説明

電気化学装置

【課題】耐振動性および耐衝撃性が高い電気化学装置を提供する。
【解決手段】金属箔表面に活物質層が形成された電極を有する発電要素10と、前記発電要素10を収容する外装体20と、前記発電要素10に接続された集電体24A,24Bと、前記発電要素10のうち前記集電体24A,24Bが接続された側の側面に取り付けられる変位規制部材30と、を備え、前記変位規制部材30は、前記集電体24A,24Bと前記発電要素10との並び方向に厚みを持った押え部31,37を有し、この押え部31,37が前記発電要素10の側面に当接することで、前記発電要素10の前記集電体24A,24Bに対する前記並び方向の相対変位が規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属箔表面に活物質層が形成された電極板を有する発電要素が、外装体に収容されてなる、電池や電気二重層キャパシタ等の電気化学装置が知られている(例えば下記特許文献1に記載)。一般に、発電要素の電極板には、活物質層が形成されていない部分(金属箔が露出した部分)が設けられ、この部分に、電力を入出力するための電極端子に連なった集電体が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−238469公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような電気化学装置は、発電要素と外装体との間に合成樹脂製のシートを介在させる等によって、振動や衝撃に対する保護を行っていた。しかしながら、そのようなシートによる保護では、強い振動や衝撃を受けた場合に、外装体内における発電要素の振れを十分に抑えられず、集電体の変形や、集電体が発電要素に突き刺さる等の事態を招き、内部短絡が発生する虞があった。このため、電気化学装置の安全性を高めるべく、耐振動性および耐衝撃性の向上が望まれていた。特に、自動車用のバッテリ等として電気化学装置を使用する場合には、走行時の振動や車体の衝突など、相当に強い振動や衝撃に耐えうる必要があるので、耐振動性および耐衝撃性の向上は必至であった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、耐振動性および耐衝撃性が高い電気化学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電気化学装置は、金属箔表面に活物質層が形成された電極を有する発電要素であって、発電要素本体、および、当該発電要素本体の端部に設けられた電極部分を有する前記発電要素と、前記発電要素を収容する外装体と、前記発電要素の前記電極部分に接続された集電体と、前記発電要素本体の前記端部と、当該端部に対向する前記外装体の内側面との間に配置された押え部を有する変位規制部材と、を備える。
【0007】
このような構成によれば、電気化学装置が強い振動や衝撃を受けた場合であっても、集電体の変形や、集電体が発電要素に突き刺さる等の事態を防ぐことができるから、高い耐振動性および耐衝撃性を実現することができる。
【0008】
上記電気化学装置では、前記変位規制部材の前記押え部は、前記集電体よりも、前記発電要素本体側に突出する位置に配置されていてもよい。
この電気化学装置では、押え部が、集電体よりも、発電要素本体側に突出する位置に配置されている。これにより、押え部が、集電体よりも発電要素本体側に突出していない構成に比べて、集電体が発電要素に突き刺さる等の事態を抑制することができる。
【0009】
上記電気化学装置では、前記変位規制部材の前記押え部は、前記発電要素本体の前記端部と前記外装体の内側面との対向方向に直交する方向において前記集電体と並んで配置され、且つ、前記変位規制部材の前記押え部は、前記対向方向における寸法が、前記集電体よりも大きくてもよい。
この電気化学装置では、押え部は、発電要素本体の端部と外装体の内側面との対向方向に直交する方向において集電体と並んで配置され、且つ、対向方向おける寸法が集電体よりも大きい。これにより、押え部の対向方向おける寸法が集電体よりも小さい構成に比べて、集電体が発電要素に突き刺さる等の事態を抑制することができる。
【0010】
上記電気化学装置では、前記変位規制部材の前記押え部は、前記集電体とは離間して配置されていてもよい。
仮に、押え部が集電体と接触して配置されている構成では、押え部の移動に伴って集電体も発電要素本体側に押し出されるおそれがある。これに対し、この電気化学装置では、押え部は、集電体とは離間して配置されている。これにより、押え部の移動に伴って集電体が発電要素本体側に押し出されて発電要素に突き刺さる等の事態を抑制することができる。
【0011】
上記電気化学装置では、前記変位規制部材の前記押え部は、前記発電要素本体の前記端部側に向けられた押え面を有してもよい。これにより、振動等が発生した場合に、押え部が、発電要素10の端部に面接触するから、変位規制部材が発電要素に突き刺さることを、より確実に防ぐことができる。
【0012】
また、前記変位規制部材は、合成樹脂製であるものとしてもよい。このような構成によれば、変位規制部材が金属製である場合に比して軽量化を図りやすく、また弾力性を持たせやすいので、変位規制部材によって振動および衝撃を吸収することができる。
【0013】
また、前記変位規制部材は、前記集電体と前記外装体との間に配される絶縁部を有するものとしてもよい。このような構成によれば、集電体と外装体とを確実に絶縁することができる。
【0014】
また、前記発電要素は、巻芯を中心にして前記電極を巻回したものであり、前記押え部のうち前記巻芯に対応する位置には、前記巻芯の逃げ部が設けられているものとしてもよい。このような構成によれば、変位規制部材に巻芯が突き当たることを回避することができる。
【0015】
また、前記集電体は、電極端子側に接続される本体部と、前記発電要素の前記電極部分に接続される複数の脚部とを備え、前記押え部は、前記脚部の間に挿入される第一押え部と、前記脚部の外側に配される第二押え部とを有してもよい。これにより、集電体の脚部の両側において、押え部により、集電体が発電要素に突き刺さる等の事態を抑制することができる。
【0016】
また、前記第二押え部の先端側は根本側よりも断面視において厚みが大きいものとしてもよい。
【0017】
また、前記押え部は、前記発電要素本体の端部から離れた位置に保持されるものとしてもよい。このような構成によれば、変位規制部材が不用意に発電要素に接触して、発電要素を損傷させる事態を防ぐことができる。
【0018】
また、前記変位規制部材は合成樹脂製であって、前記集電体と前記外装体との間に配される絶縁部を有し、前記絶縁部は、前記集電体に接触しているものとしてもよい。
また、前記変位規制部材の前記押え部は、前記発電要素本体の端部側に向けられる押え面を有し、前記押え面の端縁部には、丸みが付けられているものとしてもよい。このような構成によれば、変位規制部材が発電要素に突き刺さることを、より確実に防ぐことができる。
【0019】
また、前記変位規制部材は、外装体内の底部に当接して配置されていてもよい。これにより、変位規制部材が外装体内の底部に当接していない構成に比べて、変位規制部材が、発電要素や集電体に対してずれることを抑制することができる。
【0020】
また、前記変位規制部材の下端には、前記発電要素本体の下側部分が載置される受け部が設けられていてもよい。これにより、発電要素が外装体の底部に衝突することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐振動性および耐衝撃性が高い電気化学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1における単電池であって、外装体内の構造を表す一部切欠正断面図
【図2】外装体内の構造を表す単電池の一部切欠側断面図
【図3】スペーサを表す斜視図
【図4】発電要素にスペーサを取り付ける前の状態を表す斜視図
【図5】スペーサが取り付けられた発電要素を外装体に収容する前の状態を表す斜視図
【図6】スペーサが取り付けられた発電要素が外装体に収容されている状態を表す単電池の一部拡大断面図
【図7】実施形態2における発電要素にスペーサを取り付ける前の状態を表す斜視図
【図8】ボトムスペーサを取り付ける前の状態を表す斜視図
【図9】単電池を左右方向から見た部分的断面図
【図10】実施形態3における発電要素にスペーサを取り付ける前の状態を表す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態1>
以下、実施形態1について、図1〜図6を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態における電気化学装置は、電気自動車やハイブリット自動車等の車両に搭載される非水電解質二次電池の一種である大型リチウムイオン電池(以下、単に単電池B1と称する)である。この単電池B1は、扁平型をなす発電要素10が、角形の外装体20に収容されてなる角型電池であり、外装体20内には電解液が充填されている。以下、各図において、符号Uの方向を単電池B1の上側、符号Fの方向を単電池B1の前側、符号Rの方向を単電池B1の右側として説明する。
【0024】
発電要素10は、正極板と負極板との間にセパレータを挟んで重ね合わせたものを、ポリエチレン製の長方形状をなす巻芯11を中心にして巻回したものである。正極板は、帯状をなすアルミニウム箔の表面に正極活物質層が形成されたものであり、その左側の縁には、正極活物質層が形成されずにアルミニウム箔が露出した正極集電箔12Aが形成されている。また、負極板は、帯状をなす銅箔の表面に負極活物質層が形成されたものであり、その右側の縁には、負極活物質層が形成されずに銅箔が露出した負極集電箔12Bが形成されている。
【0025】
正極板と負極板とは、正極集電箔12Aと負極集電箔12Bとが反対側に配される向きで、かつ正極集電箔12Aがセパレータおよび負極板よりも外側に配され、また負極集電箔12Bがセパレータおよび正極板よりも外側に配されるように重ねられて巻回されている。これにより、発電要素10の左側には、正極集電箔12Aのみが積層して突設され(正極側)、右側には、負極集電箔12Bのみが積層して突設されている(負極側)。以下、発電要素10のうち、正極集電箔12Aが突設した左側部分を正極部分10Aといい、負極集電箔12Bのみが突設した右側部分を負極部分10Bという。また、発電要素10のうち、正極部分10Aおよび負極部分10Bを除いた部分を、発電要素本体10Cという。
【0026】
正極部分10Aおよび負極部分10Bは、電極部分の一例であり、それぞれ上下方向に延びた長円形状に巻回されており、そのうちの直線部分が、後述する正極集電体24Aまたは負極集電体24Bに溶着される溶着部13とされている(図4参照)。正極部分10Aは、正極集電箔12Aが溶着部13において集められており、負極部分10Bは、負極集電箔12Bが溶着部13において集められいる。このため、各溶着部13の前側および後側には、傾斜面14A,14Bが形成されており(図6参照)、これらの傾斜面14A,14Bは、左右方向、換言すれば発電要素本体10Cと各電極部分10A,10Bとの並び方向に対して傾斜している。また、傾斜面14A,14Bのうち溶着部13よりも中心側(巻芯11側)に位置する中心側傾斜面14Aは、溶着部13よりも外側に位置する外側傾斜面14Bよりも前後方向に対して緩い勾配となっている。
【0027】
外装体20は、図1に示すように、上面側が開放された容器体21と、容器体21の上面側を塞ぐ蓋体22とを備えている。電力を入出力するための正極端子23Aおよび負極端子23Bは、蓋体22を貫通して上方に突出している。
【0028】
発電要素10の正極部分10Aには、正極端子23Aに連なった正極集電体24Aが接続され、負極部分10Bには、負極端子23Bに連なった負極集電体24Bが接続されている(図4参照)。両集電体24A,24Bは、それぞれ大きな電流容量が得られるように十分な厚さを有する金属板からなるものであり、正極集電体24Aは、例えばアルミニウム合金板からなり、負極集電体24Bは、例えば銅板合金板からなる。
【0029】
各集電体24A,24Bは、図1に示すように、正極端子23Aまたは負極端子23B側に接続される本体部25と、発電要素10の正極部分10Aおよび負極部分10Bにそれぞれに接続される脚部26とを備えている。本体部25は、蓋体22の板面に沿う形状とされ、脚部26は、正極部分10Aおよび負極部分10Bに沿う形状とされている。脚部26は、本体部25の端縁からその板面に対して略垂直方向に屈曲され、本体部25から下方に細長い形状をなして延びている(図4参照)。脚部26は、各集電体24A,24Bに一対ずつ備えられ、互いの板面が対向する向きで配されている。一対の脚部26は、溶着部13を前後方向から挟むように配され、図示しないクリップによって溶着部13に密着するように挟み付けられ、超音波溶接等により接続されている。
【0030】
さて、発電要素10の正極部分10Aおよび負極部分10Bそれぞれの近傍には、スペーサ(変位規制部材、絶縁部材)30が配置されている。各スペーサ30は、集電体24A,24Bに対する発電要素本体10Cの相対的な変位を規制する。
【0031】
スペーサ30は合成樹脂製であり、図3に示すように、薄い板部材を屈曲したような形状に形成され、その厚さ寸法は全体として略一定とされており、射出成形時に反りが生じにくくされている。スペーサ30の前後方向の幅寸法は、発電要素本体10Cの厚さ寸法と略同等であり、スペーサ30の上下方向の寸法は、集電体24A,24Bの脚部26の長さ寸法よりも大きく、各電極部分10A,10Bの大部分を覆うようにして取り付けられる(図5参照)。
【0032】
スペーサ30は、左右方向に厚みを持った第一押え部31および第二押え部37を有している。第一押え部31は、一対の脚部26の間に挿入され、第二押え部37は、一対の脚部26の外側に配される。
【0033】
第一押え部31は、全体として、正極部分10Aと負極部分10Bとの間の凹み(一対の溶着部13および中心側傾斜面14Aにより形成された凹み)に沿う形状をなし、この凹みの深さ寸法と同等の長さ寸法を有している。
【0034】
第一押え部31は、発電要素本体10Cの上記中心側傾斜面14Aに沿って傾く第一押え面(押え面)33を有し、第一押え面33は、巻芯11を境に逆向きに傾く中心側傾斜面14Aに対応して、一対が設けられている。第一押え面33のうち、脚部26側の外端縁部、および、巻芯11側の内端縁部には、発電要素本体10C側に尖っていないR形状をなすように、丸みが付けられている(図6参照)。
【0035】
第一押え部31には、巻芯11に対する逃げ部34が設けられている。逃げ部34は、前後方向の略中心(一対の第一押え面33の間)に形成され、上下方向から見た断面が山形をなして外側(発電要素本体10Cの側面から離れる側)に凹んでいる。
【0036】
第二押え部37の内側端縁部(図6の右側端部)には、発電要素本体10Cの外側傾斜面14Bに沿って傾く第二押え面(押え面)38が形成されている。第二押え面38の端縁部38A,38Bには、丸みが付けられている(図6参照)。詳しくは、第二押え面38の外側の端縁部38Aは、発電要素本体10C側に尖っていないR形状に丸められて第二押え部37の外側面に連なっている。また、第二押え面38の内側の端縁部38Bは、外側の端縁部38Aよりも緩い弧状をなして第二押え部37の内側面に連なっている。
【0037】
また、第二押え部37は、発電要素10側に配される端部(先端部)の前後方向の厚さ寸法(発電要素本体10Cの側面に沿う方向の幅寸法)が、発電要素本体10Cとは反対側に配される端部(根元側の部分)の厚さ寸法よりも大きくされている。第二押え部37の根元側の部分は、脚部26に対向する内側の面が、先端部よりも凹んだ形状とされている。
【0038】
第一押え部31および第二押え部37は、左右方向において、脚部26の幅寸法よりも大きい幅寸法(厚さ寸法)を有し、脚部26よりも発電要素本体10C側に突出している。また、第一押え部31および第二押え部37の前後方向の幅寸法は、第一押え面33および第二押え面38が、発電要素本体10Cの中心側傾斜面14Aおよび外側傾斜面14Bから所定間隔離れた位置に保持可能な寸法に設定されている。これにより、第一押え面33と中心側傾斜面14Aとの間、および第二押え面38と外側傾斜面14Bとの間に遊びが確保され、スペーサ30が不用意に発電要素本体10Cに接触して、正極集電箔12Aまたは負極集電箔12Bを損傷させる事態を防ぐことができる。
【0039】
スペーサ30は、左右方向において、脚部26と外装体20との間に配されて、集電体24A,24Bと外装体20とを絶縁する絶縁部32を有している。絶縁部32は、各脚部26の外周を覆う形状をなしている。絶縁部32は、第一押え部31に連なって脚部26の周囲を囲い、第一押え部31と絶縁部32とにより、脚部26が収容される収容部36が形成されている。収容部36は、発電要素本体10C側が開放された断面略U字状をなしている。なお、第二押え部37は、絶縁部32の一部を構成している。
【0040】
スペーサ30は、図5に示すように、発電要素本体10Cの側面に取り付けられた後、外装体20に収容される。スペーサ30が発電要素10とともに外装体20に収容された状態では、図6に示すように、スペーサ30と容器体21との間には、所定の隙間が空いた状態になる。なお、スペーサ30の絶縁部32は、それぞれ容器体21の角部に配される。
【0041】
上記のように構成された本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態の単電池B1は、金属箔表面に活物質層が形成された正負の電極を有する発電要素10と、発電要素10を収容する外装体20と、発電要素10に接続された正負の集電体24A,24Bと、発電要素10のうち正負の集電体24A,24Bが接続された側の側面に取り付けられるスペーサ30と、を備え、スペーサ30は、集電体24A,24Bと発電要素10との並び方向に厚みを持った第一押え部31および第二押え部37を有し、この第一押え部31または第二押え部37が発電要素本体10Cの側面に当接することで、発電要素本体10Cの集電体24A,24Bに対する並び方向の相対変位が規制されるものである。
【0042】
ここで、単電池B1が、強い振動や衝撃を受けた場合には、比較的重量の大きい発電要素本体10Cが、外装体20内において変位しようとする。すると、発電要素本体10Cはスペーサ30の第一押え部31および第二押え部37に当接し、スペーサ30は発電要素本体10Cに押されて外装体20に当接する。これにより、第一押え部31および第二押え部37が発電要素本体10Cの変位方向に支えた状態になり、発電要素本体10Cは、脚部26側への変位が規制される。したがって、単電池B1が強い振動や衝撃を受けた場合であっても、各集電体24A,24Bが発電要素本体10Cに突き刺さったり、集電体24A,24Bが変形して正負の集電箔12A,12Bに亀裂が生じる等の事態を防ぐことができるから、高い耐振動性および耐衝撃性を実現することができる。
【0043】
また、スペーサ30の第一押え部31および第二押え部37は、発電要素本体10Cの側面の傾斜に沿って傾く第一押え面33および第二押え面38を有している。これにより、スペーサ30の第一押え部31および第二押え部37は、発電要素本体10Cの側面に対して面接触するから、スペーサ30が発電要素本体10Cに突き刺さることを、より確実に防ぐことができる。
【0044】
また、スペーサ30は合成樹脂製である。これにより、例えばスペーサが金属製である場合に比して軽量化を図りやすく、また弾力性を持たせやすいので、スペーサ30によって振動および衝撃を弾性的に吸収することができ、もって、より高い耐振動性および耐衝撃性を実現することができる。
【0045】
また、スペーサ30は、各集電体24A,24Bと外装体20との間に配される絶縁部32を有しているから、集電体24A,24Bと外装体20とを確実に絶縁することができる。
【0046】
また、集電体24A,24Bの脚部26の間に第一押え部31が挿入され、脚部26の外側に第二押え部37が配されているから、単電池B1が強い振動や衝撃を受けた場合であっても、脚部26が内側および外側に寄ることを防止することができる。
【0047】
また、発電要素10は、巻芯11を中心にして正負の電極を巻回したものであり、第一押え部31のうち巻芯11に対応する位置には、巻芯11の逃げ部34が設けられている。これにより、スペーサ30に巻芯11が突き当たることを回避することができる。
【0048】
また、第二押え部37は、先端部の厚さ寸法が、根元側の部分の厚さ寸法より大きいものとされている。これにより、第二押え部37を、発電要素本体10Cにより突き刺さりにくくすることができる。
【0049】
また、第一押え部31および第二押え部37は、発電要素本体10Cの側面から離れた位置に保持される。これにより、スペーサ30が不用意に発電要素本体10Cに接触して、発電要素本体10Cを損傷させる事態を防ぐことができる。
【0050】
また、第一押え部31および第二押え部37は、発電要素本体10Cの側面の傾斜に沿う第一押え面33および第二押え面38を有し、第一押え面33の端縁部、および第二押え面38の端縁部38A,38Bには、丸みが付けられている。これにより、スペーサ30が発電要素本体10Cに突き刺さることを、より確実に防ぐことができる。
【0051】
<実施形態2>
図7から図9は実施形態2を示す。上記実施形態1との相違は、スペーサの構成にあり、その他の点は上記実施形態1と同様である。従って、実施形態1と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。また、各図において、符号Uの方向を単電池B2の上側、符号Fの方向を単電池B2の前側、符号Rの方向を単電池B2の右側として説明する。
【0052】
本実施形態の単電池B2は、一対のサイドスペーサ50,50およびボトムスペーサ60を備える。一対のサイドスペーサ50は、上述したスペーサ30と同様、発電要素10の正極部分10Aおよび負極部分10Bそれぞれに取り付けられる。各サイドスペーサ50は合成樹脂製であり、例えば薄い板部材に曲げ加工や押し出し成形等により形成されたものである。一対のサイドスペーサ50は、互いに同一形状であるため、以下、右側のサイドスペーサ50(50B)を例に挙げて説明する。
【0053】
図7に示すように、サイドスペーサ50Bは、ベース部51Bおよび一対の第二押え部52B,52Bを有する。ベース部51Bは、全体として、上下方向に延びた平板状をなし、その上下方向の寸法は、容器体21の内壁面の高さ寸法と略同等である。これにより、容器体21内において、サイドスペーサ50Bが上下にがたつくことを抑制することができる。また、ベース部51Bには、左側に突出した凸部53Bが形成されている。この凸部53Bは、上下方向から見た断面形状が、上記スペーサ30の第一押え部31および逃げ部34と略同一である(図6参照)。
【0054】
上記凸部53Bの上端部分54Bは、前後方向から見た場合、右上方向に傾斜した傾斜面を有し、左右方向から見た場合、上方に向かうに連れて先細りした形状をなす。上記凸部53Bの下端部分55Bは、前後方向から見た場合、右下方向に傾斜した傾斜面を有し、左右方向から見た場合、下方に向かうに連れて先細りした形状をなす。これにより、凸部53Bの上下端部が角張った構成に比べて、発電要素本体10Cを傷つけることを抑制することができる。なお、凸部53Bからベース部51Bの上端までの部分、および、凸部53Bからベース部51Bの下端までの部分は、いずれも略同一の厚さの平坦部になっている。これにより、凸部53Bは、上下方向において負極部分10Bの中央部分に配置されることになる。
【0055】
一対の第二押え部52B,52Bは、ベース部51Bの前後端部から左側に延びた形状をなす。各第二押え部52Bは、上下方向から見た断面形状が、上記スペーサ30の第二押え部37と略同等である(図6参照)。なお、各第二押え部52Bの上端は、ベース部51Bの上端まで延び、各第二押え部52Bの下端は、ベース部51Bの下端から所定距離だけ上の位置まで延びている。
【0056】
ボトムスペーサ60は、図8に示すように、容器体21内において、発電要素本体10Cの下側に配置され、発電要素本体10Cが容器体21の底面に直接衝突することを抑制する。ボトムスペーサ60は合成樹脂製であり、全体として、左右方向に延びた平板形状をなす。また、ボトムスペーサ60の上面には、発電要素本体10Cの下側形状に対応した断面形状をなす溝61が形成されている。具体的には、図9に示すように、溝61は、左右方向から見て断面形状が円弧状をなし、また、ボトムスペーサ60の全長に亘って延びている。
【0057】
また、ボトムスペーサ60は、前後の縁部分62,62が中央部分よりも肉厚になっている。これにより、ボトムスペーサ60が折れ曲がることを抑制することができる。なお、図8に示すように、ボトムスペーサ60は、絶縁シート63上に配置されつつ、容器体21の底面に配置される。この絶縁シート63は、容器体21に収容された状態で、発電要素10の前後面を覆う。
【0058】
<実施形態3>
図10は実施形態3を示す。上記実施形態2との相違は、スペーサの構成にあり、その他の点は上記実施形態2と同様である。従って、実施形態2と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。また、図10において、符号Uの方向を単電池B3の上側、符号Fの方向を単電池B3の前側、符号Rの方向を単電池B3の右側として説明する。
【0059】
本実施形態の単電池B2は、一対のサイドスペーサ70,70を備える。一対のサイドスペーサ70は、上述したスペーサ30と同様、発電要素10の正極部分10Aおよび負極部分10Bそれぞれに取り付けられる。各サイドスペーサ70は合成樹脂製であり、例えば薄い板部材に曲げ加工や押し出し成形等により形成されたものである。一対のサイドスペーサ70は、互いに同一形状であるため、以下、右側のサイドスペーサ70(70B)を例に挙げて説明する。
【0060】
図10に示すように、サイドスペーサ70Bは、ベース部71B、一対の第二押え部72B,72B、および、ボトムスペーサ部80B(受け部の一例)を有する。ベース部71Bは、全体として、上下方向に延びた平板状をなし、その上下方向の寸法は、容器体21の内壁面の高さ寸法と略同等である。これにより、容器体21内において、サイドスペーサ70Bが上下にがたつくことを抑制することができる。また、ベース部71Bには、左側に突出した凸部73Bが形成されている。この凸部73Bは、上下方向から見た断面形状が、上記スペーサ30の第一押え部31および逃げ部34と略同一である(図6参照)。なお、凸部73Bは、上下方向において、ベース部71Bの略中央位置に形成されており、また、前述のスペーサ宇50Bの凸部53Bに比べて、上下方向の寸法が短い。
【0061】
上記凸部73Bの上端部分74Bは、前後方向から見た場合、右上方向に傾斜した傾斜面を有し、左右方向から見た場合、上方に向かうに連れて先細りした形状をなす。上記凸部73Bの下端部分75Bは、前後方向から見た場合、右下方向に傾斜した傾斜面を有し、左右方向から見た場合、下方に向かうに連れて先細りした形状をなす。これにより、凸部73Bの上下端部が角張った構成に比べて、発電要素本体10Cを傷つけることを抑制することができる。
【0062】
一対の第二押え部72B,72Bは、ベース部51Bの前後端部から左側に延びた形状をなす。各第二押え部72Bは、上下方向から見た断面形状が、上記スペーサ30の第二押え部37と略同等である(図6参照)。なお、各第二押え部72Bの上端は、ベース部51Bの上端から下端まで延びている。
【0063】
ボトムスペーサ部80Bは、ベース部51Bの下端側から左側に延びた平板状をなす。具体的には、ボトムスペーサ部80Bの上面には、発電要素本体10Cの下側形状に対応した断面形状をなす溝81Bが形成されている。具体的には、溝81Bは、左右方向から見て断面形状が円弧状をなす。ボトムスペーサ部80B上には、予め絶縁シート90が巻かれた発電要素本体10Cの右端部分が配置される。これにより、上記実施形態2のようなボトムスペーサ60を別途設けることなく、発電要素本体10Cが容器体21の底面に直接衝突することを抑制することができる。
【0064】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、電気化学装置の一例として非水電解質二次電池を示したが、これに限らず、電気化学装置は、例えば、リチウムイオンキャパシタのような電気化学現象を伴うキャパシタであってもよい。
(2)上記実施形態では、単電池B1〜B3の発電要素10は、セパレータを挟んで重ね合わせられた正極板と負極板とが巻回されて扁平形状に形成されたものとされているが、これに限らず、例えば、発電要素は、セパレータを挟んで重ね合わせられた正極板と負極板とが巻回されて円筒形状等の他の形状に形成されたものであってもよく、また、正極板と負極板とが巻回されずに積層されてなる積層型のものであってもよい。
(3)上記実施形態では、本発明を、一の発電要素10を備えた単電池B1〜B3に適用した例を説明したが、これに限らず、本発明は、二以上の発電要素を備えた単電池にも適用することができ、その場合には、例えばスペーサを、各発電要素毎に個別に取り付けるものとしてもよく、また複数の発電要素の側面に跨って、一のスペーサを一括して取り付けるものとしてもよい。
(4)上記実施形態では、発電要素10およびスペーサ30,50,70が外装体20に収容された状態では、スペーサ30等と容器体21との間には、隙間が空くものとされているが、これに限らず、スペーサにより、容器体と発電要素との間の隙間をほぼ無くすように埋めるものとしてもよい。
(5)上記実施形態では、スペーサ30,50,70は、発電要素本体10Cの側面の傾斜に沿って傾く第一押え面33および第二押え面38等を有しているが、必ずしも発電要素本体10Cの側面のすべての傾斜に対応してこのような押え面を設けなくてもよく、例えば突条など、発電要素本体10Cと線接触可能な構成でもよい。また、例えば、発電要素本体10Cの変位を規制する際に、比較的強い当接が予測される部分のみに、押え面を設けるものとしてもよい。更に、第一押え面33および第二押え面38等は、発電要素本体10Cの側面に平行である必要はなく、当該側面側に向いていれば、振動等が発生した場合に、第一押え面33等を、発電要素本体10Cの側面に面接触させることができる。更に、発電要素本体10Cの端部(側部)は、平面である必要はなく、例えば突条など、各押え面33等と線接触可能な構成でもよい。
(6)上記実施形態では、第一押え面33および第二押え面38が、発電要素本体10Cから所定間隔離れた位置に保持される設定とされているが、これに限らず、第一押え面および第二押え面が、正極集電箔または負極集電箔を損傷させない程度の強さで発電要素本体10Cに接触するように設定してもよい。
(7)上記実施形態では、スペーサ30,50,70は、薄い板部材を屈曲したような形状に形成されているが、これに限らず、例えば、スペーサのうち第一押え部を、発電要素本体10Cの側面に形成された凹みを埋めるようなブロック形状に形成してもよい。
(8)上記実施形態では、単電池B1〜B3が、強い振動や衝撃を受けた場合には、スペーサ30,50,70が発電要素本体10Cに押されて外装体20に当接することで、第一押え部31または第二押え部37が発電要素本体10Cの変位方向に支えた状態になるが、これに限らず、例えばスペーサに、脚部を弾性的に挟持する係止手段を設け、発電要素本体10Cに押されたスペーサが発電要素本体10Cに係止して止まることで、第一押え部または第二押え部が発電要素本体10Cの変位方向に支えた状態になるものとしてもよい。
(9)上記実施形態では、第一押え部31および第二押え部37は、脚部26の幅寸法よりも大きい幅寸法(厚さ寸法)を有するものとされているが、これに限らず、第一押え部および第二押え部の寸法は、発電要素本体10Cの変位量を小さく抑えて内部短絡を防ぐことが可能であれば、脚部の幅寸法よりも小さい幅寸法を有するものとしてもよい。
(10)上記実施形態では、スペーサ30,50,70は、第一押え部31および一対の第二押え部37等を一体に有するものとされているが、これに限らず、例えばスペーサは、第一押え部と第二押え部とがそれぞれ別体に形成されたものであってもよく、また、例えばスペーサは、逃げ部の位置で二分割されたものであって、第一押え部と第二押え部とを一ずつ有するものであってもよい。第一押え部と第二押え部とどちらか片方だけでもよい。
(11)上記第一押え部31および第二押え部37等は、集電体24A,24Bよりも発電要素本体10側に突出していない構成でもよい。このような構成でも、押え部を有しない従来の構成に比べて、集電体が発電要素本体10Cに突き刺さる等の事態を抑制することができる。
【符号の説明】
【0065】
B1〜B3…単電池(電気化学装置) 10…発電要素 11…巻芯 20…外装体 23A,23B…電極端子 24A,24B…集電体 25…本体部 26…脚部 30,50,70…スペーサ(変位規制部材、絶縁部材) 31…第一押え部(押え部) 32…絶縁部 33…第一押え面(押え面) 34…逃げ部 37…第二押え部(押え部) 38…第二押え面(押え面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔表面に活物質層が形成された電極を有する発電要素であって、発電要素本体、および、当該発電要素本体の端部に設けられた電極部分を有する前記発電要素と、
前記発電要素を収容する外装体と、
前記発電要素の前記電極部分に接続された集電体と、
前記発電要素本体の前記端部と、当該端部に対向する前記外装体の内側面との間に配置された押え部を有する変位規制部材と、を備える、電気化学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学装置であって、
前記変位規制部材の前記押え部は、前記集電体よりも、前記発電要素本体側に突出する位置に配置されている、電気化学装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気化学装置であって、
前記変位規制部材の前記押え部は、前記発電要素本体の前記端部と前記外装体の内側面との対向方向に直交する方向において前記集電体と並んで配置され、且つ、前記変位規制部材の前記押え部は、前記対向方向における寸法が、前記集電体よりも大きい、電気化学装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電気化学装置であって、
前記変位規制部材の前記押え部は、前記集電体とは離間して配置されている、電気化学装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電気化学装置であって、
前記変位規制部材の前記押え部は、前記発電要素本体の前記端部側に向けられた押え面を有する、電気化学装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の電気化学装置であって、
前記変位規制部材は、合成樹脂製である、電気化学装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電気化学装置であって、
前記変位規制部材は、前記集電体と前記外装体との間に配される絶縁部を有する、電気化学装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の電気化学装置であって、
前記発電要素は、巻芯を中心にして前記電極を巻回したものであり、
前記押え部のうち前記巻芯に対応する位置には、前記巻芯の逃げ部が設けられている、電気化学装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の電気化学装置であって、
前記集電体は、電極端子側に接続される本体部と、前記発電要素の前記電極部分に接続される複数の脚部とを備え、
前記押え部は、前記脚部の間に挿入される第一押え部と、前記脚部の外側に配される第二押え部とを有する、電気化学装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気化学装置であって、
前記第二押え部の先端側は根本側よりも断面視において厚みが大きい、電気化学装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の電気化学装置であって、
前記押え部は、前記発電要素本体の前記端部から離れた位置に保持される、電気化学装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の電気化学装置であって、
前記変位規制部材は合成樹脂製であって、前記集電体と前記外装体との間に配される絶縁部を有し、
前記絶縁部は、前記集電体に接触している電気化学装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の電気化学装置であって、
前記変位規制部材の前記押え部は、前記発電要素本体の前記端部側に向けられる押え面を有し、
前記押え面の端縁部には、丸みが付けられている、電気化学装置。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載の電気化学装置であって、
前記変位規制部材は、外装体内の底部に当接して配置されている、電気化学装置。
【請求項15】
請求項1ないし請求項14のいずれか一項に記載の電気化学装置であって、
前記変位規制部材の下端には、前記発電要素本体の下側部分が載置される受け部が設けられている、電気化学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−93314(P2013−93314A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−208022(P2012−208022)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】