説明

電気機械装置、ロボット、移動体及び電気機械装置の製造方法

【課題】電気機械装置のローター部を樹脂化するとともに、捻れ強度を強くする。
【解決手段】電気機械装置であって、中心軸230と、前記中心軸230の外周に沿って配置されたローター磁石200を有するローター20と、前記ローター20の外周に配置されたステーター15と、を備え、前記中心軸230は、炭素繊維強化プラスチックで形成されており、前記炭素繊維強化プラスチック中の炭素繊維231Aの向きと、前記中心軸230の方向との為す角が45°である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械装置、ロボット、移動体及び電気機械装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空回転軸を備え、中空部に配線を通しているモーター(電動モーター)を用いた産業用ロボットの旋回装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開番号WO2004/078423
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ローター部は、捻れ強度が要求されるため、電動モーターを軽量化するための樹脂化については、十分に検討されてこなかった。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、ローター部を樹脂化するとともに、捻れ強度を強くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
電気機械装置であって、中心軸と、前記中心軸の外周に沿って配置されたローター磁石を有するローターと、前記ローターの外周に配置されたステーターと、を備え、前記中心軸は、炭素繊維強化プラスチックで形成されており、前記中心軸から、前記ローター磁石に向かって放射方向に投影したとき、前記炭素繊維強化プラスチック中の炭素繊維の向きと、前記中心軸の方向との為す角が45°である、電気機械装置。
この適用例によれば、炭素繊維強化プラスチック中の炭素繊維の向きと、中心軸の方向との為す角が45°であるので、中心軸の捻れ強度を強くすることが可能となる。
【0008】
[適用例2]
適用例1の記載の電気機械装置において、前記中心軸の炭素繊維強化プラスチックは、炭素繊維が平らに束ねられた炭素繊維束を四つ目編みして形成した織布を樹脂で筒状に固めている、電気機械装置。
この適用例によれば、炭素繊維強化プラスチック中の炭素繊維の向きと、中心軸の方向との為す角を45°にすることができる。
【0009】
[適用例3]
適用例1または2に記載の電気機械装置を備えるロボット。
【0010】
[適用例4]
適用例1または2に記載の電気機械装置を備える移動体。
【0011】
[適用例5]
適用例4に記載の移動体において、前記移動体は車両である、移動体。
【0012】
[適用例6]
電気機械装置の製造方法であって、炭素繊維を用いて炭素繊維束を形成する工程と、前記炭素繊維束を四つ目編みして織布を形成する工程と、前記織布を、前記織布の炭素繊維の方向と、丸める方向との為す角が45°となるように、管状に巻く工程と、前記織布を炭素繊維強化プラスチックで固めて中心軸を製造する工程と、前記中心軸の周りに永久磁石を配置する工程と、前記中心軸と前記永久磁石とを樹脂でモールドしてローターを形成する工程と、前記ローターを、電磁コイルを有するステーターに組み付ける工程と、を備える、電気機械装置の製造方法。
この適用例によれば、炭素繊維強化プラスチック中の炭素繊維の向きと、中心軸の方向との為す角が45°とした中心軸を有する電気機械装置を容易に製造することができる。
【0013】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、モーターや発電装置などの電気機械装置のほか、それを用いたロボット、電気機械装置の製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】コアレスモーターの構成を示す説明図である。
【図2】第1の実施例におけるコイルバックヨークの厚みとコイルバックヨーク表面の磁束密度の関係を示すグラフである。
【図3】中心軸を形成する材料である炭素繊維の織布を示す説明図である。
【図4】炭素繊維織布の巻方向と、中心軸のねじれ破断トルクと、の関係を示す説明図である。
【図5】炭素繊維織布の製造工程を示す説明図である。
【図6】炭素繊維織布から中心軸230を製造する工程を示す説明図である。
【図7】炭素繊維織布の形状を変形させた例を示す説明図である。
【図8】図7に示す炭素繊維織布233を用いて形成した中心軸を示す説明図である。
【図9】炭素繊維織布の形状を変形させた例を示す説明図である。
【図10】図9示す炭素繊維織布233を用いて形成した中心軸を示す説明図である。
【図11】ローター20の製造工程を示す説明図である。
【図12】第2の実施例の動力発生装置1100の内部構成を示す概略断面図である。
【図13】サンギア(SG)とアウターギア(OG)とプラネタリーキャリア(PC)の入出力別と増減速の関係を示す説明図である。
【図14】第3の実施例を示す説明図である。
【図15】本発明の一実施例としてのロボットアーム1010(「ロボットハンド」とも呼ぶ。)の構成を示す概略図である。
【図16】本発明の第5実施例としての動力発生装置1100Cの構成を示す概略図である。
【図17】本発明の第6実施例としての動力発生装置1100Eの構成を示す概略図である。
【図18】本発明の変形例によるモーター/発電機を利用した移動体の一例としての電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。
【図19】本発明の変形例によるモーターを利用したロボットの一例を示す説明図である。
【図20】本発明の変形例によるモーターを利用した双腕7軸ロボットの一例を示す説明図である。
【図21】本発明の変形例によるモーターを利用した鉄道車両を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施例]
図1は、コアレスモーターの構成を示す説明図である。図1(A)は、コアレスモーター10を中心軸230に平行な面(図1(B)の1A−1A切断面)で切った断面であり、図1(B)は、コアレスモーターを中心軸230に垂直な面(図1(A)の1B−1B切断面)で切った断面である。
【0016】
コアレスモーター10は、略円筒状のステーター15が外側に配置され、略円筒状のローター20が内側に配置されたインナーローター型モーターである。ステーター15は、電磁コイル100A、100Bと、ケーシング110と、コイルバックヨーク115と、磁気センサー300とを備えている。ローター20は、中心軸230と、永久磁石200と、磁石サイドヨーク215と、磁石バックヨーク236と、軸受け240と、波バネ座金260と、を備えている。
【0017】
ローター20は、中心に中心軸230を有しており、中心軸230の外周には、磁石バックヨーク236が配置されている。磁石バックヨーク236の外周には、6つの永久磁石200が配置されている。6個の永久磁石200は、中心軸230の中心から外部に向かう方向(放射方向)に磁化された永久磁石200と、中心から外部に向かう方向(中心方向)に磁化された永久磁石200とを含んでおり、磁化方向が中心方向である永久磁石200と、磁化方向が放射方向である永久磁石200は、円周方向に沿って交互に配置されている。永久磁石200の中心軸230方向の端部には、磁石サイドヨーク215が設けられている。磁石サイドヨーク215は、軟磁性体材料で形成された円盤状の部材である。永久磁石200からでた磁束のうち、中心軸230方向に漏れ出た磁束は、磁石サイドヨーク215を通りやすい。中心軸230は、炭素繊維強化プラスチックで形成されており、貫通孔239を有している。中心軸230は、ケーシング110の軸受け部240で支持されてケーシング110に取り付けられている。また、本実施例では、ケーシング110の内側に、波バネ座金260が設けられており、この波バネ座金260は、永久磁石200の位置決めを行っている。但し、波バネ座金260は省略可能である。
【0018】
ケーシング110は、略円筒形をした筐体である。ケーシングの内周に沿って、二相の電磁コイル100A、100Bが配列されている。電磁コイル100A、100Bは、有効コイル領域とコイルエンド領域とを有している。ここで有効コイル領域とは、電磁コイル100A、100Bに電流が流れたときに、ローター20に対して回転方向のローレンツ力を与える領域であり、コイルエンド領域は、電磁コイル100A、100Bに電流が流れたときに、ローター20に対して回転方向と異なる方向のローレンツ力を与える領域である。ただし、コイルエンド領域は、有効コイル領域を挟んで2つあり、それぞれのローレンツ力は、大きさが同じで、向きが反対であるので、打ち消し合う。有効コイル領域においては、電磁コイル100A、100Bを構成する導体配線は、回転軸とほぼ平行な方向であり、コイルエンド領域では、電磁コイル100A、100Bを構成する導体配線は、回転方向と平行である。また、有効コイル領域では、電磁コイル100A、100Bは、永久磁石200と重なっているが、コイルエンド領域では、電磁コイル100A、100Bは、永久磁石200と重なっていない。なお、電磁コイル100A、100Bを合わせて電磁コイル100とも呼ぶ。電磁コイル100A、100Bとケーシング110との間には、コイルバックヨーク115が設けられている。コイルバックヨーク115の中心軸230方向の長さは、永久磁石200の中心軸230方向の長さとほぼ同じである。中心軸230からコイルバックヨーク115に向かって放射方向に放射線を引いたとき、放射線は、永久磁石200をちょうど貫く。すなわち、コイルバックヨーク115と永久磁石200は、重なっている。
【0019】
ステーター15には、さらに、ローター20の位相を検出する位置センサーとしての磁気センサー300が、電磁コイル100A、100Bの各相に1つずつ配置されている。なお、図1(A)では、一方の磁気センサー300のみを表示している。磁気センサー300は、回路基板310の上に固定されており、回路基板310は、ケーシング110に固定されている。ここで、磁気センサー300は、コイルエンド領域から、中心軸230に垂線を降ろしたときの垂線上に配置されている。
【0020】
図2は、第1の実施例における磁石バックヨークの厚みと永久磁石200で、コイルバックヨーク115側表面の磁束密度の関係を示すグラフである。図2からわかるように、磁石バックヨーク236の厚さを厚くすると、磁石表面の磁束密度は大きくなる。しかし、磁石バックヨーク236の厚みが2mm以上のときの磁石表面の磁束密度は、磁石バックヨーク236の厚みが2mmの時の磁束密度とほとんど同じ大きさである。すなわち、磁石バックヨーク236を2mm以上に厚くしても、磁石表面の磁束密度は、大きくならない。
【0021】
図3は、中心軸を形成する材料である炭素繊維の織布を示す説明図である。炭素繊維織布233は、炭素繊維束232A、232Bが交差するように四つ目編みされて形成されている。ここで、炭素繊維束232Aと232Bは同じ物であり、符号を変えているのは、四つ目編みする時に縦と横とを区別するためである。両者を区別しない場合には、炭素繊維束232Aと232Bを、炭素繊維束232と呼ぶ。炭素繊維束232は、炭素繊維231が細長い平面上に束ねられて形成されている。
【0022】
炭素繊維織布233の右側に示した矢印は、炭素繊維織布233の巻方向を示している。炭素繊維織布233の巻方向は、丸められた中空円筒状の炭素繊維織布の中心軸と垂直な方向である。本実施例の場合、一方の炭素繊維束232Aの炭素繊維231Aの向きと、炭素繊維織布233の巻方向との為す角の大きさを、巻方向の角度と呼ぶ。例えば、巻方向の角度が90°の場合、一方の炭素繊維束232Aの炭素繊維231Aの向きは、炭素繊維織布233の巻方向と90°(垂直)となり、丸められた炭素繊維織布233の中心軸と平行となる。このとき、他方の炭素繊維束232Bの炭素繊維231Bの向きは、炭素繊維織布233の巻方向と平行となる。同様に、巻方向の角度が60°の場合、一方の炭素繊維束232Aの炭素繊維231Aの向きは、炭素繊維織布233の巻方向と60°の角を為しており、他方の炭素繊維束232Bの炭素繊維231Bの向きは、炭素繊維織布233の巻方向と30°(=90°―60°)の角を為している。巻方向の角度が45°の場合、炭素繊維束232Aの炭素繊維231Aの向き、炭素繊維束232Bの炭素繊維231Bの向きは、いずれも、炭素繊維織布233の巻方向と45°の角を為している。なお、また、炭素繊維231A、231Bの向きと丸められた炭素繊維織布233の中心軸との為す角も45°である。一方の炭素繊維束232Aの炭素繊維231Aからみて90°、60°の角度は、他方の炭素繊維束232Bの炭素繊維231Bから見れば、それぞれ0°、30°の角度となる。ここで、炭素繊維束232Aと炭素繊維束232Bは交換可能である。したがって、巻方向の角度が60°の場合は、巻方向の角度が30°の場合と同じである。以下では、炭素繊維231Aの方向と、炭素繊維織布233の巻方向が為す角を「巻角度」とも呼ぶ。
【0023】
図4は、炭素繊維織布の巻方向と、中心軸のねじれ破断トルクと、の関係を示す説明図である。図4から、巻角度が45°となるように、炭素繊維織布233(図3)を丸めることにより、ねじれ破断トルクを最大にすることができる。
【0024】
図5は、炭素繊維織布の製造工程を示す説明図である。まず、工程(A)では、炭素繊維231を準備し、炭素繊維231を束ねて細長い炭素繊維束232を製造する。次に、工程(B)では、炭素繊維束232を四つ目編みして炭素繊維織布233を製造する。図5では、炭素繊維束232が四つ目編みに編まれていく様子が示されている。その後、工程(C)では、炭素繊維織布233を長方形形状に切断する。このとき、長方形の各辺と、炭素繊維の向きが45°となるように切断する。
【0025】
図6は、炭素繊維織布から中心軸230を製造する工程を示す説明図である。工程(D)では、分離内枠型400の外周に剥離剤を塗布し、モールド用樹脂に浸された炭素繊維織布233を巻き付ける。本実施例では、分離内枠型400は、4つに分割可能であり、分離内枠型400が合体した形状は、円筒形である。なお、分離内枠型400の内部は空洞である。炭素繊維織布233を巻き方向は、炭素繊維織布233の炭素繊維231(図5)と45°の角度となる方向である。すなわち、図5の工程(C)で製造された炭素繊維織布233の短辺または長辺が、分離内枠型400により形成される円筒の軸方向と平行となるようにすればよい。
【0026】
工程(E)では、外枠型410の内周に剥離剤を塗布したのち、外枠型410の内側に炭素繊維織布233が巻かれた分離内枠型400を挿入する。次の工程(F)では、分離内枠型400の内部の空洞に加圧枠型405を挿入する。このとき、外枠型410及び加圧枠型405から加熱する。加圧枠型405は、例えば円錐台の形状を有しており、細い方から分離内枠型400の内部の空洞に、分離内枠型の両側から挿入していくことにより、分離内枠型400を外枠型410の方に加圧することができる。これにより、モールド用樹脂に浸された炭素繊維織布233は、加熱圧縮される。
【0027】
工程(G)では、外枠型410を外す。外枠型410の内周には剥離剤が塗布されているので、外枠型410は、容易に取り外すことが可能である。工程(H)では、加圧枠型405を抜き、工程(I)では、分離内枠型400を1つずつ外していく。これにより、炭素繊維強化プラスチックにより形成された中心軸230を形成することができる。
【0028】
図7は、炭素繊維織布の形状を変形させた例を示す説明図である。この炭素繊維織布233は、2つの長方形形状の幅広部233a、幅狭部233bを有している。具体的には、幅広部233aに、幅広部233aよりも幅の細い幅狭部233bが付加された形状を有している。
【0029】
図8は、図7に示す炭素繊維織布233を用いて形成した中心軸を示す説明図である。図7に示す炭素繊維織布233は、長方形の幅広部233aに加えて、細い幅狭部233bを有しているため、図6に示す工程に従って分離内枠型400に炭素繊維織布233を巻くと、細い幅狭部233bの部分において、さらに炭素繊維織布が厚く巻かれることになり、その部分において中心軸230の厚さが厚くなる。なお、幅広部233aと幅狭部233bは、1枚で構成されていても良く、幅広部233aと幅狭部233bとが分かれて2枚で構成されていてもよい。なお、この場合、外枠型410は、炭素繊維織布233の厚さに応じて、異なる内径の外枠型410を用いる。この厚い部分は、例えば軸受け停止用の突起として機能させることができる。
【0030】
図9は、炭素繊維織布の形状を変形させた例を示す説明図である。この炭素繊維織布233は、図7に示す炭素繊維織布233の幅狭部233bの部分に切り抜き部233cを有している。
【0031】
図10は、図9示す炭素繊維織布233を用いて形成した中心軸を示す説明図である。図9に示す炭素繊維織布233は、細い炭素繊維織布233bを有しているため、図8に示したのと同様に、細い炭素繊維織布233bの部分において、中心軸230の厚さが厚くなる。さらに、空間233cに相当する位置に空間(中空室)が形成されている。
【0032】
図11は、ローター20の製造工程を示す説明図である。工程(A)では、中心軸230を準備する。この中心軸230は、図5、6に示す工程により製造することができる。工程(B)では、中心軸230に軸受停止軸用のパイプ235を嵌めこむ。このパイプ235も中心軸230と同様に、図5、6に示す工程により製造することができる。パイプ235部分は 中心軸230の直径が大きくなる。後の工程で、この部分に永久磁石200(図1)が配置され、パイプ235の両端部に軸受け240(図1)が配置される。
【0033】
工程(C)では、パイプ状の磁石バックヨーク236の中に工程(B)で製造した中心軸230を挿入する。このとき、パイプ235が、磁石バックヨーク236とほぼ重なる位置(同等位置)まで挿入する。磁石バックヨーク236は、例えば、B−H特性でBが大きく、Hが最小となる軟磁性体材料で、鉄損失の少ない積層鋼板材で形成されている。
【0034】
工程(D)では、極異方性磁石の未着磁状態の磁石201(以下「未着磁磁石201」と呼ぶ。)を磁石バックヨーク236と同等の位置に挿入する。この未着磁磁石201は、後の工程で外部から着磁されることにより、永久磁石200に変化する。
【0035】
工程(E)では、未着磁磁石201と中心軸230とを樹脂でモールドして一体化する。先ず、未着磁磁石201の両端部に磁石サイドヨーク215を配置し、さらに、外金型430を配置する。外金型430は、樹脂注入口431と、空気排出口432とを備えている。樹脂注入口431から樹脂を注入して加圧、加熱し、未着磁磁石201と中心軸230とを樹脂でモールドして一体化する。
【0036】
工程(F)では、外金型430を取り外したのち、バランス調整用のバランス錘238を貼り付ける。なお、樹脂の一部を削ってバランスをとってもよい。
【0037】
工程(G)では、例えば誘導コイルを用いて、未着磁磁石201に対して外部から着磁する。樹脂でモールドする前に着磁しても、モールド時の熱で磁力が弱くなる恐れがあるので、樹脂でモールドした後に着時することが好ましい。工程(H)では、軸受け240をパイプ235により止まる位置まで挿入する。以上により、ローター20を製造することができる。
【0038】
以上のように、本実施例によれば、樹脂製で、捻れ強度の強い中心軸230を製造することができる。
【0039】
[第2の実施例]
図12は、第2の実施例の動力発生装置1100の内部構成を示す概略断面図である。動力発生装置1100は、中心軸230と、モーター部1120と、回転機構部1130とを備える。モーター部1120と回転機構部1130とは、後述するように、互いに勘合して一体化するように配置され、中心軸230は、一体化されたモーター部1120と回転機構部1130の中央を貫通するように配置される。中心軸230は、軸方向に延びる貫通孔239を有しており、貫通孔239には、導電線束1025が挿通されている。中心軸230は、上述したように、炭素繊維の向きが軸の方向と45°の角度である炭素繊維織布を樹脂で固めた炭素繊維強化プラスチックで形成されている。
【0040】
モーター部1120は、ローター1121と、ケーシング1122とを備える。モーター部1120は、以下に説明するように、ラジアルギャップ型の構成を有している。ローター1121の本体部は略円盤形状を有しており、その本体部の側壁の外周面には、永久磁石200が円筒形に配列されている。永久磁石200の磁束の方向は、放射方向である。なお、永久磁石200の裏側の面(ローター1121の側壁側の面)には、磁力効率を向上させるための磁石バックヨーク1215が配置されている。
【0041】
ローター1121は、その中央に中心軸230を挿通させるための貫通孔1211を有している。なお、貫通孔1211の内壁面と、中心軸230の外周面との間には、ローター1121が中心軸230を中心に回転可能とするための軸受け240が配置されている。軸受け240は、例えば、ボールベアリングによって構成することができる。
【0042】
ローター1121の回転機構部1130と対向する側の面には、貫通孔1211を中心とする略円環状の溝として形成された凹部1212が設けられている。貫通孔1211と凹部1212とを隔てる略円筒状の隔壁1213の外側の壁面には、ギア歯1121tが形成されている。以後、このローター1121の中央に設けられたギア歯1121tを有する隔壁1213を「ローターギア1213」と呼ぶ。後述するように、本実施例におけるローターギア1213は、遊星ギアのサンギアとして機能する。
【0043】
ケーシング1122は、回転機構部1130と対向する側の面が開放された略円筒形状の中空容体であり、ローター1121を収容する。ケーシング1122は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP;carbon fiber reinforced plastics)などの樹脂材料によって構成されるものとしても良い。これによって、動力発生装置1100の軽量化が可能である。
【0044】
ケーシング1122の底面の中央には、中心軸230を挿通するための貫通孔1221が形成されている。中心軸230とケーシング1122とは互いに固定的に取り付けられる。なお、ケーシング1122の外側には、中心軸230の保持性を向上させるための軸受けリング241が勘合的に取り付けられている。
【0045】
ケーシング1122の内周面には、電磁コイル100(100A、100B)が、ローター1121の永久磁石200と間隔を有しつつ対向するように円筒形に配列されている。即ち、モーター部1120では、電磁コイル100がステーターとして機能し、中心軸230を中心としてローター1121を回転させる。なお、電磁コイル100とケーシング1122との間には、磁力効率を向上させるためのコイルバックヨーク115が配置されている。
【0046】
ケーシング1122の底面には、永久磁石200の位置を検出する位置検出部300(「磁気センサー300」とも呼ぶ。)と、ローター1121の回転を制御するための回転制御回路を備える回路基板310が設けられている。位置検出部300は、例えば、ホール素子によって構成され、永久磁石200の周回軌道の位置に対応するように配置されている。位置検出部300は、回路基板310上に配置され、または信号線を介して接続されている。
【0047】
回路基板310には、導電線束1025から分岐した導電線が接続されている。また、回路基板310は、電磁コイル100と電気的に接続されている。回路基板310は、位置検出部300が出力する検出信号を動力発生装置1100の駆動を制御する制御部(図示せず)に送信する。また、回路基板310の回転制御回路は、制御部からの制御信号に従って、電磁コイル100に電力を供給して磁界を発生させ、ローター1121を回転させる。
【0048】
回転機構部1130は、ローター1121のローターギア1213とともに遊星ギア機構を構成し、減速機として機能する。回転機構部1130は、ギア固定部1131と、3個のプラネタリーギア1132と、負荷接続部1133とを備える。なお、図13では便宜上、2個のプラネタリーギア1132のみを図示してある。
【0049】
ギア固定部1131は、内壁面にギア歯1131tが設けられた略円環状のギアであるアウターギア1311と、アウターギア1311の外周に突出した鍔部1312とを有している。ギア固定部1131は、鍔部1312と、モーター部1120のケーシング1122の側壁端面とを固定用ボルト1114によって締結することにより、モーター部1120に固定的に取り付けられる。
【0050】
ギア固定部1131のアウターギア1311は、ローター1121の凹部1212に収容される。また、アウターギア1311の内周面と、ローターギア1213の外周面との間には、3個のプラネタリーギア1132が、ローターギア1213の外周に沿って、ほぼ等間隔で配置される。なお、プラネタリーギア1132のギア歯1132tと、アウターギア1311のギア歯1131tおよびローターギア1213のギア歯1121tとが互いに噛み合うことにより、これら3種のギア1213,1132,1311は連結される。
【0051】
負荷接続部1133は、プラネタリーキャリアとして機能する略円筒形状の部材である。負荷接続部1133の底面の中央には、中心軸230を挿通する貫通孔1331が設けられている。貫通孔1331の内壁面と、中心軸230の外周面との間には、負荷接続部1133が中心軸230を中心に回転可能とするための軸受け240が配置されている。なお、負荷接続部1133に取り付けられた軸受け240と、ローター1121に取り付けられた軸受け240との間には、スペーサー1115が配置される。
【0052】
ここで、ギア固定部1131の中央部には、アウターギア1311の内周空間に連通する略円形形状の開口部1313が形成されており、負荷接続部1133は、その開口部1313に配置される。負荷接続部1133のモーター部1120側(図13の紙面右側)の底面には、ローター1121の凹部1212に収容されたプラネタリーギア1132の回転軸1132sを回転可能に保持するための軸孔1332が形成されている。
【0053】
負荷接続部1133の外側(図12の紙面左側)の底面には、中心軸230の保持性を向上させるための軸受けリング241が勘合的に取り付けられている。負荷接続部1133の外側の底面には、さらに、負荷であるベベルギア1021の回転軸が、固定用ボルト1114によって固定されている。本実施例では、負荷接続部1133は、中心軸230と固定されていないので、負荷接続部1133に負荷がかかっても、中心軸230には、捻れトルクがかからない。
【0054】
図13は、サンギア(SG)とアウターギア(OG)とプラネタリーキャリア(PC)の入出力別と増減速の関係を示す説明図である。本実施例では、回転機構部1130は、遊星ギアを有しているが、遊星ギアにおいては、サンギア(SG)とアウターギア(OG)とプラネタリーキャリア(PC)の3つのうちの1つを入力部とし(ローター1121と一体的に設けられ、あるいは接続され)、残り2つのうちの1つを出力部とし(負荷接続部1133と一体的に設けられ、あるいは接続され)、残りの1つを固定部としても(ステーター(ケーシング1122)と一体に設けられ、あるいは接続されても)よい。遊星ギアでは、サンギア(SG)とアウターギア(OG)とプラネタリーキャリア(PC)とを、入力部と固定部と出力部と、のどれに割り当てるかにより、遊星ギアを減速機あるいは増速機として用いることが決めることが出来る。逆に言えば、遊星ギアを、減速機あるいは、増速機として用いるかにより、入力部、固定部、出力部をどれにするかを決定することになる。また、そのときの減速比(増速比)は、サンギア(SG)とアウターギア(OG)の歯数により決定することが出来る。サンギアの歯数をZa、アウターギアの歯数をZcとすると、各状態における減速比及び入力部の回転方向に対する出力部の回転方向は、図13に示す関係を有している。
【0055】
以上、本実施例によれば、中心軸230は、炭素繊維の向きが軸の方向と45°の角度である炭素繊維織布を樹脂で固めた炭素繊維強化プラスチックで形成されているので、中心軸230の捻れ強度を強くすることが可能となる。なお、本実施例では、中心軸230に直接負荷が掛からない構成になっているので、中心軸230の捻れ強度の強化の効果が大きい。
【0056】
[第3の実施例]
図14は、第3の実施例を示す説明図である。第3の実施例は、第2の実施例と比較すると、以下の点が異なっている。第3の実施例では、ケーシング1122と中心軸230との間に軸受け240が配置されている。すなわち、中心軸230は、ケーシング1122に対して回転可能に形成されている。また、負荷接続部1133と中心軸230とが接続されている。これにより負荷接続部1133とともに、中心軸230が回転する。すなわち、第3の実施例では、第2の実施例よりも、中心軸230に捻れ負荷が多く掛かる構成になっている。しかし、炭素繊維の向きが軸の方向と45°の角度である炭素繊維織布を樹脂で固めた炭素繊維強化プラスチックで形成されているので、中心軸230の捻れ強度を強くすることが可能となるため、第3の実施例のような中心軸230に捻れ負荷が多く掛かる構成であっても、十分な捻れ強度を備えている。
【0057】
なお、本実施例では、負荷接続部1133に負荷が接続される構成であるが、中心軸230に負荷が接続される構成を採用してもよい。この場合、中心軸230と負荷接続部1133とは、一体と考えることも出来る。
【0058】
[第4の実施例]
図15、は本発明の一実施例としてのロボットアーム1010(「ロボットハンド」とも呼ぶ。)の構成を示す概略図である。図15(A)は、ロボットアーム1010の変形態様を示す模式図であり、変形前のロボットアーム1010と、変形後のロボットアーム1010とが図示されている。なお、図15(A)には、互いに直交する3次元矢印x,y,zが図示されている。
【0059】
ロボットアーム1010は、4つの基体部1011〜1014を備える。4つの基体部1011〜1014はそれぞれ、第1〜第3の関節部J1〜J3を介して、互いに直列に連結されている。以後、ロボットアーム1010において、第1の基体部1011側を「後端側」と呼び、第4の基体部1014側を「先端側」と呼ぶ。
【0060】
ロボットアーム1010は、各関節部J1〜J3における回動により、各基体部1011〜1014の連結角度が変わり、全体として湾曲状の形態に変形する。なお、図15(A)では、ロボットアーム1010の変形後の態様として、ロボットアーム1010が紙面上側に向かって湾曲した状態が図示されている。
【0061】
図15(B)は、ロボットアーム1010の内部構成を示す概略断面図である。なお、図15(B)には、図15(A)と対応するように三次元矢印x,y,zが図示されている。各基体部1011〜1014の内部は中空であり、各関節部J1〜J3の動力源である動力発生装置1100と、動力発生装置1100からの駆動力が伝達される2つのベベルギア(かさ歯車)1021,1022と、が収容されている。以下では、第1と第2の基体部1011,1012を連結する第1の関節部J1の構成について説明する。なお、第2と第3の基体部1012,1013を連結する第2の関節部J2および第3と第4の基体部1013,1014を連結する第3の関節部J3の構成は、第1の関節部J1の構成と同様であるため、その説明は省略する。
【0062】
動力発生装置1100は、電磁力により回転駆動力を発生するモーターを有している。動力発生装置1100の内部構成については第2,3の実施例のところですでに説明している。動力発生装置1100は、第1の基体部1011の先端側に配置されており、第1のベベルギア1021の回転軸と接続されている。第1のベベルギア1021は、その回転軸が第1と第2の基体部1011,1012の境界を貫通するように配置され、回転軸の先端に設けられた歯車部(ギア部)が第2の基体部1012内に配置されている。
【0063】
第2のベベルギア1022は、第2の基体部1012の後端側において、そのギア部が第1のベベルギア1021のギア部と連結するように、第2の基体部1012の内壁面に固定的に取り付けられている。動力発生装置1100から伝達された回転駆動力によって、第1のベベルギア1021が回転する。第1のベベルギア1021の回転により、第2のベベルギア1022が回転し、第2の基体部1012が回動する。
【0064】
ところで、ロボットアーム1010の内部には、各動力発生装置1100に電力や制御信号を送信するための導電線の束である導電線束1025が挿通されている。具体的には、導電線束1025は、後端側から第1の基体部1011の内部に挿通され、その一部の導電線が分岐して第1の基体部1011内の動力発生装置1100の接続部に接続される。そして、残りの導電線束1025は、動力発生装置1100の中央を通る貫通孔239(図13参照)と、第1のベベルギア1021の中心軸を貫通する貫通孔(図示は省略)とを通って、第2の基体部1012へと延びる。
【0065】
導電線束1025は、第2の基体部1012においても、同様に配設されている。即ち、第2の基体部1012内部に挿通された導電線束1025は、その一部が動力発生装置1100に接続され、残りが、動力発生装置1100および第1のベベルギア1021の内部を通って、第3の基体部1013へと挿通される。そして、第3の基体部1013に挿通された導電線束1025は、動力発生装置1100に接続される。
【0066】
導電線束1025が各関節部J1〜J3において外部に露出されていと、ロボットアームの変形に伴って、各関節部J1〜J3において、導電線束1025が各基体部1011〜1014に挟まれるなどして劣化してしまう可能性がある。また、導電線束1025が外部に露出していることにより、ロボットアームの意匠性を低下させてしまう可能性がある。しかし、本実施例のロボットアーム1010であれば、導電線束1025の外部に露出していないため、こうした不具合の発生が抑制されている。
【0067】
[第5の実施例]
図16は、本発明の第5実施例としての動力発生装置1100Cの構成を示す概略図である。図14に示す第3の実施例では、遊星ギアにより構成される回転機構部1130を備えていたが、第5の実施例では、遊星ギアの代わりにハーモニックドライブ機構を有する回転機構部1130Cを備えている点が異なる。
【0068】
この動力発生装置1100Cでは、ローター1121の凹部1212に、回転機構部1130Cとして、ハーモニックドライブ機構を構成するウェーブジェネレーター1160と、フレックススプライン1162と、サーキュラスプライン1165とが収容される。ウェーブジェネレーター1160は、底面が略長円形形状を有する略楕円筒形状の部材である。
【0069】
ウェーブジェネレーター1160には、その中心軸方向(紙面左右方向)に貫通する貫通孔1601が設けられており、貫通孔1601の内壁面には、ギア歯1160tが形成されている。ウェーブジェネレーター1160は、貫通孔1601にローターギア1213を勘合的に収容した状態で、締結ボルトFBによってローター1121と締結される。これによって、ウェーブジェネレーター1160は、ローター1121の回転に伴って回転する。
【0070】
ところで、ウェーブジェネレーター1160の両端部には、外周方向に突出した鍔部1602が設けられている。この鍔部1602は、ウェーブジェネレーター1160の外周に配置されるフレックススプライン1162の脱落を防止するためのものである。分離された鍔部1602は、フレックススプライン1162が配置された後に、締結ボルトFBによって固定される。
【0071】
フレックススプライン1162は、ウェーブジェネレーター1160の回転に合わせて変形可能なたわみを有する環状部材であり、その外周面にはギア歯1162tが形成されている。また、フレックススプライン1162の内周面には、ウェーブジェネレーター1160の回転を円滑にするためのベアリング1161が配置されている。
【0072】
サーキュラスプライン1165は、ローター1121の凹部1212に収容されるとともに、内側にフレックススプライン1162を収容する前段部1651と、中心軸230が挿通されるとともに、ベベルギア1021の回転軸が接続される後段部1652とを有している。前段部1651は、内周面にフレックススプライン1162のギア歯1162tと噛み合うギア歯1165tが形成されている。後段部1652には、中心軸230との間に、サーキュラスプライン1165を回動可能とするための軸受け部240が配置される。
【0073】
ハーモニックドライブ機構は、一般に、バックラッシュを省略可能であるため、高精度な回転の伝達が可能である。第3実施例の動力発生装置1100Cであれば、ハーモニックドライブ機構を構成する回転機構部1130Cが、ローター121の凹部1212に一体的に収容されている。そのため、この動力発生装置1100Cによれば、コンパクトで動作精度の高いアクチュエーターやマニピュレーターを構成することが可能である。
【0074】
ハーモニックドライブ機構においても、第2の実施例の遊星ギアと同様に、ウェーブジェネレーター1160、フレックススプライン1162、サーキュラスプライン1165の3つのうちのいずれか1つを入力部とし、残り2つのうちの1つを固定部とし、残る1つを出力部としてもよい。これにより、ハーモニックドライブ機構を、減速機あるいは増速機として用いることが可能となる。また、フレックススプライン1162にダイヤフラムを接続し、フレックススプライン1162の代わりにダイヤフラム入力部、固定部、出力部としてもよい。
【0075】
図17は、本発明の第6実施例としての動力発生装置1100Eの構成を示す概略図である。この動力発生装置1100Eは、サイクロ機構とモーターとを一体化した構成を有しており、負荷接続部1133に回転駆動力を伝達する。動力発生装置1100Eは、以下の点が第3実施例の動力発生装置1100と異なる。すなわち、この動力発生装置1100Eは、ローター1121の凹部1212に、回転機構部1130Eとして、サイクロ機構を備えている。
【0076】
サイクロ機構は、偏心体1180、1185と、曲線板1181と、外ピン1182と、内ピン1183と、ベアリング1814と、を備える。曲線板1181は、略円盤形状を有しており、中心部に中心孔1810を有し、中心孔1810の周りに8個の内ピン孔1811を有する。内ピン孔1811は、円周上に45度間隔で配置されている。曲線板1181の外周は、エピトコロイド平行線形状を有している。本実施例では、エピトコロイド平行線形状の山の数は9個であり、40度回転させるとエピトコロイド平行線形状が重なる。なお、本実施例では、サイクロ機構は曲線板1181を2つ備えており、180度ずれている。その結果、一方の曲線板1181のエピトコロイド平行線形状の凸部が、他方の曲線板1181のエピトコロイド平行線形状の凹部に位置する。
【0077】
外ピン1182は、ケーシング1122に接続されており、曲線板1181側が略円形に形成されている部材である。外ピン1182は、円柱形の棒であってもよい。図17では2本しか示していないが、外ピン1182は、本実施例では、10本あり、曲線板1181の外周に接するように円周上に36度間隔で配置されている。
【0078】
内ピン1183は、負荷接続部1133に接続された円柱形の棒である。内ピン1183は、内ピン孔1811の数と同じ数(8本)あり、円周上に45度間隔で配置されている。内ピン1183の太さは内ピン孔1811の大きさよりも細く形成されており、内ピン1183は内ピン孔1811の中に挿入されている。なお、内ピン1183が配置される円周と、内ピン孔1811が配置される円周は、同じ大きさである。
【0079】
偏心体1180、1185は、それぞれ円柱形状を有しており、ローター1121に接続されている。偏心体1180の中心は、偏心体1180の回転中心とずれている。偏心体1185についても同様である。
【0080】
モーター部1120がローター1121を回転させると、偏心体1180が回転する。偏心体1180の中心は、偏心体1180の回転中心とずれているので、偏心回転する。偏心体1180の外側が曲線板1181の中心孔1810に作用し、曲線板1181を動かす。このとき、曲線板1181は、外ピン1182により規制されて、偏心回転する。曲線板1181の偏心回転に伴い曲線板1181の内ピン孔1811も偏心回転する。内ピン孔1811は、内ピン1183に作用して、負荷接続部1133ごと内ピン1183を回転させる。
【0081】
本実施例では、偏心体1180が一回転すると、曲線板1181が1/9回転する。例えば、曲線板1181のエピトコロイド平行線形状の凸部の数をn個、外ピンの数を(n+1)本とすると、偏心体1180が一回転すると、曲線板1181が1/n回転する。したがって、極めて大きな減速比を得ることが出来る。また、外ピン1182によって滑り接触が転がり接触に変換されるので、機械的損失が非常に小さく、極めて高いギア効率を得ることが可能となる。
【0082】
図18は、本発明の変形例によるモーター/発電機を利用した移動体の一例としての電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。この自転車3300は、前輪にモーター3310が設けられており、サドルの下方のフレームに制御回路3320と充電池3330とが設けられている。モーター3310は、充電池3330からの電力を利用して前輪を駆動することによって、走行をアシストする。また、ブレーキ時にはモーター3310で回生された電力が充電池3330に充電される。制御回路3320は、モーターの駆動と回生とを制御する回路である。このモーター3310としては、上述した各種のコアレスモーター10を利用することが可能である。
【0083】
図19は、本発明の変形例によるモーターを利用したロボットの一例を示す説明図である。このロボット3400は、第1と第2のアーム3410,3420と、モーター3430とを有している。このモーター3430は、被駆動部材としての第2のアーム3420を水平回転させる際に使用される。このモーター3430としては、上述した各種のコアレスモーター10を利用することが可能である。
【0084】
図20は、本発明の変形例によるモーターを利用した双腕7軸ロボットの一例を示す説明図である。双腕7軸ロボット3450は、関節モーター3460と、把持部モーター3470と、アーム3480と、把持部3490と、を備える。関節モーター3460は、肩関節、肘関節、手首関節に相当する位置に配置されている。関節モーター3460は、アーム3480と把持部3490とを、3次元的に動作させるため、各関節につき2つのモーターを備えている。また、把持部モーター3470は、把持部3590を開閉し、把持部3490に物を掴ませる。双腕7軸ロボット3450において、関節モーター3460あるいは把持部モーター3470として、上述した各種のコアレスモーターを利用することが可能である。
【0085】
図21は、本発明の変形例によるモーターを利用した鉄道車両を示す説明図である。この鉄道車両3500は、電動モーター3510と、車輪3520とを有している。この電動モーター3510は、車輪3520を駆動する。さらに、電動モーター3510は、鉄道車両3500の制動時には発電機として利用され、電力が回生される。この電動モーター3510としては、上述した各種のコアレスモーター10を利用することができる。
【0086】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0087】
10…コアレスモーター
15…ステーター
20…ローター
100、100A、100B…電磁コイル
110…ケーシング
115…コイルバックヨーク
121…ローター
122…ケーシング
1133…負荷接続部
200…永久磁石
201…未着磁磁石
215…磁石サイドヨーク
230…中心軸
231A、231B…炭素繊維
232、232A、232B…炭素繊維束
233…炭素繊維織布
233a…幅広部
233b…幅狭部
233c…切り抜き部
235…パイプ
236…磁石バックヨーク
238…バランス錘
239…貫通孔
240…部
241…リング
260…波バネ座金
300…磁気センサー(位置検出部)
310…回路基板
400…分離内枠型
405…加圧枠型
410…外枠型
430…外金型
431…樹脂注入口
432…空気排出口
1010…ロボットアーム
1011〜1014…基体部
1021、1022…ベベルギア
1025…導電線束
1100…動力発生装置
1100C…動力発生装置
1100E…動力発生装置
1114…固定用ボルト
1115…スペーサー
1120…モーター部
1121…ローター
1121t…ギア歯
1122…ケーシング
1130、1130C、1130E…回転機構部
1131…ギア固定部
1131t…ギア歯
1132…プラネタリーギア
1132s…回転軸
1132t…ギア歯
1133…負荷接続部
1160…ウェーブジェネレーター
1160t…ギア歯
1161…ベアリング
1162…フレックススプライン
1162t…ギア歯
1165…サーキュラスプライン
1165t…ギア歯
1180…偏心体
1181…曲線板
1182…外ピン
1183…内ピン
1185…偏心体
1211…貫通孔
1212…凹部
1213…ローターギア(隔壁)
1215…磁石バックヨーク
1221…貫通孔
1311…アウターギア
1312…鍔部
1313…開口部
1331…貫通孔
1332…軸孔
1601…貫通孔
1602…鍔部
1651…前段部
1652…後段部
1810…中心孔
1811…内ピン孔
1814…ベアリング
3300…自転車
3310…モーター
3320…制御回路
3330…充電池
3400…ロボット
3410…第1のアーム
3420…第2のアーム
3430…モーター
3450…双腕7軸ロボット
3460…関節モーター
3470…把持部モーター
3480…アーム
3490…把持部
3500…鉄道車両
3510…電動モーター
3520…車輪
3590…把持部
J1〜J3…関節部
FB…締結ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械装置であって、
中心軸と、前記中心軸の外周に沿って配置されたローター磁石を有するローターと、
前記ローターの外周に配置されたステーターと、
を備え、
前記中心軸は、炭素繊維強化プラスチックで形成されており、前記中心軸から、前記ローター磁石に向かって放射方向に投影したとき、前記炭素繊維強化プラスチック中の炭素繊維の向きと、前記中心軸の方向との為す角が45°である、電気機械装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機械装置において、
前記中心軸の炭素繊維強化プラスチックは、炭素繊維が平らに束ねられた炭素繊維束を四つ目編みして形成した織布を樹脂で筒状に固めている、電気機械装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気機械装置を備えるロボット。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電気機械装置を備える移動体。
【請求項5】
請求項4に記載の移動体において、前記移動体は車両である、移動体。
【請求項6】
電気機械装置の製造方法であって、
炭素繊維を用いて炭素繊維束を形成する工程と、
前記炭素繊維束を四つ目編みして織布を形成する工程と、
前記織布を、前記織布の炭素繊維の方向と、丸める方向との為す角が45°となるように、筒状に巻く工程と、
前記織布を炭素繊維強化プラスチックで固めて中心軸を製造する工程と、
前記中心軸の周りに永久磁石を配置する工程と、
前記中心軸と前記永久磁石とを樹脂でモールドしてローターを形成する工程と、
前記ローターを、電磁コイルを有するステーターに組み付ける工程と、
を備える、電気機械装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−257413(P2012−257413A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129659(P2011−129659)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ハーモニックドライブ
2.サイクロ
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】