説明

電気駆動式交通機関を識別する方法

【課題】ナビゲーション装置を用いて電気駆動式交通機関の利用を識別する簡単な方法が提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置の少なくとも1つの磁界センサを用いて電気駆動式交通機関を識別する方法において、ナビゲーション装置の所在位置における磁界を連続的にまたは少なくとも所定のサンプリング周波数で測定し、ナビゲーション装置の所在位置における測定された磁界の周波数を求め、求めた周波数に基づいて、ナビゲーション装置が電気駆動式交通機関の中にあるのか否かを、および、必要ならば、電気駆動式交通機関の種類を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナビゲーション装置の少なくとも1つの磁界センサを用いて電気駆動式交通機関を識別する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車でのナビゲーション装置の使用は今日では広く普及しており、ナビゲーション機能はたいてい車両情報システムに組み込まれている。また、車両に依存せずに使用できる携帯型のナビゲーション装置も実用されている。この場合、自動車での移動の他に、徒歩での移動または公共交通機関での移動のような他の種類の移動も考慮しなければならない。つまり、ナビゲーション装置はユーザの移動の種類を識別し、現在地測位においてもルート計画においても考慮しなければならない。さらには、適切な交通機関の利用の提案ができるべきである。将来的に、このような個人ナビゲーションは、特に携帯電話の標準機能にまで発展させられれば、非常に重要性を増すことになる。
【0003】
ほとんどの携帯型ナビゲーション装置は測位のためにGPS受信器を使用することができ、例えば地下鉄トンネル内のように、GPSデータを利用できない場合には、通過中の地図区域をナビゲーション装置のディスプレイ上で方向付けるコンパスとして位置確認に利用される少なくとも1つの磁界センサを使用することができる。
【0004】
実用上、GPSデータの位置分解能はたいてい不十分であり、ユーザの移動の種類を推定できるほど正確にユーザの現在地を特定することはできないことが示されている。それゆえ、GPSデータにのみ頼っている公知のナビゲーション装置は通常、街路、車道および路面電車の平行な路線の右側と左側を区別することができないので、ユーザが徒歩で移動しているのか、自動車で移動しているのか、または路面電車内に座っているのかがはっきりしない。このエリア内で自動車と路面電車が似たような速度経過で動いていれば、GPSデータによって求められる移動速度も一意な結果をもたらさない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題はナビゲーション装置を用いて電気駆動式交通機関の利用を識別する簡単な方法が提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、ナビゲーション装置の少なくとも1つの磁界センサを用いて電気駆動式交通機関を識別する方法において、ナビゲーション装置の所在位置における磁界を連続的にまたは少なくとも所定のサンプリング周波数で測定し、ナビゲーション装置の所在位置における測定された磁界の周波数を求め、求めた周波数に基づいて、ナビゲーション装置が電気駆動式交通機関の中にあるのか否かを、および、必要ならば、電気駆動式交通機関の種類を判別することにより解決される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1a】磁界信号の時間的経過のグラフとサンプリング周波数が16Hzの場合のアンダーサンプリングの結果とを併せて示している。
【図1b】磁界信号の時間的経過のグラフとサンプリング周波数が16Hzの場合のアンダーサンプリングの結果とを併せて示している。
【図1c】磁界信号の時間的経過のグラフとサンプリング周波数が16Hzの場合のアンダーサンプリングの結果とを併せて示している。
【図1d】磁界信号の時間的経過のグラフとサンプリング周波数が16Hzの場合のアンダーサンプリングの結果とを併せて示している。
【図2】電気駆動式交通機関を識別するために、本発明による方法の枠内でナビゲーション装置の所在位置における交番磁界の周波数を求めるためのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明では、ナビゲーション装置の磁界センサを用いてナビゲーション装置の位置における磁界の強さを連続的または少なくとも所定のサンプリングレートで測定する。そして、このようにして得られた信号に基づいて、ナビゲーション装置の所在位置に生じうる交番磁界の周波数を求める。最後に、この周波数に基づいて、ナビゲーション装置が電気駆動式交通機関の中にあるのか否かを判定し、判定が肯定的ならば、どのような種類の電気駆動式交通機関であるかを判別する。
【0009】
本発明による方法は、異なる電気駆動式交通機関は通常明らかに異なる交流周波数で動作するということを利用している。これに関して、以下に4つの例を示す。
幹線鉄道 16 2/3Hz
ベルリンSバーン 特に300Hz
ベルリンUバーン 50,100および300Hz
路面電車 特に50Hz
【0010】
したがって、所定の周辺地域内で利用される電気駆動式交通機関に関する情報と併せて交番磁界の周波数からほぼ一意に、交番磁界を生じさせた交通機関の種類を推定することができる。
【0011】
ナビゲーション装置のユーザが交通機関を変えた場合には、自動的に識別されるので、ルート計画も相応して自動的に適合される。したがって、ユーザが例えば自動車から路面電車に乗り換えた場合には、以降のルート計画において、路面電車のダイヤと路線図が自動的に考慮されるようにすることができる。
【0012】
本発明による方法を実行するための前提は、ナビゲーション装置が、磁界の強さを動的に測定できる磁界センサを利用できることである。その場合にのみ、生じうる交番磁界の周波数も求められ、必要ならば、この交番磁界を生じさせた電気駆動式交通機関の種類も求められる。
【0013】
有利には、電気駆動式交通機関の種類の判別は、発生している交番磁界の求められた周波数を停車地の周辺で利用できる個々の電気駆動式交通機関に割り当てられている所定の周波数と比較することによって行われる。
【0014】
各停車地において利用可能な電気駆動式交通機関に関する情報と、関連する交番磁界の周波数は、例えば相応する地図情報と一緒にデータ媒体に記憶しておいてよい。この場合、情報はナビゲーション装置の適切な読取り装置によって簡単に呼び出すことができる。
【0015】
あるいは、ナビゲーション装置が各停車地において利用可能な電気駆動式交通機関に関する情報と、関連する交番磁界の周波数を無線を介して利用できるようにしてもよい。この場合、ナビゲーション装置は相応する受信装置を使用できなければならない。
【0016】
ここに示す電気駆動式交通機関を識別する方法は携帯型ナビゲーション装置の複数の機能のうちの1つの特徴に関わっているだけであるから、この特徴にかかるコスト、とりわけ信号処理とエネルギー消費に関するコストはできるだけ度を超えないようにすべきである。
【0017】
それゆえ、本発明による方法の1つの有利な実施形態では、ナビゲーション装置の所在位置における磁界の強さは、連続的な信号の形で評価されることもなく、シャノンのサンプリング定理に従って期待される最大信号周波数の2倍でサンプリングされることもない。つまり、考察対象となる交番磁界の周波数を、したがってまた考察対象となる電気駆動式交通機関をサンプリング周波数によって区別することができるならば、電気駆動式交通機関を本発明による方法の枠内で識別するためには、交番磁界のアンダーサンプリングでも十分である。
【0018】
例えば16Hzのサンプリング周波数は特に適している。この場合、前記した周波数16 2/3Hz、50Hz、100Hzおよび300Hzを区別することのできる、より遅い混合周波数が得られる。また、16Hzのサンプリング周波数は32768Hzの通常の時計クロック信号から単純に2進周波数分割によって得られる。
【0019】
本発明による方法の特に有利な実施形態では、相応する電気駆動式交通機関が走行中か静止中かを識別するために、周波数の他に、検出された交番磁界の強さも評価される。というのも、検出された交番磁界の強さ、または最大もしくは最小の信号レベルは、磁界を発生させる導電線の電流を介して各電動車のそのときの出力に直接依存している。それゆえ、単純に閾値を考慮するだけで走行状態と静止状態とを区別することができる。さらに別のセンサおよび情報と組み合わせれば、例えば鉄道で走行した区間を駅の数に基づいて求めたり、下車すべきことをユーザに適時に知らせるために、いつ目的駅に着くかを求めたりすることもできる。
【0020】
既に上で述べたように、本発明の思想を有利に実施し発展させるには様々な方法がある。これに関しては、特許請求の範囲と、図面に基づいた本発明の実施例の説明を参照されたい。
【実施例】
【0021】
上で述べたように、本発明による方法は、電気駆動式交通機関が種類に応じてそれぞれ異なる交流周波数で動作すること、したがって相応する交番磁界の周波数によっても識別および区別しうることを前提としている。
【0022】
この仮定を図解するために、図1aには60μTの強さの時間的に一定の地磁気が示されており、図1b−1cには、所定の電気駆動式交通機関によって生じた±25μTピークツーピークの交番磁界と地磁気との重ね合わせから生じた交番磁界の時間的経過がそれぞれ示されている。図1bに示されている交番磁界信号は16 2/3Hzの周波数を有しているので、幹線鉄道に分類される。図1cに示されている信号経過は50Hzの交流周波数で動作する路面電車の交番磁界のものである。図1dに示されている交番磁界信号はUバーンによるものであり、このUバーンに必要な300Hzの交流周波数に相応して同様に300Hzの信号周波数を有している。
【0023】
図1b−1dでは、この連続的な信号経過に加えて、階段状の信号が太線で記入されている。これらの階段状の信号はそれぞれ連続的な信号16Hzのサンプリング周波数でサンプリングした結果を表しており、アンダーサンプリングの結果として得られる、より遅い混合周波数でも、元の信号周波数16 2/3Hz、50Hz、100Hzおよび300Hzを区別することができることを示している。
【0024】
電気駆動式交通機関を識別する本発明による方法は、既に説明したように、ユーザの様々な移動手段を考慮およびサポートすべき携帯型ナビゲーション装置の補足機能に関わっており、特に様々な交通機関の使用にも関している。このために、このナビゲーション装置は、磁界の強さを動的に測定するように設計された、つまり、交番磁界の時間的経過も測定されるように設計された少なくとも1つの磁界センサを備えている。
【0025】
図2のフローチャートには、本発明による方法の枠内で交番磁界の周波数を特に簡単、ロバストかつ効率的に求める方法が示されている。図の右半分では、個々の方法ステップに各方法ステップの信号処理的側面を示す信号グラフが対比されている。
【0026】
それゆえ、第1の方法ステップ1では、磁界センサによってナビゲーション装置の所在位置における磁界の強さの(図の右半分に示されているような)3つの空間成分Bx、By、Bzのすべてが連続的に測定される。
【0027】
これら3つの連続的な測定信号は次に第2の方法ステップ2において16Hzのサンプリング周波数でサンプリングされる。図の右半分における対応するグラフには、3つの空間成分Bx、By、Bzのすべてのサンプリング値の時間経過が示されている。
【0028】
第3の方法ステップ3では、磁界の絶対値、すなわち磁界の強さがB = √(Bx2 + By2 + Bz2)として、あるいは単純化してBsimple= |Bx| + |By| + |Bz|として計算される。これに応じて、図の右半分には、サンプリング時点における磁界の強さBの時間的経過が示されている。
【0029】
次に方法ステップ4では、カットオフ周波数が0.5Hzのハイパスフィルタによって、例えば地磁気に由来する磁界の強さの一定の割合がフィルタアウトされる。これによって、交番磁界の信号レベルはゼロレベル近辺の領域に移される。
【0030】
ここに説明する実施例の第5の方法ステップでは、ハイパスフィルタリングされたサンプル信号の周波数をシュミットトリガーを用いたヒステリシス検出によって求める。図の右半分の相応する信号グラフにはシュミットトリガーの2つの閾値が示されている。上閾値としては正の最大信号レベルの75%を選び、下閾値としては負の最小信号レベルの25%を選んだ。ここで、最大および最小の信号レベルはそれぞれ例えば最後の10秒の信号経過から求められる。
【0031】
ハイパスフィルタリングされたサンプル信号のこのシュミットトリガー分析により、0と1とが交互して現れる系列が得られ、この系列がサンプル信号の周波数を表す。このようにして求めた周波数はさらに第6の方法ステップにおいて妥当性検査にかけられる。この妥当性検査は、所定の交通機関の最短停留時間と、ナビゲーション装置のユーザが交通機関を乗り換えるために要する最短時間も前提としている。この最短停留時間ないし最短時間は本発明ではゲート時間と呼ばれ、測定された磁界または相応するサンプル信号の周波数はこのゲート時間内では有意な変化を示さない。ここに説明する実施例では、ゲート時間として10秒の時間を選択した。このことは図の右半分の対応するグラフに示されている。
【0032】
このようにして求めたサンプル信号の周波数に基づいて先ず、ナビゲーション装置のユーザがそもそも電気駆動式交通機関の中または近傍にいるのか否かを識別することができる。ナビゲーション装置のユーザが電気駆動式交通機関の中または近傍にいるならば、停車地の周辺で利用可能な電気駆動式交通機関に関する相応の情報を利用できる限り、電気駆動式交通機関の種類も一意に決定することができる。このことは図1a−1dに図示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション装置の少なくとも1つの磁界センサを用いて電気駆動式交通機関を識別する方法において、
前記ナビゲーション装置の所在位置における磁界を連続的にまたは少なくとも所定のサンプリング周波数で測定し、
前記ナビゲーション装置の所在位置における測定された磁界の周波数を求め、
求めた周波数に基づいて、
i.前記ナビゲーション装置が電気駆動式交通機関の中にあるのか否かを、および、必要ならば、
ii.前記電気駆動式交通機関の種類を判別する、
ことを特徴とする電気駆動式交通機関を識別する方法。
【請求項2】
前記ナビゲーション装置は、各停車地の周辺で利用可能な電気駆動式交通機関に関する情報と、当該電気駆動式交通機関により生じる交番磁界の周波数とを利用し、前記電気駆動式交通機関の種類を周波数の比較により判別する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
各停車地の周辺で利用可能な電気駆動式交通機関に関する情報と交番磁界の関連する周波数は地図情報とともにデータ媒体から読み出される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ナビゲーション装置は、各停車地の周辺で利用可能な電気駆動式交通機関に関する情報と交番磁界の関連する周波数を無線を介して利用することができる、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記ナビゲーション装置の所在位置における磁界を所定のサンプリング周波数でサンプリングする、ただし、発生している交番磁界をアンダーサンプリングした場合でも、問題となっている交番磁界の周波数を区別することは可能である、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ナビゲーション装置の所在位置における磁界を16Hzのサンプリング周波数でサンプリングする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記交番磁界の強さを求め、相応する電気駆動式交通機関が走行中か静止中かを識別する、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−128143(P2011−128143A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235143(P2010−235143)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】