説明

電気式脱イオン水製造装置

【課題】運転時の省エネルギー化を実現し、かつ、大量処理によっても比抵抗の高い良好な水質の脱イオン水が得られるEDI。
【解決手段】陰極側小脱塩室152と陽極側小脱塩室154とで構成された脱塩室150と、脱塩室150の両側にアニオン交換膜146又はカチオン交換膜142を介して設けられた濃縮室130とが、陰極と陽極との間に配置され、陽極側小脱塩室154には、アニオン交換体155を含むイオン交換体が充填され、陰極側小脱塩室には、低塩基性アニオン交換体153を含むアニオン交換体と、カチオン交換体151との混床形態でイオン交換体が充填され、陰極側小脱塩室152を流通した水を陽極側小脱塩室154に流す送水手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気式脱イオン水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脱イオン水を製造する方法として、従来からイオン交換樹脂に被処理水を通水して脱イオンを行う方法が知られている。しかし、この方法ではイオン交換樹脂が飽和したときに、薬剤によって再生を行う必要がある。近年、このような処理操作上の不利な点を解消するため、薬剤による再生が不要な電気式脱イオン水製造装置(以下、EDIという)が実用化されている。
【0003】
EDIは、電気泳動と電気透析とを組み合わせた純水製造装置である。EDIは、アニオン交換膜とカチオン交換膜との間にイオン交換体を充填し、イオン交換膜の外側に陽極を備える陽極室と、陰極を備える陰極室(以下、陽極と陰極を総じて、電極ということがある)を配置した装置である。EDIによる脱イオン水の製造方法は、電極に直流電圧を印加した状態でイオン交換体層に被処理水を通水することにより、被処理水中のイオン成分をイオン交換体で吸着し、電気泳動にて膜面までイオンを泳動させ、イオン交換膜にて電気透析して濃縮水中へと除去するものである。このEDIは、脱塩室内の異種のイオン交換体の界面(以下、異種イオン交換体界面という)にて生じる電位差により、水の解離反応が進行し、HとOHが生成することで、脱塩室内のイオン交換体を連続して再生するものである。
【0004】
従来、EDIは、被処理水中のアニオン成分(Cl、HCO、CO2−、SiO(シリカは、特別な形態をとることが多いため、一般のイオンとは異なった表示とする)等)とカチオン成分(Na、Ca2+、Mg2+等)とを1つの脱塩室内で除去する必要があるため、脱塩室に充填するイオン交換体はアニオン交換体とカチオン交換体との混床形態あるいは複床形態で充填されることが多い。一般的に脱塩室のイオン交換体の充填形態を混床形態とすると、単床形態とした場合に比べて電気抵抗が高くなることが知られている。脱塩室の電気抵抗が高いと、イオン成分濃度が高い水を被処理水として処理する場合や、脱塩室当たりの被処理水の流水量を増大させて処理する場合に、印加する電流値を上げてEDIを運転すると、オームの法則(E=IR)に従い、運転電圧も総じて高くなる。この結果、EDIの運転は、電流×電圧で表される消費電力が大きくなり、高エネルギーとなる。
【0005】
こうした問題に対し、省エネルギーでEDIを運転するために、EDIの電気抵抗を低減する種々の試みがなされている。例えば、脱塩室に混床形態で充填するアニオン交換体が、II形強塩基性アニオン交換体又は弱塩基性アニオン交換体を含むことで、電気抵抗を低減できることが開示されている(例えば、特許文献1〜3)。また、脱塩室に混床形態で充填するアニオン交換体として、I形強塩基(最強塩基)性アニオン交換体とII形強塩基性アニオン交換体とを併用することで、低い電圧で、比抵抗の高い良好な水質の脱イオン水を得る発明が開示されている(例えば、特許文献4)。さらには、EDIの構造を抜本的に改善し、脱塩室1つ当たりの濃縮室の数を従来の約半分にし、EDIの電気抵抗を著しく低減できる脱塩室2室構造のEDIが開示されている(例えば、特許文献5)。
【特許文献1】特表2000−504273号公報
【特許文献2】特表2001−500783号公報
【特許文献3】特表2002−535128号公報
【特許文献4】特許第3895180号公報
【特許文献5】特許第3385553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、EDIの運転時のさらなる省エネルギー化、処理量の増大、脱イオン水の水質の向上が求められている。EDIの省エネルギー化を図るために、脱塩室に充填するアニオン交換体におけるII形強塩基性アニオン交換体や弱塩基性アニオン交換体の割合を単に増やしたとしても、II形強塩基性アニオン交換体や弱塩基性アニオン交換体は、イオン成分を吸着する能力が低いため被処理水中のイオン成分の除去性能が低くなり、脱イオン水の純度が低下する懸念がある。加えて、脱塩室当たりの処理量を増大させるために、被処理水の通水量を増大させると通水差圧が高くなり、EDIの破損等の原因となることが考えられる。脱塩室の通水差圧を低減するには、脱塩室の厚さを厚くする方法が考えられるが、脱塩室を厚くすると、その厚さに応じて電気抵抗も増大するという問題がある。
そこで本発明は、運転時の省エネルギー化を実現し、かつ、大量処理によっても比抵抗の高い良好な水質の脱イオン水が得られるEDIを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のEDIは、陽極側のアニオン交換膜と、陰極側のカチオン交換膜と、前記アニオン交換膜と前記カチオン交換膜との間に設けられた中間イオン交換膜と、で区画される小脱塩室にイオン交換体が充填されて脱塩室が構成され、前記脱塩室の両側に前記アニオン交換膜又は前記カチオン交換膜を介して濃縮室が設けられ、前記脱塩室と前記濃縮室とが陰極と陽極との間に配置された電気式脱イオン水製造装置において、前記アニオン交換膜と前記中間イオン交換膜とで区画された陽極側小脱塩室に充填するイオン交換体は、アニオン交換体を含み、前記カチオン交換膜と前記中間イオン交換膜とで区画された陰極側小脱塩室に充填するイオン交換体は、弱塩基性アニオン交換体、中塩基性アニオン交換体、II形強塩基性アニオン交換体からなる群から選択される少なくとも一種(以下、低塩基性アニオン交換体ということがある)を含むアニオン交換体と、カチオン交換体との混床形態であり、前記陰極側小脱塩室を流通した水を前記陽極側小脱塩室に流す送水手段が設けられていることを特徴とする。前記陰極側小脱塩室に充填するアニオン交換体に含まれる弱塩基性アニオン交換体と中塩基性アニオン交換体とII形強塩基性アニオン交換体との合計は、前記アニオン交換体の50体積%を超えていることが好ましく、前記陽極側小脱塩室に充填するイオン交換体は、アニオン交換体の単床形態であることが好ましく、前記中間イオン交換膜はアニオン交換膜であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のEDIによれば、運転時の省エネルギー化を実現し、かつ、大量処理によっても比抵抗の高い良好な水質の脱イオン水が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のEDIにおける、運転時の省エネルギー化、及び、水質向上の原理について、図1を用いて説明する。図1は、本発明のEDIにおける、イオン成分の流れを説明する脱塩室150の部分断面図である。図1に示すとおり、脱塩室150は、陰極側小脱塩室152と陽極側小脱塩室154とで構成されている。脱塩室150の両側には、濃縮室130が設けられ、脱塩室150と濃縮室130とが陰極と陽極との間に配置されている。陰極側小脱塩室152は、カチオン交換膜142と中間イオン交換膜144とで区画され、カチオン交換体151と低塩基性アニオン交換体153とが混床形態で充填され形成されている。陽極側小脱塩室154は中間イオン交換膜144とアニオン交換膜146とで区画され、アニオン交換体155が単床形態で充填されている。
【0010】
脱イオン水の製造方法について、中間イオン交換膜144をアニオン交換膜とした場合を例にして説明する。まず、陰極と陽極との間に直流電圧を印加し、被処理水Aを陰極側小脱塩室152に流通させる。被処理水Aは陰極側小脱塩室152を流通する間、被処理水A中のNaやCa2+等のカチオン成分がカチオン交換体151に吸着され、吸着されたカチオン成分は陰極に引き寄せられてカチオン交換膜142を透過して濃縮室130に移動する。また、被処理水A中のClやHCO等のアニオン成分は、低塩基性アニオン交換体153に吸着される。そして、吸着されたアニオン成分は陽極に引き寄せられて中間イオン交換膜144を透過して、陽極側小脱塩室154に移動する。しかし、低塩基性アニオン交換体153はアニオン成分の吸着力が低いため、吸着したアニオン成分は容易に脱着し、被処理水B中に残存した状態で陰極側小脱塩室152から流出する。
【0011】
陽極側小脱塩室154に、被処理水Bを流入させる。陽極側小脱塩室154に流入した被処理水Bは、アニオン交換体155内を拡散しながら流通する。この間、被処理水B中のアニオン成分はアニオン交換体155に吸着され、除去される。吸着されたアニオン成分は、陽極に引き寄せられてアニオン交換膜144を透過し、濃縮室130に移動する。こうして、被処理水Aは、陰極側小脱塩室152でカチオン成分が除去され、陽極側小脱塩室154でアニオン成分が除去され、脱イオン水Cとなって、陽極側小脱塩室154から流出する。この間、脱塩室150の異種イオン交換体界面では、水の解離反応が進行する。
【0012】
低塩基性アニオン交換体153は、I形強塩基(最強塩基)性アニオン交換体等の塩基性が高いものに比べて、低い電圧で異種イオン交換体界面での水の解離反応が進行するといわれている。さらに、陰極側小脱塩室152は混床形態であるため、カチオン交換体151と低塩基性アニオン交換体153との異種イオン交換体界面が多く存在し、陰極側小脱塩室152における電気抵抗は、異種イオン交換体界面で生じる水の解離反応による影響をより大きく受ける。このため、陰極側小脱塩室152に用いるアニオン交換体を低塩基性のアニオン交換体とすることで、異種イオン交換体界面は低塩基性アニオン交換体153とカチオン交換体151とで形成され、低い電圧で水の解離反応が進行でき、EDIを低い電圧で運転することができる。この結果、省エネルギー化が図れる。加えて、電気抵抗が増大する原因となる混床形態の陰極側小脱塩室152の電気抵抗を低くすることで、脱塩室当たりの被処理水の通水量を増大させるために脱塩室を厚くしても、低い電圧で被処理水を大量処理できる。
【0013】
低塩基性アニオン交換体153は、アニオン成分の吸着力が低いため、被処理水B中には、多くのアニオン成分が残存したままとなる。本発明のEDIは脱塩室2室構造であるため、陰極側小脱塩室152を流通した被処理水Bを陽極側小脱塩室154で再度処理することで、被処理水B中に残存するアニオン成分を高度に除去できる。このため、良好な水質の脱イオン水Cを得ることができる。
【0014】
本発明の実施形態の一例について、図2を用いて説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。図2は、本発明の実施形態にかかるEDI10の断面図である。図2に示すように、EDI10は陰極22と陽極62との間に、複数の脱塩室50が、濃縮室30に挟持されて配置されている。
【0015】
脱塩室50は、陰極側小脱塩室52と陽極側小脱塩室54とで構成されている。陰極側小脱塩室52は、カチオン交換膜42と枠体51と中間イオン交換膜44とが陰極22側から順に配置され、枠体51の開口部にイオン交換体が充填され形成されている。陽極側小脱塩室54は、中間イオン交換膜44と枠体53とアニオン交換膜46とが陰極22側から順に配置され、枠体53の開口部にイオン交換体が充填され形成されている。こうして、脱塩室50は中間イオン交換膜44によって厚さ方向に略二分され、脱塩室50には、中間イオン交換膜44を介して隣接する陰極側小脱塩室52と陽極側小脱塩室54とが設けられている。
【0016】
陰極側小脱塩室52には、被処理水流入ライン55と被処理水流出ライン56とが接続されている。被処理水流出ライン56は、図示されない配管により、被処理水流入ライン57と接続されている。陽極側小脱塩室54には、被処理水流入ライン57と脱イオン水流出ライン58とが接続されている。「送水手段」は、被処理水流出ライン56、被処理水流入ライン57、及び、被処理水流出ライン56と被処理水流入ライン57とを接続する図示されない配管で構成されている。陰極22及び陽極62は、図示されない電源と接続されている。
【0017】
陰極室20は、陰極22と枠体21と仕切り膜24とが、陰極22側から順に配置され、形成されている。陰極室20には、電極水流入ライン23と電極水流出ライン25とが接続されている。陽極室60は、仕切り膜24と枠体61と陽極62とが、陰極22側から順に配置され、形成されている。陽極室60には、電極水流入ライン63と電極水流出ライン65とが接続されている。
【0018】
濃縮室30は、脱塩室50の両側にカチオン交換膜42又はアニオン交換膜46を介して枠体31が配置され、形成されている。濃縮室30には、濃縮水流入ライン33と濃縮水流出ライン35とが接続されている。
【0019】
イオン交換膜としては大別すると、原料モノマー液を補強体に含浸させた後に重合させ、全体を均質に形成した均質膜と、イオン交換樹脂を溶解成型可能なポリオレフィン系樹脂と共に粉砕成型した不均質膜の2種類がある。本実施形態におけるカチオン交換膜42、アニオン交換膜46はいずれも特に限定されず、EDIの製造の適性や、被処理水の水質、脱イオン水に求める水質、処理量等に応じて選択することができる。
【0020】
中間イオン交換膜44は、被処理水の水質、脱イオン水に求める水質、陰極側小脱塩室52又は陽極側小脱塩室54に充填するイオン交換体の種類等を勘案して選択することができる。中間イオン交換膜44としては、アニオン交換膜もしくはカチオン交換膜の単一膜、又は、アニオン交換膜とカチオン交換膜との両方を配置した複合膜のいずれであってもよい。中でも、アニオン交換膜もしくはカチオン交換膜の単一膜、又は、バイポーラ膜を用いることが好ましく、被処理水中のアニオン成分を効率的に除去する観点から、アニオン交換膜の単一膜を使用することがより好ましい。なお、複合膜とは、イオン交換膜が極性の異なる領域を有するものをいう。例えば、モザイク膜やバイポーラ膜等が挙げられる。複合膜における、アニオン交換膜とカチオン交換膜との比率は、被処理水の水質や処理目的等によって、適宜設定することができる。
【0021】
陰極側小脱塩室52に充填するイオン交換体は、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等が挙げられ、この内、最も汎用的であるイオン交換樹脂を用いることが好ましい。
【0022】
陰極側小脱塩室52に充填するイオン交換体の充填形態は、アニオン交換体とカチオン交換体との混床形態である。アニオン交換体とカチオン交換体との充填割合は、被処理水の水質、脱イオン水に求める水質、処理水量等を勘案して設定することができ、例えば、アニオン交換体:カチオン交換体=10:90〜80:20(体積比)の範囲で設定することが好ましく、30:70〜50:50の範囲で設定することがより好ましい。上述の範囲であれば、陰極側小脱塩室52において、被処理水中のカチオン成分を効率的に除去できるためである。なお、「混床形態」とは、アニオン交換体とカチオン交換体とが、任意の比率で混合され充填された状態をいう。
【0023】
陰極側小脱塩室52に充填するアニオン交換体は、低塩基性アニオン交換体である弱塩基性アニオン交換体、中塩基性アニオン交換体、II形強塩基性アニオン交換体からなる群から選択される少なくとも一種を含むものである。低塩基性アニオン交換体を含むことで、陰極側小脱塩室52において、カチオン交換体と低塩基性アニオン交換体との界面、又は、カチオン交換膜42と低塩基性アニオン交換体との界面で水分解が効率的に行われ、低電圧でEDI10を運転できる。陰極側小脱塩室52に充填するアニオン交換体中の低塩基性アニオン交換体の割合は、被処理水の水質、脱イオン水に求める水質、処理水量等を勘案して設定することができる。例えば、陰極側小脱塩室52に充填するアニオン交換体に含まれる低塩基性アニオン交換体の割合は、50体積%を超えることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることがさらに好ましく、100体積%であってもよい。上記の割合であれば、陰極側小脱塩室52の電圧を大きく低減できるためである。
【0024】
強塩基性アニオン交換体は、例えば、第4級アンモニウム塩基(R−N)等の強塩基性官能基が導入されたアニオン交換体である。第4級アンモニウム塩基は、テトラメチルアミンのようにその窒素に結合する基がアルキル基(例えば、メチル基)だけの場合をI形、例えばトリメチルアミノエタノールのように該窒素に結合する基の中にアルカノール基(例えば、−COH等)を含む場合をII形といい、II形の方がI形よりもアニオン成分に対する吸着力が低い。このようなI形の官能基が導入されたアニオン交換体をI形強塩基(最強塩基)性アニオン交換体といい、II形の官能基が導入されたアニオン交換体をII形強塩基性アニオン交換体という。弱塩基性アニオン交換体は、第1〜3級アミン等の弱塩基性官能基が導入されたアニオン交換体である。中塩基性アニオン交換体は、第4級アンモニウム塩基のような強塩基性官能基と、第1〜3級アミンのような弱塩基性官能基とが、強塩基性官能基数/弱塩基性官能基数で表される比率5/5〜3/7で導入されたアニオン交換体である。なお、陰極側小脱塩室52に充填する低塩基性アニオン交換体は、弱塩基性アニオン交換体又は中塩基性アニオン交換体又はII形強塩基性アニオン交換体を一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0025】
このような低塩基性アニオン交換体の内、II形強塩基性アニオン交換樹脂としてはアンバーライト(商品名)IRA410J、アンバーライト(商品名)IRA411、アンバージェット(商品名)4010(以上、ローム・アンド・ハース社製)、ダイヤイオン(商品名)SA20A、ダイヤイオン(商品名)SA21A、ダイヤイオン(商品名)PA408、ダイヤイオン(商品名)PA412、ダイヤイオン(商品名)PA418(以上、三菱化学株式会社製)、DOWEX MARATHON(商品名)A2、DOWEX(商品名)SAR、DOWEX(商品名)MSA−2(以上、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製)、Purolite(商品名)A200、Purolite(商品名)A300、Purolite(商品名)A510(以上、ピュロライト社製)等が挙げられる。
【0026】
中塩基性アニオン交換樹脂としてはアンバーライト(商品名)IRA478RF(ローム・アンド・ハース社製)等が挙げられる。弱塩基性アニオン交換樹脂としてはアンバーライト(商品名)IRA67、アンバーライト(商品名)IRA96SB、アンバーライト(商品名)XT6050RF(以上、ローム・アンド・ハース社製)、ダイヤイオン(商品名)WA10、ダイヤイオン(商品名)WA20、ダイヤイオン(商品名)WA21J、ダイヤイオン(商品名)WA30(以上、三菱化学株式会社製)、DOWEX MARATHON(商品名)WBA、DOWEX MARATHON(商品名)WBA2、DOWEX(商品名)66(以上、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製)、Purolite(商品名)A845、Purolite(商品名)A847、Purolite(商品名)A830、Purolite(商品名)A100、Purolite(商品名)A103S(以上、ピュロライト社製)等が挙げられる。
【0027】
陰極側小脱塩室52に充填するカチオン交換体の種類は限定されず、強酸性カチオン交換体、弱酸性カチオン交換体のいずれを用いてもよい。なお、陰極側小脱塩室52に充填するカチオン交換体は、強酸性カチオン交換体又は弱酸性カチオン交換体を一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0028】
このようなカチオン交換体の内、強酸性カチオン交換樹脂としてはアンバーライト(商品名)IR120B、アンバーライト(商品名)IR124(以上、ローム・アンド・ハース社製)、DOWEX MARATHON(商品名)C(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製)等が挙げられる。
【0029】
陽極側小脱塩室54に充填するイオン交換体は、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等が挙げられ、この内、最も汎用的であるイオン交換樹脂を用いることが好ましい。
【0030】
陽極側小脱塩室54に充填するイオン交換体は、アニオン交換体を含むものである。即ち、陽極側小脱塩室54に充填するイオン交換体の充填形態は、アニオン交換体の単床形態、又は、アニオン交換体とカチオン交換体との混床形態とすることができる。陽極側小脱塩室54では、主に陰極側小脱塩室52で除去できなかった被処理水中のアニオン成分を除去するためである。中でも、陽極側小脱塩室54のイオン交換体の充填形態は、アニオン交換体の単床形態とすることが好ましい。陽極側小脱塩室54をアニオン交換体の単床形態とすることで、陽極側小脱塩室54ではイオン成分の移動方向が一方向となり、電気抵抗が低減され電圧が低くなるためである。陽極側小脱塩室54を混床形態とする場合、アニオン交換体とカチオン交換体との割合は、被処理水の水質、脱イオン水に求める水質を勘案して設定することができる。例えば、陽極側小脱塩室54に充填するイオン交換体に対するアニオン交換体の割合が、50体積%以上、100体積%未満であることが好ましく、80体積%以上100体積%未満であることがより好ましい。
【0031】
陽極側小脱塩室54に充填するアニオン交換体は、被処理水の水質、脱イオン水に求める水質を勘案して決定することができ、I形強塩基(最強塩基)性アニオン交換体、II形強塩基性アニオン交換体、中塩基性アニオン交換体、弱塩基性アニオン交換体のいずれも用いることができる。なお、陽極側小脱塩室54に充填するアニオン交換体は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0032】
I形強塩基(最強塩基)性アニオン交換体の内、例えばI形強塩基(最強塩基)性アニオン交換樹脂としてアンバーライト(商品名)IRA402BL、アンバージェット(商品名)4002、アンバージェット(商品名)4400(以上、ローム・アンド・ハース社製)、ダイヤイオン(商品名)SA10A、ダイヤイオン(商品名)SA11A、ダイヤイオン(商品名)SA12A(以上、三菱化学株式会社製)、DOWEX MARATHON(商品名)A(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製)、Purolite(商品名)A400(ピュロライト社製)等が挙げられる。
【0033】
陽極側小脱塩室54に充填するカチオン交換体の種類は限定されず、強酸性カチオン交換体、弱酸性カチオン交換体のいずれを用いてもよい。なお、陽極側小脱塩室54に充填するカチオン交換体は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0034】
枠体51、53は、絶縁性を有し、被処理水が漏洩しない素材であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリカーボネート、ノリル等の樹脂製の枠体を挙げることができる。
枠体51、53の厚さは特に限定されることなく、所望する陰極側小脱塩室52、陽極側小脱塩室54の厚さに応じて設定することができる。また、枠体51、53の開口部の面積が大きい場合には、枠体51、53のくりぬかれた空間に支持体を設けてもよい。支持体を設けることで、カチオン交換膜42、中間イオン交換膜44、アニオン交換膜46が湾曲して、イオン交換体の充填量が不均一になることを防止できるためである。前記支持体は、絶縁性を有し、被処理水の流通を妨げない素材であれば特に限定されず、例えば、スリットが設けられた、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリカーボネート、ノリル等の樹脂製の支持体を挙げることができる。
【0035】
陰極側小脱塩室52の厚さは、被処理水や脱イオン水の水質、処理水量、充填するイオン交換体の種類を勘案して設定することができ、例えば、2〜50mmの範囲で設定することが好ましく、3〜30mmとすることがより好ましい。陰極側小脱塩室52の厚さは、薄すぎると通水速度(LV)の上昇によって差圧が高くなり陰極側小脱塩室52の破損を招いたり、運転上の困難を起こすため好ましくない。陰極側小脱塩室52の厚さは、厚すぎると電気抵抗が高くなる。ここで、陰極側小脱塩室52は、低塩基性アニオン交換体が含まれる混床形態であるため、従来の混床形態の脱塩室に比べて電気抵抗が低い。このため、1つの小脱塩室当たりの被処理水の流量を増大させるために、陰極側小脱塩室52の厚さを従来のEDIに比べて厚くすることができる。なお、LVとは、単位面積当たりの流量で、m/hで表される線速度である(以降において同じ)。
陽極側小脱塩室54の厚さは、陰極側小脱塩室52の厚さと同様に、被処理水や脱イオン水の水質、処理水量、充填するイオン交換体の種類を勘案して設定することができる。
【0036】
濃縮室30は、濃縮水が流通できれば特に限定されず、例えば、枠体31の開口部には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリカーボネート、ノリル等の樹脂製のメッシュや、通水性を有する格子状の枠材を設置してもよいし、イオン交換体を充填してもよいし、何も配置しなくてもよい。電気抵抗を低減する観点からは、イオン交換体が充填されていることが好ましい。濃縮室30にイオン交換体を充填する場合、充填するイオン交換体としては、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等が挙げられ、この内、最も汎用的であるイオン交換樹脂を用いることが好ましい。
【0037】
濃縮室30におけるイオン交換体の充填形態は特に限定されず、被処理水の水質等を勘案して決定することができ、アニオン交換体単床形態、カチオン交換体単床形態、又は、アニオン交換体とカチオン交換体との混床形態、もしくは、複床形態等のいずれも用いることができる。例えば、濃縮室30のアニオン交換膜46面でのスケール生成防止の観点から、アニオン交換体が単床形態で充填されていてもよい。アニオン交換膜46に接するアニオン交換体層を設けることにより、陽極側小脱塩室54から濃縮室30へのアニオン成分の移動が促進され、濃縮室30側のアニオン交換膜46面にアニオン成分が高濃度にて存在して、濃度分極が生じるのを抑制できるためである。
【0038】
枠体31の材質は、枠体51と同様である。枠体31の厚さは、所望する濃縮室30の厚さに応じて設定することができる。濃縮室30の厚さは、被処理水の水質、脱イオン水に求める水質を勘案して設定することができ、例えば、2〜20mmの範囲とすることが好ましい。
【0039】
陰極室20は、電極水が流通できる構造であればよい。例えば、枠体21の開口部には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリカーボネート、ノリル等の樹脂製のメッシュや、通水性を有する格子状の枠材を設置してもよいし、イオン交換体を充填してもよい。陰極室20にイオン交換体を充填する場合、充填するイオン交換体としては、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等が挙げられ、この内、最も汎用的であるイオン交換樹脂を用いることが好ましい。陽極室60は、陰極室20と同様に、電極水が流通できる構造であれば良い。
【0040】
陰極室20におけるイオン交換体の充填形態は特に限定されず、被処理水の水質等を勘案して決定することができ、アニオン交換体単床形態、カチオン交換体単床形態、又は、アニオン交換体とカチオン交換体との混床形態、もしくは、複床形態等のいずれも用いることができる。陽極室60におけるイオン交換体の充填形態は、陰極室20におけるイオン交換体の充填形態と同様である。
【0041】
陰極22は、陰極としての機能を発揮するものであれば特に限定されず、例えば、板状のステンレスや網状のステンレス、又は、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属、あるいは前記貴金属をチタン等に被覆した網状あるいは板状の電極を挙げることができる。陽極62は、陽極として機能を発揮するものであれば特に限定されないが、電極水中にClが存在する場合には、陽極には塩素発生が起きるため、耐塩素性能を有するものが好ましい。例えば、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属、あるいは前記貴金属をチタン等に被覆した網状あるいは板状の電極を挙げることができる。
【0042】
仕切り膜24は、イオン交換膜であれば特に限定されず、被処理水の水質や、EDI10の運転条件等を考慮して選択することができる。例えば、カチオン交換膜又はアニオン交換膜を選択することができる。
【0043】
枠体21の材質は、枠体51と同様である。枠体21の厚さは、所望する陰極室20の厚さに応じて設定することができる。枠体61の材質は、枠体51と同様である。枠体61の厚さは、所望する陽極室60の厚さに応じて設定することができる。
【0044】
EDI10を用いた脱イオン水の製造方法について、図2を用いて説明する。まず、電極水流入ライン23から陰極室20に電極水を流入させ、電極水流入ライン63から陽極室60に電極水を流入させる。濃縮水流入ライン33から濃縮室30に濃縮水を流入させる。そして、陰極22と陽極62との間に、直流電圧を印加する。
【0045】
被処理水を被処理水流入ライン55から陰極側小脱塩室52に流入させる。流入した被処理水は、陰極側小脱塩室52内のイオン交換体内を拡散しながら流通し、被処理水流出ライン56から流出する。この間、被処理水中のNa、Ca2+等のカチオン成分はカチオン交換体に吸着され、Cl、HCO等のアニオン成分はアニオン交換体に吸着される。同時に、異種イオン交換体界面では、水分解によりOHとHとが生成される。そして、カチオン交換体は、生成したHと、カチオン交換体に吸着されているカチオン成分とが交換され、再生される。カチオン交換体から脱着したカチオン成分は、カチオン交換膜42を透過して、濃縮室30に移動する。濃縮室30に移動したカチオン成分は、濃縮水に取り込まれて濃縮水流出ライン35から排出される。
【0046】
アニオン交換体は、生成したOHと、アニオン交換体に吸着されているアニオン成分とが交換され、再生される。そして、アニオン交換体から脱着したアニオン成分は、中間イオン交換膜44側に移動する。ここで、中間イオン交換膜44がアニオン交換膜の場合には、アニオン交換体から脱着したアニオン成分、及び、陰極側小脱塩室52で生成したOHが陽極62に引き寄せられ、中間イオン交換膜44を透過して陽極側小脱塩室54へ移動する。中間イオン交換膜44がカチオン交換膜又はバイポーラ膜の場合は、アニオン交換体から脱着したアニオン成分、及び、OHは中間イオン交換膜44で反発され、被処理水と共に被処理水流出ライン56から流出する。
【0047】
被処理水流出ライン56から流出した被処理水は、図示されない配管と被処理水流入ライン57とを順に経由し、陽極側小脱塩室54に流入する。陽極側小脱塩室54に流入した被処理水は、陽極側小脱塩室54内のイオン交換体内を拡散しながら流通する。この間、被処理水中のアニオン成分はアニオン交換体に吸着される。そして、アニオン交換体は、吸着されたアニオン成分とOHとが交換されて再生する。アニオン交換体から脱着したアニオン成分は、陽極62に引き寄せられアニオン交換膜46を透過し、濃縮室30に移動する。濃縮室30に移動したアニオン成分は、濃縮水に取り込まれて濃縮水流出ライン35から排出される。ここで、中間イオン交換膜44がカチオン交換膜である場合には、陽極側小脱塩室54内のカチオン成分やHが陰極22に引き寄せられ、中間イオン交換膜44を透過して陰極側小脱塩室52に移動する。こうして、被処理水は、カチオン成分とアニオン成分とが高度に除去され、脱イオン水となって脱イオン水流出ライン58から流出する。
【0048】
電極水流入ライン23から、陰極室20に流入した電極水は、陰極室20内を上昇流で流通する。この間、電極水は、陰極22から発生したH等を取り込んで、電極水流出ライン25から流出する。電極水流入ライン63から陽極室60に流入した電極水は、陽極室60内を上昇流で流通する。この間、電極水は、陽極62から発生したCl、O等を取り込んで、電極水流出ライン65から流出する。
【0049】
被処理水は特に限定されることはないが、工業用水や井水の濁質成分を除濁膜にて除去した水を、逆浸透(RO)膜にて処理した水等が挙げられる。
【0050】
陰極側小脱塩室52内における被処理水の通水量は特に限定されることはなく、充填するイオン交換体中の低塩基性アニオン交換体の割合や、被処理水の水質等を勘案して決定することができる。通水量は空間速度(SV)で表され、SVの単位はイオン交換体の単位体積(L)に対して1時間に流通させる流量(L)であるL/L・h−1で表される(以降において同じ)。一般的に、SVが大きすぎると、陰極側小脱塩室52内では、被処理水中のイオン成分とイオン交換体との接触時間が短くなり、イオン除去性能が低下するおそれがある。しかしながら、陰極側小脱塩室52は、低塩基性アニオン交換体が含まれる混床形態であり、電気抵抗が低い。このため、陰極側小脱塩室52では、低塩基性アニオン交換体を含まない混床形態とした脱塩室と同等の電圧でも、高い電流で多量の被処理水を処理することができる。陰極側小脱塩室52内における被処理水の通水量は、SV=100〜1000L/L・h−1の範囲で設定することが好ましい。陽極側小脱塩室54における被処理水の通水量は、陰極側小脱塩室52内における被処理水の通水量と同様である。
【0051】
濃縮室30内における、濃縮水の流量は特に限定されることはなく、EDI10の能力や、被処理水の水質や処理量を勘案して決定することができる。濃縮水は、濃縮室30に移動してきたイオンを濃縮水内に拡散して、EDI10外へ流出させるという目的を有する。このことから、濃縮水の流量は、被処理水の通水量や、被処理水のイオン濃度、脱イオン水の生産量との関係で決定することが好ましく、例えば、下記(1)式で表される濃縮倍率が3〜20となるように、濃縮水の流量を決定することが好ましい。なお、下記(1)式による濃縮倍率は、被処理水と濃縮水に同一の原水を用いて、かつ脱塩室50中のイオンが全て濃縮室30に移行すると仮定し定義付けられる。
【0052】
【数1】

【0053】
濃縮水の流量が少なすぎると、濃縮室30に移行したイオン成分の濃度拡散にむらが生じ、イオン交換膜面の濃度分極層が厚くなり、スケール生成のおそれがある。一方、濃縮水の流量が多すぎると、脱イオン水の回収率が低下するため好ましくない。濃縮水に用いる原水は、特に限定されることはなく、被処理水と同じ水源の水を濃縮水の原水として使用しても良いし、脱イオン水や純水等を使用しても良い。
【0054】
陰極室20に流通させる電極水の原水は特に限定されることはなく、被処理水と同じ水源の水を電極水としても良いし、脱塩室50で処理された脱イオン水、比抵抗値0.2〜18.2MΩ・cmの水を電極水としても良い。中でも、脱塩室50で処理された脱イオン水、比抵抗値0.2〜18.2MΩ・cmの水であることが好ましい。陽極室60における電極水の原水は、陰極室20における電極水の原水と同様である。陰極室20、陽極室60における電極水の流量は特に限定されず、印加電圧等に応じて決定することが好ましい。電極水の流量が少なすぎると、発生したH、O、Clガスを充分に排出することが困難となり、電極水の流量が多すぎると、回収率が低下するため、好ましくない。
【0055】
電極水の流通方式は特に限定されず、例えば、陰極室20を流通した電極水を陽極室60に流通させてもよいし、陽極室60を流通した電極水を陰極室20に流通させてもよい。また、例えば、陰極室20と陽極室60とにそれぞれ個別に電極水を流通させ、排水してもよい。
【0056】
陰極22と陽極62とに印加する電流は被処理水の水質や、陰極側小脱塩室52及び陽極側小脱塩室54に充填したイオン交換体の種類や充填形態を勘案して設定することができる。例えば、脱塩室50の有効イオン交換膜の面積当たりの電流密度を0.1〜10A/dmの範囲で設定することが好ましい。脱塩室50の「有効イオン交換膜の面積」とは、電流が通される部分である。陰極側小脱塩室52を例に説明すると、カチオン交換膜42の膜面積から、枠体51が接触している面積を除いたものである。
【0057】
上述のとおり、本発明のEDIは脱塩室2室構造であるため、小脱塩室当たりの濃縮室の数は脱塩室1室構造のEDIの脱塩室当たりの濃縮室の数の約半分になる。このため、EDI全体の電気抵抗を低減でき、導電率が向上しEDI全体の電気抵抗を低減できる。陰極側小脱塩室にはイオン交換体が混床形態で充填されているが、アニオン交換体が低塩基性アニオン交換体を含むため、電気抵抗が低い。加えて、低塩基性アニオン交換体とカチオン交換体との界面では、効率的に水分解が行われる。このため、印加電流値を上げても、低い電圧でEDIを運転することができる。電圧が高い状態でEDIを運転すると、異種イオン交換体界面での発熱等により、部材が劣化し、EDIの処理能力が低下するおそれがある。特にカチオン交換膜、アニオン交換膜、中間イオン交換膜が劣化して破損した場合には、イオン成分が脱塩室と濃縮室との間で漏洩し、脱イオン水の水質が低下する。本発明のEDIでは、低い電圧でEDIを運転できるため、異種イオン交換体界面での発熱等による部材劣化を抑制することができる。
【0058】
陰極側小脱塩室に充填されている低塩基性アニオン交換体は、アニオン成分に対する吸着力が低いため、陰極側小脱塩室を流通させ処理した水にはアニオン成分が残存する場合が多い。本発明のEDIでは、陰極側小脱塩室で処理した水を陽極側小脱塩室に充填したアニオン交換体に接触させて再度処理することで、被処理水中のアニオン成分を高度に除去することができる。加えて、被処理水中のカチオン成分は、陰極側に設けられた陰極側小脱塩室で高度に除去することができる。この結果、陰極側小脱塩室で処理した水を陽極側小脱塩室で処理することで、カチオン成分とアニオン成分とが高度に除去され、比抵抗の高い良好な水質の脱イオン水を得ることができる。
【0059】
陰極側小脱塩室に充填するアニオン交換体に含まれる低塩基性アニオン交換体の割合は、好ましくは50体積%を超え、より好ましくは70体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上とすることで、低い電圧でも異種イオン交換体界面における水分解の効率を上げることができる。さらに、陽極側小脱塩室に充填するイオン交換体をアニオン交換体の単床形態とすることで、陽極側小脱塩室の電気抵抗を低減できる。このため、脱塩室全体の電気抵抗を低減でき、より低い電圧で高い電流を流すことができる。この結果、脱塩室当たりの処理量を増大させることができ、脱塩室を厚くし、脱塩室内での通水差圧の上昇を抑制しながら良好な水質を維持することができる。
【0060】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
上述の実施形態では、陰極側小脱塩室及び陽極側小脱塩室共に、被処理水を下降流で流通しているが、被処理水の流通方向はこれに限られず、上昇流であってもよいし、陰極側小脱塩室と陽極側小脱塩室とで流通方向が異なっていてもよい。
【0061】
上述の実施形態では、濃縮水を下降流で流通しているが、濃縮水の流通方向は上昇流であってもよいし、濃縮室毎に異なっていてもよい。また、上述の実施形態では、電極水を上昇流で流通しているが、電極水の流通方向は下降流であってもよいし、陰極室と陽極室とで異なっていてもよい。
【0062】
上述の実施形態では、3枚の脱塩室が陰極と陽極との間に配置されているが、本発明はこれに限定されず、脱塩室の数は1枚又は2枚であってもよいし、4枚以上であってもよい。
【0063】
上述の実施形態では、陰極室を形成する仕切り膜を介して隣接する濃縮室が設けられているが、該濃縮室を省略し、陰極室が濃縮室を兼ねていてもよい。同様に、陽極室を形成する仕切り膜を介して隣接する濃縮室を省略し、陽極室が濃縮室を兼ねていてもよい。
【実施例】
【0064】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、実施例に限定されるものではない。
(測定方法)
<水質評価:導電率、比抵抗>
水質評価には導電率ならびに比抵抗を用いた。不純物を全く含んでいない水の場合、25℃の水における導電率の理論値は0.055μS/cm、比抵抗の理論値は18.2MΩ・cmとなる。脱イオン水の水質は、比抵抗が18.2MΩ・cmに近づき、かつ高ければ高いほど水質としては清浄であると評価できる。脱イオン水の水質評価は、比抵抗をもって行った。
導電率は、導電率計(873CC、FOXBORO社製)を用いて測定した。また、比抵抗は、比抵抗計(873RS、FOXBORO社製)を用いて測定した。
【0065】
(実施例1)
図2に示すEDI10と同様の、中間イオン交換膜で、陰極側小脱塩室と陽極側小脱塩室とに区画されている3枚の脱塩室が設けられ、該脱塩室の両側に濃縮室が設けられ、脱塩室と濃縮室とが、陰極と陽極との間に配置されたEDIを下記仕様にて作製して、EDI−Aを得た。得られたEDI−Aは、陰極側小脱塩室に充填されたアニオン交換体中の低塩基性アニオン交換体の割合が100体積%のものである。このEDI−Aについて、下記運転条件にて連続運転を行った。被処理水は、陰極側小脱塩室に下降流で流通させた後、陽極側小脱塩室に下降流で流通させた。濃縮水は、各濃縮室に下降流で流通させて排水し、電極水は、陰極室と陽極室にそれぞれ上昇流で流通させて排水した。運転開始後、200時間毎に運転電圧、電極間の電気抵抗、及び、脱イオン水の比抵抗を測定し、その結果を表1、図3、4に示す。
【0066】
<EDI仕様>
(1)カチオン交換膜:株式会社アストム製
(2)中間イオン交換膜:株式会社アストム製、アニオン交換膜
(3)アニオン交換膜:株式会社アストム製
(4)仕切り膜:陰極室の仕切り膜;株式会社アストム製、アニオン交換膜,陽極室の仕切り膜;株式会社アストム製、カチオン交換膜
(5)陰極側小脱塩室:高さ300mm、幅80mm、厚さ5mm
(6)陽極側小脱塩室:高さ300mm、幅80mm、厚さ5mm
(7)陰極側小脱塩室の充填イオン交換体:II形強塩基性アニオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製)50体積%、強酸性カチオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製)50体積%の混床形態
(8)陽極側小脱塩室の充填イオン交換体:I形強塩基(最強塩基)性アニオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製)の単床形態
(9)濃縮室:高さ300mm、幅80mm、厚さ4mm
(10)濃縮室の充填イオン交換体:I形強塩基(最強塩基)性アニオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製)の単床形態
(11)陰極室:高さ300mm、幅80mm、厚さ4mm
(12)陰極室の充填イオン交換体:I形強塩基(最強塩基)性アニオン交換樹脂の単床形態
(13)陽極室:高さ300mm、幅80mm、厚さ4mm
(14)陽極室の充填イオン交換体:強酸性カチオン交換樹脂の単床形態
【0067】
<運転条件>
(1)被処理水の導電率:10〜15μS/cm(RO膜透過水)
(2)被処理水の比抵抗:0.066〜0.1MΩ・cm
(3)被処理水流量:72L/h(脱塩室1枚当たり24L/h)
(4)陰極側小脱塩室SV:200L/L・h−1
(5)陽極側小脱塩室SV:200L/L・h−1
(6)濃縮水の原水の導電率:10〜15μS/cm(RO膜透過水)
(7)濃縮水流量:8L/h
(8)電極水の原水の比抵抗:比抵抗が5MΩ・cmを超える水
(9)電極水流量:10L/h
(10)運転電流値:1A
(11)電流密度:0.42A/dm
【0068】
(実施例2)
陰極側小脱塩室の充填イオン交換体をI形強塩基(最強塩基)性アニオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製)22.5体積%、II形強塩基性アニオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製)27.5体積%、強酸性カチオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製)50体積%の混床形態とした以外は、EDI−Aと同様の仕様にて、EDI−Bを得た。こうして得られたEDI−Bは、陰極側小脱塩室に充填したアニオン交換体中の低塩基性アニオン交換体の割合が55体積%のものである。このEDI−Bを用いて、実施例1と同様の運転条件で連続運転を行った。200時間毎に運転電圧、電極間の電気抵抗、及び、脱イオン水の比抵抗を測定し、その結果を表1、図3、4に示す。
【0069】
比較例1、2に用いた脱塩室1室構造のEDIについて、図6を用いて説明する。
図6は、EDI900の断面図である。EDI900は、陰極室920と陽極室960との間に、3枚の脱塩室950と、脱塩室950の両側に設けられた濃縮室930とが配置されている。陰極室920は、陰極922と、枠体921と、仕切り膜924とが陰極922側から順に配置され形成されている。陽極室960は、仕切り膜924と、枠体961と、陽極962とが陰極922側から順に配置され形成されている。陰極室920には電極水流入ライン923と、電極水流出ライン925とが接続され、陽極室960には、電極水流入ライン963と電極水流出ライン965とが接続されている。
【0070】
脱塩室950は、カチオン交換膜942と、枠体951と、アニオン交換膜946とが陰極922側から順に配置され、枠体951の開口部にイオン交換体が充填され形成されている。脱塩室950には、被処理水流入ライン955と、脱イオン水流出ライン958とが接続されている。濃縮室930は、脱塩室950の両側に、枠体931が配置され形成されている。濃縮室930には濃縮水流入ライン933と、濃縮水流出ライン935とが接続されている。
【0071】
(比較例1)
EDI900と同様のEDIを下記仕様にて、3枚の脱塩室を配置して作成し、EDI−Cを得た。EDI−Cを用いて、脱塩室内の被処理水の空間速度をSV=200L/L・h−1とした以外は、実施例1と同様の運転条件で連続運転を行った。運転に際し、被処理水は脱塩室を下降流で流通させ、脱イオン水を得た。濃縮水は、各濃縮室に下降流で流通させて排水し、電極水は、陰極室と陽極室とにそれぞれ上昇流で流通させて排水した。運転開始後、200時間毎に運転電圧、電極間の電気抵抗、及び、脱イオン水の比抵抗を測定し、その結果を表1、図3、4に示す。
【0072】
<EDI仕様>
(1)カチオン交換膜:株式会社アストム製
(2)アニオン交換膜:株式会社アストム製
(3)仕切り膜:陰極室の仕切り膜;株式会社アストム製、アニオン交換膜,陽極室の仕切り膜;株式会社アストム製、カチオン交換膜
(4)脱塩室:高さ300mm、幅80mm、厚さ5mm
(5)脱塩室の充填イオン交換体:I形強塩基(最強塩基)性アニオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製)50体積%、強酸性カチオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製)50体積%の混床形態
(6)濃縮室:高さ300mm、幅80mm、厚さ4mm
(7)濃縮室の充填イオン交換体:I形強塩基(最強塩基)性アニオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製)の単床形態
(8)陰極室:高さ300mm、幅80mm、厚さ4mm
(9)陰極室の充填イオン交換体:I形強塩基(最強塩基)性アニオン交換樹脂の単床形態
(10)陽極室:高さ300mm、幅80mm、厚さ4mm
(11)陽極室の充填イオン交換体:強酸性カチオン交換樹脂の単床形態
【0073】
(比較例2)
脱塩室の充填イオン交換体をII形強塩基性アニオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製)50体積%、強酸性カチオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製)50体積%の混床形態とした以外はEDI−Cと同様の仕様にて、EDI−Dを得た。EDI−Dを用いて、比較例1と同様の運転条件で連続運転を行った。200時間毎に運転電圧、電極間の電気抵抗、及び、脱イオン水の比抵抗を測定し、その結果を表1、図3、4に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1に示すとおり、実施例1では、運転開始1000時間後の運転電圧は12.65Vであり、運転開始後200〜1000時間における運転電圧の上昇は、2.48Vであった。実施例2では、運転開始1000時間後の運転電圧は18.90Vであり、運転開始後200〜1000時間における運転電圧の上昇は、5.40Vであった。比較例2では、運転開始1000時間後の運転電圧が11.72Vであり、運転開始後200〜1000時間における電圧上昇は2.39Vであった。一方、比較例1では、運転開始1000時間後の運転電圧は23Vを超えており、実施例1又は比較例2の1.8倍以上、実施例2の約1.2倍の運転電圧となっていた。加えて、比較例1では、運転開始後200〜1000時間における運転電圧の上昇は約7.5Vであり、実施例1又は比較例2の約3倍、実施例2の約1.4倍であった。このことから、混床形態として充填するアニオン交換体中に低塩基性アニオン交換体が含まれる場合には、I形強塩基(最強塩基)性アニオン交換体のみが含まれる場合に比べて、低電圧での運転が安定的にできることが判った。
【0076】
図3は、横軸に運転時間をとり、縦軸に電気抵抗をとり、EDIの運転時間と電気抵抗との関係を表すグラフである。凡例(a)は実施例1における結果、凡例(b)は実施例2における結果、凡例(c)は比較例1における結果、凡例(d)は比較例2における結果をそれぞれ表す。
表1、図3に示すとおり、運転開始後200〜1000時間において、電気抵抗は実施例1では10.17〜12.71Ωで推移し、実施例2では13.50〜18.90Ωで推移し、比較例2では9.33〜11.74Ωで推移していた。これに対し、比較例1では15.71〜23.23Ωという、高い水準で推移していた。この結果は、実施例1、2及び比較例2は、比較例1よりも運転電圧が低くなることを裏付けている。
【0077】
図4は、横軸に運転時間をとり、縦軸に比抵抗をとり、EDIの運転時間と脱イオン水の比抵抗との関係を表すグラフである。凡例(a)は実施例1における結果、凡例(b)は実施例2における結果、凡例(c)は比較例1における結果、凡例(d)は比較例2における結果をそれぞれ表す。
表1、図4に示すとおり、実施例1は運転開始1000時間後の脱イオン水の比抵抗が18.12MΩ・cmであり、運転開始後200〜1000時間における脱イオン水の比抵抗は、17.42〜18.19MΩ・cmであった。実施例2は運転開始1000時間後の脱イオン水の比抵抗が17.20MΩ・cmであり、運転開始後200〜1000時間における脱イオン水の比抵抗は、17.20〜18.00MΩ・cmであった。一方、比較例1では、運転開始1000時間後の脱イオン水の比抵抗が2.20MΩ・cmであり、比較例2では、運転開始1000時間後の脱イオン水の比抵抗が2.03MΩ・cmであった。これらの結果から、図4に示すように、II形強塩基性アニオン交換樹脂を含むイオン交換体を混床形態で充填した陰極側小脱塩室と、I形強塩基(最強塩基)性アニオン交換樹脂を単床形態で充填した陽極側小脱塩室との順に被処理水を流通させて処理するEDI−Aは、極めて高い水質の脱イオン水を安定的に製造できることが判った。
【0078】
(実施例3)
実施例1で作製したEDI−Aを用い、実施例1と同様にしてEDI−Aを連続運転した。運転開始600時間後の運転電圧、電気抵抗、脱イオン水の比抵抗を測定し、その結果を表2に示す。
【0079】
(実施例4)
被処理水流量を216L/h(脱塩室1枚当たり72L/h、陰極側小脱塩室SV=600L/L・h−1、陽極側小脱塩室SV=600L/L・h−1)、濃縮水流量24L/h、印加電流3A、電流密度1.25A/dmとした以外は、実施例3と同様にしてEDI−Aを連続運転した。運転開始600時間後の運転電圧、電気抵抗、脱イオン水の比抵抗を測定し、その結果を表2に示す。
【0080】
(実施例5)
被処理水流量を288L/h(脱塩室1枚当たり96L/h、陰極側小脱塩室SV=800L/L・h−1、陽極側小脱塩室SV=800L/L・h−1)、濃縮水流量32L/h、印加電流4A、電流密度1.67A/dmとした以外は、実施例3と同様にしてEDI−Aを連続運転した。運転開始600時間後の運転電圧、電気抵抗、脱イオン水の比抵抗を測定し、その結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
図5は、運転開始600時間後の陰極側小脱塩室ならびに陽極側小脱塩室における被処理水の空間速度(SV)と脱イオン水の比抵抗との関係、及び、陰極側小脱塩室ならびに陽極側小脱塩室における被処理水の空間速度(SV)とEDIの電気抵抗との関係を表すグラフである。凡例(e)は脱イオン水の比抵抗を示し、凡例(f)はEDI−Aの電気抵抗を示す。
表2、図5の実施例5の結果に示すように、EDI−Aは、実施例3の4倍量(小脱塩室のSV=800L/L・h−1)の被処理水を通水しても、脱イオン水は、11MΩ・cmの良好な水質を維持していた。ここで、脱塩室における被処理水の通水量をSV=200L/L・h−1で運転した比較例1では、運転開始600時間後の脱イオン水の比抵抗が1.98MΩ・cmであったこと(表1参照)を考慮すると、本発明のEDI−Aは、被処理水のSVを上げても、即ち、通水量を増大させても、脱塩室1室型のEDIよりも比抵抗の高い良好な水質の脱イオン水が得られることが判った。
【0083】
加えて、実施例5の電気抵抗が18.2Ωであり、比較例1の運転開始600時間後における電気抵抗が20.61Ω(表1参照)であったことから、本発明のEDI−Aは、被処理水の流量を増大させても、低電圧で効率的に、良好な水質の脱イオン水が得られることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明のEDIにおけるイオン成分の流れを説明する脱塩室の部分断面図である。
【図2】本発明の実施形態の一例であるEDIの断面図である。
【図3】実施例1、2及び比較例1、2におけるEDIの運転時間と電気抵抗との関係を示すグラフである。
【図4】実施例1、2及び比較例1、2におけるEDIの運転時間と脱イオン水の比抵抗との関係を示すグラフである。
【図5】実施例3〜5における、被処理水の通水速度と脱イオン水の比抵抗との関係、及び、被処理水の通水速度とEDIの電気抵抗との関係を示すグラフである。
【図6】比較例に用いたEDIの断面図である。
【符号の説明】
【0085】
10、900 電気式脱イオン水製造装置
22、922 陰極
30、130、930 濃縮室
42、142、942 カチオン交換膜
44、144 中間イオン交換膜
46、146、946 アニオン交換膜
50、150、950 脱塩室
52、152 陰極側小脱塩室
54、154 陽極側小脱塩室
56 被処理水流出ライン
57 被処理水流入ライン
62、962 陽極
151 カチオン交換体
153 低塩基性アニオン交換体
155 アニオン交換体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極側のアニオン交換膜と、陰極側のカチオン交換膜と、前記アニオン交換膜と前記カチオン交換膜との間に設けられた中間イオン交換膜と、で区画される小脱塩室にイオン交換体が充填されて脱塩室が構成され、前記脱塩室の両側に前記アニオン交換膜又は前記カチオン交換膜を介して濃縮室が設けられ、前記脱塩室と前記濃縮室とが陰極と陽極との間に配置された電気式脱イオン水製造装置において、
前記アニオン交換膜と前記中間イオン交換膜とで区画された陽極側小脱塩室に充填するイオン交換体は、アニオン交換体を含み、
前記カチオン交換膜と前記中間イオン交換膜とで区画された陰極側小脱塩室に充填するイオン交換体は、弱塩基性アニオン交換体、中塩基性アニオン交換体、II形強塩基性アニオン交換体からなる群から選択される少なくとも一種を含むアニオン交換体と、カチオン交換体との混床形態であり、
前記陰極側小脱塩室を流通した水を前記陽極側小脱塩室に流す送水手段が設けられていることを特徴とする、電気式脱イオン水製造装置。
【請求項2】
前記陰極側小脱塩室に充填するアニオン交換体に含まれる弱塩基性アニオン交換体と中塩基性アニオン交換体とII形強塩基性アニオン交換体との合計は、前記アニオン交換体の50体積%を超えている、請求項1に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項3】
前記陽極側小脱塩室に充填するイオン交換体は、アニオン交換体の単床形態である、請求項1又は2に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項4】
前記中間イオン交換膜はアニオン交換膜である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−142727(P2010−142727A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322349(P2008−322349)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】