1凹部の底部に設けられた集電膜と、前記リッドによって閉塞された前記第1凹部内に封入された充放電可能な蓄電素子及び電解液とを備え、前記集電膜の上面に第1導電性接着層を介して前記蓄電素子の一方極側の面が電気的に接続され、且つ、前記リッドの下面に第2導電性接着層を介して前記蓄電素子の他方極側の面が電気的に接続された電気化学デバイスにおいて、
前記第1凹部の底面には、前記蓄電素子の一方極側の面の輪郭よりも小さな開口輪郭を有し、且つ、所定の深さを有する第2凹部が形成され、
前記集電膜は、前記第2凹部の深さよりも小さな厚さを有していて該第2凹部の底面に設けられ、
前記第1凹部の底面と前記集電膜の上面との間には、前記第2凹部の深さから前記集電膜の厚さを減じた寸法に相当する深さを有する接着剤貯留部が形成され、
前記第1導電性接着層は、前記接着剤貯留部に充填されるようにして設けられている、
ことを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項2】
前記蓄電素子の一方極側の面の外周部分は、前記第1凹部の底面に直接的に接している、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
前記蓄電素子の一方極側の面の外周部分は、前記接着剤貯留部から前記第1凹部の底面上に張り出した前記第1導電性接着層の一部に接している、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記第1凹部と前記第2凹部との間には、前記蓄電素子の一方極側の面の輪郭と略一致した開口輪郭を有し、且つ、所定の深さを有する第3凹部が形成され、
前記蓄電素子の一方極側の面の外周部分は、前記第3凹部に嵌り込んでいる、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電気化学デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−227333(P2012−227333A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93081(P2011−93081)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】