説明

電気導体構造を備えるフラット基板

本発明は、フラット基板内部に組み込まれた、またはフラット基板表面に付設された電気導体構造、および/または技術的にコーティングされた表面を備えるフラット基板に関する。本発明は、少なくとも1つのセンサがフラット基板に組み込まれ、またはフラット基板の表面に付設され、このセンサが、フラット基板内部に生じる変形に応じてセンサ信号を生成すること、少なくとも1つのアクチュエータがフラット基板に組み込まれ、またはフラット基板の表面に付設され、このアクチュエータが、作動されたとき、フラット基板を機械的に再変形させることができること、ならびに、この少なくとも1つのセンサおよび少なくとも1つのアクチュエータと接続された信号ユニットが設けられ、この信号ユニットが、センサ信号に基づいて、アクチュエータを作動させるアクチュエータ信号を生成し、それによってフラット基板内部に生じる変形が低減されることを特色とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラット基板の内部に組み込まれた、またはフラット基板の表面に付設された電気導体構造を備えるフラット基板、好ましくはプリント回路板またはマイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
機能性の改善された電子デバイスに対する需要の増大は、電子モジュールの発展と緊密に結びついており、とりわけ関連する諸装置の小型化および信頼性改善に大きく貢献している。これは、プリント回路板技術およびチップ技術の分野で、プリント回路板やチップの様々な形状の著しく豊かなバリエーションが生まれている理由でもある。
【0003】
この種の加工されたフラット基板の機能性および信頼性に関する重要な視点は、その寸法安定性と、形状安定性に関するものである。特に熱的に変化する周囲条件の下で、これらフラット基板を使用すると、熱誘起応力が、したがってフラット基板内部における幾何形状のねじれがもたらされ、それにより、フラット基板上に付設されまたはフラット基板中に組み込まれた、電気導体路部分またはマイクロエレクトロニクスの導体アーキテクチャもしくはプロセッサアーキテクチャも、明らかに巻き添えになることがある。それに加えて、製造時に生じる内部応力も、フラット基板の形状忠実性を損なうことがある。この場合、この種の機械的応力の発生にできるだけ有効に対処する措置を講じることが大切である。この種のねじれおよびゆがみを軽減するために、チップ技術では多くの場合、チップ上またはチップ中に、熱を加えても十分に不変であり、したがって製造時および使用時に生じる内部応力を解消するはずの、追加の層が設けられる。
【0004】
US-A-4,939,021からは、これに関して、銅層と、それぞれの銅層の間にあって、多層プリント回路板の熱膨張挙動を決定する、ガラスセラミック層とをそれぞれ複数備える、多層プリント回路板が読み取れる。
【0005】
JP 07 249847には、電子構成部品を実装するための多層プリント回路板を製造する方法が記載されており、このプリント回路板は、個々の層の異なる熱膨張特性を安定させるために、エポキシ樹脂を用い圧縮成形によって別の層材料と接合されて積層材となった、ガラス繊維材料からなる1つの層を備える。
【0006】
熱的に安定な材料層を設けることによって、加工されたフラット基板またはマイクロチップの内部における内部応力および/または熱誘起応力を減少させる、公知のすべての措置には、これら追加の層により、多層システムの構造全体が大きくなり、特に大きな温度差が生じた場合、支持基板に望まれる形状安定性がわずかしか保証されないという欠点がつきまとう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、フラット基板内部に組み込まれ、またはフラット基板表面に付設された電気導体構造を備えるフラット基板、好ましくはプリント回路板またはマイクロチップを、フラット基板内部に機械的応力が生じるために製造時および/または使用時に生じる変形が十分に回避されるように、改良することである。このために必要な措置は、フラット基板固有の変形特性が変化する場合でも、フラット基板内部に生じる変形およびゆがみを持続的に抑止できるような制御の可能性をもたらすものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題の解決策は、請求項1に記載されている。本発明の考えを有利に発展させた諸特徴は、従属請求項、ならびに特に例示的実施形態を参照した説明から読み取ることができる。
【0009】
フラット基板の形状安定性を改善する試みとして、従来の純粋に受動的に働く層を使用するのとは違って、本解決策に従って形成される、請求項1の諸特徴を有するフラット基板は、少なくとも1つのセンサを備え、このセンサは、フラット基板に組み込まれ、あるいはフラット基板の表面に付設され、フラット基板内部に生じる機械的応力に応じてセンサ信号を生成する。さらに、少なくとも1つのアクチュエータが、フラット基板に組み込まれ、あるいはフラット基板の表面に付設され、このアクチュエータが作動されると、フラット基板が、好ましくはフラット基板がその原型をできるだけ維持し、なんら変形を受けないような形で、機械的に再変形される。さらに、この少なくとも1つのセンサと、この少なくとも1つのアクチュエータは信号ユニットに接続され、この信号ユニットがセンサ信号に基づいて、アクチュエータを作動させるアクチュエータ信号を生成し、それにより、フラット基板内部に生じる変形が、上記のようにして、できるだけ軽減されるようにする。
【0010】
本解決策が提案するシステムは、フラット基板内部における内部応力または熱応力によって生じるゆがみの能動的な作用と関係しているものである。多機能材料をベースとするセンサおよびアクチュエータは、好ましくはフラット基板の表面に層状に付設され、好ましくは圧電セラミックスからなり、一方では、幾何形状のゆがみをセンサで検出し、対応する逆変形をアクチュエータによって導入することにより、フラット基板を希望の所定の形状に留めておくことができる。
【0011】
特に好ましい例示的一実施形態では、圧電セラミック材料からなるセンサ層が、フラット基板の表面に付設され、したがって非常にわずかな平面ゆがみでも検出することができる。圧電セラミックセンサ層側で生成されたセンサ信号は、さらなる処理のために、やはりフラット基板に付設された、あるいはフラット基板に組み込まれた信号ユニットに供給され、この信号ユニット内でアクチュエータ信号が生成され、このアクチュエータ信号は、対応する逆変形を誘発するために、やはり圧電セラミック材料製で層状に形成されたアクチュエータ素子に導かれる。
【0012】
マイクロチップとして形成されたフラットな素子の場合、センサおよびアクチュエータとして動作する層に電気エネルギーを供給するために、マイクロチップ内部の導体構造を利用することができる。同様にマイクロチップ内部の計算能力を、センサ信号に基づいて対応するアクチュエータ信号を生成するために利用することができる。
【0013】
超小型化されたフラット基板、たとえば高集積度の電気回路が実装されているマイクロチップの動作の信頼性は、本発明によれば、能動的制御回路によってフラット基板内部のその時点における幾何形状のゆがみを検出し、これに対応して、対応する逆変形を導入することによりそのゆがみを能動的に抑止することによって、改善することができる。このようにして、フラット基板に結合されたマイクロシステムについて、その熱的に制限された使用範囲をも著しく拡大することができ、とりわけフラット基板内部で熱的に生じたゆがみが、能動的抑止によって、もはやマイクロシステムの機能停止をもたらし得なくなる。加えて、製造時に内部応力によって生じる変形が、この種のフラット基板に結合されたマイクロシステムにおいて、所望のシステム信頼性および長寿命に関してなんらの問題ももたらすことはない。
【0014】
上記のチップ技術は、本解決策の措置によって大きなシステム上の利益を得るが、それに加えて、とりわけ、電気エネルギーを供給し、かつセンサ信号の評価およびアクチュエータ信号の生成のために計算能力を用意するためにいずれにしてもチップ上に設けられるマイクロエレクトロニクス機器を利用して、センサおよびアクチュエータとして動作する層をチップに付設しまたは組み込むことができ、電気的モジュールを備えずに製造されるフラット基板にとっても、本解決策による措置にともなう利益が得られる。たとえばフラット基板の一方の面に、高反射性の表面がコーティングされ、この表面は、マイクロシステム技術の次元で、個別にあるいはアレイ状の配置で、マイクロミラーとして狙いを定めた光案内に用いられる。この種のマイクロミラーから高い均一な結像品質を保証するには、マイクロミラーの形状を能動的に維持するために、ミラー表面が平面か湾曲しているかにかかわらず、マイクロミラーのミラー表面とは反対側の背面に少なくとも1つのセンサ層およびアクチュエータ層を設ける。
【0015】
上記のように圧電セラミック材料は、センサ層およびアクチュエータ層として使用するのに特によく適しているが、使用目的およびフラット基板によっては、たとえば無鉛圧電セラミックス、電歪セラミックス、形状記憶合金、形状記憶ポリマー、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、磁歪合金またはバイメタルのような他の多機能材料を用いることもできる。
【0016】
下記に本発明を、本発明の一般的な考えを限定することなく、図面を参照しながら例示的実施形態に則して例によって説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、フラット基板1の平坦な表面を上から見た図であり、この表面上には、多数の個々のセンサ-アクチュエータ素子が取り付けられている。図2は、図1に示したフラット基板の縦断面図である。フラット基板1の表面上に直接、圧電セラミック層堆積物が規則的配置で平面状に分布し、これら堆積物は、アクチュエータ層2として用いられる。このアクチュエータ層のフラット基板1とは反対側の表面に、それぞれセンサ層3が設けられており、このセンサ層はやはり圧電セラミックス製である。フラット基板1が熱誘起応力によって変形すると、センサ層3も同様に自動的に変形する。このセンサ層は、圧電材料特性の故に電荷移動を受け、技術的に検出可能な電圧を生じ、この電圧が、図1には示されていない信号評価ユニットによって検出され、それに基づいて、対応する制御信号が、フラット基板表面に直接堆積されたアクチュエータ層2のために用意される。アクチュエータ層2に電圧が加えられると、センサ層の動作原理とは逆に、アクチュエータ層2に加えられた電圧に比例するアクチュエータ層3の変形が生じ、それによりフラット基板1は、アクチュエータ層3とフラット基板1の密接な結合のため、少なくともアクチュエータ層3の領域で再変形する。この再変形は、フラット基板1の形状をできるだけ変化させないで維持する目的で、フラット基板1の内部電圧によって生じる変形を減少させる方向に行われる。
【0018】
図1および2の例示的実施形態によるフラット基板は、好ましくは、多数の個別の層とプロセッサ構造を有するマイクロチップを表す。同様に、周囲温度が変化しても所定のミラー形状を不変に維持するために、本解決策による措置をマイクロミラーシステムの背面に行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】フラット基板の表面を上から見た図である。
【図2】アクチュエータ層とセンサ層を備えるフラット基板の縦断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1…フラット基板、 2…アクチュエータ層、アクチュエータ、 3…センサ層、センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラット基板内部に組み込まれた、またはフラット基板表面に付設された電気導体構造と、および/または技術的にコーティングされた表面とを備えるフラット基板であって、
少なくとも1つのセンサが該フラット基板に組み込まれ、または該フラット基板の表面に付設され、前記センサが、該フラット基板内部に生じる機械的応力に応じてセンサ信号を生成し、
少なくとも1つのアクチュエータが該フラット基板に組み込まれ、または該フラット基板の表面に付設され、前記アクチュエータが、作動されたとき、該フラット基板を機械的に再変形させることができ、
前記少なくとも1つのセンサおよび少なくとも1つのアクチュエータと接続された信号ユニットが設けられ、前記信号ユニットが、センサ信号に基づいて、アクチュエータを作動させるアクチュエータ信号を生成し、それによって該フラット基板内部に生じる変形が低減されること、を特徴とするフラット基板。
【請求項2】
前記少なくとも1つのセンサおよびアクチュエータは、層状に形成されており、少なくともその部分領域が多機能材料からなること、を特徴とする請求項1に記載のフラット基板。
【請求項3】
前記多機能材料が、以下の材料クラス、すなわち、圧電セラミックス、無鉛圧電セラミックス、電歪セラミックス、形状記憶合金、形状記憶ポリマー、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、磁歪合金またはバイメタルのうちの1つからなる材料であること、を特徴とする請求項1または2に記載のフラット基板。
【請求項4】
該フラット基板が単層構造または複層構造のマイクロチップであること、を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフラット基板。
【請求項5】
前記信号ユニットがチップの一部であり、信号生成に必要なロジックが、チップに内在する計算能力によってマッピングされること、を特徴とする請求項4に記載のフラット基板。
【請求項6】
電気エネルギー供給のために、前記少なくとも1つのアクチュエータがチップに接続されていること、を特徴とする請求項4または5に記載のフラット基板。
【請求項7】
該フラット基板の技術的にコーティングされた表面が高反射性の表面を持つこと、ならびに前記少なくとも1つのセンサおよびアクチュエータと信号ユニットが、該フラット基板における前記高反射性表面とは反対側の表面に取り付けられること、を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフラット基板。
【請求項8】
該フラット基板が半導体基板であり、その一方の表面上で少なくとも1つの局部的に限定された層が、多機能材料から堆積され、アクチュエータとして用いられること、ならびにアクチュエータ層上に、同じまたは異なる別の多機能材料からなるもう1つの層が堆積され、センサとして用いられること、あるいはその逆であること、を特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のフラット基板。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−513005(P2009−513005A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535944(P2008−535944)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009927
【国際公開番号】WO2007/045408
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(500242786)フラウンホファー ゲセルシャフトツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ. (47)
【Fターム(参考)】