説明

電気又は磁気流動学的な効果を誘起することによって生物学的な材料を含有する液体の流動を制御するための方法

本発明は、生物学的な材料又は生体分子を含む溶液又は液体の流動を制御する又は操作するための方法を提供する。従って、溶液又は液体に流動学的な性質を提供するために、粒子が、溶液又は液体へ加えられる。粒子を含む溶液又は液体は、マイクロチャネルに提供され、且つ、マイクロチャネルへ電場及び/又は磁場を印加することによって、液体又は溶液の流動を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例.ラボ・オン・チップデバイス又はバイオセンサーのような、マイクロ流体のデバイスのマイクロチャネルにおいて、例.身体の流体のような、生物学的な材料又は生体分子を含む液体の流動を制御する又は操作する方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
‘ラボ・オン・チップデバイス’は、マイクロチップともまた呼ばれた、マイクロスケールのチップにおける統合されたマイクロ流体の系である。このようなデバイスについての有用な参考文献は、“Microsystem Engineering of Lab−on−a−Chip Devices,Geschke et al.,Wiley,2004”(非特許文献1)である。マイクロチップは、ガラス、ポリマー、又はケイ素で作られることもあり、且つ、チャネル、混合機、貯蔵所、拡散室、統合された電極、ポンプ、バルブ、などを含むこともある。ラボ・オン・チップの系は、非常に小さい、例.ナノリットルの、容積における生化学的な又は生物学的な反応の急速な分析を達成するための様々な読み出しの様式と共に、例えば、混合すること及び/又は分離のような、数多くの流体の動作を統合する。ラボ・オン・チップの技術において、化学的な合成及び/又は分析は、カートリッジに統合された微視的なチャネルにおいて実行される。このような系の主要な利点は、劇的に低減された量の試薬の容積、マイクロチャネルにおける短い拡散の長さのおかげの高い反応速度、電子的な及び/又は光学的なセンサーの統合、及び、非常に低いコストの使い捨てのデバイスを作る可能性であり、その利点は、生物学的な系について特に興味深いものである。
【0003】
反応を実行することは、混合する、濾過する、抽出の、温置の、及び/又は、感知する目的のために、液体の流動を操作することを要求する。一般には、液体の経路指定は、チャネル、ポンプ、及びバルブの組み合わせによって、なされる。しかしながら、低いコストの使い捨てのデバイスについては、低いコストの技術で基本的な機能の実施を有することは、重要である。ポンピングを、圧力と同様の外力によって、毛管力によって、又は、電気的な力と同様の力場、重力、などによって、することができる。バルブいついては、能動的な又は受動的なバルブを使用することができる。移動する部分を含む能動的なバルブ(MEMS)は、信頼性を作ることが困難であり、且つ、信頼性を欠く。界面張力に基づいた受動的なバルブは、非常に魅力的であるが、流動の前方でのみ機能し且つ連続的な流動においてはもはや機能しない。使い捨てのカートリッジの技術において統合することができる単純な能動的なバルブの欠如がある。
【0004】
電気又は磁気流動学的な(ER又はMR)流体は、洗練された材料であり、それら材料の流動学的な性質(粘度、降伏応力、剪断弾性率、など)を、外部の電場又は磁場を使用することで、容易に制御することができる。ER又はMR流体は、電場又は磁場の援助と共に、ミリ秒内で液体様の材料から固体様の材料まで切り替わることができる。この現象は、ER又はMR効果と呼ばれる。ER又はMRの効果の特有の特徴は、ER又はMRの流体が、液体の状態から固体の状態へと逆に且つ連続的に変化することである。
【0005】
電気流動学的な流体(ERF)の性質を、電気的に制御することができる。ERFのこれらの電気的に制御された流動学的な性質を、減衰すること又は抵抗性の力の発生を要求する広い範囲の技術で使用することができる。このような用途の例は、能動的な振動の抑制及び運動の制御であることもある。数個の商業的な用途が、例えば、ERF系のエンジンのマウント、ショックアブソーバー、クラッチ、及び席の制動器のような、大部分は自動車産業において探求されてきた。他の用途は、可変抵抗の運動器具、耐震の背の高い構造、及び、位置決めすることを含む。
【0006】
このような磁気流動学的な(MR)及び電気流動学的な(ER)の液体のほとんど全ての用途において、ER又はMRの液体の粘度における増加を引き起こすためには、それぞれ磁場及び電場の印加が、使用される。この効果は、ポンプ及びアクチュエーターにおいて、並びに、ブレーキにおいて、使用されることもある。
【0007】
ER又はMRの効果の機構は、様々な総説の記事において徹底的に議論される。正のER又はMRの効果についての一般に受理された概念は、粒子が、原繊維からなる鎖を形成することであり、それら鎖は、流動学的なパラメーターの突然の増加に寄与する。
【0008】
大部分のER又はMRの流体は、液体に分散させられた粒子で作られる。図2は、ER又はMRの流体を含むチャネル8を図示する。符号9は、ER又はMRの流体に存在する粒子を図示する。図3は、電場又は磁場、例えば、電極10の手段によってER又はMRの流体へ印加された電場の存在下で、ER又はMR流体の粒子9が、誘起された双極子モーメントのおかげで、印加された場の場線に沿って鎖をどのように形成するかを図示する。その構造は、ER又はMRの流体の粘度、降伏応力、及び他の性質に対する変化を誘起すし、ミリ秒の程度での電場又は磁場における変化に対する応答時間で、ER又はMRの流体が、稠度を、液体のものから粘弾性的である何かへ変化させることを可能にする。
【0009】
ER又はMRの流体の分散させられた相は、セラミック、有機物、又はポリマーであることもある粒子と共に、(懸濁液を形成する)固体又は(乳濁液を形成する)液体のいずれかであることができる。粒子の大きさ及び形状は、ER又はMRの効果に影響力を有する。ER又はMRの効果における粒子の大きさの影響は、かなり多様である。0.1μmから100μmまでの大きさの粒子が、ER又はMRの流体の調製において、通常、使用される。ブラウン運動が、粒子の原繊維形成と競争する傾向があると、粒子が、小さすぎであるとすれば、ER又はMRの効果は、弱いものであることが期待される。粒子が原繊維形成の橋渡しを形成することを沈降が予防すると思われると、非常に大きい粒子は、弱いERの効果を表示することが、また期待される。不均質の系の誘電体の性質が、主として、分散させられた粒子の幾何学的配置に依存することは、周知である。ERの効果が、外部の電場によって誘起されるので、懸濁液の誘電体の性質は、分散させられた粒子の幾何学的配置がするように、ERの効果において顕著な役割を果たすことが、信じられる。楕円体の粒子が、より大きい電場で誘起されたモーメントのおかげで、粒子の鎖の形成を強くすると、楕円体の粒子は、球体の粒子よりも強いERの効果を与えることが、期待される。実験の結果は、動的弾性率が、粒子の幾何学的なアスペクト比(長さ対直径)に対してほとんど線形に増加することを示す。楕円体/球体のブレンドの系は、一成分系よりも大いに強いER又はMRの効果を示す。
【0010】
独国特許出願公開第19613024号明細書(特許文献1)は、例えば食品加工する際の、流体の流動を制御するための不連続な流動の制御器を提供する。加工する流体は、図1に図示されたように、その粘度が電気的な、磁気的な、又は熱的な手段によって変動させられることもある加えられた対照の流体を含有する容器を通じて供給される。容器2は、その粘度が電場若しくは磁場によって又は温度の変化によって影響されることもある対照の流体1を含有する。気体5の形態における加工する流体は、例えば容器2の(図1におけるように)外側に又は内側に位置決めされた電極3へ印加された電場又は磁場の手段によって変動させられる、対照の流体1の粘度に依存する速度で容器2を通じて、(図1においてそれぞれ矢印6、7によって指し示された)入り口及び出口の流動を通じて、通過させられる。制御ユニット4は、電極3の間における容器2内の電場又は磁場を調節する。
【0011】
独国特許出願公開第19613024号明細書において、電気又は磁気流動学的な流体であることもある、対照の流体1の粘度の性質は、加工する流体5の通した流動を制御するために、使用され、且つ、このように、対照の流体は、不連続なバルブの要素として作用する。このようなバルブにおいて、電気又は磁気流動学的な流体は、静止したものであり、且つ、加工する流体の流動を、粘度の変化のおかげで、制御することができる。
【0012】
さらには、独国特許出願公開第19613024号明細書は、ER又はMRの液体が、バルブとして作用すると共に気体の流動を制御するために、デバイスに置かれる方法を提供する。しかしながら、マイクロ流体のカートリッジにおけるこのようなデバイスの適用及び統合は、むしろ困難である。克服するための問題の一つは、マイクロ流体のチャネルにおけるこのような不連続な要素の一つ以上の位置決めである。これは、困難な且つ高価なものである。それは、圧電性の、電磁気的なバルブのような、いずれの他のバルブを含むものと同じ困難性を有する。別の問題は、気体以外の流体の流動を制御するためのこのようなバルブの適用可能性と関連させられる。輸送されることを必要とする流体は、電気流動学的な流体内で分散されることを必要とする。電気流動学的な流体において、身体の流体のような、液体を分散させることが、簡単ではないのに対して、気体の場合には、これは、困難ではない。
【0013】
このように、微視的なスケールでER又はMRの液体に分散する身体の流体としての身体の流体が、それを安定に保つ一方で、非常に困難であると、独国特許出願公開第19613024号明細書に記載されたバルブを、マイクロ流体のデバイスのマイクロチャネルにおいて身体の流体のような液体の通した流動を制御するためのそのようなものとして、使用することができない。
【特許文献1】独国特許出願公開第19613024号明細書
【非特許文献1】Microsystem Engineering of Lab−on−a−Chip Devices,Geschke et al.,Wiley,2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、マイクロチャネルを通じた、例えば身体の流体のような、生物学的な材料を含む溶液又は液体の流動を制御するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、少なくとも一つのマイクロチャネルを含むマイクロ流体のデバイスのマイクロチャネルにおいて、生物学的な材料又は生体分子を含む、液体、例.溶液、特に水溶液、の流動を制御する又は操作するための方法を提供する。その方法は、
− 前記液体に流動学的な性質を提供するために液体へ粒子を加えること、
− マイクロチャネルに、例.その中に液体を導入することによって、液体を導入すること、及び
− 粒子を備えた液体へ電場及び/又は磁場を印加すること
:を含む。
【0016】
本発明の好適な実施形態において、生物学的な材料又は生体分子を含む液体は、例.血液、血漿、尿、間質液、又は他のもののような、身体の流体であることもある。
【0017】
本発明に従って、液体へ加えられる粒子は、生物学的な材料又は生体分子と生体適合性であることもある。粒子は、液体において電気又は磁気流動学的な効果を誘起する一方で、生物学的な材料又は生体分子に向かって高い抵抗性を示すこともある。
【0018】
本発明のある実施形態に従って、マイクロ流体のデバイスは、少なくとも二つのマイクロチャネルを含むこともある。電場又は磁場は、少なくとも二つのマイクロチャネルの間の接合点の近隣における位置で、液体へ印加されることもある。
【0019】
本発明に従った実施形態においては、粒子は、表面を有することもあり、且つ、その方法は、さらには、粒子を液体へ加える前に、粒子の表面を変更することを含むこともある。いくつかの実施形態においては、粒子の表面を変更することは、生物学的な材料又は生体分子に抵抗性のあるコーティングを粒子に提供することによって行われることもある。他の実施形態においては、表面を変更することは、表面へ分子を結び付けることによって行われることもある。分子の結び付けは、例えば、共有結合すること、水素結合すること、などのようないずれの適切な結び付けの方法を使用することでも、化学的に行われることもある。結び付けは、例えば、チオール、シランカルボキシル基によって、提供されることもある。結び付けは、例えば、ブロック共重合体を使用することで、物理的に行われることもある。
【0020】
本発明のさらなる実施形態においては、液体へ加えられる粒子は、電気流動学的な効果を誘起することもある。他の実施形態においては、液体へ加えられる粒子は、磁気流動学的な効果を誘起することもある。後者の例は、磁鉄鉱、マンガン・フェライト、バリウム・フェライト、鉄、コバルト、ニッケル、又は、窒化鉄のような、強磁性の材料を含む粒子であることもある。
【0021】
本発明の特定の実施形態においては、粒子は、非等長性の粒子であることもある。
【0022】
本発明に従った方法は、例えば、ラボ・オン・チップデバイスにおいて、又は、バイオセンサーデバイスにおいて、使用されることもある。
【0023】
本発明に従った方法は、例.分子的な診断、生物学的な試料の分析、又は、化学的な試料の分析において使用されることもある。
【0024】
本発明は、また、生物学的な材料又は生体分子を含む液体についての試験を実行するためのキットを提供し、キットは、
− 液体へ流動学的な性質を提供するための粒子で充填されることに適切な第一のレセプタクル、
− 生物学的な材料又は生体分子を含む液体用の入り口、
− 前記生物学的な材料又は生体分子を含む液体及び前記粒子が混合されることを可能にするための手段、並びに、
− マイクロ流体のデバイスを含み、マイクロ流体のデバイスは、少なくとも一つのマイクロチャネル及び磁場及び/又は電場を少なくとも一つのマイクロチャネルへ印加するための手段を含み、且つ、キットは、
− 使用の前における当該キットの汚染を予防するための衛生学的なシール
:を含む。
【0025】
キットは、さらには、マイクロ流体のデバイスの少なくとも一つのマイクロチャネルへ磁場及び/又は電場を印加するための前記手段を駆動するための電力源を含むこともある。洗浄溶液で充填されるための第二のレセプタクルが、提供されることもある。また、診断の結果を読み出すための手段が、例.顕微鏡の手段によって直接的に、又は、例.電子的な読み出しによって間接的に、提供されることもある。
【発明の効果】
【0026】
それが、液体における生物学的な材料又は生体分子が、加えられた粒子による妨害無しに検出されることを可能とすることは、本発明の利点である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明のこれらの及び他の特性、特徴、及び利点は、添付する図面と併せて考慮された、以下に続く詳細な説明から明らかになると思われ、それら図面は、一例として本発明の原理を図示する。この記載は、本発明の範囲を限定することなく、例の目的でのみ与えられる。以下に引用された参照図は、添付された図面を指す。
【0028】
異なる図において、同じ符号は、同じ又は類似の要素を指す。
【0029】
本発明を、特定の実施形態に関して、及び、ある一定の図面を参照して、記載することにするが、本発明は、それらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲におけるいずれの符号も、その範囲を限定するものとして解釈されないものとする。記載された図面は、単に概略的なものであり、且つ、非限定的なものである。図面においては、要素のいくつかの大きさは、図示の目的のために、誇張され、且つ、一定尺度で描かれないこともある。用語“を含む”が、本記載及び特許請求の範囲において使用される場合には、それは、他の要素又はステップを排除しない。単数の名詞を参照するとき不定又は定冠詞、例.“ある”又は“その”が使用される場合には、これは、他に何か具体的に述べない限り、複数のその名詞を含む。
【0030】
さらには、本記載における及び特許請求の範囲における用語、第一の、第二の、第三の、及び同様のものが、類似の要素の間で区別するために、且つ、手順の又は時間的な順序を必ずしも記載するものではなく、使用される。そのように使用された用語が、適当な事情の下で交換可能であること、及び、ここに記載された本発明の実施形態が、ここに記載された又は図示されたものの他の手順で動作の可能なものであることは、理解されることである。
【0031】
本発明は、これらの身体の流体における、例えば、抗体、核酸(例.DNR、RNA)、毒素、タンパク質、ペプチド類、オリゴ糖類若しくは多糖類又は糖質のような、ターゲットの分子の検出用の、例えば、ラボ・オン・チップ又はバイオセンサーのような、マイクロ流体のデバイスにおける微視的なチャネル又はマイクロチャネルにおいて分析される、血液、血漿、尿、間質液、又は他のもののような、身体の流体の流動学的な性質を向上させるための方法を提供する。
【0032】
例えば、マイクロ流体のデバイスのマイクロチャネルにおいて分析される身体の流体の流速は、流動学的な効果の手段によって制御されることもある。身体の流体におけるこの流動学的な効果は、対照の流体へというよりもむしろ、身体の流体それら自体へ電気流動学的な(ER)又は磁気流動学的な(MR)の粒子を加えることによって、本発明に従って達成されることもある。
【0033】
このように、本発明に従って、分析される生物学的な成分、例えば、例.血液、血漿、尿、間質液、又は他のもののような、身体の流体を含む流体が、提供される。分析されるで、少なくとも一つのターゲットの分子、又は、抗体、毒素、タンパク質、ペプチド類、脂質、膜、糖タンパク質;病原体、リンパの細胞、血液の細胞のような細胞のような、ターゲットの組成物の検出ことを意味する。さらなる記載において、生物学的な成分を含む流体を、身体の流体、特に、動物又は人間の身体の流体と称することにする。本発明が、これらに限定されずに、本発明が、また、生物学的な成分を含む他の流体に適用されることもあることは、理解される必要がある。これらに対して、身体の流体の試料、例えば、血液の試料は、例.人類又は動物から取得される。そして、第一のステップにおいて、ER又はMRの粒子が、加えられ、且つ、身体の流体の試料と混合される。ER又はMRの粒子についての正しい選択が、それらを身体の流体の試料へ加える前に、なされることを必要とする。従って、多数の条件が、好ましくは、考慮に入れられ、且つ、好ましくは、満足される必要がある。ER又はMRの粒子が、好ましくは、満たす必要がある条件を、以後に議論することにする。
【0034】
本発明は、このように、添加剤、即ち、ER及び/又はMRの粒子又はEMRの粒子の使用をなすが、その添加剤は、分析されることを必要とする液体の性質を、それの流動の性質を制御することができるか又はより良好に制御することができるように、変化させることができる。本発明に従って、これらの余分な成分、即ち、電気及び/又は磁気流動学的な粒子の追加は、生物学的な成分を含むと共に分析されることを必要とする流体、例えば、身体の流体、の流動の性質を制御することに役に立つ。
【0035】
考慮に入れる一つの因子は、身体の流体へ加えられるER又はMRの粒子の表面の性質である。生物学的な分子が、このようなER又はMRの粒子との接触にくるとき、それらは、例えば、流動学的な粒子の表面に吸着されることを得るかもしれない。これは、通常、流体における分析される生物学的な材料又は生体分子の減少させられた移動度に至るが、その移動度は、それらの正しい検出を妨害することもある。
【0036】
よって、身体の流体におけるER又はMRの効果を達成するために使用された添加剤は、好ましくは、流体に存在する生体分子との高い相互作用を示さない。好ましくは、添加剤は、身体の流体における少なくとも一つの生体分子に関してバイオ直交性のものである。このバイオ直交性は、ER又はMRの粒子の表面が、生体分子が、ER又はMRの粒子の表面へ吸着しないように、生体分子に対して高い抵抗性を有するべきであることを暗示する。適切な表面の処理を適用することによって、ER又はMRの粒子の表面への生体分子の吸着を、大幅に低減することができる。
【0037】
例えば、以下に続く構造的な特徴の一つ以上を備えたER又はMRの粒子の表面は、生体分子:に対して高い抵抗性を示す。
【0038】
*親水性の粒子
*全体的な電気的に中性である粒子
*水素結合の受容体を有するが、水素結合の供与体を有さない粒子
*ヒドロキシ、アルコキシ、アミン、アルキル置換されたアミン、カルボキシアミン、無水物のウレタン、及び尿素より選択された一つ以上の基を含む分子
が、適切である。
【0039】
添加剤は、生体適合性であることもある。生体適合性は、検出を妨げるか又は予防するかもしれない生体分子の機能的なドメインに影響を及ぼさない添加剤を指す。
【0040】
陰イオン及び陽イオンが、電荷の中性な系を形成する同じ分子へ結び付けられる、様々な塩は、また、生体分子に対して良好な抵抗性を示す適切な分子である。
【0041】
電荷の中性な塩の具体的な例は、図4に示される。
【0042】
本発明の実施形態において、ER又はMRの粒子の表面は、検出されるターゲットの分子の吸着を予防するためには、変更されることもある。本発明に従った一つの実施形態において、これは、例えば、ER又はMRの粒子の表面にコーティングを提供することによって、なされることもある。コーティングは、上に記載したように生体分子に対する高い抵抗性を示すための以下に続く構造的な特徴の一つ以上を有することもある。
【0043】
ER又はMRの粒子の表面の変更に使用されることもある分子の具体的な例は、エチレンオキシドのポリマー/オリゴマーであることもあり、それらは、有効に働く。本発明に従って使用されることもある分子の他のクラスは、アルコール類及び糖質のような、ヒドロキシ基を備えた分子であることもあるが、それらは、また、非常に適切なものであるように見える。
【0044】
具体的な例は、例えば、エチレングリコールのチオール、SH−(CHCHO)−CHであることもあるが、それは、バイオ抵抗性の分子として有効に働き、そのことは、生体分子が、この分子で変更された表面へ吸着しないことを意味する。同じようにして、ポリスチレン(例.分子量3000)及びポリレンオキシド(例.分子量1000)を含むブロック共重合体は、これらの粒子の表面が、述べたブロック共重合体で変更されるとき、ER又はMRの粒子の表面への生体分子の吸着を遮断する。
【0045】
さらには、チオールシランの末端基を備えた分子が、また、本発明に従ってER及びMRの粒子の表面を変更するために、使用されることもある。チオール基が、金及び銀のような様々な金属の表面と反応することが知られている一方で、シランは、MR又はERの粒子の表面におけるOH基と反応することができる。極性の及び無極性の部分を備えたブロック共重合体が、また、使用されることもある。ER又はMRの粒子は、このような共重合体でコートされることもあり、その共重合体を通じて、そのポリマーの無極性の部分は、ER又はMRの粒子の表面へ付着されることを得ると共に、極性の部分は、生体分子に対する高い抵抗性を示すコートされたER又はMRの粒子の外側の表面を形成することもある。
【0046】
例えば、ラボ・オン・チップデバイス又はバイオセンサーのような、マイクロ流体のデバイスにおける微視的なチャネル又はマイクロチャネルは、典型的には、数十マイクロメートルと一ミリメートルとの間の程度での幅及び高さを有することもあり、且つ、数ミリメートルの長さを有することもある。流体は、0.1から1mm/sまでの程度の速度でのマイクロチャネルを通じて流動する。マイクロチャネルの大きさに依存して、ER又はMRの粒子の大きさは、0.1と100μmとの間の範囲にあるように、選択されることもある。無機の粒子が、高い密度で使用されるとき、沈降の問題を回避するためには、粒子の大きさは、最も好ましくは、0.1と1μmとの間にあることもある。誘起の粒子及び組成物が、使用されるとき、より大きい粒子が、また使用されることもあるように、密度差は、大幅に、より小さいものであることもある。その場合には、好適な粒子の大木債は、1と10μmとの間にあることもある。
【0047】
さらには、使用されたER又はMRの粒子は、好ましくは、それらが、例.身体の流体のような、分析される流体に存在する生物学的な分子の、移動度のような、特性を変えないようなものであることができる。身体の流体において検出される生体材料の濃度としては、非常に小さいかもしれず、典型的には1μlと1mlとの間の範囲における、少量のみの身体の流体が、入手可能であるかもしれないので、検出されるものである生体分子の内部の移動度は、ER又はMRの粒子を加えることによって、かなりの程度まで低減されるものではない。加えられたER又はMRの粒子が、検出される生体分子の移動度を減少させるか又は例えば吸着によって完全に生体分子を不動にするとすれば、そのとき流体に存在する生体分子を、正しく検出することができない。従って、ER又はMRの粒子は、好ましくは、検出されるターゲットの分子がER又はMRの粒子の表面に吸着しないようなものであるが、これは、減少した量の検出されたターゲットの分子を、及び、よって、実行されてきた試験の正しくない結果を、生じさせるであろう。吸着は、また、凝集に至り得ると共に、粒子及び分子は、溶液の外に積もるか又は綿状になる。これは、身体の流体が、マイクロチャネルを通じて流動することに問題を引き起こすこともあり、且つ、最悪の場合には、これは、マイクロチャネルの内側に封鎖を引き起こすこともある。
【0048】
生じ得る別の問題は、ER又はMRの粒子の沈降である。ER又はMRの粒子は、好ましくは、それらの沈降を予防するように、選ばれる。ER又はMRの粒子が、マイクロチャネルの内側に沈殿するとすれば、それらは、例.マイクロ流体のデバイス、例.ラボ・オン・チップデバイス又はバイオセンサーに存在するセンサーの位置で、検出されるターゲットの分子と干渉し得るであろう。重ねて、加えられた粒子の表面は、生体分子と生体適合性及び/又はバイオ直交性であるべきである。粒子の表面のこの生体適合性又はバイオ直交性は、粒子の沈降の問題を減少させるという正の影響を有することもあり、よって、それらを液体において移動性のものに保つ。
【0049】
さらには、また、身体の流体の試料に加えられるER又はMRの粒子の濃度は、重要なものであり得る。ER又はMRの粒子の濃度又は密度は、そうでなければ高すぎる圧力がマイクロチャネルに生じることもあるため、高すぎるものではない。これは、流体の流動が毛管力によって駆動される系において最も重大である。例えば、水系の溶液の毛管力は、例.50ミリバールの程度の圧力の降下を与えることもある。これは、50μmの高さ及び1mの長さを備えたチャネルを通じて1mm/sの速度で水を輸送するために十分であることもある。水系の溶液の粘度を変化させることによって、速度は、逆比例して変化することになる。本発明に従って、粘度の変化は、受容されたような生物学的な流体に関して、100倍未満であることもあり、且つ、好ましくは、10倍未満であることもある。
【0050】
その文献には、様々なER又はMRの粒子が、記載されている。本発明に従った方法において、低いイオン伝導性を備えた系において適用可能である適切なERの粒子が、選択される。MRの場合には、導電性の種、例.水の存在は、問題ではない。本発明のある態様に一致して、材料の表面を、生体分子に対して抵抗性にするためには、注意がなされる。
【0051】
以後には、生物学的な材料を含む流体においてER及びMRの効果を誘起するために本発明に従って使用されることもある、二つのクラスの材料が、本発明がこれらの二つに限定されないとはいえ、例として記載される。
【0052】
第一のクラスの材料を、EM効果を導入するためのものと同様に、ERを導入するために良好に使用することができる。このクラスの材料は、非等長性の粒子と呼ばれる。高いアスペクト比を備えた非等長性の粒子は、電気流動学的な効果を示す。それらは、ロッド様の、ディスク様のものであるか、又はいずれの他の適切な、もしかするとランダムな、形状をも有することもある。しかしながら、それらは、好ましくは、5−100の範囲におけるアスペクト比を有する。電場が無い場合(図5を参照のこと)には、水平のストライプ30によって指示された、粒子の長軸は、図5において矢印32によって指示される、マイクロチャネル31における身体の流体の流動の方向に整列させられる。二つの電極33の間における電場の適用の際に、電場は、図6における矢印34によって指し示された、及び、図示された例において身体の流体の流動の方向に対して実質的に垂直である、方向を有するが、非等長性の粒子が、電場の線の、即ち、図示された例において流動の方向に垂直な方向に、図6における垂直なストライプ30によって指し示される、それらの長軸を整列させると、矢印32の方向における流動は、停止させられる。
【0053】
非等長性の粒子を、良好な形状の制御無しで、且つ、大きい分布の大きさを備えて、様々な方法に従って、生産することができる。一つの方法は、薄い層の剥離及び小さい粒子の大きさまで薄い層を“粉砕すること”が後に続く、剥離コーティングでカバーされた基板の上部における、粒子が形成されるべきである材料の薄い層の蒸発に基づく。他の方法は、例えば、マイカ、のような、天然に生ずる鉱物の使用を含み、それら鉱物を、また粉砕することができる。ケイ素及びアルミニウムの粒子は、液体中で生産されることもある。上の材料は、ランダムな形状及び寸法を有する。また、特定の大きさ及び形状を有する粒子は、オフセットプリンティング、マイクロコンタクトプリンティング、及びインクジェットプリンティングのようなリソグラフィーの方法を使用することで、生産されることもある。これらの技術の全てにおいて、インクジェットプリンティングを除いては、パターニングされた表面又はインクが(例えば、スタンプの使用によって)パターン化された方式で転写されてある表面は、パターニングされる層を含む別の表面へインクを転写するために、使用される。インクは、インクのタイプに依存して、ポジティブ又はネガティブエッチレジストとして、使用されることもある。それが、ネガティブエッチレジストとして使用されるとすれば、パターニングされる層の材料を、インクによってカバーされないか又は変更されないそれらのエリアからエッチングすることによって、選択的に取り除くことができる。インクが、ポジティブエッチレジストとして使用されるとすれば、より高いエッチ抵抗性を提供するインクの第二の層が、(例.溶液からの自己集合を介した堆積によって、)表面のこれまで変更されないエリアのみに適用される。この場合には、その後のエッチングのステップにおいて、材料が、第一のインク(より低いエッチ抵抗性を備えたもの)で変更されてあるそれらのエリアから取り除かれる。表面に既に堆積させられたインクの局所的な(パターニングされた)化学的な変更を含む、他のインキング−エッチングのスキームもまた、可能である。
【0054】
ER効果を導入するために、非等長性の粒子が、例えば、ポリマー、セラミックのような誘電体の材料;金属の材料、又は半導体で形成されることもある。それは、また、複合の材料であることもあるか、又は、それは、層状の系であることもある。非等長性の粒子を使用することでMR効果を得るためには、粒子は、好ましくは、例えば、磁鉄鉱、マンガン・フェライト、バリウム・フェライト、鉄、コバルト、ニッケル、パーマロイ、窒化鉄のような、磁性の層又は磁性の粒子を含む。
【0055】
本発明に従って使用されることもある第二のクラスの材料は、非等長性であることを必要としないMR材料である。それらの大きさは、0.1と10μmとの間の範囲にあることもある。これらの材料は、印加された磁場に対して反応する。磁鉄鉱、マンガン・フェライト、バリウム・フェライト、鉄、コバルト、ニッケル、パーマロイ、窒化鉄のような、強磁性の粒子、又は、このような強磁性の材料でコートされた若しくはそれらと複合の材料を形成する粒子は、形状において非等長性であることを必要とする粒子無しに、MR効果を誘起し得る。強磁性の材料を含むか若しくは強磁性の材料でコートされた小さい粒子は、容易に入手可能であるか、又は、それらを、簡単に調製することができる。
【0056】
ラボ・オン・チップデバイス又はバイオセンサーのような、マイクロ流体のデバイスの手段によって身体の流体を分析するために、加えられたER又はMRの粒子を備えた身体の流体は、例えば、身体の流体を分析するための、ラボ・オン・チップデバイス又はバイオセンサーのような、マイクロ流体のデバイスへ適用される。本発明の実施形態に従ったマイクロ流体のデバイスの機能を、例によって、以後に説明することにする。しかしながら、この例は、単に、説明の簡単のためのものであり、且つ、本発明に対して限定するものではない。
【0057】
図7から10までは、特定の例に従ったマイクロ流体のデバイス20の機能を図示し、マイクロ流体のデバイス20は、本発明に従って、それに加えられたER又はMRの粒子を備えた身体の流体の試料を含む。マイクロ流体のデバイス20は、それぞれ、第一の及び第二の流体の区画又は貯蔵所21、22、測定の区画23、並びに、それぞれ、第一の及び第二の電極のセット24、25を含むこともある。最初に、図4に図示されるように、第一の及び第二の流体の区画又は貯蔵所21、22は、空気で充填されることもあり、且つ、乾燥状態で、即ち、溶液にはない、ER又はMRの粒子を含むこともある。そして、第一の流体の区画21は、身体の流体で充填されることもある。ER又はMRの粒子が、流体の区画21に存在するとすれば、そのとき、身体の流体は、ER又はMRの粒子と共に加えられ且つ混合されることもある。そうでなければ、ER又はMRの粒子は、それを第一の流体の区画21へ導入する前に、身体の流体へ加えられる。第二の流体の区画22は、洗浄溶液で、例えば、典型的には生物学的な分析に使用されることもあるリン酸塩の緩衝溶液で充填されることもある。流体は、即ち、ER又はMRの粒子を備えた身体の流体、及び、洗浄溶液は、それぞれ、毛管吸引の手段による適用の際に直接的に、マイクロチャネル26、27へ吸引される。
【0058】
電極のセット24、25の手段によって、マイクロチャネル26,27にわたって電場又は磁場を印加することによって、ER、MRの粒子が、それぞれ、身体の流体の試料に加えられてあるかどうかに依存して、流体の流動は、第一の及び第二の電極のセット24,25の位置で停止する。電場又は磁場は、オン・チップ又はオフ・チップの電場又は磁場を発生させる手段によって印加されることもある。満たされる一つの条件は、電場又は磁場を発生させる手段が、発生させられた電場又は磁場の少なくとも一つの部分が、マイクロチャネル26,27を横切って位置決めされるように、マイクロチャネル26,27に近接して位置決めされるべきであるというものである。好ましくは、電極は、電気分解を回避するためには、液体との直接的な接触をしてないものである。電極のセットは、好ましくは、チャネルの対向する側での二つのチャネルの壁の場所の間における最も小さい距離を表す方向におけるチャネルを横切った位置に置かれる。製造の理由のために、好ましくは、電極のセット24、25は、基板及び/又はカバープレートにおいて、例.裏側で、統合されることもある。好ましくは、電場又は磁場は、二つのマイクロチャネル26、27の間の接合点の位置で、マイクロチャネル26、27における液体へ印加される。そのようにして、電場又は磁場が、マイクロチャネル26、27に印加される瞬間に、流体の通した流動は、即座に停止させられる。マイクロ流体のデバイスにおける流体の経路指定は、マイクロ流体のデバイスのマイクロチャネルの壁(マイクロチャネルの内側又は外側)で又はその近くで、電場又は磁場を発生させる手段を適用することによって、行われることもある。図面に図示された、与えられた例において、ERの粒子が、身体の流体へ加えられ、且つ、電場が、オン・チップの電場を発生させる手段によって、即ち、電極のセット24、25の手段によって、印加されることもある。例えば、図8に図示されるように、電圧が、第一の電極のセット24にわたって、及び、第二の電極のセット25にわたって、与えられるとき、電場は、それぞれ、第一のマイクロチャネル26及び第二のマイクロチャネル27にわたって印加される。これを通じて、与えられた例においては、ERの粒子を備えた身体の流体の試料の流動及び洗浄溶液の流動の両方は、それぞれ、電極のセット24及び電極のセット25の位置でマイクロチャネル26、27に停止させられる。
【0059】
図9に図示される次のステップにおいて、第二の電極のセット25にわたる電圧が保たれる一方で、第一の電極のセット24にわたる電圧が、取り除かれるとき、洗浄溶液の流動が、なお、第二の電極25の位置で停止させられている一方で、測定の区画23を、身体の流体の試料で充填することができる。第一の電極のセット24にわたる電圧が、オフで留まる限り、身体の流体の試料は、測定の区画23を通じて流動し、且つ、特定のターゲットの分子(例.抗体、ペプチド類、脂質、…)の決定のような、試験を、身体の流体の試料へ行うことができる。
【0060】
試験がなされ且つより多くの身体の流体が測定の区画23において要求されないとき、第一の電極のセット24にわたる電圧は、再度、オンに切り替えられ、且つ、身体の流体の試料の流動は、電極のセット24の位置で停止させられる。その後、電極のセット25にわたる電圧が、オフにされる。今、洗浄溶液は、測定の区画23を通じて流動するが、そこでは、それは、クリーニングの機能を有することもある。これは、図10に図示される。それの後で、別の試験又は測定のステップを、入手可能な身体の流体の試料のさらなる部分について行うことができる。
【0061】
上述された方法は、手順の即座の制御されてない開始無しに、流体の従来の適用を可能にする。第一の電極のセット24にわたる、及び、第二の電極のセット25にわたる、電圧をオフに切り替えることによって、身体の流体の試料及び洗浄溶液は、それぞれ、望まれた手順で、例えば、代わりに、上の例で記載したように、測定の区画23において導入されることもある。流体の通した流動の時間は、電圧が電極のセット24及び/又は25に与えられる時間によって、決定されることもある。通した流動のこの時間を制御するための制御ユニットが、提供されることもある。
【0062】
このようにして築くことができる回路の複雑さに対する限定はないことが、考慮される。流体についての駆動力は、まだ空の容積がある限り、毛管の吸引であることができるか、又は、それは、入り口で流体に適用された圧力であることができる。流動の手順について、圧力は、精密に制御されることを必要とせず、それは、マイクロチャネル26、27が位置決めされるカートリッジと、制御すると共に測定を行う機器と、の間の界面をかなり単純にする。上の測定する方法が、単に例として述べられ、且つ、本発明について限定するものではないことは、留意される必要がある。ER粒子を加えると共に電場を印加する代わりに、身体の流体の通した流動は、それにMRの粒子を加えると共に次にマイクロチャネル26、27における溶液又は流体へ磁場を印加することによって、制御されることもある。
【0063】
さらには、マイクロ流体のデバイスは、二つよりも多くのマイクロチャネル26、27を含むこともあり、各々は、それらの入り口で流体の区画又は貯蔵所21、22を有し、そこでは、例えば、これらの流体の区画又は貯蔵所21、22の一方が、洗浄溶液を含むこともあり、且つ、他方の流体の区画又は貯蔵所21、22は、各々がER及び/又はMRの粒子を含む同じ又は異なる身体の流体の試料を含むこともある。異なる流体の区画又は貯蔵所21、22における身体の流体の試料のいずれかは、同じものを含むこともあるか、又は、好ましくは、異なるER又はMRの粒子を含むこともある。これを通じて、同時に異なる身体の流体の試料を試験することは、可能であり、それによって、測定の区画23が、洗浄溶液の手段によって、異なる試験の間に、クリーニングされることもある。
【0064】
本発明に従った他の実施形態において、電場のみならず磁場が、別個にか又は同時にかのいずれかで、マイクロチャネル26、27における溶液又は流体へ印加されることもある。相乗的な効果が、通常伴われ、且つ、観察された電磁気流動学的な(EMR)効果は、電場のみが印加されるとすれば、電気流動学的な(ER)効果、又は、磁場のみが印加されるとすれば、磁気流動学的な(MR)効果よりも強い。このために、電磁気流動学的な(EMR)材料が、分析される身体の流体の試料へ加えられるものである。
【0065】
このようなEMR材料の具体的な例において、薄いフィルムが、ポリマーの層の上部における、金、鉄、及び、金の継続的な蒸発によって、調製される。金/鉄/金の層の合計の厚さは、100nmであることもある。この具体的な例に従って、金/鉄/金の層は、そのとき、このポリマーの層を溶解させること、及び、その後、金/鉄/金の層を小さい断片、例えば、1から10μmの断片、例.5μmの断片に切り取ることによって、ポリマーの層からはぎ取られる。外側の金の表面は、反応性であり、且つ、それは、例.与えられた具体的な例においては、ポリエチレングリコールチオールを使用することによって、その後に変更させられる。これは、粒子の表面を、生体分子に対して極度に抵抗性にする。その後、粒子は、1mg/mLの液体へ、与えられた例において、モデルのタンパク質として、0.01MのPBS緩衝剤(pH〜7.3)における、Sigmaから得ることが可能な、BSA−FITC(アルブミン、フルオレセインのイソシアナート共役体、ウシの)であることもある標識付けされたタンパク質へ、混合させられる。粒子の濃度は、1%であることもある。MRの効果は、磁場を印加すると共に取り除くことによって、得られ、粒子の整列を、このように、変えることができるであろうし、このように、粒子が加えられる液体の流動の性質を変化させる。同じようにして、ERの効果を得るためには、電場を、試料を横切って印加することができる。
【0066】
本発明に従った他の実施形態において、測定の区画23は、流体を混合するために使用されることもある。例えば、身体の流体は、身体の流体における特定の試験を行うことができるためには、特定の試験する液体、例えば、DNAの抽出用の分析の緩衝剤又は液体において検出される生体分子へ付けられた標識を含有する液体、と混合されることが、要求されることもある。従って、本発明に従った方法を使用することで、電場又は磁場が、身体の流体を含むマイクロチャネル26へ印加されない一方で、最初に電場又は磁場が、特定の液体を含む第二のマイクロチャネル27へ印加されることもある。このようにして、身体の流体は、測定の区画23へ流動することもある。望まれた量の身体の流体が、測定の区画23にあるとき、第二のマイクロチャネル27にわたる電場又は磁場が、オフにされ、且つ、電場又は磁場が、第一のマイクロチャネル26にわたって印加され、その方式は、身体の流体の通した流動を停止させ、且つ、試験する液体の通した流動を開始する。そして、第一のマイクロチャネル26にわたる電場又は磁場が、オンに保たれる一方で、第二のマイクロチャネル27にわたる電場又磁場は、逆戻りにオンにされることもある。より多くの流体が、測定の区画23に入っていることはなく、且つ、今、身体の流体を、試験することが行われる前に、試験する液体と混合することができる。
【0067】
本発明は、さらには、生物学的な材料又は生体分子を含む流体について試験を行うためのキット又はカートリッジ40のようなデバイスを提供するが、キット40は、少なくとも一つのマイクロチャネル26、27及びマイクロチャネル26、27へ電場及び/又は磁場を印加するための手段を含む、マイクロ流体のデバイス20を含む。キット40は、図11に図示される。キット40は、レセプタクル41を含み、そのレセプタクルは、(上に指定したような)粒子、例.適切な流体における粒子で、充填されることに適切なものであり、且つ、そして、生物学的な材料又は生体分子を含む液体へ加えられる粒子の源として作用することもある。キットには、レセプタクル41にすでに粒子が供給されることもある。キット40は、さらには、例えば、身体の流体、例.血液のような、生物学的な材料又は生体分子を含む液体用の入り口42を含む。入り口は、分析物の液体が、毛管作用によってデバイスの中へ引かれるようなものであることもある。さらには、キット40は、生物学的な材料又は生体分子を含む液体と粒子が混合されることを可能にするための手段43を含み、且つ、その手段は、レセプタクル41と入り口42との間の接続を形成する。そして、粒子を含む液体は、液体が分析されるマイクロ流体のデバイス20に入ることもある。粒子を含むと共にマイクロ流体のデバイス20の少なくとも一つのマイクロチャネル26、27に存在する液体の流動は、この発明の方法に従って、制御されることもある。
【0068】
レセプタクル41、入り口42、生物学的な材料又は生体分子を含む液体と粒子が混合されることを可能にするための手段43、及び、マイクロ流体のデバイス20は、図11に図示されるように、使用の前におけるキット40の汚染を予防するために、衛生学的なシール44で密封される。
【0069】
キット40が、使用される準備が整う前に、(図11に示されない)粉末の源が、キット40へ接続される又は加えられることもある。粉末の源は、例えば、主電源又はバッテリーへ接続されることもあり、且つ、マイクロ流体のデバイス20のマイクロチャネル26、27へ電場及び/又は磁場を印加するための手段を駆動するために十分な電力を有するべきである。そして、衛生学的なシール44が、破壊されることもあり、且つ、分析物の液体が、入り口42へ適用される。そして、例えば、分析される必要がある液体、例えば、血液の一滴が、入り口42に提供されることもあり、且つ、例えば、(図に示されない)ボタンが、分析される液体と粒子を混合するための手段43に向かって、入り口42から液体の流動を開始するために、且つ、レセプタクル41から粒子の流動を開始するために、押されることもある。そして、液体−粒子のミックスは、分析されるマイクロ流体のデバイス20に入る。電力源は、マイクロチャネル26、27を通じた液体の流動を制御するためには、マイクロ流体のデバイス20のマイクロチャネル36、27へ電場及び/又は磁場を印加するための手段を駆動することもあり、且つ、そして、要求された分析が、実行されることもある。
【0070】
キット40は、さらには、実行されてある分析の(示されない)診断の結果を読み出すための手段を含むこともある。
【0071】
本発明に従ったいくつかの実施形態において、キット40は、洗浄溶液を含むこともある少なくとも一つのさらなるレセプタクルを含むこともある。マイクロチャネル26、27への電場及び/又は磁場の印加を制御することによって、分析される液体の流動及び洗浄溶液の流動は、キット40へ導入されてある同じ液体で一つより多くの試験を実行するためには、交互に制御されることもある。
【0072】
本発明の利点は、身体の流体におけるターゲットの分子を分析する及び/又は決定するために使用されるマイクロ流体のデバイスのより大きい空間及びより複雑な構造を要求するバルブの必要無しにマイクロチャネルにおける身体の流体の通した流動を制御するための方法を有することである。
【0073】
材料のみならず、好適な実施形態、具体的な構築及び構成が、本発明に従ったデバイスについて、ここで議論されてきたとはいえ、形態及び細部における様々な変化又は変更が、この発明の範囲及び主旨から逸脱することなくなされることもあることは、理解されることである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、先行技術に従った、流体の通じた流動を制御するための流動学的な効果を使用するデバイスの概略的な図示である。
【図2】図2は、先行技術に従った、電場又は磁場の影響の下での流動学的な流体における粒子の配向を図示する。
【図3】図3は、先行技術に従った、電場又は磁場の影響の下での流動学的な流体における粒子の配向を図示する。
【図4】図4は、本発明の実施形態に使用されることもある電荷が中性の塩の例を図示する。
【図5】図5は、本発明の実施形態に従った、流体における非等長性の粒子の配向に対する電場又は磁場の影響を図示する。
【図6】図6は、本発明の実施形態に従った、流体における非等長性の粒子の配向に対する電場又は磁場の影響を図示する。
【図7】図7は、本発明の実施形態に従った、電気又は磁気流動学的な粒子を備えた身体の流体を含むマイクロ流体のデバイスの働きを図示する。
【図8】図8は、本発明の実施形態に従った、電気又は磁気流動学的な粒子を備えた身体の流体を含むマイクロ流体のデバイスの働きを図示する。
【図9】図9は、本発明の実施形態に従った、電気又は磁気流動学的な粒子を備えた身体の流体を含むマイクロ流体のデバイスの働きを図示する。
【図10】図10は、本発明の実施形態に従った、電気又は磁気流動学的な粒子を備えた身体の流体を含むマイクロ流体のデバイスの働きを図示する。
【図11】図11は、本発明のさらなる実施形態と一致した流体のデバイスを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体のデバイスのマイクロチャネルにおいて生物学的な材料又は生体分子を含む液体の流動を制御する又は操作するための方法であって、
該マイクロ流体のデバイスは、少なくとも一つのマイクロチャネルを含み、
当該方法は、
− 前記液体に流動学的な性質を提供するために該液体へ粒子を加えること、
− 前記マイクロチャネルに前記液体を導入すること、及び
− 前記液体へ電場及び/又は磁場を印加すること
:を含む、方法。
【請求項2】
前記液体は、身体の流体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記身体の流体は、血液、血漿、尿、又は間質液の一つである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子は、前記生物学的な材料又は生体分子と生体適合性及び/又はバイオ直交性である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該マイクロ流体のデバイスは、少なくとも二つのマイクロチャネルを含み、
前記電場又は磁場は、該少なくとも二つのマイクロチャネルの間の接合点の近隣における位置で、該液体へ印加される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記粒子は、表面を含み、
当該方法は、さらには、
− 該粒子を該液体へ加える前に、前記粒子の前記表面を変更すること
:を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子の表面を変更することは、前記生物学的な材料又は生体分子に抵抗性のあるコーティングを前記粒子に提供することによって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子の表面を変更することは、前記表面へ分子を結び付けることによって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
該粒子は、電気流動学的な効果を誘起する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該粒子は、磁気流動学的な効果を誘起する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
該粒子は、磁鉄鉱、マンガン・フェライト、バリウム・フェライト、鉄、コバルト、ニッケル、又は、窒化鉄のような、強磁性の材料を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記粒子は、非等長性の粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記マイクロ流体のデバイスは、ラボ・オン・チップデバイス又はバイオセンサーデバイスである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
分子的な診断、生物学的な試料の分析、又は、化学的な試料の分析における請求項1に記載の方法の使用。
【請求項15】
生物学的な材料又は生体分子を含む液体についての試験を実行するためのキットであって、
当該キットは、
− 液体へ流動学的な性質を提供するための粒子で充填されることに適切な第一のレセプタクル、
− 生物学的な材料又は生体分子を含む液体用の入り口、
− 前記生物学的な材料又は生体分子を含む液体及び前記粒子が混合されることを可能にするための手段、並びに、
− マイクロ流体のデバイスを含み、該マイクロ流体のデバイスは、少なくとも一つのマイクロチャネル及び磁場及び/又は電場を該少なくとも一つのマイクロチャネルへ印加するための手段を含み、且つ、
当該キットは、
− 使用の前における当該キットの汚染を予防するための衛生学的なシール
:を含む、キット。
【請求項16】
さらには、洗浄溶液で充填されるための第二のレセプタクルを含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
さらには、診断の結果を読み出すための手段を含む、請求項15に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−525788(P2008−525788A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547743(P2007−547743)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/IB2005/054283
【国際公開番号】WO2006/067715
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】