説明

電気透析装置を備えた脱硫装置

【課題】本発明は、温度の低下があっても電気透析装置のイオン交換膜を損傷させることなく吸収液を活性化できる吸収液活性化装置を提供することにある。
【解決手段】本発明は、脱硫装置26で不純物を吸収した吸収液を電気透析装置1に供給するに際し、吸収液粘度調整手段(14,53,54,59)によって吸収液の粘度を調整するようにしたのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硫装置で不純物を吸収した吸収液を、イオン交換膜を備えた電気透析装置によって活性化する吸収液活性化装置に係り、特に、脱硫装置と電気透析装置とが管路によって連結されている吸収液活性化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、硫黄が含まれる石炭や重質油等の燃料をガス化した場合、その生成ガス中に前記硫黄が硫化水素等として含まれるために、脱硫装置によってこの硫化水素を除去することが行われている。この脱硫装置は、前記硫化水素と反応する塩基性水溶液を吸収液として用いて前記生成ガスの脱硫を行っている。
【0003】
そして、前記硫化水素を吸収した吸収液は、再生手段によって分解再生させ、再度前記脱硫装置に戻して前記生成ガスの脱硫を行うようにしているが、前記吸収液を繰返して使用しているうちに、前記再生手段によって分解されない不純物が形成され、脱硫性能を低下させる問題がある。
【0004】
そこで、吸収液を活性化させて脱硫装置にて再度脱流が行えるようにするために、劣化した吸収液を電気透析装置に通過させて不純物を分離することが行われている。
【0005】
尚、上記従来の技術に関係すると思われる技術は、特許文献1に開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭55−81782号公報(第2図及びその説明)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術は、温度低下による吸収液の粘度増加についての配慮がなされておらず、電気透析装置を損傷させる恐れがある。即ち、脱硫装置運転中にこの脱硫装置から電気透析装置に供給される吸収液は約40℃である。このような温度の吸収液が供給されることを前提に設計された電気透析装置は、脱硫装置の運転が停止して吸収液の温度が低下したり、環境温度の低下に伴って、吸収液の粘度が増加した場合、吸収液流路の圧力損失が高くなって活性化効率を低下させたり、電気透析装置のイオン交換膜を損傷する恐れがある。
【0008】
他方、脱硫装置の運転停止時における吸収液の温度低下や環境温度の低下による吸収液の粘度の増加を見込んで、吸収液流路となる配管等の口径を増大させた電気透析装置を設計することも考えられる。このようにすると、吸収液流路の圧力損失が高くなることを防ぐことができるが、温度低下による吸収液の粘度増加に伴う電気透析装置のイオン交換膜の損傷は依然として防止することができない。
【0009】
本発明の目的は、温度の低下があっても電気透析装置のイオン交換膜を損傷させることなく吸収液を活性化できる吸収液活性化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために、脱硫装置で不純物を吸収した吸収液を電気透析装置に供給するに際し、吸収液粘度調整手段によって吸収液の粘度を調整するようにしたのである。
【0011】
上記構成によれば、脱硫装置が運転を停止して吸収液の温度が低下して粘度が増加しても、あるいは周辺の環境温度の低下に伴う吸収液の温度低下により粘度が増加しても、電気透析装置に供給される吸収液の粘度は吸収液粘度調整手段によって昇温方向に調整されるので、電気透析装置のイオン交換膜を損傷させることなく吸収液の活性化を行うことができるのである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、温度の低下があっても電気透析装置のイオン交換膜を損傷させることなく吸収液を活性化できる吸収液活性化装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明による第1の実施の形態を図1に示す吸収液活性化装置に基づいて説明する。
【0014】
本発明による吸収液活性化装置は、大きく分けて電気透析装置1と脱硫装置26とを備えている。
【0015】
電気透析装置1は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に配列し、両端に直流電圧を印加するように構成した電気透析槽2を備えている。この電気透析槽2は、前記イオン交換膜によって脱塩室3と濃縮室4とに分けられている。
【0016】
前記脱塩室3の入口には、脱塩液ポット5に接続され脱塩液ポンプ6を介在させた配管7a,7bが接続されている。前記脱塩室3の出口には、脱塩室出口配管8の一端が接続され、他端は脱塩液循環弁9及び脱塩液戻り配管10を経由して前記脱塩液ポット5に接続されている。前記脱塩室出口配管8は、脱塩室3と脱塩液循環弁9との間から分岐され、脱塩液排出弁12を設置した脱塩液排出配管11を経由して脱塩吸収液貯留タンク13に接続されている。また、前記脱塩液ポット5には、吸収液の濃度を低下させるための吸収液濃度低下手段となり純水供給手段でもある第1純水供給弁14を設けた第1純水供給配管15が接続されている。
【0017】
前記濃縮室4の入口には、濃縮液ポット16に接続され濃縮液ポンプ18を介在させた濃縮液配管17a,17bが接続されている。前記濃縮室4の出口には、前記濃縮液ポット16まで至る濃縮室出口配管19が接続されている。前記濃縮液ポット16には、第2純水供給弁20を設けた第2純水供給配管21が接続され、さらに廃液ピット23に至る濃縮液排出配管22が接続されている。廃液ピット23からは廃液排出配管24aが接続され、さらに廃液ポンプ25を経由して廃液排出配管24bにより外部に接続されている。
【0018】
一方、前記脱硫装置26は、吸収塔27と再生塔28を備え、吸収塔27へは生成ガス供給配管29及び精製ガス排出配管30が接続されている。吸収塔27の底部からは再生塔吸収液供給配管31が吸収液熱交換器32及び再生塔吸収液供給弁33を経由して再生塔28に接続されている。再生塔28の上部には酸性ガス排出配管34が接続され、底部からは吸収液循環ポンプ35,吸収液熱交換器32,吸収液冷却器36及び吸収塔入口吸収液制御弁37を経由して吸収塔27に至る吸収塔吸収液供給配管38が接続されている。
【0019】
脱硫装置26の吸収液冷却器36と吸収塔入口吸収液制御弁37の間には、電気透析装置供給遮断弁39を設けた吸収液供給配管40が分岐され、この吸収液供給配管40は前記脱塩吸収液貯留タンク13に接続されている。脱塩吸収液貯留タンク13は活性化前の吸収液と活性化後の吸収液を分離するように2室に仕切られている。また、脱塩吸収液貯留タンク13からは、処理液ポンプ41及び処理液制御弁42を設けた処理液戻り配管43が、再生塔28の底部から配管された吸収塔吸収液供給配管38に接続されている。
【0020】
前記脱塩吸収液貯留タンク13からは、原液ポンプ入口配管44,原液ポンプ45,原液フィルタ入口配管46,原液フィルタ47及び原液供給弁48を設けた原液供給配管49が電気透析装置1の脱塩液ポット5へ接続されている。
【0021】
原液フィルタ47と原液供給弁48間からは原液フィルタ循環弁50を設置した原液循環配管51が分岐され、原液循環配管51は前記脱塩吸収液貯留タンク13に接続されている。原液ポンプ45の出口からは、原液加熱器入口配管52が分岐されて吸収液粘度調整手段の温度調節手段を構成する原液加熱器53へ接続されている。原液加熱器53の出口配管は、脱塩吸収液貯留タンク13に至る原液循環配管51に接続されている。
【0022】
上記構成の吸収液活性化装置において、脱硫装置26では、硫化水素を含む生成ガスを、生成ガス供給配管29から吸収塔27に供給し、吸収塔27内で吸収塔入口吸収液制御弁37を通して供給される吸収液と接触させることにより前記硫化水素を吸収液に化学吸収させる。硫化水素を分離して脱硫された精製ガスは精製ガス排出配管30から外部に供給される。
【0023】
硫化水素等を吸収した吸収液は、吸収塔27から再生塔吸収液供給配管31を通って排出され、吸収液熱交換器32で、再生塔28から排出された高温の吸収液との熱交換により昇温され、再生塔入口吸収液制御弁33で減圧され再生塔28に供給される。再生塔28では、減圧と外部からの加熱により吸収液温度がさらに上昇し、吸収液中の酸性ガスは吸収液から分離される。分離された酸性ガス排出配管34を通して外部処理装置へと排出される。酸性ガスが分離されて再生された吸収液は吸収塔吸収液供給配管38を通して再生塔28の底部から排出され、吸収液循環ポンプ35にて昇圧され、吸収液熱交換器32にて吸収塔27からの低温吸収液により冷却される。吸収液熱交換器32を通過した再生吸収液は、さらに吸収液冷却器36により冷却され、吸収塔入口吸収液制御弁37を通して吸収塔27に供給され、再度生成ガスの脱硫に供する。
【0024】
一方、前記電気透析装置1の電気透析槽2では、濃縮液ポット16の濃縮液(純水)を濃縮液ポンプ18により濃縮液配管17a,17bを通して濃縮室4に送る。脱塩液ポット5内の吸収液を脱塩液ポンプ6により脱塩液配管7a,7bを通して、脱塩室3に送る。このように脱塩室3と濃縮室4とが満たされた状態で、電気透析槽2の両端に設置した電極に直流電圧を印加すると、電流により脱塩溶液中の陰イオン類と陽イオン類は選択的にイオン交換膜を透過し濃縮液に移動する。これにより、脱塩室3中の吸収液からイオン性不純物が除去され、不純物は濃縮室4中の濃縮液へ移動し、吸収液は活性化される。濃縮室4内の不純物を含む濃縮液は、濃縮室出口配管19から濃縮液ポット16に戻され、その一部は濃縮液ポット16から濃縮液排出配管22を通り廃液ピット23に排出され、一定量貯まった後に廃液排出配管24a,24bから廃液ポンプ25により外部に排出される。濃縮液ポット16には、排出された濃縮水を補うために第2純水供給弁20から第2純水供給配管21を通して純水を供給している。
【0025】
前記脱硫装置26内で吸収、再生が繰返し行われ、吸収液中に熱安定アミン塩、イオン性不純物等の不純物が生成した場合、電気透析装置供給遮断弁39を開けて吸収液供給配管40を通して再生塔28内の吸収液を脱塩吸収液貯留タンク13に排出する。尚、脱硫装置26内から排出された吸収液の圧力と電気透析装置1の運転圧力が異なる場合には、脱塩吸収液貯留タンク13にて圧力の調整を行うことも可能である。
【0026】
ところで、本実施の形態では、脱塩吸収液貯留タンク13は活性化前の吸収液と活性化後の吸収液を同一容器に貯め、分離するように2室に仕切っている。これにより活性化前の吸収液と活性化後の吸収液が混合する不利はあるが、電気透析装置1に供給される吸収液と回収される吸収液の均圧化ができる。
【0027】
前記脱塩吸収液貯留タンク13内の吸収液は、原液ポンプ入口配管44から排出され、原液ポンプ45により原液フィルタ入口配管46を通り、原液フィルタ47に送られ、ここで吸収液中の固形物を分離する。固形物を分離した吸収液は原液供給配管49を通り、原液供給弁48から脱塩液ポット5に供給される。
【0028】
前記脱塩室3で脱塩され、活性化した吸収液は脱塩室3から脱塩室出口配管8,脱塩液排出配管11及び脱塩液排出弁12を通り脱塩吸収液貯留タンク13へ排出される。
【0029】
吸収液の処理方法としては、電気透析装置1の脱塩室出口配管8へ吸収液を供給する方式で、連続式,部分循環式,回分式の3方法に分けられる。
【0030】
連続式処理方法では、脱塩液ポット5から脱塩室3に供給された吸収液が、脱塩された後直ちに脱塩吸収液貯留タンク13に回収されるように、脱塩液循環弁9を閉じ、脱塩液排出弁12を開ける。したがって、吸収液は脱塩室3を一回だけ通過し、脱塩される。
【0031】
部分循環式処理方法では、脱塩室3を出た吸収液は、一部が脱塩液排出弁12を通して脱塩吸収液貯留タンク13に回収され、残る一部が脱塩液循環弁9を通り脱塩液ポット5に回収される。脱塩された一部の液は脱塩液ポット5内の未処理吸収液と混合し再び脱塩液ポンプ6により脱塩室3に供給され、これが繰返して行われる。
【0032】
回分式処理方法では、脱塩液排出配管11の脱塩液排出弁12を閉じ、脱塩室3を出た吸収液の全量を、脱塩液循環弁9を通して脱塩液ポット5に回収し、再度脱塩液ポンプ6により脱塩室3に供給する循環運転を行う。その後、脱塩液循環弁9を閉じ、脱塩された吸収液を、脱塩液排出配管11の脱塩液排出弁12を通して脱塩吸収液貯留タンク13に回収する。
【0033】
本実施の形態においては、上記処理方法のいずれであっても適用することができる。
【0034】
ところで、脱硫装置26が運転されている場合には、吸収液供給配管40を通して脱塩吸収液貯留タンク13に供給される吸収液の液温は約40℃であり、吸収液は粘度が低いため原液ポンプ45により原液フィルタ47,原液供給配管49,原液供給弁48を通して脱塩液ポット5に供給され、さらに脱塩液配管7a,7b及び脱塩液ポンプ6を介して容易に脱塩室3に供給でき、無理なく脱塩処理することができる。
【0035】
しかし、脱硫装置26が停止して、吸収液の温度が低下している場合には、吸収液の粘性が高いため、この吸収液を脱塩室3に供給したのでは、イオン交換膜を損傷させることになる。この場合には、原液供給弁48及び原液フィルタ循環弁50を閉じて、脱塩吸収液貯留タンク13内の吸収液を原液ポンプ45により原液加熱器入口配管52を通して原液加熱器53に供給する。原液加熱器53では電気、蒸気等の外部熱源により吸収液を加熱する。加熱された吸収液は原液フィルタ循環弁50よりも脱塩吸収液貯留タンク13寄りの原液循環配管51を通って脱塩吸収液貯留タンク13に回収される。この吸収液加熱循環運転により、原液ポンプ入口配管44内の吸収液が昇温されるとともに、脱塩吸収液貯留タンク13及び原液ポンプ入口配管44を含む配管等が昇温される。そして吸収液が設定温度以上に昇温された後に原液フィルタ循環弁50を開け、昇温された吸収液の一部を原液フィルタ入口配管46及び原液フィルタ47を通過させて原液フィルタ47を昇温する。原液フィルタ47を出た吸収液は原液供給配管49,原液循環配管51を通り脱塩吸収液貯留タンク13に回収され、その過程で原液供給配管49,原液循環配管51を昇温する。
【0036】
原液供給配管49の出口部の温度が十分に昇温された後、原液供給弁48を開けて昇温された吸収液を脱塩液ポット5に供給することにより、脱塩室3に供給される吸収液の温度を高くすることができる。
【0037】
また、電気透析装置1が停止時には、脱塩液ポンプ6により吸収液を脱塩室3,配管8,脱塩液排出配管11を通して脱塩吸収液貯留タンク13に回収し、脱塩液ポット5内に残留する吸収液を最小にする。その後、第1純水供給弁14を開いて純水を脱塩液ポット5内に供給し、脱塩液ポンプ6から純水を脱塩室3に供給して系統内の吸収液を純水により補充しておく。
【0038】
これによって、低温の吸収液が脱塩液ポット5に供給された場合でも、脱塩室3の系統内の純水との混合によって吸収液の濃度は低下し、吸収液の粘度は低く抑えられるので、電気透析装置1の運転再開時に脱塩室3へ吸収液を供給してもイオン交換膜が損傷されることはない。
【0039】
ところで、通常、脱塩吸収液貯留タンク13から昇温された吸収液が順次脱塩液ポット5に供給されると吸収液濃度が増加するが、吸収液温度も上昇するため吸収液の粘度を低く抑えることができる。
【0040】
尚、本実施形態において、脱硫装置26から電気透析装置1に吸収液を供給する供給管路は、吸収液供給配管40−電気透析装置供給遮断弁39−脱塩吸収液貯留タンク13−原液ポンプ入口配管44−原液ポンプ45−原液フィルタ入口配管46−原液フィルタ47−原液供給配管49−原液供給弁48−脱塩液ポット5−脱塩液配管7a−脱塩液ポンプ6−脱塩液配管7bであり、電気透析装置1から脱硫装置26に吸収液を回収する回収管路は、脱塩室出口配管8−脱塩液排出配管11−脱塩液排出弁12−脱塩吸収液貯留タンク13−処理液ポンプ41−処理液制御弁42−処理液戻り配管43である
以上説明したように本実施の形態によれば、脱硫装置26が運転を停止して吸収液の温度が低下して粘度が増加しても、あるいは周辺の環境温度の低下に伴う吸収液の温度低下により粘度が増加しても、電気透析装置1に供給される吸収液の粘度は吸収液粘度調整手段である原液加熱器53によって昇温方向に調整される。また電気透析装置1の運転停止時には、純水を供給して吸収液の濃度を低下させて吸収液の粘度を低下させることができるので、電気透析装置1のイオン交換膜を損傷させることなく吸収液の活性化を行うことができる。
【0041】
次に、本発明により第2の実施の形態を図2に基づいて説明する。本実施の形態において、第1の実施の形態と異なるのは、図1における脱塩液ポット5に接続される第1の純水供給弁14に替えて、純水供給手段を構成する純水加熱器54及び温水流量制御弁55を設置し、かつ温水流量制御弁55を電気透析槽2に設けた圧力検出手段である脱塩室圧力計56の検出圧力によって制御するようにした点である。尚、前記純水加熱器54は、吸収液粘度調整手段,吸収液濃度低下手段,純水供給手段及び吸収液の温度を調節する温度調節手段としても機能するものである。
【0042】
本実施の形態においては第1の実施の形態と同様に、脱塩吸収液貯留タンク13に供給された吸収液は、原液ポンプ45により原液加熱器53を通して循環,昇温され、その後原液フィルタ入口配管46,原液フィルタ47,原液循環配管51及び原液フィルタ循環弁50を通して脱塩吸収液貯留タンク13に循環され、原液フィルタ47,原液フィルタ入口配管46を含めた配管を昇温する。その後、吸収液は原液供給弁48から脱塩液ポット5に供給され、脱塩液ポンプ6により脱塩室3に送られる。
【0043】
また、本実施の形態では、脱塩液ポット5に供給された吸収液が何らかの理由で温度が低下した場合、吸収液温度低下に伴い粘度が上昇し、圧力損失が増加するのを電気透析槽2に設けた脱塩室圧力計56の圧力で検知する。この脱塩室圧力計56の検知信号によって純水加熱器54及び温水流量制御弁55を制御し、第1の純水供給配管15からの純水を適度に昇温し、昇温された適量の純水を脱塩液ポット5に供給するのである。
【0044】
昇温された適量の純水が脱塩液ポット5に供給されることにより、脱塩液ポット5内の吸収液濃度は適度に低下し、吸収液濃度低下により吸収液の粘度が低下すると同時に、昇温された純水によって吸収液の温度も上昇し、吸収液粘度は低下する。
【0045】
このように、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同じ効果を奏することができる上、脱塩液ポット5内の吸収液の温度低下に係らず電気透析装置1に適正粘度の吸収液を供給し、吸収液を活性化することができる。
【0046】
図3は、本発明による第3の実施の形態を示すもので、第1の実施の形態と異なるのは、脱塩吸収液貯留タンク13に替えて脱塩液タンク57と処理後脱塩液タンク58とを設置した点である。そして、吸収液供給配管40を脱塩液タンク57に接続し、脱塩液排出配管11を処理後脱塩液タンク58に接続することにより、脱硫装置26から電気透析装置1に吸収液を供給する系統と回収する系統を分けたのである。
【0047】
脱塩液タンク57には脱塩液加熱器59が備えられており、また脱塩液タンク57から原液ポンプ45及び原液フィルタ47を経由して脱塩液ポット5に至る原液供給配管49から原液循環配管51を分岐させ、この原液循環配管51を脱塩液タンク57に戻している。
【0048】
また、脱塩室3の脱塩室出口配管8から分岐され脱塩液排出弁12を備えた脱塩液排出配管11は、処理後脱塩液タンク58に接続されている。
【0049】
そして、活性化の必要のある吸収液は、脱硫装置26から吸収液供給配管40を通り脱塩液タンク57に供給される。脱塩液タンク57では脱塩液加熱器59により吸収液を昇温する。昇温された吸収液は原液ポンプ45により原液フィルタ47に送られ、原液フィルタ循環弁50を通り脱塩液タンク57に戻る循環運転を行う。このような循環運転によって原液ポンプ入口配管44,原液フィルタ入口配管46,原液供給配管49の管路等を昇温した後、電気透析装置1の脱塩液ポット5に送られる。電気透析装置1で活性化された吸収液は脱塩液排出配管11を通り処理後脱塩液タンク58に回収された後、処理液ポンプ41により脱硫装置26に回収される。
【0050】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同じ効果を奏することができるほか、電気透析装置1に吸収液を供給するポンプ以前の配管も起動当初から昇温できる効果がある。また、吸収液の供給系と回収系を分けたことにより活性化前の吸収液と活性化後の吸収液が混合しないため活性化の効率が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による吸収液活性化装置の第1の実施の形態を示す配管図。
【図2】本発明による吸収液活性化装置の第2の実施の形態を示す配管図。
【図3】本発明による吸収液活性化装置の第3の実施の形態を示す配管図。
【符号の説明】
【0052】
1…電気透析装置、2…電気透析槽、3…脱塩湿、4…濃縮室、5…脱塩液ポット、6…脱塩液ポンプ、13…脱塩吸収液貯留タンク、14…第1純水供給弁、26…脱硫装置、53…現役加熱器、54…純水加熱器、59…脱塩液加熱器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱硫装置で不純物を吸収した吸収液を、イオン交換膜を備えた電気透析装置によって活性化する吸収液活性化装置において、前記電気透析装置に供給される吸収液の粘度を調整する吸収液粘度調整手段を設けたことを特徴とする吸収液活性化装置。
【請求項2】
脱硫装置で不純物を吸収した吸収液を、イオン交換膜を備えた電気透析装置によって活性化する吸収液活性化装置において、前記脱硫装置から不純物を吸収した吸収液を前記電気透析装置に供給する供給管路と、活性化した吸収液を前記電気透析装置から前記脱硫装置に戻す回収管路とを設け、かつ前記電気透析装置に供給される吸収液の粘度を調整する吸収液粘度調整手段を設けたことを特徴とする吸収液活性化装置。
【請求項3】
前記吸収液粘度調整手段は、吸収液の温度を調節する温度調節手段であることを特徴とする請求項1又は2記載の吸収液活性化装置。
【請求項4】
前記吸収液粘度調整手段は、前記電気透析装置に供給される吸収液の濃度を低下させる吸収液濃度低下手段であることを特徴とする請求項1又は2記載の吸収液活性化装置。
【請求項5】
前記吸収液濃度低下手段は、前記電気透析装置に供給される吸収液に、純水を供給する純水供給手段であることを特徴とする請求項4記載の吸収液活性化装置。
【請求項6】
前記純水供給手段は、純水の昇温を調節する温度調節手段を備えていることを特徴とする請求項5記載の吸収液活性化装置。
【請求項7】
脱硫装置で不純物を吸収した吸収液を、イオン交換膜を備えた電気透析装置によって活性化する吸収液活性化装置において、不純物を吸収した吸収液を前記脱硫装置から前記電気透析装置に供給する供給管路と、活性化した吸収液を前記電気透析装置から前記脱硫装置に戻す回収管路とを設け、かつ前記電気透析装置に供給される吸収液の圧力を検出する圧力検出手段を設けると共に、この圧力検出手段による検出値に基づいて前記吸収液の粘度を調整する吸収液粘度調整手段を設けたことを特徴とする吸収液活性化装置。
【請求項8】
脱硫装置で不純物を吸収した吸収液を、イオン交換膜を備えた電気透析装置によって活性化する吸収液活性化装置において、前記脱硫装置からの吸収液を前記電気透析装置に供給する供給路の途中に前記吸収液を一旦貯留する貯留タンクを設け、この貯留タンク内の吸収液を貯留タンク外に送り出して再び貯留タンクに戻す吸収液昇温循環路を設けたことを特徴とする吸収液活性化装置。
【請求項9】
脱硫装置で不純物を吸収した吸収液を、イオン交換膜を備えた電気透析装置によって活性化する吸収液活性化装置において、前記脱硫装置からの吸収液を前記電気透析装置に供給する供給路の途中に前記吸収液を一旦貯留する貯留タンクを設け、この貯留タンクの吸収液を貯留タンク外で昇温して貯留タンクに戻す吸収液昇温循環路を設けると共に、前記電気透析装置に供給される吸収液に、純水を供給する純水供給手段を設けたことを特徴とする吸収液活性化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−805(P2006−805A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182230(P2004−182230)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【Fターム(参考)】