説明

電気通信システムにおける測位

位置決定を提供する方法は、信号の特性に基づいて、ユーザ装置に関連するセルラ通信ネットワークの信号の特性を表すデータを取得するステップ(210)を有する。方法は、ユーザ装置に対する空間多重のためのプリコーダ選択を表すデータを取得するステップ(212)をさらに備える。ユーザ装置の位置の決定(214)は、プリコーダ選択を表すデータにも基づく。位置決定を提供する装置も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にセルラ通信ネットワークおける位置依存性に、そして特に、様々なネットワーク・アーキテクチャにおける測位または位置に基づくサービスに関する。
【背景技術】
【0002】
移動デバイスの位置を決定することの実現性により、アプリケーション開発者および無線ネットワーク事業者は、位置に基づく、および位置を意識した、サービスを提供することができるようになった。それらの例としては、案内システム、買物支援、友人探知機、プレゼンス・サービス、コミュニティと通信サービス、およびモバイル・ユーザに当該ユーザの周辺地域についての情報を与えるその他の情報サービスである。
【0003】
商業サービスに加えて、幾つかの国の政府は、緊急通報の位置を決定できるよう、ネットワーク事業者に要求を課した。例えば、USAにおける行政の要求(FCC E911)は、全ての緊急通報の一定の割合について位置を決定できなければならないことを提示している。その要求は屋内および屋外環境間で全く相違がない。
【0004】
屋外環境では、例えば、全地球測位システム、すなわち、GPS(Global Positioning System)、または、アシスト型GPS(A−GPS)のような、それに基づく方法を使用して、位置推定を行うことができる。しかしながら、これは、ユーザ装置が例えば無線信号の受信に関する追加の機能を備えなければならない、ということを要求する。
【0005】
無線ネットワークそのものを使用して、位置推定を実行することもできる。無線ネットワークを使用する方法は様々なグループにグループ分けできる。第1のグループには、例えばセルIDを使用することによる、移動端末が属する無線セルの認識に基づく方法を含む。その最も簡単な形式では、ユーザ装置(UE)がある基地局を通して無線ネットワークと通信している場合、ユーザ装置はその基地局のサービスエリア内に位置するということが分かる。これは、いわゆるネイバーリストからの情報をも考慮することにより改善することができる。しかしながら、その場合でも精度はそれほど大したことはない。
【0006】
位置推定方法のもう1つのグループは、信号の伝搬時間またはそのことに関連する数量の測定値に基づく。LTEシステムにおけるタイミング・アドバンス(TA)およびWCDMAシステムにおけるラウンド・トリップ・タイム(RTT)はそのような方法の例である。簡単に言えば、無線基地局(RBS)からUEおよびその逆に要する無線波の伝搬時間が測定される。ラウンド・トリップ・タイムの測定値単独では、円か、もし不正確さを考慮するなら、RBSの周りのUEが位置する円形の帯を定める。このような情報と三角測量計算を可能とする隣接RBSへの伝搬時間とを組み合わせることにより、精度はいくらか改善可能である。しかしながら、この可能性は、典型的には25%より低い、セルの限られた部分でのみ起こる。信号伝搬時間の測定値はセルID情報と組み合わせることもでき、これは、典型的にはUEが位置することができる領域をセル内に位置する円形の帯のセクタに制限する。その他の地上の測位方法に関しては、到達時間差観測値(OTDOA)のように、これらは、少なくとも基本構成では、十分良好な性能を提供するには余りにも低い検出性能に悩まされる。
【0007】
より見込みのある方法は、例えば非特許文献1に見られる、いわゆるフィンガープリント測位により提供される。フィンガープリント測位アルゴリズムは、無線アクセス・ネットワーク(RAN)をカバーする細かい座標格子の各点に対する無線フィンガープリントを生成することにより動作する。フィンガープリントは、例えば、検出可能なセルID、量子化された伝搬損失(パスロス)または信号強度測定値、量子化されたRTTまたはTA、量子化された雑音発生(noise rise)、無線アクセス・ベアラ(RAB)のような無線接続情報、および/または量子化時間で構成されてもよい。
【0008】
測位が実行されるべきであるとき、フィンガープリントは検出され、当該フィンガープリントと、フィンガープリントと位置との間の記憶された関係とが比較される。そのようにして、UEがある確実性で位置する領域を得ることができる。しかしながら、フィンガープリント技術も、時折、極めて不正確であり、これが特有のフィンガープリントを作るのに十分良好な測定値の使用可能性をも制限する原因となっている。
【0009】
したがって、測位精度をさらに改善する方法と装置に対する要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2007/043915号
【特許文献2】国際公開第2007/086784号
【特許文献3】国際公開第2008/054272号
【特許文献4】国際公開第2008/118052号
【特許文献5】国際公開第2008/069712号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】T.Wigren、“高精度位置測定値のクラスタリングによる適応高度化セルIDフィンガープリント位置測位(Adaptive enhanced cell−ID fingerprinting localization by clustering of precise position measurement)”、IEEE Trans. Vehicular Tech.、vol.56、no.5、pp3199−3209
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、より高精度なユーザ装置の測位を可能とする方法と装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的は、同封の特許請求の範囲による方法と装置によって達成される。一般的な言葉では、第1の態様によれば、位置決定を提供する方法は、ユーザ装置と関連するセルラ通信ネットワークの信号の特性を表すデータを取得することと、その信号の特性に基づいてユーザ装置の位置を決定することとを含む。方法は、さらに、ユーザ装置に対する空間多重のためのプリコーダ選択を表すデータを取得することを含む。ユーザ装置の位置の決定はまた、プリコーダ選択を表すデータにも基づく。
【0014】
第2の態様によれば、位置決定を提供する装置は、ユーザ装置と関連するセルラ通信ネットワークの信号の特性を表すデータを取得する手段と、ユーザ装置に対する空間多重のためのプリコーダ選択を表すデータを取得する手段とを備える。当該装置は、さらに、信号の特性を表すデータを取得する手段およびプリコーダ選択を表すデータを取得する手段とに接続される、位置決定部を備える。位置決定部は、信号の特性に基づいてユーザ装置の位置を決定し、位置の決定はプリコーダ選択に部分的に基づくように装置される。
【0015】
本発明の利点は、複数の既存の測位方法と組み合わされた場合に、精度の向上を可能とする、例えばMIMOに基づくシステムにおいて利用可能な追加の情報が見つかることである。
【0016】
本発明は、それらのさらなる目的および利点と共に、添付の図面とともに取られた以下の説明を参照することにより、最もよく理解されるかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明により見込まれる位置決定の高度化の説明図。
【図2】物理チャネルの処理の概略図。
【図3】マルチアンテナに対する参照信号のリソースエレメントへのマッピングの例を示す図。
【図4】アンテナポート配列の説明図。
【図5A】到来角に応じた様々のプリコーダに対するSNRの図。
【図5B】到来角に応じた様々のプリコーダに対するSNRの図。
【図6】本発明による方法の実施形態に係る手順のフロー図。
【図7A】従来技術のRTT測位の概略図。
【図7B】本発明による強化されたRTT測位の概略図。
【図8】本発明による方法の他の実施形態に係る手順のフロー図。
【図9】AECIDによる動作する測位ノードの実施形態に係るブロック図。
【図10A】プリコーダ選択を用いてAECID測位を強化する方法の概略図。
【図10B】プリコーダ選択を用いてAECID測位を強化する方法の概略図。
【図10C】プリコーダ選択を用いてAECID測位を強化する方法の概略図。
【図10D】プリコーダ選択を用いてAECID測位を強化する方法の概略図。
【図11A】本発明の実施形態によるセルラネットワークと測位ノードの概略図。
【図11B】本発明の実施形態によるセルラネットワークと測位ノードの概略図。
【図11C】本発明の実施形態によるセルラネットワークと測位ノードの概略図。
【図11D】本発明の実施形態によるセルラネットワークと測位ノードの概略図。
【図12】位置決定を提供する装置のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を通して、同様の、または対応する要素には同じ数字を使用する。
【0019】
従来の測位のソリューションは、多くの商業的な、および例えば緊急通報測位のような規制されたサービスにとって十分に高精度な位置を提供するものではない。GPSに基づく方法のように良好な制度を提供する技術は、代わりに、室内環境、トンネルの中、または多くの高層ビルを伴う密集した都市部のような、衛星信号の受信状態が良くない全ての場所で動作しないことに悩まされる。
【0020】
無線ネットワークの信号の特性に基づくほとんどの従来技術の測位方法における精度の不足の本質を解析すると、水平の領域、すなわち基地局へ向かう方向に対する法線方向においての精度は典型的に悪いものの、基地局へ向かう方向における精度は比較的良好であることが分かった。したがって、水平の領域における識別を可能とする追加の情報が有効であろう。その結果、そのような情報は、様々な従来技術の方法を備える位置決定と組み合わせること、またはその位置決定を高度化することが可能となるであろう。
【0021】
アイデアは、空間多重に用いるプリコーダの選択を通じて利用可能となる暗黙の角度情報と共に、無線通信ネットワーク内で得られる信号の特性に基づいて、測位を補完することである。本発明は、CDMA及びLTEの両方において、例えばタイミング・アドバンスやRTT測定値に基づいて、又は、AECID手法に基づいて、いくつもの測位方法を改良し、補強する。プリコーダ選択は、他の種の利用可能なデータを極めて良好に補完する、暗黙の角度測定値を示すことが分かる。
【0022】
基本的なコンセプトは、UEにおける測定値に基づく、RBSにおけるプリコーディング手順の選択である。これは、スループット、すなわちSNRを最大化するためになされる。プリコーディング手順は方向に依存するため、したがって、これは、端末と基地局との間の方向に関連する測定または選択という結果となる。通常の到来方向推定は基地局によりなされることに注意されたい。
【0023】
これらのアイデアの一つの方法を図1に示す。RBS10はUE20と通信する。既知の位置決定方法により、UE20がRBS10のサービスエリアの限定された領域1に位置すると判断されている。RBS10とUE20との間の通信において、空間多重のために所定のプリコーディング手順が選択されている。そのような符号化の仕組みにより送信される信号の角度分布は、(所定の確率で)扇形の領域2に限定される。このように、UE20は、扇形の領域2の範囲内に位置していると判定することもできる。これらの2つの情報を組み合わせることにより、UE20がその範囲内に位置することが有望な領域を、領域1と扇形の領域2とが重複する領域3に縮小することができる。
【0024】
もう1つの方法では、選択されたプリコーディング手順と関連する方向の情報を、測位方法そのものにおけるパラメータとして利用することができる。
【0025】
本発明は測位精度を改善し、特にLTE及びWCDMAに対して、水平方向における、すなわち、現在利用可能なラウンド・トリップ・タイムやTA測定値に直交する、位置測定情報を提供することにより新しい測位方法を定める。
【0026】
本発明は、サービング基地局(serving base station)から見えるような端末への方向に関連する、要求される情報を取得するために従来のMIMOアンテナの構成と効果を利用する。これは、例えば、複数のRBSからの信号強度の測定値を組み合わせることの必要性を減少させる。
【0027】
様々の実施形態において、本発明は、MIMO WCDMAシステムにおいて、RTTとプリコーディングの方向を組み合わせる新しい測位方法、MIMO LTEシステムにおいて、TAとプリコーディングの方向を組み合わせる新しい測位方法、または、無線フィンガープリントまたはタグとしてプリコーディングの方向を付加することによる、拡張されたフィンガープリント測位、特にエリクソンのAECID手法をもたらす。この最後の実施形態は、WCDMAとLTEの両方におけるMIMOの構成に適用可能である。そのような実施形態は、さらに下においてより詳細に説明する。
【0028】
しかしながら、プリコーディング手順の選択を介して利用可能となる方向の情報を理解するために、まず、MIMOの構成のいくつかの具体的な態様について幾分より詳細に説明する。LTEやWiMAXのようないくつかの新しいセルラの標準では、いわゆる多入力多出力(MIMO)伝送を利用する。基本的に、これは、複数の送信および/または受信アンテナの使用により、追加のデータストリームが導入されることを意味する。これは、一般に利用可能な技術であり、したがって、ここでは詳細に説明しない。しかしながら、MIMOの背後にある一般的なアイデアは、空間の次元を無線リソース空間に導入することであり、そして、それによる無線リソース空間の最大の利用可能性の増大、すなわち空間的効率を増やすことである。しかしながら、プリコーディングに基づく測位のアイデアに対して欠くことのできない詳細を理解するために必要となるいくつかの態様について説明する。
【0029】
MIMOの仕組みは、送信と受信が共に複数のアンテナを装備することと、複数の変調されプリコードされた信号が、同一の時間−周波数リソースエレメント上で伝送されることを仮定している。図2に、そのようなMIMOシステム30における物理チャネルの処理を示す。符号化された情報ビット31は、ビットがスクランブルされるスクランブラユニット32へ到着する。最大2つの符号化されたビットの並列ストリームがLTE Release 8において認められている。変調マッパモジュール33では、符号化されたビットがグループ化され、QPSK、16QAMまたは64QAMのような変調アルファベットへとマップされる。レイヤ・マッピング・モジュール34では、変調されたビットが、さらに、レイヤ35と呼ばれる、nLayer個の異なるベクトルへマップされる。nLayerは、典型的にはTXアンテナの個数(nTX)以下である。レイヤベクトルの各要素に対して、レイヤにマップされたシンボルに、次元(nTX、nLayer)を有するプリコーディング行列36が乗算される。プリコーディング処理は、nTX個の複素数値ベクトルを形成する。リソースエレメント・マッパ37では、プリコーディングされた信号がOFDMの時間/周波数グリッドにおけるリソースエレメント上にマップされる。OFDM信号生成部38では、各OFDMシンボルに対して、信号は周波数から時間領域の信号39へと(典型的にはIFFTを用いて)変換される。サイクリック・プレフィックスが各OFDMシンボルへ付加される。
【0030】
図3には、複数のアンテナに対する参照信号のリソースエレメント40へのマッピングの例を示す。1つのアンテナポート上で参照シンボルR0−R3の伝送に用いられるリソースエレメントは、典型的には、他のアンテナポートでは使われない。参照信号はUEにより、復調と無線リンクの品質の推定のために必要となる、チャネル推定のために使用される。
【0031】
数学的には、特定の周波数/時間のリソースエレメント(k、l)に対する送信信号は
x(k、l)=WRI、PMI(k、l)・s(k、l) (1)
のように表すことができる。ここで、kは、サブキャリア(周波数)のインデックスであり、lはリソースエレメントの時間のインデックスである。ここで、sは、要素si、i=1、・・・、RIを伴うベクトルであり、siは変調されたシンボルである。RIはランク指標、すなわち、同一の時間−周波数リソースエレメント上で送信される信号(レイヤ)の数である。WRI、PMI(k、l)は、次元Ntx×RIの、いわゆるプリコーディング行列である。xは、送信信号のベクトルであり、x(i)、i=1、・・・、Ntxは、i番目の送信アンテナから送信される信号である。プリコーダに付されたインデックスRIとPMIは、後で説明するように、プリコーダがプリコーダの有限の集合から選択されたことを示す。信号は次元がNrx×Ntxのチャネル行列Hを有するチャネルを介して伝送される。その結果、受信信号ベクトルは、
y=Hx=HWRI、PMIs+e (2)
により与えられるNrx次元のベクトルとなる。ここで、eは、共分散行列Reの雑音と干渉のベクトルである。(2)では、標記を簡単にするために、インデックス(k、l)を省略していることに注意されたい。
【0032】
UEは、全ての送信アンテナから送信される参照シンボルに基づいて、チャネル行列Hを推定することができる。参照シンボルは、典型的には、直交したリソースから送信される。すなわち、1つのアンテナから参照信号を送信するのに用いられるリソースエレメントは、図3に関連して上述したように、他のアンテナによっては使用されない。
【0033】
使用されるプリコーダ行列は、UEが合成のチャネルHWを構成し、信号sを復調できるようにするために、UEへ信号で伝えられる。プリコーダ行列Wは有限の要素の集合を有するコードブックから選択される。
【0034】
2つのTXアンテナに対して、表1のコードブックが使用される。

表1:2つのTXアンテナに対するコードブック。
【0035】
プリコーダ行列の選択は、ランクの選択、すなわち、レイヤの数と、コードブックのインデックスの選択の両方を含む。ランク1に対しては、コードブックは4つの択一的なプリコーダを含む。ランク2に対しては、コードブックは3つの選択肢を含む。
【0036】
今、プリコーダ選択がランク1の要素に制限されると仮定する。そのとき、シンボルsの推定値は、以下の方法(いわゆるIRCまたはMMSE重みづけ)

(3)
において受信信号を合成することにより、計算することができる。
【0037】
信号の合成後のSNRは、
SNR=(HWRI、PMI)HRe-1(HWRI、PMI) (4)
と書くことができる。スループットを最大化するためには、SNRが最大化されるようにRIとPMIを選択することが望まれる。これは、UEにおいてのみ現れる、チャネル行列Hと共分散Reの知識を要求する。したがって、標準には、UEが好ましいRIとPMIを基地局へ報告することができるようなメカニズムが含まれる。
【0038】
次に、プリコーダ選択がどのようにUEの位置に関連するかについて示す。
【0039】
図4の配置を仮定する。2つのアンテナポート42は距離Δだけ間隔を離され、アンテナポート42間の連結線46に対する法線45に対して角度θに位置するUE20へ伝搬するそれぞれの信号44を生じさせる。ランク1の伝送は、プリコーダWが、k番目の要素がwkである列ベクトルとなるように仮定される。信号sk(t)=wk・s・exp(iωct)は、k番目のアンテナから送信される。雑音がない状態の受信信号は、
rk(t)=h・wk・s・exp(iωc(t−τk)) (5)
であり、hは信号の減衰、τkは基地局のアンテナkからUEまでの遅延である。これは、
τk=dk/c (6)
である。アンテナ間の距離と比較して、UEが基地局から遠く離れていることを仮定すると、相対遅延は、
τk−τj=Δk、jsin(θ)/c
と書くことができる。任意に、センサ1をリファレンスとすると、
rk(t)=h・wk・s・exp(−iωcτ1)・exp(iωc(t−(τk−τ1)))
=h・wk・s・exp(−iωcτ1)・exp(iωct)・exp(−iωcΔk、1sin(θ)/c)
=hc・wk・exp(iωct)・exp(−i2πΔk、1sin(θ)/λ)・s (8)
ここで、λは波長であり、表記
hc=h・exp(−iωcτ1) (9)
を用いた。簡単のためにRe=I及びh=1としたときの結果のSNRは、

(10)
となる。
【0040】
異なるプリコーダに対し、

であるときの、到来角θに応じたSNR49A〜Pを、2本のTXアンテナについては図5Aに、4本のTXアンテナについては図5Bに描画する。明らかに、方位とSNRを最大化するプリコーダのインデックスとの間に強い相関がある。全てのプリコーダが有用なわけではないかもしれないことに注意されたい。4TXの対しては、5つの候補プリコーダのSNR49E〜Iのみが必要とされる。候補は、十分強く、異なる方向に最大SNRとなるローブを有する必要がある。
【0041】
2本のTXアンテナに対しては、3つの異なるプリコーダが異なる方位角で最大SNR49A〜Cを提供することが分かる。したがって、これらのプリコーダのいずれかを指す測定値を方向角推定値として見ることができる。4番目のプリコーダのSNR49Dは、高い受信電力の2つの角度の間隔が低い受信電力の角殿間隔により分離されており、このアプリケーションでは役に立たないと考えられる。したがって、測定値を3つの他の候補にのみ制限するのが賢いかもしれない。
【0042】
他の可能性は、第1の測定値から最も強いプリコーダを取り除いて、いくつもの測定値を作ることである。それにより、角度の広がりをさらに削減することが可能となるかもしれない。例えば、第1の測定値が、我々がθ=0度の周辺のメインローブにいることを示す場合、そのプリコーダを除外する第2の測定値は、我々がθ=0度に対して負または正の角度にいるかについての情報を提供するようにしてもよい。それにより、角度の広がりは50%削減される。
【0043】
本発明の基本的な利点は、新しい位置に関連する情報を提供することである。様々なデコーダのSNRの角度分布は、対応するUEがどの角度の領域の範囲内に存在するかの表示を与える。また、確率分布についてのいくつかの情報も利用可能である。
【0044】
この情報は、そのように測位の目的に使うことができるが、他の測位の方法と組み合わせられると、さらに有用である。例えば、利用可能とされた新しい位置に関連する情報は、現在利用可能なラウンド・トリップ・タイムや、TAに基づく「基地局からの距離」の測定値と直交する。また、フィンガープリントの方法に関連しても有用である。
【0045】
図6は、本発明による方法の実施形態に係る手順を図解する。位置決定を提供する本方法は、ステップ200で始まる。ステップ210では、ユーザ装置に関連するセルラ通信ネットワークの信号の特性を表すデータが取得される。そのような信号の特性の例は、フィンガープリントのパラメータ、またはセルラ通信ネットワーク内での信号の伝搬時間である。ステップ212では、ユーザ装置に対する空間多重のためのプリコーダ選択を表すデータが取得される。ステップ214において、信号の特性及びプリコーダ選択を表すデータに基づいて、ユーザ装置の位置が決定される。本手順はステップ299で終了する。
【0046】
ここで、基本の測位方法として、RTTまたはTAに基づく測位、及びフィンガープリント測位方法を対象とする、少数の例示の実施形態を以下で与える。RTTまたはTAに基づく方法の要約をまず与える。
【0047】
LTEにおけるタイミング・アドバンス(TA)またはWCDMAにおけるラウンド・トリップ・タイム(RTT)は、無線ネットワーク内の無線信号の伝搬時間を用いる測位方法の例である。ラウンド・トリップ・タイム(RTT)を例に取って、図7Aに図解的に描画する。そのとき、RBS10からUE20までの距離は式

(11)
から得られる。ここでRTTはラウンド・トリップ・タイムであり、cは光の速度である。これにより円形の帯6が定まる。この情報とセルの多角形5とを組み合わせることにより、円形の帯6の左と右の制限角度を計算でき、UE20はそのセクタの弧7の中に位置する。
【0048】
したがって、幾つかのシステムにおいて、これらの中で広帯域符号分割多元接続(WCDMA)システムでは、UEが位置するアンテナからの距離を特定するためにラウンド・トリップ・タイム(RTT)を使用することができる。これは距離のみを提供し、UEがアンテナの周りの球またはセクタのどこにあるかを突き止めることはできない。例えば、RTT測定が基地局から500mにUEがいると決定する場合、この測位はセクタ7内の弧または円の円周に沿っている。
【0049】
正確性を増すため、幾つかの基地局からのRTTの三角測量を使用することができる。しかしながら、これが可能であるためには、端末が1つより多くの基地局とハンドオーバ状態、すなわち、ソフト(ソフタ)ハンドオーバ状態になければならないという事実により、この実現性が制限される。これは、セルの限定的な、典型的には25%より少ない部分でのみ起こる。したがって、WCDMAにおけるマルチレグ(multi-leg)RTTは優れた使用可能性を有さないであろう。
【0050】
上で概説したRTTの方法は半径方向においては正確であるが、角度に関する精度は基地局からの距離に依存する。本方法は、ソフト(ソフタ)ハンドオーバ状態にある必要に起因して、異なる基地局からの円弧の交差の利用へとうまく拡張することができない。これは、そのように使用される、そのような測位方法の利用可能性を厳しく制限する。
【0051】
正反対に、本発明の実施形態によれば、プリコーダに基づく位置情報とRTTの距離情報との組み合わせの作用により、測位精度が大幅に向上する。RTTの距離情報が、場合によっては不確定性を備え、真の位置がある円弧6を定める。そのとき、図7Bに図解するように、扇形の領域2を定めるプリコーダ情報は、UEがその間に位置する円弧7の角度を、重複領域3のように縮小するのを支援する。このように、例えばWCDMAやLTEにおいて、特にMIMO技術を利用するセルラシステムにおいて、この利点が得られる。
【0052】
図8に、タイミング・アドバンス測定値またはラウンド・トリップ・タイム測定値を用いる、本発明による方法の実施形態の手順を図示する。図6のステップと同一のステップは、さらには論じない。この実施形態では、ステップ214は、信号の特性に基づいて基礎位置の決定を行う第1の部分ステップ216を含む。この具体的な実施形態では、基礎位置の決定は、タイミング・アドバンス測定値またはラウンド・トリップ・タイム測定値に基づく。典型的には、場合によってはユーザ装置が接続しているセルの境界で限られる、円の円周が定められる。ステップ214は、さらに、プリコーダ選択のデータを用いることにより、基礎位置の決定の強化が実行される部分ステップ218を含む。この具体的な実施形態では、これは、プリコーダ選択の情報により定められる角度の間隔により、ステップ216で得られた円の円周を縮小することを含む。
【0053】
本発明の本実施形態における利点は、水平領域において追加的な情報が提供されることである。これは、複数の基地局からの弱い信号強度測定値を組み合わせる必要なく達成される。このように、単一レグのRTT測位または単一レグのTA測位の精度を改良するのに本実施形態を用いることができる。
【0054】
到達時間差観測値(OTDOA)のような、その他の地上の測位方法に関しては、これらは一般的に、少なくとも基本構成では、十分良好な性能を提供するには余りにも低い検出性能に悩まされる。
【0055】
フィンガープリント測位方法と関連して、プリコーダに基づく情報を利用することもできる。ここで、そのような方法が選択される態様の短い概要を以下に与える。
【0056】
フィンガープリント測位アルゴリズムは、無線アクセス・ネットワーク(RAN)をカバーする細かい座標格子の各点に対する無線フィンガープリントを生成することにより動作する。フィンガープリントは、例えば、各格子の点に対して、各端末により検出される複数のセルIDを含んでもよい。また、各格子の点において端末により実行される、多数のRBSに対する量子化された伝搬損失(パスロス)または信号強度の測定値を含んでもよい。また、有利にはRBSの関連付けられたIDも必要とされてもよいことに注意されたい。また、各格子の点における量子化されたラウンド・トリップ・タイムをフィンガープリントの一部とすることもできる。ここで、RBSの関連付けられたIDに価値があることにも注意されたい。フィンガープリントで使用可能なさらなるパラメータは、各格子の点における量子化された雑音発生である。この量はCDMAシステムの負荷を表わす。さらに、無線アクセス・ベアラ(RAB)または量子化時間のような無線接続情報は、フィンガープリントで使用することもできる。
【0057】
フィンガープリントの方法はまた、参照位置を必要とする。フィンガープリントを採られた位置のデータベースはいくつかの方法で生成することができる。第1の選択肢は、RANの全ての座標格子点に対して、無線測定値のフィンガープリントの採取を実行する、大規模な調査オペレーションを実行することである。この方法の1つの不利な点は、小さいセルラネットワークに対しても、要求される調査が大量となることである。もう1つの不利な点は、無線フィンガープリントが、例えば信号強度やパスロスといったパラメータについて、場合によっては端末の方向に敏感であることである。これは、ハンドヘルドの端末に対して特に厄介な事実である。したがって、細かい格子に対して、フィンガープリントを採られた位置の精度は、非常に不確実となる。これは、不運なことに、報告される地理的な結果の精度にほとんど反映されない。
【0058】
例えば非特許文献1に見られる「適応高度化セルID(AECID)」において適用される、もう1つの方法は、細かい格子を適切な高精度位置測定値により置き換え、それらの点に対する無線測定値のフィンガープリントの採取を提供するものである。これは、上の不利な点を回避するが、適切な高精度位置測定値のクラスタ化のためのアルゴリズムが定められる必要がある。さらに、クラスタの地理的表現の計算のアルゴリズムも定められる必要がある。
【0059】
上の2つのフィンガープリントの問題は、例えば特許文献1及び特許文献2に見られる、AECID測位方法上での先の特許出願により解決される。AECIDは、基礎的なセルアイデンティティの測位方法を、様々な方法において改良する測位技術である。本開示は、開始点として、これらの2つの情報に基づく。
【0060】
図9は、AECID測位に基づく測位ノード65の実施形態のブロック図である。WCDMAシステムにおいて備えられるものと仮定する本実施形態では、そのような機能は好ましくはRNC60に備えられる。もう1つの可能性は、Iupcインタフェースの他のサイドのSASノード(例えば、エリクソンSMLC)に本発明を実装することである。さらにもう1つの可能性は、OSS−RC、またはさらに完全に外部のノードにおいて測定値を記録し、本アルゴリズムを実行することである。その結果、検出されたセルのセットと測定した高精度位置決定の結果との交換を可能とする、新しいインタフェースおよび/または現存のインタフェースにおける情報要素が必要とされてもよい。さらなる別の方法は、以下にさらに提示される。
【0061】
RNC60は、RBSを介して透過的に、RRCインタフェース55を使用してUEと通信する。本文脈では、位置測定値56、特に高精度位置測定値と、フィンガープリントのパラメータ測定値57の、少なくとも2つの情報形式が関心のあるものである。フィンガープリントのパラメータ測定値57は、フィンガープリント決定部61に供給される。特定のユーザ装置の、決定したフィンガープリント構成は、クラスタ化部62に供給される。
【0062】
位置測定値56は測位ノード65に供給される。高精度位置測定値は、例えば、UTDOAまたはA−GPSに基づく測位を含むことができる高精度測位部66に供給される。本実施形態では、その他の位置測定値、例えばセルIDまたはRTT位置測定値は、中精度測位部68に供給される。高精度位置測定値の解析結果、すなわち高精度位置はクラスタ化部62に供給され、高精度位置は、対応するフィンガープリント構成と関連付けられる。測定値はフィンガープリント構成に応じてクラスタ化される。
【0063】
あるフィンガープリント構成に対する位置のクラスタは、アルゴリズムブロック63に提供される。アルゴリズムブロック63では、領域定義が計算される。アルゴリズムブロック63では、特定の信頼水準で、測定値のクラスタの各々を表す領域を計算する。WCDMAの場合、好ましい領域定義は、3から15の角の座標により定まる多角形である。特定の実施形態では、アルゴリズムブロック63は、クラスタの高精度測定値の一定の割合が1つの多角形の内部に位置する確率となるような多角形を供給する。このアルゴリズムブロック63は、好ましくは、十分な数の十分に最新な高精度測定値を有する全ての測定値のクラスタに対して、多角形の再計算を繰り返し実行する。本領域定義は領域記憶部64に供給され、セル・リレーション構成の階層的に組織されたセットを表わす多角形が記憶される。記憶された多角形は、その後、システムの測位アルゴリズムにより使用される。記憶された多角形のデータ構造は、好ましくは、適切なフィンガープリント構成の各々をカバーするポインタのリストを含む。そのようなポインタの各々は、上述のように繰り返し計算された、対応する3から15の角の多角形を指し示す。データ構造はまた、好ましくは、各多角形に対して、多角形を計算した時間を定める時間タグを含む。
【0064】
本発明の原理による位置決定が要求された場合、従来通り、フィンガープリント決定部61においてフィンガープリント構成が決定される。その結果は測位ノード65の制御部69に転送される。測位要求51、例えば、RANAPインタフェース67上でのいわゆる位置報告制御メッセージを受信すると、制御部69は、サービス品質パラメータおよびUE能力に基づいて、領域記憶部64からUEの現在のフィンガープリント構成に対応する領域定義を抽出することによる位置決定を要求してもよい。得られた領域定義、望ましくは多角形の定義は、典型的にはRANAPインタフェース67を介して、例えばいわゆる位置報告メッセージを使用して返送される位置報告メッセージ52に含まれる。
【0065】
領域定義が、追加の測位方法と共に用いられるべき場合、領域記憶部64から抽出された領域は、用いられる方法に応じて、高精度測位部66または中精度測位部68へ供給される。最終的な決定された位置は、その後、さらなる報告のために制御部69へ供給される。
【0066】
図9に概略的に図解されている、AECID測位方法は、このように、高精度位置測定値、例えばA−GPS測定値を、あるセルラ無線伝搬条件が持続する領域に属する点と見なすことができるという着想に基づく。その最も簡単な形式では、あるセルIDが有効である時と同じ時間に実行されるA−GPS測定値は、セルラ・システムにおける特定のセルの範囲に入るA−GPS測定値を表わす。AECID測位方法はこれを認識し、上述のように、ある基準により高精度測定値のタグ付けを導入する。
【0067】
AECID測位手法の第2のステップは、同じタグを持つ全ての高精度位置測定値を個別の高精度測定値クラスタに集めること、そして例えば、特許文献3に見られるように、それを改善するためにそのクラスタのさらなる処理を実行することである。そのようなクラスタの各々は類似の無線条件を有する領域から集められた高精度位置測定値からなることは明らかであり、したがってその測定値は通常、同じ明確な地理的領域からのものである。より具体的には、その特定の地理的領域は、通常、セルラ・システムにおけるセルの範囲より実質的に小さい。
【0068】
AECID測位手法の第3のステップでは、記憶された高精度位置測定値のクラスタの各々に対して、クラスタの地理的範囲を表わす多角形が計算される。このアルゴリズムの詳細は、特許文献1、特許文献4及び特許文献5に開示されており、ここでは詳細には繰り返さない。本アルゴリズムの1つの明白な特性は、多角形の領域を最小化することを含む。言い換えれば精度が最大化される。さらに、本アルゴリズムは、端末が多角形の範囲内にある確率、すなわち、確度が正確に分かることを含む。それはアルゴリズムにおける制約として設定される。
【0069】
これまで、多角形のタグ付きデータベースの生成に向けたステップについて説明した。ここで、AECID位置は、持続的なタグの第1の決定により容易に決定される。これは、上述のように、セルIDを検索し、補助的な測定を実行し、そして補助的な接続情報を検索することにより実行される。次に、多角形のタグ付きデータベースにおいて、決定したタグに対応する多角形を検索し、続いて、例えば、RANAPを介して報告がなされる。
【0070】
このフィンガープリント技術も、時折、極めて不正確である。これは、十分に良好な測定値の限られた利用可能性に部分的に起因する。具体的には、RTTおよびTA測定値は半径方向において非常に良い精度を提供するが、水平方向の精度は良くない。信号強度の測定値は、セルの配置に応じて、時折、追加的な水平方向の情報を提供することができる。しかしながら、問題はこれらの測定値が非常に不正確であることである。
【0071】
したがって、AECIDにおいても、追加的な情報に対する要求がある。本発明の実施形態によれば、プリコーダに基づく位置情報と従来技術のフィンガープリントの情報との組み合わせの作用により著しく向上した測位精度が提供される。これは、WCDMA及び特にLTEにおいて、MIMO構成に対する重要な相違点となる。
【0072】
プリコーディングのローブの形状は、必ずしも、通常の指向性アンテナにおけるような左右対称ではないため、利点が生じる。したがって、それらは、さらに上で述べたAECID手法のようなフィンガープリント測位方法への統合のために、完全にそれら自身に役立つ。実際の組み合わせは様々な方針に従って実行することができる。
【0073】
図10Dに図示するような1つの実施形態において、プリコーダのインデックス以外の情報、例えばタイミング情報、のタグを用いて、フィンガープリントのルーチンを実行することができる。実際の測位が実行されるべきとき、現在のタイミング情報および/または他の情報がUEが存在する領域を見つけるための入力として使用される。そのとき、位置改善部において、プリコーダのインデックスに関する角度の制限によって、この領域をさらに削減するために、プリコーダのインデックスを利用することができる。
【0074】
これらの着想による方法の実施形態は、図8ですでに議論されたことにより説明される。この実施形態において、ステップ216は、典型的には多角形により定まる領域を与えるフィンガープリント測位方法である、基礎位置の決定を含む。その後、ステップ218では、この領域はプリコーダ選択のデータによって定められる角度の間隔により制限される。
【0075】
他の実施形態では、プリコーダのインデックスは、代わりに、タグ付け基準として、アルゴリズムに入力されてもよい。タグは、1つの実施形態において、プリコーダのインデックスにのみ依存するのであってもよい。この方法を概略的に図10Aに図示する。高精度測位情報はプリコーダのインデックスと共に、関連する領域の付与のために、フィンガープリント手法に入力される。フィンガープリントの手法は、その後、各プリコーダのインデックスに関連する領域を付与する。位置が決定されるべきとき、あるプリコーダのインデックスとプリコーダのインデックスを使用しているUEが位置する領域とのある確実性を有する関係がある。
【0076】
それから、さらなる実施形態において、この領域情報と追加的に利用可能な測位情報、例えばいくつかのタイミング情報、とを組み合わせることにより、この測位の改良を達成することができる。これを、追加的に利用可能な位置に関連する情報が位置改善部に供給される場合について、図10Bに示す。そのとき、可能な位置の有望なエリアのさらなる削減を多くの場合において達成することができる。そのような場合において、AECIDの方法により得られるようなフィンガープリントの位置領域を、例えばRTTやTA位置決定と組み合わせることができ、ひいては、改善された位置は、これらの2つの異なる方法における重複する領域となるであろう。
【0077】
さらにもう1つの実施形態では、タイミング情報、すなわち、距離情報、又は他の種類の位置関連の情報がプリコーダのインデックスと共に、フィンガープリントのルーチンにおけるタグを形成するために使用される。これを図10Cに示す。実際の測位を実行するとき、タイミング情報または他の情報とプリコーダのインデックスの両方が、UEの適切な領域を選択するのに必要とされる。これは、現在のところ、利用可能な情報に関して、最良の性能を有すると思われる実施形態である。そのような実施形態において、フィンガープリントのデータベースは、従来技術のパラメータ及びプリコーダのインデックス情報の使用により得られるデータを含む。
【0078】
さらに前に述べたように、プリコーダのインデックスの選択は、UEによりなされる黙示的な角度の測定に基づく。この測定は、空間多重のためのプリコーダ選択の一部としてなされ、それ自体は知られている。角度の測定値、またはそれを表すデータは、空間多重のための実際の選択がなされる基地局へ報告される。対応する情報は、信号の正確な受信を可能とするために、ユーザ装置へ返される。これは、それ自体は従来技術において、すべて知られている。
【0079】
しかしながら、この情報を位置関連情報として使用するために報告することは、以前には知られていない。したがって、図11A〜Dに関連して、様々のプリコーダのインデックスに対する品質の測定値、またはこれらの測定値に関連する、例えば最終的なプリコーダの選択の任意の情報は、UE20から、測位能力を有する、すなわち位置決定部を有する測位ノード65A〜Cへ供給される。そのような供給は、様々な手続きにより実行することができる。もっとも伝統的な方法は、無線通信システム19の制御プレーンを用いて、WCDMAにおいては無線ネットワークコントローラ(RNC)60、又はLTEに対しては対応するeNodeB11へ、情報を送信することである。無線ネットワークコントローラ(RNC)60は、それから、無線通信システム19のコアネットワーク17における測位ノード65Aへ、またはコアネットワーク17に接続する測位ノード65Bへ、この情報を転送する。そのような構成を、例えばWCDMAに対しては図11Aに、LTEに対しては図11Cに図示する。
【0080】
もう1つの別の実施形態では、プリコーダ選択に対する測定値に関連する情報を供給するために、ユーザプレーンを用いることができる。それにより、その情報はコアネットワーク17における測位ノード65A、コアネットワーク17へ接続する測位ノード65Bまたは外部の測位ノード65Cへ向けてもよい。これを、WCDMAに対しては図11Bに、LTEに対しては図11Dに、概略的に示す。この方法は、基本的に、標準化されたインターフェース、例えば、Java(登録商標) Micro edition、Symbian(登録商標)、Linux、及びWindows(登録商標) for Mobile、に基づいて、ユーザ装置におけるアプリケーションに対して、位置関連情報を送信することの一般的なコンセプトに従う。そのようなインターフェースは、位置関連データと、ユーザ端末において利用可能な基礎的な測定情報とへのアクセスを可能とする。インターフェースは利用可能な位置関連情報をサーバへ報告するのに利用される。セルラ通信システムの事業者または外部のサービスプロバイダは、サーバを所有し、運営することができる。
【0081】
そのような情報配信の動作はユーザ装置の内部でのメッセージの生成に基づくことができる。位置関連情報の収集および配信のための方法の実施形態において、方法は、ユーザ装置の内部でのメッセージの生成により、測位データの収集を開始することを含む。測位データは、プリコーダ選択のデータまたはそのような選択を可能とする観測値を含む。測位データは、また、基本的な測位方法を対象とした他の測位情報を含んでもよい。方法は、さらに、ユーザ装置により、そのメッセージに応答して、ユーザ装置のプリコーダ選択に関連する少なくとも1つのパラメータを測定することを含む。方法は、さらに、ユーザ装置の内部で、上述の少なくとも1つのパラメータを含む測定報告を生成し、選択された1つ以上の測定報告をユーザ装置内部のインターフェースへ報告することを含む。測定報告またはそのような測定報告に基づくプリコーダ選択は、インターフェースから外部のサーバまたは通信ネットワークへ送信される。
【0082】
ユーザ装置は、このように、測位データを収集する。したがって、ユーザ装置は、メッセージを生成することにより測位データの収集を開始するプロセッサを含む。プロセッサはさらに、メッセージに応じて、ユーザ装置におけるプリコーダ選択に関する少なくとも1つのパラメータを測定するように測定部に命令する。プロセッサは、さらに、そのパラメータを含む測定報告を生成し、選択された1つ以上の測定報告をユーザ装置内部のインターフェースへ報告する。ユーザ装置は、また、プロセッサに接続され、報告された1以上の測定報告、またはそれに基づくプリコーダ選択を外部サーバまたは通信ネットワークへ送信する送受信機を含む。
【0083】
位置決定を提供する装置70の1つの実施形態を図12に示す。この装置70は典型的には上での議論に従う測位ノードに含まれるが、1より多くのノードの間に分散してもよい。装置70は、ユーザ装置に関連するセルラ通信ネットワークの信号の特性を表すデータを取得する手段71を備える。信号の特性を表すデータを取得する手段71は、典型的には、セルラ通信ネットワークのユーザプレーン上でのデータの受信器73、または、セルラ通信ネットワークの制御プレーン上でのデータの受信器73である。後者の場合、装置70は、セルラ通信ネットワークの一部である。装置70は、位置決定部76を備える。位置決定部76は、そこから情報を受信するために、信号の特性を表すデータを取得する手段71に接続される。位置決定部76は、取得された信号の特性に基づいてユーザ装置の位置を決定する。
【0084】
装置70は、ユーザ装置に対する空間多重のためのプリコーダ選択を表すデータを取得する手段72をさらに備える。ユーザ装置に対する空間多重のためのプリコーダ選択を表すデータを取得する手段72は、典型的には、セルラ通信ネットワークのユーザプレーン上でのデータの受信器74、または、セルラ通信ネットワークの制御プレーン上でのデータの受信器74である。典型的には、プリコーダ選択を表すデータを取得するこの手段72は、信号の特性を表すデータを取得する手段71と、共通部75において協調し、または統合される。位置決定部76はまた、プリコーダ選択を表すデータを取得する手段72にも接続される。位置決定部76はさらに、位置の決定が取得されたプリコーダ選択に基づくように構成される。
【0085】
1つの具体的な実施形態において、位置決定部76は、順に、信号の特性上で動作する基礎位置決定部77と、プリコーダ選択のデータを使用することにより動作する高度化部78とを備える。一例として、基礎位置決定部77は、タイミング・アドバンスの測定値またはラウンド・トリップ・タイムの測定値に基づいて位置を決定する。もう1つの例では、基礎位置決定部77は、適応高度化セルアイデンティティ測位に基づいて、位置を決定する。
【0086】
もう1つの具体的な例では、位置決定部76は、プリコーダ選択を表すデータを入力として伴って、適応高度化セルアイデンティティ測位に基づいて位置を決定する。適応高度化セルアイデンティティ測位は、さらに上で述べたように、フィンガープリントを形成する他の位置関連データに基づいて実行することもできる。
【0087】
上述の実施形態は、本発明の数個の説明のための例として理解されるべきである。本発明の範囲から逸脱することなく、本実施形態に各種の修正、組合せおよび変更が行われてもよいことが当業者には理解されるであろう。特に、技術的に可能なその他の構成で、様々な実施形態において様々な部分解決策を組み合わせることができる。しかしながら、本発明の範囲は別記の特許請求項によって定められる。
【0088】
<略語表>
AECID − 適応高度化セルID
A−GPS − アシスト型全地球測位システム
CDMA − 符号分割多元接続
GPS − 全地球測位システム
IRC − 干渉除去合成
LTE − ロング・ターム・エボリューション
MIMO − 多入力多出力
MMSE − 最小平均二乗誤差
OFDM − 直交周波数分割多重
OSS−RC − 運用支援システム−無線およびコア
OTDOA − 到達時間差観測値
QAM − 直交振幅変調
QPSK − 直交位相変調
RAB − 無線アクセス・ベアラ
RAN − 無線アクセス・ネットワーク
RANAP − 無線アクセス・ネットワーク・アプリケーション部
RBS − 無線基地局
RNC − 無線ネットワーク制御装置
RRC − 無線リソース制御
RTT − ラウンド・トリップ・タイム
SMLC − サービス・モバイル・ロケーション・センタ
TA − タイミング・アドバンス
TX − 送信器
UE − ユーザ装置
WCDMA − 広帯域符号分割多元接続。
【0089】
WiMAX − ワールドワイド・インターオペラビリティ・フォー
・マイクロウェーブ・アクセス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決定を提供する方法であって、
ユーザ装置(20)に関連するセルラ通信ネットワーク(19)の信号の特性を表すデータを取得するステップ(210)と、
前記信号の特性に基づいて前記ユーザ装置(20)の位置を決定するステップ(214)と、
前記ユーザ装置(20)に対する空間多重のためのプリコーダ選択を表すデータを取得するステップ(212)と、
を有し、
前記決定するステップ(214)は、前記プリコーダ選択を表す前記データにも基づくことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記決定するステップは、順に、
前記信号の特性に基づいて基礎位置を決定するステップ(216)と、
前記プリコーダ選択のデータを使用して、前記基礎位置の決定を高度化するステップ(218)と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基礎位置を決定するステップ(216)は、タイミング・アドバンス測定値またはラウンド・トリップ・測定値に基づくことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基礎位置を決定するステップ(216)は、適応高度化セルアイデンティティ測位に基づくことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記決定するステップ(214)は、プリコーダ選択を表す前記データを入力として伴う適応高度化セルアイデンティティ測位に基づくことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記信号の特性を表すデータを取得するステップ(210)と、前記プリコーダ選択を表すデータを取得するステップ(212)との少なくとも1つは前記セルラ通信ネットワークの制御プレーン上でデータを受信するステップを有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記信号の特性を表すデータを取得するステップ(210)と、前記プリコーダ選択を表すデータを取得するステップ(212)との少なくとも1つは前記セルラ通信ネットワークのユーザプレーン上でデータを受信するステップを有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
位置決定を提供する装置(70)であって、
ユーザ装置(20)に関連するセルラ通信ネットワーク(19)の信号の特性を表すデータを取得する手段(71)と、
信号の特性を表すデータを取得する前記手段(71)に接続され、前記信号の特性に基づいて、前記ユーザ装置(20)の位置を決定する、位置決定部(76)と、
前記ユーザ装置(20)に対する空間多重のためのプリコーダ選択を表すデータを取得する手段(72)と、
を有し、
前記位置決定部(76)は、プリコーダ選択を表すデータを取得する前記手段(72)に接続され、前記位置の決定は前記プリコーダ選択に部分的に基づく、
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記位置決定部(76)は順に、
前記信号の特性上で動作する基礎位置決定部(77)と、前記プリコーダ選択のデータを使用することにより動作する高度化部とを有することを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記基礎位置決定部(77)は、タイミング・アドバンス測定値またはラウンド・トリップ・タイム測定値に基づいて位置を決定することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記基礎位置決定部(77)は、適応高度化セルアイデンティティ測位に基づいて位置を決定することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記位置決定部(76)は、プリコーダ選択を表すデータを入力として伴う、適応高度化セルアイデンティティ測位に基づいて、位置を決定することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記信号の特性を表すデータを取得する手段(71)と前記プリコーダ選択を表すデータを取得する手段(72)の少なくとも1つは、前記セルラ通信ネットワーク(19)の制御プレーン上でのデータの受信器(73、74)であることを特徴とする請求項8から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記信号の特性を表すデータを取得する手段(71)と前記プリコーダ選択を表すデータを取得する手段(72)の少なくとも1つは、前記セルラ通信ネットワーク(19)のユーザプレーン上でのデータの受信器(73、74)であることを特徴とする請求項8から13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記セルラ通信ネットワーク(19)のノード(65A、65B)に備えられることを特徴とする請求項8から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記セルラ通信ネットワーク(19)に関連する外部のノード(65C)に備えられることを特徴とする請求項8から14のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−512403(P2012−512403A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541236(P2011−541236)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053724
【国際公開番号】WO2010/069610
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】