説明

電気機械の制御

【課題】電気機械の制御を提供する。
【解決手段】先進角だけ逆起電力のゼロ交差よりも前に励起され、かつフリーホイール角にわたってフリーホイールされる電気機械の巻線を順次励起してフリーホイールさせる段階と、電気機械の速度の変化に応答して先進角及びフリーホイール角を変更する段階とを含む電気機械を制御する方法。更に、電気機械のための制御システム、及び制御システムと電気機械とを組み込む製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械の永久磁石回転子が回転すると、それは、電気機械の巻線の逆起電力を誘導する。回転子が加速すると、逆起電力のマグニチュードは増大する。従って、電気機械内へ電流及び従って電力を駆動するのは次第に困難になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
その結果、電気機械の電力に対する制御が次第に困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様では、本発明は、電気機械を制御する方法を提供し、本方法は、先進角だけ逆起電力のゼロ交差よりも前に励起され、かつフリーホイール角にわたってフリーホイールされる電気機械の巻線を順次励起してフリーホイールさせる段階と、電気機械の速度の変化に応答して先進角及びフリーホイール角を変更する段階とを含む。
電気機械の速度が変化すると、巻線に誘導された逆起電力のマグニチュード及び従って電気機械の電力も変化する。速度の変化に応答して先進角及びフリーホイール角の両方を変更することにより、電気機械の効率及び電力の両方に対するより良好な制御を達成することができる。例えば、先進角を増加させることにより、電流は、より早期の段階で巻線内に駆動され、従って、電力を増加させることができる。同様に、フリーホイール角を低減することにより、電流は、より長期間にわたって巻線内に駆動され、従って、電力を増加させることができる。
【0005】
低下する逆起電力の領域においては、より少ないトルクが電流の所定のレベルに対して達成される。従って、この領域内でフリーホイールさせることにより、より効率的な電気機械を達成することができる。更に、巻線の逆起電力が低下すると、仮に励起電圧が、低下する逆起電力を超えたとしたら、電流スパイクが起こるであろう。低下した逆起電力の領域内で巻線をフリーホイールさせることにより、電流スパイクは回避することができ、従って、より滑らかな電流波形を達成することができる。
【0006】
本方法は、好ましくは、速度の増大に応答して先進角を増加させ、及び/又はフリーホイール角を低減する段階を含む。従って、電気機械の速度が増大し、従って、巻線の起電力が増大すると、電流は、より早期の段階で巻線内に駆動され、及び/又は電流は、より長期間にわたって巻線内に駆動される。従って、逆起電力の増大にも関わらず、同じか又は類似の電力を達成することができる。実際に、本方法は、好ましくは、電気機械の電力が電気機械の速度の範囲にわたって実質的に一定であるように先進角及び/又はフリーホイール角を変更する段階を含む。この場合の実質的に一定の電力は、電力の分散が±5%よりも大きくないことを意味することを理解すべきである。
【0007】
本方法は、有利な態様では、電気機械の効率(すなわち、出力電力対入力電力の比率)が作動速度範囲にわたって少なくとも75%であるように先進角及びフリーホイール角を変更する段階を含む。従って、比較的良好な効率が、電気機械の作動速度で達成される。
作動速度範囲は、10krpmにも及ぶ場合がある。更に、作動速度範囲は、60krpmよりも大きい最低値及び/又は80krpmよりも大きい最高値を有する場合がある。従って、電力の大きな差を通常生じると考えられ、かつ効率が通常不十分であると考えられる作動速度範囲に対して、一定の電力及び/又は良好な効率が達成される。
【0008】
本方法は、固定期間にわたって巻線をフリーホイールさせる段階を含むことができる。固定期間にわたって巻線をフリーホイールさせることにより、巻線は、電気機械の速度と共に変化する角度にわたってフリーホイールされる。固定フリーホイール時間を使用することにより、特定の速度に対してどのフリーホイール角を用いるかのオンザフライ計算を実施する必要はない。従って、電気機械の制御は簡素化される。
【0009】
本方法は、先進速度テーブル及びフリーホイール速度テーブルを格納する段階を含むことができる。各速度テーブルは、複数の速度の各々に対する速度制御値を格納する。本方法は、次に、電気機械の速度に従って第1の速度制御値を先進速度テーブルから選択する段階と、第2の速度制御値をフリーホイール速度テーブルから選択する段階とを含む。巻線は、次に、第1の速度制御値によって定められた時間に励起され、第2の速度制御値によって定められた時間にわたってフリーホイールされる。こうして、これは、電気機械の制御を簡素化する。
本方法は、巻線を励起する段階と、巻線の逆起電力を示す信号をモニタする段階と、信号のエッジの検出に応答して駆動オフ時間にわたって巻線を励起し続ける段階と、フリーホイール時間にわたって巻線をフリーホイールさせる段階とを含むことができる。駆動オフ時間は、こうして、第1の速度制御値に比例し、フリーホイール時間は、第2の速度制御値に比例する。
【0010】
本方法は、第1の速度制御値によって補正された公称先進角又は公称先進時間だけゼロ交差よりも前に巻線を励起する段階と、第2の速度制御値によって補正された公称フリーホイール角又は公称フリーホイール時間にわたって巻線をフリーホイールさせる段階とを含むことができる。公称先進角/時間及び公称フリーホイール角/時間は、次に、好ましくは、巻線を励起するのに用いる励起電圧のレベルに従って選択される。一例として、本方法は、複数の電圧の各々に対する公称先進角/時間及び公称フリーホイール角/時間を格納する電力ルックアップテーブルを格納する段階を含むことができる。公称先進角/時間及び公称フリーホイール角/時間は、次に、励起電圧のレベルに従って選択される。従って、電力のより良好な制御が、異なる励起電圧に対して達成することができる。
【0011】
本方法は、好ましくは、巻線を励起するのに用いる励起電圧に従って第1の速度制御値及び第2の速度制御値を変更する段階を含む。従って、電力のより良好な制御を異なる励起電圧に対して達成することができる。各速度テーブルは、次に、複数の速度及び複数の電圧の各々に対する速度制御値を格納することができる。本方法は、次に、電気機械の速度及び励起電圧のレベルに従って第1の速度制御値を先進速度テーブルから選択し、第2の速度制御値をフリーホイール速度テーブルから選択する段階を含む。
【0012】
好ましくは、本方法は、巻線を励起するのに用いる励起電圧の変化に応答して先進角及びフリーホイール角を変更する段階を含む。従って、電力のより良好な制御を電気機械の速度及び励起電圧の両方の変化に対して達成することができる。実際に、本方法は、好ましくは、励起電圧の低下に応答して先進角を増加させる段階と、フリーホイール角を低減する段階とを含む。従って、励起電圧が低下すると、電流は、より早期の段階で巻線内に駆動される。更に、電流は、より長期間にわたって巻線内に駆動される。従って、励起電圧の降下にも関わらず、同じか又は類似の電力を達成することができる。
有利な態様においては、各電気半サイクルは、単一駆動期間及び単一フリーホイール期間を含む。巻線は、次に、駆動期間中に励起され、フリーホイール期間中にフリーホイールされる。フリーホイール期間に続いて、巻線は整流される。
【0013】
第2の態様では、本発明は、前段落のいずれか1つに説明した方法を実施する電気機械のための制御システムを提供する。
制御システムは、理想的には、巻線の逆起電力を示す信号を出力するホール効果センサのような位置センサを含む。制御システムは、次に、位置センサによって出力された信号を用いて巻線の励起及びフリーホイールを制御する。
制御システムは、励起中に巻線の電流を制限するための電流コントローラを含むことができる。こうして、これは、そうでなければ制御システムの構成要素に損傷を与えるか又は電気機械の磁石を消磁する場合があると考えられる過剰な電流が巻線に蓄積することを阻止する。
制御システムはまた、インバータ、ゲート駆動モジュール、及び駆動コントローラを含むことができる。駆動コントローラは、次に、巻線の励起を制御する1つ又はそれよりも多くの制御信号を発生させ、ゲート駆動モジュールは、制御信号に応答してインバータのスイッチを制御する。
【0014】
第3の態様では、本発明は、電気機械と前段落のいずれか1つに説明した制御システムとを含むバッテリ式製品を提供する。制御システムは、こうして、バッテリパックの電圧を用いて巻線を励起する。制御システムは、次に、バッテリパックの電圧の変化に応答して先進角及び/又はフリーホイール角を変更することができる。
第4の態様では、本発明は、電気機械と前段落のいずれか1つに説明した制御システムとを含む真空掃除機を提供する。
電気機械は、好ましくは、永久磁石モータ、より好ましくは、単相永久磁石モータである。
本発明をより容易に理解することができるように、ここで、本発明の実施形態を一例として添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による製品のブロック図である。
【図2】図1の製品の運動系のブロック図である。
【図3】運動系の概略図である。
【図4】運動系の電流コントローラの概略図である。
【図5】電流制御の期間中の運動系の波形を示す図である。
【図6】高速で作動する時の運動系の波形を示す図である。
【図7】励起電圧に対する先進角及びフリーホイール角のグラフである。
【図8】真空掃除機の形態の本発明の製品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1の製品1は、電源2、ユーザインタフェース3、アクセサリ4、及び運動系5を含む。
電源2は、DC電圧をアクセサリ4及び運動系5の両方に供給するバッテリパックを含む。電源2は、製品1を異なるバッテリパックで用いることができるように製品1から取外し可能である。本発明の説明の目的に対しては、電源2は、16.4VのDC電源を提供する4セルバッテリパック、又は24.6VのDC電源を提供する6セルバッテリパックのいずれかである。供給電圧の提供に加えて、電源は、バッテリパックの型に独特である識別信号を出力する。ID信号は、バッテリパックの型により異なる周波数を有する方形波信号の形態を取る。本発明の例では、4セルバッテリパックは、25Hz(20msパルス長)の周波数を有するID信号を出力し、一方、6セルバッテリパックは、50Hz(10msパルス長)の周波数を有するID信号を出力する。ID信号は、電源2内の欠陥、例えば、セルの不足電圧又は温度過昇が検出される時まで電源2によって継続して出力される。以下で説明するように、ID信号は、電源2の型を識別して電源2が正しく機能することを定期的に検査するために運動系5によって用いられる。
【0017】
ユーザインタフェース3は、電源スイッチ6及び電力モード選択スイッチ7を含む。電源スイッチ6を用いて、製品1の電源をオン及びオフにする。電源スイッチ6の閉鎖に応答して、電源2とアクセサリ4及び運動系5の各々の間に閉回路が形成される。電力モード選択スイッチ7を用いて、運動系5が高電力モード又は低電力モードで作動するか否かを制御する。電力モード選択スイッチ7が閉じている時に、論理的高の電力モード信号が運動系5に出力される。
【0018】
アクセサリ4は、製品1に取外し可能に取り付けられる。製品1に取り付けられ、かつ製品1の電源がオンになる時に、アクセサリ4は、電源2から電力を引き出して、アクセサリ信号を運動系5に出力する。アクセサリ4が取り付けられて製品1の電力がオンの時にいつでも連続的に電力を引き出すのではなく、アクセサリ4は、例えば、ユーザインタフェース3の一部を形成する電源スイッチ(図示せず)を含むことができる。アクセサリ4は、次に、電力を引き出し、アクセサリ電源スイッチが閉じている時にのみアクセサリ信号を出力する。
【0019】
ここで、図2及び3を参照すると、運動系5は、電気モータ8及び制御システム9を含む。
モータ8は、単相巻線19が巻かれた固定子18に対して回転する2極の永久磁石回転子17を含む。固定子18は、高フィル・ファクタを巻線19に対して達成することを可能にするc字形である。従って、銅損を低減し、それによってモータ8の効率を改善することができる。
【0020】
制御システム9は、フィルタモジュール10、インバータ11、ゲート駆動モジュール12、位置センサ13、電流センサ14、電流コントローラ15、及び駆動コントローラ16を含む。
フィルタモジュール10は、製品1の電源2をインバータ11にリンクし、かつ平行に配置された1対のコンデンサC1、C2を含む。フィルタモジュール10は、インバータ11にリンクした電圧におけるリップルを低減するように作用する。
【0021】
インバータ11は、電源2をモータ8の巻線19にリンクする4つの電源スイッチQ1−Q4のフルブリッジを含む。各電源スイッチQ1−Q4は、電源2の電圧範囲にわたって高速スイッチング及び良好な効率を提供するMOSFETである。IGBT又はBJTのような他の型の電源スイッチも、特に、電源2の電圧がMOSFETの電圧範囲を超える場合に用いることができると考えられる。スイッチQ1−Q4の各々は、スイッチング中にモータ8の逆起電力からの電圧スパイクに対してスイッチを保護するフライバックダイオードを含む。
【0022】
第1の対のスイッチQ1、Q4が閉じている時に、巻線19は、第1の方向に励起され(左から右に励起する)、第1の方向に巻線19の周囲で電流を駆動する。第2の対のスイッチQ2、Q3が閉じている時に、巻線19は、反対方向に励起され(右から左に励起する)、反対方向に巻線19の周囲で電流を駆動する。従って、インバータ11のスイッチQ1−Q4は、巻線19の電流を整流するように制御することができる。
【0023】
巻線19の励起に加えて、インバータ11は、巻線19をフリーホイールさせるように制御することができる。フリーホイールは、巻線19が、電源2によって供給された励起電圧から切断される時に起こる。これは、インバータ11の全てのスイッチQ1−Q4を開くことによって起こる場合がある。しかし、運動系5の効率は、高側スイッチQ1、Q3又は低側スイッチQ2、Q4のいずれかがフリーホイール中に閉じている場合に改善される。高側スイッチQ1、Q3又は低側スイッチQ2、Q4のいずれかが閉じることにより、巻線19の電流は、低効率のフライバックダイオードではなく、スイッチを通って再循環することができる。本発明の説明の目的に対しては、フリーホイールは、両低側スイッチQ2、Q4を閉じることによって達成される。しかし、フリーホイールは、高側スイッチQ1、Q3を閉じることによって又は全てのスイッチQ1−Q4を開くことによっても等しく達成される場合があることを理解すべきである。
【0024】
ゲート駆動モジュール12は、駆動コントローラ16から受け取った制御信号S1−S4に応答してインバータ11のスイッチQ1−Q4の開閉を駆動する。ゲート駆動モジュール12は、4つのゲートドライバ20−23を含み、各ゲートドライバは、駆動コントローラ16からの制御信号S1−S4に応答してそれぞれのスイッチQ1−Q4を駆動する。高側スイッチQ1、Q3を担うゲートドライバ20、22は、更に、電流コントローラ15から受け取った過電流信号に応答して駆動される。過電流信号に応答して、ゲートドライバ20、22は、高側スイッチQ1、Q3を開く。過電流信号は、高側スイッチQ1、Q3が、制御信号S1、S3の状態に関係なく過電流信号に応答して開かれるように、駆動コントローラ16の制御信号S1、S3に優先する。この制御のレベルは、高側ゲートドライバ20、22におけるNORゲートの設置を通して達成することができる。
【0025】
表1は、駆動コントローラ16の制御信号S1−S4及び電流コントローラ15の過電流信号に応答するスイッチQ1−Q4の許容状態を要約している。高側ゲートドライバ20、22の入力に対して作動するNORゲートにより、高側スイッチQ1、Q3は、論理的低の制御信号S1、S3によって閉じている。
【0026】
(表1)

【0027】
位置センサ13は、永久磁石回転子17の角度位置を示す信号を出力するホール効果センサである。信号は、デジタル方形波であり、各エッジは、回転子の極性が変化する角度位置を表している。位置センサ13によって出力された信号は、駆動コントローラ16に送出され、これは、それに応答して制御信号S1−S4を発生させ、これは、インバータ11を制御し、従って、モータ8に送出される電力を制御する。
【0028】
回転すると、永久磁石回転子17は、モータ8の巻線19に逆起電力を誘起する。逆起電力の極性は、回転子17の極性と共に変化する。その結果、位置センサ信号は、回転子17の電気位置の尺度のみならず、巻線19の逆起電力の尺度も提供する。理想的には、位置センサ13は、位置センサ信号のエッジが同期しているか又は逆起電力のゼロ交差を有する所定の位相差を有するように、回転子17に対して整列する。しかし、運動系5の組立後に、モータ8に対する位置センサ13のアラインメントに関連した公差が存在する。これは、次に、位置センサ信号のエッジと逆起電力のゼロ交差との間に位相差をもたらす。「組立後微調整」という名称の節で更に説明するために、これらの公差は、駆動コントローラ16が格納して後で位置センサ信号を補正するのに用いる位置センサオフセットの使用を通して補償される。
電流センサ14は、インバータ11の負側の線上に位置する単一の感知抵抗器R1を含む。電流センサ14にわたる電圧は、従って、電源2に接続した時の巻線19における電流の尺度を提供する。電流センサ14にわたる電圧は、電流コントローラ15に出力される。
【0029】
ここで、図4を参照すると、電流コントローラ15は、入力、出力、閾値発生器24、コンパレータ25、及びSRラッチ26を含む。
電流コントローラ15の入力は、電流センサ14の出力に連結され、電流コントローラ15の出力は、高側ゲートドライバ20、22の各々の入力に連結される。
閾値発生器24は、基準電圧入力、PWMモジュール27、不揮発性メモリデバイス28、及びフィルタ29を含む。PWMモジュール27は、固定周波数と、メモリデバイス28に格納された倍率に従って設定される可変負荷サイクルとを使用する。PWMモジュール27は、基準入力での電圧で作動してパルス電圧信号を提供し、これは、次に、フィルタ29によって滑らかにされてスケーリングされた閾値電圧をもたらす。
【0030】
コンパレータ25は、電流コントローラ15の入力での電圧を閾値発生器24によって出力された閾値電圧に対して比較する。入力での電圧が閾値電圧を超える場合、コンパレータ25は、SRラッチ26を設定する信号を出力する。それに応答して、SRラッチ26は、電流コントローラ15の出力で過電流信号を発生させる。
表1において上述したように、過電流信号が電流コントローラ15によって出力される時に(すなわち、過電流信号が論理的高の時に)、高側ゲートドライバ20、22は、高側スイッチQ1、Q3を開く。その結果、電流コントローラ15は、巻線19の電流が閾値を超えると、電源2によって供給された励起電圧から巻線19を切断する。「組立後微調整」という名称の節で更に説明するように、倍率によりスケーリングされた電圧閾値を使用することにより、各個々の運動系5は、電流閾値に対する構成要素公差の影響を除去することができるように微調整することができる。
【0031】
電流コントローラ15はまた、駆動コントローラ16に過電流遮断を出力する。図4に示す実施形態では、コンパレータ25の出力は、過電流遮断として駆動コントローラ16に送出される。しかし、ラッチ26により出力された過電流信号も、過電流遮断として駆動コントローラ16に等しく送出することができると考えられる。過電流遮断に応答して、駆動コントローラ16は、過電流ルーチンを実行する。駆動コントローラ16は、巻線19がフリーホイールするように残りの低側スイッチQ2又はQ4を閉じさせる制御信号S2又はS4を発生する。フリーホイールは、所定の時間、例えば、100μsにわたって継続し、この間に巻線19の電流は減衰する。所定の時間が経過した後に、駆動コントローラ16は、閉じたばかりの低側スイッチQ2又はQ4を開くように制御信号S2又はS4を切り換えて、ラッチリセット信号を電流コントローラ15に出力する。ラッチリセット信号は、電流コントローラ15のラッチ26をリセットさせ、それによって過電流信号を低く駆動する。インバータ11は、従って、過電流イベントが起こる前に存在した条件まで戻る。
【0032】
図5は、巻線電流、位置センサ信号、スイッチQ1−Q4、制御信号S1−S4、過電流信号、及び典型的な半サイクルにわたるラッチリセット信号の波形を示している。図に示すように、スイッチQ1−Q4の状態は、各過電流イベントの前後で同じである。
巻線19の電流は、電気半サイクル中に何回も電流コントローラ15によって切断することができる。モータの速度が増大すると、巻線19に誘起された逆起電力は増加する。その結果、過電流イベントの数は、モータ速度と共に減少する。最終的に、モータ8の速度及び従って逆起電力のマグニチュードは、巻線19の電流が各半サイクル中にもはや閾値に到達しないようなものである。
【0033】
電流コントローラ15は、巻線19内の電流が閾値を超えないことを保証する。従って、過剰な電流は、巻線19に蓄積することが阻止され、これは、そうではなければインバータ11のスイッチQ1−Q4に損傷を与えるか又は回転子17を消磁する場合があるであろう。
駆動コントローラ16は、プロセッサ30、不揮発性メモリデバイス31、6つの信号入力、及び5つの信号出力を含む。
【0034】
メモリデバイス31は、プロセッサ30による実行のためのソフトウエア命令を格納する。命令の実行に応答して、プロセッサ30は、運動系5の作動を制御する。特に、プロセッサ30は、制御信号S1−S4を発生させ、これは、インバータ11のスイッチQ1−Q4を制御し、従って、モータ8を駆動する。駆動コントローラ16の特定の作動は、以下でより詳細に説明する。メモリデバイス31はまた、複数のパワーマップ、複数の速度補正マップ、及び複数の位置センサオフセットを格納する。
【0035】
6つの信号入力は、電源ID信号、アクセサリ信号、電力モード信号、位置センサ信号、過電流遮断、及び電圧レベル信号である。
電圧レベル信号は、電源ラインから導出され、分圧器R2、R3によってスケーリングされ、かつコンデンサC3によって濾過されてスイッチングノイズを除去する。電圧レベル信号は、従って、駆動コントローラ16に電源2によって供給されたリンク電圧の尺度を提供する。電源2の内部抵抗により、リンク電圧は、開回路電圧未満である。6セルバッテリパックに対して、最大開回路電圧は、23.0Vのリンク電圧に対応する24.6Vである。4セルバッテリパックに対して、最大開回路電圧は、14.8Vのリンク電圧に対応する16.4Vである。この上限に加えて、駆動コントローラ16は、リンク電圧が不足電圧閾値よりも下がると作動を停止する。6セルバッテリパックに対して、リンク電圧の不足電圧閾値は、19.0Vの開回路電圧に対応する16.8Vである。4セルバッテリパックに対して、リンク電圧の不足電圧閾値は、12.8Vの開回路電圧に対応する11.2Vである。駆動コントローラ16は、従って、6セルバッテリに対して16.8−23.0V、及び4セルバッテリに対して11.2−14.8Vのリンク電圧範囲にわたって作動する。
【0036】
5つの信号出力は、4つの制御信号S1−S4及びラッチリセット信号である。4つの制御信号S1−S4は、ゲート駆動モジュール12に出力され、これは、それに応答して、インバータ11のスイッチQ1−Q4の開閉を制御する。より具体的には、各制御信号S1−S4は、それぞれのゲートドライバ20−23に出力される。ラッチリセット信号は、電流コントローラ15に出力される。
駆動コントローラ16は、入力で受け取った信号に応答して制御信号S1−S4を発生させる。以下でより詳細に説明するように、制御信号S1−S4のタイミングは、モータ8が速度のある一定の範囲にわたって一定の出力電力で駆動されるように制御される。更に、一定の出力電力は、電源2のリンク電圧の変化に関係なく維持される。その結果、モータ8は、電源2が放電する時に一定の出力電力で駆動される。
【0037】
駆動コントローラ16が、制御信号、例えばS1を発生させてインバータ11の特定のスイッチQ1を開くと、制御信号の発生とスイッチQ1の物理的開放との間に短い遅延がある。仮に駆動コントローラ16がインバータ11の同じアーム上の他のスイッチQ2を閉じる制御信号S2を同時に発生させるとすれば、インバータ11のアームにわたって短絡が起こる可能性があるであろう。この短絡、又は多くの場合に「シュートスルー」と呼ばれるものは、インバータ11のそのアーム上のスイッチQ1、Q2に損傷を与えると考えられる。従って、シュートスルーを阻止するために、駆動コントローラ16は、インバータ11の同じアーム上のスイッチに対する制御信号の発生の間に無駄時間遅延(例えば、1μs)を使用する。従って、巻線19の励起又はフリーホイールに対して以下を参照する時に、駆動コントローラ16は、制御信号間の無駄時間遅延を使用することを理解すべきである。無駄時間遅延は、理想的には、モータ性能を最適化するようにできるだけ短く保たれる。
【0038】
電流コントローラ15及び駆動コントローラ16は、単一構成要素マイクロコントローラの一部を形成することができる。適切な候補は、マイクロチップ・テクノロジー・インコーポレーテッドによるPIC16F690マイクロコントローラである。このマイクロコントローラは、内部コンパレータ25、ラッチ26、PWMモジュール27、不揮発性メモリデバイス28、31、及びプロセッサ30を有する。PWMモジュール27の出力ピンは、マイクロコントローラの外部にあるフィルタ29を通じてコンパレータ25の入力ピン内にフィードバックされる。更に、コンパレータ25の出力は、駆動コントローラ16のプロセッサ30に送出される内部過電流遮断としての機能を果たす。
【0039】
電流コントローラ15及び駆動コントローラ16は、ある一定の形式のヒステリシス電流制御を一緒に提供する。特に、電流コントローラ15は、過電流イベントに応答してラッチ過電流信号を発生させる。過電流信号は、ゲート駆動モジュール12にインバータ11の高側スイッチQ1、Q3を開放させ、従って、巻線19を励起するのに用いるリンク電圧から巻線19を切断する。駆動コントローラ16は、次に、巻線19の電流が減衰する所定の期間が経過した後にラッチ26をリセットする。
【0040】
電流制御は、ハードウエア及びソフトウエアの組合せによって達成される。特に、電流コントローラ15のハードウエアは、巻線19の電流をモニタし、電流が閾値を超えるイベント時に過電流信号を発生させる。駆動コントローラ16のソフトウエアは、次に、所定の時間後に電流コントローラ15のハードウエアをリセットする。
過電流イベントを検出するハードウエアを使用することにより、制御システム9は、比較的迅速に過電流イベントに応答する。これは、巻線19が、過電流イベントの後にできるだけ早くリンク電圧から切断されることを保証するのに重要である。仮にソフトウエアが、代わりに過電流イベントをモニタするのに使用されたとすれば、過電流イベントと過電流信号の発生の間に有意な遅延があり、その時間にわたって巻線19の電流が構成要素損傷又は回転子消磁を生じるレベルまで上昇する場合があるであろう。
【0041】
電流コントローラ15のハードウエアをリセットするソフトウエアを使用することにより、巻線19の電流を制御するのに必要なハードウエア構成要素の数を少なくすることができる。更に、駆動コントローラ16のソフトウエアは、巻線19の電流が減衰する所定の期間を制御することができる。本発明の実施形態では、駆動コントローラ16は、固定期間が経過した後に(100μs)、電流コントローラ15のラッチ26をリセットする。しかし、駆動コントローラ16は、モータ8の速度に従って調節される期間後にラッチ26を同様にリセットすることもできると考えられる。従って、電流が各切断と共に減衰するレベルは、より良く制御することができる。
【0042】
所定の期間にわたって電流を切断することにより、リンク電圧から切断された時に、巻線19の電流をモニタする必要はない。従って、電流制御は、単一感知抵抗器の使用によって達成することができる。これは、制御システム9の構成要素の費用を低減するだけでなく、単一感知抵抗器による電力消費は、典型的に入力電力の1%よりも大きくない。
ここで、運動系5及び特に駆動コントローラ16の作動を以下に説明する。
【0043】
初期化モード
電源スイッチ6が閉じている時に、電力は、電源2から駆動コントローラ16に電源投入する運動系5に送出される。電源投入する時に、駆動コントローラ16は、電源ID信号、アクセサリ信号、及び電力モード信号の入力を記録する。これらの3つの信号に基づいて、駆動コントローラ16は、メモリ31に格納されたパワーマップを選択する。以下で説明するように、各パワーマップは、異なる出力電力でモータ8を駆動するための制御値を格納する。表2から分るように、駆動コントローラ16は、5つの異なるパワーマップを格納する。電源2が、4セルバッテリパックである場合(すなわち、電源ID信号の周波数が25Hzである場合)、高電力モードは利用できなくて、電力モード信号は無視される。
【0044】
(表2)

【0045】
駆動コントローラ16によって選択されたパワーマップは、その後、駆動コントローラ16によって用いられ、「高速加速モード」及び「実行モード」で作動する時に制御信号S1−S4を発生させる。
【0046】
駆動コントローラ16が電源投入される間に、駆動コントローラ16は、電源ID信号、アクセサリ信号、及び電力モード信号を定期的に(例えば、8ms毎に)記録する。電源ID信号が、散発的ではなく絶えず高いか又は低い場合、これは、電源2に問題があることを示唆し、駆動コントローラ16は、次に、全てのスイッチQ1−Q4を開いて終了させる。アクセサリ信号又は電力モード信号が変化する場合、駆動コントローラ16は、新しいパワーマップを選択する。
パワーマップを選択する時に、駆動コントローラ16は、「再同期化モード」に入る。
【0047】
再同期化モード
駆動コントローラ16は、モータ8の速度を判断し、判断した速度に従って作動のモードを選択する。モータ8の速度は、位置センサ信号の2つのエッジ間の時間間隔、すなわち、パルス幅を測定することによって得られる。駆動コントローラ16が、所定の時間(例えば、26ms)内に2つのエッジを検出することができない場合、モータ8の速度は、1krpmよりも大きくないと見なされ、駆動コントローラ16は、次に、「定常モード」に入る。そうでなければ、駆動コントローラ16は、位置センサ信号の別のエッジが検出されるまで待つ。駆動コントローラ16は、次に、3つのエッジにわたって時間間隔を平均し、モータ速度をより正確に判断する。2つのエッジ間の時間間隔が、1875μsよりも大きい場合、モータ8の速度は、1から16krpmであると判断され、駆動コントローラ16は、次に、「低速加速モード」に入る。時間間隔が、500から1875μsである場合、モータ8の速度は、16から60krpmであると判断され、駆動コントローラ16は、「高速加速モード」に入る。そうではなければ、モータ8の速度は、少なくとも60krpmであると見なされ、駆動コントローラ16は、「実行モード」に入る。表3は、時間間隔、速度、及び作動のモードを詳述している。
【0048】
(表3)

【0049】
定常モード(速度≦1krpm)
駆動コントローラ16は、所定の時間、例えば、26msにわたって巻線19を励起する。この時間中に、駆動コントローラ16は、位置センサ信号のエッジに同期して巻線19を整流する(すなわち、励起の方向を逆にする)。励起のこの初期期間は、回転子17を回転させる必要がある。この所定の時間中に、位置センサ信号の2つのエッジが検出される場合、駆動コントローラ16は、「低速加速モード」に入る。そうでなければ、駆動コントローラ16は、全てのスイッチQ1−Q4を開いて、「開始失敗」エラーをメモリデバイス31に書き込む。
【0050】
低速加速モード(1krpm<速度<16krpm)
駆動コントローラ16は、位置センサ信号のエッジに同期して巻線19を励起する。同期励起は、モータ8の速度が、連続エッジ間の時間間隔によって判断される16krpmに到達するまで継続され、その後、駆動コントローラ16は、「高速加速モード」に入る。モータ8が所定の時間、例えば、2.5s内に16krpmに到達することができない場合、駆動コントローラ16は、全てのスイッチQ1−Q4を開いて、「速度不足」エラーをメモリデバイス31に書き込む。
【0051】
高速加速モード(16≦速度<60krpm)
高速加速中に、駆動コントローラ16は、巻線19を順次励起してフリーホイールさせる。より詳細には、各電気半サイクルは、巻線19が励起される単一駆動期間と、その後に巻線19がフリーホイールされる単一フリーホイール期間とを含む。駆動期間中に、巻線19の電流は、電流コントローラ15によって切断することができる。その結果、巻線19は、更に、駆動期間内に短い間隔(例えば、100μs)にわたってフリーホイールすることができる。しかし、駆動期間内に起こる全てのフリーホイールは、フリーホイール期間のそれとは明確に異なる。各フリーホイール期間の後に、巻線19は、整流される(すなわち、励起の方向は、逆になる)。
【0052】
駆動コントローラ16は、位置センサ信号のエッジよりも前に、従って、巻線19の逆起電力のゼロ交差よりも前に巻線19を励起する。更に、駆動コントローラ16は、モータ8が16krpmから60krpmまで加速する時に固定されたままである期間だけ位置センサ信号のエッジよりも前に巻線19を励起する。駆動コントローラ16はまた、モータ8が16krpmから60krpmまで加速する時に固定されたままである期間にわたって巻線19をフリーホイールさせる。
【0053】
以下でより詳細に説明するように、各パワーマップ(表2参照)は、複数の電圧レベルに対して先進時間及びフリーホイール時間のルックアップテーブルを含む。「高速加速モード」に入る時に、駆動コントローラ16は、電圧レベル信号を記録して、励起電圧、すなわち、電源2によって供給されるリンク電圧を得る。駆動コントローラ16は、次に、パワーマップから先進時間T_ADV及び励起電圧に対応するフリーホイール時間T_FREEを選択する。一例として、選択パワーマップが167W(表2参照)であり、励起電圧が22.7Vであることを電圧レベル信号が示す場合、駆動コントローラ16は、パワーマップから34μsの先進時間及び128μsのフリーホイール時間を選択する(表4参照)。
【0054】
巻線19は、以下の方式で励起されてフリーホイールされる。位置センサ信号のエッジを検出する時に、駆動コントローラ16は、期間T_DRIVE_OFFにわたって巻線19を励起し続ける。T_DRIVE_OFFは、半サイクル時間T_HALF_CYCLE、先進時間T_ADV、及びフリーホイール時間T_FREEから以下のように計算される。
T_DRIVE_OFF=T_HALF_CYCLE−T_ADV−T_FREE
【0055】
半サイクル時間T_HALF_CYCLEは、位置センサ信号の2つの連続エッジ間の時間間隔である。先進時間T_ADV及びフリーホイール時間T_FREEは、パワーマップから得られる時間である。
期間T_DRIVE_OFFの後に、駆動コントローラ16は、期間T_FREEにわたって巻線19をフリーホイールさせ、その後、駆動コントローラ16は、巻線19を整流する。正味の結果は、駆動コントローラ16が、先進時間T_ADVだけ位置センサ信号のネクストエッジよりも前に巻線19を励起することである。
【0056】
図6は、巻線電流、位置センサ信号、励起電圧、及び数回の半サイクルにわたる制御信号S1−S4の波形を示している。
モータ8が加速すると、巻線19の逆起電力は増大する。従って、モータ8の巻線19への電流及び従って電力を駆動するのは次第に困難になる。仮に巻線19が位置センサ信号のエッジに同期して、従って、逆起電力のゼロ交差に同期して励起されたとすれば、速度は、それによってもはやそれ以上巻線19に電力を駆動することができないと考えられるところまで到達するであろう。位置センサ信号のエッジよりも前に、従って、逆起電力のゼロ交差よりも前に巻線19を励起することにより、電流は、より早期の段階で巻線19内に駆動される。その結果、より多くの電力が、巻線19内に導入される。
【0057】
巻線19の逆起電力は、モータ速度と共に増大するので、励起が逆起電力よりも前に起こる電気角は、理想的にはモータ速度と共に増加し、すなわち、60krpmでの先進角は、理想的には16krpmでのそれよりも大きい。固定期間T_ADVだけ逆起電力よりも前に巻線19を励起することにより、対応する電気角A_ADVは、モータ速度と共に増大する。特に、先進角A_ADVは、モータ速度と共に比例的に増加する。
A_ADV=T_ADV*ω/60*360°
ここで、ωは、rpmによるモータの速度である。その結果、モータ8が加速すると、電流は、益々早期の段階で巻線19内に駆動される。その結果、より多くの電力が、巻線19内に導入される。
【0058】
固定先進時間T_ADVを使用することにより、駆動コントローラ16は、モータ8が加速する時にどの先進角を用いるべきかのオンザフライ計算を実施する必要はない。こうして、これは、駆動コントローラ16のプロセッサ30によって実行する必要がある命令の数を大いに最小にし、従って、より廉価なプロセッサ30を用いることができる。
駆動コントローラ16は、巻線19の逆起電力が低下している時に同時に巻線19をフリーホイールさせる。巻線19の逆起電力が低下すると、より少ないトルクが電流の所定のレベルに対して達成される。従って、この領域内で巻線19をフリーホイールさせることにより、より効率的な運動系5が達成される。更に、巻線19の逆起電力は、励起電圧のそれを超える場合がある。その結果、巻線19の逆起電力が低下すると、仮に励起電圧が、低下した逆起電力のそれを突然超えたとしたら、電流スパイクが起こるであろう。低下した逆起電力の領域内で巻線19をフリーホイールさせることにより、電流スパイクは回避され、より滑らかな電流波形が達成される。
【0059】
駆動コントローラ16は、モータ8の速度が60krpmに到達するまで上述の方式で順次巻線19を励起してフリーホイールさせ続ける。この時間中に、先進時間T_ADV及びフリーホイール時間T_FREEは固定される。60krpmに到達すると、駆動コントローラ16は、「実行モード」に入る。モータが所定の時間、例えば、2.5s内に60krpmに到達することができない場合、駆動コントローラ16は、全てのスイッチQ1−Q4を開いて、「速度不足」エラーをメモリデバイスに書き込む。
【0060】
実行モード(速度≧60krpm)
「高速加速モード」におけるように、駆動コントローラ16は、順次巻線19を励起してフリーホイールさせる。各電気半サイクルは、従って、単一駆動期間とその後の単一フリーホイール期間とを継続して含む。更に、巻線19は、位置センサ信号のエッジよりも前に、従って、逆起電力のゼロ交差よりも前に励起される。しかし、固定時間が、先進時間及びフリーホイール時間に対して使用される「高速加速モード」と異なり、駆動コントローラ16は、ここでは、一定の出力電力を達成するように先進時間及びフリーホイール時間を変更する。
駆動コントローラ16は、電気角A_ADVだけ位置センサ信号のエッジよりも前に巻線19を励起し、電気角A_FREEにわたって巻線19をフリーホイールさせる。駆動コントローラ16は、一定の出力電力を達成するために、励起電圧(すなわち、電源2のリンク電圧)及びモータ8の速度の変化に応答して、先進角A_ADV及びフリーホイール角A_FREEの両方を変更する。
【0061】
電源2は、バッテリパックであり、従って、励起電圧は、バッテリパックが使用と共に放電すると低下する。仮に巻線19が励起かつフリーホイールされる電気角が固定されたとすれば、運動系5の入力電力及び従って出力電力は、電源2が放電すると低下するであろう。従って、一定の出力電力を維持するために、駆動コントローラ16は、励起電圧の変化に応答して、先進角A_ADV及びフリーホイール角A_FREEを変更する。特に、励起電圧の低下と共に先進角A_ADVは増加し、フリーホイール角A_FREEは減少する。先進角A_ADVを増加させることにより、電流は、より早期の段階で巻線19内に駆動される。フリーホイール角A_FREEを低減することにより、巻線19は、半サイクルにわたって長期間励起される。正味の結果は、励起電圧の低下に応答して、より多くの電流が、半サイクルにわたって巻線19内に駆動され、従って、一定の出力電力が維持されることである。
【0062】
図7は、電圧範囲16.8−23.0Vにわたる一定の出力電力に対して先進角及びフリーホイール角の分散を示している。上述のように、この電圧範囲は、6セルバッテリパックのDCリンク電圧に対応する。16.8Vよりも低いと、回転子17を消磁する可能性なく一定の出力電力を維持するほど十分な電流を巻線19内に駆動するのは困難である。更に、6セルバッテリパックの電圧は、約16.8Vよりも低く鋭く下がる。従って、仮にDCリンク電圧が16.8Vよりも低ければ、駆動コントローラ16は、全てのスイッチQ1−Q4を開いて終了させる。同様のパターンは、作動範囲11.2−14.8Vにわたって4セルバッテリパックに対しても観察され、ここでもまた、駆動コントローラ16は、DCリンク電圧が11.2Vよりも低下した時に、全てのスイッチQ1−Q4を開いて終了させる。
【0063】
先進角及びフリーホイール角の分散は、パワーマップとして駆動コントローラ16によって格納される。各パワーマップは、複数の電圧レベルの各々に対して先進時間及びフリーホイール時間を格納したルックアップテーブルを含む。より詳細に以下に説明するように、駆動コントローラ16は、電圧レベル信号をモニタして、パワーマップから対応する先進時間及びフリーホイール時間を選択する。駆動コントローラ16は、次に、パワーマップから得られた先進及びフリーホイール時間を用いて、巻線19の励起及びフリーホイールを制御する。その結果、一定の出力電力は、励起電圧の変化に関係なく運動系5に対して達成される。表4は、167Wパワーマップの一部分を示している。
【0064】
(表4)

【0065】
この表の左側部分のみが、167Wパワーマップとして駆動コントローラ16によって格納される。右側部分は、本発明の説明の目的で含まれており、パワーマップの一部を形成するものではない。表から分るように、167Wパワーマップは、167Wの一定の出力電力を送出する先進時間及びフリーホイール時間を格納する。DCリンク電圧は、0.1Vの分解能でサンプリングされる。パワーマップは、従って、運動系5の性能に悪影響を及ぼすほど小さくはないが、かなり小さい。勿論、駆動コントローラ16のメモリデバイス31のサイズに応じて、パワーマップの分解能は、増大又は減少させることができる。
【0066】
パワーマップは、先進角及びフリーホイール角ではなく、先進時間及びフリーホイール時間を格納する点に注意されたい。駆動コントローラ16は、タイマを用いて、巻線19を励起してフリーホイールさせる制御信号S1−S4を発生させる。従って、角度ではなく先進及びフリーホイール時間を格納することにより、駆動コントローラ16によって実施する命令は、非常に簡素化される。それにも関わらず、パワーマップは、代替的に、駆動コントローラ16が後で巻線19の励起及びフリーホイールを制御するのに用いる先進角及びフリーホイール角を格納することができると考えられる。
【0067】
各先進及びフリーホイール角は、モータ8の速度に依存する対応する時間を有する。各パワーマップに対して、駆動コントローラ16は、特定の作動速度範囲内でモータ8を駆動する。各作動速度範囲は、先進時間及びフリーホイール時間を計算するのに用いられる公称速度を有する。
T_ADV=(A_ADV/360°)*60/ωnominal
T_FREE=(A_FREE/360°)*60/ωnominal
ここで、ωnominalは、rpmによる公称速度である。表5は、様々なパワーマップに対して作動速度範囲及び公称速度を列挙している。
【0068】
(表5)

【0069】
各パワーマップは、公称速度で回転するモータ8に対して先進時間及びフリーホイール時間を格納する。従って、例えば、167Wパワーマップは、モータ8が99krpmの速度で回転している時に、一定の出力電力を達成する先進及びフリーホイール時間を格納する。モータ8が公称速度を超えるか又は下回る速度で回転する時に、駆動コントローラ16は、以下でより詳細に説明するように、速度補正値を先進時間及びフリーホイール時間の各々に適用する。
【0070】
「初期化」節で上述したように、駆動コントローラ16は、5つのパワーマップを格納し、電源ID信号、アクセサリ信号、及びパワーモード信号のステータスに従ってパワーマップのうちの1つを選択する。モータ8の出力電力は、従って、アクセサリ4が取り付けられて電源を投入されるか否か、及びユーザが高電力モード又は低電力モードを選択しているか否かに関わらず、製品1に取り付けられた電源2の型によって判断される。
【0071】
図2から分るように、異なるパワーマップは、6セルバッテリパック又は4セルバッテリパックを製品1に取り付けるか否かにより選択される。4セルバッテリパックは、より低い電荷容量を有するので、製品1は、同じパワーマップが6セル及び4セルバッテリパックの両方に対して選択されたとすれば、より短い作動時間を有するであろう。より低い出力電力を送出するパワーマップを選択することにより、4セルバッテリパックに対する同様の作動時間は、出力電力を犠牲にして達成することができる。
【0072】
6セルバッテリパックが製品1に取り付けられた時には、ユーザは、電力選択スイッチ7を通じてモータ8の出力電力を制御することができる。図2から分るように、96Wの出力電力を送出するパワーマップは、論理的低である、すなわち、ユーザが低パワーモードを選択する時のパワーモード信号に応答して選択される。167W(アクセサリを取り外した状態で)又は136W(アクセサリを付けた状態で)のいずれかで送出されるより高いパワーマップは、次に、論理的高である、すなわち、ユーザが高電力モードを選択する時のパワーモード信号に応答して選択される。
【0073】
アクセサリ4は、電源2から電力を引き込むので、電源2は、同じパワーマップが選択される場合よりも迅速に放電することになる。更に、アクセサリ4及びモータ8の両方に電力を供給するために、過剰の電流を電源2から引き込むことができる。従って、アクセサリ信号に応答して、駆動コントローラ16は、表2を参照してより低い出力電力を送出するパワーマップを選択する。その結果、電源2は、過剰の電流引き込みから保護されて、製品1に対する同様の作動時間は、出力電力を犠牲にして達成することができる。
【0074】
パワーマップは、従って、1つ又はそれよりも多くの入力信号に応答して運動系5の出力電力を制御するための便利な手段を提供する。
上述のように、各パワーマップは、モータ8が公称速度で作動する時に、一定の出力電力を達成する先進時間及びフリーホイール時間を格納する。しかし、モータ8の速度が変化すると、巻線19の逆起電力も変化する。その結果、巻線19が励起かつフリーホイールされた角度が固定されたとすれば、モータ8の出力電力は、モータ速度と共に変化するであろう。特に、モータ8の出力電力は、モータ速度が増大すると減少すると考えられる。各作動速度範囲にわたって一定の出力電力を維持するために、駆動コントローラ16は、モータ8の速度の変化に応答して先進角及びフリーホイール角を変更する。
【0075】
駆動コントローラ16は、速度補正値を先進角及びフリーホイール角の各々に適用する。モータ速度が増大すると、巻線19の逆起電力は増大する。その結果、一定の出力電力を維持するために、先進角を増加させる速度補正値が、先進角に適用される。更に、フリーホイール角を低減する速度補正値が、フリーホイール角に適用される。電流は、従って、各半サイクルに対してより早期の段階で及び長期間にわたって巻線19内に駆動される。その結果、一定の出力電力は、逆起電力の増大にも関わらず達成することができる。
【0076】
先進角及びフリーホイール角に適用された速度補正値は、モータ8の速度によるだけでなく、励起電圧、すなわち、電源2によって供給されるDCリンク電圧のレベルにも依存する。励起電圧が低下すると、特定の速度補正値は、モータ8の出力電力に対してより小さな正味の影響を有する。従って、一定の出力電力を維持するために、速度補正値は、励起電圧の低下に伴ってマグニチュードが増大する。
【0077】
各パワーマップに対して、駆動コントローラ16は、先進速度補正マップ及びフリーホイール速度補正マップの2つの速度補正マップを格納する。各速度補正マップは、複数の速度及び複数の電圧レベルの各々に対して速度補正値を格納するルックアップテーブルを含む。パワーマップは、先進時間及びフリーホイール時間を格納するので、速度補正値は、時間として表される。しかし、各パワーマップが、代替的に先進角及びフリーホイール角を格納するとすれば、速度補正マップは、角度として表される速度補正値を格納することができるであろう。表6及び7は、167Wパワーマップに対して先進速度補正マップ及びフリーホイール速度補正マップをそれぞれ列挙している。
【0078】
(表6)

【0079】
(表7)

【0080】
モータ速度が増大すると、先進時間は、先進時間を増加させる量によって補正され、フリーホイール時間は、フリーホイール時間を低減する量によって補正されることが速度補正マップから分る。更に、励起電圧が低下すると、先進時間及びフリーホイール時間が補正される量は増加する。各パワーマップは、公称速度に対して先進時間及びフリーホイール時間を格納するので、公称速度での速度補正値はゼロである。
【0081】
電力マップ及び速度補正マップから値を選択する時に、駆動コントローラ16は、ルックアップテーブルの次の最も近いエントリに対してモータ8の励起電圧及び速度の端数を切り捨てる。
駆動コントローラ16は、「高速加速モード」に関して上述したものと類似の方式で巻線19を駆動する。特に、位置センサ信号のエッジを検出する時に、駆動コントローラ16は、以下の期間T_DRIVE_OFFにわたって巻線19を励起し続ける。
T_DRIVE_OFF=T_HALF_CYCLE−T_ADV−T_FREE
【0082】
ここでもまた、半サイクル時間T_HALF_CYCLEは、位置センサ信号の2つの連続エッジ間の時間間隔である。期間T_DRIVE_OFFの後に、駆動コントローラ16は、期間T_FREEにわたって巻線19をフリーホイールさせ、その後に、駆動コントローラ16は、巻線19を整流する。正味の結果は、駆動コントローラ16が、先進時間T_ADVだけ位置センサ信号のネクストエッジよりも前に巻線19を励起するということである。
ここでもまた、図6は、巻線電流、位置センサ信号、励起電圧、及び数回の半サイクルにわたる制御信号S1−S4の波形を示している。
【0083】
駆動コントローラ16は、電圧レベル信号を定期的に(例えば、各半サイクル)モニタして励起電圧を得る。先進時間T_ADV及びフリーホイール時間T_FREEは、次に、関連するパワーマップから励起電圧に対応する先進時間及びフリーホイール時間を選択することによって得られる。パワーマップから選択された時間は、次に、速度補正マップから選択された速度補正値によって補正される。従って、例えば、電源によって供給された励起電圧が、17.0V(電圧レベル信号によって判断される)であり、モータ速度が103krpm(半サイクル時間によって判断される)である場合、駆動コントローラ16は、167Wパワーマップ(表4)から89μsの先進時間及び56μsのフリーホイール時間を選択する。駆動コントローラ16は、次に、先進速度補正マップ(表6)によって判断される2.09μsによって先進時間を補正し、フリーホイール速度補正マップ(表7)によって判断される−6.64μsによってフリーホイール時間を補正する。その結果、駆動コントローラ16は、91.09の先進時間T_ADV及び49.36μsのフリーホイール時間T_FREEを用いる。
【0084】
駆動コントローラ16は、従って、励起電圧及びモータ速度の範囲にわたって一定の出力電力でモータ8を駆動する。従って、一定の出力電力は、電源2が放電する時、及びモータ8が異なる負荷を受ける時に達成される。
先進及びフリーホイール時間、並びに速度補正値を格納するルックアップテーブルの使用は、駆動コントローラ16のプロセッサ30によって実施する計算を非常に簡素化する。その結果、比較的廉価なプロセッサ30を用いて、巻線19を励起してフリーホイールさせる制御信号S1−S4を発生させることができる。
【0085】
位置センサ誤差
電磁ノイズは、位置センサ13にスプリアスエッジを発生させる場合がある。駆動コントローラ16によって検出されたとすれば、これらのスプリアスエッジは、正しくない時間で駆動コントローラ16に巻線19を励起させるであろう。これは、運動系5の性能に悪影響を及ぼすと考えられるだけでなく、スイッチQ2、Q4に損傷を与えるか又は回転子17を消磁する可能性がある巻線19に過剰な電流を生じさせる場合もある。駆動コントローラ16は、従って、スプリアスエッジを検出する可能性を最小にするような対策を使用する。使用する特定の対策は、作動のモードに依存する。
【0086】
「低速加速モード」で作動する時に、駆動コントローラ16は、位置センサ信号のエッジに同期して巻線19を励起する。整流後に、駆動コントローラ16は、所定の時間、例えば、250μsにわたって位置センサ信号を無視する。従って、この期間内に属するスプリアスエッジは無視される。
「高速加速モード」及び「実行モード」で作動する時に、駆動コントローラ16は、位置センサウインドウを使用する。このウインドウの外側に発生する位置センサ信号のあらゆるエッジは、駆動コントローラ16によって無視される。エッジが位置センサウインドウ内に全く検出されない場合、駆動コントローラ16は、所定の時間(例えば、50ms)にわたって全てのスイッチを開き、「再同期化モード」に入る。
【0087】
巻線19は、位置センサ信号のエッジよりも前に励起されるので、信号の各エッジは、励起後の時間T_ADVに起こることが見込まれる。位置センサウインドウは、従って、励起から始まって先進時間T_ADVよりも大きな長さを有する。好ましくは、位置センサウインドウは、先進時間T_ADV及び半サイクル時間T_HALF_CYCLEの4分の1の合計に対応する長さを有する。これは、次に、位置センサ信号のネクストエッジを確実に検出するのに十分に緊密なウインドウをもたらす。勿論、位置センサウインドウは、より大きく又はより小さくすることができる。しかし、位置ウインドウは、長さが短くなると、特に、位置センサ信号の負荷サイクルに有意な不均衡がある場合(以下を参照)、信号の真のエッジを欠く危険性が増大する。位置ウインドウが増大すると、スプリアスエッジを検出する危険性は増大する。従って、位置センサは、好ましくは、先進時間及び半サイクル時間の半分の合計よりも大きくない。
【0088】
スプリアスエッジの発生に加えて、位置センサ信号の負荷サイクルは、均衡を失う場合がある。半サイクル時間が、位置センサ信号の連続エッジの単一の対(すなわち、単一パルス)間の間隔から判断される場合、負荷サイクルのあらゆる不均衡は、正しくない半サイクル時間を生じることになる。半サイクル時間は、巻線19が励起された時間を制御するだけでなく、速度補正値を適用するためにも用いられるので、半サイクル時間におけるあらゆる誤差は、運動系5の性能に悪影響を及ぼす。従って、半サイクル時間における誤差を低減するために、駆動コントローラ16は、位置センサ信号の複数のパルスに対して連続エッジ間の間隔を平均することによって半サイクル時間を得る。例えば、駆動コントローラ16は、位置センサ信号の以前の4つのパルスに対して連続エッジ間の間隔を平均することによって半サイクル時間を得ることができる。複数のパルスに対して連続エッジ間の間隔を平均することにより、半サイクル時間のあらゆる分散は、有意に低下する。
【0089】
更に、駆動コントローラ16は、位置センサ信号の両方ではなく、立ち上がりエッジ又は立ち下りエッジに応答して巻線19を励起する。駆動コントローラ16は、次に、単一エッジに応答して各電気サイクルの両方の半分、すなわち、両方ではなくて立ち上がり又は立下りに対して駆動オフ時間を計算する。特に、駆動コントローラ16は、上述の手法で、すなわち、半サイクル時間、先進時間、及びフリーホイール時間を用いて、第1の半サイクルに対して駆動オフ時間T_DRIVE_OFF_1を計算する。第2の半サイクルに対する駆動オフ時間T_DRIVE_OFF_2は、次に、半サイクル時間を第1の半サイクルの駆動オフ時間に追加することによって得られる。
T_DRIVE_OFF_1=T_HALF_CYCLE−T_ADV−T_FREE
T_DRIVE_OFF_2=T_DRIVE_OFF_1+T_HALF_CYCLE
駆動コントローラ16は、単一エッジだけに応答して作用するので、駆動コントローラ16は、位置センサ信号の負荷サイクルのあらゆる不均衡に対して感受性が低い。従って、運動系5の性能は、負荷サイクル不均衡によって悪影響を受けない。
【0090】
組立後微調整
運動系5の組立後に、運動系5の性能に悪影響を及ぼす場合がある公差が存在する。その結果、運動系5は、組立後に微調整を受ける。
電流コントローラ15は、巻線19内の電流が閾値を超えないことを保証する。これは、次に、回転子17の消磁を阻止してインバータ11のスイッチQ1−Q4を保護する。しかし、いくつかの構成要素の公差は、電流コントローラ15が過電流信号を発生させる電流レベルに影響を及ぼす。例えば、電流センサ14は、感知抵抗器R1の抵抗の公差を有し、従って、電流コントローラ15の入力に送出された電圧は、分散を有する。更に、電流コントローラ15によって用いる基準電圧の電圧レベルの公差がある。更に、コンパレータ25入力オフセット電圧及び入力漏れ電流の公差がある。要するに、電流閾値上への公差の累積は、±20%にもなる場合がある。この公差は大き過ぎて、モータ8が、回転子17を消磁するか又はインバータ11のスイッチQ1−Q4に損傷を与える可能性なく効率的に実行されることになるという保証ができない。従って、制御システム9の組立後に、電流コントローラ15が微調整され、構成要素公差を切り取って調節される。
【0091】
インバータ11の出力は、モータ8に類似の誘導負荷に接続される。外部電流センサは、誘導負荷による電流を正確に測定する。PWMモジュール27には、比較的低負荷サイクルが装荷され、誘導負荷が励起される。誘導負荷の電流が上昇すると、電流コントローラ15は、過電流信号を発生させて電流を切断する。PWMモジュール27には、比較的低負荷サイクルが装荷されるので、電流は、理想的な電流閾値よりも低いレベルで切断される。外部電流センサは、過電流信号が発生した電流レベルを正確に測定する。PWMモジュール27の負荷サイクルは、次に、増大し、処理は繰り返される。最後に、電流コントローラ15は、理想的な電流閾値で過電流信号を発生させる。この時点で、負荷サイクルの値は、倍率として電流コントローラ15のメモリデバイス28に書き込まれる。
【0092】
電流コントローラ15は、従って、過電流信号が、構成要素公差に関係なく巻線19の電流が明確な閾値を超える時はいつでも発生するように微調整される。PWM負荷サイクルに対して正確な外部電流センサ及び細かい分解能を使用することにより、過電流信号が発生する閾値は、厳密に制御することができる。従って、巻線19の電流の厳密制御は、高価な高公差構成要素の必要なく達成される、実際に、PWMモジュール27の使用は、閾値電圧を発生させるための簡単で費用効率的な手段を提供する。
【0093】
運動系5の組立後に、モータ8に対する位置センサ13のアラインメントに関連した公差がある。この公差は、位置センサ信号によって供給されるような回転子17の検出位置と回転子17の実際の位置との間に位相差を生じる。これは、次に、位置センサ信号のエッジと巻線19の逆起電力のゼロ交差との間の位相差をもたらす。モータ8の組立後に、モータ8は、49.5krpmの速度で駆動される。この速度は、167Wパワーマップに対して公称速度(すなわち、99krpm)の半分に対応する。モータ8に対する電力は、次に、遮断され、巻線19の逆起電力が測定されて位置センサ信号のエッジに対して比較される。位置センサ信号のエッジと逆起電力のゼロ交差との間の時間差は、49.5krpmでの位相差の尺度を提供する。49.5krpmでの時間差は、次に、各パワーマップの公称速度に対してスケーリングされ、位置センサオフセットT_POS_OFFSETとして駆動コントローラ16のメモリデバイス30に格納される。従って、例えば、49.5krpmでの時間差は、2倍になり、167Wパワーマップに対して位置センサオフセットを提供すると同時に、時間差は、79.0/49.5を乗じて、83Wパワーマップに対して位置センサオフセットを提供する。駆動コントローラ16は、従って、各パワーマップに対して位置センサオフセットを格納する。更に、位置センサオフセットは、モータ8が、対応するパワーマップに対する公称速度で作動する時の位置センサ信号のエッジと逆起電力のゼロ交差との間の時間差に対応する(図5参照)。
【0094】
「実行モード」で作動する時に、駆動コントローラ16は、位置センサオフセットT_POS_OFFSETを用いて、駆動オフ時間T_DRIVE_OFFを補正する。
T_DRIVE_OFF=T_HALF_CYCLE−T_ADV−T_FREE−T_POS_OFFSET
その結果、巻線19の励起は、回転子17の位置及び従って逆起電力とより良く同期し、より強力で効率的な運動系5をもたらす。
【0095】
時間間隔として表される時の位置センサ信号のエッジと逆起電力のゼロ交差との間の位相差は、モータ8の速度と共に増大する。理想的には、次に、駆動コントローラ16は、モータ8の速度によって変化する量によって駆動オフ時間を補正する。しかし、位置センサオフセットに対して固定時間を用いることにより、駆動コントローラ16によって実施する計算は、非常に簡素化される。特に、駆動コントローラ16は、モータ8の速度に基づいて補正を何時適用すべきかを計算する必要はない。その結果、駆動コントローラ16によって実施する命令の数は減少し、従って、比較的簡素で廉価なプロセッサ30を使用することができる。これに対する必然の結果は、運動系5が、各パワーマップの公称速度に対して最適化されることである。
【0096】
「実行モード」以外のモードで作動する時には、モータの速度は、位置センサ信号のエッジと逆起電力のゼロ交差との間のあらゆる位相差が運動系5の性能に対して有意に影響を与える可能性が低いほど十分に遅い。更に、加速モードにおいて運動系5によって費やされた時間は、比較的短い。従って、補正の簡素化にも関わらず、運動系5の性能は、悪影響を受けない。
各パワーマップに対する作動速度範囲は、運動系5の全速度範囲に比較して比較的狭い。特に、各パワーマップに対する作動速度範囲(表5の最低速度から最高速度まで)は、全速度範囲(ゼロから最高速度まで)の20%よりも大きくない。その結果、作動範囲の各端における位置センサオフセットと位相差の間の格差は、比較的小さく、従って、固定時間位置センサオフセットを用いて比較的良好な性能が全作動範囲にわたって達成される。
位置センサの位置不良を補正するために位置センサオフセットを使用することにより、比較的小さな、例えば、10mm又はそれよりも小さな直径を有する回転子に対して位置センサ信号のエッジと逆起電力のゼロ交差との間で正確な同期化を達成することができる。従って、高速小型運動系5を達成することができる。
【0097】
運動系5の製造及び組立後に、モータ8のインダクタンス及び逆起電力に公差がある。例えば、固定子18の極先端及び空隙の幾何学形状における公差は、巻線19のインダクタンスに影響を与えると同時に、回転子17の磁気特性並びに空隙の幾何学形状における公差は、巻線19の逆起電力に影響を与える。モータ8のインダクタンス及び逆起電力は、±5%及び±10%ほども大きく変化する場合がある。その結果、異なる運動系5の出力電力は、同じ制御システム9がモータ8を駆動するのに用いられているにも関わらず異なる場合がある。
【0098】
運動系5の組立後に、駆動コントローラ16によって使用するパワーマップは、同じか又は類似の出力電力が、インダクタンス及び逆起電力における公差に関係なく各運動系5に対して達成されるように微調整される。運動系5は、複数のパワーマップを格納した外部微調整システムによって微調整される。微調整システムによって格納された各パワーマップは、異なる出力電力で公称モータ(すなわち、公称インダクタンス及び公称逆起電力を有するもの)を駆動する先進時間及びフリーホイール時間を含む。微調整システムは、表2に挙げたパワーマップ、すなわち、83W、96W、107W、136W、及び167Wで公称モータを駆動するパワーマップの各々を格納する。これらの基本パワーマップの各々に対して、微調整システムは、より高い出力電力及びより低い出力電力で公称モータを駆動するパワーマップを付加的に格納する。各基本マップ及びそれぞれの付加的パワーマップは、所定の量だけ分離された出力電力の離散的レベルで公称モータを駆動する。本発明の説明の目的に対して、微調整システムは、各基本マップに対してより高い出力電力でモータを駆動する単一高パワーマップと、より低い出力でモータを駆動する単一低パワーマップとを格納するように想定されることになる。更に、高パワーマップ、基本パワーマップ、及び低パワーマップは、4Wだけ分離される。従って、167W基本パワーマップに対して、微調整システムは、163Wパワーマップ及び171Wパワーマップを付加的に格納する。136Wパワーマップに対して、微調整システムは、132W及び140Wパワーマップ等々を付加的に格納する。
【0099】
運動系5は、基本パワーマップの組を駆動コントローラ16のメモリデバイス30内に読み込むことによって微調整される。運動系5は、次に、17VのDCリンク電源を用いて167Wパワーマップで駆動される。次に、運動系5の入力電力が測定される。167Wパワーマップに対する入力電力は、表4を参照して17VのDCリンク電圧に対して約190Wとされるべきである。測定入力電力が188W未満である場合、駆動コントローラ16には、高パワーマップの組が読み込まれる。その結果、運動系5は、電力差を補償するようにより高い電力(4W多い電力)で駆動される。その結果、測定入力電力が192Wよりも大きい場合、駆動コントローラ16には、低パワーマップの組が読み込まれる。その結果、運動系5は、電力差を補償するようにより低い電力(4W少ない電力)で駆動される。従って、異なる組のパワーマップが、運動系5の入力電力のあらゆる差を補償するために、駆動コントローラ16に読み込まれる。その結果、異なるインダクタンス及び逆起電力を有する異なるモータ8に対して、同じか又は類似の出力電力を達成することができる。
【0100】
4Wだけ分離された複数のパワーマップを使用することにより、運動系5の電力は、±2W以内に微調整することができる。勿論、パワーマップの分離は、運動系5の電力に対してより厳密な公差を達成するように低減することができることは認められるであろう。
微調整処理は、モータ8のインダクタンス又は逆起電力を測定する必要がないという特定の恩典を有する。更に、運動系5の電力をそれが駆動された時に測定し、次に、相応に補償することにより、微調整処理は、電機子反作用を補償することもできる。
微調整システムは、運動系5の入力電力を測定するが、それに代えて出力電力を測定することもできるであろう。しかし、一般的に、運動系5の入力電力が測定しやすい。
【0101】
特定の組のマップを読み込むこと、モータ8を駆動すること、及びモータ8の電力を測定することではなく、運動系5は、モータ8の異なるパラメータを測定することによって微調整することができる。測定パラメータは、次に、公称モータのそれに対して比較され、その比較に基づいて、微調整システムによって格納された複数の組のパワーマップの1つが駆動コントローラ16に読み込まれる。例えば、モータ8の逆起電力は、測定されて公称逆起電力値(すなわち、公称モータに対する逆起電力)に対して比較される。測定逆起電力が、公称逆起電力に対応する場合、基本パワーマップは、駆動コントローラ16に読み込まれる。そうでなければ、異なる組のパワーマップが、逆起電力の差を考慮に入れる駆動コントローラ16に読み込まれる。従って、より一定の出力電力及び性能は、逆起電力における公差に関係なく異なるモータに対して達成することができる。上述のように、逆起電力は、位置センサオフセットを得た時に測定される。従って、モータ8の逆起電力は、あらゆる追加処理の必要なく測定することができる。
【0102】
励起電圧及び速度の両方の変化に応答して先進角及びフリーホイール角を制御することにより、制御システム9は、励起電圧及びモータ速度の範囲にわたって一定の出力電力でモータ8を駆動することができる。本発明の場合には、一定の出力電力は、モータ8の出力電力の分散が±5%よりも大きくないことを意味することを理解すべきである。
制御システム9は、一定の出力電力だけでなく、比較的高効率(すなわち、出力電力対入力電力の比率)でもモータ8を駆動する。励起電圧及び速度の両方の変化に応答して先進角及びフリーホイール角を制御することにより、少なくとも75%の効率は、励起電圧及びモータ速度の範囲にわたって達成可能である。実際に、表2に挙げたパワーマップに対して、少なくとも80%の効率が達成可能である。例えば、表4に挙げた入力及び出力電力から分るように、約88%の効率は、167Wパワーマップの先進及びフリーホイール角で得ることができる。
【0103】
一定の出力電力及び/又は高効率が達成される励起電圧の範囲は、比較的広い。6セルバッテリパックに対して、励起電圧範囲は、16.8−23.0Vであるが、4セルバッテリパックに対しては、励起電圧範囲は、11.2−14.8である。両電圧範囲に対して、最小電圧は、最大電圧の80%未満である。これは、一定の出力電力及び/又は高効率が達成される比較的大きな範囲を表している。従って、制御システム9は、バッテリが放電すると励起電圧が変化するバッテリ式製品のモータを駆動する用途に理想的に適している。
【0104】
各作動速度範囲は、全速度範囲に比較して比較的狭いが、各作動速度範囲は、それにも関わらず少なくとも10krpmに及んでいる(表5)。更に、各作動速度範囲に対する最低速度は、60krpmよりも大きいが、各作動速度範囲に対する最高速度は、80krpmよりも大きい。実際に、167Wパワーマップに対して、作動速度範囲の最高速度は、100krpmよりも大きい。このような速度範囲にわたって、制御システムによって提供される制御なしでは、出力電力の大きな差が起こるであろう。更に、これらの比較的高速での効率は、一般的に、制御システムによって提供される制御なしでは不十分であると考えられる。
【0105】
制御システム9により、単相永久磁石モータ8は、比較的高速で、かつ特に60krpmを超える速度で駆動することができる。更に、高速は、比較的高効率で達成される。実際に、図4から分るように、100krpmを超える速度は、200W未満の入力電力に対して到達可能である。従って、高速は、モータの費用及びサイズを増大させると考えられる付加的な相巻線の必要なく比較的高効率で到達可能である。
【0106】
制御システム9は、モータ8の滑らかで効率的な性能を集合的に達成する作動の3つの異なるモードを使用する。
「低速加速モード」で作動する時に、巻線19は、巻線19の逆起電力のゼロ交差に同期して励起される。これらの比較的低速において、巻線19の逆起電力は、比較的小さく、巻線19へ電流及び従って電力を駆動する機能に対して影響を与えない。しかし、逆起電力に同期して巻線19を励起することにより、モータ8を起動するのに必要な制御は、比較的簡単に保持することができる。
【0107】
「高速加速モード」で作動する時に、逆起電力のマグニチュードは、巻線19に電流を駆動する機能に影響を与え始める。逆起電力よりも前に巻線19を励起することにより、電流は、より早期の段階で巻線19内に駆動される。その結果、より多くの電力が、モータ8内に駆動される。固定期間だけ逆起電力よりも前に巻線19を励起することにより、巻線19は、回転子速度と共に増加する角度によって逆起電力よりも前に励起される。その結果、モータ8が加速すると、電流は、益々早期の段階で巻線19内に駆動され、従って、より多くの出力が巻線19内に駆動される。更に、固定先進時間を使用することにより、モータ8を駆動するのに必要な制御は、比較的簡単である。
【0108】
「実行モード」で作動する時には、逆起電力のマグニチュードは、巻線19に電流を駆動する機能に有意に影響を及ぼす。「高速加速モード」におけるように、巻線19は、電流がより早期の段階で巻線19内に駆動されるように、逆起電力よりも前に励起される。それにも関わらず、モータ8の速度の変化は、逆起電力のマグニチュード及び従ってモータ8の出力電力に影響を与える。従って、速度の変化に応答して先進時間を変更することにより、モータ8の出力電力は、より良好に制御することができる。特に、先進時間は、モータ速度の増大と共に増加させることができる。逆起電力の増大は、次に、より早期の段階で巻線19内に駆動されている電流によって補償される。その結果、同じか又は類似の出力電力を速度の変化に関係なく達成することができる。
制御システム9は、従って、最高実行速度まで滑らかに、かつ効率的にモータ8を加速し、次に、一定の出力電力でモータ8を駆動するように作用する異なる作動モードを使用する。
【0109】
上述の実施形態では、各パワーマップは、複数の電圧の各々に対して先進時間を格納する。しかし、先進時間を格納するのではなく、各パワーマップは、代替的に、先進時間及びフリーホイール時間の合計を格納することができる。これは、次に、パワーマップから得られた先進時間及びフリーホイール時間の合計に直接比例する駆動オフ時間T_DRIVE_OFFの計算を簡素化する。代替的に、各公称速度での半サイクル時間T_HALF_CYCLEは、公知であるので(例えば、99krpmで303.03μs、93.5krpmで320.86μs等々)、各パワーマップは、その代わりに複数の電圧レベルの各々に対して先進時間でなく駆動オフ時間を格納することができる。これは、次に、駆動コントローラ16によって実施する計算を更に簡素化する。更に、上述のように、先進時間及びフリーホイール時間を格納するのではなく、パワーマップは、代替的に、先進角及びフリーホイール角を格納することができる。従って、より一般的な意味では、各パワーマップは、複数の電圧レベルの各々に対して第1の制御値及び第2の制御値を格納する。第1の制御値は、こうして先進角に比例しており、巻線19が励起される角度又は時間を制御するのに用いられる。第2の制御値は、こうしてフリーホイール角に比例しており、巻線19がフリーホイールされる角度又は時間を制御する。駆動コントローラ16は、次に、第1の制御値によって定められた時間で逆起電力のゼロ交差よりも前に巻線19を励起し、第2の制御値によって定められた時間に対して巻線19をフリーホイールさせる。速度補正マップは、次に、第1の制御値及び第2の制御値を補正するのに適切な速度補正値を格納する。特に、先進速度補正マップは、第1の制御値に適用された速度補正値を格納し、フリーホイール速度補正マップは、第2の制御値に適用された速度補正値を格納する。
【0110】
上述の実施形態では、各パワーマップは、速度補正マップに格納された補正値を用いて速度に対して補正された制御値を格納する。補正値の格納は、全体のメモリ要件を低減する恩典を有する。特に、各補正値は、対応する制御値よりも小さい。しかし、各出力電力レベルに対してパワーマップ及び2つの速度補正マップを格納するのではなく、駆動コントローラ16は、代替的に、複数の速度及び励起電圧の各々に対して制御値を各々格納する2つのマスターマップを格納することができる。
【0111】
上述の実施形態では、先進時間及びフリーホイール時間の両方は、速度に対して補正される。しかし、各作動速度範囲にわたる一定の出力電力は、先進時間及びフリーホイール時間の一方を固定し、先進時間及びフリーホイール時間の他方を変更することによって同様に達成することができる。巻線19は、逆起電力の低下の期間中にフリーホイールされるので、運動系5の出力電力は、先進時間の変化に対してより感受性がある。従って、2つのうちのフリーホイール時間は、好ましくは、固定されたままであり、先進時間は、速度に対して補正される。フリーホイール時間を固定することにより、駆動コントローラ16によって実施される計算は、更に簡素化される。更に、フリーホイール速度補正マップは、各パワーマップに対して省略することができ、従って、駆動コントローラ16のメモリ要件を低減する。フリーホイール時間は、異なる速度に対して固定することができるが、対応するフリーホイール角はそうではない。これは、固定期間にわたる電気角が、モータ8の速度と共に変化することから理解される。
【0112】
各パワーマップは、モータ8に対する公称速度に基づいて計算された制御値を格納する。速度補正値は、次に、仮にモータの速度が公称速度と異なった場合に制御値に適用される。更に、各パワーマップに対する位置センサオフセットは、モータ8が公称速度で作動する時の位置センサ信号のエッジと逆起電力のゼロ交差との間の時間差に対応する。従って、制御システム9は、各作動速度範囲の公称速度での作動に対して最適化される。公称速度は、従って、製品1の性能を最適化するように選択することができる。例えば、公称速度は、モータ8が主に作動する速度に対応するであろう。代替的に又は追加的に、公称速度は、製品1に対する最高性能が達成される速度に対応する場合がある。例えば、図8に示すように、製品1は、ピークのエアワットが各作動速度範囲内の特定の速度で起こる真空掃除機とすることができる。各パワーマップに対する公称速度は、こうしてピークエアワットが達成される速度に対応する。
【0113】
表4−7に挙げた特定の先進時間、フリーホイール時間、及び速度補正値は、例示のためだけに提供している。一定の出力電力を達成するのに必要な特定の制御値及び速度補正値は、モータ8の特定の特性に依存することになる。特定のモータに対する先進及びフリーホイール角は、制御システムの制約範囲内の望ましい出力電力でモータに対して最良の性能(例えば、最良の効率)を発生させるシミュレーションから得られる。シミュレーション内で、先進角及びフリーホイール角の挙動に対する制約を課すことができる。例えば、励起電圧の低下及び/又はモータ速度の増大と共に、先進角は増加が制約される場合があり、フリーホイール角は減少が制約される場合がある。
【0114】
励起電圧及びモータ速度の変化に応答した先進角及びフリーホイール角の両方の変更を参照したが、先進角及びフリーホイール角の一方のみを変更することにより、有意な利点を依然として獲得することができる。特に、上述のように、逆起電力の低下の領域内で巻線19をフリーホイールさせることにより、より効率的な運動系5を達成することができる。更に、電圧及び/又は速度の変化に応答してフリーホイール角を変更することにより、運動系の効率及び出力電力の両方のより良好な制御を先進角のいかなる制御にも関係なく達成することができる。
【0115】
図8に示すように、製品1は、真空掃除機、特に、電動式ブラシバーの形態のアクセサリ4を有する可搬性真空掃除機の形態を取ることができる。運動系5の出力電力及び従って真空掃除機の吸引力は、次に、ブラシバーが真空掃除機に取り付けられているか及び/又はスイッチが入っているか否かによって変更されることになる。更に、電力モード選択スイッチ7は、吸引の増加を必要とする時に高電力モードを選択するためにユーザによって用いることができる。運動系5は、各作動速度範囲にわたって一定の出力電力を維持するので、真空掃除機は、負荷の範囲にわたって一定の吸引を維持することができる。更に、運動系5は、励起電圧の変化に応答して一定の出力電力を維持するので、真空掃除機は、電源2の電圧の変化に応答して一定の吸引を維持することができる。特に、電源2がバッテリパックである場合、真空掃除機は、バッテリパックが放電する時に一定の吸引を維持することができる。
【0116】
上述の実施形態の電源2は、DC電源、特に、DCバッテリパックであるが、電源2は、AC電源、DC電圧を供給する整流器及びフィルタを同様に含むことができる。更に、上述の実施形態のモータ8及びインバータ11の各々は、単一位相を含むが、モータ8及びインバータ11は、追加の位相を含むことができる。駆動コントローラ16は、こうして上述の方式で各位相を駆動する。特に、各位相は、「低速加速モード」中に逆起電力のゼロ交差に同期して励起され、かつ各位相は、「高速加速モード」及び「実行モード」中に順次励起されてフリーホイールされる。上述の位置センサ13は、ホール効果センサである。しかし、回転子17の位置及び従って巻線19の逆起電力のゼロ交差を示す信号を出力することができる光センサのような代替の位置センサも同様に使用することができると考えられる。
モータ8の作動を制御する制御システム9に対してこれまで参照した。しかし、制御システム9は、発電機又は他の電気機械の作動を制御するのに等しく用いることができると考えられる。
【符号の説明】
【0117】
1 製品
2 電源
3 ユーザインタフェース
4 アクセサリ
5 運動系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械を制御する方法であって、
先進角だけ逆起電力のゼロ交差よりも前に励起され、かつフリーホイール角にわたってフリーホイールされる電気機械の巻線を順次励起してフリーホイールさせる段階と、
前記電気機械の速度の変化に応答して前記先進角及び前記フリーホイール角を変更する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記速度の増大に応答して前記先進角を増加させ、かつ前記フリーホイール角を低減する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気機械の電力が作動速度範囲にわたって実質的に一定であるように前記先進角及び前記フリーホイール角を変更する段階を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電気機械の効率が作動速度範囲にわたって少なくとも75%であるように前記先進角及び前記フリーホイール角を変更する段階を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記作動速度範囲は、少なくとも10krpmに及ぶことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記巻線を固定期間にわたってフリーホイールさせる段階を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
各速度テーブルが複数の速度の各々に対する速度制御値を格納する先進速度テーブル及びフリーホイール速度テーブルを格納する段階と、
前記電気機械の前記速度に従って第1の速度制御値を前記先進速度テーブルから選択し、かつ第2の速度制御値を前記フリーホイール速度テーブルから選択する段階と、
前記第1の速度制御値によって定められた時間に前記巻線を励起する段階と、
前記第2の速度制御値によって定められた時間にわたって前記巻線をフリーホイールさせる段階と、
を含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記巻線を励起する段階と、
前記巻線の逆起電力を示す信号をモニタする段階と、
前記信号のエッジの検出に応答して駆動オフ時間にわたって前記巻線を励起し続ける段階と、
フリーホイール時間にわたって前記巻線をフリーホイールさせる段階と、
を含み、
前記駆動オフ時間は、前記第1の制御値に比例し、前記フリーホイール時間は、前記第2の制御値に比例する、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の速度制御値によって補正された公称先進角だけ前記ゼロ交差よりも前に前記巻線を励起する段階と、
前記第2の速度制御値によって補正された公称フリーホイール時間にわたって前記巻線をフリーホイールさせる段階と、
を含むことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
励起電圧に従って前記公称先進時間及び前記公称フリーホイール時間を変更する段階を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
励起電圧に従って前記第1の速度制御値及び前記第2の速度制御値を変更する段階を含むことを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
各速度ルックアップテーブルが、複数の速度及び複数の電圧の各々に対する速度制御値を格納し、
前記電気機械の前記速度及び前記励起電圧のレベルに従って第1の速度制御値を前記先進速度テーブルから選択し、かつ第2の速度制御値を前記フリーホイール速度テーブルから選択する段階、
を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
励起電圧の変化に応答して前記先進角及び前記フリーホイール角を変更する段階を含むことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
励起電圧の低下に応答して前記先進角を増加させ、かつ前記フリーホイール角を低減する段階を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
各電気半サイクルが、単一駆動期間及び単一フリーホイール期間を含み、
前記駆動期間中に前記巻線を励起する段階と、
前記フリーホイール期間中に前記巻線をフリーホイールさせる段階と、
を含むことを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の方法
【請求項16】
電気機械のための制御システムであって、
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の方法を実施する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項17】
電気機械と、
請求項16に記載の制御システムと、
を含むことを特徴とするバッテリ式製品。
【請求項18】
電気機械と、
請求項16に記載の制御システムと、
を含むことを特徴とする真空掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−246381(P2010−246381A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−97371(P2010−97371)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(508032310)ダイソン テクノロジー リミテッド (286)
【Fターム(参考)】