説明

電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極、その製造方法および電気銅メッキ方法

【課題】アノードスライムの発生およびメッキ欠陥の発生を抑えた半導体ウエハ等の電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極、該含リン銅アノード電極の製造方法およびこの含リン銅アノード電極を用いた電気銅メッキ方法を提供する。
【解決手段】リン含有量が0.01〜0.08質量%である電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極において、該アノード電極は熱処理により、その表面の残留歪みが0.05%以下とされ、該アノード電極は炭化水素系溶剤で洗浄され、回転リングディスク電極法で測定される一価銅の検出量が電解時間300sec以上において5×10−9mol/sec以下である表面清浄度を備える電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極とその製造方法および電気銅メッキ方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、半導体ウエハ等への電気銅メッキを行う際に、含リン銅アノード電極から生じるアノードスライムの発生を抑制するとともに、半導体ウエハ等からなるカソード表面の汚染、突起等のメッキ欠陥の発生を防止する電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極、該含リン銅アノード電極の製造方法およびこの含リン銅アノード電極を用いた電気銅メッキ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気銅メッキのアノード電極として電気銅や無酸素銅を用いた電気銅メッキが行われているが、多量のアノードスライムが発生しやすく、また、これを原因として被処理材にメッキ欠陥が発生しやすいという問題点があった。
そして、これを解決するために、含リン銅をアノード電極として用いた電気銅メッキが行われるようになってきている。
含リン銅アノード電極を用いた電気銅メッキによれば、電解時にアノード表面に亜酸化銅や銅粉等を主成分とするブラックフィルムが形成されるため、アノードスライムの発生は低減され、その結果として、メッキ欠陥の発生も減少するようになってきたが、例えば、半導体ウエハ等への精緻な銅配線を形成する場合には、含リン銅をアノード電極として用いた電気銅メッキによっても、半導体ウエハ表面の汚染、突起等のメッキ欠陥発生防止が十分に行われているとはいえない。
【0003】
そこで、最近では、アノードに含有される酸素含有量を規定するとともに、アノード電極の結晶粒度を規定した純銅アノード電極を用いた電気銅メッキ(特許文献1参照)、あるいは、アノードに含有されるリン含有量を規定するとともに、アノード電極の結晶粒径を規定した含リン銅アノード電極を用いた電気銅メッキ(特許文献2,3参照)が開発され、アノードスライムの発生低減およびメッキ欠陥の発生防止が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4011336号明細書
【特許文献2】特許第4034095号明細書
【特許文献3】特許第4076751号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の含リン銅アノード電極を用いた電気銅メッキにおいては、電解の進行とともに、含リン銅アノード表面に、銅粉、亜酸化銅、リン化銅、塩化銅等を主成分とするブラックフィルムが形成されるが、電解がさらに進行しブラックフィルムが厚く成長すると、これが含リン銅アノード表面から脱落しアノードスライム発生の原因となったり、あるいは、メッキ浴中に拡散することにより被メッキ材表面(カソード表面)に付着し、半導体ウエハ等の被メッキ材表面の汚染、突起等のメッキ欠陥発生の原因となっていた。
そこで、本発明は、電気銅めっきにより、例えば、半導体ウエハ等への精緻な銅配線を形成する場合にも、アノードスライムの発生を抑制するとともに、半導体ウエハ等の被メッキ材表面における汚染、突起等のメッキ欠陥の発生防止を図ることができる電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極を提供することを一つの目的とする。
また、アノードスライムの発生を低減し、被メッキ材表面における汚染、突起等のメッキ欠陥の発生防止を図ることができる上記電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極の新たな製造方法を提供することを他の目的とする。
さらに、上記電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極を用いることによって、アノードスライムの発生低減を図ると同時に、例えば、半導体ウエハ等の被メッキ材表面における汚染、突起等のメッキ欠陥の発生防止を図ることができる電気銅メッキ方法を提供することを、更に他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、電気銅メッキ時における、含リン銅アノード電極の物性とアノードスライムの発生、メッキ欠陥の関連性について鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。
従来の含リン銅アノード電極を用いた電気銅メッキにおいては、電解の進行とともにブラックフィルムが厚く成長し脱落するのは、一価銅の不均一化反応、例えば、
2Cu→Cu(粉)+Cu2+
により、金属銅や亜酸化銅が生成するためであるが、電解初期に形成されるブラックフィルムの性状は、後々まで影響を及ぼすことから、電解初期に均一で一価銅イオン(Cu)の発生の少ないブラックフィルムを形成することが重要であるとの観点から、電解初期に均一で一価銅イオン(Cu)の発生の少ないブラックフィルムを形成する諸条件について検討したところ、含リン銅アノード電極の表面清浄度と表面残留歪みが、電解初期に形成されるブラックフィルムの性状に大きな影響を与えることを見出した。
【0007】
即ち、本発明者等は、電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極において、該アノード電極の表面清浄度を所定値以上に高めると同時に、該アノード電極表面の残留歪みを所定値以下に維持することによって、アノードスライムの発生を低減し、被メッキ材表面における汚染、突起等のメッキ欠陥の発生防止を図れることを見出したのである。
【0008】
また、本発明者等は、表面清浄度が高く、かつ、表面残留歪みの小さい上記含リン銅アノード電極は、含リン銅アノード電極に所定の熱処理を施した後、所定条件で洗浄することによって製造し得ることを見出したのである。
【0009】
さらに、本発明者等は、表面清浄度が高く、かつ、表面残留歪みの小さい上記含リン銅アノード電極を使用し、例えば、半導体ウエハ等に銅メッキした場合には、半導体ウエハ表面に汚染、突起等のメッキ欠陥のない精緻な銅配線を形成し得ることを見出したのである。
【0010】
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極において、該アノード電極は、回転リングディスク電極法で測定される一価銅の検出量が電解時間300sec以上において5×10−9mol/sec以下である表面清浄度を備え、さらに、該アノード電極表面の残留歪みは0.05%以下であることを特徴とする電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極。
(2)リン含有量が、0.01〜0.08質量%である前記(1)に記載の電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極。
(3)電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極を、300℃以上で2時間以上熱処理して歪み除去を行った後、酸洗し、さらに、その表面を炭化水素系溶剤で洗浄して表面清浄化することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極の製造方法。
(4)前記(1)または(2)に記載の電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極を用いて電気銅メッキを行うことを特徴とする電気銅メッキ方法。
(5)半導体ウエハに電気銅メッキを行う前記(4)に記載の電気銅メッキ方法。」
を特徴とするものである。
【0011】
つぎに、この発明について詳細に説明する。
【0012】
表面清浄度:
まず、本発明者等は、含リン銅アノード電極の表面清浄度と、電気銅メッキ時の電解初期に形成される一価銅イオン(Cu)量との関連性を知るために、回転リングディスク電極法により、表面清浄度のみが異なる複数の試料について、同一条件下での一価銅イオン(Cu)生成量を測定した。
ここで、回転リングディスク電極法とは、例えば、本願出願前に頒布された刊行物である「MES2005(第15回マイクロエレクトロニクスシンポジウム)2005年10月,第329〜332頁」にも記載されているように、銅アノード電極とPt電極との距離を一定に保ったままで回転させることにより、銅アノード電極で発生した一価銅イオン(Cu)を効率的に検出することができるようにした試験法であって、この発明では、具体的には以下の条件で一価銅イオン(Cu)量を検出した。
《回転リングディスク電極法の測定条件》
回転数:1000rpm
リング形状:内径6.5mmφ,外径7.5mmφ
ディスク形状:5mmφ
ギャップ:0.75mm(=(6.5mmφ−5mmφ)÷2)
ディスク電極電流密度:2.5A/dm
リング電極電位:0.7V(vs Ag/AgCl)
《メッキ条件》
CuSO・5HO:200g/l
SO:50g/l
Cl:50ppm
ポリエチレングリコール(PEG):400ppm(分子量6000)
なお、1時間N脱気、試験中もNパージを行う。
【0013】
図1に、上記回転リングディスク電極法により測定した電解時間(sec)と一価銅イオン(Cu)量(mol/sec)との関係の一例を示す。
図1において、横軸は電解時間(sec)、縦軸は検出された一価銅イオン(Cu)量(mol/sec)を示し、電解が進むにつれ(例えば、電解時間が400〜500sec)、一価銅イオン(Cu)検出量は次第に減少していくが、電解を、例えば、500sec以上継続したような場合には、一価銅イオン(Cu)検出量はほぼ一定値に収束することが分かる。
【0014】
さらに、図1において、曲線(イ)で示すアルコール(具体的には、エタノール)洗浄を行った銅アノード電極では、電解時間が300sec以上であると一価銅イオン(Cu)検出量はほぼ8×10−9mol/secであるのに対して、曲線(ロ)で示す炭化水素系溶剤で洗浄した銅アノード電極では、電解時間が300sec以上であると一価銅イオン(Cu)検出量は5×10−9mol/sec以下(ほぼ3×10−9〜5×10−9mol/secの範囲)と小さくなることがわかる。
なお、後述するが、曲線(ハ)で示す歪み除去を行った後、炭化水素系溶剤で洗浄した銅アノード電極では、より一段と一価銅イオン(Cu)検出量が低減され、電解時間が300sec以上で、一価銅イオン(Cu)検出量はほぼ2×10−9〜2.5×10−9mol/secであることがわかる。
この発明では、炭化水素系溶剤とは、具体的には、ノルマルヘキサン、トルエン、ベンゼン、キシレン、シクロヘキサン、イソヘプタン等をいう。
【0015】
上記の炭化水素系溶剤で洗浄した銅アノード電極とアルコール洗浄した銅アノード電極の表面について、10μm×10μmの複数領域をオージェ分光分析したところ、図2(a)、(b)に示されるチャートが得られた。
アルコール(例えば、エタノール)洗浄した銅アノード電極についてのチャート(b)によれば、アノード表面には、洗浄後であっても多量のC,N等の存在が認められることから、有機物が残留していることがわかる。
しかし、銅アノード電極を炭化水素系溶剤(例えば、ノルマルヘキサン)で洗浄したチャート(a)によれば、アノード表面には、吸着レベルのCが検出されるのみであって、表面清浄度が高められていることがわかる。
以上のことから、含リン銅アノード電極を用いた電気銅メッキにおいて、アノードスライムの発生を低減し、被メッキ材表面における汚染、突起等のメッキ欠陥の発生防止を図るためには、含リン銅アノード電極を炭化水素系溶剤で洗浄することにより、表面清浄度を高め、回転リングディスク電極法で測定される電解時間300sec以上における一価銅の検出量が5×10−9mol/sec以下の非常に小さい値とする必要があることがわかる。
【0016】
含リン銅アノード電極表面の残留歪み:
ついで、本発明者等は、電気銅メッキ時の電解初期に形成される一価銅イオン(Cu)量と銅アノード電極表面の残留歪みの関連について調査した。
図1の曲線(ロ)は銅アノード電極を炭化水素系溶剤で洗浄したものであるが、この銅アノード電極表面の残留歪みをX線回折により測定したところ、表面残留歪みは0.10%であった。
曲線(ハ)で示す銅アノード電極は、炭化水素系溶剤による洗浄に先立って、350℃で2時間、歪み除去熱処理を施したものであり、歪み除去熱処理を施すことによって、その表面残留歪みを0.01%にしたものであるが、この銅アノード電極においては、一価銅イオン(Cu)形成量が大きく低減する(電解時間が300sec以上で、一価銅イオン(Cu)検出量はほぼ2×10−9〜2.5×10−9mol/sec)ことが分かる。特に、電解開始初期(電解時間が50sec程度)の段階で、一価銅イオン(Cu)検出量はすでに5×10−9mol/sec以下にまで低減していることが特徴的である。
【0017】
ここで、X線回折による銅アノード電極表面の残留歪み測定は、以下の装置を用いて行った。
装置:ブルカー 粉末X線回折装置(MXP−18VAHF)
X線; CuKα、 50kV−250mA
発散スリット;0.5deg.
散乱スリット;0.5deg.
受光スリット;0.15mm
測定範囲;40°≦2θ≦100°
ステップ;0.02
積算時間;2s
歪の計算ソフト:
MDI(Material data inc.)社“JADE version6”(Williamson−Hallプロットから算出)
【0018】
回転リングディスク電極法による一価銅イオン(Cu)検出量と、表面残留歪み及び熱処理条件相互の関連性について、より詳細に検討したところ、表面残留歪みと熱処理条件については、図3に示す関係が得られた。
即ち、200℃以下×6時間以下程度の熱処理では、0.1%程度の表面歪みが残留するものの、300℃以上で2時間以上の熱処理を施すことによって、表面歪みを除去することができる。
そして、表面残留歪みの異なる銅アノード電極に対して、同一条件の洗浄処理(溶剤として、ノルマルヘキサン使用)を行い、回転リングディスク電極法による一価銅イオン(Cu)検出量を測定したところ、図4に示す結果が得られた。
図4から、同一洗浄処理条件のものであっても、熱処理により残留歪みを低減したものほど、電解開始初期(電解時間が50sec程度)の段階で、一価銅イオン(Cu)検出量が低減することが分かる。
以上のことから、含リン銅アノード電極を用いた電気銅メッキにおいて、より一段と、アノードスライムの発生を低減し、被メッキ材表面における汚染、突起等のメッキ欠陥の発生を防止するためには、含リン銅アノード電極を炭化水素系溶剤で洗浄するに先立って、予め、300℃以上で2時間以上熱処理して歪み除去を行っておくことにより、回転リングディスク電極法で測定される電解時間50sec以上における一価銅の検出量を5×10−9mol/sec以下の非常に小さい値とする必要があることがわかる。
【発明の効果】
【0019】
この発明の電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極、その製造方法および電気銅メッキ方法によれば、例えば、電気銅めっきにより、半導体ウエハ等への精緻な銅配線を形成する場合にも、アノードスライムの発生を抑制するとともに、半導体ウエハ等の被メッキ材表面における汚染、突起等のメッキ欠陥の発生防止を図ることができる
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】回転リングディスク電極法により測定した電解時間(sec)と一価銅イオン(Cu)量(mol/sec)との関係を示すグラフである。
【図2】銅アノード電極表面のオージェ分光分析チャートを示し、(a)は、炭化水素系溶剤(具体的には、ノルマルヘキサン)で洗浄したものについてのチャート、また、(b)は、アルコール(具体的には、エタノール)洗浄したものについてのチャートである。
【図3】銅アノード電極に対する熱処理条件と表面歪みとの関係を示すグラフである。
【図4】回転リングディスク電極法により測定した電解時間(sec)と一価銅イオン(Cu)量(mol/sec)に及ぼす銅アノード電極の表面歪みの影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、この発明について、実施例により具体的に説明する。
【実施例】
【0022】
電気炉により、0.05質量%のP(リン)を含有し、不可避不純物としてのPb,Fe,Sn,Zn,Mn,Ni,Agの合計含有量が0.002質量%以下である含リン銅インゴットを溶製した後、これを熱間鍛造、冷間加工し、所定サイズの含リン銅アノード電極素材を作製した。さらに、表1に示す条件で熱処理を施すことにより歪み除去を行った後、酸洗し、次いで、表2に示す条件で表面清浄化処理を行うことにより、表3に示す本発明の含リン銅アノード電極(本発明電極という)1〜10を製造した。
上記で製造した本発明電極について、前記X線回折により測定し求めた表面残留歪みの値を表3に示し、また、オージェ分光分析で測定した表面清浄化後の残留有機物の存否を表3に示した。
【0023】
比較のため、上記で作製した含リン銅アノード電極素材に対して、表1に示す条件で熱処理を施すことにより歪み除去を行った後(あるいは、歪み除去の熱処理を行わず)、酸洗し、次いで、アルコール洗浄(具体的には、エタノール中で、25℃×1分洗浄)を行うことにより、表4に示す比較例の含リン銅アノード電極(比較例電極という)1〜6を製造した。
また、上記で製造した比較例電極についても、前記X線回折により測定した表面残留歪みの値を表4に示し、また、オージェ分光分析で測定した表面清浄化後の残留有機物の存否を表4に示した。
【0024】
さらに、参考のために、比較例電極1,2については、アルコール洗浄ではなく、表2に示す条件で表面清浄化処理を行うことにより、参考例電極1,2を製造した。参考例電極1,2についても、前記と同様に、表面残留歪みおよび残留有機物の存否を表4に示した。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
【表4】

【0029】
上記の本発明電極1〜10、比較例電極1〜6および参考例電極1,2をアノード電極(いずれも、アノード表面積は530cm)とし、半導体ウエハをカソード電極として、5枚の半導体ウエハに対して、以下の条件で電気銅メッキを行った。
メッキ液:CuSO・5HO 200g/L,
SO 50g/L,
Cl 50ppm,
添加剤 ポリエチレングリコール:400ppm(分子量6000)
メッキ条件:液温25°C、
カソード電流密度 2A/dm
メッキ時間 1時間/枚、
【0030】
上記の本発明電極1〜10、比較例電極1〜6および参考例電極1,2について、電気銅メッキ開始から5枚目のウエハの電気銅メッキ完了(5時間)後までに発生したアノードスライム発生量を測定した。
また、メッキ後の半導体ウエハ表面を、光学顕微鏡で観察し、ウエハ表面に形成されている高さ5μm以上の突起を欠陥とみなして、突起欠陥数をカウントした。
これらの測定結果を表5、表6に示す。
【0031】
【表5】

【0032】
【表6】

【0033】
表5、表6に示される結果から、本発明の電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極、電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極の製造方法および電気銅メッキ方法によれば、例えば、半導体ウエハ等への精緻な銅配線を形成する場合にも、アノードスライムの発生を抑制するとともに、半導体ウエハ等の被メッキ材表面における汚染、突起等のメッキ欠陥の発生防止を図ることができるのに対して、表面歪み歪み除去の熱処理を行わない、あるいは、歪み除去の熱処理を行ったとしても残留表面歪みが大きい比較例電極では、アノードスライム発生量、突起欠陥数が多いことが分かる。また、炭化水素系溶剤で表面清浄化処理を行った参考例電極は、残留有機物がなく、アルコール洗浄を行ったものより欠陥の発生が少ないが、参考例1、2は、残留歪みが残存するため、本発明に比して、欠陥発生量やアノードスライム発生量に劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のとおり、この発明は、電気銅メッキに際して、アノードスライムの発生を抑制でき、被メッキ材表面におけるメッキ欠陥の発生を防止し得るという優れた効果を有し、特に、半導体ウエハ等への精緻な銅配線形成に適用された場合には、半導体ウエハ上への汚染、突起等の欠陥が発生を防止することができるため、工業的な有用性が極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極において、該アノード電極は、回転リングディスク電極法で測定される一価銅の検出量が電解時間300sec以上において5×10−9mol/sec以下である表面清浄度を備え、さらに、該アノード電極表面の残留歪みは0.05%以下であることを特徴とする電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極。
【請求項2】
リン含有量が、0.01〜0.08質量%である請求項1に記載の電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極。
【請求項3】
電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極を、300℃以上で2時間以上熱処理して歪み除去を行った後、酸洗し、さらに、その表面を炭化水素系溶剤で洗浄して表面清浄化することを特徴とする請求項1または2に記載の電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電気銅メッキ用の含リン銅アノード電極を用いて電気銅メッキを行うことを特徴とする電気銅メッキ方法。
【請求項5】
半導体ウエハに電気銅メッキを行う請求項4に記載の電気銅メッキ方法。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−122174(P2011−122174A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278138(P2009−278138)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】