電気貯湯容器
【課題】内容液の沸騰を確実に行い、且つ、沸騰時に蒸気が出過ぎるのを抑制して、省エネルギー効果を得る。
【解決手段】電気貯湯容器は、容器内の内容液の温度を検知する温度センサ15と、内容液の容量を算出する容量算出手段43と、内容液を加熱する加熱手段12と、加熱手段12により加熱された内容液が沸騰したか否かを判断する沸騰判断手段44と、沸騰判断手段44により内容液が沸騰したと検出されたときの温度センサ15により検知される温度に基づいて沸点データを取得する沸点データ取得手段45と、容量算出手段43により算出された内容液の容量に応じて、当該沸点データを補正する補正手段46と、を備える。
【解決手段】電気貯湯容器は、容器内の内容液の温度を検知する温度センサ15と、内容液の容量を算出する容量算出手段43と、内容液を加熱する加熱手段12と、加熱手段12により加熱された内容液が沸騰したか否かを判断する沸騰判断手段44と、沸騰判断手段44により内容液が沸騰したと検出されたときの温度センサ15により検知される温度に基づいて沸点データを取得する沸点データ取得手段45と、容量算出手段43により算出された内容液の容量に応じて、当該沸点データを補正する補正手段46と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容液を加熱して湯沸し及び保温を行う電気貯湯容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内容液の検知温度が沸騰温度に近い所定の温度域に達した時に検知温度を一定時間間隔でサンプリングして温度データを順次に記憶する温度系列記憶手段と、該温度系列記憶手段に記憶した系列温度データを複数の区間に区切り各区間の温度データを加算して各々の区間データを求めこの複数の区間データから時間的に前後した区間データの差により設定される加熱容量の補正基準値に基づいて沸騰と判定する沸騰判定手段とを備えた電気ポットを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−55205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1で開示されるような沸騰判定において、沸騰検知が遅れると、無駄な加熱および蒸気の発生となって省エネルギーに反すると共に、沸騰検知が早すぎると、内容液の殺菌および消臭を十分に行えないという不都合がある。近年、省エネルギーおよび健康が強く求められる中、沸騰判定の検知精度は益々重要になっている。
【0005】
そこで、本発明は、内容液の沸騰を確実に行いつつ、当該沸騰時に蒸気が出過ぎるのを抑制して省エネルギー効果を得ることが可能な電気貯湯容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
本発明に係る電気貯湯容器は、容器内の内容液の温度を検知する温度センサと、内容液の容量を算出する容量算出手段と、内容液を加熱する加熱手段と、加熱手段により加熱された内容液が沸騰したか否かを判断する沸騰判断手段と、沸騰判断手段により内容液が沸騰したと検出されたときの温度センサにより検知される温度に基づいて沸点データを取得する沸点データ取得手段と、容量算出手段により算出された内容液の容量に応じて、当該沸点データを補正する補正手段と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、内容液の沸騰判断時において温度センサによる検知温度が内容液の容量に起因してばらつく場合であっても、内容液の容量に応じて沸点データを補正することができる。これにより、補正された沸点データに係る温度を基に内容液の沸騰および再沸騰を行う場合に、内容液の沸騰および再沸騰を確実に行うことができる。また、内容液の殺菌およびカルキ抜きなどを行うために内容液を所定時間沸騰させる場合に、補正された沸点データに係る温度に達した後、当該所定時間沸騰させることによって、当該沸騰時に過剰に蒸気が出るのを抑制することができるので、省エネルギー効果を得ることができる。
【0008】
(2)
上記した電気貯湯容器において、沸点データ取得手段は、沸騰判断手段により内容液が沸騰したと検出されたときの温度センサにより検知される温度に補正値を減じることにより、沸点データを取得し、補正手段は、容量算出手段により算出される内容液の容量に応じて、補正値の絶対値を補正することにより、沸点データを補正する。
【0009】
上記構成によれば、内容液の容量に応じて補正値の絶対値を変化させるだけで簡単に沸点データを補正することができる。これにより、沸点データを取得するための演算処理が速くなる。
【0010】
(3)
また、本発明に係る電気貯湯容器は、容器内の内容液の温度を検知する温度センサと、内容液の容量を算出する容量算出手段と、容量算出手段により算出された内容液の容量を記憶する記憶手段と、容器内に液体が継ぎ足されたときに、容量算出手段により算出される継ぎ足し後の内容液の容量に応じた加熱時間で当該内容液を加熱する加熱手段と、記憶手段に記憶されている液体の継ぎ足し前における容器内の内容液の容量に応じて、加熱時間を変更する加熱時間変更手段と、を備える。
【0011】
上記構成によれば、継ぎ足し後の内容液の容量に応じた加熱時間で加熱しても、当該内容液が沸騰温度まで達しない場合に、加熱時間変更手段により加熱時間が延長されることによって、内容液を確実に沸騰させることができる。この際、加熱時間変更手段により加熱時間が調整されるので、内容液が長時間沸騰するのを抑制することができる。その結果、沸騰時に蒸気が過剰に出るのを抑制して、省エネルギー効果を得ることができる。
【0012】
(4)
上記した電気貯湯容器において、加熱時間が異なる第1加熱時間および第2加熱時間を記憶する加熱時間記憶手段をさらに備え、加熱時間変更手段は、加熱時間記憶手段に記憶されている液体の継ぎ足し前における容器内の内容液の容量に応じて、第1加熱時間または第2加熱時間を選択する。
【0013】
上記構成によれば、加熱時間記憶手段に記憶されている第1記憶時間または第2記憶時間を選択するだけで、内容液の加熱時間を簡単に変更することができる。したがって、内容液の容量に応じて加熱時間をその都度計算する場合に比べて、演算処理が早くなる。
【0014】
(5)
上記した電気貯湯容器において、加熱手段は、沸点データに係る温度の相対値である保温温度により内容液を保温する。
【0015】
上記構成によれば、沸点データに係る温度と相対的な温度で内容液を保温することができる。つまり、絶対温度で内容液の保温を管理している場合と異なり、気圧が変化しても保温時に内容液が沸騰したり保温温度が低温になったりするのを抑制することができる。
【0016】
(6)
上記した電気貯湯容器において、容量算出手段は、加熱手段により加熱された内容液の単位時間当たりの温度変化に基づいて、内容液の容量を算出する。
【0017】
上記構成によれば、内容液の単位時間当たりの温度変化量によって、内容液の容量を算出することができる。これにより、フロートセンサ等を使用せずに、温度センサにより検知される温度変化で内容液の容量を算出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電気貯湯容器によれば、内容液の沸騰を確実に行いつつ、当該沸騰時に蒸気が出過ぎるのを抑制して、省エネルギー効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気貯湯容器の正面図である。
【図2】図1に示した電気貯湯容器の平面図である。
【図3】図1に示した電気貯湯容器の内部構成を示した断面図である。
【図4】図1に示した電気貯湯容器の制御部のブロック図である。
【図5】ヒータにより加熱された内容液の温度変化を示したグラフである。
【図6】単位時間温度変化と時間との関係を示したグラフである。
【図7】単位時間温度変化の平均値αと閾値βとが対応付けられた表である。
【図8(a)】2500mLの内容液を加熱したときの単位時間温度変化を示したグラフである。
【図8(b)】1000mLの内容液を加熱したときの単位時間温度変化を示したグラフである。
【図9(a)】沸騰モードにおける湯沸かし処理を説明するためのフローチャートである。
【図9(b)】沸騰モードにおける湯沸かし処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】沸点データの取得方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】従来の沸騰判定に係る単位時間温度変化と本実施形態の沸騰判定に係る単位時間温度変化とを示したグラフである。
【図12】内容液の容量によって沸点検知温度T1およびT2が変化することを説明するためのグラフである。
【図13】第2実施形態に係る電気貯湯容器の制御部のブロック図である。
【図14】記憶部に記憶されるデータテーブルDT1およびDT2である。
【図15】水の継ぎ足し時における自動再沸騰処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る電気貯湯容器について図面を参照しながら説明する。
【0021】
<第1実施形態>
第1実施形態の電気貯湯容器100は、水などの内容液Lを加熱する装置であって、家庭用の電気ポットとして利用される。この電気貯湯容器100は、複数の動作モード(湯沸かしモード、保温モード(98℃保温、90℃保温、ヒータオフ保温)、再沸騰モード(蒸気あり、蒸気なし))で駆動するように構成されている。これらの各種動作モードにおける電気貯湯容器100の動作については、後述する。
電気貯湯容器100は、図1および図2に示すように、略筒状の器体10と、器体10の上部に取り付けられる蓋20と、使用者の操作に係る操作部30と、を備えている。
【0022】
<器体>
器体10は、図3に示すように、水などの液体である内容液Lを貯留する内容器11と、内容器11内の内容液Lを加熱するヒータ12と、内容器11内の内容液Lを外部に案内する吐出路13と、内容器11の下方に位置する電動ポンプ14と、内容液Lの温度を検知する温度センサ15と、を有している。また、器体10の外表面には、図1に示すように、上記した吐出路13を露出させる液量表示窓16が設けられている。
【0023】
内容器11は、図3に示すように、ステンレス鋼製の容器であって、略断熱構造となっている。なお、本実施形態に係る内容器11は、シングル(真空一重構造)容器であるが、真空二重構造であっても良い。この内容器11は、略筒状であって、その底部分には、ヒータ12および温度センサ15が設けられている。
【0024】
ヒータ12は、沸騰ヒータと保温ヒータとから構成されている。内容液Lを沸騰させる際には(湯沸かしモードおよび再沸騰モードの場合には)、沸騰ヒータおよび保温ヒータの両方が駆動すると共に、内容液Lを保温する際には(保温モードの場合には)、主に保温ヒータが駆動する。
【0025】
吐出路13は、図3に示すように、内容器11内における底面付近の内容液Lを電気貯湯容器100の上部に設けられる注ぎ口13aまで導くために設けられている。すなわち、内容器11内の内容液Lは、電動ポンプ14の駆動により、吐出路13を通過して注ぎ口13aから吐出される。この吐出路13の一部は、図1に示すように、透明管で形成されており、当該透明部分の吐出路13は、当該液量表示窓16から視認可能となっている。吐出路13における液面レベルは、内容器11の液面レベルと同じになっているので、使用者は、蓋20を開くことなく外部から液量表示窓16を介して内容器11内の内容液Lの残量を知ることができる。
【0026】
<蓋>
蓋20は、図3に示すように、内容器11の上部に設けられる開口部11aを開閉するために、器体10の後部においてヒンジピン21によって回転可能に軸支されている。そして、蓋20には、当該蓋20を開閉するための開閉レバー22(図2および図3参照)が設けられている。使用者は、内容器11内に水を追加する際には、開閉レバー22を操作して蓋20を開放する。また、内容液Lを沸騰または保温する際には、開閉レバー22を操作して蓋20を閉鎖する。この蓋20には、図2及び図3に示すように、ヒータ12により加熱されて沸騰した内容液Lの蒸気を外部に逃がすための蒸気孔23が形成されている。
【0027】
<操作部>
操作部30は、図2に示すように、電気貯湯容器100の前方へ張り出した部分に設けられている。この操作部30は、電気貯湯容器100の各種モード(湯沸かしモード、保温モード、再沸騰モード)の設定、タイマー設定(内容液Lを沸騰させる時間(例えば、6時間後、9時間後)の設定)、及び、保温温度の選択などを行うための操作ボタン31〜33と、設定されたモード、現在時刻、及び、沸騰完了までの残り時間等を表示する表示部34と、を有している。
【0028】
図2に示すように、給湯ボタン31は、内容液Lを吐出させるボタンであって、当該給湯ボタン31が押し下げられることによって電動ポンプ14が駆動される。また、保温ボタン32は、内容液Lの保温温度を選択するボタンであって、当該保温ボタン32が押し下げられることによって、98℃保温および90℃保温がロータリ式に選択される。なお、ヒータオフ保温は、図示しないボタンが押し下げられることによって、選択される。また、再沸騰ボタン33は、保温中の内容液Lを再沸騰させるボタンであって、当該再沸騰ボタン33が1回押し下げられると蒸気を発生させない沸騰が行われ、当該再沸騰ボタン33が2回押し下げられると蒸気を発生させる沸騰が行われる。
【0029】
また、表示部34は、現在時刻、及び、沸騰完了までの残り時間等を表示する液晶表示部35と、現在の動作状態を示すランプ部36と、を含んでいる。湯沸かしモードおよび再沸騰モードのときには、沸騰ランプ36aが点灯し、保温モードのときには、保温ランプ36bが点灯する。
【0030】
<制御部>
上記した操作部30、ヒータ12、電動ポンプ14、温度センサ15は、図4に示すように、マイクロコンピュータ等を搭載した制御部40に通信可能に接続されている。この制御部40は、ヒータ制御部41と、ポンプ制御部42と、温度データ取得部43と、容量算出部44と、沸騰判断部45と、沸点データ取得部46と、補正部47と、記憶部48と、を有している。
【0031】
ヒータ制御部41は、ヒータ12と通信可能に接続されており、ヒータ12の駆動を制御して、内容液Lの保温および沸騰を行う。具体的には、ヒータ制御部41は、内容器11内に水が追加されて、電源コード(図示せず)が接続されたとき、沸騰モードになり、沸騰ヒータおよび保温ヒータの両方を駆動して、内容液Lを沸騰させる。また、ヒータ制御部41は、内容液Lの沸騰が完了した後、保温モードになり、主に保温ヒータを駆動して、内容液Lが所定温度(98℃または90℃)になるように内容液Lを保温する。また、ヒータ制御部41は、再沸騰ボタン33が押し下げられたときに、再沸騰モードになり、沸騰ヒータおよび保温ヒータの両方を駆動して、内容液Lを再沸騰させる。
【0032】
ポンプ制御部42は、電動ポンプ14と通信可能に接続されており、電動ポンプ14の駆動を制御して、内容液Lを注ぎ口13aから吐出する。具体的には、ポンプ制御部42は、給湯ボタン31が押し下げられている間、注ぎ口13aから内容液Lが給湯されるように、電動ポンプ14を駆動する。
【0033】
温度データ取得部43は、温度センサ15と通信可能に接続されており、サンプリング間隔t秒(例えば、5秒)で、内容液Lの温度データ(A,B,C,D,…)を順次取得し、それらの温度データ(A,B,C,D,…)を記憶部48に格納する。そして、本実施形態では、温度データ取得部43は、連続した複数(例えば、8つ)の温度データを温度データ列として設定する。そして、温度データ取得部43は、サンプリング間隔t秒単位で温度データをシフトして、温度データ列を順次設定する。すなわち、図5に示すように、サンプリング間隔t秒で、温度データA,B,C,D,…が取得されている場合に、温度データ列D1は、温度データA〜Hからなり、次の温度データ列D2は、サンプリング間隔t秒後にずらした温度データB〜Iからなり、その次の温度データ列D3は、さらにサンプリング間隔t秒後にずらした温度データC〜Jからなる。このようにして、温度データ列D1,D2,D3,…が設定される。この際、サンプリング間隔tと温度データ列の時間幅wとの比率は、1:4未満となっている。
【0034】
温度データ取得部43により取得される温度センサ15の検知温度は、図5に示すように、直線的に100℃まで上昇した後、100℃から更に約1.5℃上昇して、略一定に推移する。一方、実際の水温は、直線的に100℃まで上昇した後、100℃で略一定に推移する。内容器11内の内容液Lの容量が多い場合は、単位時間あたりの温度上昇が小さくなり温度変化を示す直線y1の傾きが小さくなり、内容器11内の内容液Lの容量が少ない場合は、単位時間あたりの温度上昇が大きくなり温度変化を示す直線y2の傾きが大きくなる。
【0035】
また、本実施形態では、温度データ取得部43は、設定した温度データ列D1,D2,D3…のそれぞれについて、初期温度データと終期温度データとの差分(以下、この差分を単位時間温度変化)を算出する。すなわち、温度データ列D1における単位時間温度変化α1は、(H−A)により算出され、温度データ列D2における単位時間温度変化α2は、(I−B)により算出され、温度データ列D3における単位時間温度変化α3は、(J−C)により算出される。このようにして、温度データ取得部43は、単位時間温度変化α1,α2,α3,…を算出する。
【0036】
容量算出部44は、内容器11内に収容される内容液Lの容量を算出する。この容量算出部44は、ヒータ12により加熱された内容液Lの単位時間当たりの温度変化(=単位時間温度変化α1,α2,α3,…)に基づいて、内容液Lの容量を算出する。したがって、容量算出部44は、上記した温度データ取得部43により算出される単位時間温度変化α1,α2,α3,…に基づいて、内容液Lの容量を算出する。具体的には、温度データ取得部43は、以下の式により算出される単位時間温度変化の平均値αに基づいて、内容液Lの容量を算出する。
α=(α1+α2+α3+…+αn)/n
図5に示すように、内容液Lの容量が多い場合には、当該平均値α(図5中では、一例として単位時間温度変化α1を示している)が小さくなり、内容液Lの容量が少ない場合には、当該平均値αが大きくなる傾向にある。そのため、容量算出部44は、平均値αの大きさに基づいて、内容液Lの容量を経験的に算出する。
【0037】
沸騰判断部45は、ヒータ12により加熱された内容液Lが沸騰したか否かを判断する。この沸騰判断部45は、図6に示すように、記憶部48に記憶される単位時間温度変化α1,α2,α3,…が、所定の閾値βまで低下したときに、内容液Lが沸騰したと判定する。この閾値βは、図7に示すように、単位時間温度変化の平均値αの大きさに応じて、経験的に設定される。
【0038】
単位時間温度変化α1,α2,α3,…は、理想的には、図6に示すように、一定値で推移した後、下降する。ところが、実際には、図8(a)に示すように、内容液Lの容量が多く(図8(a)では、水量が2500mL)、内容器11内で内容液Lが対流する場合には、立ち上がり変化と立ち下がり変化とを繰り返して上下に大きく振れながら推移する。一方、内容液Lの容量が少なく(図8(b)では、水量が1000mL)、当該内容液Lの対流が発生し難い場合には、図8(b)に示すように、図6の理想的な曲線と近似する曲線を描く。そこで、本実施形態に係る沸騰判定部45は、立ち上がり変化が途中で生じずに立ち下がり変化が持続するようになるのを待って、沸騰を判定することになる。具体的には、沸騰判定部45は、最後の立ち上がり域が生じた後、続く2つの区間で立ち下がり変化が続いた時点で、沸騰と判定することになる。
【0039】
沸点データ取得部46は、沸騰判断部45により内容液Lが沸騰したと判断されたときの温度センサ15により検知される温度T(以下、沸騰検知時温度Tとする)から補正値を減じることによって、沸点データを取得する。すなわち、沸点データ取得部46は、以下の式により沸点データを取得する。なお、補正値は、約1.5℃に相当する。
(沸点データ)=(沸騰検知時温度T)−(補正値)
この沸点データ取得部46により取得される沸点データは、内容液Lの沸点を示す温度データであって、保温モードにおける内容液Lの保温、再沸騰モードにおける内容液の再沸騰に使用される。すなわち、本実施形態の電気貯湯容器100では、沸点データに係る温度の相対値で内容液Lの温度管理を行う。
【0040】
補正部47は、容量算出手段43により算出された内容液Lの容量に応じて、沸点データ取得部46により取得された沸点データを補正する。具体的には、補正部47は、上記した沸点データを取得するために使用された式における補正値の絶対値を補正することにより、沸点データを補正する。
すなわち、本実施形態の補正部47は、
内容液Lの容量が多量の場合は、「(沸点データ)=(沸騰検知時温度T)−(3LSB)」の式(1)により沸点データを算出し、
内容液Lの容量が中量の場合は、「(沸点データ)=(沸騰検知時温度T)−(2LSB)」の式(2)により沸点データを算出し、
内容液Lの容量が少量の場合は、「(沸点データ)=(沸騰検知時温度T)−(1LSB)」の式(3)により沸点データを算出する。
なお、本実施形態において、内容液Lの容量が多量とは、およそ2L以上であって、中量とは、および1L以上2L未満であって、少量とは、および1L未満と定義する。
また、上記した「LSB」とは、電気貯湯容器100の分解能であって、1LSBが約0.5℃に相当する。
【0041】
記憶部48は、電気貯湯容器100の動作に係る各種プログラムが記憶されている。そして、本実施形態では、当該プログラムの実行に必要なデータ(温度データA,B,C,D,…、温度データ列D1,D2,D3,…、及び、単位時間温度変化α1,α2,α3,…など)が記憶されている。
【0042】
<沸騰モードにおける電気貯湯容器の動作>
内容器11内に水が追加されて、電源コードが接続されたとき、電気貯湯容器100は、沸騰モードとなり、内容液Lを沸騰させる。以下、図9(a)および図9(b)を参照して、沸騰モードにおける内容液Lの沸騰動作について詳細に説明する。
【0043】
ステップS1で沸騰モードであることにより、ステップS2以下の制御が行われる。ステップS2では、ヒータ12(沸騰ヒータおよび保温ヒータの両方)をオンし、内容液Lの加熱を行う。それ以降、ステップS3で温度センサ15が検知する温度データの読み込みを行い、ステップS4でサンプリング間隔t秒が経過する都度、ステップS5に移行して、そのとき検知される温度データA,B,C…をサンプリングして記憶することを繰り返す。次いで、ステップS6でαフラグが1でなければステップS7へ移行し、温度データ列の時間幅w秒が経過していなければリターンし、経過しているとステップS8にて温度データ列D1(温度データA〜H)を設定する。続いて、ステップS9で温度データ列D1(A〜H)のうちの初期温度データAと終期温度データHとの差(H−A)を演算して単位時間温度変化α1とし、かつαフラグを1とする。次いで、ステップS10でカウンタを+1する。
【0044】
ステップS10でカウンタをインクリメントした後、またはステップS6でαフラグが1であるとき、ステップS11に移行し、サンプリング間隔t秒が経過する都度、ステップS12で温度データ列D2,D3,…を設定し、初期温度データと終期温度データとの差分を演算して、単位時間温度変化α2,α3,…とし、これを過去分と累計し、記憶するのに併せ、αフラグを1にする。そして、ステップS13でカウンタを+1する。さらに、次のステップS14で検出される温度データが93℃に達していなければ、ステップS11からステップS13のルーチンを繰り返す。ステップS14で温度データが93℃に到達し、ステップS15でβフラグが1でなければ、ステップS16に進み、加算した累計(α1+α2+α3+…+αn)をカウンタによるカウント値Nで除して単位時間温度変化の平均値αを求め、この平均値αから内容液Lの容量を判定し、判定した容量から単位時間温度変化α1,α2,α3,…が沸騰に向かって立ち下がっていくときの沸騰に対応する閾値βを、容量に応じて設定して記憶する。この後、またはステップS15でβフラグが1であればそのまま、ステップS17に進む。ステップS17では、単位時間温度変化α1,α2,α3,…が閾値βに到達していなければ、ステップS11に戻ってステップS17までを繰り返し、ステップS17で単位時間温度変化α1,α2,α3,…が閾値βに到達していると、ステップS18で沸騰と判定し、ステップS19でヒータ12をパワーダウンして、ステップS20において蒸気の発生を抑えた加熱を所定時間が経過するまで継続して、カルキ除去および除菌などを行う。そして、当該所定時間が経過すると、沸騰処理を終了する。沸騰処理終了後、保温処理に移行する。
【0045】
<保温モードにおける動作>
上記した沸騰処理が終了した後、電気貯湯容器100は、保温モードとなり、内容液Lを所定温度(98℃または90℃)で保温する。
【0046】
保温モードであることにより、当該保温モードが「98℃保温」、「90℃保温」、「ヒータオフ保温」のいずれかであるのか判断される。「98℃保温」および「90℃保温」の切換えは、保温ボタン32(図2参照)の押し下げにより行われ、「ヒータオフ保温」への切換えは、図示しないヒータオフ保温ボタンの押し下げにより行われる。「98℃保温」および「90℃保温」の場合には、主にヒータ12の保温ヒータが通電されて、内容液Lが保温される。これに対して、「ヒータオフ保温」の場合には、ヒータ12への通電がオフとなり、真空容器である内容器11による保温となる。
【0047】
<再沸騰モードにおける動作>
保温モードにおいて内容液Lを保温しているときに、再沸騰ボタン33(図2参照)が押し下げられると、再沸騰モードとなり、内容液Lを再び沸騰させる。
【0048】
再沸騰ボタン33が押し下げられることにより、再沸騰モードとなり、ヒータ12の保温ヒータおよび沸騰ヒータの両方が駆動されて、内容液Lが沸騰される。水が継ぎ足されている場合、または、電源コードが差し込みなおされている場合、当該再沸騰モードは、蒸気を出す再沸騰処理を行う。これに対して、水が継ぎ足されていない場合、且つ、電源コードが差し込みなおされていない場合、当該再沸騰モードは、蒸気を出さない再沸騰処理を行う。そして、再沸騰処理が終了した後、制御部40は、保温モードに移行し、保温処理を行う。
【0049】
<沸点データの取得方法>
次に、図10を参照して、本実施形態に係る電気貯湯容器100の沸点データの取得方法について説明する。
【0050】
まず、沸騰判断部45は、内容液Lが沸騰したか否かを判断する(ステップS51)。このステップS51における沸騰判定は、上記したステップS18における沸騰判定と同様である。そして、沸騰判断部45により内容液Lが沸騰したと判断されたとき(ステップS52:Yes)、沸点データ取得部46は、温度センサ15により検知される沸騰検知時温度Tから補正値を減じた沸点データを取得する(ステップS53)。次いで、容量算出部44により算出された内容液Lの容量が取得される(ステップS54)。
【0051】
そして、本実施形態では、補正部47は、ステップS53において検知された内容液Lの温度に係る情報(以下、沸点データ)を補正する(ステップS55)。具体的には、補正部47は、容量算出手段43により算出された内容液Lの容量に応じて、沸点データ取得部46により取得された沸点データを補正する。すなわち、補正部47は、(1)内容液Lの容量が多量の場合は、沸点データを上記式(1)により算出し、内容液Lの容量が中量の場合は、沸点データを上記式(2)により算出し、内容液Lの容量が少量の場合は、沸点データを上記式(3)により算出する。
【0052】
そして、記憶部48は、補正部47によって補正された沸点データを記憶して、沸点データの取得フローを終了する(ステップS56)。
【0053】
<本実施形態の電気貯湯容器の特徴>
上記実施形態において、電気貯湯容器100は、内容液Lの沸騰判断時において温度センサ15により検知される沸騰検知時温度Tが内容液Lの容量に起因してばらつく場合であっても、内容液Lの容量に応じて沸点データを補正することができる。これにより、補正された沸点データに係る温度を基に内容液Lの沸騰および再沸騰を行う場合に、内容液Lの沸騰および再沸騰を確実に行うことができる。また、内容液Lの殺菌およびカルキ抜きなどを行うために内容液Lを所定時間沸騰させる場合に、補正された沸点データに係る温度に達した後、当該所定時間沸騰させることによって、当該沸騰時に過剰に蒸気が出るのを抑制することができるので、省エネルギー効果を得ることができる。
【0054】
また、本実施形態において、サンプリング間隔t秒と温度データ列の時間幅wとの比率を1:4未満とすることにより、この比率が1:4以上である場合に比して、同じ温度データ列の時間幅w内に多くの温度データ(本実施形態では、温度データA〜Hの8つの温度データ)を含むことになり、温度のイレギュラーな検知が緩和されて、各温度データ列D1,D2,D3,…から演算する単位時間温度変化α1,α2,α3,…の時間経過に伴う「立ち上がり変化」及び「立ち下り変化」を繰り返す際の振れ幅を抑制することができる。これにより、当該「立ち上がり変化」及び「立ち下り変化」の振れ幅を抑制することによって、閾値βによって内容液Lの沸騰を正確かつ早期に判定することができる。
【0055】
上記したように、サンプリング間隔t秒を5秒、温度データ列の時間幅wを40秒とした場合、単位時間温度変化α1,α2,α3,…の沸騰に向かう変化は、図11に示すグラフII(t:w=1:8)の通りである。従来のグラフI(t:w=1:4)と比較すると、単位時間温度変化α1,α2,α3,…の「立ち上がり」及び「立ち下がり変化」の繰り返しリズムはほぼ対応しているが、振れ幅がほぼ半減している。特に、95秒時点からの立ち下り傾向がi、j、kと3つの区間が続く安定傾向を示す上、その後に立ち上がり区間lが続くが、グラフIの場合の立ち上がり区間aよりも立ち上がり度が軽減していることから、立下り区間kの終点を沸騰点と判定することができる。この沸騰を判定する閾値βは、35秒時点の「立ち下がり」および「立ち上がり」の折り返し点を外した12として、連続した2つの立ち下がり区間j、kの検出により、110秒時点を沸騰と早期判定することができる。
一方、従来のグラフIでは、立ち上がり区間aの後に、立下り区間bおよびcが2つ続いた140秒時点で沸騰と判定する。
このため、本実施形態では、従来と比較して、約30秒程度早期に沸騰判定が可能となっている。
【0056】
上記したように、本実施形態では、サンプリング間隔t秒と温度データ列の時間幅wとの比率を1:4未満とすることにより、内容液Lの沸騰を早期に判定することができる。具体的には、図8(a)および(b)に示すように、内容液Lが少量の場合には内容液Lの対流が少ない分だけ、内容液Lが多量の場合に比べて、単位時間温度変化が安定するので、早期に沸騰判定を行うことができる。したがって、内容液Lが少量の場合における沸騰判定時の検知温度T1と、内容液Lが多量の場合における沸騰判定時の検知温度T2とが、異なる。この場合、検知温度T1と検知温度T2とを一律に補正してすると(補正値を同じ値にすると)、沸点データがばらつく。ここで、本実施形態では、内容液Lの容量に応じて沸点データを補正することによって、沸点データがばらつくのを抑制することができる。これにより、補正された沸点データに係る温度を基に内容液Lの沸騰および再沸騰を行う場合に、内容液Lの沸騰および再沸騰を確実に行うことができる。また、内容液Lの殺菌およびカルキ抜きなどを行うために内容液Lを所定時間沸騰させる場合に、補正された沸点データに係る温度に達した後、当該所定時間沸騰させることによって、当該沸騰時に過剰に蒸気が出るのを抑制することができるので、省エネルギー効果を得ることができる。
【0057】
また、本実施形態において、内容液Lの容量に応じて補正値の絶対値を変化させるだけで簡単に沸点データを補正することができる。これにより、沸点データを取得するための演算処理が速くなる。
【0058】
また、本実施形態において、沸点データに係る温度と相対的な温度で内容液Lを保温することができる。つまり、絶対温度で内容液Lの保温を管理している場合と異なり、気圧が変化しても保温時に内容液Lが沸騰したり保温温度が低温になったりするのを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態において、内容液Lの単位時間当たりの温度変化量によって、内容液Lの容量を算出することができる。これにより、フロートセンサ等を使用せずに、温度センサ15により検出される温度変化で内容液Lの容量を算出することができる。
【0060】
<請求項の各構成要素と上記実施形態の各部との対応関係>
上記実施形態においては、電気貯湯容器100が「電気貯湯容器」に相当し、内容器11が「容器」に相当し、温度センサ15が「温度センサ」に相当し、内容液Lが「内容液」に相当し、容量算出部44が「容量算出手段」に相当し、ヒータ12が「加熱手段」に相当し、沸騰判断部45が「沸騰判定手段」に相当し、沸点データ取得部46が「沸点データ取得手段」に相当し、補正部47が「補正手段」に相当し、記憶部48が「記憶手段」に相当する。
【0061】
<第2実施形態>
第2実施形態の電気貯湯容器では、沸点データを補正した第1実施形態に係る電気貯湯容器100とは異なり、水の継ぎ足し時において、継ぎ足し前の内容液Lの容量に応じて、加熱時間を変更する。この加熱時間とは、沸騰状態が継続される時間であって、内容液Lの殺菌およびカルキ抜き等が行われる時間である。この第2実施形態に係る電気貯湯容器は、第1実施形態の補正部47および記憶部48が、それぞれ加熱時間変更部47aおよび記憶部48aに変更されたこと以外、第1実施形態と同様であるので、加熱時間変更部47aおよび記憶部48a以外は、同一符号を付してその説明を適宜省略する。
【0062】
<制御部>
第2実施形態に係る電気貯湯容器の制御部40aは、図13に示すように、ヒータ制御部41と、ポンプ制御部42と、温度データ取得部43と、容量算出部44と、沸騰判断部45と、沸点データ取得部46と、加熱時間変更部47aと、記憶部48aと、を有している。
【0063】
記憶部48aには、電気貯湯容器100の動作に係る各種プログラムが記憶されている。そして、本実施形態では、記憶部48aは、当該プログラムの実行に必要なデータ(温度データA,B,C,D,…、温度データ列D1,D2,D3,…、及び、単位時間温度変化α1,α2,α3,…など)を記憶している。
【0064】
そして、本実施形態では、記憶部48aには、容量算出部44により算出された内容液Lの容量が記憶されている。また、記憶部48aには、図14に示した2つのデータテーブルDT1およびDT2が記憶されている。データテーブルDT1及びDT2は、温度上昇勾配の平均値(内容液Lの容量に相当)と加熱時間(図中では、蒸気出タイマーと表記)とが対応付けられたデータテーブルである。そして、本実施形態では、データテーブルDT2の加熱時間が、データテーブルDT1の加熱時間より長くなっている。
【0065】
加熱時間変更部47aは、記憶部48aに記憶されている水の継ぎ足し前における内容器11内の内容液Lの容量に応じて、使用するデータテーブルDT1およびDT2を変更する。具体的には、加熱時間変更部47aは、前回沸騰時の内容液Lの容量が所定値(例えば、およそ1L)以下の場合には、加熱時間が長いデータテーブルDT2を選択し、前回沸騰時の内容液Lの容量が所定値を超える場合には、加熱時間が短いデータテーブルDT1を選択する。
【0066】
<水の継ぎ足し時における自動沸騰処理>
保温モードにおいて内容液Lを保温しているときに、水が継ぎ足されると、再沸騰モードとなり、蒸気を発生させる再沸騰が行われる。以下、図15を参照して、水の継ぎ足し時における内容液Lの再沸騰処理について詳細に説明する。
【0067】
まず、水が継ぎ足されると、ヒータ12(沸騰ヒータおよび保温ヒータの両方)が通電されて、内容液Lが加熱される(ステップS1a)。そして、前回沸騰時の内容液Lの容量C1が記憶部48aに記憶されているか否かを判断して(ステップS2a)、前回沸騰時の内容液Lの容量C1が記憶されていれば(ステップS2a:Yes)、水の継ぎ足し後の内容液Lの容量C2を算出する処理を開始する(ステップS3a)。これにより、水の継ぎ足し後の内容液Lの容量が算出される(ステップS4a)。一方、前記回沸騰時の内容液Lの容量C1が記憶されていなければ(ステップS2a:No)、通常の湯沸かし処理を行う(ステップS5a)。
【0068】
次に、ヒータ12により内容液Lが加熱されて、温度センサ15によって検知される内容液Lの温度が沸点データに係る温度以上に上昇したとき(ステップS6a:Yes)、加熱時間のカウントがスタートする(ステップS7a)。そして、本実施形態では、水の継ぎ足し前における内容液Lの容量C1が所定値より少ないか否かが判断される(ステップS8a)。ここで、本実施形態では、水の継ぎ足し前における内容液Lの容量C1が所定値より少ない場合には(ステップS8a:Yes)、データテーブルDT2を選択し(ステップS9a)、水の継ぎ足し前における内容液Lの容量C1が所定値以上の場合には(ステップS8a:No)、データテーブルDT1を選択する(ステップS10a)。
【0069】
データテーブルDT2を選択したとき(ステップS9a)、水の継ぎ足し後における内容液Lの容量C2に対応するデータテーブルDT2の加熱時間が経過したか否かを判断し(ステップS11a)、当該加熱時間が経過した場合には(ステップS11a:Yes)、ヒータ12への通電を停止する(ステップS12a)。これに対して、データテーブルDT1を選択したとき(ステップS10a)、水の継ぎ足し後における内容液Lの容量C2に対応するデータテーブルDT1の加熱時間が経過したか否かを判断し(ステップS13a)、当該加熱時間が経過した場合には(ステップS13a:Yes)、ヒータ12への通電を停止する(ステップS12a)。
【0070】
次に、水の継ぎ足し前の内容液Lの容量C1をC2に更新して、水の継ぎ足し後の内容液Lの容量C2を記憶する(ステップS12a)。これにより、水の継ぎ足し後における内容液Lの再沸騰処理が終了する(ステップS13a)。この水の継ぎ足し後における再沸騰処理終了後、制御部40は、保温モードに移行し、保温処理を行う。
【0071】
<本実施形態の電気貯湯容器の特徴>
第2実施形態に係る電気貯湯容器は、継ぎ足し後の内容液の容量に応じた加熱時間で加熱しても、当該内容液Lが沸騰温度まで達しない場合であっても、加熱時間変更部47aにより加熱時間が延長されることによって(データテーブルDT2が選択されることによって)、内容液Lを確実に沸騰させることができる。これにより、液体の継ぎ足し時において、当該液体を沸騰させてカルキ抜きを行うことができる。上記のように、加熱時間を調整することによって、確実に沸騰を行うことができると共に、長時間の沸騰を抑制することができるので、省エネルギー効果を得ることができる。
【0072】
また、本実施形態において、記憶部48に記憶されているデータテーブルDT1またはDT2を選択するだけで、内容液Lの加熱時間を簡単に変更することができる。
【0073】
<請求項の各構成要素と上記実施形態の各部との対応関係>
上記実施形態においては、加熱時間変更部47aが「加熱時間変更手段」に相当し、記憶部48が「加熱時間記憶手段」に相当、データテーブルDT1が「第1加熱時間」に相当し、データテーブルDT2が「第2加熱時間」に相当する。
【0074】
以上、本発明の実施形態および実施例について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0075】
例えば、第1実施形態では、内容液Lの容量に応じて補正値の絶対値(3LSB,2LSB,1LSB)を変更し、当該補正値を減じる(減算)ことによって、沸点データを補正する例について説明したが、本発明はこれに限らず、沸点データを加算、積算または除算により補正しても良い。
【0076】
また、第2実施形態では、2つのデータテーブルDT1およびDT2から内容液Lの容量に応じて選択する例について説明したが、本発明はこれに限らず、内容液Lの容量で区分された複数の区間に対応した複数のデータテーブルから、水の継ぎ足し前の内容液の容量に応じて、当該複数のデータテーブルの中から加熱時間を選択しても良い。
【0077】
また、第1実施形態では、温度センサ15を内容器11の底部分に設ける例について説明したが、本発明はこれに限らず、蒸気孔23の近傍に温度センサ15を設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、内容液の沸騰を確実に行い、且つ、沸騰時に蒸気が出過ぎるのを抑制して、省エネルギー効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0079】
100 電気貯湯容器
11 内容器
15 温度センサ
44 容量算出部
45 沸騰判断部
46 沸点データ取得部
47 補正部
47a 加熱時間変更部
48 記憶部
48a 記憶部
L 内容液
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容液を加熱して湯沸し及び保温を行う電気貯湯容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内容液の検知温度が沸騰温度に近い所定の温度域に達した時に検知温度を一定時間間隔でサンプリングして温度データを順次に記憶する温度系列記憶手段と、該温度系列記憶手段に記憶した系列温度データを複数の区間に区切り各区間の温度データを加算して各々の区間データを求めこの複数の区間データから時間的に前後した区間データの差により設定される加熱容量の補正基準値に基づいて沸騰と判定する沸騰判定手段とを備えた電気ポットを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−55205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1で開示されるような沸騰判定において、沸騰検知が遅れると、無駄な加熱および蒸気の発生となって省エネルギーに反すると共に、沸騰検知が早すぎると、内容液の殺菌および消臭を十分に行えないという不都合がある。近年、省エネルギーおよび健康が強く求められる中、沸騰判定の検知精度は益々重要になっている。
【0005】
そこで、本発明は、内容液の沸騰を確実に行いつつ、当該沸騰時に蒸気が出過ぎるのを抑制して省エネルギー効果を得ることが可能な電気貯湯容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
本発明に係る電気貯湯容器は、容器内の内容液の温度を検知する温度センサと、内容液の容量を算出する容量算出手段と、内容液を加熱する加熱手段と、加熱手段により加熱された内容液が沸騰したか否かを判断する沸騰判断手段と、沸騰判断手段により内容液が沸騰したと検出されたときの温度センサにより検知される温度に基づいて沸点データを取得する沸点データ取得手段と、容量算出手段により算出された内容液の容量に応じて、当該沸点データを補正する補正手段と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、内容液の沸騰判断時において温度センサによる検知温度が内容液の容量に起因してばらつく場合であっても、内容液の容量に応じて沸点データを補正することができる。これにより、補正された沸点データに係る温度を基に内容液の沸騰および再沸騰を行う場合に、内容液の沸騰および再沸騰を確実に行うことができる。また、内容液の殺菌およびカルキ抜きなどを行うために内容液を所定時間沸騰させる場合に、補正された沸点データに係る温度に達した後、当該所定時間沸騰させることによって、当該沸騰時に過剰に蒸気が出るのを抑制することができるので、省エネルギー効果を得ることができる。
【0008】
(2)
上記した電気貯湯容器において、沸点データ取得手段は、沸騰判断手段により内容液が沸騰したと検出されたときの温度センサにより検知される温度に補正値を減じることにより、沸点データを取得し、補正手段は、容量算出手段により算出される内容液の容量に応じて、補正値の絶対値を補正することにより、沸点データを補正する。
【0009】
上記構成によれば、内容液の容量に応じて補正値の絶対値を変化させるだけで簡単に沸点データを補正することができる。これにより、沸点データを取得するための演算処理が速くなる。
【0010】
(3)
また、本発明に係る電気貯湯容器は、容器内の内容液の温度を検知する温度センサと、内容液の容量を算出する容量算出手段と、容量算出手段により算出された内容液の容量を記憶する記憶手段と、容器内に液体が継ぎ足されたときに、容量算出手段により算出される継ぎ足し後の内容液の容量に応じた加熱時間で当該内容液を加熱する加熱手段と、記憶手段に記憶されている液体の継ぎ足し前における容器内の内容液の容量に応じて、加熱時間を変更する加熱時間変更手段と、を備える。
【0011】
上記構成によれば、継ぎ足し後の内容液の容量に応じた加熱時間で加熱しても、当該内容液が沸騰温度まで達しない場合に、加熱時間変更手段により加熱時間が延長されることによって、内容液を確実に沸騰させることができる。この際、加熱時間変更手段により加熱時間が調整されるので、内容液が長時間沸騰するのを抑制することができる。その結果、沸騰時に蒸気が過剰に出るのを抑制して、省エネルギー効果を得ることができる。
【0012】
(4)
上記した電気貯湯容器において、加熱時間が異なる第1加熱時間および第2加熱時間を記憶する加熱時間記憶手段をさらに備え、加熱時間変更手段は、加熱時間記憶手段に記憶されている液体の継ぎ足し前における容器内の内容液の容量に応じて、第1加熱時間または第2加熱時間を選択する。
【0013】
上記構成によれば、加熱時間記憶手段に記憶されている第1記憶時間または第2記憶時間を選択するだけで、内容液の加熱時間を簡単に変更することができる。したがって、内容液の容量に応じて加熱時間をその都度計算する場合に比べて、演算処理が早くなる。
【0014】
(5)
上記した電気貯湯容器において、加熱手段は、沸点データに係る温度の相対値である保温温度により内容液を保温する。
【0015】
上記構成によれば、沸点データに係る温度と相対的な温度で内容液を保温することができる。つまり、絶対温度で内容液の保温を管理している場合と異なり、気圧が変化しても保温時に内容液が沸騰したり保温温度が低温になったりするのを抑制することができる。
【0016】
(6)
上記した電気貯湯容器において、容量算出手段は、加熱手段により加熱された内容液の単位時間当たりの温度変化に基づいて、内容液の容量を算出する。
【0017】
上記構成によれば、内容液の単位時間当たりの温度変化量によって、内容液の容量を算出することができる。これにより、フロートセンサ等を使用せずに、温度センサにより検知される温度変化で内容液の容量を算出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電気貯湯容器によれば、内容液の沸騰を確実に行いつつ、当該沸騰時に蒸気が出過ぎるのを抑制して、省エネルギー効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気貯湯容器の正面図である。
【図2】図1に示した電気貯湯容器の平面図である。
【図3】図1に示した電気貯湯容器の内部構成を示した断面図である。
【図4】図1に示した電気貯湯容器の制御部のブロック図である。
【図5】ヒータにより加熱された内容液の温度変化を示したグラフである。
【図6】単位時間温度変化と時間との関係を示したグラフである。
【図7】単位時間温度変化の平均値αと閾値βとが対応付けられた表である。
【図8(a)】2500mLの内容液を加熱したときの単位時間温度変化を示したグラフである。
【図8(b)】1000mLの内容液を加熱したときの単位時間温度変化を示したグラフである。
【図9(a)】沸騰モードにおける湯沸かし処理を説明するためのフローチャートである。
【図9(b)】沸騰モードにおける湯沸かし処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】沸点データの取得方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】従来の沸騰判定に係る単位時間温度変化と本実施形態の沸騰判定に係る単位時間温度変化とを示したグラフである。
【図12】内容液の容量によって沸点検知温度T1およびT2が変化することを説明するためのグラフである。
【図13】第2実施形態に係る電気貯湯容器の制御部のブロック図である。
【図14】記憶部に記憶されるデータテーブルDT1およびDT2である。
【図15】水の継ぎ足し時における自動再沸騰処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る電気貯湯容器について図面を参照しながら説明する。
【0021】
<第1実施形態>
第1実施形態の電気貯湯容器100は、水などの内容液Lを加熱する装置であって、家庭用の電気ポットとして利用される。この電気貯湯容器100は、複数の動作モード(湯沸かしモード、保温モード(98℃保温、90℃保温、ヒータオフ保温)、再沸騰モード(蒸気あり、蒸気なし))で駆動するように構成されている。これらの各種動作モードにおける電気貯湯容器100の動作については、後述する。
電気貯湯容器100は、図1および図2に示すように、略筒状の器体10と、器体10の上部に取り付けられる蓋20と、使用者の操作に係る操作部30と、を備えている。
【0022】
<器体>
器体10は、図3に示すように、水などの液体である内容液Lを貯留する内容器11と、内容器11内の内容液Lを加熱するヒータ12と、内容器11内の内容液Lを外部に案内する吐出路13と、内容器11の下方に位置する電動ポンプ14と、内容液Lの温度を検知する温度センサ15と、を有している。また、器体10の外表面には、図1に示すように、上記した吐出路13を露出させる液量表示窓16が設けられている。
【0023】
内容器11は、図3に示すように、ステンレス鋼製の容器であって、略断熱構造となっている。なお、本実施形態に係る内容器11は、シングル(真空一重構造)容器であるが、真空二重構造であっても良い。この内容器11は、略筒状であって、その底部分には、ヒータ12および温度センサ15が設けられている。
【0024】
ヒータ12は、沸騰ヒータと保温ヒータとから構成されている。内容液Lを沸騰させる際には(湯沸かしモードおよび再沸騰モードの場合には)、沸騰ヒータおよび保温ヒータの両方が駆動すると共に、内容液Lを保温する際には(保温モードの場合には)、主に保温ヒータが駆動する。
【0025】
吐出路13は、図3に示すように、内容器11内における底面付近の内容液Lを電気貯湯容器100の上部に設けられる注ぎ口13aまで導くために設けられている。すなわち、内容器11内の内容液Lは、電動ポンプ14の駆動により、吐出路13を通過して注ぎ口13aから吐出される。この吐出路13の一部は、図1に示すように、透明管で形成されており、当該透明部分の吐出路13は、当該液量表示窓16から視認可能となっている。吐出路13における液面レベルは、内容器11の液面レベルと同じになっているので、使用者は、蓋20を開くことなく外部から液量表示窓16を介して内容器11内の内容液Lの残量を知ることができる。
【0026】
<蓋>
蓋20は、図3に示すように、内容器11の上部に設けられる開口部11aを開閉するために、器体10の後部においてヒンジピン21によって回転可能に軸支されている。そして、蓋20には、当該蓋20を開閉するための開閉レバー22(図2および図3参照)が設けられている。使用者は、内容器11内に水を追加する際には、開閉レバー22を操作して蓋20を開放する。また、内容液Lを沸騰または保温する際には、開閉レバー22を操作して蓋20を閉鎖する。この蓋20には、図2及び図3に示すように、ヒータ12により加熱されて沸騰した内容液Lの蒸気を外部に逃がすための蒸気孔23が形成されている。
【0027】
<操作部>
操作部30は、図2に示すように、電気貯湯容器100の前方へ張り出した部分に設けられている。この操作部30は、電気貯湯容器100の各種モード(湯沸かしモード、保温モード、再沸騰モード)の設定、タイマー設定(内容液Lを沸騰させる時間(例えば、6時間後、9時間後)の設定)、及び、保温温度の選択などを行うための操作ボタン31〜33と、設定されたモード、現在時刻、及び、沸騰完了までの残り時間等を表示する表示部34と、を有している。
【0028】
図2に示すように、給湯ボタン31は、内容液Lを吐出させるボタンであって、当該給湯ボタン31が押し下げられることによって電動ポンプ14が駆動される。また、保温ボタン32は、内容液Lの保温温度を選択するボタンであって、当該保温ボタン32が押し下げられることによって、98℃保温および90℃保温がロータリ式に選択される。なお、ヒータオフ保温は、図示しないボタンが押し下げられることによって、選択される。また、再沸騰ボタン33は、保温中の内容液Lを再沸騰させるボタンであって、当該再沸騰ボタン33が1回押し下げられると蒸気を発生させない沸騰が行われ、当該再沸騰ボタン33が2回押し下げられると蒸気を発生させる沸騰が行われる。
【0029】
また、表示部34は、現在時刻、及び、沸騰完了までの残り時間等を表示する液晶表示部35と、現在の動作状態を示すランプ部36と、を含んでいる。湯沸かしモードおよび再沸騰モードのときには、沸騰ランプ36aが点灯し、保温モードのときには、保温ランプ36bが点灯する。
【0030】
<制御部>
上記した操作部30、ヒータ12、電動ポンプ14、温度センサ15は、図4に示すように、マイクロコンピュータ等を搭載した制御部40に通信可能に接続されている。この制御部40は、ヒータ制御部41と、ポンプ制御部42と、温度データ取得部43と、容量算出部44と、沸騰判断部45と、沸点データ取得部46と、補正部47と、記憶部48と、を有している。
【0031】
ヒータ制御部41は、ヒータ12と通信可能に接続されており、ヒータ12の駆動を制御して、内容液Lの保温および沸騰を行う。具体的には、ヒータ制御部41は、内容器11内に水が追加されて、電源コード(図示せず)が接続されたとき、沸騰モードになり、沸騰ヒータおよび保温ヒータの両方を駆動して、内容液Lを沸騰させる。また、ヒータ制御部41は、内容液Lの沸騰が完了した後、保温モードになり、主に保温ヒータを駆動して、内容液Lが所定温度(98℃または90℃)になるように内容液Lを保温する。また、ヒータ制御部41は、再沸騰ボタン33が押し下げられたときに、再沸騰モードになり、沸騰ヒータおよび保温ヒータの両方を駆動して、内容液Lを再沸騰させる。
【0032】
ポンプ制御部42は、電動ポンプ14と通信可能に接続されており、電動ポンプ14の駆動を制御して、内容液Lを注ぎ口13aから吐出する。具体的には、ポンプ制御部42は、給湯ボタン31が押し下げられている間、注ぎ口13aから内容液Lが給湯されるように、電動ポンプ14を駆動する。
【0033】
温度データ取得部43は、温度センサ15と通信可能に接続されており、サンプリング間隔t秒(例えば、5秒)で、内容液Lの温度データ(A,B,C,D,…)を順次取得し、それらの温度データ(A,B,C,D,…)を記憶部48に格納する。そして、本実施形態では、温度データ取得部43は、連続した複数(例えば、8つ)の温度データを温度データ列として設定する。そして、温度データ取得部43は、サンプリング間隔t秒単位で温度データをシフトして、温度データ列を順次設定する。すなわち、図5に示すように、サンプリング間隔t秒で、温度データA,B,C,D,…が取得されている場合に、温度データ列D1は、温度データA〜Hからなり、次の温度データ列D2は、サンプリング間隔t秒後にずらした温度データB〜Iからなり、その次の温度データ列D3は、さらにサンプリング間隔t秒後にずらした温度データC〜Jからなる。このようにして、温度データ列D1,D2,D3,…が設定される。この際、サンプリング間隔tと温度データ列の時間幅wとの比率は、1:4未満となっている。
【0034】
温度データ取得部43により取得される温度センサ15の検知温度は、図5に示すように、直線的に100℃まで上昇した後、100℃から更に約1.5℃上昇して、略一定に推移する。一方、実際の水温は、直線的に100℃まで上昇した後、100℃で略一定に推移する。内容器11内の内容液Lの容量が多い場合は、単位時間あたりの温度上昇が小さくなり温度変化を示す直線y1の傾きが小さくなり、内容器11内の内容液Lの容量が少ない場合は、単位時間あたりの温度上昇が大きくなり温度変化を示す直線y2の傾きが大きくなる。
【0035】
また、本実施形態では、温度データ取得部43は、設定した温度データ列D1,D2,D3…のそれぞれについて、初期温度データと終期温度データとの差分(以下、この差分を単位時間温度変化)を算出する。すなわち、温度データ列D1における単位時間温度変化α1は、(H−A)により算出され、温度データ列D2における単位時間温度変化α2は、(I−B)により算出され、温度データ列D3における単位時間温度変化α3は、(J−C)により算出される。このようにして、温度データ取得部43は、単位時間温度変化α1,α2,α3,…を算出する。
【0036】
容量算出部44は、内容器11内に収容される内容液Lの容量を算出する。この容量算出部44は、ヒータ12により加熱された内容液Lの単位時間当たりの温度変化(=単位時間温度変化α1,α2,α3,…)に基づいて、内容液Lの容量を算出する。したがって、容量算出部44は、上記した温度データ取得部43により算出される単位時間温度変化α1,α2,α3,…に基づいて、内容液Lの容量を算出する。具体的には、温度データ取得部43は、以下の式により算出される単位時間温度変化の平均値αに基づいて、内容液Lの容量を算出する。
α=(α1+α2+α3+…+αn)/n
図5に示すように、内容液Lの容量が多い場合には、当該平均値α(図5中では、一例として単位時間温度変化α1を示している)が小さくなり、内容液Lの容量が少ない場合には、当該平均値αが大きくなる傾向にある。そのため、容量算出部44は、平均値αの大きさに基づいて、内容液Lの容量を経験的に算出する。
【0037】
沸騰判断部45は、ヒータ12により加熱された内容液Lが沸騰したか否かを判断する。この沸騰判断部45は、図6に示すように、記憶部48に記憶される単位時間温度変化α1,α2,α3,…が、所定の閾値βまで低下したときに、内容液Lが沸騰したと判定する。この閾値βは、図7に示すように、単位時間温度変化の平均値αの大きさに応じて、経験的に設定される。
【0038】
単位時間温度変化α1,α2,α3,…は、理想的には、図6に示すように、一定値で推移した後、下降する。ところが、実際には、図8(a)に示すように、内容液Lの容量が多く(図8(a)では、水量が2500mL)、内容器11内で内容液Lが対流する場合には、立ち上がり変化と立ち下がり変化とを繰り返して上下に大きく振れながら推移する。一方、内容液Lの容量が少なく(図8(b)では、水量が1000mL)、当該内容液Lの対流が発生し難い場合には、図8(b)に示すように、図6の理想的な曲線と近似する曲線を描く。そこで、本実施形態に係る沸騰判定部45は、立ち上がり変化が途中で生じずに立ち下がり変化が持続するようになるのを待って、沸騰を判定することになる。具体的には、沸騰判定部45は、最後の立ち上がり域が生じた後、続く2つの区間で立ち下がり変化が続いた時点で、沸騰と判定することになる。
【0039】
沸点データ取得部46は、沸騰判断部45により内容液Lが沸騰したと判断されたときの温度センサ15により検知される温度T(以下、沸騰検知時温度Tとする)から補正値を減じることによって、沸点データを取得する。すなわち、沸点データ取得部46は、以下の式により沸点データを取得する。なお、補正値は、約1.5℃に相当する。
(沸点データ)=(沸騰検知時温度T)−(補正値)
この沸点データ取得部46により取得される沸点データは、内容液Lの沸点を示す温度データであって、保温モードにおける内容液Lの保温、再沸騰モードにおける内容液の再沸騰に使用される。すなわち、本実施形態の電気貯湯容器100では、沸点データに係る温度の相対値で内容液Lの温度管理を行う。
【0040】
補正部47は、容量算出手段43により算出された内容液Lの容量に応じて、沸点データ取得部46により取得された沸点データを補正する。具体的には、補正部47は、上記した沸点データを取得するために使用された式における補正値の絶対値を補正することにより、沸点データを補正する。
すなわち、本実施形態の補正部47は、
内容液Lの容量が多量の場合は、「(沸点データ)=(沸騰検知時温度T)−(3LSB)」の式(1)により沸点データを算出し、
内容液Lの容量が中量の場合は、「(沸点データ)=(沸騰検知時温度T)−(2LSB)」の式(2)により沸点データを算出し、
内容液Lの容量が少量の場合は、「(沸点データ)=(沸騰検知時温度T)−(1LSB)」の式(3)により沸点データを算出する。
なお、本実施形態において、内容液Lの容量が多量とは、およそ2L以上であって、中量とは、および1L以上2L未満であって、少量とは、および1L未満と定義する。
また、上記した「LSB」とは、電気貯湯容器100の分解能であって、1LSBが約0.5℃に相当する。
【0041】
記憶部48は、電気貯湯容器100の動作に係る各種プログラムが記憶されている。そして、本実施形態では、当該プログラムの実行に必要なデータ(温度データA,B,C,D,…、温度データ列D1,D2,D3,…、及び、単位時間温度変化α1,α2,α3,…など)が記憶されている。
【0042】
<沸騰モードにおける電気貯湯容器の動作>
内容器11内に水が追加されて、電源コードが接続されたとき、電気貯湯容器100は、沸騰モードとなり、内容液Lを沸騰させる。以下、図9(a)および図9(b)を参照して、沸騰モードにおける内容液Lの沸騰動作について詳細に説明する。
【0043】
ステップS1で沸騰モードであることにより、ステップS2以下の制御が行われる。ステップS2では、ヒータ12(沸騰ヒータおよび保温ヒータの両方)をオンし、内容液Lの加熱を行う。それ以降、ステップS3で温度センサ15が検知する温度データの読み込みを行い、ステップS4でサンプリング間隔t秒が経過する都度、ステップS5に移行して、そのとき検知される温度データA,B,C…をサンプリングして記憶することを繰り返す。次いで、ステップS6でαフラグが1でなければステップS7へ移行し、温度データ列の時間幅w秒が経過していなければリターンし、経過しているとステップS8にて温度データ列D1(温度データA〜H)を設定する。続いて、ステップS9で温度データ列D1(A〜H)のうちの初期温度データAと終期温度データHとの差(H−A)を演算して単位時間温度変化α1とし、かつαフラグを1とする。次いで、ステップS10でカウンタを+1する。
【0044】
ステップS10でカウンタをインクリメントした後、またはステップS6でαフラグが1であるとき、ステップS11に移行し、サンプリング間隔t秒が経過する都度、ステップS12で温度データ列D2,D3,…を設定し、初期温度データと終期温度データとの差分を演算して、単位時間温度変化α2,α3,…とし、これを過去分と累計し、記憶するのに併せ、αフラグを1にする。そして、ステップS13でカウンタを+1する。さらに、次のステップS14で検出される温度データが93℃に達していなければ、ステップS11からステップS13のルーチンを繰り返す。ステップS14で温度データが93℃に到達し、ステップS15でβフラグが1でなければ、ステップS16に進み、加算した累計(α1+α2+α3+…+αn)をカウンタによるカウント値Nで除して単位時間温度変化の平均値αを求め、この平均値αから内容液Lの容量を判定し、判定した容量から単位時間温度変化α1,α2,α3,…が沸騰に向かって立ち下がっていくときの沸騰に対応する閾値βを、容量に応じて設定して記憶する。この後、またはステップS15でβフラグが1であればそのまま、ステップS17に進む。ステップS17では、単位時間温度変化α1,α2,α3,…が閾値βに到達していなければ、ステップS11に戻ってステップS17までを繰り返し、ステップS17で単位時間温度変化α1,α2,α3,…が閾値βに到達していると、ステップS18で沸騰と判定し、ステップS19でヒータ12をパワーダウンして、ステップS20において蒸気の発生を抑えた加熱を所定時間が経過するまで継続して、カルキ除去および除菌などを行う。そして、当該所定時間が経過すると、沸騰処理を終了する。沸騰処理終了後、保温処理に移行する。
【0045】
<保温モードにおける動作>
上記した沸騰処理が終了した後、電気貯湯容器100は、保温モードとなり、内容液Lを所定温度(98℃または90℃)で保温する。
【0046】
保温モードであることにより、当該保温モードが「98℃保温」、「90℃保温」、「ヒータオフ保温」のいずれかであるのか判断される。「98℃保温」および「90℃保温」の切換えは、保温ボタン32(図2参照)の押し下げにより行われ、「ヒータオフ保温」への切換えは、図示しないヒータオフ保温ボタンの押し下げにより行われる。「98℃保温」および「90℃保温」の場合には、主にヒータ12の保温ヒータが通電されて、内容液Lが保温される。これに対して、「ヒータオフ保温」の場合には、ヒータ12への通電がオフとなり、真空容器である内容器11による保温となる。
【0047】
<再沸騰モードにおける動作>
保温モードにおいて内容液Lを保温しているときに、再沸騰ボタン33(図2参照)が押し下げられると、再沸騰モードとなり、内容液Lを再び沸騰させる。
【0048】
再沸騰ボタン33が押し下げられることにより、再沸騰モードとなり、ヒータ12の保温ヒータおよび沸騰ヒータの両方が駆動されて、内容液Lが沸騰される。水が継ぎ足されている場合、または、電源コードが差し込みなおされている場合、当該再沸騰モードは、蒸気を出す再沸騰処理を行う。これに対して、水が継ぎ足されていない場合、且つ、電源コードが差し込みなおされていない場合、当該再沸騰モードは、蒸気を出さない再沸騰処理を行う。そして、再沸騰処理が終了した後、制御部40は、保温モードに移行し、保温処理を行う。
【0049】
<沸点データの取得方法>
次に、図10を参照して、本実施形態に係る電気貯湯容器100の沸点データの取得方法について説明する。
【0050】
まず、沸騰判断部45は、内容液Lが沸騰したか否かを判断する(ステップS51)。このステップS51における沸騰判定は、上記したステップS18における沸騰判定と同様である。そして、沸騰判断部45により内容液Lが沸騰したと判断されたとき(ステップS52:Yes)、沸点データ取得部46は、温度センサ15により検知される沸騰検知時温度Tから補正値を減じた沸点データを取得する(ステップS53)。次いで、容量算出部44により算出された内容液Lの容量が取得される(ステップS54)。
【0051】
そして、本実施形態では、補正部47は、ステップS53において検知された内容液Lの温度に係る情報(以下、沸点データ)を補正する(ステップS55)。具体的には、補正部47は、容量算出手段43により算出された内容液Lの容量に応じて、沸点データ取得部46により取得された沸点データを補正する。すなわち、補正部47は、(1)内容液Lの容量が多量の場合は、沸点データを上記式(1)により算出し、内容液Lの容量が中量の場合は、沸点データを上記式(2)により算出し、内容液Lの容量が少量の場合は、沸点データを上記式(3)により算出する。
【0052】
そして、記憶部48は、補正部47によって補正された沸点データを記憶して、沸点データの取得フローを終了する(ステップS56)。
【0053】
<本実施形態の電気貯湯容器の特徴>
上記実施形態において、電気貯湯容器100は、内容液Lの沸騰判断時において温度センサ15により検知される沸騰検知時温度Tが内容液Lの容量に起因してばらつく場合であっても、内容液Lの容量に応じて沸点データを補正することができる。これにより、補正された沸点データに係る温度を基に内容液Lの沸騰および再沸騰を行う場合に、内容液Lの沸騰および再沸騰を確実に行うことができる。また、内容液Lの殺菌およびカルキ抜きなどを行うために内容液Lを所定時間沸騰させる場合に、補正された沸点データに係る温度に達した後、当該所定時間沸騰させることによって、当該沸騰時に過剰に蒸気が出るのを抑制することができるので、省エネルギー効果を得ることができる。
【0054】
また、本実施形態において、サンプリング間隔t秒と温度データ列の時間幅wとの比率を1:4未満とすることにより、この比率が1:4以上である場合に比して、同じ温度データ列の時間幅w内に多くの温度データ(本実施形態では、温度データA〜Hの8つの温度データ)を含むことになり、温度のイレギュラーな検知が緩和されて、各温度データ列D1,D2,D3,…から演算する単位時間温度変化α1,α2,α3,…の時間経過に伴う「立ち上がり変化」及び「立ち下り変化」を繰り返す際の振れ幅を抑制することができる。これにより、当該「立ち上がり変化」及び「立ち下り変化」の振れ幅を抑制することによって、閾値βによって内容液Lの沸騰を正確かつ早期に判定することができる。
【0055】
上記したように、サンプリング間隔t秒を5秒、温度データ列の時間幅wを40秒とした場合、単位時間温度変化α1,α2,α3,…の沸騰に向かう変化は、図11に示すグラフII(t:w=1:8)の通りである。従来のグラフI(t:w=1:4)と比較すると、単位時間温度変化α1,α2,α3,…の「立ち上がり」及び「立ち下がり変化」の繰り返しリズムはほぼ対応しているが、振れ幅がほぼ半減している。特に、95秒時点からの立ち下り傾向がi、j、kと3つの区間が続く安定傾向を示す上、その後に立ち上がり区間lが続くが、グラフIの場合の立ち上がり区間aよりも立ち上がり度が軽減していることから、立下り区間kの終点を沸騰点と判定することができる。この沸騰を判定する閾値βは、35秒時点の「立ち下がり」および「立ち上がり」の折り返し点を外した12として、連続した2つの立ち下がり区間j、kの検出により、110秒時点を沸騰と早期判定することができる。
一方、従来のグラフIでは、立ち上がり区間aの後に、立下り区間bおよびcが2つ続いた140秒時点で沸騰と判定する。
このため、本実施形態では、従来と比較して、約30秒程度早期に沸騰判定が可能となっている。
【0056】
上記したように、本実施形態では、サンプリング間隔t秒と温度データ列の時間幅wとの比率を1:4未満とすることにより、内容液Lの沸騰を早期に判定することができる。具体的には、図8(a)および(b)に示すように、内容液Lが少量の場合には内容液Lの対流が少ない分だけ、内容液Lが多量の場合に比べて、単位時間温度変化が安定するので、早期に沸騰判定を行うことができる。したがって、内容液Lが少量の場合における沸騰判定時の検知温度T1と、内容液Lが多量の場合における沸騰判定時の検知温度T2とが、異なる。この場合、検知温度T1と検知温度T2とを一律に補正してすると(補正値を同じ値にすると)、沸点データがばらつく。ここで、本実施形態では、内容液Lの容量に応じて沸点データを補正することによって、沸点データがばらつくのを抑制することができる。これにより、補正された沸点データに係る温度を基に内容液Lの沸騰および再沸騰を行う場合に、内容液Lの沸騰および再沸騰を確実に行うことができる。また、内容液Lの殺菌およびカルキ抜きなどを行うために内容液Lを所定時間沸騰させる場合に、補正された沸点データに係る温度に達した後、当該所定時間沸騰させることによって、当該沸騰時に過剰に蒸気が出るのを抑制することができるので、省エネルギー効果を得ることができる。
【0057】
また、本実施形態において、内容液Lの容量に応じて補正値の絶対値を変化させるだけで簡単に沸点データを補正することができる。これにより、沸点データを取得するための演算処理が速くなる。
【0058】
また、本実施形態において、沸点データに係る温度と相対的な温度で内容液Lを保温することができる。つまり、絶対温度で内容液Lの保温を管理している場合と異なり、気圧が変化しても保温時に内容液Lが沸騰したり保温温度が低温になったりするのを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態において、内容液Lの単位時間当たりの温度変化量によって、内容液Lの容量を算出することができる。これにより、フロートセンサ等を使用せずに、温度センサ15により検出される温度変化で内容液Lの容量を算出することができる。
【0060】
<請求項の各構成要素と上記実施形態の各部との対応関係>
上記実施形態においては、電気貯湯容器100が「電気貯湯容器」に相当し、内容器11が「容器」に相当し、温度センサ15が「温度センサ」に相当し、内容液Lが「内容液」に相当し、容量算出部44が「容量算出手段」に相当し、ヒータ12が「加熱手段」に相当し、沸騰判断部45が「沸騰判定手段」に相当し、沸点データ取得部46が「沸点データ取得手段」に相当し、補正部47が「補正手段」に相当し、記憶部48が「記憶手段」に相当する。
【0061】
<第2実施形態>
第2実施形態の電気貯湯容器では、沸点データを補正した第1実施形態に係る電気貯湯容器100とは異なり、水の継ぎ足し時において、継ぎ足し前の内容液Lの容量に応じて、加熱時間を変更する。この加熱時間とは、沸騰状態が継続される時間であって、内容液Lの殺菌およびカルキ抜き等が行われる時間である。この第2実施形態に係る電気貯湯容器は、第1実施形態の補正部47および記憶部48が、それぞれ加熱時間変更部47aおよび記憶部48aに変更されたこと以外、第1実施形態と同様であるので、加熱時間変更部47aおよび記憶部48a以外は、同一符号を付してその説明を適宜省略する。
【0062】
<制御部>
第2実施形態に係る電気貯湯容器の制御部40aは、図13に示すように、ヒータ制御部41と、ポンプ制御部42と、温度データ取得部43と、容量算出部44と、沸騰判断部45と、沸点データ取得部46と、加熱時間変更部47aと、記憶部48aと、を有している。
【0063】
記憶部48aには、電気貯湯容器100の動作に係る各種プログラムが記憶されている。そして、本実施形態では、記憶部48aは、当該プログラムの実行に必要なデータ(温度データA,B,C,D,…、温度データ列D1,D2,D3,…、及び、単位時間温度変化α1,α2,α3,…など)を記憶している。
【0064】
そして、本実施形態では、記憶部48aには、容量算出部44により算出された内容液Lの容量が記憶されている。また、記憶部48aには、図14に示した2つのデータテーブルDT1およびDT2が記憶されている。データテーブルDT1及びDT2は、温度上昇勾配の平均値(内容液Lの容量に相当)と加熱時間(図中では、蒸気出タイマーと表記)とが対応付けられたデータテーブルである。そして、本実施形態では、データテーブルDT2の加熱時間が、データテーブルDT1の加熱時間より長くなっている。
【0065】
加熱時間変更部47aは、記憶部48aに記憶されている水の継ぎ足し前における内容器11内の内容液Lの容量に応じて、使用するデータテーブルDT1およびDT2を変更する。具体的には、加熱時間変更部47aは、前回沸騰時の内容液Lの容量が所定値(例えば、およそ1L)以下の場合には、加熱時間が長いデータテーブルDT2を選択し、前回沸騰時の内容液Lの容量が所定値を超える場合には、加熱時間が短いデータテーブルDT1を選択する。
【0066】
<水の継ぎ足し時における自動沸騰処理>
保温モードにおいて内容液Lを保温しているときに、水が継ぎ足されると、再沸騰モードとなり、蒸気を発生させる再沸騰が行われる。以下、図15を参照して、水の継ぎ足し時における内容液Lの再沸騰処理について詳細に説明する。
【0067】
まず、水が継ぎ足されると、ヒータ12(沸騰ヒータおよび保温ヒータの両方)が通電されて、内容液Lが加熱される(ステップS1a)。そして、前回沸騰時の内容液Lの容量C1が記憶部48aに記憶されているか否かを判断して(ステップS2a)、前回沸騰時の内容液Lの容量C1が記憶されていれば(ステップS2a:Yes)、水の継ぎ足し後の内容液Lの容量C2を算出する処理を開始する(ステップS3a)。これにより、水の継ぎ足し後の内容液Lの容量が算出される(ステップS4a)。一方、前記回沸騰時の内容液Lの容量C1が記憶されていなければ(ステップS2a:No)、通常の湯沸かし処理を行う(ステップS5a)。
【0068】
次に、ヒータ12により内容液Lが加熱されて、温度センサ15によって検知される内容液Lの温度が沸点データに係る温度以上に上昇したとき(ステップS6a:Yes)、加熱時間のカウントがスタートする(ステップS7a)。そして、本実施形態では、水の継ぎ足し前における内容液Lの容量C1が所定値より少ないか否かが判断される(ステップS8a)。ここで、本実施形態では、水の継ぎ足し前における内容液Lの容量C1が所定値より少ない場合には(ステップS8a:Yes)、データテーブルDT2を選択し(ステップS9a)、水の継ぎ足し前における内容液Lの容量C1が所定値以上の場合には(ステップS8a:No)、データテーブルDT1を選択する(ステップS10a)。
【0069】
データテーブルDT2を選択したとき(ステップS9a)、水の継ぎ足し後における内容液Lの容量C2に対応するデータテーブルDT2の加熱時間が経過したか否かを判断し(ステップS11a)、当該加熱時間が経過した場合には(ステップS11a:Yes)、ヒータ12への通電を停止する(ステップS12a)。これに対して、データテーブルDT1を選択したとき(ステップS10a)、水の継ぎ足し後における内容液Lの容量C2に対応するデータテーブルDT1の加熱時間が経過したか否かを判断し(ステップS13a)、当該加熱時間が経過した場合には(ステップS13a:Yes)、ヒータ12への通電を停止する(ステップS12a)。
【0070】
次に、水の継ぎ足し前の内容液Lの容量C1をC2に更新して、水の継ぎ足し後の内容液Lの容量C2を記憶する(ステップS12a)。これにより、水の継ぎ足し後における内容液Lの再沸騰処理が終了する(ステップS13a)。この水の継ぎ足し後における再沸騰処理終了後、制御部40は、保温モードに移行し、保温処理を行う。
【0071】
<本実施形態の電気貯湯容器の特徴>
第2実施形態に係る電気貯湯容器は、継ぎ足し後の内容液の容量に応じた加熱時間で加熱しても、当該内容液Lが沸騰温度まで達しない場合であっても、加熱時間変更部47aにより加熱時間が延長されることによって(データテーブルDT2が選択されることによって)、内容液Lを確実に沸騰させることができる。これにより、液体の継ぎ足し時において、当該液体を沸騰させてカルキ抜きを行うことができる。上記のように、加熱時間を調整することによって、確実に沸騰を行うことができると共に、長時間の沸騰を抑制することができるので、省エネルギー効果を得ることができる。
【0072】
また、本実施形態において、記憶部48に記憶されているデータテーブルDT1またはDT2を選択するだけで、内容液Lの加熱時間を簡単に変更することができる。
【0073】
<請求項の各構成要素と上記実施形態の各部との対応関係>
上記実施形態においては、加熱時間変更部47aが「加熱時間変更手段」に相当し、記憶部48が「加熱時間記憶手段」に相当、データテーブルDT1が「第1加熱時間」に相当し、データテーブルDT2が「第2加熱時間」に相当する。
【0074】
以上、本発明の実施形態および実施例について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0075】
例えば、第1実施形態では、内容液Lの容量に応じて補正値の絶対値(3LSB,2LSB,1LSB)を変更し、当該補正値を減じる(減算)ことによって、沸点データを補正する例について説明したが、本発明はこれに限らず、沸点データを加算、積算または除算により補正しても良い。
【0076】
また、第2実施形態では、2つのデータテーブルDT1およびDT2から内容液Lの容量に応じて選択する例について説明したが、本発明はこれに限らず、内容液Lの容量で区分された複数の区間に対応した複数のデータテーブルから、水の継ぎ足し前の内容液の容量に応じて、当該複数のデータテーブルの中から加熱時間を選択しても良い。
【0077】
また、第1実施形態では、温度センサ15を内容器11の底部分に設ける例について説明したが、本発明はこれに限らず、蒸気孔23の近傍に温度センサ15を設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、内容液の沸騰を確実に行い、且つ、沸騰時に蒸気が出過ぎるのを抑制して、省エネルギー効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0079】
100 電気貯湯容器
11 内容器
15 温度センサ
44 容量算出部
45 沸騰判断部
46 沸点データ取得部
47 補正部
47a 加熱時間変更部
48 記憶部
48a 記憶部
L 内容液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の内容液の温度を検知する温度センサと、
前記内容液の容量を算出する容量算出手段と、
前記内容液を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段により加熱された内容液が沸騰したか否かを判断する沸騰判断手段と、
前記沸騰判断手段により前記内容液が沸騰したと検出されたときの前記温度センサにより検知される温度に基づいて沸点データを取得する沸点データ取得手段と、
前記容量算出手段により算出された前記内容液の容量に応じて、当該沸点データを補正する補正手段と、を備えることを特徴とする、電気貯湯容器。
【請求項2】
前記沸点データ取得手段は、前記沸騰判断手段により前記内容液が沸騰したと検出されたときの前記温度センサにより検知される温度に補正値を減じることにより、前記沸点データを取得し、
前記補正手段は、前記容量算出手段により算出される前記内容液の容量に応じて、前記補正値の絶対値を補正することにより、前記沸点データを補正することを特徴とする、請求項1に記載の電気貯湯容器。
【請求項3】
前記容器内の内容液の温度を検知する温度センサと、
前記内容液の容量を算出する容量算出手段と、
前記容量算出手段により算出された前記内容液の容量を記憶する記憶手段と、
前記容器内に液体が継ぎ足されたときに、前記容量算出手段により算出される継ぎ足し後の内容液の容量に応じた加熱時間で当該内容液を加熱する加熱手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記液体の継ぎ足し前における前記容器内の内容液の容量に応じて、前記加熱時間を変更する加熱時間変更手段と、を備えることを特徴とする、電気貯湯容器。
【請求項4】
加熱時間が異なる第1加熱時間および第2加熱時間を記憶する加熱時間記憶手段をさらに備え、
前記加熱時間変更手段は、前記加熱時間記憶手段に記憶されている前記液体の継ぎ足し前における前記容器内の内容液の容量に応じて、第1加熱時間または第2加熱時間を選択することを特徴とする、請求項3に記載の電気貯湯容器。
【請求項5】
前記加熱手段は、前記沸点データに係る温度の相対値である保温温度により前記内容液を保温することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気貯湯容器。
【請求項6】
前記容量算出手段は、前記加熱手段により加熱された前記内容液の単位時間当たりの温度変化に基づいて、前記内容液の容量を算出すること特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気貯湯容器。
【請求項1】
容器内の内容液の温度を検知する温度センサと、
前記内容液の容量を算出する容量算出手段と、
前記内容液を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段により加熱された内容液が沸騰したか否かを判断する沸騰判断手段と、
前記沸騰判断手段により前記内容液が沸騰したと検出されたときの前記温度センサにより検知される温度に基づいて沸点データを取得する沸点データ取得手段と、
前記容量算出手段により算出された前記内容液の容量に応じて、当該沸点データを補正する補正手段と、を備えることを特徴とする、電気貯湯容器。
【請求項2】
前記沸点データ取得手段は、前記沸騰判断手段により前記内容液が沸騰したと検出されたときの前記温度センサにより検知される温度に補正値を減じることにより、前記沸点データを取得し、
前記補正手段は、前記容量算出手段により算出される前記内容液の容量に応じて、前記補正値の絶対値を補正することにより、前記沸点データを補正することを特徴とする、請求項1に記載の電気貯湯容器。
【請求項3】
前記容器内の内容液の温度を検知する温度センサと、
前記内容液の容量を算出する容量算出手段と、
前記容量算出手段により算出された前記内容液の容量を記憶する記憶手段と、
前記容器内に液体が継ぎ足されたときに、前記容量算出手段により算出される継ぎ足し後の内容液の容量に応じた加熱時間で当該内容液を加熱する加熱手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記液体の継ぎ足し前における前記容器内の内容液の容量に応じて、前記加熱時間を変更する加熱時間変更手段と、を備えることを特徴とする、電気貯湯容器。
【請求項4】
加熱時間が異なる第1加熱時間および第2加熱時間を記憶する加熱時間記憶手段をさらに備え、
前記加熱時間変更手段は、前記加熱時間記憶手段に記憶されている前記液体の継ぎ足し前における前記容器内の内容液の容量に応じて、第1加熱時間または第2加熱時間を選択することを特徴とする、請求項3に記載の電気貯湯容器。
【請求項5】
前記加熱手段は、前記沸点データに係る温度の相対値である保温温度により前記内容液を保温することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気貯湯容器。
【請求項6】
前記容量算出手段は、前記加熱手段により加熱された前記内容液の単位時間当たりの温度変化に基づいて、前記内容液の容量を算出すること特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気貯湯容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−161547(P2012−161547A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25769(P2011−25769)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】
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