説明

電気設備のモニタリングシステム

【課題】絶縁碍子の表面におけるコロナ放電の異常発生を長期間に亘って安定して検出可能な電気設備のモニタリングシステムを提供する。
【解決手段】この電気設備のモニタリングシステムは、絶縁碍子100の表面におけるコロナ放電に伴って発生する紫外線を受光可能な位置に設けられ、その紫外線を真空紫外線領域で検知する材料からなる検知部22と、検知部22によって検知された紫外線の強度に応じた電気信号を出力する出力部24とを有する紫外線センサ16と、紫外線センサ16の出力部24から出力される電気信号に基づいて絶縁碍子100の表面におけるコロナ放電の異常発生の有無を判断する中央演算システム58とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気設備のモニタリングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、送電線を通じて電力を輸送する電気設備では、送電線が絶縁碍子を介して鉄塔に支持されている。このような電気設備が海から近い場所に設置されている場合には、飛来した海水が絶縁碍子の表面に付着し、その表面に塩分が堆積する場合がある。絶縁碍子の表面に塩分が堆積すると、送電線に印加される高電圧に起因して前記塩分の堆積部付近に強電界が発生し、その強電界によって絶縁碍子の表面にコロナ放電が誘発されやすくなる。
【0003】
コロナ放電は、広い周波数帯域の電磁波及び音波を発生させ、周辺の生活環境に電波障害や騒音等の悪影響が及ぼされる虞がある。また、コロナ放電の強度が増大すると局部アークが生じるとともに、この局部アークが連接された絶縁碍子全体で繋がって絶縁不良が生じ、地絡障害が引き起こされる虞もある。このため、絶縁碍子においてコロナ放電が異常発生、すなわち所定強度以上のコロナ放電が所定時間以上発生している場合には、絶縁碍子の交換や洗浄等のメンテナンスを行い、上記のような不都合な事態を解消することが行われている。そして、この場合には、絶縁碍子の表面におけるコロナ放電の異常発生の有無を監視することが必要となり、そのような監視を行うためのモニタリングシステムが種々提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、太陽光に含まれない領域の紫外線を検出する紫外線センサを備えた紫外線検出装置を用いて、碍子装置における放電現象の際に発生する閃光の紫外線を検出するモニタリングシステムが示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、紫外線カメラにより絶縁碍子の紫外線画像を撮影するとともに、可視光カメラにより絶縁碍子の可視光画像を撮影し、これら両画像を画像解析することによってコロナ放電の発生を検出するモニタリングシステムが示されている。
【特許文献1】特開平5−149991号公報
【特許文献2】特開2006−10365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のモニタリングシステムに用いられる紫外線センサでは、可視光や赤外線等の影響を排除するためのバンドパスフィルタが設けられているのが一般的である。しかしながら、このようなバンドパスフィルタは、紫外線に対して脆弱であるため変質が避けられず、短時間で劣化する。このため、このようなバンドパスフィルタを備える紫外線センサを用いたモニタリングシステムでは、長期間に亘って絶縁碍子の表面におけるコロナ放電の異常発生を監視する場合、バンドパスフィルタの劣化に起因して紫外線センサの紫外線の検出精度が低下し、コロナ放電の異常発生の検出を安定して行えなくなる虞がある。
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、絶縁碍子の表面におけるコロナ放電の異常発生を長期間に亘って安定して検出可能な電気設備のモニタリングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による電気設備のモニタリングシステムは、電気設備の絶縁碍子の表面において発生するコロナ放電を監視するための電気設備のモニタリングシステムであって、前記コロナ放電に伴って発生する紫外線を受光可能な位置に設けられ、その紫外線を真空紫外線領域で検知する材料からなる検知部と、前記検知部によって検知された紫外線の強度に応じた電気信号を出力する出力部とを有する紫外線センサと、前記紫外線センサの出力部から出力される電気信号に基づいて前記絶縁碍子の表面におけるコロナ放電の異常発生の有無を判断する監視部とを備えている。
【0009】
この電気設備のモニタリングシステムでは、紫外線センサの検知部がコロナ放電に伴って発生する紫外線を真空紫外線領域で検知する材料からなるため、バンドパスフィルタを設けなくても可視光や赤外線等の影響を受けることなく、検知部によって絶縁碍子の表面において発生するコロナ放電に起因する紫外線を直接検出することができる。これにより、バンドパスフィルタの劣化に起因して紫外線センサの紫外線の検出精度が低下するといった不都合な事態が生じることなく、コロナ放電に伴って発生する紫外線の検出を長期間に亘って安定した精度で検出することができる。従って、この電気設備のモニタリングシステムでは、絶縁碍子の表面におけるコロナ放電の異常発生を長期間に亘って安定して検出することができる。
【0010】
上記電気設備のモニタリングシステムにおいて、前記検知部の材料は、約180nm以上約200nm以下の波長領域に感度を有する材料であるのが好ましい。
【0011】
絶縁碍子の表面におけるコロナ放電に起因して発生する紫外線は、その大部分が約180nm〜約200nmの波長領域内のものであることが判っている。このため、上記構成のように前記検知部の材料が約180nm以上約200nm以下の波長領域に感度を有する材料であれば、紫外線センサにおいて前記コロナ放電に起因する紫外線を良好な精度で検出することができる。
【0012】
上記電気設備のモニタリングシステムにおいて、前記検知部の材料は、ダイヤモンドであるのが好ましい。
【0013】
電気設備の絶縁碍子は、長期に亘って繰り返される温度変化や、送電線に印加される高電圧に起因して発生する電磁波に曝される等、過酷な環境下に設置されるため、この絶縁碍子におけるコロナ放電を検出する紫外線センサにも、そのような過酷な環境に耐え得る高い環境性能が要求される。一方、ダイヤモンドは、長期に亘って繰り返される温度変化や、送電線に印加される高電圧に起因して生じる電磁波に対して高い耐久性を有する。このため、上記構成のように前記検知部の材料をダイヤモンドにすれば、絶縁碍子のコロナ放電を監視する紫外線センサに要求される高い耐環境性能を得ることができる。また、ダイヤモンドは、約180nm以上約200nm以下の波長領域に感度のピークを有するため、この構成のように検知部の材料をダイヤモンドとすることにより、前記コロナ放電に起因する紫外線を良好な精度で検出することができる。従って、この構成では、紫外線センサに高い耐環境性能を具備させながら、前記コロナ放電に起因する紫外線を良好な精度で検出することができる。
【0014】
上記電気設備のモニタリングシステムにおいて、前記監視部は、前記紫外線センサの出力部から出力される電気信号について予め設定された第1判別条件を記憶しており、前記紫外線センサの出力部から出力される電気信号が前記第1判別条件を満たしたことに基づいて前記絶縁碍子の表面でコロナ放電が異常発生したと判断するのが好ましい。
【0015】
このように構成すれば、コロナ放電の異常発生に該当する第1判別条件を予め設定し、その第1判別条件に基づいて絶縁碍子の表面におけるコロナ放電の異常発生の有無を判断することができるので、より正確に前記コロナ放電の異常発生の有無を判断することができる。
【0016】
この場合において、前記紫外線センサは、前記絶縁碍子の周囲に複数設けられ、前記監視部は、前記各紫外線センサの出力部から出力される電気信号のうち前記第1判別条件を満たしたものを特定することにより前記絶縁碍子のうちコロナ放電が異常発生している箇所を特定するのが好ましい。
【0017】
このように構成すれば、絶縁碍子のうちコロナ放電が異常発生している箇所を特定することができ、その特定した箇所のみを交換又はメンテナンスすることによりコロナ放電の異常発生を解消することができるので、絶縁碍子全体を交換又はメンテナンスする場合に比べて作業負担を軽減することができる。
【0018】
前記監視部が、紫外線センサからの電気信号が第1判別条件を満たしたことに基づいてコロナ放電の異常発生を判断する構成において、前記絶縁碍子の表面の赤外線画像を撮影して前記絶縁碍子の表面の温度分布を検出する赤外線検出部を備え、前記監視部は、前記赤外線検出部によって検出される前記絶縁碍子の表面の温度分布について予め設定された第2判別条件を記憶しており、前記紫外線センサの出力部から出力される電気信号が前記第1判別条件を満たし、かつ、前記赤外線検出部によって検出される前記絶縁碍子の表面の温度分布が前記第2判別条件を満たしたことに基づいて前記絶縁碍子の表面でコロナ放電が異常発生したと判断するのが好ましい。
【0019】
絶縁碍子は、熱伝導率が小さいため、絶縁碍子の表面においてコロナ放電が発生すると、その発生部付近の絶縁碍子の表面温度が局所的に上昇する。このため、上記のように紫外線センサから出力される電気信号に加えて、赤外線検出部によって検出される絶縁碍子の表面の温度分布のデータにも基づいて絶縁碍子の表面におけるコロナ放電の異常発生の有無を判断すれば、さらに正確に前記コロナ放電の異常発生の有無を判断することができる。
【0020】
この場合において、前記監視部は、前記赤外線検出部によって検出される前記絶縁碍子の表面の温度分布のデータに基づいて前記絶縁碍子のうちコロナ放電が異常発生している箇所を特定するのが好ましい。
【0021】
このように構成すれば、絶縁碍子のうちコロナ放電が異常発生している箇所を特定することができ、その特定した箇所のみを交換又はメンテナンスすることによりコロナ放電の異常発生を解消することができるので、絶縁碍子全体を交換又はメンテナンスする場合に比べて作業負担を軽減することができる。
【0022】
前記赤外線検出部を備える構成において、前記赤外線検出部によって検出された前記絶縁碍子の表面の温度分布のデータを前記監視部へ無線で送信する温度データ送信部を備えるのが好ましい。
【0023】
このように構成すれば、絶縁碍子及び赤外線検出部が設置された現場から離れた場所に設置された監視部において、絶縁碍子の表面の温度分布の変化を遠隔監視することができる。これにより、絶縁碍子表面の温度分布の変化の監視に要する作業負担を軽減することができる。
【0024】
上記電気設備のモニタリングシステムにおいて、前記紫外線センサから出力された電気信号を前記監視部へ無線で送信する紫外線信号送信部を備えるのが好ましい。
【0025】
このように構成すれば、監視部を絶縁碍子及び紫外線センサが設置された現場から離れた場所に設置して、絶縁碍子の表面におけるコロナ放電の異常発生を遠隔監視することができる。これにより、前記コロナ放電の異常発生を絶縁碍子が設置された現場に赴いて確認する作業を行わなくてもよいので、前記コロナ放電の監視に要する作業負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、絶縁碍子の表面におけるコロナ放電の異常発生を長期間に亘って安定して検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態による電気設備のモニタリングシステムの概略図である。図2は、図1に示したモニタリングシステムの詳細な構成を説明するためのブロック図である。図3は、図1に示したモニタリングシステムの紫外線検出装置2に用いる紫外線センサ16の側面図である。まず、図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態による電気設備のモニタリングシステムの構成について説明する。
【0029】
本実施形態による電気設備のモニタリングシステムは、送電線を鉄塔に対して支持する絶縁碍子100の表面におけるコロナ放電の異常発生の有無を監視するものである。ここで、コロナ放電の異常発生とは、所定強度以上のコロナ放電が所定時間以上、継続的もしくは断続的に発生している状態をいい、非常に短時間で単発的なコロナ放電の発生は含まない概念である。絶縁碍子100の表面において発生するコロナ放電は、絶縁碍子100の表面に海から飛来した海水や雨水、その他種々の塵埃等に起因するアルカリ金属成分、水分又は有機物等が付着し、その付着部付近に前記送電線に印加される高電圧により電界集中が生じることによって誘起される。本実施形態のモニタリングシステムでは、絶縁碍子100の表面において所定時間以上、継続的もしくは断続的にコロナ放電が異常発生するのを検出することによって、そのようなコロナ放電の異常発生を解消するために絶縁碍子100の交換又は洗浄等のメンテナンスが必要であることを検知する。
【0030】
そして、前記コロナ放電が発生することにより周辺の大気に含まれる窒素が電離し、それに伴って大部分が約180nm〜約200nmの狭い波長領域内の紫外線が発生する。本実施形態のモニタリングシステムでは、この紫外線を検出することにより絶縁碍子100の表面におけるコロナ放電の異常発生を検出する。
【0031】
具体的には、本実施形態によるモニタリングシステムは、図1に示すように、複数の紫外線検出装置2と、複数の赤外線検出装置4と、中継局6と、基地局8とによって構成されている。
【0032】
前記複数の紫外線検出装置2は、前記コロナ放電に伴って生じる紫外線を検出するものである。この紫外線検出装置2は、送電線を支持する図略の鉄塔に固定されている。前記絶縁碍子100は、特定方向に連接された複数の碍子体100aからなる。そして、複数の紫外線検出装置2は、絶縁碍子100の周囲に配置されている。すなわち、紫外線検出装置2は、絶縁碍子100の表面でのコロナ放電に伴って生じる紫外線を受光可能に配置されており、碍子体100aの連接方向に所定間隔で配置されているとともに、絶縁碍子の周方向に所定間隔で配置されている。そして、各紫外線検出装置2は、絶縁碍子100の表面から100mm以下、好ましくは30mm以下の距離を隔てて配置されている。これにより、前記コロナ放電に伴って生じる紫外線が空気中で減衰しすぎる前に各紫外線検出装置2の後述する紫外線センサ16に入射するように構成されている。そして、各紫外線検出装置2は、図1及び図2に示すように、入射部14と、紫外線センサ16と、増幅器18と、紫外線信号送信部20とを有する。
【0033】
前記入射部14は、前記コロナ放電に伴って生じる紫外線を前記紫外線センサ16に入射させる部分である。この入射部14は、前記絶縁碍子100へ向かって延びる筒体からなる。この入射部14内に前記紫外線センサ16が設けられており、当該入射部14内を通って前記コロナ放電に伴って生じる紫外線が紫外線センサ16に入射するようになっている。
【0034】
前記紫外線センサ16は、入射する紫外線の強度を検出するものである。この紫外線センサ16の前記絶縁碍子100側には図略の紫外線透過窓が設置されており、この紫外線透過窓を透過して紫外線が紫外線センサ16に入射する。そして、紫外線センサ16は、図3に示すように、検知部22と、基板23と、出力部24と、マウント26とを有する。
【0035】
前記検知部22は、前記コロナ放電に伴って発生する紫外線を受光可能な位置に設けられており、受光した紫外線を検知するものである。この検知部22は、前記基板23上に形成されているとともに、この基板23と検知部22が一体となったものが前記マウント26上に搭載されている。そして、この検知部22は、前記コロナ放電に伴って発生する紫外線を真空紫外線領域(約200nm以下の波長領域)で検知するダイヤモンドからなる。
【0036】
具体的には、ダイヤモンドからなる検知部22は、図4に示すように、約140nm以上約227nm以下の波長領域に感度を有し、その中でも約180nm以上約200nm以下の波長領域に感度のピークを有する。すなわち、この検知部22が感度のピークを有する波長領域は、前記コロナ放電によって発生する紫外線の大部分の波長領域(約180nm〜約200nm)と合致する。
【0037】
ところで、従来、蛍光ガラスセンサやシリコンフォトダイオード等からなる紫外線センサ等の種々の紫外線センサが知られているが、このような紫外線センサは、前記約180nm〜約200nmの波長領域に感度のピークを有していない。従って、本実施形態の紫外線センサ16は、このような従来の紫外線センサに比べて、前記コロナ放電に伴って発生する紫外線を良好な精度で検出可能であり、前記コロナ放電の検知に好適である。
【0038】
また、絶縁碍子100は、長期に亘って繰り返される温度変化や、送電線に高電圧が印加されることによって発生する電磁波に曝される等、過酷な環境下に設置されている。前記検知部22の材料のダイヤモンドは、そのような温度変化や電磁波に対して高い耐久性を有しており、前記過酷な環境下に設置される絶縁碍子100で発生するコロナ放電を監視するのに耐環境性の観点からも好適である。
【0039】
そして、検知部22を構成するダイヤモンド層は、マイクロ波CVD法によってシリコンからなる基板23の表面に蒸着形成されるものである。具体的には、市販の単結晶シリコン基板(面方位[100])の鏡面に研磨した表面を予めアセトン、エタノール、純水で洗浄し、そのシリコン基板をCVD反応器内に設置する。次に、CVD反応器内を真空排気した上で、そのCVD反応器内をメタン含有ガス(水素希釈濃度0.5〜5体積%)で1×10Pa〜3×10Paとなるように満たし、マイクロ波投入電力と基板支持台温度制御器(ヒータ)を調整してシリコン基板温度を1000〜1100℃に保ちつつ、シリコン基板に対して−50〜−350Vの直流バイアス電圧を印加して2〜20分間保持する。次に、バイアス電圧の印加を停止し、前記CVD反応器内のガス圧を4×10〜1.5×10Paに上げて、ダイヤモンド層の成膜を継続して行う。このようにして、単結晶シリコン基板の結晶方位を受け継いだ膜厚5〜10μmの配向性ダイヤモンド薄膜が形成される。
【0040】
配向性ダイヤモンド薄膜は、ダイヤモンド結晶粒界の密度が小さいので、後述するように紫外線の受光によってダイヤモンドからなる検知部22が生成する電荷(電子と正孔)が効率よく表面電極32a,32bに到達する。このため、感度の良い紫外線センサ16を形成することができる。また、配向性ダイヤモンド薄膜は、表面平坦性も優れているので、その表面に後述するように表面電極32a,32bを形成する際、微細な表面電極32a,32bのパターンを歩留まり良く、換言すれば断線や導通部が生じるのを抑制しながら形成することができる。
【0041】
前記出力部24は、前記検知部22によって検知された紫外線の強度に応じた電気信号を出力する部分である。この出力部24は、一対の表面電極32a,32bと、一対の端子34a,34bと、一対の配線36a,36bとを有する。
【0042】
前記一対の表面電極32a,32bは、前記検知部22の表面上に互いに所定の間隙を隔てて形成されている。前記一対の端子34a,34bは、前記マウント26に設けられている。そして、一方の表面電極32aと一方の端子34aとが配線36aにより電気的に接続されているとともに、他方の表面電極32bと他方の端子34bとが配線36bにより電気的に接続されている。前記端子34a,34bには、図略の電源が電気的に接続されており、その電源から両端子34a,34bにバイアス電圧が印加されるようになっている。
【0043】
そして、紫外線センサ16は光伝導型と呼ばれる原理で動作する。具体的には、紫外線センサ16では、表面電極32a,32b間の間隙を通って検知部22に紫外線が入射することにより、この検知部22において電子と正孔とが生成される。この際、検知部22では、受光した紫外線の強度に応じた量の電荷(電子及び正孔)が生成される。すなわち、受光した紫外線の強度が大きい場合には、生成される電荷量が増加する一方、受光した紫外線の強度が小さい場合には、生成される電荷量が減少する。従って、紫外線センサ16では、紫外線が入射していない時には検知部22の電気抵抗が非常に大きく、表面電極32a,32b間に電流が流れない。一方、紫外線が入射すると検知部22の電気抵抗が低下して表面電極32a,32b間に電流が流れ、さらに紫外線の強度が増大するに連れて表面電極32a,32b間に流れる電流が増加する。
【0044】
そして、上記のように端子34a,34bにバイアス電圧が印加されることによって、その端子34a,34bから配線36a,36b及び表面電極32a,32bを通じて検知部22にバイアス電圧が印加され、前記生成された電荷が集められる。その集められた電荷は、電気信号として紫外線センサ16の出力部24から前記増幅器18へ出力される。この出力される電気信号の強度は、前記検知部22により生成された電荷量、換言すれば前記表面電極32a,32b間に流れる電流の大きさに対応しているとともに、紫外線センサ16に入射する紫外線の強度に比例するので、この電気信号の強度から紫外線の強度が判る。
【0045】
前記増幅器18は、紫外線センサ16の出力部24と電気的に接続されているとともに、前記紫外線信号送信部20と電気的に接続されており、紫外線センサ16の出力部24から出力された電気信号を増幅して紫外線信号送信部20に送るものである。
【0046】
前記紫外線信号送信部20は、増幅器18から送られた電気信号を前記中継局6を介して前記基地局8の後述する中央演算システム58へ無線で送信するものである。この紫外線信号送信部20は、発信器20aと送信アンテナ20bとによって構成されており、発信器20aによって送信アンテナ20bから前記電気信号が前記中継局6へ向かって無線送信される。なお、送信アンテナ20bは、前記中継局6へ向けて電気信号を良好に送信可能なように設置角度が調整されている。
【0047】
前記複数の赤外線検出装置4は、赤外線カメラ(サーモビューワ)であり、絶縁碍子100の表面の赤外線画像を撮影して絶縁碍子100の表面の温度分布を測定するものである。絶縁碍子100は、熱伝導率が小さく、絶縁碍子100の表面においてコロナ放電が所定時間継続ないしは断続して発生すると、その発生部付近の表面温度が局所的に上昇する。そこで、本実施形態では、赤外線検出装置4により絶縁碍子100の表面の温度分布を測定し、前記紫外線検出装置2による紫外線検出に基づいたコロナ放電の検出に加えて前記温度分布のデータを用いることにより、コロナ放電の異常発生の有無の判断の精度を向上させている。
【0048】
具体的には、各赤外線検出装置4は、図1に示すように、絶縁碍子100の周囲に所定間隔で配置されているとともに、図略の鉄塔に固定されている。この赤外線検出装置4は、絶縁碍子100の表面から約100mm以上、好ましくは200mm以上の距離を隔てて設置されている。そして、この赤外線検出装置4のカメラレンズ4aの視野角によって適切な焦点と、絶縁碍子100の表面の測定領域とを設定するようになっている。なお、この赤外線検出装置4は、撮影角度を変更可能な首振り機構を具備していてもよい。そして、各赤外線検出装置4は、図2に示すように、赤外線検出部42と、温度データ送信部44とを有する。
【0049】
前記赤外線検出部42は、絶縁碍子100の表面の赤外線画像を撮影して絶縁碍子100の表面の温度分布を検出する部分である。この赤外線検出部42により検出された絶縁碍子100の表面の温度分布のデータは、前記温度データ送信部44へ出力される。
【0050】
前記温度データ送信部44は、前記赤外線検出部42と電気的に接続されており、その赤外線検出部42から送られた絶縁碍子100の表面の温度分布のデータを前記中継局6を介して前記基地局8の後述する中央演算システム58へ無線で送信するものである。この温度データ送信部44は、発信器44aと送信アンテナ44bとによって構成されており、発信器44aによって送信アンテナ44bから前記温度分布のデータが前記中継局6へ向かって無線送信される。なお、送信アンテナ44bは、前記中継局6へ向けて前記温度分布のデータを良好に送信可能なように設置角度が調整されている。
【0051】
前記中継局6は、前記紫外線検出装置2からの電気信号と、前記赤外線検出装置4からの絶縁碍子100の表面の温度分布のデータ信号とを受信し、それら電気信号及び温度分布のデータ信号を増幅してから前記基地局8に向けて無線で送信するものである。この中継局6は、絶縁碍子100、紫外線検出装置2及び赤外線検出装置4が設置された現場から離れた場所に設置されている。そして、中継局6は、それぞれ電気的に接続された受信アンテナ48、増幅回路50、発信器52及び送信アンテナ54を有する。この中継局6では、受信アンテナ48によって受信された前記紫外線検出装置2からの電気信号と前記赤外線検出装置4からの前記温度分布のデータ信号とが増幅回路50で増幅された後、発信器52により送信アンテナ54から前記基地局8に向かって無線送信される。
【0052】
前記基地局8は、前記中継局6からさらに遠くに離れた場所に設置されている。この基地局8では、前記中継局6から送信された前記紫外線検出装置2からの電気信号と前記赤線検出装置4からの前記温度分布のデータ信号とを受信し、それら両信号を解析することにより前記絶縁碍子100の表面におけるコロナ放電の異常発生を監視する。
【0053】
具体的には、この基地局8は、受信アンテナ56と中央演算システム58を有する。
【0054】
前記中継局6から送信された前記紫外線検出装置2からの電気信号と前記赤外線検出装置4からの前記温度分布のデータ信号とが前記受信アンテナ56によって受信されるとともに、その両信号が中央演算システム58に伝えられる。
【0055】
前記中央演算システム58は、前記紫外線検出装置2からの電気信号と前記赤外線検出装置4からの前記温度分布のデータとに基づいて、前記絶縁碍子100の表面におけるコロナ放電の異常発生の有無を判断する機能を有する。この中央演算システム58は、本発明における監視部の概念に含まれるものである。
【0056】
具体的には、中央演算システム58は、一定時間における前記紫外線検出装置2からの電気信号の強度(電流値または電圧値)を積算するとともに、この一定時間の電気信号の強度の積算を繰り返し行っている。また、中央演算システム58は、前記赤外線検出装置4からの前記温度分布のデータを解析して前記絶縁碍子100の表面において最も高温の箇所の温度と最も低温の箇所の温度との差、すなわち絶縁碍子100の表面温度の高低差を算出する。
【0057】
そして、中央演算システム58は、前記紫外線検出装置2からの電気信号について予め設定された第1判別条件と、前記赤外線検出装置4からの前記温度分布のデータについて予め設定された第2判別条件とを記憶している。
【0058】
前記第1判別条件は、前記一定時間における紫外線検出装置2からの電気信号の強度の積算値が所定の閾値を超えることである。この第1判別条件の閾値は、絶縁碍子100の交換又はメンテナンスを要する程度のコロナ放電の異常発生が生じている場合において、前記一定時間における紫外線検出装置2からの電気信号の強度の積算値を予め試算することによって設定されている。すなわち、前記一定時間における紫外線検出装置2からの電気信号の強度の積算値が第1判別条件の閾値を超えるということは、絶縁碍子100の交換又はメンテナンスを要する程度のコロナ放電の異常発生が絶縁碍子100の表面において生じていることを表す。
【0059】
また、前記第2判別条件は、前記絶縁碍子100の表面温度の高低差が所定の閾値(本実施形態では2.5℃)を超えることである。この第2判別条件の閾値は、絶縁碍子100の交換又はメンテナンスを要する程度のコロナ放電の異常発生が生じている場合において、その絶縁碍子100の表面温度の高低差を予め測定することによって設定されている。すなわち、前記絶縁碍子100の表面温度の高低差が第2判別条件の閾値を超えるということは、絶縁碍子100の交換又はメンテナンスを要する程度のコロナ放電の異常発生が絶縁碍子100の表面において生じていることを表す。
【0060】
そして、中央演算システム58は、前記一定時間における紫外線検出装置2からの電気信号の強度の積算値が前記第1判別条件を満たし、かつ、前記絶縁碍子100の表面温度の高低差が前記第2判別条件を満たしたことに基づいて絶縁碍子100の表面においてコロナ放電が異常発生したと判断する。そして、このようにコロナ放電が異常発生したと判断した場合、中央演算システム58は、警報発令等により絶縁碍子100の交換又はメンテナンスを促すように構成されている。
【0061】
また、中央演算システム58は、前記各紫外線検出装置2からの電気信号の強度を個別に積算しており、その積算値が前記第1判別条件の閾値を超えた紫外線検出装置2を特定できるようになっている。これにより、絶縁碍子100のうち前記特定した紫外線検出装置2が紫外線検出を担当する箇所を特定できるようになっている。さらに、中央演算システム58は、前記赤外線検出装置4からの絶縁碍子100の表面の温度分布のデータに基づいて、絶縁碍子100のうち局所的に表面温度が上昇している箇所を特定できるように構成されている。従って、これらの構成により、絶縁碍子100のうちコロナ放電が異常発生している箇所を特定することができ、その箇所のみを交換又はメンテナンス可能となっている。
【0062】
次に、本実施形態による電気設備のモニタリングシステムの動作について説明する。
【0063】
本実施形態による電気設備のモニタリングシステムでは、各紫外線検出装置2が絶縁碍子100に対して紫外線の検出を行っているとともに、各赤外線検出装置4が絶縁碍子100の表面の赤外線画像を撮影して絶縁碍子100の表面の温度分布を検出している。
【0064】
そして、絶縁碍子100の表面にアルカリ金属成分や水分、有機物が付着して電界集中が生じることによりコロナ放電が発生すると、そのコロナ放電に伴って約180nm〜約200nmの波長領域が大部分を占める紫外線が発生する。紫外線検出装置2では、その紫外線を約180nm以上約200nm以下の波長領域に感度のピークを有する紫外線センサ16の検知部22が検知し、その紫外線の強度に応じた電気信号が紫外線センサ16の出力部24から出力される。この電気信号は、増幅器18によって増幅された後、紫外線信号送信部20により中継局6へ無線で送信される。
【0065】
一方、絶縁碍子100の表面においてコロナ放電が継続的又は断続的に所定時間発生すると、その発生部付近の表面温度が局所的に上昇し、絶縁碍子100の表面に温度分布が形成される。赤外線検出装置4では、赤外線検出部42によりそのような絶縁碍子100の表面の温度分布が検出されるとともに、その温度分布のデータ信号が赤外線検出部42から出力される。そして、この温度分布のデータ信号は、温度データ送信部44により中継局6へ無線で送信される。
【0066】
中継局6では、前記紫外線検出装置2からの電気信号と前記赤外線検出装置4からの温度分布のデータ信号を受信するとともに、この両信号を増幅回路50で増幅した後、発信器52により基地局8へ無線で送信する。
【0067】
そして、基地局8では、中継局6から送信された前記紫外線検出装置2からの電気信号と前記赤外線検出装置4からの温度分布のデータ信号を受信し、これら両信号を中央演算システム58において解析する。
【0068】
中央演算システム58は、前記紫外線検出装置2からの電気信号の強度(電流値又は電圧値)を一定時間積算するとともに、この一定時間の積算を繰り返し行う。また、中央演算システム58は、前記赤外線検出装置4からの温度分布のデータを解析して、絶縁碍子100の表面温度の高低差を算出する。そして、中央演算システム58は、前記一定時間における電気信号の強度の積算値と予め記憶している第1判別条件の閾値とを比較するとともに、前記算出した絶縁碍子100の表面温度の高低差と第2判別条件の閾値とを比較する。そして、中央演算システム58は、前記一定時間の電気信号の強度の積算値が第1判別条件の閾値を超え、かつ、前記算出した絶縁碍子100の表面温度の高低差が第2判別条件の閾値を超えた場合に絶縁碍子100の表面においてコロナ放電が異常発生したと判断し、警報発令等により絶縁碍子100の交換又はメンテナンスを促す。
【0069】
以上説明したように、本実施形態では、紫外線センサ16の検知部22がコロナ放電に伴って発生する紫外線を真空紫外線領域で検知するダイヤモンドからなるため、バンドパスフィルタを設けなくても可視光や赤外線等の影響を受けることなく、検知部22によって絶縁碍子100の表面におけるコロナ放電に起因する紫外線を直接検出することができる。これにより、バンドパスフィルタの劣化に起因して紫外線センサの紫外線の検出精度が低下するといった不都合な事態が生じることなく、前記コロナ放電に伴って発生する紫外線の検出を長期間に亘って安定した精度で検出することができる。従って、本実施形態では、絶縁碍子100の表面におけるコロナ放電の異常発生を長期間に亘って安定して検出することができる。
【0070】
また、本実施形態では、紫外線センサ16の検知部22の材料が約180nm以上約200nm以下の波長領域に感度のピークを有するダイヤモンドであるので、約180nm〜約200nmの波長領域が大部分を占める前記コロナ放電に起因する紫外線を良好な精度で検出することができる。
【0071】
また、本実施形態では、紫外線センサ16の検知部22の材料がダイヤモンドであるため、検知部22は、長期に亘って繰り返される温度変化や、送電線に印加される高電圧に起因して生じる電磁波に対して高い耐久性を有する。このため、絶縁碍子100のコロナ放電を監視する紫外線センサ16に要求される高い耐環境性能を紫外線センサ16に具備させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、紫外線センサ16から出力された電気信号を中継局6を介して基地局8の中央演算システム58へ無線で送信する紫外線信号送信部20を備える。このため、絶縁碍子100及び紫外線検出装置2が設置された現場から離れた場所に設置された基地局8の中央演算システム58において、絶縁碍子100の表面におけるコロナ放電の異常発生を遠隔監視することができる。これにより、前記コロナ放電の異常発生を絶縁碍子100が設置された現場に赴いて確認する作業を行わなくてもよいので、前記コロナ放電の監視に要する作業負担を軽減することができる。
【0073】
また、本実施形態では、中央演算システム58が、紫外線検出装置2からの電気信号が第1判別条件、すなわち、紫外線検出装置2からの電気信号の強度の積算値が所定の閾値を超えるという条件を満たし、かつ、赤外線検出装置からの絶縁碍子の表面の温度分布のデータが第2判別条件、すなわち、絶縁碍子100の表面温度の高低差が所定の閾値を超えるという条件を満たしたことに基づいて絶縁碍子100の表面でコロナ放電が異常発生したと判断する。このため、より正確に前記コロナ放電の異常発生の有無を判断することができる。
【0074】
また、本実施形態では、複数の紫外線検出装置2が絶縁碍子100の周囲に設けられているとともに、中央演算システム58が各紫外線検出装置2からの電気信号の強度をそれぞれ積算し、その積算値のうち第1判別条件の閾値を超えたものを特定することによって、絶縁碍子100のうちコロナ放電が異常発生した箇所を特定する。さらに、本実施形態では、中央演算システム58が赤外線検出装置4からの絶縁碍子100の表面の温度分布のデータに基づいて、絶縁碍子100のうち局所的に表面温度が上昇している箇所を特定することによって、絶縁碍子100のうちコロナ放電が異常発生した箇所を特定する。このため、絶縁碍子100のうち前記特定した箇所のみを交換又はメンテナンスすることによりコロナ放電の異常発生を解消することができるので、絶縁碍子100全体を交換又はメンテナンスする場合に比べて作業負担を軽減することができる。
【0075】
また、本実施形態では、赤外線検出部42によって検出された絶縁碍子100の表面の温度分布のデータ信号を中継局6を介して基地局8の中央演算システム58へ無線で送信する温度データ送信部44を備える。このため、絶縁碍子100及び赤外線検出装置4が設置された現場から離れた場所に設置された基地局8の中央演算システム58において、絶縁碍子100の表面の温度分布の変化を遠隔監視することができる。これにより、絶縁碍子100表面の温度分布の変化の監視に要する作業負担を軽減することができる。
【0076】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0077】
例えば、上記実施形態の構成のうち赤外線検出装置4による絶縁碍子100の表面の温度分布の検出を省略し、紫外線検出装置2による紫外線検出のみによって絶縁碍子100の表面におけるコロナ放電の異常発生を検出してもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、紫外線検出装置2と赤外線検出装置4を送電線を支持する鉄塔に固定したが、紫外線検出装置2と赤外線検出装置4は、鉄塔以外のものに固定してもよい。例えば、何らかの固定手段を用いて絶縁碍子100自体に紫外線検出装置2と赤外線検出装置4を固定してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、紫外線検出装置2からの電気信号と赤外線検出装置4からの温度分布のデータ信号とを中継局6を介して基地局8へ送信したが、基地局8が紫外線検出装置2及び赤外線検出装置4が設置された現場から比較的近い場所に設置されている場合には、中継局6を省略して、紫外線検出装置2と赤外線検出装置4から基地局8へ前記各信号を直接送信するようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、紫外線センサ16の検知部22をダイヤモンドによって形成したが、検知部の材料としてダイヤモンド以外の材料を用いてもよい。例えば、アルミニウム窒化ガリウムを紫外線センサの検知部の材料として用いてもよい。このアルミニウムチ窒化ガリウムからなる検知部でも、真空紫外線領域で絶縁碍子100の表面におけるコロナ放電に伴って生じる紫外線を検知可能である。
【0081】
そして、このアルミニウム窒化ガリウムを検知部の材料として用いた紫外線センサ(以下、AlGaNセンサという)は、光ダイオード型と呼ばれるタイプの構造をもつ。このAlGaNセンサの作成プロセスとしては、まず、サファイア[0001]表面にAlNバッファ層を蒸着したものを基板として、有機金属CVD(MOCVD)法により、Al0.5Ga0.5N層のSiドープ層(n型導電層)とノンドープ層(絶縁層)を積層する。その後、電子ビーム蒸着法でTi/Al/Auオーミック電極を前記Siドープ層の表面上に形成するとともに、Pt/Ni半透明ショットキー電極を前記ノンドープ層の表面上に形成する。
【0082】
そして、このAlGaNセンサでは、前記半透明ショットキー電極を透過して前記ノンドープ層及び前記Al0.5Ga0.5N層に入射した紫外線によって生成された励起電流を前記両電極間で測定する。前記励起電流は、前記入射した紫外線の強度に応じて変化するので、前記両電極間で測定された電流量によって紫外線の強度がわかる。このようなAlGaNセンサは、約240nm以下の短波長の紫外線に対してのみ感度を有するので、可視光や赤外線等に影響されることなく、前記コロナ放電によって発生する紫外線を検出することができる。
【0083】
また、上記アルミニウム窒化ガリウムやダイヤモンド以外でも真空紫外線領域で紫外線を検知可能な材料であれば、紫外線センサの検知部の材料として適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一実施形態による電気設備のモニタリングシステムの概略図である。
【図2】図1に示したモニタリングシステムの詳細な構成を説明するためのブロック図である。
【図3】図1に示したモニタリングシステムの紫外線検出装置に用いる紫外線センサの側面図である。
【図4】紫外線センサのダイヤモンドからなる検知部の感度領域を示した図である。
【符号の説明】
【0085】
16 紫外線センサ
20 紫外線信号送信部
22 検知部
24 出力部
42 赤外線検出部
44 温度データ送信部
58 中央演算システム(監視部)
100 絶縁碍子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気設備の絶縁碍子の表面において発生するコロナ放電を監視するための電気設備のモニタリングシステムであって、
前記コロナ放電に伴って発生する紫外線を受光可能な位置に設けられ、その紫外線を真空紫外線領域で検知する材料からなる検知部と、前記検知部によって検知された紫外線の強度に応じた電気信号を出力する出力部とを有する紫外線センサと、
前記紫外線センサの出力部から出力される電気信号に基づいて前記絶縁碍子の表面におけるコロナ放電の異常発生の有無を判断する監視部とを備えた、電気設備のモニタリングシステム。
【請求項2】
前記検知部の材料は、約180nm以上約200nm以下の波長領域に感度を有する材料である、請求項1に記載の電気設備のモニタリングシステム。
【請求項3】
前記検知部の材料は、ダイヤモンドである、請求項1または2に記載の電気設備のモニタリングシステム。
【請求項4】
前記監視部は、前記紫外線センサの出力部から出力される電気信号について予め設定された第1判別条件を記憶しており、前記紫外線センサの出力部から出力される電気信号が前記第1判別条件を満たしたことに基づいて前記絶縁碍子の表面でコロナ放電が異常発生したと判断する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気設備のモニタリングシステム。
【請求項5】
前記紫外線センサは、前記絶縁碍子の周囲に複数設けられ、
前記監視部は、前記各紫外線センサの出力部から出力される電気信号のうち前記第1判別条件を満たしたものを特定することにより前記絶縁碍子のうちコロナ放電が異常発生している箇所を特定する、請求項4に記載の電気設備のモニタリングシステム。
【請求項6】
前記絶縁碍子の表面の赤外線画像を撮影して前記絶縁碍子の表面の温度分布を検出する赤外線検出部を備え、
前記監視部は、前記赤外線検出部によって検出される前記絶縁碍子の表面の温度分布について予め設定された第2判別条件を記憶しており、前記紫外線センサの出力部から出力される電気信号が前記第1判別条件を満たし、かつ、前記赤外線検出部によって検出される前記絶縁碍子の表面の温度分布が前記第2判別条件を満たしたことに基づいて前記絶縁碍子の表面でコロナ放電が異常発生したと判断する、請求項4または5に記載の電気設備のモニタリングシステム。
【請求項7】
前記監視部は、前記赤外線検出部によって検出される前記絶縁碍子の表面の温度分布のデータに基づいて前記絶縁碍子のうちコロナ放電が異常発生している箇所を特定する、請求項6に記載の電気設備のモニタリングシステム。
【請求項8】
前記赤外線検出部によって検出された前記絶縁碍子の表面の温度分布のデータを前記監視部へ無線で送信する温度データ送信部を備える、請求項6または7に記載の電気設備のモニタリングシステム。
【請求項9】
前記紫外線センサの出力部から出力された電気信号を前記監視部へ無線で送信する紫外線信号送信部を備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気設備のモニタリングシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−16317(P2009−16317A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180254(P2007−180254)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】