説明

電気湯沸かし器

【課題】容器内に保持した液体を加熱、保温する電気湯沸かし器において、ポンプ内に滞留した泡を効果的に排出できるようにして、沸騰直後においても吐出量の低下を防止し、使用者が望む吐出量の液体を確実に、かつ正確に吐出できるようにする。
【解決手段】容器3内に保持された液体10の状態を液状態検知部15により検知し、変位設定部6により容器3からの液体吐出量を指定する変位信号を設定し、液状態検知部15からの検知信号に基づき変位設定部6により設定された変位信号を補正して吐出設定信号を形成し、出湯駆動部9により吐出設定信号に応じた吐出量を吐出する。吐出整流制御手段は、容器3内の液体が沸騰してから所定時間経過するまでの間は変位設定部6からの変位信号に応じた出湯駆動部9の駆動電圧を通常より高くなるように補正し、さらに変位信号の大きさに応じた間欠率で出湯駆動部9を間欠駆動するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に保持した液体を加熱、保温する電気湯沸かし器に関し、特に吐出量を調整することが可能な電気湯沸かし器に関する。なお、本発明においては「湯」の文字を用いるが、本発明の電気湯沸かし器における収容物としては水を含む液体一般を指すものとする。
【背景技術】
【0002】
従来の電気湯沸かし器は、一般的に、容器内に収容され加熱、保温された湯は、操作部に設けた押しボタン式の出湯スイッチを押圧することにより吐出されるよう構成されている。出湯スイッチの押圧により電気湯沸かし器内の電動ポンプが駆動されるため、出湯量は出湯スイッチの押圧時間により決定される。
【0003】
また、従来の電気湯沸かし器においては、単位時間当たりの出湯量を調整できるものが提案されている。単位時間当たりの出湯量を調整するために、従来の電気湯沸かし器においては、操作部に可変抵抗器等の出湯調整つまみを設けて、その電気抵抗値を使用者が変更することにより電動ポンプへの通電電圧を制御するものであった(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
単位時間当たりの出湯量を調整できる電気湯沸かし器は、吐出された湯を受けるための器に応じて使用者が出湯量を調整できるため、使用者が所望する出湯量を容易に吐出することが可能となる。
【特許文献1】特開平4−272724号公報
【特許文献2】特開平6−343552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような電気湯沸かし器においては、その容器内に保持されている液体の状態に応じて、ポンプを同様に駆動しても、吐出量が変わるという問題を有していた。例えば、沸騰した直後にポンプを駆動した場合は、沸騰中に発生した泡がポンプ内に滞留したり、高温の湯中をポンプが高速で回転するためキャビテーションによりポンプ内に泡が発生し、ポンプに流入できる湯量が減ることにより、極端に湯の出が悪くなるという問題を有していた。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、ポンプ内に滞留した泡を効果的に排出できるようにして、沸騰直後においても吐出量の低下を防止し、使用者が望む吐出量の液体を確実に、かつ正確に吐出できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、容器内に保持された液体の状態を液状態検知手段により検知し、設定手段により容器からの液体吐出量を指定する変位信号を設定し、液状態検知手段からの検知信号に基づき設定手段により設定された変位信号を補正して吐出整流制御手段により吐出設定信号を形成し、出湯手段により吐出整流制御手段からの吐出設定信号に応じた吐出量を吐出するよう構成し、吐出整流制御手段は、容器内の液体が沸騰してから所定時間経過するまでの間は設定手段からの変位信号に応じた出湯手段の駆動電圧を通常より高くなるように補正し、さらに変位信号の大きさに応じた間欠率で出湯手段を間欠駆動するよう構成したものである。
【0008】
これにより、ポンプ内に滞留した泡を効果的に排出することができて、沸騰直後においても吐出量の低下を防止でき、使用者が望む吐出量の液体を安定して吐出することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気湯沸かし器は、ポンプ内に滞留した泡を効果的に排出することができて、沸騰直後においても吐出量の低下を防止でき、使用者が所望量の液体を確実に、かつ安全に吐出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、容器内に保持された液体の状態を検知する液状態検知手段と、前記容器からの液体吐出量を指定する変位信号を設定する設定手段と、前記液状態検知手段からの検知信号に基づき前記設定手段により設定された変位信号を補正して吐出設定信号を形成する吐出整流制御手段と、前記吐出整流制御手段からの吐出設定信号に応じた吐出量を吐出する出湯手段とを備え、前記吐出整流制御手段は、前記容器内の液体が沸騰してから所定時間経過するまでの間は前記設定手段からの変位信号に応じた前記出湯手段の駆動電圧を通常より高くなるように補正し、さらに変位信号の大きさに応じた間欠率で前記出湯手段を間欠駆動するよう構成したものであり、ポンプ内に滞留した泡を効果的に排出することができて、沸騰直後においても吐出量の低下を防止でき、使用者が望む吐出量の液体を安定して吐出することができる。
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は本発明の一実施の形態の電気湯沸かし器のシステム構成図を示し、図2は同電気湯沸かし器の断面図を示すものである。
【0013】
図1および図2に示すように、湯沸かし器本体1は、上部開口部を覆う蓋2とともに外観を構成しており、湯沸かし器本体1の内部に液体10を保持する有底円筒状で上部が開口した容器3を設けている。湯沸かし器本体1の上部開口部分を覆い蒸気口を有する蓋2は、湯沸かし器本体1に対して係合部2aにおいて回動可能で、かつ脱着可能に係合している。湯沸かし器本体1の上部前面側(図2における上部の左側)に、表示部4および操作部5を設けている。すなわち、表示部4および操作部5は、使用者が操作するのに容易な位置に設けている。表示部4は、容器3内の液体の温度(液温度)、液体の量(液面レベル)、加熱状態、加熱保温に関する設定状態、吐出量、吐出状態等をLCDやLED等の発光手段により使用者に表示するものである。操作部5は、設定手段を構成する変位設定部(出湯スイッチ)6、再沸騰スイッチ7を設けており、その他にタイマスイッチ(図示せず)、選択スイッチ、ロック解除スイッチ等の電気湯沸かし器において一般的に設けている設定スイッチを配設している。
【0014】
変位設定部6は、使用者が上部から加圧することにより、下方へ移動(変位)する押しボタンスイッチであり、その下方への変位量が後述する変位検知部18により検知するよう構成している。再沸騰スイッチ7は、使用者が容器3内の液体10を再度沸騰状態とするためのスイッチである。設定スイッチは、沸騰時刻のタイマ予約、保温温度の設定、標準モード/倹約モードを切替え設定、出湯停止状態を解除設定等の各種設定を行うスイッチ群である。
【0015】
湯沸かし器本体1には、容器3内の液体10を加熱する加熱部8、容器3内の液体10を導液管13を介して出湯口14から吐出させる出湯駆動部9、容器3内の液体10の温度を検知する液温度検知部11、容器3内の液体10の液面レベルを検知する液位検知部
12を設けている。液温度検知部11と液位検知部12により液状態検知手段である液状態検知部15を構成している。また、湯沸かし器本体1内には、電気湯沸かし器に必要な制御回路および電源回路等で構成された制御部16、出湯整流部17、加熱制御部19、出湯制御部20、電源部21、報知部22などを回路基板に設けている。
【0016】
加熱部8は容器3の底面に密接して設けており、消費電力が大きく加熱時に使用される第1の加熱ヒータ(例えば、1kW)と、消費電力が小さく保温時に使用される第2の加熱ヒータ(例えば、75W)とで構成している。なお、本実施の形態においては、2つの加熱ヒータを用いた例で説明するが、加熱ヒータは2つに限定されるものではなく、1つの加熱ヒータで加熱と保温を印加電圧の電圧調整により行う構成や、3つ以上の複数の加熱ヒータを用いて液温度の状況に応じて適宜所望の加熱ヒータを用いる構成でもよい。
【0017】
出湯駆動部9は、容器3内の液体を吐出動作させるもので、出湯制御部20からの駆動信号により通電制御される出湯モータ9aと、この出湯モータ9aにより回転駆動される出湯ポンプ9bとで構成している。
【0018】
液温度検知部11は、温度を電気信号に変換するサーミスタで構成し、容器3内の液体の温度を間接的に測定するように容器3に密接して配設している。液温度検知部11は容器3内に収納された液体10の温度を検知して温度検知信号を形成する。温度検知信号は、制御部16に出力し、容器3内の液体10を設定温度に調整する加熱調整等に用いる。
【0019】
本実施の形態では、容器3内の液体10の温度が98℃に保持されるよう設定されている。液温度検知部11が検知した温度が、例えば90℃より低い場合には第1の加熱ヒータにより容器3内の液体10を加熱し、液温度検知部11により検知された温度がほぼ一定となると、容器3内の液体10が沸騰したと見なして、第1の加熱ヒータによる加熱状態を終了する。そして、加熱状態を終了すると同時に、第2の加熱ヒータにより一定温度(約98℃)を維持する保温状態に移行する。この保温状態においては、第2の加熱ヒータは液温度検知部11により検知した温度に応じてオンオフ制御される。第1の加熱ヒータと第2の加熱ヒータを有する加熱部8に対する通電制御は、制御部16により加熱制御部19を介して行う。
【0020】
液位検知部12は、容器3内の液体10の液面レベルを検知するもので、複数のレベルセンサである液面センサにより構成しており、高さが異なる複数の液面レベルを検知できるよう構成している。液面センサは、赤外線を発光する発光素子と、その赤外線を受光する受光素子とにより1組の液面センサを構成している。各組の液面センサにおける発光素子と受光素子は、容器3の底面にある出液孔と出湯口14とを連通している導液管13を挟む両側の同じレベル位置に設けている。導液管13は、少なくとも容器3の底面と同じ高さと、容器3の上端開口と同じ高さとの間に配設して、容器3内の液体10の液面レベルと同じレベルが導液管13内に形成される構成としている。
【0021】
本実施の形態においては、5組のレベルセンサである液面センサ12A〜12Eを設けている。最上位の液面センサ12Aが満水状態(本実施の形態においては4リットルの液体10を収容している状態)を示し、最下位の液面センサ12Eは給水が必要な液面レベル(本実施の形態においては、0.3リットルの液体10を収容している状態)であることを示している。なお、最上位のつぎの2つ目の液面センサ12Bが3リットルを保持している状態を示し、3つ目の液面センサ12Cが2リットルを保持している状態を示し、そして4つ目の液面センサ12Dが1リットルを保持している状態を示す。なお、本実施の形態においては、5組の液面センサを用いた例で説明するが、その組数は適宜変更される。このように複数の液面センサ12A〜12Eにより検知された液位検知信号は、制御部16および出湯整流部17に送られ、出湯調整等に用いる。
【0022】
つぎに、温度センサである液温度検知部11とレベルセンサである液位検知部12は、前述のように、液状態検知部15を構成している。液温度検知部11により検出された液状態検知信号は制御部16に入力されて、液位検知部12により検出された液状態検知信号は制御部16と出湯整流部17に入力される。操作部5に設けた変位設定部6から送出された変位信号dは変位検知部18に入力され、変位設定部6の変位が検知される。変位検知部18は、入力された変位信号dから吐出設定信号である変位検知信号Dを生成し、その変位検知信号Dを出湯整流部17に出力する。したがって、出湯整流部17には液状態検知信号および変位検知信号Dが入力される。ここでは、制御部16と出湯整流部17と変位検知部18により吐出整流制御手段を構成している。
【0023】
出湯整流部17においては、液状態検知信号に基づいて、後述する補正処理により変位検知信号Dを補正する。補正後の変位検知信号Dhは制御部16に入力されて出湯制御に用いられる。制御部16においては、補正後の変位検知信号Dhに基づいて出湯制御部20により出湯駆動部9を通電制御する。すなわち、出湯制御部20は、出湯駆動部9の出湯モータ9aへの印加電圧を決定して出力する。この結果、出湯モータ9aの回転により出湯ポンプ9bは、そのときの液体状態が考慮された適切な出湯量の液体10を容器3から導液管13を介して出湯口14から吐出させる。ここでは、出湯駆動部9と出湯制御部20により出湯手段を構成している。
【0024】
変位検知部18は、変位設定部6が押圧されたときの変位状態を検出するものであり、変位設定部6からの変位信号dが入力されて、変位設定部6の変位状態を示す変位検知信号Dを生成している。すなわち、変位検知部18は、変位設定部6の単位時間当たりの平均変位(例えば、0.5秒間における移動距離の平均値)を検出している。検出された変位の大きさは、使用者が望む単位時間当たりの出湯量を示すものである。したがって、使用者が設定した単位時間当たりの出湯量に調整するため、液状態検知部15からの液状態検知信号に基づいて演算処理を行い、変位検知信号Dを補正するようにしている。
【0025】
このように、液位検知部12からの容器3内の液体10の液面レベルに関する情報である液位検知信号Sfに基づいて、変位検知信号Dを補正するようにしている。
【0026】
なお、図1に示すように、表示部4、加熱制御部19、出湯制御部20、電源部21、報知部22を設けており、それぞれが制御部16と電気的に接続されて制御されるよう構成している。
【0027】
つぎに、変位設定部6の構成について図3および図4を参照しながら説明する。図3は変位設定部6の断面図を示し、図4は変位設定部6と変位検知部18の回路図を示している。
【0028】
図3に示すように、変位設定部6は、湯沸かし器本体1の上部前面側に設けており、湯沸かし器本体1から上方に突出した押しボタン6aと、湯沸かし器本体1の裏面に固着された押しボタンケース6bとを有している。押しボタンケース6bは、押しボタン6aが押圧されたとき、押しボタンケース6bの内面に沿って押しボタン6aの外周部分が摺動するよう構成している。また、変位設定部6は、押しボタン6aと押しボタンケース6bとの間に配置され、それぞれを伸張する方向に押圧するコイルばね23と、コイルばね23を貫通し、一端を押しボタン6aの内面に固着し、他端を押しボタンケース6bを貫通しているスライドバー24と、押しボタンケース6bを貫通しているスライドバー24の他端に設けた接片25が摺動するスライドボリューム26とを有している。
【0029】
変位設定部6においては、使用者により押しボタン6aが押圧されたとき、スライドバ
ー24の接片25がスライドボリューム26を摺動し、その摺動距離に応じてスライドボリューム26の抵抗値が変化するよう構成している。
【0030】
図4は、変位設定部6のスライドボリューム26と、変位検知部18の回路構成を示している。図4に示すように、変位検知部18においては、電源電圧が抵抗R1と可変抵抗RVであるスライドボリューム26により、押しボタン6aの摺動距離に応じた分圧信号を形成する。この分圧信号は変位検知部18の抵抗R2とキャパシタC1とにより整流されて、変位検知部18から変位検知信号Dが出力される。変位検知信号Dは、出湯整流部17に入力されて、液状態検知信号に基づき補正処理が行われる。
【0031】
なお、本実施の形態では、押しボタン式の変位設定部6を用いた構成を説明したが、変位設定部6は、使用者が変位を設定できる機能を有するものであればよく、例えば、回転式のつまみにより変位を設定できるものでもよい。また、変位検知部18としてスライド式のボリューム(可変抵抗器)を用いたが、感圧導電素子等を用いて変位を電気信号に変換する電子デバイス等を用いてもよい。
【0032】
上記構成において、液状態検知部15からの液状態検知信号に基づいて、変位検知信号Dを補正するときの動作について説明する。
【0033】
(表1)は、変位設定部6の変位(mm)に対する変位検知信号D(V)、出湯モータ9aへの印加電圧(V)、および1秒当たりの出湯量(ml/秒)を示している。(表1)における印加電圧及び出湯量は、変位検知信号Dの補正が不要な場合であり、そのまま出湯制御部20を介して出湯された場合である。
【0034】
【表1】

【0035】
(表1)に示すように、本実施の形態においては、変位が0mm以上1.0mm未満((表1)においては0〜1と表示)の場合には、出湯モータ9aには電圧が印加されず、変位が1.0mm以上のときから3.0V以上の電圧が印加されて出湯モータ9aが回転し、出湯ポンプ9bが駆動される。変位が1.0mm以上2.0mm未満の範囲内のときの出湯量が最小であり、32ml/秒である。
【0036】
本実施の形態の変位設定部6は、その最大変位量が20.0mmであり、このときの印加電圧は7.75V、出湯量は70ml/秒に設定されている。このように、本実施の形態においては、変位が1mm変わるごとに出湯モータ9aへの印加電圧が0.25V単位で変わるよう制御される。
【0037】
一方、前述したように、容器3内に保持されている液体10の状態、例えば、沸騰直後に湯を出す場合は、ポンプに滞留する泡の影響により同じ印加電圧でも出湯量が異なるという問題がある。この問題を解決するために、本実施の形態においては、液状態検知部15を設けて液状態を検知し、出湯整流部17において補正処理を行う。
【0038】
液状態検知部15においては、液温度検知部11により容器3内の液体10の温度を検知している。湯沸かし中に液体10の温度が約0.5℃上昇するのに15秒以上かかるようになると沸騰検知と判断し、沸騰からの経過時間を計測するタイマをスタートさせる。この経過時間が15分(所定時間)までの間は、出湯整流部17では、液状態検知部15の信号に基づいて変位検知信号Dを補正し、補正された変位検知信号Dhを形成する。
【0039】
【表2】

【0040】
(表2)は、変位設定部6の変位に対する印加電圧との補正関係を示している。例えば、変位設定部6の変位が1.0mm以上2.0mm未満((表2)においては1〜2と表
示)の範囲内に指定された場合において、3.5Vの印加電圧が出湯モータ9aに通電される。また、変位設定部6の変位が20.0mm以上に指定された場合、8.25Vの印加電圧が出湯モータ9aに通電される。沸騰直後には、出湯ポンプ9b内で発生する泡を押し出しながら出湯させなければ出湯量が大きく低減するため、出湯ポンプ9bをより高回転で駆動させるために通常より駆動電圧が上げるような補正を行っている。
【0041】
さらに、効果的にポンプ内に発生した泡をポンプ外へ押し出すために、変位設定部6の変位が1〜5mmの間のときは、印加電圧を2秒オン/2秒オフの駆動比率で印加する。また、変位が5〜10mmのときは、印加電圧を2秒オン/1.5秒オフの駆動比率で印加する。また、オン/オフする回数は出湯開始から10回で終了し、その後は各変位時の印加電圧を連続的に印加する。オン/オフの回数は泡を押し出す効果を検証し実験的に決定している。同様に、変位が10mm〜15mmのときは、印加電圧を2秒オン/1秒オフの駆動比率で印加し、変位が15mm〜のときは2秒オン/0.5秒オフの駆動比率で印加する。
【0042】
このように、オン/オフ駆動を行うことで、一旦導液管13内を出湯口14に向かって揚水された湯がオフ時にはその落差により出湯ポンプ9bに逆流し、その結果、ポンプ内に滞留した泡を容器3内に押し出すことになる。変位設定部6の変位が少ない程オフ時間が長いのは、変位が少ない時はもともと出湯する駆動電圧が小さいため、出湯ポンプ9b内の泡を出湯口14に押し出す力が弱いため、オフ時間を長くして泡を容器3内に十分押し出す効果を得るようにしているためである。変位が大きい場合は印加電圧が高いため、出湯ポンプ9bの高回転速度によりポンプ内の泡を押し出す力が強いため、印加電圧のオン/オフのオフ時間を短くすることで、多少なりとも感じる出湯時の間欠駆動の違和感を低減させる配慮を行っている。
【0043】
以上のように、本実施の形態においては、容器3内の液体が沸騰してから15分(所定時間)経過するまでの間は、変位設定部6からの変位信号に応じた出湯ポンプ9bの駆動電圧を通常より高くなるように補正し、さらに変位信号の大きさに応じた間欠率で出湯ポンプ9bを間欠駆動するよう構成したので、出湯ポンプ9b内に滞留した泡を効果的に排出することができて、沸騰直後においても吐出量の低下を防止でき、使用者が望む吐出量の液体を安定して吐出することができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、液状態検知部15は、容器3内の液体10の液面レベルと温度を検知する構成としているが、容器3の底部の圧力を検知する構成や、容器3の内部の液体の粘性を検知して、その検知結果に基づき、変位設定部6からの変位信号dに対して補正処理を行うようにしてもよい。
【0045】
また、本実施の形態では、容器3内に収納される液体として水を想定して説明したが、収容物としての液体が水に限定されるものではなく、一般的な液状流体を加熱、保温する機器を含むものである。その場合には、変位に対する液面レベルや液体温度等の各種設定が本実施の形態において説明した技術的思想に基づき適宜変更されることはいうまでもない。
【0046】
また、本発明は、本実施の形態において説明した電気湯沸かし器の技術的思想に適合する同様の機能、構成、動作を示す構成部材を含むものである。また、一般的に用いられている電気湯沸かし器に本発明の技術的思想を適合させることにより、使用者にとって更に容易に、確実に、かつ安全に吐出動作を行うことができる電気湯沸かし器を構築することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明にかかる電気湯沸かし器は、ポンプ内に滞留した泡を効果的に排出することができて、沸騰直後においても吐出量の低下を防止でき、使用者が所望量の液体を確実に、かつ安全に吐出することができるので、容器内に保持した液体を加熱、保温する電気湯沸かし器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態における電気湯沸かし器のシステム構成図
【図2】同電気湯沸かし器の断面図
【図3】同電気湯沸かし器の変位設定部の拡大断面図
【図4】同電気湯沸かし器の変位設定部と変位検知部の回路図
【符号の説明】
【0049】
3 容器
6 変位設定部(設定手段)
9 出湯駆動部(出湯手段)
10 液体
15 液状態検知部(液状態検知手段)
16 制御部(吐出整流制御手段)
17 出湯整流部(吐出整流制御手段)
18 変位検知部(吐出整流制御手段)
20 出湯制御部(出湯手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に保持された液体の状態を検知する液状態検知手段と、前記容器からの液体吐出量を指定する変位信号を設定する設定手段と、前記液状態検知手段からの検知信号に基づき前記設定手段により設定された変位信号を補正して吐出設定信号を形成する吐出整流制御手段と、前記吐出整流制御手段からの吐出設定信号に応じた吐出量を吐出する出湯手段とを備え、前記吐出整流制御手段は、前記容器内の液体が沸騰してから所定時間経過するまでの間は前記設定手段からの変位信号に応じた前記出湯手段の駆動電圧を通常より高くなるように補正し、さらに変位信号の大きさに応じた間欠率で前記出湯手段を間欠駆動するよう構成した電気湯沸かし器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−297051(P2009−297051A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151253(P2008−151253)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】