説明

電気機械装置、ローター、磁石ユニット、およびこれらの作製方法、並びに、電機機械装置を用いた移動体およびロボット、

【課題】ローター磁石の遊離を防止し、高トルクを維持しつつ高速回転を可能とする。
【解決手段】磁石バックヨークの外周表面の円周方向に沿って形成された磁石配置溝は、磁石ユニットの組立時において、回転軸の軸方向に沿ってローター磁石の移動を許容するが、軸方向に垂直で回転軸の中心から外周へ向かう放射方向へのローター磁石の移動を禁止し、前記ローターの回転時において、ローター磁石の放射方向への遊離を防止する遊離防止構造を有する。ローター磁石は、磁石配置溝の軸方向の一方端から軸方向に沿って磁石配置溝に挿入されて、磁石配置溝に収納固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SPM(Surface Permanent Magnet)型のローターを用いた電気機械装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機(モーター)や発電機等の回転電機(本明細書では「電機機械装置」とも呼ぶ)として、ローターの外周表面にローター磁石を貼り合せたSPM型のローターを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、SPM型のローターを用いた回転電機(以下、「SPM型回転電機」とも呼ぶ)は、従来から高トルク低回転用のモーターとして用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−89141号公報
【特許文献2】特開平7−212997号公報
【特許文献3】特開平11−136891号公報
【特許文献4】特開平6−237547号公報
【特許文献5】特開平11−27913号公報
【特許文献6】特開2002−272034号公報
【特許文献7】特開2001−197692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、SPM型回転電機を、高トルクを維持しつつ分速数万回転の高速回転で用いたいという要望がある。しかしながら、SPM型のローターを分速数万回転で高速回転させようとした場合に、ローター磁石の貼り合せ固定に関する信頼性が不十分であることがわかった。具体的は、回転数の上昇に応じたローターの温度上昇によって接着剤の軟化が発生し、固定していたローター磁石に加わる回転軸の中心から外周へ向かう方向(放射方向)の力によって、ローター磁石が放射方向に遊離し、最終的には脱離してしまう、という問題がわかった。また、ローター磁石の貼り合せ時において、接着剤の粘性ばらつきにより、貼り合せ固定後のローター磁石の外周寸法を均一にすることが難しく、高速回転時における特性維持が難しい、という問題もある。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、ローター磁石の遊離を防止することにより、高トルクを維持しつつ高速回転させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
ローターと、前記ローターの外周に配置されたステーターと、を有する電気機械装置であって、
前記ローターは、
回転軸と、
前記回転軸の外周に沿って固定配置された円筒状の磁石ユニットと、
を備え、
前記磁石ユニットは、
前記回転軸に固定配置された円筒状の磁石バックヨークと、
前記磁石バックヨークの外周表面の円周方向に沿って形成された複数の磁石配置溝と、
前記複数の磁石配置溝にそれぞれ収納固定された複数のローター磁石と、
を備え、
前記磁石配置溝は、前記磁石ユニットの組立時において、前記回転軸の軸方向に沿って前記ローター磁石の移動を許容するが、前記軸方向に垂直で前記回転軸の中心から外周へ向かう放射方向への前記ローター磁石の移動を禁止し、前記ローターの回転時において、前記ローター磁石の前記放射方向への遊離を防止する遊離防止構造を有し、
前記ローター磁石は、前記磁石ユニットの組立時において、前記磁石配置溝の前記軸方向の一方端から前記軸方向に沿って前記磁石配置溝に挿入されて、前記磁石配置溝に収納固定される
電気機械装置。
この電機機械装置では、遊離防止構造によって放射方向へのローター磁石の移動を禁止することができるので、ローター磁石の遊離を防止するとともに、ローター磁石の外周径で規定されるローターの外周径を安定保持することができ、SPM型の電機機械装置において高トルクを維持しつつ高速回転を可能とすることができる。
【0008】
[適用例2]
適用例1に記載の電気機械装置であって、
前記遊離防止構造は、前記磁石配置溝の両側の側壁面を含み、前記両側の側壁面には、前記ローター磁石を前記放射方向に抑えるオーバーハング部を有する
電気機械装置。
このようにすれば、容易に遊離防止構造を実現できる。
【0009】
[適用例3]
適用例1に記載の電機機械装置であって、
前記遊離防止構造は、前記磁石配置溝の底部に設けられた底部溝の両側の側壁面を含み、前記両側の側壁面には、前記ローター磁石を前記放射方向に抑えるオーバーハング部を有する
電気機械装置。
このようにしても、容易に遊離防止構造を実現できる。
【0010】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一項に記載の電気機械装置であって、
前記磁石配置溝の底部に、前記ローター磁石を前記底部に接着するための接着剤が充填された接着剤溝が形成された
電気機械装置。
このようにすれば、余分な接着剤を接着剤溝に溜めつつ、必要最小限の接着剤で容易に接着が可能であり、接着剤が溢れて外形が変化してしまうことを防止することが可能である。
【0011】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一項に記載の電気機械装置であって、
前記回転軸と前記磁石ユニットの前記磁石バックヨークとが接するそれぞれの面には、前記回転軸の外周に沿って前記磁石ユニットを固定配置するための固定配置構造が形成された
電気機械装置。
このようにすれば、回転軸に磁石ユニットを固定して一体化させることが可能である。
【0012】
[適用例6]
適用例5に記載の電機機械装置であって、
前記固定配置構造は、前記磁石バックヨークの内周側に形成された前記軸方向に垂直な断面がM角形(Mは3以上の整数)の内周形状と、前記内周形状に接するように前記回転軸の外周側に形成された前記軸方向に垂直な断面がM角形の外周形状と、で構成されている
電機機械装置。
このようにすれば、簡単な構造で安定な固定が可能である。なお、M角形は、回転軸を中心とする正M角形が好ましい。このようにすれば、多角形の頂点部分に均等に力を分散して安定に固定が可能である。
【0013】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電動機(モーター)や発電機などの電気機械装置(回転電機)のほか、電機機械装置に備えられるローターやローターに備えられる磁石ユニット、電機機械装置の作製方法、ローターの作製方法、磁石ユニットの作製方法、電機機械装置を用いた電動移動体や電動移動ロボットあるいは医療機器等の種々の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施例としてのコアレスモーター10の構成を示す説明図である。
【図2】図1(B)の磁石バックヨーク236の外周の円周方向に沿って配置されたローター磁石200の一つを拡大して示す説明図である。
【図3A】ローター20として用いられるローターユニットの作製手順を示す説明図である。
【図3B】ローター20として用いられるローターユニットの作製手順を示す説明図である。
【図3C】ローター20として用いられるローターユニットの作製手順を示す説明図である。
【図3D】ローター20として用いられるローターユニットの作製手順を示す説明図である。
【図3E】ローター20として用いられるローターユニットの作製手順を示す説明図である。
【図3F】ローター20として用いられるローターユニットの作製手順を示す説明図である。
【図4】遊離防止構造としての磁石配置溝236Aの両側の側壁面236Bsに有するオーバーハング部の変形例を示す説明図である。
【図5】比較例としての磁石バックヨーク236cの磁石配置溝236Acにローター磁石200cを配置する例を示す説明図である。
【図6】回転軸230の磁石ユニット装着部230Bと磁石ユニット20Aの挿入固定部236Dとで構成される固定配置構造の変形例について示す説明図である。
【図7】磁石配置溝236Aの底部に設けられた接着剤溝の変形例を示す説明図である。
【図8】第2実施例としてのコアレスモーターの磁石バックヨーク1236の外周の円周方向に沿って配置されたローター磁石1200の一つを拡大して示す説明図である。
【図9】本発明の変形例としてモーター/発電機を利用した移動体の一例である電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。
【図10】本発明の変形例としてモーターを利用したロボットの一例を示す説明図である。
【図11】本発明の変形例としてモーターを利用した双腕7軸ロボットの一例を示す説明図である。
【図12】本発明の変形例としてモーターを利用した鉄道車両を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態及び実施例を以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0016】
A.第1実施例:
図1は、第1実施例としてのコアレスモーター10の構成を示す説明図である。図1(A)は、コアレスモーター10を回転軸230に平行な面(図1(B)の1A−1A切断面)で切った断面を模式的に示し、図1(B)は、コアレスモーター10を回転軸230に垂直な面(図1(A)の1B−1B切断面)で切った断面を模式的に示している。
【0017】
コアレスモーター10は、略円筒状のステーター15が外側に配置され、略円筒状のローター20が内側に配置されたインナーローター型モーターである。ステーター15は、電磁コイル100A,100Bと、ケーシング110と、コイルバックヨーク115と、磁気センサー300とを備えている。ローター20は、回転軸230と、磁石バックヨーク236と、磁石サイドヨーク237,238と、ローター磁石200と、軸受け部240と、を備えている。
【0018】
ローター20は、中心に回転軸230を有しており、回転軸230の外周には、略円筒状の磁石バックヨーク236が固定配置されている。磁石バックヨーク236の外周に沿って、6つのローター磁石200が略円筒状に配置されている。6個のローター磁石200は、回転軸230の中心から外部に向かう方向(放射方向)に磁化された永久磁石と、外部から中心に向かう方向(中心方向)に磁化された永久磁石とが用いられる。磁化方向が中心方向であるローター磁石200と、磁化方向が放射方向であるローター磁石200とは、円周方向に沿って交互に配置されている。回転軸230に沿った方向(以下、単に「軸方向」と呼ぶ)のローター磁石200の端部には、磁石サイドヨーク237,238が設けられている。磁石サイドヨーク237,238は、軟磁性材で形成された略ドーナツ盤状の部材である。回転軸230は、炭素繊維強化プラスチック等の非磁性材で形成されており、貫通孔231を有している。回転軸230は、軸受け部240で支持されてケーシング110に取り付けられている。また、本実施例では、ケーシング110の内側に、波バネ座金260が設けられており、この波バネ座金260は、ローター磁石200の位置決めを行っている。但し、波バネ座金260は省略可能である。
【0019】
ケーシング110は、略円筒形をした筐体である。ケーシングの内周に沿って、二相の電磁コイル100A,100Bが配列されている。電磁コイル100A,100Bは、有効コイル領域とコイルエンド領域とを有している。ここで有効コイル領域とは、電磁コイル100A,100Bに電流が流れたときに、ローター20に対して回転方向のローレンツ力を与える領域であり、コイルエンド領域は、電磁コイル100A,100Bに電流が流れたときに、ローター20に対して回転方向と異なる方向(主として回転方向に垂直な方向)のローレンツ力を与える領域である。ただし、コイルエンド領域は、有効コイル領域を挟んで2つあり、それぞれのローレンツ力は、大きさが同じで、向きが反対であるので、打ち消し合う。有効コイル領域においては、電磁コイル100A,100Bを構成する導体配線は、回転軸とほぼ平行な方向であり、コイルエンド領域では、電磁コイル100A,100Bを構成する導体配線は、回転方向と平行である。また、有効コイル領域では、電磁コイル100A,100Bは、ローター磁石200と重なっているが、コイルエンド領域では、電磁コイル100A,100Bは、ローター磁石200と重なっていない。なお、電磁コイル100A,100Bを合わせて電磁コイル100とも呼ぶ。電磁コイル100A,100Bとケーシング110との間には、コイルバックヨーク115が設けられている。コイルバックヨーク115の軸方向の長さは、ローター磁石200の軸方向の長さとほぼ同じである。回転軸230からコイルバックヨーク115に向かって放射方向に放射線を引いたとき、放射線は、ローター磁石200をちょうど貫く。すなわち、コイルバックヨーク115とローター磁石200は、重なっている。
【0020】
ステーター15には、さらに、ローター20の位相を検出する位置センサーとしての磁気センサー300が、電磁コイル100A,100Bの各相に1つずつ配置されている。なお、図1(A)では、一方の磁気センサー300のみを表示している。磁気センサー300は、回路基板310の上に固定されており、回路基板310は、ケーシング110に固定されている。ここで、磁気センサー300は、コイルエンド領域から、回転軸230に垂線を降ろしたときの垂線上に配置されている。
【0021】
なお、コアレスモーター10は、概略以下の手順で組み立てられる。まず、ローター20の一方の軸受け部240が第1のケーシング110Aに取り付けられるようにローター20を組み付ける。次に、内周に電磁コイル100A,100Bが配列された第2のケーシング110Bを第1のケーシング110Aに組み付ける。そして、ローター20に取り付けられた他方の軸受け部240が第3のケーシング110Cに取り付けられるように、第3のケーシング110Cを第2のケーシング110Bに組み付ける。これにより、コアレスモーター10が組み立てられる。
【0022】
図2は、図1(B)の磁石バックヨーク236の外周の円周方向に沿って配置されたローター磁石200の一つを拡大して示す説明図である。磁石バックヨーク236には、外周に沿って6個のローター磁石200を固定配置するための磁石配置溝236Aが形成されている。磁石配置溝236Aの軸方向に沿った両側の側壁236Bの側壁面236Bsは、溝の底部幅Widよりも上部幅Wodのほうが狭くなるように、それぞれ内側に傾斜した形状のオーバーハング部を有している。すなわち、磁石配置溝236Aに配置されたローター磁石200の磁石配置溝236Aの底部に対応する幅(底部幅Widに相当)が、磁石配置溝236Aの上部幅Wodよりも広くなっている。そして、磁石配置溝236Aに収納固定されるローター磁石200は、磁石配置溝236Aの側壁面236Bsに接して収納されるように、磁石配置溝236Aの空間形状と略同一の形状を有している。
【0023】
ローター磁石200にはローター20の回転によって発生する放射方向への力(図に矢印で示す)が加わることになり、ローター磁石200の遊離あるいは離脱の原因となる。しかしながら、上記構造の場合には、ローター20の回転時において、磁石配置溝236Aの両側の側壁面236Bsに接するローター磁石200の面が両側の側壁面236Bsから及ぼされる放射方向とは逆向きの力によって押さえつけられることになるので、ローター磁石200の放射方向への移動を禁止することができる。これにより、ローター20の回転によってローター磁石200が遊離し、最終的には離脱してしまうという問題を解決し、ローター20を高速回転させることが可能となる。なお、以上の説明からわかるように、磁石配置溝236Aの両側の側壁面236Bsのオーバーハング部が、この実施例における本願発明の遊離防止構造に相当する。
【0024】
なお、磁石配置溝236Aの底部の中心には、軸方向に沿って接着剤239が充填された接着剤溝236Cが形成されている。接着剤239によってローター磁石200を磁石配置溝236Aの底部に貼り付けることができる。
【0025】
図3A〜図3Fは、ローター20として用いられるローターユニットの作製手順を示す説明図である。なお、各図に示す一点鎖線は、各部品の中心軸を示す補助線である。まず、図3Aに示す工程では、複数の磁石バックヨーク部品236pを準備する。この磁石バックヨーク部品236pは外周が略円形で内周が正十二角形の略ドーナツ盤状の外形形状を有している。磁石バックヨーク部品236pの内周側の空間236Dpは、回転軸230が挿入される挿入固定部236Dとなる空間(以下、「挿入固定部分」とも呼ぶ)である。磁石バックヨーク部品236pの外周表面には、円周方向に沿って、上記した磁石配置溝236Aとなる磁石配置溝部分236Apと、側壁236Bとなる側壁部分236Bpとが形成されており、磁石配置溝部分236Apの底部に接着剤溝236Cとなる接着剤溝部分236Cpが形成されている。磁石バックヨーク部品236pの中心軸に沿った方向(回転軸の軸方向に相当し、以下では、単に「軸方向」とも呼ぶ)に垂直な2つの端面のうちの一方の端面には、部品嵌合凸部236Epが形成されており、他方の端面には、部品嵌合凹部236Fpが形成されている。部品嵌合凸部236の外形と部品嵌合凹部の外形とは、ある一つの磁石バックヨーク部品236pの部品嵌合凸部236Epが他の一つの磁石バックヨーク部品236pの部品嵌合凹部236Fpに挿入嵌合されるように、略同一の正十二角形となっている。なお、この磁石バックヨーク部品236pは、例えば、軟磁性材を用いた鋼板材をプレス形成することにより作製される。ただし、軟磁性材の鋼板材に限定されるものではなく、種々の金属材料を用いた鋼板材を利用することができる。
【0026】
そして、準備した複数の磁石バックヨーク部品236pを、互いの部品嵌合凸部236Epと部品嵌合凹部236Fpとが嵌合するように積層固定して磁石バックヨーク236を形成する。なお、このとき、部品嵌合凸部236Epあるいは部品嵌合凹部236Fpに接着剤を塗布しておき、積層後に接着剤を高温乾燥させることにより、各磁石バックヨーク部品236pが互いに接着固定される。なお、溶接により各磁石バックヨーク部品236pを互いに固定するようにしてもよい。乾燥温度は、用いた接着剤の乾燥に適した温度と乾燥時間との関係から適宜設定される。以下の接着工程でも同様である。
【0027】
次に、図3Bに示す工程では、磁石サイドヨーク237を準備する。この磁石サイドヨーク237は、磁石バックヨーク部品236pと同様に、外周が略円形で内周が正十二角形の略ドーナツ盤状の外形形状を有している。磁石サイドヨーク237の内周形状は、磁石バックヨーク部品236pの部品嵌合凸部236Epと嵌合する形状となっている。この磁石サイドヨーク237も、磁石バックヨーク部品236pと同様に、軟磁性材等を用いた鋼板材をプレス形成することにより作製される。
【0028】
そして、準備した磁石サイドヨーク237を、磁石バックヨーク236の部品嵌合凸部236Epに嵌合固定させて、磁石バックヨーク236と磁石サイドヨーク237とが一体化された磁石ヨークユニット236Uを形成する。なお、このとき、部品嵌合凸部236Epあるいは磁石サイドヨーク237の内周に接着剤を塗布しておき、嵌合後に接着剤を高温で乾燥させることにより、磁石サイドヨーク237が磁石バックヨーク236に接着固定される。
【0029】
次に、図3Cに示す工程では、まず、磁石ヨークユニット236Uの接着剤溝236Cに接着剤239を充填することにより、接着剤溝236Cを中心として磁石配置溝236Aに接着剤239を塗布する。そして、準備した磁石配置溝236Aと略同一形状のローター磁石200を、軸方向に沿って磁石サイドヨーク237とは反対側から磁石サイドヨーク237に当たるまで挿入する。また、ローター磁石200の表面に絶縁酸化防止剤、例えば、SiO2を静電塗布または超音波塗布する。そして、接着剤および絶縁酸化防止剤を高温で乾燥させる。これにより、片側磁石サイドヨーク付の磁石ユニット20Aaを形成する。
【0030】
そして、図3Dに示す工程では、もうひとつの磁石サイドヨーク238を準備する。この磁石サイドヨーク238も、磁石サイドヨーク237と同様に、外周が略円形で内周が正十二角形の略ドーナツ盤状の外形形状を有している。磁石サイドヨーク238の内周形状は、磁石バックヨーク部品236pの部品嵌合凹部236Fpに対応する部品嵌合凸部236Epと同様の形状を有する部品嵌合凸部238Epとなっている。この磁石サイドヨーク238も、他の磁石サイドヨーク237と同様に、軟磁性材等を用いた鋼板材をプレス形成することにより作製される。
【0031】
そして、準備した磁石サイドヨーク238の部品嵌合凸部238Epを、片側磁石サイドヨーク付の磁石ユニット20Aaの部品嵌合凹部236Fpに嵌合して固定することにより、両側磁石サイドヨーク付の磁石ユニット20Aを形成する。なお、このとき、部品嵌合凸部238Epあるいは部品嵌合凹部236Fpに接着剤を塗布しておき、嵌合後に接着剤を高温で乾燥させることにより、磁石サイドヨーク238が磁石ユニット20Aaに接着固定される。
【0032】
次に、図3Eに示す工程では、回転軸230を準備する。この回転軸230は、回転軸部230Aと磁石ユニット装着部230Bとストッパー部230Cとからなる。磁石ユニット装着部230Bは、磁石ユニット20Aの挿入固定部236Dに対応するように、軸方向から見た外形形状が正十二角形となっている。なお、回転軸230は、上記したように非磁性材料で一体形成されている。
【0033】
そして、まず、準備した回転軸230の磁石ユニット装着部230Bに接着剤239を塗布する。次に、回転軸230の磁石ユニット装着部230Bを、ストッパー部230Cが磁石ユニット20Aの磁石サイドヨーク237に当たるまで挿入して、磁石ユニット装着部230Bを挿入固定部236Dに嵌合固定させ、接着剤を高温乾燥させる。これにより、ローターユニット20Bを作製する。
【0034】
最後に、図3Fに示す工程では、ローターユニット20Bの回転軸230の軸受け部取り付け箇所に接着剤239を塗布後、軸受け部240を挿入し、高温で乾燥させる。これにより、軸受け部240を回転軸230に接着固定させて、ローター20となるローターユニット20Cを作製する。なお、このとき、回転バランサー調整機を用いてバランス調整材を付加することにより、回転バランスを調整することができる。
【0035】
以上説明したように、本実施例では、ローター20の外周に固定配置された磁石バックヨークの外周表面に円周方向に沿って設けられた磁石配置溝236Aに、ローター磁石200が収納固定されている。磁石配置溝236Aの両側の側壁面236Bsが遊離防止構造となっており、側壁面236Bsに接するローター磁石200の面が側壁面236Bsから及ぼされる放射方向とは逆向きの力によって押さえつけられて移動できないようにすることができる。これにより、ローター20の回転によってローター磁石200が遊離し、最終的には離脱してしまうという問題を解決することができる。また、磁石表面によって形成されるローターの外周径を安定保持することが可能となる。
【0036】
また、上記実施例では、ローター磁石200の中心方向の面を磁石バックヨーク236で覆い、軸方向の面を磁石サイドヨーク237,238にて覆っているので、ローター磁石200から軸方向への磁束漏れを抑制することができる。また、ローター磁石の中心方向への磁束漏れを磁石バックヨーク236で抑制することができるので、回転軸230に非磁性材、例えば、CFRP(carbon fiber reinforced plastics)やGFRP(glass fiber reinforced plastics)のような樹脂複合材や、セラミックス、植物繊維材、樹脂材等を用いることができ、軽量化が容易となる。
【0037】
また、上記実施例では、磁石バックヨーク236の磁石配置溝236Aの底部に設けられた接着剤溝236Cを中心として充填された接着剤239によってローター磁石200を磁石配置溝236Aの底部に貼り付けることができる。これにより、余分な接着剤を接着剤溝236Cに溜めつつ、必要最小限の接着剤で容易に接着が可能であり、接着剤が溢れて外形が変化してしまうことを防止することが可能である。
【0038】
図4は、遊離防止構造としての磁石配置溝236Aの両側の側壁面236Bsに有するオーバーハング部の変形例を示す説明図である。この図は、説明を容易にするため、略円筒状の磁石バックヨークを平面状にした状態で示している。図4(a),(b)は、両側の側壁面236Bsの上部側の面をそれぞれ内側に突き出させて、突き出た部分の幅が他の幅よりも狭くなっている形状として、オーバーハング部を形成した例である。図4(c),(d)は、両側の側壁面236Bsの底部側の面をそれぞれ外側にへこませて、へこんだ部分の幅が他の幅より広くなっている形状として、オーバーハング部を形成した例である。図4(e),(f)は、両側の側壁面236Bsの上部側の面および底部側の面をそれぞれ内側に突き出させて、突き出た部分の幅が他の幅よりも狭くなっている形状とし、上部の突き出た部分でオーバーハング部を形成した例である。図4(g),(h)は、両側の側壁面236Bsの上部側の面および底部側の面をそれぞれ外側にへこませて、へこんだ部分の幅が他の幅よりも広くなっている形状とし、下部のへこんだ部分でオーバーハング部を形成した例である。図4(i),(j)は、両側の側壁面236Bsの中間位置から上部側の面および中間位置から底部側の面をそれぞれ内側に直線的に傾斜させて、中間位置から上部へ向けての幅および中間位置から底部へ向けての幅がそれぞれ直線的に狭くなっている形状とし、中間位置から上部側でオーバーハング部を形成した例である。図4(k),(l)は、両側の側壁面236Bsの中間位置から上部側の面および中間位置から底部側の面がそれぞれ外側に直線的に傾斜させて、中間位置から上部へ向けての幅および中間位置から底部へ向けての幅がそれぞれ直線的に広くなっている形状とし、中間位置から底部側でオーバーハング部を形成した例である。図4(m),(n)は、両側の側壁面236Bsの中間位置から上部側の面および中間位置から底部側の面がそれぞれ内側に曲線的に傾斜させて、中間位置から上部へ向けての幅および中間位置から底部へ向けての幅がそれぞれ曲線的に狭くなっている形状とし、中間位置から上部側でオーバーハング部を形成した例である。図4(o),(p)は、は、両側の側壁面236Bsの中間位置から上部側の面および中間位置から底部側の面がそれぞれ外側に曲線的に傾斜させて、中間位置から上部へ向けての幅および中間位置から底部へ向けての幅がそれぞれ曲線的に広くなっている形状とし、中間位置から底部側でオーバーハング部を形成した例である。
【0039】
図4(a)〜(p)に示すように、遊離防止構造としての磁石配置溝236Aの両側の側壁面236Bsに有するオーバーハング部の形状は、種々の形状とすることができる。すなわち、両側の側壁面に接するローター磁石の面に加わる放射方向への力を受け止めて、側壁面に接するローター磁石の面が側壁面から及ぼされる放射方向とは逆向きの力によって押さえつけられて移動できないようにすることができ、磁石配置溝の軸方向の一方端からのみローター磁石を磁石配置溝に挿入することが可能な構造であればよい。
【0040】
図5は、比較例としての磁石バックヨーク236cの磁石配置溝236Acにローター磁石200cを配置する例を示す説明図である。この比較例は、磁石配置溝236Acにローター磁石200cを配置し、側壁236Bcの上部に圧力を加えて、ローター磁石200cを押さえ込むように側壁236Bcを変形させるものである。この比較例のようにしても、本実施例と同様に、ローター磁石200cの遊離を防止することが可能である。しかしながら、比較例の場合には、圧力を加えることにより、側壁236Bcやローター磁石200cにクラックや変形が発生し、耐久性や特性に悪影響を及ぼす可能性がある。一方、本実施例は、磁石バックヨーク236の磁石配置溝236Aの両側の側壁面236Bsの形状をあらかじめ遊離防止構造とし、磁石配置溝236Aの軸方向の一方端からローター磁石200を挿入配置する構造であるので、比較例のように、側壁やローター磁石にクラックや変形が発生して、耐久性や特性の面で悪影響を及ぼすことがない。
【0041】
図6は、回転軸230の磁石ユニット装着部230Bと磁石ユニット20Aの挿入固定部236Dとで構成される固定配置構造の変形例について示す説明図である。実施例の固定配置構造は、軸方向から見た正十二角形の内周形状の挿入固定部236Dと、この内周形状に接するように形成された略同一の外周形状の磁石ユニット装着部230Bとの嵌合構造で構成されている。しかしながら、この嵌合構造としては、実施例のように、軸方向から見た磁石ユニット装着部の外周形状と磁石ユニットの挿入固定部の内周形状とを正十二角形に限定するものではなく、図6(a)〜(c)に示すように、正方形,正六角形,正二十四角形等の種々のM角形(Mは三以上の整数)とするようにしてもよい。ここで、Mの値は、配置するローター磁石の数のN(Nは1以上の整数)倍であることが好ましい。このようにすれば、回転によって嵌合する部分に加わる力を分散させて固定強度を高めることが可能であり、高速回転に有利となる。また、M角形は必ずしも、正多角形である必要はないが、嵌合部分に加わる力を均等に分散させるには、正多角形のほうが有利である。また、必ずしも、多角形である必要はなく、図6(d)〜(f)に示すように、回転軸の磁石ユニット装着部と磁石ユニットの挿入固定部のいずれか一方に凸部で他方に凹部を設けて嵌合させる構造や、図6(g)に示すように、回転軸の磁石ユニット装着部と磁石ユニットの挿入固定部の両方に凹部を設けて、両方の凹部に亘って挿入されるクサビと嵌合させる構造としてもよい。すなわち、回転軸の外周に磁石ユニットを固定配置することができる嵌合構造であればよい。ただし。これらの嵌合構造は、回転により嵌合部分に加わる力を分散し嵌合強度を高めて安定な固定を考慮すると、回転軸の円周方向に均等に分散置されることが好ましい。
【0042】
図7は、磁石配置溝236Aの底部に設けられた接着剤溝236Cの変形例を示す説明図である。本実施例では、図7(a)に示すように、磁石配置溝236Aの底部の中央に軸方向に沿って一本の接着剤溝236Cが設けられている場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されるものではなく、図7(b)に示すように、軸方向に沿って複数本の接着剤溝が設けられるようにしてもよい。また、一方の連続した溝ではなく、図7(c)に示すような断続した複数の溝や、図7(d)に示すような小さな溝であってもよい。また、図7(e)〜(h)に示すように、軸方向に垂直な円周方向に沿って接着剤溝が設けられるようにしてもよい。また、図7(i)〜(l)に示すように、円周方向に沿った接着剤溝と軸方向に沿った接着剤溝とが組み合わされて設けられるようにしてもよい。
【0043】
上記実施例では、複数の磁石バックヨーク部品236pを積層して磁石バックヨーク236を作製するものとして説明した。しかしながら、磁石バックヨーク236とローター磁石200との間では渦電流損失は生じないため、が、磁石バックヨーク236を、無垢の軟磁性体から削り出し等によって作製するようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施例では、両側の磁石サイドヨーク237,238付の磁石ユニット20Aを作製した後で、磁石ユニット20Aに回転軸230を挿入固定するものとしているが、片側の磁石サイドヨーク237付の磁石ユニット20Aaに回転軸230を挿入固定した後で、もう一方の磁石サイドヨーク238を貼り合せるようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施例では、磁石ユニット20Aに回転軸230を挿入固定するものとしているが、インジェクション成形により、回転軸230と磁石バックヨーク236と片側の磁石サイドヨーク237とが一体形成された部品を用意し、ローター磁石200を磁石配置溝236Aに収納固定した後で、もう一方の磁石サイドヨーク238を貼り合せるようにしてもよい。
【0046】
B.第2実施例:
図8は、第2実施例としてのコアレスモーターの磁石バックヨーク1236の外周の円周方向に沿って配置されたローター磁石1200の一つを拡大して示す説明図である。この図は、説明を容易にするため、略円筒状の磁石バックヨーク1236を平面状に展開した状態で示している。なお、第2実施例としてのコアレスモーターの構造は、以下で説明する磁石バックヨーク1236、磁石配置溝1236A、および、ローター磁石1200の構造を除いて、第1実施例のコアレスモーター10と同じであるので、図示及びその説明を省略する。
【0047】
図8(A)に示すように、第2実施例の磁石配置溝1236Aの両側の側壁面1236Bsは、第1実施例との磁石配置溝236Aの側壁面236Bsとは異なり、それぞれ内側に傾斜したオーバーハング部を有する形状とはなっていない。ただし、磁石配置溝1236Aの底部中央に軸方向に沿ってさらに底部溝1236Gが設けられており、この底部溝1236Gの両側の側壁面1236Gsが、第1実施例の磁石配置溝236Aの両側の側壁面236Bsと同様に、溝の底部幅よりも上部幅が狭くなるように、それぞれ内側に傾斜したオーバーハング部を有する形状となっている。
【0048】
そして、磁石配置溝1236Aに収納固定されるローター磁石1200は、磁石配置溝1236Aの側壁面1236Bsおよび底部溝1236Gの側壁面1236Gsに接して収納されるように、磁石配置溝1236Aおよび底部溝1236Gの空間形状と略同一の形状を有している。
【0049】
この構造の場合にも、底部溝1236Gの側壁面1236Gsに接するローター磁石200cの面が側壁面1236Gsから及ぼされる放射方向とは逆向きの力によって押さえつけられることになるので、ローター磁石1200が放射方向へ移動できないようにすることができる。これにより、ローター20の回転によってローター磁石200が遊離し、最終的には離脱してしまうという問題を解決し、ローター20を高速回転させることが可能となる。なお、以上の説明からわかるように、本実施例において、磁石配置溝1236Aの底部の底部溝1236Gの両側の側壁面1236Gsオーバーハング部が、この実施例における本願発明の遊離防止構造に相当する。
【0050】
なお、磁石配置溝1236Aへのローター磁石1200の配置は、第1実施例と同様に、磁石配置溝1236Aの軸方向の一方端側から軸方向に沿って挿入することにより収納固定される。
【0051】
また、底部溝1236Gの底部には、接着剤溝1236Cが形成されており、これに充填された接着剤239によってローター磁石1200が接着固定される。
【0052】
以上説明したように、本実施例においても、ローター20の外周に固定配置された磁石バックヨークの外周表面に円周方向に沿って設けられた磁石配置溝1236Aにローター磁石1200が収納固定されている。磁石配置溝1236Aの底部の底部溝1236Gの側壁面1236Gsが遊離防止構造となっており、側壁面1236Gsに接するローター磁石1200の面が側壁面1236Gsから及ぼされる放射方向とは逆向きの力によって押さえつけられることになるので、ローター磁石1200が放射方向へ移動できないようにすることができる。これにより、ローター20の回転によってローター磁石200が遊離し、最終的には離脱してしまうという問題を解決することができる。また、磁石表面によって形成されるローターの外周径を安定保持することが可能となる。
【0053】
なお、遊離防止構造である底部溝1236Gの両側の側壁面1236Gsに有するオーバーハング部は、第1実施例における236Aの両側の側壁面236Bsと同様に、種々の形状とすることができる。すなわち、両側の側壁面に接するローター磁石の面に加わる放射方向への力を受け止めて、側壁面に接するローター磁石の面が側壁面から及ぼされる放射方向とは逆向きの力によって押さえつけられて移動できないようにすることができ、磁石配置溝の軸方向の一方端からのみローター磁石を磁石配置溝に挿入することが可能な構造であればよい。
【0054】
また、上記実施例では、各ローター磁石1200が側壁1236Bによって隔離されている。しかしながら、図8(B)に示すように、側壁1236Bを無くして各ローター磁石1200が互いに接するように配置するようにしてもよい。このようにすれば、ローター磁石表面での磁束密度を向上させることが可能である。
【0055】
また、上記実施例では、底部溝1236Gを底部の中央に軸方向に沿って1つ設けた例を説明しているが、複数の底部溝1236Gを底部に並べて設けるようにしてもよい。
【0056】
また、底部溝1236Gの底部に接着剤溝1236Cを設けた例を説明しているが、磁石バックヨーク1236の底部に設けるようにしてもよく。第1実施例の変形例で説明したように接着剤溝を設けるようにしてもよい。
【0057】
C.変形例:
なお、上記実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0058】
(1)変形例1
上記第1実施例では磁石配置溝236Aの両側の側壁面236Bsによる遊離防止構造について説明し、第2実施例では磁石配置溝1236Aの底部に設けられた底部溝1236Gの両側の側壁面1236Gsによる遊離防止構造について説明したが、両方の遊離防止構造を備えるようにしてもよい。
【0059】
(2)変形例2
上記実施例では、本願発明の特徴部分を備えるコアレスモーターを例に説明したが、電動機であるコアレスモーターに限定されるものではなく、発電機に適用することも可能である。
【0060】
(3)変形例3
また、本発明の特徴を備える電動機や発電機は、以下に示すように、電動移動体や電動移動ロボットあるいは医療機器の駆動装置として適用することが可能である。図9は、本発明の変形例としてモーター/発電機を利用した移動体の一例である電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。この自転車3300は、前輪にモーター3310が設けられており、サドルの下方のフレームに制御回路3320と充電池3330とが設けられている。モーター3310は、充電池3330からの電力を利用して前輪を駆動することによって、走行をアシストする。また、ブレーキ時にはモーター3310で回生された電力が充電池3330に充電される。制御回路3320は、モーターの駆動と回生とを制御する回路である。このモーター3310としては、上述した各種のコアレスモーター10を利用することが可能である。
【0061】
図10は、本発明の変形例としてモーターを利用したロボットの一例を示す説明図である。このロボット3400は、第1と第2のアーム3410,3420と、モーター3430とを有している。このモーター3430は、被駆動部材としての第2のアーム3420を水平回転させる際に使用される。このモーター3430としては、上述した各種のコアレスモーター10を利用することが可能である。
【0062】
図11は、本発明の変形例としてモーターを利用した双腕7軸ロボットの一例を示す説明図である。双腕7軸ロボット3450は、関節モーター3460と、把持部モーター3470と、アーム3480と、把持部3490と、を備える。関節モーター3460は、肩関節、肘関節、手首関節に相当する位置に配置されている。関節モーター3460は、アーム3480と把持部3490とを、3次元的に動作させるため、各関節につき2つのモーターを備えている。また、把持部モーター3470は、把持部3590を開閉し、把持部3490に物を掴ませる。双腕7軸ロボット3450において、関節モーター3460あるいは把持部モーター3470として、上述した各種のコアレスモーターを利用することが可能である。
【0063】
図12は、本発明の変形例としてモーターを利用した鉄道車両を示す説明図である。この鉄道車両3500は、電動モーター3510と、車輪3520とを有している。この電動モーター3510は、車輪3520を駆動する。さらに、電動モーター3510は、鉄道車両3500の制動時には発電機として利用され、電力が回生される。この電動モーター3510としては、上述した各種のコアレスモーター10を利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
10…コアレスモーター
15…ステーター
20…ローター
20A…磁石ユニット
20B…ローターユニット
20C…ローターユニット
20Aa…磁石ユニット
100…電磁コイル
100A…電磁コイル
100B…電磁コイル
110…ケーシング
110A…ケーシング
110B…ケーシング
110C…ケーシング
115…コイルバックヨーク
200…ローター磁石
200c…ローター磁石
230…回転軸
230A…回転軸部
230B…磁石ユニット装着部
230C…ストッパー部
231…貫通孔
236P同士…磁石バックヨーク部品
236…磁石バックヨーク
236A…磁石配置溝
236B…側壁
236C…接着剤溝
236D…挿入固定部
236U…磁石ヨークユニット
236c…磁石バックヨーク
236p…磁石バックヨーク部品
236Ac…磁石配置溝
236Bc…側壁
236Ap…磁石配置溝部分
236Bp…側壁部分
236Cp…接着剤溝部分
236Dp…空間
236Bs…側壁面
236Ep…部品嵌合凸部
236Fp…部品嵌合凹部
237…磁石サイドヨーク
238…磁石サイドヨーク
238Ep…部品嵌合凸部
239…接着剤
240…軸受け部
260…波バネ座金
300…磁気センサー
310…回路基板
1200…ローター磁石
1236…磁石バックヨーク
1236A…磁石配置溝
1236C…接着剤溝
1236G…底部溝
1236Bs…側壁面
1236Gs…側壁面
3300…自転車
3310…モーター
3320…制御回路
3330…充電池
3400…ロボット
3410…第1のアーム
3420…第2のアーム
3430…モーター
3450…双腕7軸ロボット
3460…関節モーター
3470…把持部モーター
3480…アーム
3490…把持部
3500…鉄道車両
3510…電動モーター
3520…車輪
3590…把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローターと、前記ローターの外周に配置されたステーターと、を有する電気機械装置であって、
前記ローターは、
回転軸と、
前記回転軸の外周に沿って固定配置された円筒状の磁石ユニットと、
を備え、
前記磁石ユニットは、
前記回転軸に固定配置された円筒状の磁石バックヨークと、
前記磁石バックヨークの外周表面の円周方向に沿って形成された複数の磁石配置溝と、
前記複数の磁石配置溝にそれぞれ収納固定された複数のローター磁石と、
を備え、
前記磁石配置溝は、前記磁石ユニットの組立時において、前記回転軸の軸方向に沿って前記ローター磁石の移動を許容するが、前記軸方向に垂直で前記回転軸の中心から外周へ向かう放射方向への前記ローター磁石の移動を禁止し、前記ローターの回転時において、前記ローター磁石の前記放射方向への遊離を防止する遊離防止構造を有し、
前記ローター磁石は、前記磁石ユニットの組立時において、前記磁石配置溝の前記軸方向の一方端から前記軸方向に沿って前記磁石配置溝に挿入されて、前記磁石配置溝に収納固定される
電気機械装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機械装置であって、
前記遊離防止構造は、前記磁石配置溝の両側の側壁面を含み、前記両側の側壁面には、前記ローター磁石を前記放射方向に抑えるオーバーハング部を有する
電気機械装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電気機械装置であって、
前記遊離防止構造は、前記磁石配置溝の底部に設けられた底部溝の両側の側壁面を含み、前記両側の側壁面には、前記ローター磁石を前記放射方向に抑えるオーバーハング部を有する
電気機械装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電気機械装置であって、
前記磁石配置溝の底部に、前記ローター磁石を前記底部に接着するための接着剤が充填された接着剤溝が形成された
電気機械装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電気機械装置であって、
前記回転軸と前記磁石ユニットの前記磁石バックヨークとが接するそれぞれの面には、前記回転軸の外周に沿って前記磁石ユニットを固定配置するための固定配置構造が形成された
電気機械装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電気機械装置であって、
前記固定配置構造は、前記磁石バックヨークの内周側に形成された前記軸方向に垂直な断面がM角形(Mは3以上の整数)の内周形状と、前記内周形状に接するように前記回転軸の外周側に形成された前記軸方向に垂直な断面がM角形の外周形状と、で構成されている
電気機械装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の電気機械装置を備えるロボット。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の電気機械装置を備える移動体。
【請求項9】
電気機械装置のステーターの内周に配置されるローターであって、
回転軸と、
前記回転軸の外周に沿って固定配置された円筒状の磁石ユニットと、
を備え、
前記磁石ユニットは、
前記回転軸に固定配置された円筒状の磁石バックヨークと、
前記磁石バックヨークの外周表面の円周方向に沿って形成された複数の磁石配置溝と、
前記複数の磁石配置溝にそれぞれ収納固定された複数のローター磁石と、
を備え、
前記磁石配置溝は、前記磁石ユニットの組立時において、前記回転軸の軸方向に沿って前記ローター磁石の移動を許容するが、前記軸方向に垂直で前記回転軸の中心から外周方向へ向かう放射方向への前記ローター磁石の移動を禁止し、前記ローターの回転時において、前記ローター磁石の前記放射方向への遊離を防止する遊離防止構造を有し、
前記ローター磁石は、前記磁石ユニットの組立時において、前記磁石配置溝の前記軸方向の一方端から前記軸方向に沿って前記磁石配置溝に挿入されて、前記磁石配置溝に収納固定される
ローター。
【請求項10】
電気機械装置のステーターの内周に配置されるローターの回転軸の外周に沿って固定配置される円筒状の磁石ユニットであって、
前記回転軸に固定配置される円筒状の磁石バックヨークと、
前記磁石バックヨークの外周表面の円周方向に沿って形成された複数の磁石配置溝と、
前記複数の磁石配置溝にそれぞれ収納固定された複数のローター磁石と、
を備え、
前記磁石配置溝は、前記磁石ユニットの組立時において、前記回転軸の軸方向に沿って前記ローター磁石の移動を許容するが、前記軸方向に垂直で前記回転軸の中心から外周方向へ向かう放射方向への前記ローター磁石の移動を禁止し、前記ローターの回転時において、前記ローター磁石の前記放射方向への遊離を防止する遊離防止構造を有し、
前記ローター磁石は、前記磁石ユニットの組立時において、前記磁石配置溝の前記軸方向の一方端から前記軸方向に沿って前記磁石配置溝に挿入されて、前記磁石配置溝に収納固定される
磁石ユニット。
【請求項11】
電機機械装置の作製方法であって、
ローターを準備する工程と、
ステーターを準備する工程と、
ステーターの内周にローターを配置する工程と、
を備え、
前記ローターを準備する工程は、
回転軸の外周に沿って固定配置される円筒状の磁石ユニットを準備する工程を備え、
前記磁石ユニットを準備する工程は、
前記回転軸に固定配置される円筒状の磁石バックヨークであって、前記磁石バックヨークの外周表面の円周方向に沿って形成されたローター磁石を収納固定するための複数の磁石配置溝を有し、前記磁石配置溝が、前記磁石ユニットの組立時において、前記回転軸の軸方向に沿って配置されるローター磁石の移動を許容するが、前記軸方向に垂直で前記回転軸の中心から外周方向へ向かう放射方向への前記ローター磁石の移動を禁止し、前記ローターの回転時において、前記ローター磁石の前記放射方向への遊離を防止する遊離防止構造を有する磁石バックヨークを準備する工程と、
前記複数の磁石配置溝にそれぞれ収納固定される複数のローター磁石を準備する工程と、
前記磁石ユニットの組立時において、前記磁石配置溝の前記軸方向の一方端から前記軸方向に沿って前記ローター磁石を挿入して、前記複数のローター磁石を前記複数の磁石配置溝に収納固定する工程と、
を備える電機機械装置の作製方法。
【請求項12】
電機機械装置のステーターの内周に配置されるローターの作製方法であって、
前記回転軸の外周に沿って固定配置される円筒状の磁石ユニットを準備する工程を備え、
前記磁石ユニットを準備する工程は、
前記回転軸に固定配置される円筒状の磁石バックヨークであって、前記磁石バックヨークの外周表面の円周方向に沿って形成されたローター磁石を収納固定するための複数の磁石配置溝を有し、前記磁石配置溝が、前記磁石ユニットの組立時において、前記回転軸の軸方向に沿って配置されるローター磁石の移動を許容するが、前記軸方向に垂直で前記回転軸の中心から外周方向へ向かう放射方向への前記ローター磁石の移動を禁止し、前記ローターの回転時において、前記ローター磁石の前記放射方向への遊離を防止する遊離防止構造を有する磁石バックヨークを準備する工程と、
前記複数の磁石配置溝にそれぞれ収納固定される複数のローター磁石を準備する工程と、
前記磁石ユニットの組立時において、前記磁石配置溝の前記軸方向の一方端から前記軸方向に沿って前記ローター磁石を挿入し、前記複数のローター磁石を前記複数の磁石配置溝に収納固定する工程と、
を備えるローターの作製方法。
【請求項13】
電気機械装置のステーターの内周に配置されるローターの回転軸の外周に沿って固定配置される円筒状の磁石ユニットの作製方法であって、
前記回転軸に固定配置される円筒状の磁石バックヨークであって、前記磁石バックヨークの外周表面の円周方向に沿って形成されたローター磁石を収納固定するための複数の磁石配置溝を有し、前記磁石配置溝が、前記磁石ユニットの組立時において、前記回転軸の軸方向に沿って配置されるローター磁石の移動を許容するが、前記軸方向に垂直で前記回転軸の中心から外周方向へ向かう放射方向への前記ローター磁石の移動を禁止し、前記ローターの回転時において、前記ローター磁石の前記放射方向への遊離を防止する遊離防止構造を有する磁石バックヨークを準備する工程と、
前記複数の磁石配置溝にそれぞれ収納固定される複数のローター磁石を準備する工程と、
前記磁石ユニットの組立時において、前記磁石配置溝の前記軸方向の一方端から前記軸方向に沿って前記ローター磁石を挿入して、前記複数のローター磁石を前記複数の磁石配置溝に収納固定する工程と、
を備える磁石ユニットの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−21826(P2013−21826A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153603(P2011−153603)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】