説明

電気機器絶縁用樹脂組成物及びそれを用いて電気絶縁処理した電気機器

【課題】 電気機器絶縁用樹脂組成物が滴下処理後に電気機器の予熱によって高温にさらされた場合でも、コイルからの垂れ落ちが少なく、含浸性が良好で、且つ、コアへの付着が少ない、電気機器絶縁用樹脂組成物及びこの電気機器絶縁用樹脂組成物を用いて電気絶縁処理してなる電気機器を提供する。
【解決手段】 80℃における粘度が10〜500mPa・sで、ストラッカー固着力が300N以上である電気機器絶縁用樹脂組成物。前記樹脂組成物が、(A)ポリエポキシドとα,β−不飽和塩基酸とを反応させ、更に不飽和二塩基酸を反応させて得られる不飽和エポキシエステル樹脂を10〜50質量部、(B)ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−トを(A)成分10〜50質量部に対して、1〜50質量部、(C)トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートを(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0〜30質量部、(D)3官能以上のアクリレートまたはメタクリレートを(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して10〜200質量部含有すると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁用樹脂組成物及びそれを用いて電気絶縁処理した電気機器に関し、ツイストペアの寿命評価において、20000時間の耐熱温度が155℃以上のモータ、トランスなどの電気機器の処理方法に用いる電気機器絶縁用樹脂組成物、及び、この電気機器絶縁用樹脂組成物を用いて電気絶縁処理してなる電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ、トランス等の電気機器は、鉄コアの固着又は防錆、コイルの絶縁若しくは固着等を目的として、電気機器絶縁用樹脂組成物で処理されている。電気機器絶縁用樹脂組成物としては、固着性、硬化性、電気絶縁性などのバランスに優れた不飽和ポリエステル樹脂組成物が広く用いられている。
【0003】
近年の電気機器は、小型・軽量化、高出力化が進んだため、実機スロット内の電線が占有する割合(占積率)が高くなる傾向があり、スロット内の空隙が減少し、電気機器絶縁用樹脂組成物がスロットの中へ含浸し難くなってきている。
【0004】
特に、ドリップ処理では、予熱後の未だ熱い実機コイルへ電気機器絶縁用樹脂組成物を滴下しても、電気機器へ滴下した後に電気機器絶縁用樹脂組成物の温度が上昇して粘度が低下するため、電気機器絶縁用樹脂組成物が直ぐに垂れてしまい、満足する含浸性が得られず、さらに垂れた電気機器絶縁用樹脂組成物がコアへ付着してしまうことにより、コアに付着した電気機器絶縁用樹脂組成物を剥がし取る作業が生じ、生産性が低下してしまう事があった。
【0005】
また、含浸性の向上を目指し、電気機器絶縁用樹脂組成物の滴下量を増やして滴下するが、電気機器絶縁用樹脂組成物がまた直ぐに垂れてしまい、満足する含浸性が得られず、更に、垂れた電気機器絶縁用樹脂組成物が更にコアへ付着してしまうという悪循環が生じ、さらに、生産性が低下していた。
近年の電気機器は、高出力化が進展したため、電気機器が運転時に、より高温にさらされるようになってきた。特に、モータの回転子の場合、運転時の温度がより高くなるとともに、回転速度がより速くなり、回転子の遠心力によって、電気絶縁処理した回転子の固着性が低下し、コイルが変形してしまい、回転のバランスがとれない場合があった。このため、高温で高接着性を示す電気機器絶縁用樹脂組成物が求められるようになってきた。
【0006】
【特許文献1】特開2000−235813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電気機器絶縁用樹脂組成物が滴下処理後に電気機器の予熱によって高温にさらされた場合でも、コイルからの垂れ落ちが少なく、含浸性が良好で、且つ、コアへの付着が少ない電気機器絶縁用樹脂組成物及びこの電気機器絶縁用樹脂組成物を用いて電気絶縁処理してなる電気機器を提供することにある。
特に、環境対応の面から、ワニス処理時に発生するVOCを従来の不飽和エポキシエステル樹脂よりも、大幅に低減することが可能となる電気機器絶縁用樹脂組成物を提供することにある。
更に、近年の電気機器の高出力化・高速回転化に対応して、高温で高接着性を示す電気機器絶縁用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、高温でさらされる温度での電気機器絶縁用樹脂組成物の粘度範囲を規定する事により、滴下処理後に電気機器絶縁用樹脂組成物のコイルからの垂れ落ちが少なく、含浸性が良好で、且つ、コアへの付着が少なく、結果として、電気絶縁用樹脂組成物の滴下量を低減できることを見出した。
【0009】
本発明は、[1]80℃における粘度が10〜500mPa・sで、200℃でのストラッカー固着力が300N以上である電気機器絶縁用樹脂組成物に関する。
また、本発明は、[2]上記[1]に記載の電気機器絶縁用樹脂組成物とMW30、MW35、MW73またはMW81の電線を組み合わせた時のツイストペアの寿命評価において、20000時間の耐熱温度が155℃以上である上記[1]に記載の電気機器絶縁用樹脂組成物に関する。
また、本発明は、[3]上記[1]又は[2]に記載の電気機器絶縁用樹脂組成物が、(A)ポリエポキシドとα,β−不飽和塩基酸とを反応させ、更に不飽和二塩基酸を反応させて得られる不飽和エポキシエステル樹脂を10〜50質量部、(B)ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−トを(A)成分10〜50質量部に対して、1〜50質量部、(C)トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートを(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0〜30質量部、(D)3官能以上のアクリレートまたはメタクリレートを(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して10〜200質量部含有してなる電気機器絶縁処理用樹脂組成物に関する。
また、本発明は、[4]上記[1]ないし上記[3]のいずれかに記載の電気機器絶縁用樹脂組成物を用いた電気絶縁処理方法が、ドリップ処理方法を用いて電気絶縁処理してなる電気機器に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明になる電気機器絶縁用樹脂組成物は、高温でさらされる温度での電気機器絶縁用樹脂組成物の粘度範囲を規定する事によって、滴下処理後に電気絶縁用樹脂組成物のコイルからの垂れ落ちが少なく、含浸性が良好で、且つ、コアへの付着が少なく、結果として、電気機器絶縁用樹脂組成物の滴下量を低減でき、コアに付着した電気機器絶縁用樹脂組成物の削り取り作業を削減することができる。また、この電気機器絶縁用樹脂組成物は高温における固着性にも優れ、これを用いて電気機器絶縁処理された電気機器は、コイルの変形が防止され回転のバランスがとれるためより高温にさらされる高出力モータに対応できるなど工業的に極めて優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、電気機器絶縁用樹脂組成物は、特に制限は無く、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化樹脂が挙げられ、単独で用いても、複数を組合せて用いても良い。
また、これらの電気機器絶縁用樹脂組成物に、二酸化珪素、窒化アルミニウム、タルク等のフィラーを用いても良く、フィラーは特に制限は無く、単独で用いても、複数を組合せて用いても良い。
前記熱硬化性樹脂の中でも、不飽和エポキシエステル樹脂が好ましいものとして挙げられる。本発明で用いられる不飽和エポキシエステル樹脂は、ポリエポキシドとα,β-不飽和塩基酸とを反応させて、樹脂酸価を10mgKOH/g以下とし、次いで、不飽和二塩基酸を反応させて得られる樹脂酸価が10〜30mgKOH/gとして得られるものである。
不飽和エポキシエステル樹脂の製造条件には制限は無く、例えば、触媒を用いて100℃〜120℃で、5〜10時間反応させて合成される。本発明に用いられるポリエポキシドは、分子あたり1個以上のエポキシ基を含有する化合物で、多価アルコールもしくは、多価フェノールのグリシジルポリエーテル、エポキシ化脂肪酸もしくは、乾性油酸、エポキシジオレフィン、エポキシ化ジ不飽和酸のエステル、エポキシ化飽和ポリエステル等が挙げられる。
【0012】
α,β-不飽和塩基酸としては、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸等があり、併用してもさしつかえない。
不飽和二塩基酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の不飽和酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸などが用いられる。
付加触媒としては、塩化亜鉛、塩化リチウムなどのハロゲン化物、ジメチルサルファイト、メチルフェニルサルファイトなどのサルファイト類、ジメチルスルホキサイド、メチルスルホキサイド、メチルエチルスルホキサイドなどのスルホキサイド類、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、トリエチルアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの3級アミン及びその塩基酸または臭酸塩、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリメチルドデシルベンジルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩、パラトルエンスルホン酸などのスルホン酸類、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタンなどのメルカプタン類などが用いられる。
ポリエポキシドとα,β-不飽和塩基酸との反応は、ポリエポキシド1.0モルに対し、α,β-不飽和塩基酸を1.0〜2.0モル反応させることが望ましい。
更に、次の不飽和エポキシエステルと不飽和二塩基酸との反応は、ポリエポキシド1.0モルに対し、α,β-不飽和塩基酸を1.0〜2.0モル反応させて得られた不飽和エポキシエステルに対し、不飽和二塩基酸を、0.1〜1.0モル反応させることが望ましく、不飽和エポキシエステルのモル数と、α,β-不飽和塩基酸及び不飽和二塩基酸のモル数の合計が、ほぼ同じモル数になる事が望ましい。
【0013】
本発明で用いられる(B)成分のジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト以外に、ジシクロペンタニルメタクリレートを用いても良い。(B)成分の使用量は、(A)成分10〜50質量部に対して1〜50質量部の範囲とされる。
【0014】
本発明で用いられる(C)成分として、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートを用い、その使用量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0〜30重量部の範囲とされ、(C)成分を用いない場合もある。
【0015】
本発明で用いられる(D)成分は、3官能以上のアクリル基を持つアクリレートまたは3官能以上のメタクリル基を持つメタクリレートであればよい。
3官能以上のアクリル基を持つアクリレートとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
3官能以上のメタクリル基を持つメタクリレートとしては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。
これらは、単品で用いても、複数の種類を組み合わせて用いてもよく、その使用量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、10〜200質量部の範囲とされる。
【0016】
本発明の電気機器絶縁用樹脂組成物は、コア汚染が少なく、良好な含浸性を得る点から、80℃における粘度が10〜500mPa・sとする。80℃における粘度は20〜100mPa・sであることが好ましく、40〜80mPa・sであることがより好ましい。80℃における粘度が10mPa・s未満であると電気機器へ滴下したワニスが垂れ易くなってコアへ付着し易くなる傾向があり、500mPa・sを超えると浸透性が悪くなって含浸性が低下する傾向がある。
【0017】
本発明では、電気機器絶縁用樹脂組成物として、上記の80℃における粘度が5〜500mPa・sであることの他に、200℃でのストラッカー固着力が300N以上である必要がある。
高温における固着性に優れたものとし、これを用いて電気機器絶縁処理された電気機器のコイルの変形が防止され回転のバランスがとれるためより高温にさらされる高出力モータに対応できるようにする。
ストラッカー固着力はJIS C2103(電機絶縁用ワニス試験方法)に記載された方法により測定する。試験片は、電機バインド用すずめっきピアノ線で、目視で傷がない真っ直ぐな直径1.2mm、長さ50mm±1mm及び約100mmのものを用い、粗粒を全く含まない塗料用べんがら、粘土、けいそう土、軽質酸化マグネシウムなどの研磨剤を水でぬらし、これでピアノ線をよく磨いて、さび、その他の付着物を落とし、流水中でよく洗ってから、汚れがない布などで水をふき取り、約100℃の恒温槽中で乾かした後、デシケ-タ(固形乾燥剤入り)中に保管しておく。このピアノ線各2本をとり、長い方のピアノ線(約100mm)2本の一端を突き合わせ、その接点を中心に短い方のピアノ線(50mm)を両側に沿わせ、その上を軟銅線で片道10回ずつ、往復で20回軽く巻き止める。この巻き止めた接合部に原液のままの試料をはけで十分に塗布し、水平の位置で室温に約30分間放置した後、既定の条件によって乾燥する。
そして、引張試験機を用い、つかみの間隔を100〜150mmとして50〜200mm/minの速さで引張って、試験片の接点を引き剥がした時の荷重を固着力(N)とする。
本発明では、測定に用いたエナメル線は、直径2.0mmの1AIWを用い、ワニスの硬化は、150℃で1時間硬化させた。そして、200℃の雰囲気中で、つかみ間隔を125mm、引張り速度100mm/minで測定した。
ストラッカー固着力は、高出力モータに対応するため300N以上であることが好ましい。340N以上であることがより好ましい。
【0018】
本発明の電気機器絶縁用樹脂組成物はエアコン用ファン、扇風機、洗濯機等のコンデンサーモートル、電気ドリルなどのアマチュア、テレビ、ステレオ、コンパクトディスクプレーヤー等電源トランスなどの電気機器の絶縁処理に適用される。電気機器絶縁用樹脂組成物を、電気機器自体、又は電気機器の部品に塗布、含浸、又は充填した後、通常、100〜200℃、好ましくは120〜150℃で加熱することにより、電気機器絶縁用樹脂組成物を硬化させる。加熱時間は、通常、0.2〜3.0時間である。
【実施例】
【0019】
以下実施例により本発明を説明する。下記例中の部は、質量部を意味する。
(製造例1)
不飽和エポキシエステル樹脂(A−1)の合成
4,4−イソピリデンジフェノール(ビスフェノールA)のジグリシジルエーテル(シェル化学株式会社製、EP−828,エポキシ当量188)376部、メタクリル酸172部、ベンジルジメチルアミン2部、ハイドロキノン0.05部を反応釜に仕込み、115℃、10時間反応させ、樹脂酸価が8mgKOH/gとなった所で、フマル酸5部を仕込み、115℃、2時間反応させて樹脂酸価20mgKOH/gの不飽和エポキシエステル樹脂(A−1)を得た。
【0020】
(実施例1)
(A)成分として不飽和エポキシエステル樹脂(A−1)30部、(B)のジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−トとしてFA−512MT(日立化成工業株式会社製) 20部、(D)成分の3官能以上のアクリレートとしてトリメチロールプロパントリアクリレート50部、ベンゾイルパーオキサイド1.0部を撹拌混合して電気機器絶縁用樹脂組成物を調製した。
【0021】
(実施例2)
(A)成分として不飽和エポキシエステル樹脂(A−1)30部、(B)のジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−トとしてFA−512MT(日立化成工業株式会社製) 20部、(C)成分のトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートとしてFA−731A(日立化成工業株式会社製) 10部、(D)成分の3官能以上のアクリレートとしてトリメチロールプロパントリアクリレート 60部、ベンゾイルパーオキサイド1.0部を撹拌混合して電気機器絶縁用樹脂組成物を調製した。
【0022】
(比較例1)
不飽和エポキシエステル樹脂(A−1)40部、スチレン60部、ベンゾイルパーオキサイド1.0部を撹拌混合して電気機器絶縁用樹脂組成物を調製した。
【0023】
(比較例2)
不飽和エポキシエステル樹脂(A−1)30部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト(日立化成工業株式会社製FA−512MT) 50部、ベンゾイルパーオキサイド1.0部を撹拌混合して電気機器絶縁用樹脂組成物を調製した。
【0024】
得られた電気機器絶縁用樹脂組成物について、所定雰囲気温度で粘度、ストラッカー固着力、コア汚染及びステータコイルの含浸性を調べた。その結果を表1に示した。
尚、粘度の試験方法は、JIS C 2105に準じて測定を行った。
ストラッカー固着力、VOC、コア汚染及びステータコイルの含浸性は以下の試験方法に準じて評価を行った。
【0025】
(1)ストラッカー固着力
JIS C−2103のストラッカー法に準じて測定した。
測定に用いたエナメル線は、直径2.0mmの1AIWを用い、ワニスの硬化は、150℃で1時間硬化させた。
(2)VOC(揮発性有機化合物、volatile organic compounds)
ワニス5.0gを直径60mm金属シャーレに投入し、130℃、1時間硬化を行い、硬化時に減少した質量減少率(%)とした。
(3)コア汚染
コア汚染の試験方法は、ステータコイル(直径200mm、質量10kg)を用い、回転速度15回転/分とし、ステータコイルのコア表面温度が80℃の時にコイルエンドの(1)リード線有り側の外側、(2)リード線有り側の内側、(3)リード線無し側の外側、(4)リード線無し側の内側の合計四ヶ所(図1)にノズルを配置し、所定のワニスを20分間に合計300ml滴下し、滴下終了後、回転を続行しながら150℃の乾燥機へ投入し、1時間後に乾燥機から取り出して、コア部に付着したワニスの付着の有無を目視で調査した。
【0026】
(4)ステータコイルの含浸性
含浸性の試験方法は、コア汚染の試験方法でワニス処理したステータコイルのコアをコア積み厚の半分の部位で輪切り状に切断し、スロット内の空隙に対して含浸したワニスの割合を目視で評価した。
スロット内の空隙に対して含浸したワニスの割合が70%以上を良好とし、50%未満を含浸不足とした。
【0027】
【表1】

【0028】
表1に示したように、実施例1及び2で得られた電気機器絶縁用樹脂組成物は、80℃での粘度が適正範囲内であるため、コア汚染が発生し難く、含浸性が良好である。更に、高温での接着力が高い。また、VOCが少なく作業環境面から良好である。
これに対して、比較例1で得られた電気絶縁用樹脂組成物は、80℃での粘度が適正範囲よりも低く、コア汚染が発生してしまい、含浸不足となっている。更に、高温での固着力(接着力)が低い。
また、比較例2で得られた電気絶縁用樹脂組成物は、高温での固着力(接着力)が低い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のドリップ処理のノズル位置とコア汚染の試験方法を説明するためのステータコイルを用いた模式図であり、(a)は、正面からみた図で、(b)は、横から見た図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
80℃における粘度が10〜500mPa・sで、200℃でのストラッカー固着力が300N以上である電気機器絶縁用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機器絶縁用樹脂組成物とMW30、MW35、MW73またはMW81の電線を組み合わせた時のツイストペアの寿命評価において、20000時間の耐熱温度が155℃以上である請求項1に記載の電気機器絶縁用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電気機器絶縁用樹脂組成物が、(A)ポリエポキシドとα,β−不飽和塩基酸とを反応させ、更に不飽和二塩基酸を反応させて得られる不飽和エポキシエステル樹脂を10〜50質量部、(B)ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−トを(A)成分10〜50質量部に対して、1〜50質量部、(C)トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートを(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0〜30質量部、(D)3官能以上のアクリレートまたはメタクリレートを(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して10〜200質量部含有してなる電気機器絶縁処理用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電気機器絶縁用樹脂組成物を用いた電気絶縁処理方法が、ドリップ処理方法を用いて電気絶縁処理してなる電気機器。

【図1】
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【公開番号】特開2010−108820(P2010−108820A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281110(P2008−281110)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】