説明

電気積層板の製造に有用な均質ビスマレイミド−トリアジン−エポキシ組成物

エポキシ樹脂、少なくとも1種のビスマレイミドを含むマレイミド成分、及びシアネートエステル成分を含む均質な溶液が開示される。かかる組成物は、例えば、硬化性組成物、熱硬化性組成物、ならびに、硬化性及び熱硬化性組成物から、又は硬化性及び熱硬化性組成物を用いて形成することのできる、電気積層板及びその他の最終製品の製造において有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される実施形態は、電気積層板において有用なエポキシ組成物に関する。より具体的には、本明細書に開示される実施形態は、主要な特性を維持又は改良すると同時に改良された配合物の均質性を有する、電気積層板において有用なビスマレイミド−改質エポキシ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能の電気用途、例えば高性能回路板などにおいて有用な、熱硬化型(thermosettable)材料は、一連の要求の厳しい特性要件を満たさねばならない。例えば、そのような材料は最適には、良好な高温特性、例えば高いガラス転移温度(例えば、200℃以上)、及び高温下での低い吸水率(例えば、0.5%未満の吸水率)を有する。電気積層板の作製は、従来、多孔質ガラスウェブを熱硬化型樹脂溶液で含浸してプリプレグを形成することを含むため、熱硬化性配合材料で使用される成分は、有機溶媒、例えばアセトン、2−ブタノン、又はシクロヘキサノン中で安定した溶解度も示す必要がある。複合部品用のプリプレグを作製する際の加工を容易にするために、未硬化のブレンドは、理想的には、低い融解温度(例えば、120℃未満)及び広い加工に適した粘度の温度範囲(広い「加工ウィンドウ」)を有する。
【0003】
エポキシ樹脂は、最も広く使用されているエンジニアリング樹脂の1つであり、電気積層板でのその使用が周知である。エポキシ樹脂は、耐熱性、耐薬品性、絶縁性、寸法安定性、接着性などに優れているために、電気/電子装置のための材料、例えば電気積層板のための材料として使用されてきた。
【0004】
ビスマレイミド改質エポキシ樹脂は、良好な高温特性を有し、それにより電気積層板に使用される優れた候補となっている。しかし、ビスマレイミドは一般にかなり脆弱で、安価な有機溶媒に易溶性でない。結果として、ビスマレイミド成分は、一般に懸濁液中の微粒子として配合物中に組み込まれる。時間とともに懸濁粒子は分離する傾向があり、そのため使用前に配合物の攪拌が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、組成物が安定していて均質であり、安価に製造できる、電気積層板において有用なビスマレイミド改質組成物が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本明細書に開示される実施形態は、エポキシ樹脂と、少なくとも1種のビスマレイミドを含むマレイミド成分とを約50℃〜約250℃の範囲の温度で添合する工程;及びシアネートエステル成分をエポキシ−マレイミド添加物に添合して均質な溶液を形成する工程を含む、硬化性組成物を形成するための方法に関する。
【0007】
もう一つの態様では、本明細書に開示される実施形態は、少なくとも1種のビスマレイミドを含むマレイミド成分;シアネートエステル成分;及びエポキシ樹脂を含む硬化性組成物であって、該硬化性組成物は均質な溶液である硬化性組成物に関する。
【0008】
もう一つの態様では、本明細書に開示される実施形態は、電気積層板で使用するためのラッカーに関し、このラッカーは、少なくとも1種のビスマレイミドを含むマレイミド成分;シアネートエステル成分;及びエポキシ樹脂を含む硬化性組成物であって、該硬化性組成物は均質な溶液である硬化性組成物を含むラッカーに関する。
【0009】
もう一つの態様では、本明細書に開示される実施形態は、シアネートエステルとエポキシ樹脂と少なくとも1種のビスマレイミドを含むマレイミド成分とを含む均質な硬化性組成物の反応生成物を含む熱硬化性組成物に関する。かかる熱硬化性組成物は、様々な複合材料及びその他の生成物を形成するために使用することができる。
【0010】
もう一つの態様では、本明細書に開示される実施形態は、複合材料を形成するための方法に関し、それには、第1の基板を硬化性組成物で含浸すること(この際、該硬化性組成物は、少なくとも1種のビスマレイミドを含むマレイミド成分;シアネートエステル成分;及びエポキシ樹脂を含み;該硬化性組成物は均質な溶液である);硬化性組成物を少なくとも一部分硬化させてプリプレグを形成すること;プリプレグを第2の基板の上に配置すること;ならびにプリプレグを硬化させて電気積層板を形成することが含まれる。
【0011】
本発明のその他の態様及び利点は、以下の説明及び添付される特許請求の範囲から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一態様では、本明細書に開示される実施形態は、一般に、電気積層板において有用なエポキシ組成物に関する。もう一つの態様では、本明細書に開示される実施形態は、ビスマレイミド改質エポキシ組成物に関する。より具体的には、本明細書に開示される実施形態は、電気積層板において有用であり、改良された配合物均質性を有する、ビスマレイミド改質エポキシ組成物に関する。
【0013】
その他の態様では、本明細書に開示される実施形態は、少なくとも1種のビスマレイミド、少なくとも1種のエポキシ樹脂、及び少なくとも1種のシアネートエステル成分を含む、またはこれらからなる、またはこれらから本質的になるマレイミド成分を含む、電気積層板用途のためのワニスにおいて有用な硬化性組成物に関する。かかる組成物の実施形態は、安定していて均質であり、安価に製造できることが見出されている。例えば、ワニスにおいて有用な従前の硬化性組成物は、マレイミドを微粒子として懸濁液中に組み込んだ。一態様では、本明細書に開示される実施形態は、マレイミド成分が改良された溶解度を有し、それにより組成物の均質性を改良する、硬化性組成物に関する。
【0014】
一部の実施形態では、本明細書に開示される硬化性組成物中で使用されるマレイミド成分は、ビスマレイミド成分を含む2又はそれ以上のマレイミドのブレンド、例えば4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンなどであってよい。本明細書に開示される実施形態に従ってブレンドされたマレイミド組成物は、エポキシ樹脂組成物に組み込むことができ、そこで得られる硬化性組成物は、配合物均質性を長期間、例えば4週以上維持することが見出された。
【0015】
一実施形態では、ブレンドされたマレイミド成分は、N−フェニルマレイミドと4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンとの混合物であってよく、ここでN−フェニルマレイミド対4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンの重量比は、共存する場合、95:5から5:95に及び得る。その他の実施形態では、N−フェニルマレイミド及び4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンは、一緒に存在する場合、25:75から75:25までの重量比でブレンドされ得る。さらにその他の実施形態では、N−フェニルマレイミド及び4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンは、一緒に存在する場合、35:65から65:35までの重量比でブレンドされ得る。
【0016】
一部の実施形態では、マレイミドエポキシ組成物は、シアネートエステル又は部分的に三量体化したシアネートエステルを含み得る。一実施形態では、本明細書に開示される硬化性組成物には、マレイミド、エポキシ樹脂、及びシアネートエステル成分が含まれてよく、この際、マレイミド、エポキシ樹脂、及びシアネートエステル成分のモル比は、それらのそれぞれの官能基に基づいて、それぞれ90:5:5〜5:90:5〜5:5:90の範囲内、又はかかる値の間の比の任意の組合せであり得る。その他の実施形態では、マレイミド、エポキシ樹脂、及びシアネートエステル成分の相対モル比は、それらのそれぞれの官能基に基づいて、30:20:50〜50:30:20〜20:50:30であり得る。特定の実施形態は、37:23:40(マレイミド:エポキシ:シアネートエステル)の相対モル比を有し得る。
【0017】
その他の態様では、本明細書に開示される実施形態は、電気積層板においてワニスとして有用な硬化性組成物の形成のための方法に関する。この方法には、マレイミドブレンドを調製すること、シアネートエステルを調製すること、ならびに、マレイミドブレンド、シアネートエステル、及びエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を調製することの1又はそれ以上が含まれ得る。その他の態様では、本明細書に開示される実施形態は、様々な基板の上、様々な基板の中、又は様々基板と基板の間に配置されてよい、複合材料、塗料、接着剤、又はシーラントにおいて上記の組成物を使用することに関する。
【0018】
一部の実施形態では、本明細書に開示される硬化性組成物は、マレイミドとエポキシ樹脂を高温で添合して均質な組成物を形成することにより形成され得る。この方法は、シアネートエステルを均質な組成物に添合して硬化性組成物を形成することをさらに含み得る。その他の実施形態では、マレイミド、エポキシ樹脂、及びシアネートエステルは、高温で添合されて均質な硬化性組成物を形成することができる。一部の実施形態では、マレイミド及びエポキシ樹脂は、高温で、例えば約30℃〜約280℃の範囲で組み込まれてよい。その他の実施形態では、マレイミド及びエポキシ樹脂は、50℃〜250℃の範囲の温度で組み込まれてよい。さらにその他の実施形態では、マレイミド及びエポキシ樹脂は、70℃〜180℃の範囲、又は120℃〜140℃の範囲の温度で組み込まれてよい。さらにその他の実施形態では、追加の成分を上記の高温でマレイミド及びエポキシ樹脂に添合してよい。その他の実施形態では、適当な温度、例えば室温又はそれ以上で、マレイミド成分及びエポキシ樹脂の添加物から得られる混合物に、追加の成分を添合してよい。
【0019】
一部の態様では、本明細書に開示される実施形態は、改良された使い易さ、配合物均質性、及び透明度を有する硬化性組成物に関する。例えば、ビスマレイミドとその他のマレイミド成分との添合は、エポキシ樹脂及び溶媒中のビスマレイミドの溶解度の改良をもたらし得ることが見出された。かかる改良は、ビスマレイミドの硬化性組成物への完全な又はほぼ完全な溶解をもたらすことができ、従って、配合物均質性及び改良された溶液透明度が得られる。さらに、この溶解により、得られる硬化性組成物は、ビスマレイミド懸濁液に関して、沈降しないことになり、その結果改良された使い易さ(混合工程及び懸濁液が沈降した場合にしばしば必要とされるその他の工程のないこと)が得られる。さらにその他の態様では、本明細書に開示される実施形態は、重要な性能特性を維持又は向上させる硬化性組成物に関する(例えば、硬化性組成物に関して、より高い分解温度と共に比較的高いガラス転移温度を可能にすること)。
【0020】
一部の態様では、本明細書に開示される硬化性組成物の成分は、触媒の存在下で反応させることができ、所望によりハードナー又は硬化剤と反応させて、ビスマレイミド−トリアジン−エポキシ官能基を有する熱硬化性樹脂を含む、部分的に硬化した生成物又は硬化生成物を形成することができる。
【0021】
さらなる態様では、電気積層板組成物は、低温〜中温での自己硬化性組成物であってよい。なおさらなる態様では、外部加熱を用いて電気積層板を硬化させてもよい。
【0022】
上記のように、本明細書に開示される実施形態には、様々な成分、例えばマレイミド、エポキシ樹脂、及びシアネートエステル、又は部分的に三量体化したシアネートエステルが含まれる。本明細書に記載される組成物の実施形態には、その他の成分、例えば触媒、フリー難燃剤(free flame retardants)、共硬化剤、相乗剤、溶媒、微粒子充填剤、接着促進剤、湿潤及び分散助剤(wetting and dispersing aids)、脱泡添加剤、表面改質剤、熱可塑性樹脂、離型剤、ポリマー特性を改良するためのその他の機能添加剤又は予備反応生成物、イソシアネート、イソシアヌレート、アリルを含有する分子又はその他のエチレン性不飽和化合物、及びアクリレートなども含まれてよい。これらの成分の各々の例は、下により詳細に記載される。
【0023】
マレイミド
【0024】
本明細書に開示される硬化性組成物としては、限定されるものではないが、上記のように、マレイミドとビスマレイミドとの添加物、例えばフェニルマレイミドと4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンとの添加物などを挙げることができる。これらのブレンドされたマレイミド組成物の使用は、硬化性組成物内でのビスマレイミドの溶解度の改良をもたらすことが見出されており、それにより均質な溶液である硬化性組成物がもたらされ得る。
【0025】
本明細書に開示される実施形態において適して使用されるマレイミドモノマーとしては、限定されるものではないが、マレイミド、N−アルキルマレイミド及び、N−フェニルマレイミドを含むN−アリールマレイミド化合物が挙げられる。N−アリールマレイミドにおいて、アリール置換基は、その他の不活性部分、例えばハロもしくは低級アルキルなどにより置換される1又はそれ以上の原子を有してよい。適したN−アリールマレイミドは、米国特許第3,652,726号明細書に開示され、その教示は参照により本明細書に援用される。N−アリールマレイミド中に存在し得るアリール基としては、例えば、フェニル、4−ジフェニル、1−ナフチル、モノ−及びジ−メチルフェニル異性体の全て、2,6−ジエチルフェニル、2−、3−及び4−クロロフェニル、4−ブロモフェニル及びその他のモノ−及びジ−ハロフェニル異性体、2,4,6−トリクロロフェニル、2,4,6−トリブロモフェニル、4−n−ブチルフェニル、2−メチル−4−n−ブチルフェニル、4−ベンジルフェニル、2−、3−及び4−メトキシフェニル、2−メトキシ−5−クロロフェニル、2−メトキシ−5−ブロモフェニル、2,5−ジメトキシ−4−クロロフェニル、2−、3−及び4−エトキシフェニル、2,5−ジエトキシフェニル、4−フェノキシフェニル、4−メトキシカルボニルフェニル、4−シアノフェニル、2−、3−及び4−ニトロフェニルならびにメチル−クロロフェニル(2,3−、2,4−、2,5−及び4,3−異性体)が挙げられる。例となるN−アリールマレイミドモノマーは、N−フェニルマレイミドである。マレイミドモノマーの混合物を用いてもよい。
【0026】
本明細書における使用に適したN−置換マレイミドモノマーとしては、限定されるものではないが、N−アルキルマレイミド、例えばN−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−t−ブチルマレイミドなど;N−シクロアキルマレイミド(cycloakylmaleimides)、例えばN−シクロヘキシルマレイミドなど;N−アリールマレイミド、例えばN−フェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミドが挙げられる。
【0027】
ビスマレイミド樹脂としては、4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタン、1,4−ビスマレイミド−2−メチルベンゼン及びそれらの混合物;ディールズ・アルダーコモノマーを含有する改質及び一部分アドバンスト(partially advanced)改質ビスマレイミド樹脂;ならびに4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタン及びアリルフェニル化合物又は芳香族アミンに基づく一部分アドバンスト(partially advanced)ビスマレイミドを挙げることができる。適したディールズ・アルダーコモノマーの例としては、スチレン及びスチレン誘導体、ビス(プロペニルフェノキシ)化合物、4,4’−ビス(プロペニルフェノキシ)スルホン、4,4’−ビス(プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノン及び4,4’−1−(1−メチルエチリデン)ビス(2−(2−プロペニル)フェノール)が挙げられる。4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタン及びアリルフェニル化合物、例えばジアリルビスフェノールAなどに基づく、市販の改質ビスマレイミドの例は、Huntsman Corporation製のMATRIMID 5292A及びMATRIMID 5292Bである。その他のビスマレイミドとしては、ビスマレイミド及び芳香族ジアミンのマイケル付加共重合体、例えば4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタン/4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。さらにその他のビスマレイミドは、上述のビスマレイミド樹脂のアドバンスメント反応により生成される、より高分子量のビスマレイミドである。例となるビスマレイミド樹脂は、4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンに基づくものである。
【0028】
ビスマレイミド化合物に関して、BMI−S(4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド;三井化学株式会社より入手可能)、及びBMI−M−20(ポリフェニルメタンマレイミド;同様に三井化学株式会社より入手可能)を、例示することができる。
【0029】
シアネートエステル
【0030】
シアネートエステル樹脂は、それぞれ2又はそれ以上の−OCN官能基を有するシアネートエステル化合物(モノマー及びオリゴマー)を含み、一般に約50〜約500のシアネート当量を有する。モノマー及びオリゴマーの分子量は、一般に約150〜約2000である。
【0031】
本明細書に開示される実施形態には、式I、II、III又はIVに従う1又はそれ以上のシアネートエステルが含まれる。式Iは、式Q(OCN)により表され、ここで、pは2〜7の範囲であり、Qには、次のカテゴリー:(1)約5〜約30個の炭素原子を含む、モノ−、ジ−、トリ−、又はテトラ−置換芳香族炭化水素、及び(2)約7〜約20個の炭素原子を含む、1〜5脂肪族もしくは多環式脂肪族モノ−、ジ−、トリ−又はテトラ−置換炭化水素:の少なくとも1種が含まれる。所望により、いずれのカテゴリーにも、非ペルオキシ酸素、硫黄、非ホスフィノホスホラス(non-phosphino phosphorous)、非アミノ窒素、ハロゲン、及びケイ素から選択される約1〜約10個のヘテロ原子が含まれてよい。式IIは、
【化1】

により表される。
【0032】
式IIにおいて、Xは、一重結合、1〜4個の炭素を有する低級アルキレン基、−S−、又はSO基であり;かつ、R、R、R、R、R、及びRは、独立に、水素、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基、又はシアネートエステル基(−OC≡N)であるが、但し、R、R、R、R、R、及びRの少なくとも2つは、シアネートエステル基である。例となる化合物では、各々のR基は、−H、メチル又はシアネートエステル基のいずれかである。
【0033】
式IIIは、
【化2】

により表される。
【0034】
式III中、nは、0〜約5である。
【0035】
式IVは、
【化3】

により表される。
【0036】
式IVにおいて、R及びRは、各々独立に、
【化4】

により表される。
【0037】
、R10、R11は、独立に、−H、約1〜約5個の炭素原子を有する低級アルキル基、又はシアネートエステル基であり、好ましくは水素、メチル又はシアネートエステル基であるが、但し、R、及びRの組合せには、少なくとも2個のシアネートエステル基が含まれる。
【0038】
有用なシアネートエステル化合物としては、限定されるものではないが、次のものが挙げられる:1,3−及び1,4−ジシアナトベンゼン;2−tert−ブチル−1,4−ジシアナトベンゼン;2,4−ジメチル−1,3−ジシアナトベンゼン;2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ジシアナトベンゼン;テトラメチル−1,4−ジシアナトベンゼン;4−クロロ−1,3−ジシアナトベンゼン;1,3,5−トリシアナトベンゼン;2,2’−及び4,4’−ジシアナトビフェニル;3,3',5,5’−テトラメチル−4,4’−ジシアナトビフェニル;1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,8−、2,6−、及び2,7−ジシアナトナフタレン;1,3,6−トリシアナトナフタレン;ビス(4−シアナトフェニル)メタン;ビス(3−クロロ−4−シアナトフェニル)メタン;ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン;1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン;2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,3−ジブロモ−4−シアナトフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン;ビス(4−シアナトフェニル)エステル;ビス(4−シアナトフェノキシ)ベンゼン;ビス(4−シアナトフェニル)ケトン;ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル;ビス(4−シアナトフェニル)スルホン;トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、ならびにトリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート。
【0039】
同様に有用なものは、フェノール樹脂から誘導されるシアン酸エステル(例えば、米国特許第3,962,184号明細書に開示されるようなもの)、ノボラックから誘導されるシアネート化ノボラック樹脂(例えば、米国特許第4,022,755号明細書に開示されるようなもの)、米国特許第4,026,913号に開示される、ビスフェノール型ポリカーボネートオリゴマーから誘導されるシアネート化ビス−フェノール型ポリカーボネートオリゴマー、米国特許第3,595,900号明細書に開示される、シアノ末端ポリアリーレンエーテル、及び米国特許第4,740,584号明細書に開示される、オルト水素原子を含まないジシアネートエステル、米国特許第4,709,008号明細書に開示される、ジシアネート及びトリシアネートの混合物、米国特許第4,528,366号明細書に開示される、多環式脂肪族基を含有するポリ芳香族シアネート(例えば、以前はThe Dow Chemical Company,Midland,Michiganより入手可能なQUATREX 7187)、米国特許第3,733,349号明細書に開示されるフルオロカーボンシアネート、ならびに米国特許第4,195,132号明細書、及び同第4,116,946号明細書に開示されるシアネート類であり、前述の特許は全て参照により援用される。
【0040】
フェノール−ホルムアルデヒド前縮合物をハロゲン化シアニドと反応させることにより得られるポリシアネート化合物も有用である。
【0041】
例となるシアネートエステル組成物には、例えば、約250〜約1200の、ビスフェノールAジシアネートの低分子量オリゴマー、例えば、AROCY BC−30シアネートエステル半固体樹脂;テトラo−メチルビスフェノールFジシアネートの低分子量オリゴマー、例えばAROCY M−30シアネートエステル半固体樹脂;チオジフェノールジシアネートの低分子量オリゴマー、例えばAROCY T−30が含まれ、それらは全て、スイスのHuntsman Advance Materialsより市販されている。
【0042】
シアネートエステル化合物の例としては、ビスフェノールA型のシアネートエステルである、PRIMASET BA200(Lonza Corporation製);PRIMASET BA 230 S(Lonza Corporation製);ビスフェノールH型のシアネートエステルである、PRIMASET LECY(Lonza Corporation製);AROCY L 10(スイスのHuntsman Advance Materials製);ノボラック型のシアネートエステルである、PRIMASET PT 30(Lonza Corporation製);AROCY XU−371(スイスのHuntsman Advance Materials製);及び、ジシクロペンタジエン型のシアネートエステルである、AROCY XP 71787.02L(スイスのHuntsman Advance Materials製)を例示することができる。
【0043】
上に記載されるいずれのシアネートエステルのどの混合物も、当然、使用できる。
【0044】
エポキシ樹脂
【0045】
本明細書に開示される実施形態で使用されるエポキシ樹脂は様々であってよく、それには、従来及び市販のエポキシ樹脂が含まれてよい。それらは単独で使用してもよいし、2又はそれ以上の組合せで使用してもよく、それには例えば、数ある中でも、ノボラック(novalac)樹脂、イソシアネート改質エポキシ樹脂、及びカルボキシレート付加物が挙げられる。本明細書に開示される組成物のためのエポキシ樹脂を選択する際には、最終生成物の特性だけでなく、粘度及び樹脂組成物の加工に影響を及ぼし得るその他の特性も考慮するべきである。
【0046】
エポキシ樹脂成分は、本明細書において「エポキシ基」又は「エポキシ官能基」と呼ばれる1又はそれ以上の反応性オキシラン基を含有するあらゆる材料を含む、成形用組成物において有用なあらゆる種類のエポキシ樹脂であってよい。本明細書に開示される実施形態において有用なエポキシ樹脂には、単官能性エポキシ樹脂、多官能性(multi-or poly-functional)エポキシ樹脂、及びそれらの組合せが含まれてよい。モノマー及びポリマーのエポキシ樹脂は、脂肪族、脂環式、芳香族、又は複素環式エポキシ樹脂であってよい。ポリマーのエポキシ樹脂には、末端エポキシ基を有する線状ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、ポリマー骨格のオキシラン単位(例えばポリブタジエンポリエポキシド)及びペンダントエポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリレートポリマー又は共重合体など)が含まれる。エポキシ樹脂は、純粋な化合物であってよいが、一般に、1分子あたり1、2又はそれ以上のエポキシ基を含有する混合物又は化合物である。一部の実施形態では、エポキシ樹脂には、より高い温度で、無水物、有機酸、アミノ樹脂、フェノール樹脂、又はエポキシ基(触媒される場合)と反応してさらなる架橋をもたらすことのできる、反応性−OH基も含まれ得る。
【0047】
一般に、エポキシ樹脂は、グリシド化樹脂、脂環式樹脂、エポキシ化油、などであり得る。グリシド化樹脂は、しばしば、グリシジルエーテル(例えばエピクロロヒドリンなど)、及びビスフェノール化合物(例えばビスフェノールAなど)の反応生成物;C−C28アルキルグリシジルエーテル;C−C28アルキル−及びアルケニル−グリシジルエステル;C−C28アルキル−、モノ−及びポリ−フェノールグリシジルエーテル;多価フェノールのポリグリシジルエーテル(例えばピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン(又はビスフェノールF)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン(又はビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、及びトリス(4−ヒドロキシフィニル(phynyl))メタン;上述のジフェノールの塩素化及び臭素化生成物のポリグリシジルエーテル;ノボラックのポリグリシジルエーテル;芳香族ヒドロカルボン酸の塩をジハロアルカン又はジハロゲンジアルキルエーテルによりエステル化することにより得られるジフェノールのエーテルをエステル化することにより得られるジフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールと、少なくとも2個のハロゲン原子を含有する長鎖ハロゲンパラフィンとを縮合させることにより得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテルである。本明細書に開示される実施形態において有用なエポキシ樹脂のその他の例としては、ビス−4,4’−(1−メチルエチリデン)フェノールジグリシジルエーテル及び(クロロメチル)オキシランビスフェノールAジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0048】
一部の実施形態では、エポキシ樹脂には、グリシジルエーテル型;グリシジル−エステル型;脂環式型;複素環式型、及びハロゲン化エポキシ樹脂などが含まれ得る。適したエポキシ樹脂の限定されない例としては、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノール性ノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、ヒドロキノンエポキシ樹脂、スチルベンエポキシ樹脂、ならびにそれらの混合物及び組合せを挙げることができる。
【0049】
適したポリエポキシ化合物としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル(1,3−ビス−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゼン)、ビスフェノールA(2,2−ビス(p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)プロパン)のジグリシジルエーテル、トリグリシジルp−アミノフェノール(4−(2,3−エポキシプロポキシ)−N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン)、ブロモビスフェノール(bromobispehnol)A(2,2−ビス(4−(2,3−エポキシプロポキシ)3−ブロモ−フェニル)プロパン)のジグリシジルエーテル、ビスフェノールF(2,2−ビス(p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)メタン)のジグリシジルエーテル(diglydicylether)、メタ−及び/又はパラ−アミノフェノール(3−(2,3−エポキシプロポキシ)N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン)のトリグリシジルエーテル、及びテトラグリシジルメチレンジアニリン(N,N,N’,N’−テトラ(2,3−エポキシプロピル)4,4’−ジアミノジフェニルメタン)、ならびに2又はそれ以上のポリエポキシ化合物の混合物を挙げることができる。見出される有用なエポキシ樹脂のより完全なリストは、1982年再発行のLee, H. and Neville, K., Handbook of Epoxy Resins, McGraw-Hill Book Company、に見出すことができる。
【0050】
その他の適したエポキシ樹脂としては、芳香族アミン及びエピクロロヒドリンに基づくポリエポキシ化合物、例えば、N,N'−ジグリシジル−アニリン;N,N'−ジメチル−N,N'−ジグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N−ジグリシジル−4−アミノフェニルグリシジルエーテル;及びN,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−プロピレンビス−4−アミノベンゾエートが挙げられる。また、エポキシ樹脂としては、芳香族ジアミン、芳香族モノ第一級アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、ポリカルボン酸、のうちの1又はそれ以上のグリシジル誘導体も挙げられる。
【0051】
有用なエポキシ樹脂としては、例えば、多価ポリオール類、例えばエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセロール、及び2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンなどのポリグリシジルエーテル;脂肪族及び芳香族ポリカルボン酸類、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレン(napthalene)ジカルボン酸、及び二量体化リノール酸などのポリグリシジルエーテル;ポリフェノール類、例えば、ビス−フェノールA、ビス−フェノールF、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、及び1,5−ジヒドロキシナフタレン(napthalene)などのポリグリシジルエーテル;アクリレート又はウレタン部分を含む改質エポキシ樹脂;グリシジルアミン(glycidlyamine)エポキシ樹脂;ならびにノボラック樹脂が挙げられる。
【0052】
エポキシ化合物は、脂環式(cycloaliphatic)もしくは脂環式(alicyclic)のエポキシドであってよい。脂環式エポキシドの例としては、ジカルボン酸の脂環式エステルのジエポキシド、例えばビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)シュウ酸塩、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ピメラート;ビニルシクロヘキセンジエポキシド;リモネンジエポキシド;ジシクロペンタジエンジエポキシド;及び同類のものが挙げられる。その他の適したジカルボン酸の脂環式エステルのジエポキシドは、例えば、米国特許第2,750,395号明細書に記載されている。
【0053】
その他の脂環式エポキシドとしては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボンキシレート類、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレートなど;6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート及び同類のものが挙げられる。その他の適した3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートは、例えば、米国特許第2,890,194号明細書に記載されている。
【0054】
特に有用なさらなるエポキシ含有材料としては、グリシジルエーテルモノマーに基づくものが挙げられる。例は、多価フェノールを過剰なクロロヒドリン、例えばエピクロロヒドリンと反応させることにより得られる多価フェノールのジ−もしくはポリグリシジルエーテルである。かかる多価フェノールとしては、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールFとして周知)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAとして周知)、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3',5’−ジブロモフェニル)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(4’−ヒドロキシ−フェニル)エタン、あるいは、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(酸性条件下の下で得られる、例えばフェノールノボラック及びクレゾールノボラックなど)が挙げられる。この種類のエポキシ樹脂の例は、米国特許第3,018,262号明細書に記載されている。その他の例としては、多価アルコール類、例えば1,4−ブタンジオールなど、又はポリアルキレングリコール類、例えばポリプロピレングリコールなどのジ−もしくはポリグリシジルエーテル類、及び脂環式ポリオール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジ−もしくはポリグリシジルエーテルが挙げられる。その他の例は、単官能性樹脂、例えばクレシルグリシジルエーテル又はブチルグリシジルエーテルなどである。
【0055】
別のクラスのエポキシ化合物は、多価カルボン酸、例えばフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸又はヘキサヒドロフタル酸などのポリグリシジルエステル及びポリ(β−メチルグリシジル)エステルである。さらなるクラスのエポキシ化合物は、アミン、アミド及び複素環式窒素塩基、例えばN,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルビス(4−アミノフェニル)メタン、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N'−ジグリシジルエチルウレア、N,N’−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、及びN,N'−ジグリシジル−5−イソプロピルヒダントインなどのN−グリシジル誘導体である。
【0056】
さらにその他のエポキシ含有材料は、グリシドールのアクリル酸エステル、例えばグリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートと、1又はそれ以上の共重合可能なビニル化合物の共重合体である。かかる共重合体の例は、1:1スチレン−グリシジルメタクリレート、1:1メチル−メタクリレートグリシジルアクリレート及び62.5:24:13.5メチルメタクリレート−エチルアクリレート−グリシジルメタクリレートである。
【0057】
容易に利用可能なエポキシ化合物としては、オクタデシレンオキシド;グリシジルメタクリレート;ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyより入手可能なビスフェノールAのジグリシジルエーテル;D.E.R.(商標)331(ビスフェノールA液状エポキシ樹脂)及びD.E.R.(商標)332(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル);ビニルシクロヘキセンジオキシド;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート;ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル;ポリプロピレングリコールで改質した脂肪族エポキシ;ジペンテンジオキシド;エポキシ化ポリブタジエン;エポキシ官能基を含有するシリコーン樹脂;難燃性エポキシ樹脂(例えば、ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyより入手可能なD.E.R.(商標)580の商標名で入手可能な臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂);フェノールホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル(ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyより入手可能なD.E.N.(商標)431及びD.E.N.(商標)438の商標名で入手可能なもの);及びレゾルシノールジグリシジルエーテルが挙げられる。具体的には言及しないが、The Dow Chemical Companyより入手可能な商標名D.E.R.(商標)及びD.E.N.(商標)のその他のエポキシ樹脂を使用してもよい。
【0058】
また、エポキシ樹脂には、イソシアネート改質エポキシ樹脂が含まれてよい。イソシアネート又はポリイソシアネート官能基を含むポリエポキシドポリマー又は共重合体には、エポキシ−ポリウレタン共重合体が含まれ得る。これらの材料は、1,2−エポキシ官能基を得るための1又はそれ以上のオキシラン環を有し、かつ、ジイソシアネート又はポリイソシアネートとの反応のためにジヒドロキシル含有化合物のヒドロキシル基として有用な、開いたオキシラン環も有する、ポリエポキシドプレポリマーの使用により形成することができる。イソシアネート部分は、オキシラン環を開環させ、反応は、第1又は第2ヒドロキシル基とのイソシアネート反応として継続する。ポリエポキシド樹脂には、効果的なオキシラン環をなお有するエポキシポリウレタン共重合体の生成を可能にするための十分なエポキシド官能基が存在する。ジエポキシド及びジイソシアネートの反応によって線状ポリマーを生成してよい。ジ−もしくはポリイソシアネートは、一部の実施形態では芳香族又は脂肪族であってよい。イソシアヌレート結合をもたらすエポキシ−イソシアネート共重合体を用いてもよい。
【0059】
その他の適したエポキシ樹脂は、例えば、米国特許第7,163,973号明細書、同第6,632,893号明細書、同第6,242,083号明細書、同第7,037,958号明細書、同第6,572,971号明細書、同第6,153,719号明細書、及び同第5,405,688号明細書ならびに米国特許出願公開第20060293172号明細書及び同第20050171237号明細書に開示され、その各々はここで参照により本明細書に援用される。
【0060】
上に記載されるエポキシ樹脂のいずれかの混合物も、当然使用できる。
【0061】
溶媒
【0062】
硬化性組成物に加えることのできる別の成分は、溶媒又は溶媒のブレンドである。エポキシ樹脂組成物に使用される溶媒は、樹脂組成物中でその他の成分と混和性であってよい。使用する溶媒は、電気積層板の製造に一般に使用される溶媒から選択されてよい。本発明で用いられる適した溶媒の例としては、例えば、ケトン、エーテル、アセテート、芳香族ハイドロカーボン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、グリコールエーテル、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0063】
触媒及び阻害剤のための溶媒には、極性溶媒を挙げることができる。1〜20の炭素原子を有する低級アルコール、例えば、メタノールなどは、プリプレグを形成する場合に樹脂マトリックスから除去するための良好な溶解度及び揮発性をもたらす。その他の有用な溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、DOWANOL(商標)PMA、DOWANOL(商標)PM、N,−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール及びグリセリンが挙げられ得る。
【0064】
硬化性エポキシ樹脂組成物で使用される溶媒の総量は、一般に、一部の実施形態では約1〜約65重量パーセントの範囲であり得る。その他の実施形態では、溶媒の総量は、2〜60重量パーセント;その他の実施形態では3〜50重量パーセント;及びなおその他の実施形態では5〜40重量パーセントの範囲であり得る。
【0065】
上記の溶媒の1又はそれ以上の混合物も使用されてよい。
【0066】
触媒
【0067】
所望により、触媒を上記の硬化性組成物に加えてよい。触媒としては、限定されるものではないが、1分子あたり1個のイミダゾール環を有する化合物をはじめとするイミダゾール化合物、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−フェニル−4−ベンジルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1)']−エチル−s−トリアジン、2−メチル−イミダゾリウム−イソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾリウム−イソシアヌル酸付加物、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ベンジル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール及び同類のものなど;ならびに、上に指名されたヒドロキシメチル含有イミダゾール化合物、例えば、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−ベンジル−5−ヒドロキシ−メチルイミダゾールなどを脱水し;かつ、それらをホルムアルデヒドで縮合することにより得られる、1分子当たり2又はそれ以上のイミダゾール環を含有する化合物、例えば、4,4’−メチレン−ビス−(2−エチル−5−メチルイミダゾール)、及び同類のものを挙げることができる。
【0068】
その他の実施形態では、適した触媒としては、アミン触媒、例えば、N−アルキルモルホリン、N−アルキルアルカノールアミン、N,N−ジアルキルシクロヘキシルアミン、ならびに、アルキル基が、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びそれらの異性体、及び複素環式アミンである、アルキルアミンなどを挙げることができる。
【0069】
非アミン触媒を使用してもよい。ビスマス、鉛、錫、チタン、鉄、アンチモン、ウラン、カドミウム、コバルト、トリウム、アルミニウム、水銀、亜鉛、ニッケル、セリウム、モリブデン、バナジウム、銅、マンガン、及びジルコニウムの有機金属化合物を使用することができる。説明となる例としては、ビスマスニトラート、鉛2−エチルヘキソエート、鉛ベンゾエート、塩化第二鉄、アンチモントリクロライド、第一錫アセテート、第一錫オクトエート、及び第一錫2−エチルヘキソエートが挙げられる。使用してよいその他の触媒は、例えば、参照によりその全文が援用される、PCT公開第WO00/15690号明細書に開示される。
【0070】
一部の実施形態では、適した触媒としては、求核性アミン及びホスフィン、特に窒素複素環類、例えば、アルキル化イミダゾール類:2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾールなど;その他の複素環類、例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロオクテン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、ピペリジンなど;トリアルキルアミン類、例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミンなど;ホスフィン類、例えば、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリエチルホスフィンなど;第四級塩類、例えば、トリエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムアセテート、トリフェニルホスホニウムアセテート、及びトリフェニルホスホニウムヨージドなどを挙げることができる。
【0071】
上記の触媒の1又はそれ以上の混合物も使用されてよい。
【0072】
エポキシハードナー/硬化剤
【0073】
ハードナー又は硬化剤は、硬化性組成物の架橋を促進して熱硬化性組成物を形成するために提供され得る。ハードナー及び硬化剤は、個別に使用されてもよいし、2又はそれ以上の混合物として使用されてもよい。一部の実施形態では、ハードナーには、ジシアンジアミド(dicy)又はフェノール性硬化剤、例えば、ノボラック、レゾール(resoles)、ビスフェノールなどが含まれ得る。その他のハードナーとしては、アドバンスト(オリゴマー)エポキシ樹脂が挙げられ、その一部は上に開示されている。アドバンストエポキシ樹脂ハードナーの例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(又はテトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル)及び過剰なビスフェノール又は(テトラブロモビスフェノール)から調製されるエポキシ樹脂を挙げることができる。無水物、例えば、ポリ(スチレン−コ−無水マレイン酸)なども使用してよい。
【0074】
硬化剤には、第1及び第2ポリアミンならびにその付加物、無水物、及びポリアミドが含まれ得る。例えば、多官能性アミンには、脂肪族アミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン(ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyより入手可能なD.E.H.20)、トリエチレンテトラミン(ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyより入手可能なD.E.H.24)、テトラエチレンペンタミン(ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyより入手可能なD.E.H.(商標)26)など、ならびに上記アミンとエポキシ樹脂、希釈剤、又はその他のアミン反応性化合物との付加物が含まれ得る。芳香族アミン類、例えば、メタフェニレンジアミン及びジアミンジフェニルスルホンなど、脂肪族ポリアミン類、例えば、アミノエチルピペラジン及びポリエチレンポリアミンなど、ならびに芳香族ポリアミン類、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、及びジエチルトルエンジアミンなども使用してよい。
【0075】
無水物硬化剤には、例えば、数ある中でも、無水メチルナディック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ドデセニルコハク酸、無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、及びメチルテトラヒドロフタル酸無水物、が含まれ得る。
【0076】
ハードナー又は硬化剤には、フェノール由来又は置換フェノール由来ノボラック又は無水物が含まれ得る。適したハードナーの限定されない例としては、フェノールノボラックハードナー、クレゾールノボラックハードナー、ジシクロペンタジエンビスフェノールハードナー、リモネン型ハードナー、無水物、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0077】
一部の実施形態では、フェノールノボラックハードナーは、ビフェニルもしくはナフチル部分を含み得る。フェノール性ヒドロキシ基が該化合物のビフェニルもしくはナフチル部分に結合していてもよい。この種類のハードナーは、例えば、EP915118A1号に記載される方法に従って調製することができる。例えば、ビフェニル部分を含有するハードナーは、フェノールとビスメトキシ−メチレンビフェニルを反応させることにより調製することができる。
【0078】
その他の実施形態では、硬化剤には、ジシアンジアミド、ボロントリフルオライドモノエチルアミン、及びジアミノシクロヘキサンが含まれ得る。また、硬化剤には、イミダゾール、それらの塩、及び付加物が含まれ得る。これらのエポキシ硬化剤は、一般に室温で固体である。適したイミダゾール(imadazole)硬化剤の例は、EP906927A1号に開示されている。その他の硬化剤としては、フェノール性(phenolic)、ベンゾオキサジン、芳香族アミン、アミドアミン、脂肪族アミン、無水物、及びフェノールが挙げられる。
【0079】
一部の実施形態では、硬化剤は、1アミノ基当たり500までの分子量を有するポリアミド又はアミノ化合物、例えば、芳香族アミン又はグアニジン誘導体などであってよい。アミノ硬化剤の例としては、4−クロロフェニル−N,N−ジメチル−ウレア及び3,4−ジクロロフェニル−N,N−ジメチル−ウレアが挙げられる。
【0080】
本明細書に開示される実施形態において有用な硬化剤のその他の例としては、3,3’−及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホン;メチレンジアニリン;Hexion Chemical Co.よりEPON 1062として入手可能なビス(4−アミノ−3,5−ジメチル−フェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン;及び、Hexion Chemical Co.よりEPON 1061として入手可能なビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼンが挙げられる。
【0081】
エポキシ化合物のためのチオール硬化剤も使用されてよく、それは例えば、米国特許第5,374,668号明細書に記載されている。本明細書において、「チオール」には、ポリチオール又はポリメルカプタン硬化剤も含まれる。説明となるチオールには、脂肪族チオール類、例えば、メタンジチオール、プロパンジチオール、シクロヘキサンジチオール、2−メルカプトエチル−2,3−ジメルカプト−スクシネート、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリトリトールテトラ(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラ(チオグリコレート)、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、プロポキシ化アルカンのトリ−グリシジルエーテルのトリス−メルカプタン誘導体、及びジペンタエリトリトールポリ(β−チオプロピオネート)など;脂肪族チオール類のハロゲン置換誘導体;芳香族チオール類、例えば、ジ−、トリス−もしくはテトラ−メルカプトベンゼン、ビス−、トリス−もしくはテトラ−(メルカプトアルキル)ベンゼン、ジメルカプトビフェニル、トルエンジチオール及びナフタレンジチオールなど;芳香族チオール類のハロゲン置換誘導体;複素環含有チオール類、例えば、アミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、アルコキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、アリールオキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン及び1,3,5−トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌレートなど;複素環含有チオール類のハロゲン置換誘導体;少なくとも2個のメルカプト基を有し、かつ、そのメルカプト基に加えて硫黄原子を含有するチオール化合物、例えば、ビス−、トリス−もしくはテトラ(メルカプトアルキルチオ)ベンゼン、ビス−、トリス−もしくはテトラ(メルカプトアルキルチオ)アルカン、ビス(メルカプトアルキル)ジスルフィド、ヒドロキシアルキルスルフィドビス(メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシアルキルスルフィドビス(メルカプトアセテート)、メルカプトエチルエーテルビス(メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(メルカプトアセテート)、チオジグリコール酸ビス(メルカプトアルキルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトアルキルエステル)、4,4−チオ酪酸ビス(2−メルカプトアルキルエステル)、3,4−チオフェンジチオール、ビスマスチオール及び2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどが挙げられる。
【0082】
硬化剤は、求核性物質、例えば、アミン、第三級ホスフィン、求核性アニオンを含む第四級アンモニウム塩、求核性アニオンを含む第四級ホスホニウム塩、イミダゾール、求核性アニオンを含む第三級アルセニウム塩、及び求核性アニオンを含む第三級スルホニウム塩などであってもよい。
【0083】
エポキシ樹脂、アクリロニトリル、又はメタクリレートによる付加により改質される脂肪族ポリアミンも、硬化剤として利用されてよい。その上、様々なマンニッヒ塩基を使用することができる。アミン基が直接芳香環に結合している芳香族アミンも使用してよい。
【0084】
本明細書に開示される実施形態において硬化剤として有用な求核性アニオンを含む第四級アンモニウム塩には、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムアセテート、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムシアニド、セチルトリエチルアンモニウムアジド、N,N−ジメチルピロリジニウムイソシアネート、N−メチルピリジニウムフェノラート、N−メチル−o−クロロピリジニウムクロライド、メチルビオロゲンジクロライド及び同類のものが含まれてよい。
【0085】
本明細書における使用のための硬化剤の適合性は、製造業者の仕様書又は日常的な実験を参照することにより決定することができる。製造業者の仕様書は、硬化剤が、液体又は固体のエポキシと混合するために望ましい温度で非晶質固体又は結晶性固体であるかどうかを判定するために使用することができる。あるいは、示差走査熱量測定(DSC)を用いて固体の硬化剤を試験して、その固体硬化剤の非晶質性又は結晶性、及び液体又は固体形態の樹脂組成物との混合に対するその硬化剤の適合性を判定することができる。
【0086】
1又はそれ以上の上記のエポキシハードナーと硬化剤の混合物も使用するこができる。
【0087】
難燃性添加剤
【0088】
上記のように、本明細書に記載される硬化性組成物は、臭素化及び非臭素化難燃剤をはじめとする、ハロゲン化及び非ハロゲン化難燃剤を含む配合物中で使用することができる。臭素化添加剤の具体例としては、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)及びそれに由来する材料:TBBA−ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA又はTBBAとTBBA−ジグリシジルエーテルの反応生成物、及びビスフェノールAジグリシジルエーテルとTBBAの反応生成物が挙げられる。
【0089】
非臭素化難燃剤としては、DOP(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン10−オキシド)に由来する様々な材料、例えば、DOP−ヒドロキノン(10−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン10−オキシド)など、DOPとノボラックのグリシジルエーテル誘導体との縮合生成物、及び無機難燃剤、例えば、アルミニウム三水和物、アルミニウムヒドロキシド(Boehmite)及びアルミニウムホスフィニト(aluminum phosphinite)などが挙げられる。無機難燃性充填剤を使用する場合、シラン処理等級が好ましい。
【0090】
その他の難燃性添加剤としては、カルボン酸の亜鉛塩を挙げることができる。カルボン酸と亜鉛の塩の例としては、亜鉛ホルメート、亜鉛アセテート、亜鉛プロピオネート、亜鉛ブチレート、亜鉛バレラート、亜鉛ヘキサノエート、亜鉛オクタノエート、亜鉛ドデカノエート、亜鉛ラウレート、亜鉛ミリステート、亜鉛パルミテート、亜鉛ステアレート、亜鉛オキサレート、亜鉛マロネート、亜鉛スクシネート、亜鉛グルタラート、亜鉛アジペート、亜鉛ピメラート、亜鉛スベラート、亜鉛アセラート(zinc acelate)、亜鉛セバケート、亜鉛アクリレート、亜鉛メタクリレート、クロトン酸亜鉛、亜鉛オレエート、亜鉛フマレート、亜鉛マレエート、亜鉛ベンゾエート、亜鉛フタラート及び亜鉛シンナメートが挙げられる。これらの亜鉛塩は、単独で使用してもよいし、それらの2又はそれ以上の混合物として組み合わせて使用してもよい。
【0091】
上記の難燃性添加剤の1又はそれ以上の混合物も使用してよい。
【0092】
その他の添加剤
【0093】
本明細書に開示される硬化性組成物には、所望により相乗剤、ならびに従来の添加剤及び充填剤が含まれてよい。相乗剤としては、例えば、マグネシウムヒドロキシド、亜鉛ボレート、及びメタロセン)、溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びDOWANOL PMA)を挙げることができる。添加剤及び充填剤としては、例えば、シリカ、ガラス、タルク、金属粉末、二酸化チタン、湿潤剤、色素、着色剤、離型剤、カップリング剤、イオン捕捉剤、UV安定剤、柔軟化剤、及び粘着付与剤を挙げることができる。また、添加剤及び充填剤には、数ある中でも、ヒュームドシリカ、凝集体、例えば、ガラスビーズなど、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオール樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、グラファイト、モリブデンジスルフィド、研磨色素(abrasive pigments)、粘度低下剤、ボロンナイトライド、マイカ、核剤、及び安定剤も含まれ得る。充填剤には、0.5nm〜100μmの範囲の粒径を有し得る機能性又は非機能性微粒子充填剤が含まれてよく、例えば、アルミナ三水和物、アルミニウムオキシド、水酸化アルミニウムオキシド、金属酸化物、及びナノチューブを挙げることができる)。充填剤及び改質剤は、エポキシ樹脂組成物への添加の前に予熱して水分を追い払ってよい。さらに、これらの任意選択の添加剤は、硬化の前及び/又は後に組成物の特性に効果を有してもよいので、これらを組成物及び所望の反応生成物を配合する場合に考慮に入れるべきである。シラン処理された充填剤が好ましい。
【0094】
その他の実施形態では、本明細書に開示される組成物には、強化剤が含まれてよい。強化剤は、ポリマーマトリックスの内部に第2の相を形成することにより機能する。この第2の相は弾性があり、それ故に亀裂成長を停止させる能力があり、改良された衝撃靱性をもたらす。強化剤としては、ポリスルホン、ケイ素含有弾性ポリマー、ポリシロキサン、及び当分野で周知のその他のゴム強化剤を挙げることができる。
【0095】
一部の実施形態では、少量の、より大きい分子量の比較的非揮発性モノアルコール、ポリオール、及びその他のエポキシ−又はイソシアナト−反応性希釈剤を、必要に応じて使用して、本明細書に開示される硬化性及び熱硬化性組成物中の可塑剤として役立たせることができる。例えば、イソシアネート、イソシアヌレート、シアネートエステル、アリル含有分子又はその他のエチレン性不飽和化合物、及びアクリレートを、一部の実施形態において使用してよい。例となる非反応性熱可塑性樹脂としては、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(polyethersolufones)、ポリビニリデンフルオライド、ポリエーテルイミド、ポリフタルイミド(polypthalimide)、ポリベンズイミダゾール(polybenzimidiazole)、アクリル(acyrlics)、フェノキシ、及びウレタンが挙げられる。その他の実施形態では、本明細書に開示される組成物には、接着促進剤、例えば、修飾オルガノシラン(エポキシ化、メタクリル、アミノ)、アシトルアセトナート(acytlacetonates)、及び硫黄含有分子なども含むことができる。
【0096】
さらに他の実施形態では、本明細書に開示される組成物には、湿潤及び分散助剤、例えば、修飾オルガノシラン、BYK W 900シリーズ及びBYK W 9010、及び修飾フルオロ炭素が含まれてよい。さらにその他の実施形態では、本明細書に開示される組成物には、脱泡添加剤、例えば、BYK A530、BYK A525、BYK A555、及びBYK A560が含まれてよい。本明細書に開示される実施形態はまた、表面改質剤(例えば、スリップ剤及び光沢剤)及び離型剤(例えば、ワックス)、及びその他の機能性添加剤あるいはポリマー特性を向上させるために事前に反応させた生成物も含んでよい。
【0097】
一部の実施形態には、本明細書に開示される硬化性電気積層板組成物の特異性を得るよう組み込むことのできるその他の共反応体が含まれ得る。共反応体及び/又は上記の添加剤の1又はそれ以上の混合物も使用することができる。
【0098】
その他の実施形態では、本明細書に開示される熱硬化性組成物には、繊維強化材、例えば、長繊維及び/又はチョップトファイバーなどが含まれ得る。繊維強化材には、ガラス繊維、炭素繊維、又は有機繊維、例えば、ポリアミド、ポリイミド、及びポリエステルなどが含まれ得る。熱硬化性組成物の実施形態で使用される繊維強化材の濃度は、組成物の総重量に基づいて、約1パーセント〜約95重量パーセントの間;その他の実施形態では約5パーセント〜90重量パーセントの間;その他の実施形態では約10パーセント〜80パーセントの間;その他の実施形態では約20パーセント〜70パーセントの間;そしてなおその他の実施形態では、30パーセント〜60パーセントの間であり得る。
【0099】
その他の実施形態では、本明細書に開示される組成物には、ナノ充填剤が含まれ得る。ナノ充填剤には、無機、有機、又は金属のナノ充填剤が含まれてよく、粉末、ホイスカー、繊維、プレート又はフィルムの形態であってよい。ナノ充填剤は、一般に、少なくとも1つの寸法(長さ、幅、又は厚さ)が約0.1〜約100ナノメートルの任意の充填剤又は充填剤の組合せであってよい。例えば、粉末に関して、少なくとも1つの寸法が粒度と特徴づけることができる;ホイスカー及び繊維に関して、この少なくとも1つの寸法は、直径である;そして、プレート及びフィルムに関して、この少なくとも1つの寸法は、厚さである。例えば、クレイは、エポキシ樹脂系マトリックスに分散させることができるが、剪断下でエポキシ樹脂中に分散させるとクレイは非常に薄い構成層に分解され得る。ナノ充填剤には、クレイ、有機クレイ、カーボンナノチューブ、ナノホイスカー(例えば、SiCなど)、SiO、元素、アニオン、又は周期律表のs、p、d、及びf族から選択される1又はそれ以上の元素の塩、金属、金属酸化物、及びセラミックが含まれ得る。
【0100】
上記のいずれかの添加剤の濃度は、本明細書に記載される熱硬化性組成物中で使用する場合、組成物の総重量に基づいて、約1パーセント〜95パーセントの間;その他の実施形態では2パーセント〜90パーセントの間;その他の実施形態では5パーセント〜80パーセントの間;その他の実施形態では10パーセント〜60パーセントの間、そしてなおその他の実施形態では15パーセント〜50パーセントの間であり得る。
【0101】
電気積層板組成物/ワニス
【0102】
成分の割合は、一部分、製造する電気積層板組成物又は塗料に求められる特性、組成物の所望の硬化反応、及び組成物の所望の貯蔵安定性(所望の有効期間)によって決まり得る。
【0103】
例えば、一部の実施形態では、硬化性組成物は、マレイミド、エポキシ樹脂、シアネートエステル、及びその他の成分を添合することにより形成することができ、ここで、成分の相対量は、電気積層板組成物の望ましい特性に依存し得る。
【0104】
一部の実施形態では、マレイミドブレンドは、硬化性組成物の総重量に基づいて、0.1〜99重量パーセントの範囲の量で存在し得る。その他の実施形態では、マレイミドブレンドは、マレイミド、エポキシ樹脂、及びシアネートエステルの総合重量に基づいて、5〜90重量パーセント;その他の実施形態では10〜60重量パーセント;そしてなおその他の実施形態では15〜50重量パーセントの範囲内で存在し得る。その他の実施形態では、マレイミドブレンドは、硬化性組成物の20〜45重量パーセント;さらに他の実施形態では25〜45重量パーセント;そしてなおその他の実施形態では30〜40重量パーセントの範囲の量で使用され得る。
【0105】
一部の実施形態では、エポキシ樹脂は、硬化性組成物の総重量に基づいて、0.1〜99重量パーセントの範囲の量で存在し得る。その他の実施形態では、エポキシ樹脂は、マレイミド、エポキシ樹脂、及びシアネートエステルの総合重量に基づいて、5〜90重量パーセント;その他の実施形態では10〜80重量パーセント;そしてさらに他の実施形態では10〜50重量パーセントの範囲で存在し得る。その他の実施形態では、エポキシ樹脂は、硬化性組成物の10〜40重量パーセント;そしてさらに他の実施形態では20〜30重量パーセントの範囲の量で使用され得る。
【0106】
一部の実施形態では、シアネートエステルは、硬化性組成物の総重量に基づいて、0.01〜99重量パーセントの範囲の量で存在し得る。その他の実施形態では、シアネートエステルは、マレイミド、エポキシ樹脂、及びシアネートエステルの総合重量に基づいて、5〜90重量パーセント;その他の実施形態では10〜80重量パーセント;そしてさらに他の実施形態では15〜75重量パーセントの範囲で存在し得る。その他の実施形態では、シアネートエステルは、硬化性組成物の20〜70重量パーセント;なおその他の実施形態では30〜60重量パーセント;そしてさらに他の実施形態では40〜50重量パーセントの範囲の量で使用され得る。
【0107】
その他の成分の割合も、一部分、製造する熱硬化性樹脂、電気積層板、又は塗料に求められる特性によって決まり得る。例えば、硬化剤及び硬化剤の量を選択する際に考慮する変量には、エポキシ組成物(ブレンドの場合)、電気積層板組成物の所望の特性(T、T、柔軟性、電気的特性など)、所望の硬化速度、及び触媒分子当たりの反応性基の数、例えば、アミン中の活性水素の数などが含まれ得る。一部の実施形態では、使用する硬化剤の量は、100重量部のエポキシ樹脂あたり0.1から150重量部まで様々であり得る。その他の実施形態では、硬化剤は、100重量部のエポキシ樹脂あたり5〜95重量部の範囲の量で使用されてよく;なおさらに他の実施形態では、硬化剤は、100重量部のエポキシ樹脂あたり10〜90重量両部の範囲の量で使用されてよい。さらにその他の実施形態では、硬化剤の量は、エポキシ樹脂以外の成分によって決まり得る。
【0108】
一部の実施形態では、上記の硬化性組成物から形成される熱硬化性樹脂は、示差走査熱量測定を用いて測定して、少なくとも190℃のガラス転移温度を有し得る。その他の実施形態では、上記の硬化性組成物から形成される熱硬化性樹脂は、示差走査熱量測定を用いて測定して、少なくとも200℃;その他の実施形態では少なくとも210℃;その他の実施形態では少なくとも220℃;そしてなおその他の実施形態では少なくとも230℃のガラス転移温度を有し得る。
【0109】
一部の実施形態では、上記の硬化性組成物から形成される熱硬化性樹脂は、熱重量分析(TGA)を用いて測定して、少なくとも300℃の5%分解温度、Tを有し得る。その他の実施形態では、上記の硬化性組成物から形成される熱硬化性樹脂は、TGAを用いて測定して、少なくとも320℃;その他の実施形態では少なくとも330℃;その他の実施形態では少なくとも340℃;そしてなおその他の実施形態では少なくとも350℃のTを有し得る。
【0110】
上記の硬化性組成物は、基板の上に配置され、硬化され得る。一部の実施形態では、硬化性組成物を硬化又は反応させて、マレイミド−トリアジン−エポキシ組成物又はビスマレイミド−トリアジン−エポキシ組成物を形成することができる。
【0111】
その他の実施形態では、硬化性組成物は、改良された均質性安定性で、微粒子を実質的に含まくてもよい。例えば、一部の実施形態では、硬化性組成物は、下でさらに詳述されるガードナー気泡粘度チューブを用いる実験分析により測定して、一部の実施形態では少なくとも28日間、その他の実施形態では少なくとも35日間、透明かつ均質なままであり得る。
【0112】
基板
【0113】
基板又は対象は、特定の制限に制約されない。そのようなものとして、基板には、金属、例えば、ステンレス鋼、鉄、鋼、銅、亜鉛、錫、アルミニウム、アルマイト及び同類のものなど;かかる金属の合金、及びかかる金属でめっきされたシート及びかかる金属の積層されたシート、が含まれてよい。また、基板には、ポリマー、ガラス、及び様々な繊維、例えば、炭素/グラファイトなど;ホウ素;石英;アルミニウムオキシド;ガラス、例えば、Eガラス、Sガラス、S−2 GLASS(登録商標)又はCガラスなど;ならびにチタンを含有するシリコンカーバイド又はシリコンカーバイド繊維も含まれてよい。市販の繊維としては、有機繊維、例えば、KEVLARなど;アルミニウムオキシド含有繊維、例えば、3M製のNEXTEL繊維など;シリコンカーバイド繊維、例えば、日本カーボン製のNICALONなど;及びチタンを含有するシリコンカーバイド繊維、例えば、宇部製のTYRRANOなどが含まれ得る。一部の実施形態では、基板を相溶化剤でコーティングして、電気積層板組成物の基板への接着を改良することができる。
【0114】
複合材料及び被覆構造
【0115】
一部の実施形態では、本明細書に開示される硬化性組成物を硬化させることにより複合材料を形成することができる。その他の実施形態では、硬化性エポキシ樹脂組成物を基板又は補強剤に適用することにより(例えば基板又は補強剤を含浸又はコーティングすることにより)プリプレグを形成し、そのプリプレグを圧力下で硬化させて電気積層板組成物を形成することにより、複合材料を形成することができる。
【0116】
硬化性組成物が上記のように製造された後、硬化性組成物は、電気積層板組成物の硬化の前、間、又は後に、上記基板の上、中、又は間に配置されてよい。
【0117】
例えば、複合材料は、基板を硬化性組成物でコーティングすることにより形成することができる。コーティングは、様々な手順により行うことができ、それには、スプレーコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーター又はグラビアコーターによるコーティング、ブラシコーティング、及びディップもしくは浸漬コーティングが含まれる。
【0118】
様々な実施形態では、基板は、単層であっても多層であってもよい。例えば、基板は、例えば、数ある中でも、2種類の合金からなる複合材料、多層ポリマー物品、及び金属被覆されたポリマーであってよい。その他の様々な実施形態では、硬化性組成物の1又はそれ以上の層を基板の上に配置することができる。基板層と電気積層板組成物層の様々な組合せにより形成されるその他の多層複合材料も、本明細書において想定される。
【0119】
一部の実施形態では、例えば、温度感受性基板の過熱を回避するなどのために、硬化性組成物の加熱は一部分に限定されてよい。その他の実施形態では、加熱には、基板及び硬化性組成物の加熱が含まれてよい。
【0120】
本明細書に開示される硬化性組成物の硬化は、エポキシ樹脂、硬化剤、及び触媒(使用する場合)に応じて、数分から数時間の間、少なくとも約30℃、最大約250℃の温度を必要とし得る。その他の実施形態では、硬化は、少なくとも100℃の温度で、数分から数時間の間起こり得る。後処置も同様に使用してよく、かかる後処置は、通常約100℃〜250℃の間の温度である。
【0121】
一部の実施形態では、硬化は発熱を防ぐために工程的であってよい。工程分けは、例えば、ある温度での一定時間の硬化の後に、それよりも高い温度での一定時間の硬化が続くことを含む。工程的な硬化には、2又はそれ以上の硬化工程が含まれてよく、一部の実施形態では約180℃よりも低い温度で開始し、その他の実施形態では約150℃よりも低い温度で開始してよい。
【0122】
一部の実施形態では、硬化温度は、下限の30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、又は180℃から上限の250℃、240℃、230℃、220℃、210℃、200℃、190℃、180℃、170℃、160℃までの範囲であってよく、この範囲は任意の下限から任意の上限までであってよい。
【0123】
本明細書に開示される硬化性組成物は、高強度フィラメント又は繊維、例えば、炭素(グラファイト)、ガラス、ホウ素、及び同類のものなどを含有する複合材料において有用であり得る。複合材料は、複合材料の総容積に基づいて、一部の実施形態では約30%〜約70%、その他の実施形態では40%〜70%のこれらの繊維を含有することができる。
【0124】
繊維強化複合材料は、例えば、ホットメルト・プレプレッギングにより形成することができる。プレプレッギング法は、長繊維のバンド又は織物を、溶融形態の本明細書に記載される熱硬化性組成物に含浸させてプリプレグを得、それをレイアップして硬化させて繊維及びエポキシ樹脂の複合材料を得ることを特徴とする。
【0125】
その他の加工技術を使用して、本明細書に開示される硬化性組成物を含有する電気積層板複合材料を形成することができる。例えば、フィラメント・ワインディング、溶媒プレプレッギング、及び引抜成形が、硬化性組成物を使用することのできる典型的な加工技術である。さらに、束の形態の繊維を硬化性組成物でコーティングし、フィラメント・ワインディングによるなどレイアップし(laid up as by filament winding)、硬化させて複合材料を形成することができる。
【0126】
本明細書に記載される硬化性組成物及び複合材料は、接着剤、構造積層及び電気積層板、塗料、船舶用塗料、複合材料、粉末塗料、接着剤、キャスティング、航空宇宙産業用構造として、かつ、電子産業のための回路板及び同類のものとして有用であり得る。
【0127】
一部の実施形態では、硬化性組成物及び得られる熱硬化性樹脂は、様々な基板の上、中、又は間に配置されてよい複合材料、塗料、接着剤、又はシーラントで使用することができる。その他の実施形態では、硬化性組成物を基板に適用して、エポキシ系プリプレグを得ることができる。本明細書において、基板には、例えば、ガラスクロス、ガラス繊維、ガラスペーパー、紙、ならびに同様のポリエチレン及びポリプロピレンの基板が含まれる。得られるプリプレグは、所望のサイズに切断されてよい。導電層は、積層板/プリプレグの上に導電性材料によって形成することができる。本明細書において、適した導電性材料としては、導電性金属、例えば、銅、金、銀、白金及びアルミニウムなどが挙げられる。かかる電気積層板は、例えば、電気機器又は電子機器用の多層プリント回路板として使用することができる。マレイミド−トリアジン−エポキシポリマーブレンドから製造された積層板は、HDI(高密度配線)板の製造に特に有用である。HDI板の例としては、携帯電話で使用されるHDI板又はインターコネクト(IC)基板に使用されるHDI板が挙げられる。
【0128】
実施例
【0129】
試験法
【0130】
ガラス転移温度、Tは、示差走査熱量測定(DSC)により決定される(IPC法 IPC−TM−650 2.4.25)。
【0131】
5%重量損失での分解温度、Tは、窒素雰囲気下、1分当たり5℃で800℃まで傾斜させた熱量分析計(TGA)を用いて、IPC法 IPC−TM−650 2.4.24.6に従って測定される。T測定値は、5重量パーセントのサンプルが分解生成物に失われている温度である。
【0132】
硬化性組成物の安定性データは、ガードナー気泡粘度計を用いて測定する。安定性データには、粘度及び外観が含まれる;各々は、ガードナー気泡チューブ中の硬化性組成物のサンプルを密封することにより測定され得る。安定性データは、AOC法Ka6−63、ASTM D 1131、D 1545、D 1725、及びFTMS 141a法4272に従って測定される。粘度データは、気泡がガードナー気泡チューブ中のサンプルを通過して上昇するのにかかる時間を用いて測定する。粘度は、<A、A、B、C、及びDの等級で分類され、<Aは、Dよりも粘稠でない。
【0133】
サンプル調製手順は、コンデンサ、熱電対、攪拌ロッド、及び窒素入口を装備したフラスコを予熱することから始まる。成分は温度で添加され、溶融すると攪拌され得る。この温度は、維持しても上昇させてもよく、追加の成分を添加してもよい。サンプルを室温まで放冷させ、適切なサンプルホルダーに入れる。次に、サンプルで測定を行ってよい。
【0134】
積層ブランクは、次の通り作製してよい。積層ブランクは、プリプレグ(「含浸前の」複合繊維)とも呼ばれ、ゾーン温度を170℃に設定したLITZLER処理機を用いて作成される。プリプレグ粉末のストロークゲル時間を80+/−15秒に調節する。TETRAHEDRONプレスを真空下保持時間90分、220℃で用いて積層をプレスする。積層データを、IPC(IPC、米国電子回路協会(Association Connecting Electronics Industries)、以前はアメリカプリント回路工業会(Institute for Interconnecting and Packaging Electronic Circuits))標準法に従って収集する。収集した積層ブランクのデータには、T及びTが含まれる。収集したさらなるデータには、α及びα、離層までの時間、平均銅剥離強度、平均吸湿量、はんだ浸漬の間の安定性、総燃焼時間、及び難燃性が含まれる。
【0135】
銅剥離強度は、IPC法 IPC−TM−650−2.4.8Cに記載される方法を用いて測定する。
【0136】
α及びαCTE値は、約5mm×5mm×厚さ1.5mmの寸法の8層の銅張り積層板を用いて、熱機械的分析(TMA)によって収集する。TA Instruments Q400 TMAを用いて、サンプルの表面のプローブによって10℃/分で288℃までサンプルを加熱する。サンプルの膨張を測定し、T(α)よりも低くT(α)よりも高いCTE値を算出する。
【0137】
離層までの時間は、一定温度で熱機械分析装置(TMA)を用いて測定する。サンプルは、ガス状の分解生成物からの内部圧力が、マトリックスを割るか又は接着破壊/凝集破壊を引き起こすほど十分高い時に離層し、その結果生じた寸法の変化を用いてエンドポイントを決定する。離層までの時間は、IPC−TM−650−2.2.24.1に従って測定した。
【0138】
平均吸湿量は、15psiで121℃の温度で2時間のオートクレーブ曝露を用いて測定する。難燃性は、UL−94格付け法を用いて測定する。
【0139】
はんだ浸漬の間の安定性は、IPC試験法TM−650を用いて、サンプルを288℃のはんだ浸漬に曝露し、サンプルを膨れについて観察することにより測定する。
【0140】
実施例1
【0141】
コンデンサ、熱電対、攪拌ロッド、及び窒素入口を取り付けた、予熱した(120℃)250ml3口フラスコに、35.42gのD.E.R.(商標)560及び51.28gのD.E.R.(商標)592(その各々は、The Dow Chemical Company,Midland,Michiganより入手可能な臭素化エポキシ樹脂である)を充填する。窒素流を60cc/分に設定する。温度で15分後、固体エポキシ樹脂は融解し、攪拌モーターを90rpmに設定する。18.88gのCOMPIMIDE MDAB(4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタン、Degussa,GMBHより入手可能)及び6.27gのN−フェニルマレイミド(Hos−Tec,GMBHより入手可能)をフラスコに加える。温度設定を130℃に上げる。130℃で45分後、加熱源をオフにし、64.29gのメチルエチルケトンを、添加漏斗を通じてフラスコに滴下する。20mlバイアル中で、11.61gの混合物を、3.37gのPRIMASET BA−230s(0.01モル シアネートエステル、Lonza Corporationより入手可能)、及び0.04gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。得られる混合物は、暗い琥珀色で透明である。
【0142】
実施例2
【0143】
コンデンサ、熱電対、攪拌ロッド、及び窒素入口を取り付けた、予熱した(120℃)250ml3口フラスコに、35.45gのD.E.R.(商標)560及び51.43gのD.E.R.(商標)592を充填する。窒素流を60cc/分に設定する。温度で15分後、固体エポキシ樹脂は融解し、攪拌モーターを90rpmに設定する。12.44gのCOMPIMIDE MDAB及び12.42gのN−フェニルマレイミドをフラスコに加える。温度設定を130℃に上げる。130℃で45分後、加熱源をオフにし、64.29gのメチルエチルケトンを、添加漏斗を通じてフラスコに滴下する。20mlバイアル中で、11.59gの混合物を、3.4gのPRIMASET BA−230s(0.01モル シアネートエステル)、及び0.04gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。得られる混合物は、淡い琥珀色で透明である。
【0144】
実施例3
【0145】
コンデンサ、熱電対、攪拌ロッド、及び窒素入口を取り付けた、予熱した(120℃)250ml3口フラスコに、35.58gのD.E.R.(商標)560及び51.74gのD.E.R.(商標)592を充填する。窒素流を60cc/分に設定する。温度で15分後、固体エポキシ樹脂は融解し、攪拌モーターを90rpmに設定する。6.19gのCOMPIMIDE MDAB及び18.51gのN−フェニルマレイミドをフラスコに加える。温度設定を130℃に上げる。130℃で45分後、加熱源をオフにし、64.29gのメチルエチルケトンを、添加漏斗を通じてフラスコに滴下する。20mlバイアル中で、11.66gの混合物を、3.35gのPRIMASET BA−230s(0.01モル シアネートエステル)、及び0.04gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。得られる混合物は、淡い琥珀色で透明である。
【0146】
実施例4
【0147】
コンデンサ、熱電対、攪拌ロッド、及び窒素入口を取り付けた、予熱した(120℃)250ml3口フラスコに、35.45gのD.E.R.(商標)560及び51.43gのD.E.R.(商標)592を充填する。窒素流を60cc/分に設定する。温度で15分後、固体エポキシ樹脂は融解し、攪拌モーターを90rpmに設定する。12.44gのCOMPIMIDE MDAB及び12.42gのN−フェニルマレイミドをフラスコに加える。温度設定を130℃に上げる。130℃で45分後、加熱源をオフにし、64.29gのメチルエチルケトンを、添加漏斗を通じてフラスコに滴下する。20mlバイアル中で、11.98gの混合物を、4.08gのPRIMASET BA−230s(0.012モル シアネートエステル)、及び0.03gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。20mlバイアルを低速の振盪機の上に30分間置く。得られる混合物は、淡い琥珀色で透明である。
【0148】
実施例5
【0149】
コンデンサ、熱電対、攪拌ロッド、及び窒素入口を取り付けた、予熱した(120℃)250ml3口フラスコに、35.45gのD.E.R.(商標)560及び51.43gのD.E.R.(商標)592を充填する。窒素流を60cc/分に設定する。温度で15分後、固体エポキシ樹脂は融解し、攪拌モーターを90rpmに設定する。12.44gのCOMPIMIDE MDAB及び12.42gのN−フェニルマレイミドをフラスコに加える。温度設定を130℃に上げる。130℃で45分後、加熱源をオフにし、64.29gのメチルエチルケトンを、添加漏斗を通じてフラスコに滴下する。20mlバイアル中で、10.02gの混合物を、6.06gのPRIMASET BA−230s(0.018モル シアネートエステル)、及び0.03gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。20mlバイアルを低速の振盪機の上に30分間置く。得られる混合物は、淡い琥珀色で透明である。
【0150】
実施例6
【0151】
コンデンサ、熱電対、攪拌ロッド、及び窒素入口を取り付けた、予熱した(120℃)250ml3口フラスコに、35.45gのD.E.R.(商標)560及び51.43gのD.E.R.(商標)592を充填する。窒素流を60cc/分に設定する。温度で15分後、固体エポキシ樹脂は融解し、攪拌モーターを90rpmに設定する。12.44gのCOMPIMIDE MDAB及び12.42gのN−フェニルマレイミドをフラスコに加える。温度設定を130℃に上げる。130℃で45分後、加熱源をオフにし、64.29gのメチルエチルケトンを、添加漏斗を通じてフラスコに滴下する。20mlバイアル中で、7.99gの混合物を、8.11gのPRIMASET BA−230s(0.024モル シアネートエステル)、及び0.03gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。20mlバイアルを低速の振盪機の上に30分間置く。得られる混合物は、淡い琥珀色で透明である。
【0152】
実施例7
【0153】
コンデンサ、熱電対、攪拌ロッド、及び窒素入口を取り付けた、予熱した(120℃)250ml3口フラスコに、35.45gのD.E.R.(商標)560及び51.43gのD.E.R.(商標)592を充填する。窒素流を60cc/分に設定する。温度で15分後、固体エポキシ樹脂は融解し、攪拌モーターを90rpmに設定する。12.44gのCOMPIMIDE MDAB及び12.42gのN−フェニルマレイミドをフラスコに加える。温度設定を130℃に上げる。130℃で45分後、加熱源をオフにし、64.29gのメチルエチルケトンを、添加漏斗を通じてフラスコに滴下する。20mlバイアル中で、6.11gの混合物を、10.12gのPRIMASET BA−230s(0.03モル シアネートエステル)、及び0.03gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。20mlバイアルを低速の振盪機の上に30分間置く。得られる混合物は、淡い琥珀色で透明である。
【0154】
実施例8
【0155】
コンデンサ、熱電対、攪拌ロッド、及び窒素入口を取り付けた、予熱した(120℃)250ml3口フラスコに、35.42gのD.E.R.(商標)560(臭素化エポキシ樹脂)及び51.28gのD.E.R.(商標)592を充填する。窒素流を60cc/分に設定する。温度で15分後、固体エポキシ樹脂は融解し、攪拌モーターを90rpmに設定する。18.88gのCOMPIMIDE MDAB(4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタン)及び6.27gのN−フェニルマレイミドをフラスコに加える。温度設定を130℃に上げる。130℃で45分後、加熱源をオフにし、64.29gのメチルエチルケトンを、添加漏斗を通じてフラスコに滴下する。20mlバイアル中で、6.02gの混合物を、10.04gのPRIMASET BA−230s(0.03モル シアネートエステル)、及び0.03gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。20mlバイアルを低速の振盪機の上に30分間置く。得られる混合物は、暗い琥珀色で透明である。
【0156】
実施例9
【0157】
コンデンサ、熱電対、攪拌ロッド、及び窒素入口を取り付けた、予熱した(120℃)250ml3口フラスコに、35.42gのD.E.R.(商標)560(臭素化エポキシ樹脂)及び51.28gのD.E.R.(商標)592を充填する。窒素流を60cc/分に設定する。温度で15分後、固体エポキシ樹脂は融解し、攪拌モーターを90rpmに設定する。18.88gのCOMPIMIDE MDAB(4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタン)及び6.27gのN−フェニルマレイミドをフラスコに加える。温度設定を130℃に上げる。130℃で45分後、加熱源をオフにし、64.29gのメチルエチルケトンを、添加漏斗を通じてフラスコに滴下する。20mlバイアル中で、10.09gの混合物を、5.99gのPRIMASET BA−230s(0.018モル シアネートエステル)、及び0.03gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。20mlバイアルを低速の振盪機の上に30分間置く。得られる混合物は、暗い琥珀色で透明である。
【0158】
実施例10
【0159】
コンデンサ、熱電対、攪拌ロッド、及び窒素入口を取り付けた、予熱した(120℃)250ml3口フラスコに、35.58gのD.E.R.(商標)560及び51.74gのD.E.R.(商標)592を充填する。窒素流を60cc/分に設定する。温度で15分後、固体エポキシ樹脂は融解し、攪拌モーターを90rpmに設定する。6.19gのCOMPIMIDE MDAB及び18.51gのN−フェニルマレイミドをフラスコに加える。温度設定を130℃に上げる。130℃で45分後、加熱源をオフにし、64.29gのメチルエチルケトンを、添加漏斗を通じてフラスコに滴下する。20mlバイアル中で、6.01gの混合物を、10.01gのPRIMASET BA−230s(0.03モル シアネートエステル)、及び0.03gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。20mlバイアルを低速の振盪機の上に30分間置く。得られる混合物は、淡い琥珀色で透明である。
【0160】
実施例11
【0161】
コンデンサ、熱電対、攪拌ロッド、及び窒素入口を取り付けた、予熱した(120℃)250ml3口フラスコに、35.58gのD.E.R.(商標)560及び51.74gのD.E.R.(商標)592を充填する。窒素流を60cc/分に設定する。温度で15分後、固体エポキシ樹脂は融解し、攪拌モーターを90rpmに設定する。6.19gのCOMPIMIDE MDAB及び18.51gのN−フェニルマレイミドをフラスコに加える。温度設定を130℃に上げる。130℃で45分後、加熱源をオフにし、64.29gのメチルエチルケトンを、添加漏斗を通じてフラスコに滴下する。20mlバイアル中で、10.00gの混合物を、6.03gのPRIMASET BA−230s(0.018モル シアネートエステル)、及び0.03gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。20mlバイアルを低速の振盪機の上に30分間置く。得られる混合物は、淡い琥珀色で透明である。
【0162】
比較例1
【0163】
23.58g(エポキシ0.0519モル)のD.E.R.(商標)560、34.38g(エポキシ0.0955モル)のD.E.R.(商標)592、16.89g(マレイミド0.0938モル)のCOMPIMIDE MDAB及び42.85gのメチルエチルケトンを、8オンスの細口ガラスジャーに加える。ジャーを、約300rpmの中速のローラーの上に一晩置く。得られる混合物は、淡黄色の濁った外観を示す。20mlバイアル中で、11.65gの混合物を、3.35gのPRIMASET BA−230s(0.01モル シアネートエステル)、及び0.02gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。ブレンドした系を振盪機の上に30分間置く。
【0164】
比較例2
【0165】
23.73gのD.E.R.(商標)560、34.11gのD.E.R.(商標)592、16.34gのN−フェニルマレイミド、及び42.88gのメチルエチルケトンを、8オンスの細口ガラスジャーに加える。ジャーを約300rpmの中速のローラーの上に1.5時間置く。得られる混合物は、淡黄色の透明な外観を示す。20mlバイアル中で、11.65gの混合物を、3.38gのPRIMASET BA−230s(0.01モル シアネートエステル)、及び0.02gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。ブレンドした系を振盪機の上に30分間置く。
【0166】
比較例3
【0167】
28.32gのD.E.R.(商標)560、41.22gのD.E.R.(商標)592、及び42.88gのメチルエチルケトンを、8オンスの細口ガラスジャーに加える。ジャーを約300rpmの中速のローラーの上に1.5時間置く。得られる混合物は、淡黄色の透明な外観を示す。20mlバイアル中で、11.00gの混合物を、4.0gのPRIMASET BA−230s(0.011モル シアネートエステル)、及び0.02gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。ブレンドした系を振盪機の上に30分間置く。
【0168】
比較例4
【0169】
23.61gのD.E.R.(商標)560、34.27gのD.E.R.(商標)592、12.58gのCOMPIMIDE MDAB、4.19gのN−フェニルマレイミド、及び42.87gのメチルエチルケトンを、8オンスの細口ガラスジャーに加える。ジャーを約300rpmの中速のローラーの上に5時間置く。得られる混合物は、淡黄色の濁った外観を示す。20mlバイアル中で、11.66gの混合物を、3.33gのPRIMASET BA−230s(0.01モル シアネートエステル)、及び0.03gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。ブレンドした系をローラーの上に60分間置く。
【0170】
比較例5
【0171】
23.83gのD.E.R.(商標)560、34.81gのD.E.R.(商標)592、4.11gのCOMPIMIDE MDAB、12.34gのN−フェニルマレイミド、及び42.86gのメチルエチルケトンを、8オンスの細口ガラスジャーに加える。ジャーを約300rpmの中速のローラーの上に5時間置く。得られる混合物は、淡黄色の濁った外観を示す。20mlバイアル中で、11.95gの混合物を、3.35gのPRIMASET BA−230s(0.01モル シアネートエステル)、及び0.03gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。ブレンドした系をローラーの上に60分間置く。
【0172】
比較例6
【0173】
23.78gのD.E.R.(商標)560、34.25gのD.E.R.(商標)592、8.29gのCOMPIMIDE MDAB、8.31gのN−フェニルマレイミド、及び42.86gのメチルエチルケトンを、8オンスの細口ガラスジャーに加える。ジャーを約300rpmの中速のローラーの上に5時間置く。得られる混合物は、淡黄色の濁った外観を示す。20mlバイアル中で、11.66gの混合物を、3.38gのPRIMASET BA−230s(0.01モル(mot) シアネートエステル)、及び0.03gのZnヘキサノエートのメチルエチルケトン中5%溶液とブレンドする。ブレンドした系をローラーの上に60分間置く。
【0174】
実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【表1】

【0175】
比較例1は、4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタン(MDAB)を室温で添合した基準配合物(baseline formulation)である。シアネートエステル成分の添加の後に、得られる配合物は、MDABが懸濁液に組み込まれていることに起因して、黄色い濁った混合物である。ベースラインTターゲットは223℃であり、ベースラインTターゲットは320℃である。
【0176】
比較例2では、MDABはフェニルマレイミドに置き換えられ、室温でブレンドされる。シアネートエステルの添加の後に得られる配合物は、透明かつ均質であるが、199℃のTは、ベースラインTよりも約24℃低い。その上、TはベースラインTよりも低い。
【0177】
比較例3は、マレイミド成分を含まず、室温でブレンドされる。シアネートエステルの添加の後に得られる配合物は、透明であるが、Tは193℃であり、ベースラインTよりも30℃低い。Tも同様にベースラインTより低い。
【0178】
比較例4は、MDAB:PMIの3:1ブレンドを含み、室温でブレンドされる。シアネートエステルの添加の後に得られる配合物は、黄色い濁った溶液である。215℃のTはベースラインTよりもわずかに低いが、TはベースラインTと同等である。
【0179】
比較例5は、MDAB:PMIの1:1ブレンドを含む。シアネートエステルの添加の後に得られる配合物は、黄色い濁った溶液である。212℃のTはベースラインTよりも約11℃低いが、Tは320℃である。
【0180】
比較例6は、MDAB:PMIの1:3ブレンドを含む。Tは206℃であり、ベースラインTよりも17℃低い。その上、Tは317℃である。
【0181】
実施例1は、比較例4と同じ構成成分比を含むが、マレイミド成分は、130℃の高温で組み込まれる。シアネートエステルの添加の後に得られる配合物は、微粒子を含まない透明な暗琥珀色の溶液である。217℃のTはベースラインの223℃よりもわずかに低い。Tは319℃である。
【0182】
実施例2は、比較例5と同じ構成成分比を含むが、マレイミド成分は、130℃の高温で組み込まれる。シアネートエステルの添加の後に得られる配合物は、微粒子を含まない透明な暗琥珀色の溶液である。213℃のTは10℃である。これは223℃のベースラインよりも低い。Tは320℃である。
【0183】
実施例3は、比較例6と同じ構成成分比を含むが、マレイミド成分は、130℃の高温で組み込まれる。シアネートエステルの添加の後に得られる配合物は、微粒子を含まない透明な暗琥珀色の溶液である。204℃のTは19℃である。これは223℃のベースラインよりも低い。Tは318℃である。
【0184】
実施例4〜11は、実施例1及び上記に概説した組込み手順を利用する。実施例4は、実施例1に含まれるモル比と同じマレイミドとエポキシ成分のモル比を含む。シアネートエステルのモル比を調節して、T及びTへの影響を特定する。シアネートエステル成分の添加の後に得られる配合物は、微粒子を含まない透明な暗琥珀色の溶液である。217℃のTは223℃のベースラインよりも低い。その上、Tは320℃である。
【0185】
実施例5は、実施例1に含まれるモル比と同じマレイミドとエポキシ成分のモル比を含む。シアネートエステルのモル比を調節して、T及びTへの影響を特定する。シアネートエステル成分の添加の後に得られる配合物は、微粒子を含まない透明な暗琥珀色の溶液である。226℃のTは、223℃のベースラインよりも高い。その上、Tは321℃である。
【0186】
実施例6は、実施例1に含まれるモル比と同じマレイミドとエポキシ成分のモル比を含む。シアネートエステルのモル比を調節して、T及びTへの影響を特定する。シアネートエステル成分の添加の後に得られる配合物は、微粒子を含まない透明な暗琥珀色の溶液である。238℃のTは、223℃のベースラインよりも高い。その上、Tは322℃である。
【0187】
実施例7は、実施例1に含まれるモル比と同じマレイミドとエポキシ成分のモル比を含む。シアネートエステルのモル比を調節して、T及びTへの影響を特定する。シアネートエステル成分の添加の後に得られる配合物は、微粒子を含まない透明な暗琥珀色の溶液である。252℃のTは、223℃のターゲットよりも高い。その上、Tは325℃である。
【0188】
実施例8は、実施例2に含まれるモル比と同じマレイミドとエポキシ成分のモル比を含む。シアネートエステルのモル比を調節して、T及びTへの影響を特定する。シアネートエステル成分の添加の後に得られる配合物は、微粒子を含まない透明な暗琥珀色の溶液である。256℃のTは、223℃のベースラインよりも高い。その上、Tは326℃である。
【0189】
実施例9は、実施例2に含まれるモル比と同じマレイミドとエポキシ成分のモル比を含む。シアネートエステルのモル比を調節して、T及びTへの影響を特定する。シアネートエステル成分の添加の後に得られる配合物は、微粒子を含まない透明な暗琥珀色の溶液である。232℃のTは、223℃のベースラインよりも高い。その上、Tは320℃である。
【0190】
実施例10は、実施例3に含まれるモル比と同じマレイミドとエポキシ成分のモル比を含む。シアネートエステルのモル比を調節して、T及びTへの影響を特定する。シアネートエステル成分の添加の後に得られる配合物は、微粒子を含まない透明な暗琥珀色の溶液である。251℃のTは、223℃のベースラインよりも高い。その上、Tは326℃である。
【0191】
実施例11は、実施例3に含まれるモル比と同じマレイミドとエポキシ成分のモル比を含む。シアネートエステルのモル比を調節して、T及びTへの影響を特定する。シアネートエステル成分の添加の後に得られる配合物は、微粒子を含まない透明な暗琥珀色の溶液である。Tは222℃である。その上、Tは319℃である。
【0192】
粘度及び外観安定性データを、選択した実施例について収集し、表2に表す。
【表2】

【0193】
各々の配合物のサンプルを、触媒を含まずにガードナー気泡粘度チューブに加え、粘度及び外観データを収集する。表2のデータは、サンプルの外観及び粘度安定性のばらつきを示す。外観安定性は22から49日まで変動する。
【0194】
以下の配合に従って、MDAB:PMIの重量比が60:40、ならびにマレイミド及びエポキシ対シアネートエステルの重量比が2:1についての例示的な実施形態が生成される。
【表3】

【0195】
構成成分は、固体72重量パーセントのメチルエチルケトン中である。例示的な実施形態は、226℃のT及び321℃のTを示し、その一方で室温で4週間以上均質性を維持した。
【0196】
積層サンプルを、例示的な実施形態の配合物及び比較例1の配合物を用いて調製する。データは下に表3中に示す。
【表4】

【0197】
データは、MDAB:PMIブレンドが、懸濁液中のMDAB及びマレイミドを含まないサンプルよりも改良された性能をもたらしたことを示す。
【0198】
上記のように、本明細書に開示される硬化性組成物には、マレイミド成分、エポキシ樹脂成分、シアネートエステル成分、及び任意選択の成分、例えば、触媒、ハードナー、又は硬化剤などが含まれる。有利には、本明細書に開示される実施形態は、粒状物質が少なく、改良された透明度を有する組成物を提供することができる。その他の利点としては、改良された均質性及び/又は改良された均質性の安定性を有することを挙げることができる。さらなる利点としては、1又はそれ以上の改良された使い易さ及び維持性、又は主要な性能特性、例えば、ガラス転移温度及び分解温度などの改良を挙げることができる。
【0199】
本発明を限定された数の実施形態に関して説明してきたが、本開示の利益を有する当業者は、本明細書に開示される本発明の範囲から逸脱しないその他の実施形態を考案することができることを理解するであろう。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と少なくとも1種のビスマレイミドを含むマレイミド成分とを約50℃〜約250℃の範囲の温度で添合する工程;及び
シアネートエステル成分を前記エポキシ−マレイミド添加物に添合して均質な溶液を形成する工程
を含む、硬化性組成物を形成するための方法。
【請求項2】
前記マレイミド成分が、フェニルマレイミド及び4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フェニルマレイミド対前記4,4−ビスマレイミド−ジフェニルメタンの重量比が、95:5〜5:95の範囲内である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フェニルマレイミド対前記4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンの重量比が、25:75〜75:25の範囲内である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記フェニルマレイミド対前記4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンの重量比が、65:35〜35:65の範囲内である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記シアネートエステル成分が、シアネートエステル及び部分的に三量体化したシアネートエステルの少なくとも1種を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記均質な溶液中の前記マレイミド成分対前記エポキシ樹脂対前記シアネートエステル成分のモル比が、90:5:5〜5:90:5〜5:5:90の範囲内であり、前記モル比が前記それぞれの成分の前記官能基に基づく、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記均質な溶液中の前記マレイミド成分対前記エポキシ樹脂対前記シアネートエステル成分のモル比が、30:20:50〜50:30:20〜20:50:30の範囲内であり、前記モル比が前記それぞれの成分の前記官能基に基づく、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種のビスマレイミドを含むマレイミド成分と、
シアネートエステル成分と、
エポキシ樹脂と、
を含む硬化性組成物であって、前記硬化性組成物が均質な溶液である、硬化性組成物。
【請求項10】
前記マレイミド成分が、フェニルマレイミド及び4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンを含む、請求項9に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記フェニルマレイミド対前記4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンの重量比が、95:5〜5:95の範囲内である、請求項10に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記フェニルマレイミド対前記4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンの重量比が、25:75〜75:25の範囲内である、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記シアネートエステル成分が、シアネートエステル及び部分的に三量体化したシアネートエステルの少なくとも1種を含む、請求項9から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記均質な溶液中の前記マレイミド成分対前記エポキシ樹脂対前記シアネートエステル成分のモル比が、90:5:5〜5:90:5〜5:5:90の範囲内であり、前記モル比が前記それぞれの成分の前記官能基に基づく、請求項9から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記均質な溶液中の前記マレイミド成分対前記エポキシ樹脂対前記シアネートエステル成分のモル比が、30:20:50〜50:30:20〜20:50:30の範囲内であり、前記モル比が前記それぞれの成分の前記官能基に基づく、請求項9から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が少なくとも28日間均質な溶液のままであり、溶液安定性がガードナー気泡粘度計を用いて測定される、請求項9から15のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
請求項9から16のいずれか一項に記載の前記硬化性組成物を含む電気積層板で使用するためのラッカー。
【請求項18】
シアネートエステルとエポキシ樹脂と少なくとも1種のビスマレイミドを含むマレイミド成分とを含む、均質な硬化性組成物の反応生成物
を含む、熱硬化性組成物。
【請求項19】
前記マレイミド成分が、フェニルマレイミド及び4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンを含む、請求項18に記載の熱硬化性組成物。
【請求項20】
前記フェニルマレイミド対前記4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンの重量比が、95:5〜5:95の範囲内である、請求項19に記載の熱硬化性組成物。
【請求項21】
前記フェニルマレイミド対前記4,4’−ビスマレイミド−ジフェニルメタンの重量比が、25:75〜75:25の範囲内である、請求項19に記載の熱硬化性組成物。
【請求項22】
前記シアネートエステル成分が、シアネートエステル及び部分的に三量体化したシアネートエステルの少なくとも1種を含む、請求項18から21のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項23】
前記均質な溶液中の前記マレイミド成分対前記エポキシ樹脂対前記シアネートエステル成分のモル比が、90:5:5〜5:90:5〜5:5:90の範囲内であり、前記モル比が前記それぞれの成分の前記官能基に基づく、請求項17から22のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項24】
前記均質な溶液中の前記マレイミド成分対前記エポキシ樹脂対前記シアネートエステル成分のモル比が、30:20:50〜50:30:20〜20:50:30の範囲内であり、前記モル比が前記それぞれの成分の前記官能基に基づく、請求項17から23のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項25】
前記熱硬化性組成物が、
示差走査熱量測定により測定される、少なくとも210℃のガラス転移温度、及び、
熱重量測定分析により測定される、少なくとも300℃の5%分解温度
を有する、請求項17から24のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項26】
請求項17から25のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物を含む複合材料。
【請求項27】
複合材料を形成するための方法であって、
第1の基板を硬化性組成物で含浸する工程であって、前記硬化性組成物が、
少なくとも1種のビスマレイミドを含むマレイミド成分と、
シアネートエステル成分と、
エポキシ樹脂と
を含み、前記硬化性組成物が均質な溶液である、工程、
前記硬化性組成物を少なくとも一部分硬化させてプリプレグを形成する工程、
前記プリプレグを第2の基板の上に配置する工程、及び
前記プリプレグを硬化させて電気積層板を形成する工程
を含む、方法。
【請求項28】
前記第2の基板が導電性である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記エポキシ樹脂と少なくとも1種のビスマレイミドを含む前記マレイミド成分とを約50℃〜約250℃の範囲の温度で添合する工程、及び
前記シアネートエステル成分を前記エポキシ−マレイミド添加物と添合して前記硬化性組成物を形成する工程
をさらに含む、請求項27又は請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記硬化性組成物が、硬化させると、
示差走査熱量測定により測定される、少なくとも210℃のガラス転移温度、及び、
熱重量測定分析により測定される、少なくとも300℃の5%分解温度
を有する、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−512312(P2012−512312A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542286(P2011−542286)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/067753
【国際公開番号】WO2010/075006
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】