説明

電気回路一体型複合圧電体超音波探触子およびその製造方法

【課題】 感度が高く小型化が可能な電気回路一体型複合圧電体超音波探触子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 背面負荷材、複合圧電体および整合層を備えた超音波探触子と、該超音波探触子と一体化されたシリコン基材と、該シリコン基材上に載置された電気回路とを備えることを特徴とする電気回路一体型複合圧電体超音波探触子。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気回路を一体的に設けた複合圧電体超音波探触子に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、超音波探触子を用いて体腔内を画像化し検査を行う超音波診断装置がよく使用されている。一般に、超音波探触子が受信するのは体内からの微弱な反射音波であるため、信号を増幅するために増幅器を設ける必要がある。しかし、増幅器がケーブルを介して探触子と接続されている場合には、ケーブルにより信号が減衰するだけでなく、ノイズの混入が避けられない。
【0003】このような問題を解決するために、超音波探触子と増幅器とをケーブルを介さずに一体化することが試みられている。このような一体型の超音波探触子は、例えば、特表平2−502078号公報「小型空洞部をイメージ化するための装置および方法」に開示されている。
【0004】図6に、上記文献に開示されている超音波探触子を示す。超音波探触子の本体42は、アルミナ材からなる角柱部42a、円筒部42b、両者を連結する連結部42cからなる。円筒部42bの外周には可とう性圧電材料(高分子圧電体)からなるリング44が載置されている。リング44は64個に分割された内面の電極(図示せず)を有し、各電極は、連結部42c上の配線パターン46を介して、角柱部42a上の電極パターンと連結されている。角柱部42aの電極パターン上には、電極パターンに対応して複数のチップ54が載置され、各チップ54は電極パターンを通して互いに電気的に接続されている。一つのチップ54からケーブル28が引き出されている。図6の超音波探触子は以下のように動作する。ケーブル28からの電圧は、チップ54によって選択的にリング44の一つの内面電極に印加される。電圧印加された内面電極の圧電素子部は、逆圧電効果により振動して超音波を外部に放出する。放出された超音波は図示しない外部反射体により反射されて、再度リング44に入射する。入射した超音波により、圧電リング44の一つの内面電極に圧電効果による電圧が励起される。励起電圧による信号は、チップ54で増幅されてケーブル28に電送される。チップ54はマルチプレクサーと増幅器の両方の機能を果たす。伝送された信号は、図示しない観測装置に入力されて画像化される。
【0005】しかしながら、上記超音波探触子においては、圧電体としてフレキシブルな高分子圧電体を用いているため、感度が小さいという問題点があった。また、感度を上げるために圧電体として複合圧電体を用いても、本体と圧電体とが別体で製造されるために、探触子が大型になるという問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、感度が高く小型化が可能な電気回路一体型複合圧電体超音波探触子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、背面負荷材、複合圧電体、および整合層を備えた超音波探触子と、該超音波探触子と一体化されたシリコン基材と、該シリコン基材上に載置された電気回路とを備えることを特徴とする電気回路一体型複合圧電体超音波探触子が提供される。
【0008】また、本発明によれば、シリコン基材の一部にエッチングを施し、エッチングされたシリコン基材を型として圧電体を注型して焼成する工程、シリコン型の部分を除去して圧電体を露出させ、露出した圧電体間に樹脂を注入して複合圧電体を作製する工程、複合圧電体の一方の面へ電極および背面負荷材を形成し、他方の面へ電極および整合層を形成して、複合圧電体超音波探触子を作製する工程、残存するシリコン基材の表面に電気回路を形成する工程の各工程を含むことを特徴とする電気回路一体型複合圧電体超音波探触子の製造方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面を参照して詳細に説明する。
【0010】(第1の実施形態)図1は、本発明に係る電気回路一体型複合圧電体超音波探触子の第1の実施形態の一例を示す図であって、図1(a)はその概略斜視図であり、図1(b)はその上面図である。本実施形態の超音波探触子1は、超音波探触子部2と電気回路部3とからなる。
【0011】超音波探触子部2は、背面負荷材4、第1電極5、複合圧電体部6、第2電極7、整合層8、およびレンズ層9がこの順に積層された構造をなす。レンズ層9はなくても良い。複合圧電体部6は、複数の例えば互いに平行なロッド状の圧電体10と圧電体10の隙間を埋める樹脂11とからなる。圧電体10には、PZT(チタン酸ジルコン酸塩)のほか、ぺロブスカイト構造の他の圧電セラミクス、またはチタン酸バリウム等の鉛を含まない圧電セラミクスなどを用いることができる。
【0012】電気回路部3は、シリコン基材19、シリコン基材19表面に形成された絶縁膜20、絶縁膜20の1つの表面(上面)に設けられた配線電極21〜24、これらの配線電極の上に載置されたチップ25からなる。
【0013】シリコン基材19は、少なくとも超音波探触子部2の背面負荷材4、第1電極5、および複合圧電体部6の各側面に接触して、これらの部材と一体化して形成されている。
【0014】絶縁膜20は、超音波探触子部2と接触しないシリコン基材19の各表面に形成されている。配線電極21および22は外部と連絡するケーブルと接続するための電極であり、例えば、電極21がGND(アース)電極、電極22が信号電極である。配線電極23は、超音波探触子部2の第2電極7と電気的に接続されているGND電極である。配線電極24は、第1電極5と電気的に接続されている信号電極である。配線電極24は、シリコン基材19の上面から側面にかけて絶縁膜20上に連続して形成され、その先端部は半田、ペーストなどの接合部材26を介して第1電極5の露出する側面と接続されている。チップ25は内部に増幅器またはマルチプレクサなどの電気回路を有しており、チップ25底部の入出力端子(図示せず)を介して配線電極21〜24と電気的に接続されている。
【0015】次に、図1の一体型超音波探触子1の動作の一例について説明する。外部からケーブル(図示せず)を介して電極21、22にパルス電圧が印加される。パルス電圧はチップ25をそのまま通過したのち、配線電極24を通って超音波探触子部2の第1電極5に印加される。電圧が印加された複合圧電体部6は逆圧電効果により振動し、振動により発生した超音波が整合層8を通ってレンズ9表面から放射される。放射された超音波は、図示しない反射体により反射されて再度レンズ9表面に入射する。入射した超音波により、今度は圧電効果により複合圧電体6に電圧が励起される。励起電圧は再び配線電極24を介してチップ25に入力する。チップ25において励起電圧は増幅されたのち、電極22を介してケーブルに(図示せず)伝達される。伝達された電圧信号は、最終的に図示しない超音波診断装置に入力される。そして、例えば、図1の探触子1を回転軸(図示せず)に取り付けて回転させながら、超音波を逐次放射させることにより、軸に垂直な全方位についての画像を表示させることができる。
【0016】次に、図1の一体型超音波探触子1の製造方法の一例について説明する。図2〜4は、本製造方法の工程を説明するための概略側面図である。
(1)まず、図2(a)に示したように、バルクのシリコン基材30を用意する。シリコン基材30は、例えば長さ10mm、奥行き5mm、厚み(高さ)1mmの板状体である。シリコン基材30は、例えばシリコンウェハーからダイシングソーを用いて切り出して用意する。
【0017】(2)次に、図2(b)に示すように、シリコン基材30の上面の一部(例えば上面の約半分)にプラズマエッチングを施して多数の穴50を形成する。穴50が形成された部分のシリコン基材30は、次工程において圧電体を注型するための型となる。
【0018】エッチングは例えば以下のようにして行う。まず、シリコン基材30上にフォトレジスト材(例えば、ポジレジスト材、厚み約6μm)を塗布する。フォトレジスト材に複数の例えば円形のパターン(例えば直径16μm)を露光したのち現像して、レジスト材のパターニングを行う。次に、ディープRIE(反応性イオンエッチング)法によりシリコンのエッチングを行う。ディープRIE法とは弗化物のデポジットとエッチング処理を繰り返し行うことによりアスペクト比の高い穴構造を得るエッチング方法である。デポジット用ガスとしては例えばC48 を用い、エッチング用ガスとして例えばSF6 を用いる。エッチングにより、シリコン基材30上に例えば直径が16μm、深さが140μmの穴をピッチ間隔20μmで形成する。ディープRIE法を用いているため、シリコン基材30面に対して十分垂直な側面を有する穴形状を得ることができる。エッチング後、フォトレジストを除去する。
【0019】(3)図2(c)に示すように、工程(2)で作製したシリコン型に、圧電セラミクスのスラリー31を加振しながら流し込む。以下、スラリー31としてPZTスラリー31を用いた例について説明する。PZTスラリー31は、PZT粉末(Pb(Zr0.52Ti0.48)O3 )とPVA(ポリビニルアルコール)と水とを混合して作製する。また、PZT粉末の平均粒子サイズは例えば0.3μmである。PZTスラリー31を流し込んだのち、12時間以上自然乾燥させて水分を蒸発させ、PZTスラリー31をグリーン状態とする。次に、PZTグリーン31を2時間以上空気中で500℃で加熱して脱脂する。ここで脱脂とはPZT粉体のバインダーであるPVAを除去することである。
【0020】次に、シリコン型中のPZT粉体31をその密度を大きくした状態で焼結するために、脱脂した試料にHIP(ホットアイソスタティックプレシング)処理を行う。HIP処理は、以下のようにして行う。まず、試料をBN(窒化ボロン)粉末で包み込んでゴムチューブ、テープで保持したのち、水中で約100MPaの等方圧をかけてCIP(コールドアイソスタティックプレシング)処理を行う。BN粉末は、後述するガラス管への封じ込め時およびHIP処理時に、試料とガラスとの間の反応を防ぐために用いる。CIP処理によりPZT粉体31はかなり密に圧縮される。次に、BN粉末で包み込んだ試料をパイレックスガラスチューブに入れ、チューブ内の圧力が約10-3Paとなるまで真空引きする。その後、ガラスチューブの口をガラスの軟化点(約750℃)まで加熱してシールする。加熱は、BN粉末中の試料を密に包み込むために、ガスフレームバーナーを用いて行う。次に、試料をガラス管に封入した状態で、以下のようにしてHIP処理を行う。まず、ガラスに封入した試料をArガス中で加熱しながら等方圧を印加する。例えば、最初に約1MPaの低い圧力をかけながら温度をパイレックスガラスの軟化点まで上昇させる。次に、温度と圧力を同時に上昇させて、PZT粉末31が焼結(焼成)する温度1000℃および圧力70MPaのもとで約2時間保持する。HIP処理の後、試料をガラス管およびBN粉末から取り出す。
【0021】(4)図2(d)に示すように、シリコン基材30のエッチングされなかった部分の背面、すなわちシリコン型としてPZTスラリー31を注型しなかったシリコン基材30の背面に、フォトレジスト材32を塗布する。
【0022】(5)図3(a)に示すように、例えばXeF2 ガスを用いてシリコン基材30の背面をエッチングしてシリコン基材30のシリコン型の部分のみを除去し、その後、フォトレジスト32を除去する。エッチングにより、シリコン型によって成型された複数の林立した円柱形状の圧電セラミクス33が露出する。各円柱形状の圧電セラミクス33は、試料の上面に残っているPZT板31とそれぞれつながっている。
【0023】(6)図3(b)に示すように、圧電セラミクス33ロッドの間隙にエポキシ樹脂などの樹脂34を充填する。充填は、例えば試料を密閉容器の中に置いた後、容器内を真空引きしながら容器に別に設けた注入口から樹脂34を注入して、セラミクス33の隙間に樹脂34を充填して行う。樹脂34を硬化させたのち背面から研磨を行って、不要な樹脂34を除去して圧電セラミクス33を露出させる。その後、圧電体セラミクス33が露出した面の全面に蒸着法などにより金などからなる電極35を設ける。電極35が図1に示す第1電極5となる。
【0024】(7)図3(c)に示すように、電極35上に背面負荷材として例えばアルミナが含浸されたエポキシ樹脂36を充填して硬化させる。樹脂36は、例えばコの字型の枠を試料の側面にあてがって電極35上に充填する。
【0025】(8)図3(d)に示すように、試料の上面を研磨して、上面に残っているPZT31板を除去し、圧電セラミクス33と樹脂34、およびシリコン基材30を露出させる。その後、圧電セラミクス33と樹脂34とが露出する面の全面に蒸着法などにより金などからなる電極37を設ける。電極37が図1に示す第2電極7となる。
【0026】(9)電極37および背面負荷材36などの、シリコン基材30以外の試料の表面に、フォトレジストを塗布する。その後、図4(a)に示すように、CVD法などによってSiO2 等の絶縁膜38をシリコン基材30の表面に形成する。絶縁膜38の形成は、樹脂34および36に影響が出ない程度の低温(例えば25℃)で行う。その後、フォトレジストを除去する。
【0027】(10)図4(b)に示すように、マスクを介したスパッタリングまたは印刷法などによって、図1R>1に示した配線電極21、22、23、および24を絶縁膜38上に形成する(電極21は図示せず)。電極23は、第2電極37の表面の一部にもかかるように形成する。試料の側面に形成された電極24の先端部を、半田などの接合部材26によって第1電極35の露出部と接続する。次に、電極35および37にDC電圧を印加して圧電セラミクス33の分極を行い、圧電セラミクス33に圧電性を付与する。
【0028】(11)図4(c)に示すように、電極37の上に例えば2層のエポキシ樹脂からなる整合層39を設け、その上に例えばシリコーン材からなるレンズ40を接合する。前述したように、レンズ40はなくても良い。
【0029】(12)次に、図4(d)に示すように、ICチップ25を配線電極21〜24の上に載置する。載置は、チップ25の底部の入出力端子(図示せず)と電極21〜24とが合致するように位置決めした後、ボール半田等を用いて両者を接合して行う。
【0030】以上の工程(1)〜(12)によって、図1R>1に示した電気回路一体型複合圧電体超音波探触子1を製造することができる。
【0031】本実施形態の電気回路一体型超音波探触子は、複合圧電体超音波探触子の製造工程で用いるシリコン基材30を、ICチップ等の電気回路の基台としても用いている。従って、シリコン基材30にエッチング処理等を施すことによって微細な構造の超音波探触子を作製した後に、残りの基材上に電気回路を載置するだけで一体型の超音波探触子を製造することができる。そのため、小型の電気回路一体型超音波探触子を作製することができる。また、複合圧電体を用いているため、高分子圧電体などのバルクの圧電体を用いた場合と比べて高感度な超音波探触子を実現することができる。
【0032】なお、本実施形態の変形例として、上述の工程(7)において(図3(c))、電極35上に背面負荷材36を接合する代わりに整合層39およびレンズ40を設け、工程(11)において(図4(c))電極37上に背面負荷材36を設けても良い。このように構成した場合、超音波が放射される音響放射面は、図1に示した超音波探触子のそれとは反対の方向、すなわちチップ25が載置された上面と反対側の背面を向くことになるが、探触子の動作としては問題ない。
【0033】また、本実施形態の各構成は当然、各種の変形、変更が可能である。
【0034】例えば、工程(3)において、シリコン基材30に作製した穴50にスラリー31を流し込む前に、酸化珪素や窒化珪素等の保護膜を穴50の内面に形成することが好ましい。保護膜を形成することにより、シリコン基材30と圧電体スラリー31とが焼成時に反応することを防ぐことができる。これらの保護薄膜を残したまま超音波探触子を動作させても、複合圧電体の有する良好な圧電特性を得ることは可能であるが、除去した方がより高い圧電特性をもたらす電気―機械の変換効率を得ることができる。上記保護膜を除去するためには、例えば、工程(5)において(図3(a))、シリコン基材30をエッチング除去して保護膜を露出させた後に、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチングによって、これらの保護膜をエッチング除去するなどすれば良い。
【0035】また、本実施形態での製造方法は、圧電セラミクスとしてPZTを用いた場合について説明したが、前述したその他の圧電セラミクスを用いても同様に行えることは言うまでもない。特に、圧電体セラミクスにチタン酸バリウム等の鉛を含まない圧電材料を用いた場合には、シリコン基材30と鉛との間で相互拡散が起こらないため、上述のような保護膜を形成する必要がない。そのため、製造工程が省略できるとともに高温での焼成が可能となる。
【0036】また、圧電体31とシリコン型との間で熱膨張係数が異なるために焼成時に反りが発生し、試料の形状によってはシリコン型にクラックが入ることがある。このような場合には、以下のようにして解決することができる。例えば、シリコン基材30として0.5mm以上の厚い物を用いる。または、工程(2)においてエッチングによってシリコン基材30の両面に穴を形成し、圧電体スラリーをシリコン型の両面に注型したサンドイッチ構造として焼成する。または、注型した圧電体スラリー31の上に別のシリコン基材を載せて、圧電体31をシリコン基材で挟んだサンドイッチ構造として焼成する。
【0037】また、工程(2)において、エッチングによってシリコン基材30に貫通孔を形成し、この貫通孔にシリコン型の両面から圧電体スラリー31を充填するようにすれば、孔の径が小さくても良好に充填が行えるため、微細な圧電構造体を歩留り良く作製することができる。
【0038】また、上述のようにシリコン基材30上にICチップをマウントする代わりに、シリコン基材30上にIC製造プロセスを用いてICを直接作製し、それを電気回路として用いても良い。
【0039】(第2の実施形態)図5は、本発明に係る一体型超音波探触子の第2の実施形態の一例を示す図であって、図5(a)はその製造工程の一部を示す概略側面図であり、図5(b)は完成した探触子の一例を示す上面図である。
【0040】第2の実施形態の超音波探触子は、図1に示した探触子部2の信号電極である第1電極5が複合圧電体部6の全面に形成されておらず、離間に配置された互いに平行な複数の帯状(長方形状)に形成された構造をなす。このような構造により、各帯状電極5に対応する圧電体エレメントごとに電圧を印加することが可能になるため、各電極5に順次電圧を印加して電子走査型リニア超音波振動子として動作させることができる。
【0041】本実施形態の超音波探触子の製造方法は、前述の第1の実施形態の超音波探触子の製造方法と比べて、図3(b)に示す電極35の形成の仕方が異なるだけである。すなわち、前述の工程(6)において(図3(b))、不要な樹脂34を除去して円柱の圧電セラミクス33を露出させた後に、圧電セラミクス33が露出した面に複数の帯状の電極35を蒸着法などにより形成する(図5(a))。図5(a)の各電極35は、紙面に垂直な方向に細長い長方形をなしており、それぞれ1または2以上の圧電セラミクス33(圧電体エレメント)と接触している。
【0042】図5(b)に示した上面図において、電極45は図5(a)に示した各帯状電極35と接続される信号電極であり、電極46は図1(a)に示した第2電極7と接続されるGND電極である。また、電極47は外部と連絡するケーブルと接続される信号電極であり、電極48は外部のケーブルと接続されるGND電極である。電極45および47の数は帯状電極35の数と同じである。図5では、一例として電極35、45、47および圧電体エレメントがそれぞれ8個の場合を示しているが、これ以外の数の場合にも同様にして、本実施形態を実施できることは言うまでもない。
【0043】図5(b)の各信号電極45は、図1に示した電極24と同様にシリコン基材30の上面から側面にかけて絶縁膜20上に形成され、その先端部はリード線なsどによって図5(a)の各帯状電極35と接続される。なお、図5(b)においては、見やすくするためにシリコン基材30の側面の電極45、47およびリード線などは省略してある。
【0044】図5(b)のチップ25は、図1のチップ25と同様に、チップの底部の入出力端子と電極45〜48とが一致するように位置決めした後、配線電極45〜48の上に載置して接合する。なお、図5に示した超音波探触子は、チャンネル数が増えた以外は図1の超音波探触子と同様に動作する。
【0045】本実施形態のように電子走査型リニア超音波探触子を構成した場合でも、複合圧電体超音波探触子の製造工程で用いるシリコン基材30をICチップをマウントする基台として用いている。そのため、第1の実施形態のところで述べた理由と同様にして、小型の電気回路一体電子走査型複合圧電体超音波探触子を作製でき、また高感度な探触子が実現できる。
【0046】
【発明の効果】以上、詳述したように、本発明によって感度が高く小型化が可能な電気回路一体型複合圧電体超音波探触子およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1の実施形態の超音波探触子の一例を示す概略斜視図および上面図。
【図2】本発明に係る第1の実施形態の超音波探触子の製造工程の一例を示すための概略側面図。
【図3】本発明に係る第1の実施形態の超音波探触子の製造工程の一例を示すための概略側面図。
【図4】本発明に係る第1の実施形態の超音波探触子の製造工程の一例を示すための概略側面図。
【図5】本発明に係る第2の実施形態の超音波探触子の製造工程の一部を示すための概略側面図および完成した超音波探触子を示すための上面図。
【図6】従来の一体型超音波探触子を示す図。
【符号の説明】
1…超音波探触子
2…超音波探触子部
3…電気回路部
4…背面負荷材
5、7、35、37、45、46、47、48…電極
6…複合圧電体部
8、39…整合層
9、40…レンズ層
10…圧電体
11、34、36…樹脂
20、38…絶縁膜
21、22、23、24…配線電極
25…チップ
26…接合部材
19、30…シリコン基材
31…圧電セラミクスのスラリー
32…フォトレジスト
33…圧電セラミクス
50…穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】 背面負荷材、複合圧電体、および整合層を備えた超音波探触子と、該超音波探触子と一体化されたシリコン基材と、該シリコン基材上に載置された電気回路とを備えることを特徴とする電気回路一体型複合圧電体超音波探触子。
【請求項2】 シリコン基材の一部にエッチングを施し、エッチングされたシリコン基材を型として圧電体を注型して焼成する工程、シリコン型の部分を除去して圧電体を露出させ、露出した圧電体間に樹脂を注入して複合圧電体を作製する工程、複合圧電体の一方の面へ電極および背面負荷材を形成し、他方の面へ電極および整合層を形成して、複合圧電体超音波探触子を作製する工程、残存するシリコン基材の表面に電気回路を形成する工程の各工程を含むことを特徴とする電気回路一体型複合圧電体超音波探触子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2000−298119(P2000−298119A)
【公開日】平成12年10月24日(2000.10.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−108195
【出願日】平成11年4月15日(1999.4.15)
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】