説明

電気部品、導電パターンの形成方法、およびインクジェットヘッド

【課題】微細な形状で基材上に形成され、当該基材からの剥離が抑制された安定な構造の導電パターンを有する電気部品と、当該導電パターンを形成する導電パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】表面が撥液性を有する基材表面に導電パターンを印刷する第1の工程と、前記導電パターンが形成されていない前記基材表面を親液性処理する第2の工程と、前記導電パターンを覆う絶縁層を形成する第3の工程と、を有することを特徴とする導電パターンの形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁基材上に導電パターンが形成されてなる電気部品、当該導電パターンの形成方法、および当該電気部品を用いたインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、基板などの基材上に、電極や配線などの導電パターンを形成する場合、特に微細導電パターンを形成する場合には、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングによるパターニング方法がとられる場合があった。
【0003】
しかし、フォトリソグラフィ法によるパターニングにはコストがかかり、またレジストパターンの形成工程や露光・現像工程、さらにエッチングガスを用いたエッチング工程などを要し、工程が複雑となる問題があった。
【0004】
そこで、単純な方法であって、低コストで導電パターンを形成する方法として、近年、印刷法、例えばインクジェット法により微細導電パターンを形成する方法が着目されている。印刷法による導電パターン、例えば配線パターンの形成は、フォトリソグラフィ法とエッチング法を用いた場合に比べて、工程が単純となり、低コストで実施することが可能な特長を有している。
【0005】
印刷法による導電パターンの形成においては、導電パターンを形成する基板などの基材上に、金属ナノインクなどの導電体を含むインクにより、導電パターンを形成する方法がとられる。
【0006】
しかし、例えばインクジェット法などにより、金属ナノインクなどの金属粒子を含むインクを基材に印刷する場合、微細化が困難となる問題があった。例えば、金属ナノインクなどは、基材表面に滴下された後で当該基材表面上に広がるため、微細化するにあたって問題となっていた。
【0007】
そこで、印刷法により微細化された導電パターンを形成するために、例えば、以下のように様々な方法が提案されていた。
【0008】
例えば、インクジェット法により導電パターンを形成する場合に、基板上に親液性領域と撥液性領域を設け、その表面エネルギーの差を利用して親液性領域にのみ金属ナノインク等による導電パターンを形成することが提案されていた(例えば特許文献1参照)。
【0009】
また、金属ナノインクの基板上での広がりを防止する方法とてして、基板表面の撥液性を調整する方法が提案されていた(例えば特許文献2〜特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2004−170463号公報
【特許文献2】特開2004−6700号公報
【特許文献3】特開2004−146796号公報
【特許文献4】特開2004−119479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記の特許文献1(特開2004−170463号公報)に係る方法では、基材上に、親液性を有する領域、または撥液性を有する領域をパターニングして形成する必要があった。そのため、親液性の処理や、または撥液性の処理の工程が複雑となり、これらのパターニングにコストと時間を要する問題があった。
【0011】
また、上記の特許文献2、特許文献3、および特許文献4(特開2004−6700号公、報特開2004−146796号公報、および特開2004−119479号公報)に係る方法では、基材上の撥液性を調整して金属ナノインクの広がりを抑制し、導電パターンの微細化を図っている。しかし、この場合には、導電パターンを微細化するためは、撥液性を高くして、印刷に用いるインクの基材表面に対する接触角を大きくする必要があった。この場合、撥液性を高くする(当該接触角を大きくする)と、導電パターンの基材に対する密着力が小さくなり、導電パターンの基材に対する剥がれを防止することが困難と問題があった。
【0012】
本発明では、上記の問題を解決した、新規で有用な電気部品、導電パターンの形成方法、および当該電気部品を用いたインクジェットヘッドを提供することを目的としている。
【0013】
本発明の具体的な課題は、微細な形状で基材上に形成され、当該基材からの剥離が抑制された安定な構造の導電パターンを有する電気部品と、当該導電パターンを形成する導電パターンの形成方法、および当該電気部品を用いたインクジェットヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の観点では上記の課題を、表面が撥液性を有する基材表面に導電パターンを印刷する第1の工程と、前記導電パターンが形成されていない前記基材表面を親液処理する第2の工程と、前記導電パターンを覆う絶縁層を形成する第3の工程と、を有することを特徴とする導電パターンの形成方法により、解決する。
【0015】
当該導電パターンの形成方法によれば、微細な形状で基材上に形成され、当該基材からの剥離が抑制された、安定な構造の導電パターンを形成することが可能となる。
【0016】
また、前記第1の工程の後に、前記導電パターン上にめっき法により上層導電パターンを積層する工程をさらに有すると、当該導電パターンと当該上層導電パターンを併せた導電経路の断面積を大きくして抵抗値を下げることが可能となり、好適である。
【0017】
また、前記導電パターンは金属粒子を含み、前記上層導電パターンは該金属粒子を触媒にした無電解めっき法により、形成されると、当該上層パターンを容易に形成することが可能となり、好適である。
【0018】
また、前記上層導電パターンは前記導電パターンを給電経路にした電界めっき法により、形成されると、上層導電パターンを形成する効率が良好となり、好適である。
【0019】
また、前記第1の工程の前に、離型材を添加した前記基材を形成する工程をさらに有すると、当該基材が撥液性を有するようになり、好適である。
【0020】
また、前記第1の工程の前に、前記基材表面を撥液処理する撥液処理工程を有すると、当該基材が撥液性を有するようになり、好適である。
【0021】
また、前記撥液処理工程は、前記基材表面をプラズマ励起した撥液処理ガスにより処理する工程であると、前記基材表面上に撥液性を有するための結合を形成することが可能となり、好適である。
【0022】
また、前記第2の工程は、前記基材表面をプラズマ励起した親液処理ガスにより処理する工程であると、前記基材表面を容易に親液製処理することが可能であり、好適である。
【0023】
また、前記第1の工程では、別の導電パターンと、さらに別の導電パターンとが接続されるように前記導電パターンが形成されると、当該導電パターンを用いた接続配線パターンを形成することができる。
【0024】
また、前記第1の工程の前に、前記別の導電パターンが形成された前記基材と、前記さらに別の導電パターンが形成された機能素子を接続する接続工程をさらに有すると、前記基材と別途形成された前記機能素子上の導電パターンを電気的に接続することが可能となる。
【0025】
また、前記基材上に前記別の導電パターンを形成する工程をさらに有し、該別の導電パターンを形成する工程は、支持基板上にマスクパターンを形成する工程と、前記マスクパターンの開口部にメッキ法により前記別の導電パターンを成長させる工程と、当該別の導電パターンを前記基材に転写する工程と、を有すると、前記別の導電パターンにより形成される段差を小さくできる。
【0026】
また、本発明の第2の観点では、上記の課題を、表面に導電パターンが形成された基材と、当該導電パターンを覆うように前記表面上に形成された絶縁層と、を有する電気部品であって、前記表面のうち、前記絶縁層が接する領域の撥液性が、前記導電パターンが接する領域の撥液性より低いことを特徴とする電気部品により、解決する。
【0027】
当該電気部品は、微細な形状で基材上に形成され、当該基材からの剥離が抑制された、安定な構造の導電パターンを有している。
【0028】
また、前記導電パターン上に積層された、該導電パターンと組成の異なる上層導電パターンをさらに有すると、当該導電パターンと当該上層導電パターンを併せた導電経路の断面積を大きくして抵抗値を下げることが可能となり、好適である。
【0029】
また、前記上層導電パターンは、前記導電パターンより応力が小さいと、当該上層導電パターンの剥離を抑制することが可能となり、好適である。
【0030】
また、前記導電パターンは金属粒子を含むと、前記上層導電パターンの形成が容易になり、好適である。
【0031】
また、前記導電パターンを介して接続される、別の導電パターンおよびさらに別の導電パターンをさらに有すると、当該導電パターンを用いた接続配線パターンを有する電気部品を提供することが可能となる。
【0032】
また、前記別の導電パターンは前記基材上に形成され、前記さらに別の導電パターンは前記基材に接続される機能素子上に形成されると、前記基材と別途形成された前記機能素子上の導電パターンが電気的に接続された電気部品を提供することが可能となる。
【0033】
また、前記基材の前記別の導電性パターンが形成される面と、前記圧電素子の前記さらに別のパターンが形成される面との間には、樹脂材料を含む材料により接続面が形成されていると、安定な構造で前記別の導電パターンと前記さらに別の導電パターンを電気的に接続することが可能となる。
【0034】
また、前記導電パターンは、前記別の導電パターン、前記接続面、および前記さらに別の導電パターンに接するように形成されると、安定な構造で前記別の導電パターンと前記さらに別の導電パターンを電気的に接続することが可能となる。
【0035】
また、本発明の第3の観点では、上記の課題を、上記のうち、いずれか1つの電気部品を用いた、インクジェットヘッドを用いて解決する。
【0036】
当該インクジェットヘッドは、微細な形状で基材上に形成され、当該基材からの剥離が抑制された、安定な構造の導電パターンを有している。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、微細な形状で基材上に形成され、当該基材からの剥離が抑制された安定な構造の導電パターンを有する電気部品と、当該導電パターンを形成する導電パターンの形成方法、および当該電気部品を用いたインクジェットヘッドを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明による電気部品は、表面に導電パターンが形成された基材と、当該導電パターンを覆うように前記表面上に形成された絶縁層と、を有する電気部品であって、前記表面のうち、前記絶縁層が接する領域の撥液性が、前記導電層が接する領域の撥液性より低いことを特徴としている。
【0039】
上記の電気部品は、導電パターンが撥液性の高い前記基材表面に形成されているため、例えば印刷法などにより、導電パターンを印刷する場合にインクの濡れ広がりを抑制し、容易に微細な形状が形成可能な構造を有している。さらに当該導電パターンが前記絶縁層で覆われて当該絶縁層が前記基材表面の撥液性の低い領域、すなわち親液製の高い領域に接しているため、前記絶縁層の前記基材に対する密着性が良好であり、前記導電パターンの前記基材表面からの剥離が抑制され、安定な構造である特長を有している。
【0040】
また、当該電気部品を用いると、配線パターンが微細化された、安定な構造を有するインクジェットプリンタに用いるインクジェットヘッドを提供することが可能となる。
【0041】
当該電気部品は、例えば、表面が撥液性を有する基材表面に導電パターンを印刷する第1の工程と、前記導電パターンが形成されていない前記基材表面を親液性処理する第2の工程と、前記基材表面上に前記導電パターンを覆う絶縁層を形成する第3の工程と、を含む形成方法により、形成することができる。
【0042】
上記の形成方法によれば、印刷法により、導電パターンを形成しているため、フォトリソグラフィ法などを用いる場合に比べてより単純な方法で、低コストで導電パターンを形成できる特徴がある。
【0043】
また、印刷法により形成される基材表面が撥液性を有している(表面エネルギーレベルが低い)ため、形成される導電パターンの濡れ広がりが抑制され、微細な導電パターンを形成することが可能となっている。
【0044】
さらに、導電パターン形成後には、導電パターンで覆われていない基材表面を親液処理(表面エネルギーレベルを高くする処理)を行い、当該親液処理を行った基材表面に接して、前記導電パターンを覆うように、オーバーコート層となる絶縁層を形成している。
【0045】
この場合、前記絶縁層が接する基材表面は、親液処理がされているために、当該絶縁層と当該基材表面の密着力は高くなる。このため、前記絶縁層が強い密着力で前記基材表面に固着し、前記導電パターンが前記基材表面から剥離することを防止している。
【0046】
従来は、印刷法により形成される導電パターンを微細化し、かつ当該導電パターンと当該導電バターンが形成される基材との密着力を確保することは困難であった。
【0047】
本発明による導電パターンの形成方法では、微細な形状で基材上に形成され、当該基材からの剥離が抑制された安定な構造の導電パターンを形成することが可能となる。
【0048】
次に、本発明の実施の形態の具体的な例に関して、図面に基づき、説明する。
【実施例1】
【0049】
図1A〜図1Dは、本発明の実施例1による導電パターンの形成方法を、手順を追って示したものである。
【0050】
まず、図1Aに示す工程においては、樹脂材料、たとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)よりなる基材10上の表面を、撥液処理して撥液性を有するようにし、撥液面10Aを形成した。この場合、前記基材10は、例えば基板などの平板でもよく、基板以外の構造物でもよい。また、前記撥液処理は、前記基材10の表面の撥液性を高める処理であり、表面エネルギーレベルを低くする処理である。このような撥液処理が施されると、前記基材10の表面の所定の液体に対する接触角が大きくなる。
【0051】
例えば、前記撥液処理は、基材表面にC−F結合を形成することで実施することができる。このようなC−F結合は、活性化されたフッ素化合物ガス、例えばフロロカーボン系のガスを基材表面に供給することにより、形成することができる。
【0052】
本実施例では、図示を省略する大気圧プラズマ表面処理装置(積水リモート型プラズマ処理装置)に、CFガスを0.5L/min供給し、プラズマにより活性化することで、活性化された処理ガスR1を形成し、当該処理ガスR1を前記基材10の表面に供給することで、前記基材10の撥液処理を行った。
【0053】
上記の方法により撥液処理された基材10の表面をESCA分析(XPS分析と呼ぶ場合もある、X線光電子分光法)により調べたところ、C−F結合が検出された。また、当該撥液処理後は、水(純水)の前記基材10表面に対する接触角が、80度以上となっていることが確認された。
【0054】
次に、図1Bに示す工程において、前記基材10の表面、すなわち前記撥液面10A上に、印刷法、例えばインクジェット法により、銀ナノインク(住友電工製)を塗出し、導電パターン11を形成した。この場合、前記撥液面10Aは、高い撥液性を有しているため、前記撥液面10A上の着弾径は40μmであり、前記導電パターン11の幅は40μmとすることができた。
【0055】
また、本実施例で用いられる印刷法はインクジェット法に限定されず、例えば、スクリーン印刷法、凸版印刷、凹版印刷、シルク印刷など様々な印刷法を用いてもよい。また、形成される導電パターンは、例えば配線パターンなどがあるが、配線に限定されず、他の様々なパターンを形成してもよい。
【0056】
次に、図1Cに示す工程において、前記基材10の表面、すなわち前記撥液面10Aの、前記導電パターン11で覆われていない部分に対して親液処理を行い、親液面10Bを形成した。この場合、親液処理として、基材材表面の表面エネルギーを大きくして撥液性を小さくする処理を行った。親液処理後は、基材表面は、所定の液体に対する接触角は小さくなる。
【0057】
例えば、上記の親液処理として本実施例の場合、基材表面に形成されたC−F結合を分解する処理を行う。このようなC−F結合を分解する処理は、例えば活性化された酸素ガスと該酸素ガスの希釈ガス(例えば窒素ガス)を基材表面(前記撥液面10A)に供給することにより行う。
【0058】
本実施例では、図示を省略する大気圧表面処理装置(積水リモート型プラズマ処理装置)に、酸素ガスおよび窒素ガスを供給し、プラズマにより活性化することで、活性化された処理ガスR2を形成している。そこで、当該処理ガスR2を、前記基材10の表面(前記撥液面10A)に供給することで、前記基材10の親液処理を行って親液面10Bを形成した。この結果、前記基材10Aの表面のうち、前記導電パターン10で覆われていない部分の表面エネルギーが大きくなり、当該親液処理後は、水(純水)の前記親液面10Bに対する接触角が、30度以下となっていることが確認された。
【0059】
次に、図1Dに示す工程において、前記基材10の表面上に、前記導電パターン11を覆う絶縁層12を形成した。この場合、前記基材10の表面は親液処理がされているため、前記絶縁層12と前記親液面10Bとの密着性は良好となる。
【0060】
本実施例の場合、塗布法により、例えば樹脂材料よりなる前記絶縁層12(SN−9000シリーズ、日立化成製)を形成した。また、前記絶縁層12の形成方法は、塗布法に限定されず、ラミネートやCVD法などにより形成することも可能である。また、前記絶縁層12は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、レジスト、防湿コート材料などを用いることが可能である。
【0061】
前記絶縁層12は、前記導電パターン11の剥離を抑制すると共に、当該導電パターン11の保護層として機能し、当該導電パターン11が損傷を受けることを防止している。
【0062】
この後、200℃で30分間前記基材10を加熱した。この加熱により、前記撥液面10上に形成された前記導電パターン11を構成する銀ナノインクの分散材が気化し、銀粒子が融着した。また、当該加熱により、前記絶縁層12が加熱硬化した。この場合、前記絶縁層12は、熱硬化性の樹脂材料を用いることが好ましい。
【0063】
また、前記導電パターン11の加熱工程と、前記絶縁層12の加熱工程は、別途設けてもよい。例えば、図1Bの工程において、前記導電パターン11を印刷した後であって前記絶縁層12が形成される前に前記導電パターン11の加熱を行い、前記絶縁層12が形成された後で、当該絶縁層12の加熱を行ってもよい。この場合、前記導電パターン11が前記絶縁層12に覆われていない状態で加熱されるため、銀ナノインクに含有する分散材(活性材と呼ぶ場合もある)が気化されやすい。
【0064】
上記の導電パターンの形成方法を用いることにより、表面に前記導電パターン11が形成された前記基材10と、当該導電パターン11を覆うように前記表面上に形成された絶縁層と、を有する電気部品1を形成することができる。
【0065】
この場合、上記の電気部品は、前記基材10の表面の前記絶縁層12が接する領域が親液処理されて前記親液面10Bとされているため、前記導電パターン11が接する領域(撥液面10A)より撥液性が低くなっている。
【0066】
このため、撥液性の高い撥液面10Aに対して印刷法により、微細な導電パターン11を形成することが可能であり、さらに撥液性の低い(親液性の高い)親液面10Bに接するように、当該導電パターン11を覆うように前記絶縁層12を形成することで、前記導電パターン11の剥離を抑制している。
【0067】
この場合、前記前記絶縁層12と前記基材10の表面との密着性は、前記導電パターン11で覆われていない当該基材10の表面の親液処理を行うことで向上されている。このため、前記導電パターン11が前記基材10より剥離することが抑制されている。
【0068】
従来、印刷法による導電パターンの形成は、フォトリソグラフィ法を用いた場合に比べて、工程が単純であり、低コストである特長を有していたが、導電パターンを微細化することが困難である問題があった。例えば、微細化するために導電パターンが形成される基材表面の撥液性を高めると導電パターンの密着性が低下して剥離が発生する問題があり、安定な構造で微細な導電パターンを形成することが困難であった。
【0069】
上記の実施例では、表面が撥液性を有する基材を用いて導電パターンの微細化を可能とすると共に、導電パターンが形成されていない基材表面の親液処理し、親液処理された基材表面に接する絶縁層を、当該導電パターンを覆うように形成している。
【0070】
このため、単純な方法で、基材上に微細な導電パターンを形成することが可能となり、また、当該導電パターンの基材からの剥離が抑制された安定な構造を形成することができる。
【0071】
また、本実施例においては樹脂材料の表面を撥液処理して表面が撥液性を有する基材を形成する場合を例にとって説明したが、これに限定されず、例えば撥液性を有する基材を用いてもよい。この場合、撥液性を有する基材の形成方法としては、例えば、樹脂材料に所定の離型材を添加して樹脂材料を硬化させ、基材を形成してもよい。
【0072】
また、基材表面の撥液処理、または親液処理の方法として、本実施例においては、プラズマにより活性化された処理ガスを用いる場合を例によって説明したがこれに限定されるものではない。
【0073】
例えば、撥液処理の方法としては、撥液性を有するコート層を、例えば塗布により、基材表面に形成してもよい。また、親液処理の方法としては、例えば、各種のエネルギーを基材表面に加える方法をとってもよい。
【0074】
また、本文中で、「基材表面が撥液性を有する」とは、基材表面に対する所定の液体の接触角が所定の値以上であることを示しており、例えば、上記の印刷法に用いるインク(例えばインクジェット法に用いる金属ナノインク)の接触角が所定の値以上であることを示している。本実施例の場合、基材表面に対するインクの接触角が、30°以上の場合、基材表面が撥液性を有すると定義している。(以下文中同じ。)。また、この場合、水(純水)に対する接触角は、略50°以上に相当する。
【0075】
しかし、上記の撥液性が高すぎる(接触角が大きすぎる)と、導電パターンが分断されて形成される可能性があり、例えば直線上に延伸した形状の導電パターンの形成が困難となることが考えられる。このため、当該インクの接触角は、100°以下となるように撥液面を形成することが好ましい。
【0076】
すなわち、上記の実施例の場合には、基材表面(前記撥液面10A)に対して、印刷法に用いるインク(例えばインクジェット法に用いる金属ナノインク)の接触角が、30°以上100°以下であるように、当該撥液面10Aを形成することが好ましく、更には50°以上100°以下であることが最も好ましい。
【0077】
また、上記の場合を水(純水)で考えると、基材表面(前記撥液面10A)に対して、水(純水)の接触角が、50°以上120°以下であるように、当該撥液面10Aを形成することが好ましい。
【0078】
一方、本文中で、「基材表面が親液性を有する」とは、基材表面に対する所定の液体の接触角が所定の値以下であることを示しており、例えば、基材表面に対する水(純水)の接触角は、略40°以下に相当する。
【0079】
本実施例の場合、基材表面(前記親液面10A)に対して、水(純水)の接触角が、30°以下であるように、当該親液面10Bを形成することが好ましい。この場合、前記絶縁層12と前記基材10の密着力が良好となる。
【0080】
また、本発明は上記の場合に限定されず、以下に示すように様々に変形・変更することが可能である。
【実施例2】
【0081】
図2A〜2Dは、本発明の実施例2による導電パターンの形成方法を、手順を追って示した図である。
【0082】
まず、図2Aに示す工程では、例えばポリフタルアミド(PPA)樹脂を用いて成形を行い、略直方体の基材21を形成した。次に、当該基材21の表層部に、フォトリソグラフィ法とメッキ法を用いて導電パターン(配線パターン)22を形成した。当該導電パターン22は、170μmピッチで、互いに平行な部分を有するように複数配列して前記基材21の表面上に形成され、厚さが略8μmで、表層にAuメッキが施されている。ここで、前記基材21上に前記導電パターン22が形成されてなる、第1の構造体20が形成された。
【0083】
さらに、例えば圧電素子(ピエゾ素子)よりなる、略直方体の機能素子31上に、電極32を形成し、第2の構造体30を構成した。また、前記機能素子31のエッジは、面取りがされているものを用いている。
【0084】
次に、図2Bに示す工程において、前記第1の構造体20と、前記第2の構造体30を、例えば嫌気性接着剤により接着固定して接続した。この場合、前記基材21の前記導電パターン21が形成される面と、前記機能素子31の前記電極32が形成される面とが、実質的に同一平面とされるように固定された。
【0085】
また、前記機能素子31の、前記基材21に面する側であって、前記電極32が形成されている側のエッジは面取りされているため、当該面取りがされている部分には、表面連結部42が形成された。
【0086】
前記表面連結部42は、エポキシ樹脂をベースとしたアンダーフィル材をディスペンサーにより、当該面取り部分に供給後、加熱硬化することで形成された。当該表面連結部42が形成されたことで、前記基材21の前記導電パターン21が形成される面と、前記機能素子31の前記電極32が形成される面との間に、前記表面連結部42により接続面が形成された。当該接続面は、前記基材21の前記導電パターン21が形成される面と、前記機能素子31の前記電極32が形成される面と、実質的に同一平面となるように形成される。
【0087】
さらに、前記機能素子31と前記電極32を、例えばダイシングマシンを用いて切断し、複数の前記導電パターン22に対して、前記電極32と前記機能素子31からなる複数の構造が対応するような構成とした。
【0088】
次に、図2Cに示す工程において、実施例1の図1Aに示した工程と同様にして、基材21上の表面を、撥液処理して撥液性を有するようにし、撥液面21Aを形成する。例えば、前記撥液処理は、基材表面にC−F結合を形成することで実施することができる。このようなC−F結合は、活性化されたフッ素化合物ガス、例えばフロロカーボン系のガスを基材表面に供給することにより、形成することができる。
【0089】
本実施例では、図示を省略する大気圧プラズマ表面処理装置(積水リモート型プラズマ処理装置)に、CFガスを0.5L/min供給し、プラズマにより活性化することで、活性化された処理ガスを形成し、当該処理ガスを前記基材21の表面に供給することで、前記基材21の撥液処理を行っている。また、この場合、同時に前記表面連結部42上の前記接続面にも、同様に撥液面42Aが形成される。
【0090】
次に、実施例1の図1Bに示した工程と同様にして、導電パターン43を形成した。当該導電パターン43は、印刷法、例えばインクジェット法により銀ナノインク(住友電工製)を塗出し、前記導電パターン22上から前記撥液面21A上、前記撥液面42A上、さらに前記電極32上にかけて略直線上に形成され、当該導電パターン22と当該電極32を電気的に接続するように形成された。この場合、前記撥液面21A、42Aは、高い撥液性を有しているため、微細な導電パターンの形成が可能になる。例えばこの場合、前記導電パターン43の幅は、50μm以下とすることができた。
【0091】
なおこの場合、前記導電パターン43の厚さは略8μmとしているが、前記導電パターン22から前記撥液面21Aにかけての段差部分は、前記導電パターン43の断線を防ぐため、厚さを10μmとしている。
【0092】
次に、図2Dに示す工程において、実施例1の図1Cに示した工程と同様にして、前記基材21の表面、すなわち前記撥液面10Aの、前記導電パターン22、43で覆われていない部分と、前記表面連結部42の前記導電パターン43で覆われていない部分に対して親液処理を行い、それぞれ親液面21B、42B(本図に図示せず、図3で図示)を形成する。例えば、上記の親液処理として本実施例の場合、基材表面に形成されたC−F結合分解する処理を行う。このようなC−F結合を分解する処理は、例えば活性化された酸素ガスおよび窒素ガスを前記基材21表面、前記接続面表面に供給することにより行う。
【0093】
本実施例では、図示を省略する大気圧プラズマ表面処理装置(積水リモート型プラズマ処理装置)に、酸素ガスおよび窒素ガスを供給し、プラズマにより活性化することで、活性化された処理ガスを形成している。そこで、当該処理ガスを、前記基材21表面、前記接続面表面に供給することで、前記基材21、前記表面連結部42の親液処理を行って、それぞれ親液面21B,親液面42Bを形成した。
【0094】
次に、実施例1の図1Dに示した工程と同様にして、前記導電パターン43を覆うように、絶縁層44を形成した。前記絶縁層44は、前記導電パターン22上の一部、前記電極32上の一部にも形成されるとともに、親液処理された前記基材21上(前記親液面21B上)、および親液処理された前記表面連結部42上(前記親液面42B上)にも形成される。すなわち、前記絶縁層44は、隣接する前記導電パターン22の間、隣接する導電パターン44の間にも形成される。この場合、前記基材21の表面、前記表面連結部42の表面の前記接続面は親液処理がされているため、前記絶縁層43とのこれらの面の密着性は良好となる。なお、前記絶縁層44が形成される範囲に関しては図3で後述する。
【0095】
前記絶縁層44を形成する場合には、例えば塗布法により、例えば樹脂材料(SN−9000シリーズ、日立化成製)を用いて形成した。また、前記絶縁層12の形成方法は、塗布法に限定されず、ラミネートやCVD法などにより形成することも可能である。また、前記絶縁層12は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、レジスト材料などを用いることが可能である。
【0096】
この後、200℃で30分間前記基材21を加熱した。この加熱により、前記導電パターン43を構成する銀ナノインクの分散材が気化し、銀粒子が融着した。また、当該加熱により、前記絶縁層44が加熱硬化した。この場合、前記絶縁層44は、熱硬化性の樹脂材料を用いることが好ましい。
【0097】
上記の構造では、前記絶縁層44と、前記親液面21B、42Bの密着力が良好となるために、前記導電パターン43の剥離が抑制され、安定な構造である特徴がある。
【0098】
上記の導電パターンの形成方法により、前記導電パターン22が形成された前記基材21と、前記電極32が形成された機能素子31が接続され、前記導電パターン22と前記電極32が、前記絶縁層44で覆われた前記導電パターン43で接続された構造を有する電気部品40を形成することができる。
【0099】
また、本実施例による電気部品40は、画像形成装置のインクジェットヘッドを構成する。この場合、前記導電パターン43に接続されるように、前記機能素子31のドライバーICがフリップチップ実装されることが好ましい。
【0100】
また、図2Dに示す電気部品(インクジェットヘッド)40の平面図であって、前記絶縁層44が形成されている側から見た図を、図3に示す。ただし図中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。なお、本図においては図を見やすくするため、前記絶縁層44の図示は省略し、当該絶縁層44が形成される範囲Aを図示している。
【0101】
図3を参照するに、本実施例による電気部品(インクジェットヘッド)40は、前記基材21上に形成された前記導電パターン22と、前記機能素子31(本図では図示せず)上に形成された前記電極32が、前記導電パターン43によって電気的に接続された構造を有している。
【0102】
この場合、前記電極32と前記機能素子31は、先に説明したように、例えばダイシングマシンを用いて切断され、複数の前記導電パターン22にそれぞれ対応するように個変化されている。
【0103】
また、前記絶縁層44(本図では図示せず)は、前記導電パターン43を覆うよう形成されるとともに、前記導電パターン22上の一部と、前記電極32上の一部にも形成されている。さらに、隣接する前記導電パターン22の間と、隣接する前記導電パターン43の間にも形成されている。
【0104】
この場合、前記基材21上で、隣接する前記導電パターン22の間、または隣接する前記導電パターン43の間は、親液処理がされて親液面21Bとされている。同様に、前記表面連結部42上(前記接続面上)で、隣接する前記導電パターン43の間は、親液処理がされて親液面42Bとされている。
【0105】
このため、前記絶縁層44(本図では図示せず)と、前記親液面21B、42Bの密着性が良好となり、前記導電パターン43の剥離を抑制することが可能となり、安定な構造とすることができる。
【実施例3】
【0106】
また、実施例2の場合では、前記第1の構造体20を形成する場合に、前記基材21上に、導電パターン(配線パターン)22を直接パターニングして形成したが、導電パターンは、例えば別途支持基板上に形成して、基材上に転写して形成することも可能である。このように、導電パターンを転写して形成した場合の形成方法の一例を、図4A〜図4Fに手順を追って示す。
【0107】
まず、図4Aに示す工程では、例えば、ステンレス材料(JIS規格SUS304)よりなる、支持基板101上に、ダイヤモンドライクカーボン(以下文中DLC)よりなる絶縁層102を、厚さ略0.8μmとなるように成膜した。
【0108】
次に、図4Bに示す工程において、フォトリソグラフィ法によりパターニングされたレジストをマスクにして、RIE(リアクティブイオンエッチング)法により、前記絶縁層102に、複数の開口部102Aを形成した。当該開口部102Aを形成した後、レジストを剥離した。この場合、前記開口部102Aの幅を70μm、隣接する開口部のピッチは、170μmとした。
【0109】
次に、図4Cに示す工程において、前記支持基板101を電極にして、電解メッキを行うことにより、前記開口部102Aに対応する部分に、例えばCuよりなる導電パターン103を形成した。前記導電パターン103の厚さは略10μmであり、前記絶縁層102より厚いため、当該導電パターン103の断面はきのこ状となる。
【0110】
ここで、前記導電パターン103の表面改質処理を以下のようにして行った。この場合、前記表面改質処理は、前記導電パターン103の表面を、薬剤(カッパーボンド、荏原ユージライト製)処理することにより行った。当該表面改質処理を行うことで、後の工程で前記導電パターン103の露出部を覆うように形成される基材との密着性を良好とすることができる。当該表面改質処理を行うことで、前記導電パターン103の厚さは略8μmとなり、前記絶縁層102の厚さと殆ど同じとなった。なお、以降の図では形状を分かりやすくするため、前記絶縁層102より露出した部分を強調して図示している。
【0111】
次に、図4Dに示す工程において、前記導電パターン103上に、前記支持基板101と対向するように、ステンレス材料(JIS規格SUS430)よりなる支持基材105を設置し、さらに当該支持基材105と前記導電パターン103との間に、熱硬化性半導体封止用エポキシ樹脂(モールド樹脂)に、離型材を約1%添加した樹脂で、基材104を射出成形した。この場合、当該離型材を添加することで、基材104が撥液性を有する(撥液性を高める)ようにすることが可能であり、後の工程で印刷法により微細なパターンを形成することが可能となる。
【0112】
次に、図4Eに示す工程において、前記絶縁層104と前記導電パターン103を一体的に前記支持基板101と前記絶縁層102より剥離した。
【0113】
図4Fに示す工程において、前記導電パターン表面に、Ni、Auメッキ(図示せず)を施して、第1の構造体100を形成した。
【0114】
前記第1の構造体100は、前記導電パターン103が前記基材104の表面より突出している量が小さいが、一方で当該導電パターン103が前記基材104に埋設された部分が大きく、抵抗値が小さくなる特徴を有している。
【0115】
次に、本実施例による前記第1の構造体100を用いて、実施例2の場合と同様にして導電パターンを形成し、電気部品を形成する場合の一例を、図5A〜図5Cを用いて、手順を追って説明する。ただし図中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0116】
まず、図5Aの工程において、上記の形成方法で形成された前記第1の構造100を用意し、当該第1の構造100に接続される、第2の構造200を形成した。前記第2の構造200は、例えば圧電素子(ピエゾ素子)よりなる、略直方体の機能素子201上に、電極202を形成が形成された構造を有している。また、前記機能素子201のエッジは、面取りがされているものを用いている。なお、本図では、前記第1の構造100は、図4Fに示した場合からみて90°回転させた方向の断面図を示している。
【0117】
次に、図5Bに示す工程において、前記第1の構造体100と、前記第2の構造体200を、例えば導電性接着剤により接着固定して接続した。この場合、前記支持基材105の前記機能素子201に面する側は、Ni,Auメッキが施されていることが好ましい。
【0118】
また、前記支持基板105と前記機能素子201の接着面には共通電極を形成しておくと、共通電極を機能素子より大面積で引き出すことが可能となり、共通電極の抵抗値を低減することが可能であり、好適である。
【0119】
この場合、前記基材104の前記導電パターン103が形成される面と、前記機能素子201の前記電極202が形成される面とが、実質的に同一平面とされるように固定された。
【0120】
また、前記機能素子201の、前記基材104に面する側であって、前記電極202が形成されている側のエッジは面取りされているため、当該面取りがされている部分には、表面連結部302が形成された。
【0121】
前記表面連結部302は、エポキシ樹脂をベースとしたアンダーフィル材に離型材1%添加したものをディスペンサーにより、当該面取り部分に供給後、加熱硬化することで形成された。この場合、当該離型材を添加することで、前記表面連結部302が撥液性を有する(撥液性を高める)ようにすることが可能であり、後の工程で印刷法により微細なパターンを形成することが可能となる。
【0122】
前記表面連結部302が形成されたことで、前記基材104の前記導電パターン103が形成される面と、前記機能素子201の前記電極202が形成される面との間に、前記表面連結部302により接続面が形成された。当該接続面は、前記基材104の前記導電パターン103が形成される面と、前記機能素子201の前記電極202が形成される面と、実質的に同一平面となるように形成される。
【0123】
さらに、前記機能素子201と前記電極202を、例えばダイシングマシンを用いて短冊上に切断し、複数の前記導電パターン103に対して、前記電極202と前記機能素子201からなる複数の構造が対応するよう構成とした。
【0124】
次に、図5Cに示す工程において、実施例2の図2Cに示した工程と同様にして、導電パターン303を形成した。当該導電パターン303は、印刷法、例えばインクジェット法により銀ナノインク(住友電工製)を塗出し、前記導電パターン103上から前記基材104上、前記表面連結部302上、さらに前記電極202上にかけて略直線上に形成され、当該導電パターン103と当該電極202を電気的に接続するように形成された。この場合、前記基材104、および前記表面連結部302には離型材が添加され、撥液性が高められているため、前記基材104上、前記表面連結部302上には、微細な導電パターンの形成が可能になる。例えばこの場合、前記導電パターン303の幅は、50μm以下とすることができた。
【0125】
なおこの場合、前記導電パターン303の厚さは略2μmで形成しており、前記導電パターン103と前記基材104の段差が小さいことから導電パターン303のクラックの発生など断線の可能性が小さく、安定な構造である特徴を有している。
【0126】
次に、実施例2の図2Dに示した工程と同様にして、前記基材104の表面の、前記導電パターン103,303で覆われていない部分と、前記表面連結部302の前記導電パターン303で覆われていない部分に対して親液処理を行い、それぞれ親液面104B、302B(本図に図示せず、図6で図示)を形成する。例えば、上記の親液処理として本実施例の場合、活性化された酸素ガスおよび窒素ガスを前記基材104表面、前記接続面表面に供給することにより行う。
【0127】
本実施例では、図示を省略する大気圧プラズマ表面処理装置(積水リモート型プラズマ処理装置)に、酸素ガスおよび窒素ガスを供給し、プラズマにより活性化することで、活性化された処理ガスを形成している。そこで、当該処理ガスを、前記基材104表面、前記接続面表面に供給することで、前記基材104、前記表面連結部302の親液処理を行って、それぞれ親液面104B,親液面302B(本図では図示せず)を形成した。
【0128】
次に、実施例2の図2Dに示した工程と同様にして、前記導電パターン303を覆うように、絶縁層304を形成した。前記絶縁層304は、前記導電パターン302上の一部、前記電極202上の一部にも形成されるとともに、親液処理された前記基材104上(前記親液面104B上)、および親液処理された前記表面連結部302上(前記親液面302B上)にも形成される。すなわち、前記絶縁層304は、隣接する前記導電パターン103の間、隣接する導電パターン303の間にも形成される。この場合、前記基材104の表面、前記表面連結部302の表面の前記接続面は親液処理がされているため、前記絶縁層304とのこれらの面の密着性は良好となる。なお、前記絶縁層304が形成される範囲に関しては図6で後述する。
【0129】
前記絶縁層304を形成する場合には、例えば塗布法により、例えば樹脂材料を用いて(SN−9000シリーズ、日立化成製)形成した。
【0130】
この後、200℃で30分間前記基材104を加熱した。この加熱により、前記導電パターン303を構成する銀ナノインクの分散材が気化し、銀粒子が融着した。また、当該加熱により、前記絶縁層304が加熱硬化した。この場合、前記絶縁層304は、熱硬化性の樹脂材料を用いることが好ましい。
【0131】
この場合、前記絶縁層304と、前記基材104、および前記表面連結部302の密着力が良好であるために、前記導電パターン303の剥離が抑制され、安定な構造を得ることができる。
【0132】
上記の導電パターンの形成方法により、前記導電パターン103が形成された前記基材104と、前記電極202が形成された機能素子201が接続され、前記導電パターン103と前記電極202が、前記絶縁層304で覆われた前記導電パターン302で接続された構造を有する電気部品300を形成することができる。
【0133】
また、本実施例による電気部品300は、画像形成装置のインクジェットヘッドを構成する。この場合、前記導電パターン103に接続されるように、前記機能素子201のドライバーICがフリップチップ実装されることが好ましい。
【0134】
また、図5Cに示す電気部品(インクジェットヘッド)300の平面図であって、前記絶縁層304が形成されている側から見た図を、図6に示す。ただし図中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。なお、本図においては図を見やすくするため、前記絶縁層304の図示は省略し、当該絶縁層304が形成される範囲Bを図示している。
【0135】
図6を参照するに、本実施例による電気部品(インクジェットヘッド)300は、前記基材104上に形成された前記導電パターン103と、前記機能素子201(本図では図示せず)上に形成された前記電極202が、前記導電パターン303によって電気的に接続された構造を有している。
【0136】
この場合、前記電極202と前記機能素子201は、先に説明したように、例えばダイシングマシンを用いて短冊上に切断され、複数の前記導電パターン103にそれぞれ対応するように個変化されている。
【0137】
また、前記絶縁層304(本図では図示せず)は、前記導電パターン303を覆うよう形成されるとともに、前記導電パターン103上の一部と、前記電極202上の一部にも形成されている。さらに、隣接する前記導電パターン103の間と、隣接する前記導電パターン303の間にも形成されている。
【0138】
この場合、前記基材104上で、隣接する前記導電パターン103の間、または隣接する前記導電パターン303の間は、親液処理がされて親液面104Bとされている。同様に、前記表面連結部302上で、隣接する前記導電パターン303の間は、親液処理がされて親液面302Bとされている。
【0139】
このため、前記絶縁層304(本図では図示せず)と、前記親液面104B、302Bの密着性が良好となり、前記導電パターン303の剥離を抑制することが可能となり、安定な構造とすることができる。
【0140】
また、前記絶縁層304を形成する場合、前記絶縁層304を構成する樹脂材料には、イオン捕捉体として、2−4ジアミノ−6ビニール−Sトリアミンとイソシアヌル酸を混練してもよい。当該イオン捕捉体としては、S−トリアジン環を持つ化合物が好ましい。
【0141】
前記イオン捕捉体を混練したことにより、銀ナノインクで導電パターンを形成した場合に銀マイグレーションの発生を抑制することが可能となる。
【0142】
また、上記のイオン捕捉体が銀マイグレーションの抑制効果があることを、以下のようにして確認した。
【0143】
まず、PET基板に対向する針状に印刷した銀ナノインクによる配線パターン(電極間ギャップ0.5mm)に対して、絶縁層で覆い、85℃85%Rh環境下でDC100vを印加しマイグレーション試験を実施した。イオン捕捉体添加なしの絶縁層の場合、100hr程度から電極間を樹枝上に銀が成長(銀マイグレーション発生)し始めている事が確認された。一方、同様の構造において、イオン捕捉体を添加した場合には、1000hrにおいてもマイグレーションの発生は見られなかった。
【実施例4】
【0144】
また、前記第1の構造体100を形成する場合に、図4Eに示す工程において、前記基材104を前記絶縁層102より剥離しているが、この場合の離型性を向上させるために、以下に示す方法をとってもよい。
【0145】
図7A〜図7Eには、実施例4による導電パターンの形成方法を示す。ただし図中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。また、特に図示または説明しない部分は、実施例3と同様とする。
【0146】
本実施例では、まず実施例3の場合の図4A〜図4Bと同様の工程を実施し、前記支持基板101上に、DLCよりなるパターニングされた開口部102Aを有する前記絶縁層102を形成した。
【0147】
次に、図7Aに示す工程において、前記絶縁層102上、および前記開口部102Aから露出した前記支持基板101上に、フッ素系コーティング材(フロロサーフFG−5000:フロロテクノロジー製)よりなるコーティング層102Cを、略0.05μmの厚さで形成した。
【0148】
次に、図7Bに示す工程において、図4Cに示した工程と同様にして、前記支持基板101を電極にして、電解メッキを行うことにより、前記開口部102Aに対応する部分に、例えばCuよりなる導電パターン103を形成した。前記導電パターン103の厚さは略10μmであり、前記絶縁層102より厚いため、当該導電パターン103の断面はきのこ状となる。この場合、前記コーティング層102Cの厚さが0.05μmと薄いため、電解メッキが可能となっている。
【0149】
ここで、実施例3の場合と同様にして、前記導電パターン103の表面改質処理を以下のようにして行った。この場合、前記表面改質処理は、前記導電パターン103の表面を、薬剤(カッパーボンド、荏原ユージライト製)処理することにより行った。当該表面改質処理を行うことで、後の工程で前記導電パターン103の露出部を覆うように形成される基材との密着性を良好とすることができる。当該表面改質処理を行うことで、前記導電パターン103の厚さは略8μmとなり、前記絶縁層102の厚さと殆ど同じとなった。なお、以降の図では形状を分かりやすくするため、前記絶縁層102より露出した部分を強調して図示している。
【0150】
次に、図7Cに示す工程において、実施例3の図4Dに示した工程と同様にして、前記導電パターン103上に、前記支持基板101と対向するように、ステンレス材料(JIS規格SUS430)よりなる支持基材105を設置し、さらに当該支持基材105と前記導電パターン103との間に、熱硬化性半導体封止用エポキシ樹脂(モールド樹脂)で、基材104を射出成形した。
【0151】
次に、図7Dに示す工程において、実施例3の図4Eに示した工程と同様にして、前記絶縁層104と前記導電パターン103を一体的に前記支持基板101と前記絶縁層102より剥離した。
【0152】
この場合、前記コーティング層102Cが形成されているため、当該コーティング層102Cが離型層として機能し、特に前記基材104の離型性が良好となり、前記基材104の前記絶縁層102からの剥離が容易になる。また、前記コーティング層102の一部は、前記基材104の表面に転写され、コーティング層102C’が形成される。
【0153】
次に、図7Eに示す工程において、図4Fに示した工程と同様にして、前記導電パターン表面に、Ni、Auメッキ(図示せず)を施して、第1の構造体100Aを形成した。
【0154】
前記第1の構造体100Aは、前記第1の構造体100と同様に、前記導電パターン103が前記基材104の表面より突出している量が小さいが、一方で当該導電パターン103が前記基材104に埋設された部分が大きく、抵抗値が小さくなる特徴を有している。
【0155】
さらに、本実施例による構造体100Aでは、前記前記基材104の表面に、前記コーティング層102C’が形成されているため、前記基材104の表面が撥液性を有しており、印刷法により微細な導電パターンを形成可能である特徴を有している。この場合、前記基材104を成形する場合の離型材の添加が省略できる。
【0156】
本実施例による前記第1の構造100Aの、前記基材104表面の銀ナノインクの接触角を調べたところ、接触角は55°以上であり、高い撥液性を有していることが確認された。
【0157】
さらに、前記第1の構造100Aを用いて、実施例3の場合と同様にして電気部品を形成することが可能である。この場合、実施例3の場合の前記第1の構造100を、本実施例による前記第1の構造100Aに置き換えて、実施例3の図5A〜図5Cに示した工程を実施例3の場合と同様に実施すればよい。
【0158】
このように、本発明による導電パターンの形成方法は、様々に導電パターン(配線パターン)や、導電パターンが形成される基材(例えば基板)などを変形、変更して実施することが可能であることは明らかである。
【実施例5】
【0159】
また、上記の実施例1〜実施例4に記載した電気部品(インクジェットヘッド)においては、近年、導電パターンの微細化の要求がある。導電パターンが微細化されると(導電パターンの幅が小さくなると)、導電パターンの電気的な抵抗が大きくなってしまうことが考えられる。このため、上記の電気部品(インクジェットヘッド)においては、導電パターンの微細化に対応し、かつ導電パターンの電気的な抵抗が大きくならないように(または電気的な抵抗が小さくなるように)構成されることが好ましい。
【0160】
例えば、上記の導電パターンの電気抵抗を小さくするには、導電パターンの高さを高く(厚さを厚く)する方法が考えられる。しかし、印刷法により形成された導電パターンは、比較的応力が大きいため、厚く形成した場合には基材から剥離する懸念がある。
【0161】
そこで、以下の実施例に示すように、まず基材上に印刷法により導電パターンを形成した後、該導電パターン上にめっき法により、上層導電パターンを積層する方法をとることが考えられる。
【0162】
この場合、印刷法により形成された導電パターンとその上層に形成された上層導電パターンを併せた導電経路の電気的な抵抗値は小さくなる。また、めっき法により形成された上層導電パターンは、印刷法により形成される導電パターンに比べて応力が小さいため、厚く形成した場合であっても、応力による剥離の懸念が小さく、配線の信頼性が良好である。
【0163】
例えば、上層導電パターンを形成するめっき法としては、電界めっき法と無電界めっき法とがある。そこで、本実施例(実施例5)ではまず、電界めっき法の場合について説明し、次に実施例6では無電界めっき法について説明する。
【0164】
まず、本実施例(実施例5)において、上層導電パターンを電界めっき法により形成する場合について、図8A〜図8Eに基づき、手順を追って説明する。ただし図中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。また、特に説明が無い場合は実施例1記載の製造方法と同様とする。
【0165】
本実施例では、まず、図8Aにおいて、実施例1の図1Aに示した工程と同様にして、樹脂材料、たとえばポリイミドよりなる基材10上の表面を、撥液処理して撥液性を有するようにし、撥液面10Aを形成した。
【0166】
本工程では、図示を省略する大気圧プラズマ表面処理装置(積水リモート型プラズマ処理装置)に、CFガスを0.5L/min供給し、プラズマにより活性化することで、活性化された処理ガスR1を形成し、当該処理ガスR1を前記基材10の表面に供給することで、前記基材10の撥液処理を行った。
【0167】
次に、図8Bに示す工程において、実施例1の図1Bに示した工程と同様にして、前記基材10の表面、すなわち前記撥液面10A上に、印刷法、例えばインクジェット法により、銀ナノインク(住友電工製)を塗出し、導電パターン11を形成した。この場合、前記撥液面10Aは、高い撥液性を有しているため、前記撥液面10A上の着弾径は40μmであり、前記導電パターン11の幅は40μmとすることができた。また、上記の銀ナノインクは、粒径が100nm以下の金属粒子(銀粒子)を含んでおり、当該金属粒子が後の工程の電界めっき時の通電経路となる。
【0168】
また、当該導電パターン11の電気抵抗値を下げるためには、当該導電パターンを加熱することが好ましい。そこで次に、前記導電パターン11を電界めっきの通電経路として使用するため、該導電パターン11(前記基材10)を、180℃の温度で30分間加熱した。この結果、前記導電パターン11を構成する銀ナノインクの分散材が気化し、金属(銀)粒子が融着し、当該導電パターン11の電気的な抵抗値が下がって実質的に導電性を有するパターンとなった。
【0169】
次に、図8Cに示す工程において、めっき液(山本鍍金試験機製の筆めっき液)を用いて、前記導電パターン11を給電経路とする電界めっき法により、該導電パターン11上に、Cuよりなる上層導電パターン11Aを積層して形成した。この場合、電界めっき法を用いているため、該上層導電パターン11Aを、良好な生産性(成膜速度)で形成することができた。前記上層導電パターン11A形成後、前記基材10(前記上層導電パターン11A)を洗浄・乾燥した。
【0170】
次に、図8Dに示す工程において、実施例1の図1Cに示した工程と同様にして、前記基材10の表面、すなわち前記撥液面10Aの、前記導電パターン11で覆われていない部分に対して親液処理を行い、親液面10Bを形成した。
【0171】
本工程では、図示を省略する大気圧プラズマ表面処理装置(積水リモート型プラズマ処理装置)に、酸素ガスおよび窒素ガスを供給し、プラズマにより活性化することで、活性化された処理ガスR2を形成している。そこで、当該処理ガスR2を、前記基材10の表面(前記撥液面10A)に供給することで、前記基材10の親液処理を行って親液面10Bを形成した。
【0172】
次に、図8Eに示す工程において、実施例1の図1Dに示した工程と同様にして、前記基材10の表面上に、前記導電パターン11および前記上層導電パターン11Aを覆う絶縁層12を形成した。この場合、前記基材10の表面は親液処理がされているため、前記絶縁層12と前記親液面10Bとの密着性は良好となる。
【0173】
本実施例の場合、塗布法により、例えば樹脂材料よりなる前記絶縁層12(SN−9000シリーズ、日立化成製)を形成した。
【0174】
前記絶縁層12は、親液面10Bとの密着性が良好であるために、前記導電パターン11、上層導電パターン11Aの剥離を抑制すると共に、当該導電パターン11、上層導電パターン11Aの保護層として機能し、当該導電パターン11、上層導電パターン11Aが損傷を受けることを防止している。
【0175】
この後、200℃で30分間前記基材10を加熱した。この加熱により、前記絶縁層12が加熱硬化した。この場合、前記絶縁層12は、熱硬化性の樹脂材料を用いることが好ましい。
【0176】
上記の導電パターンの形成方法を用いることにより、表面に前記導電パターン11と前記上層導電パターン11Aが積層された前記基材10と、当該導電パターン11、上層導電パターン11Aを覆うように前記表面上に形成された絶縁層12と、を有する電気部品1Aを形成することができる。
【0177】
本実施例では、実施例1に記載した場合と同様の効果を奏することに加えて、以下の特徴を有している。
【0178】
本実施例の場合、印刷法により形成される前記導電パターン11と、めっき法により形成される前記上層導電パターン11Aが、積層されて前記基材10上に形成されている。また、上記の構造においては、めっき法により形成された導電パターン11Aは、印刷法により形成された導電パターン11に比べて応力が小さい。
【0179】
このため、当該上層導電パターン11Aを厚く(高く)形成した場合であっても、該上層導電パターン11Aの剥離の懸念が小さくなるメリットがある。したがって、上記の製造方法によれば、前記上層導電パターン11Aの電気抵抗が小さく、かつ剥離の懸念が小さいために、信頼性が高い電気部品(インクジェットヘッド)を提供することが可能となる。
【0180】
すなわち、本実施例によれば、配線パターンの微細化に対応が可能であるとともに信頼性の高い電気部品(インクジェットヘッド)を提供することが可能となる。
【実施例6】
【0181】
次に、上層導電パターンを無電界めっき法により形成する場合について、図9A〜図9Eに基づき、手順を追って説明する。ただし図中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。また、特に説明が無い場合は実施例5の製造方法と同様とする。
【0182】
まず、図9A〜図9Bに示す工程では、実施例5の図8A〜図8Bに示す工程と同じ工程を実施する。なお、導電パターンを形成するための銀ナノインクは、粒径が100nm以下の金属粒子(銀粒子)を含んでおり、後の工程の無電界めっき時には、当該金属粒子がめっきの触媒として機能する。
【0183】
また、導電パターンを印刷する場合、銀ナノインクにおける金属(銀)粒子の濃度および吐出回数により、形成される導電パターンの膜厚および分布状態を可変できる。例えば、金属粒子の濃度を30wt%程度にして、複数回インクを吐出することにより、金属粒子が連接した状態で配線パターンを形成させても良い。また、金属粒子の濃度を薄くして吐出することにより、金属粒子が少なくとも部分的に点在している状態を作り出しても良い。
【0184】
次に、図9Cに示す工程において、前記導電パターン11に含まれる金属粒子(銀粒子)を、無電界めっきの触媒として用いるために、当該金属粒子を活性化する活性化処理を行った。
【0185】
この場合、当該活性化処理は、実施例5の図8Dに示した工程に相当する工程と同様の工程で行うことができる。すなわち、当該金属粒子の活性化と、前記撥液面10Aの、前記導電パターン11で覆われていない部分に対する親液処理(親液面10Bの形成)を、同時に行うことが可能である。例えば、当該活性化処理(親液処理)として、本工程において、大気圧プラズマ表面処理装置(積水化学製リモート型プラズマ処理装置)を用いて、酸素ガスと窒素ガスをプラズマ励起した処理ガスにより、金属(銀)粒子表面の分散剤を分解するとともに、基材表面に形成されたC−F結合を分解する処理を行った。
【0186】
次に、図9Dに示す工程において、当該金属粒子を触媒として、無電界めっき液(奥野製薬工業製;TSPカッパー)を用いて、前記導電パターン11上に無電界めっきにより、Cuよりなる上層導電パターン11Bを形成した。この場合、無電界めっき液の液温を40℃とし、2時間めっきを実施することで、厚さが約3μmの上層導電パターン11Bを前記導電パターン11上に積層することができた。また、前記金属粒子は、前記導電パターン11内において連接した状態か、または点在した状態のいずれであってもよい。
【0187】
次に、図9E示す状態において、この基板表面に対して、紫外線硬化型オーバーコート材(UVCF-535:太陽インキ製造製)を塗布し、UV照射により硬化させることにより、絶縁層12を形成した。また、当該絶縁層12は、実施例5に示したように熱硬化型のものを用いてもよい。
【0188】
前記絶縁層12は、親液面10Bとの密着性が良好であるために前記導電パターン11、上層導電パターン11Bの剥離を抑制すると共に、当該導電パターン11、上層導電パターン11Bの保護層として機能し、当該導電パターン11、上層導電パターン11Bが損傷を受けることを防止している。
【0189】
上記の導電パターンの形成方法を用いることにより、表面に前記導電パターン11と前記上層導電パターン11Bが積層された前記基材10と、当該導電パターン11、上層導電パターン11Bを覆うように前記表面上に形成された絶縁層12と、を有する電気部品1Bを形成することができる。
【0190】
本実施例では、実施例5に記載した効果に加えて、以下に示す特徴を有している。例えば、上記の方法では、前記導電パターン11をめっき時の通電経路として用いる必要が無いため、当該導電パターン11を高温で加熱する工程を省略することが可能となる。この場合、前記絶縁層12を紫外線効果型の絶縁層により形成すれば、基材10を高温で加熱する工程が不要となり、さらに好適である。
【0191】
このように、加熱(高温)プロセスを省略することが可能となると、熱応力による導電パターンの剥離やクラックの懸念が小さくなり、配線の信頼性がさらに良好となり、好ましい。
【0192】
また、上記の実施例では、一般的な金属ナノインク(銀ナノインク)を用いて導電パターン11を形成する例について示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、導電パターンを形成するためのインクは、少なくとも無電界めっきのための触媒作用を有していればよい。例えば、金属ナノインクに含まれる金属粒子は、銀粒子に限定されず、パラジウム粒子であってもよい。
【0193】
また、金属ナノインクに、微量のバインダー成分を添加し、導電パターンと基材との密着力をさらに良好とするようにしてもよい。
【0194】
また、上記の実施例5,実施例6に記載した方法と、実施例2〜実施例4に記載した方法を組み合わせて、様々な電気部品(例えばインクジェットヘッド)を構成が可能であることは明らかである。
【0195】
以上、本発明を好ましい実施例について説明したが、本発明は上記の特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明によれば、微細な形状で基材上に形成され、当該基材からの剥離が抑制された安定な構造の導電パターンを有する電気部品と、当該導電パターンを形成する導電パターンの形成方法、および当該電気部品を用いたインクジェットヘッドを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1A】実施例1による導電パターンの形成方法を示す図(その1)である。
【図1B】実施例1による導電パターンの形成方法を示す図(その2)である。
【図1C】実施例1による導電パターンの形成方法を示す図(その3)である。
【図1D】実施例1による導電パターンの形成方法を示す図(その4)である。
【図2A】実施例2による導電パターンの形成方法を示す図(その1)である。
【図2B】実施例2による導電パターンの形成方法を示す図(その2)である。
【図2C】実施例2による導電パターンの形成方法を示す図(その3)である。
【図2D】実施例2による導電パターンの形成方法を示す図(その4)である。
【図3】実施例2による電気部品の平面図である。
【図4A】実施例3による導電パターンの転写方法を示す図(その1)である。
【図4B】実施例3による導電パターンの転写方法を示す図(その2)である。
【図4C】実施例3による導電パターンの転写方法を示す図(その3)である。
【図4D】実施例3による導電パターンの転写方法を示す図(その4)である。
【図4E】実施例3による導電パターンの転写方法を示す図(その5)である。
【図4F】実施例3による導電パターンの転写方法を示す図(その6)である。
【図5A】実施例3による導電パターンの形成方法を示す図(その1)である。
【図5B】実施例3による導電パターンの形成方法を示す図(その2)である。
【図5C】実施例3による導電パターンの形成方法を示す図(その3)である。
【図6】実施例3による電気部品の平面図である。
【図7A】実施例4による導電パターンの転写方法を示す図(その1)である。
【図7B】実施例4による導電パターンの転写方法を示す図(その2)である。
【図7C】実施例4による導電パターンの転写方法を示す図(その3)である。
【図7D】実施例4による導電パターンの転写方法を示す図(その4)である。
【図7E】実施例4による導電パターンの転写方法を示す図(その5)である。
【図8A】実施例5による導電パターンの転写方法を示す図(その1)である。
【図8B】実施例5による導電パターンの転写方法を示す図(その2)である。
【図8C】実施例5による導電パターンの転写方法を示す図(その3)である。
【図8D】実施例5による導電パターンの転写方法を示す図(その4)である。
【図8E】実施例5による導電パターンの転写方法を示す図(その5)である。
【図9A】実施例6による導電パターンの転写方法を示す図(その1)である。
【図9B】実施例6による導電パターンの転写方法を示す図(その2)である。
【図9C】実施例6による導電パターンの転写方法を示す図(その3)である。
【図9D】実施例6による導電パターンの転写方法を示す図(その4)である。
【図9E】実施例6による導電パターンの転写方法を示す図(その5)である。
【符号の説明】
【0198】
1,40,300 電気部品
10,21,104, 基材
10A,21A 撥液面
10B,21B,104B 親液面
11,22,43,103 導電パターン
12,44,304 絶縁層
32,202 電極
31,201 機能素子
105 支持基材
101 支持基板
102 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が撥液性を有する基材表面に導電パターンを印刷する第1の工程と、
前記導電パターンが形成されていない前記基材表面を親液処理する第2の工程と、
前記導電パターンを覆う絶縁層を形成する第3の工程と、を有することを特徴とする導電パターンの形成方法。
【請求項2】
前記第1の工程の後に、前記導電パターン上にめっき法により上層導電パターンを積層する工程をさらに有することを特徴とする請求項1記載の導電パターンの形成方法。
【請求項3】
前記導電パターンは金属粒子を含み、前記上層導電パターンは該金属粒子を触媒にした無電解めっき法により、形成されることを特徴とする請求項2記載の導電パターンの形成方法。
【請求項4】
前記上層導電パターンは前記導電パターンを給電経路にした電界めっき法により、形成されることを特徴とする請求項2記載の導電パターンの形成方法。
【請求項5】
前記第1の工程の前に、離型材を添加した前記基材を形成する工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至4のうち、いずれか1項記載の導電パターンの形成方法。
【請求項6】
前記第1の工程の前に、前記基材表面を撥液処理する撥液処理工程を有することを特徴とする請求項1乃至4のうち、いずれか1項記載の導電パターンの形成方法。
【請求項7】
前記撥液処理工程は、前記基材表面をプラズマ励起した撥液処理ガスにより処理する工程であることを特徴とする請求項6記載の導電パターンの形成方法。
【請求項8】
前記第2の工程は、前記基材表面をプラズマ励起した親液処理ガスにより処理する工程であることを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項記載の導電パターンの形成方法。
【請求項9】
前記第1の工程では、別の導電パターンと、さらに別の導電パターンとが接続されるように前記導電パターンが形成されることを特徴とする請求項1乃至8のうち、いずれか1項記載の導電パターンの形成方法。
【請求項10】
前記第1の工程の前に、前記別の導電パターンが形成された前記基材と、前記さらに別の導電パターンが形成された機能素子を接続する接続工程をさらに有することを特徴とする請求項9記載の導電パターンの形成方法。
【請求項11】
前記基材上に前記別の導電パターンを形成する工程をさらに有し、
該別の導電パターンを形成する工程は、
支持基板上にマスクパターンを形成する工程と、
前記マスクパターンの開口部にメッキ法により前記別の導電パターンを成長させる工程と、
当該別の導電パターンを前記基材に転写する工程と、を有することを特徴とする請求項9または10記載の導電パターン形成方法。
【請求項12】
表面に導電パターンが形成された基材と、
当該導電パターンを覆うように前記表面上に形成された絶縁層と、を有する電気部品であって、
前記表面のうち、前記絶縁層が接する領域の撥液性が、前記導電パターンが接する領域の撥液性より低いことを特徴とする電気部品。
【請求項13】
前記導電パターン上に積層された、該導電パターンと組成の異なる上層導電パターンをさらに有することを特徴とする請求項12記載の電気部品。
【請求項14】
前記上層導電パターンは、前記導電パターンより応力が小さいことを特徴とする請求項13記載の電気部品。
【請求項15】
前記導電パターンは金属粒子を含むことを特徴とする請求項13または14記載の電気部品。
【請求項16】
前記導電パターンを介して接続される、別の導電パターンおよびさらに別の導電パターンをさらに有することを特徴とする請求項12乃至15のうち、いずれか1項記載の電気部品。
【請求項17】
前記別の導電パターンは前記基材上に形成され、前記さらに別の導電パターンは前記基材に接続される機能素子上に形成されることを特徴とする請求項16記載の電気部品。
【請求項18】
前記基材の前記別の導電パターンが形成される面と、前記機能素子の前記さらに別のパターンが形成される面との間には、樹脂材料を含む材料により接続面が形成されていることを特徴とする請求項17記載の電気部品。
【請求項19】
前記導電パターンは、前記別の導電パターン、前記接続面、および前記さらに別の導電パターンに接するように形成されることを特徴とする請求項18記載の電気部品。
【請求項20】
請求項12乃至19のうち、いずれか1項記載の電気部品を用いた、インクジェットヘッド。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【公開番号】特開2006−332592(P2006−332592A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31258(P2006−31258)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】