説明

電池の加温装置

【課題】電池を効果的に加温する。
【解決手段】電池収容体12には、電池10が収容される。凝縮器14は電池収容体12の表面に熱媒体が直接接触されるように形成され、熱媒体を凝縮させて電池収容体12を介し電池10を加温する。凝縮器14において凝縮した熱媒体を加熱蒸発する蒸発器16に供給する。蒸発器16で蒸発した気体の熱媒体を前記凝縮器14に循環する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を、熱媒体の凝縮熱によって加熱する電池の加温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などの移動体では、電池を搭載し、その電池のエネルギーを車両の走行などに利用している。ここで、この電池は、そのエネルギーの出力効率などが温度の影響を受ける。特に、低温では電池内部の電解液の粘性や、反応抵抗が上昇するため、十分な出力が得られず、一方温度が高すぎると電池の構成物質に悪影響が出る場合もある。そこで、電池の温度管理が重要になる。
【0003】
特許文献1では、水冷エンジンに循環される熱媒体を循環する熱交換器を設け、この熱交換器で電池を暖機する。また、特許文献2では、発電機の出力でモータを駆動する電気配線における発熱(ジュール熱)で電池を加温することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−290636号公報
【特許文献2】特開2008−230508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、低温時の電池の性能はかなり低くなるため、電池の加温は、なるべく高速に行いたいという要求がある。配線における発熱を利用する場合、そのエネルギーをそれだけ無駄に消費することになる。また、従来の熱交換器では、高速の加熱は難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電池加温装置は、電池を収容する電池収容体と、電池収容体の表面に熱媒体が直接または間接的に接触されるように形成され、熱媒体を凝縮させる凝縮器と、この凝縮器において凝縮した熱媒体を加熱蒸発する蒸発器と、を含み、蒸発器で蒸発した気体の熱媒体を前記凝縮器に循環する。
【0007】
また、本発明に係る電池加温装置は、電池を収容する電池収容体と、電池収容体の表面に熱媒体が直接接触されるように形成され、熱媒体を凝縮させて電池収容体を介し電池を加温する熱交換器と、この熱交換器において凝縮した熱媒体を加熱蒸発する蒸発器と、を含み、蒸発器で蒸発した気体の熱媒体を前記熱交換器に循環する。
【0008】
また、前記熱媒体は、水であることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱媒体の凝縮熱を用い、電池を効果的に加温することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る電池加温装置の概略構成を示す図である。
【図2】電池収容器の構成例を示す図である。
【図3】各種熱媒体による加温特性を示す図である。
【図4】各種熱媒体の顕熱損失を示す図である。
【図5】各種熱媒体の熱伝達率を示す図である。
【図6】冷却加温システムの構成を示す図である。
【図7】昇温モードを説明する図である。
【図8】冷却モードを説明する図である。
【図9】吸着器再生モードを説明する図である。
【図10】電池冷却の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係る電池の加温装置の概略構成を示す図である。電池10は、電池収容体12に収容されている。この電池収容体12の電池10を収容している付近には、熱媒体通路が形成されており、この部分が凝縮器14を構成している。この凝縮器14には、蒸発器16が接続されており、熱媒体が両者の間を循環する。また、蒸発器16には、熱源18が熱的に接続されており、熱源18からの熱が蒸発器16における熱媒体の蒸発に利用される。
【0012】
熱源18には、温度計20、蒸発器16には温度計22、圧力計24が設けられ、これらの検出結果は、制御装置28に供給される。そして、制御装置28は、熱源18を制御して、熱源18および蒸発器16の温度および圧力を管理する。また、この例では、凝縮器14から蒸発器16に熱媒体が返送される経路に弁30が設けられている。
【0013】
ここで、電池10は、二次電池であり、例えばリチウムイオン電池が採用される。リチウムイオン電池は、特に電解液の粘性が高く、低温時における内部抵抗が高くなり、低温における電力の入出力特性の劣化が大きい。このため、低温時には早急に加熱して十分な能力とする必要がある。なお、電池10は、多数の電池セルから構成されており、例えば数V程度の電池セルを多数直列接続して数100Vの出力を得る組電池である。
【0014】
電池収容体12は、例えば電池セルを1つずつ収容する収容孔を電池セルの本数分有している。なお、各電池セルは、互いに電気的に接続されているとともに、組電池としての外部出力端子にはケーブルに接続されており、全体として絶縁されている。
【0015】
図2には、電池収容体12の構成例が示されている。電池収容体12は全体として直方体であり、これを貫通して複数の収容孔が一定間隔で設けられている。そして、この収容構内に電池セル10aが挿入されている。この例では、電池セル10aは円筒状のパッケージに入っており、このパッケージの周囲が収容孔に接触している。熱伝導をよくするためには、なるべく多くの面積で接触することが好ましく、収容孔内の電池セル10a周面との間にエポキシ樹脂などを封入することも好適である。
【0016】
そして、電池セル10aの周辺には、ドーナツ状の空間14aが設けられ、ここが凝縮器14を構成している。すなわち、蒸発器16からの熱媒体の蒸気(この例では水蒸気)がこの空間14aに導入され、その際の発生する凝縮熱によって、電池収容体12を介し、電池セル10aが加熱され、電池10が加熱される。
【0017】
すなわち、凝縮器14と蒸発器16の内部は、これらを接続する管路を含め、熱媒体(この例では水、水蒸気)を循環する密閉空間を形成しており、蒸発器16において蒸発された水蒸気が凝縮器14にて電池10によって冷却され、液体(水)になり、液体となった水が蒸発器16に循環される。
【0018】
蒸発器16では、熱源18からの熱によって水を蒸発する。蒸発器は、通常の熱交換器の構造を採用することができ、熱源からの熱によって熱媒体流路の熱媒体に作用させ、これを加熱蒸発させる。
【0019】
熱源18には、各種のものが考えられ、例えば車両に搭載された電動エアコンなどが利用される。電動エアコンは、凝縮器と、蒸発器を有するヒートポンプを有しコンプレッサによって熱媒体を加圧し凝縮器に供給するが、この凝縮器の排出側を閉じてここを高圧にすることによって、凝縮器を高温にできる。そこで、この凝縮器の熱を蒸発器16に伝達することが可能である。熱源18は、これに限らず、車載されているエンジン、ラジエターなど発熱源を利用することができ、専用のヒータを設けてもよい。
【0020】
そして、制御装置は、蒸発器16における内部の熱媒体の温度および圧力に応じて、熱源18からの熱を制御して、蒸発器16における熱媒体の温度および圧力を制御する。例えば蒸発器16内部をほぼ真空状態として、熱媒体を蒸発させて熱媒体の沸点が55°Cとなる圧力であって、熱媒体の蒸気の温度が55°Cとなるように、加熱を制御する。これによって、蒸発器16において、熱媒体が蒸発し、凝縮器14において温度が55°Cのまま凝縮し、55°Cの熱媒体が蒸発器16に戻り熱源18からの熱量を制御する。これによって、凝縮器14において蒸気を凝縮することでの電池10の加熱が行える。なお、実際には、凝縮器14に供給する蒸気温度を沸点より若干高めとし、循環する熱媒体の温度を沸点より低めとして、サイクルを安定化させることが好ましい。
【0021】
ハイブリッド車両においては、二次電池が搭載されこの二次電池でモータジェネレータを駆動し、モータジェネレータの発電や回生電力で二次電池を充電する。また、電気自動車では、モータジェネレータによる発電ではなく、外部からの電力により二次電池が充電されるが、車両に搭載された二次電池が充放電されることは同様である。このような車両に搭載される電池10としては、例えばリチウムイオン二次電池が採用される。このリチウムイオン二次電池は、電解液の粘度が低温において高く、低温における内部抵抗が高い。本実施形態では、蒸気を用いて加熱を行うことで、速やかに内部抵抗を下げ、電池容量を十分に利用して低温でのモータ駆動を可能とする。また、電池温度が低く、内部抵抗が高い場合において、回生エネルギーを全部電池10に蓄えようとすると、電池10内部で過電圧が高くなり、金属リチウムが析出して電池機能が劣化しやすい。従って、電池10を速やかに昇温することが必要になる。
【0022】
一方、リチウムイオン二次電池は、高温になると電池内部で電池反応とは別の副反応が生じ、劣化することが報告されている。従って、電池を加温するための熱交換器の温度を高くして、電池の加温を行った場合には、電池温度が所定以上にならないように監視するなどの手段が必要になる。本実施形態では、蒸気圧力を所定値に維持して凝縮器14において蒸気を凝縮して加熱を行うため、凝縮器14の温度は、熱媒体の凝縮温度に維持され、それ以上になることを防止できる。従って、電池10が所定以上の温度になることを確実に防止することができる。
【0023】
熱源18として、上述した電動エアコンを用いた場合について説明する。電動エアコンの電源としては、出力特性のよい鉛蓄電池(2kW)を用い、インバータエアコンを昇温モードで駆動して温熱を生成する。これによって、理論的には、温熱として約7°Cの温熱が14kW生成できる。
【0024】
このような熱源18を用いて、蒸気、水、オイル、空気による対流伝熱による加熱を行った場合についての加熱(昇温結果)のシミュレーション結果を図3に示す。このシミュレーションでは、エアコンの遅れも仮定している。従って、どの熱源を用いた場合にも遅れが生じている。しかし、本実施形態の真空蒸気加熱が最も立ち上がりが早く、昇温も早い結果となっている。これは、水、オイルを循環させる場合と比較して真空蒸気加熱では熱媒体を加熱する熱容量が圧倒的に小さく、また熱伝達率が大きいためである。このシミュレーションでは、水は凝固しないと仮定している。また、空気は熱伝達率が低く、十分な昇温ができない。
【0025】
図4には、各媒体を用い、−30°Cから7°Cに加温した場合の顕熱損失を示す。このように、熱容量の大きなオイル、水などで顕熱損失が大きく、昇温が遅れることがわかる。水と比べると水蒸気は顕熱損失が約1/9となり、空気の場合とほぼ同様である。なお、この場合も水は液体と仮定している。
【0026】
図5には、各媒体を用い、−30°Cから7°Cに加温した場合の熱伝達率を示す。このように、熱伝達率は、水蒸気が飛び抜けて高く、水の約15倍、空気の300倍となっている。
【0027】
これらの結果より、媒体として水蒸気を用いることで、少ない顕熱損失で高い伝熱能力が期待できることが理解される。
【0028】
本実施形態において、例えば凝縮器における蒸気温度(蒸発凝縮温度)を7°Cに設定すれば、−30°Cのような極寒において、1分程度で7°Cにまで昇温することが可能となる。
【0029】
ここで、凝縮器14において生じた液体は、蒸発器16に戻す必要がある。熱媒体の循環サイクルが動いた後であれば、液体の循環もスムーズに行われるが、起動時などは強制的に蒸発器16に液体を戻す必要がある。そこで、凝縮器14を蒸発器16に比べ高い位置に配置し、運転終了時に液体を全て蒸発器16に戻すように構成することが好適である。なお、液体をポンプなどその他の手段で戻してもよい。
【0030】
また、熱媒体としては、水を利用したが、これに限らず、蒸発潜熱をうまく利用できるものであれば、他のものでもかまわない。例えば、アンモニア、メタノール、エタノールなど蒸発潜熱が大きいものが好ましく、大きな伝熱係数を持つことができる。また、アンモニアや二酸化炭素を用いた際には、蒸気密度が高いために配管などでの損失を受けにくく、配管長が大きな場合に特に好適である。
【0031】
「冷却・加熱システム」
図6には、電池収容体12における空間を凝縮器だけでなく、凝縮/蒸発器50として利用し、蒸発器16を蒸発/凝縮器54として利用するシステムを示す。なお、ヒートポンプにおいては、蒸発器と凝縮器をそれぞれ反対に機能させることは常套手段であって、本実施形態もそれにならっている。
【0032】
凝縮/蒸発器50は、上述の凝縮器14と同様の構成を有しており、電池10を収容する電池収容体12内の熱媒体が流通する内部空間として形成されている。ここに、蒸気が導入されこれを液体に凝縮する場合に、凝縮器として機能し、液体の熱媒体が導入され蒸発する場合に蒸発器として機能する。
【0033】
凝縮/蒸発器50には、弁52を介し、蒸発/凝縮器54が接続されている。この蒸発/凝縮器54は、上述の蒸発器16と同様の構成を有しており、液体の熱媒体が供給される場合にはこれを加熱蒸発して蒸発器として機能し、蒸気が導入される場合には放熱凝縮して凝縮器として機能する。この蒸発/凝縮器54には、三方弁56を介し凝縮/蒸発器50が接続されている。従って、蒸発/凝縮器54において、熱媒体を蒸発し、得られた蒸気を凝縮/蒸発器50に導入して、ここで凝縮して液体として蒸発/凝縮器54に循環することで、電池10を昇温することができる。
【0034】
ここで、本実施形態では、三方弁56を介し、吸着器58が接続されている。この吸着器は、電池を冷却する際に、凝縮/蒸発器50において得られた蒸気を吸着し、その後吸着した蒸気を放出するものであり、例えば内部にシリカゲルなどの蒸気吸着剤が充填されている。
【0035】
また、本実施形態では、蒸発/凝縮器54および吸着器58を加温または冷却するための手段を有している。エンジンの排気系のマフラーの前段には、排熱回収器60が設けられており、ここで排気の熱を水などの熱媒に回収し、車室内の暖房などに利用するが、本例ではその水を蓄熱体62に供給し蓄熱する。この蓄熱体62は蓄熱できればどのようなものでもよいが、この例では化学的な蓄熱体を用いている。例えば、カルシウムが用いられ、水酸化カルシウムCa(OH)を熱によってCaOに変化させることで、熱を化学的に蓄積する。そして、必要な場合には、水を供給して、CaOをCa(OH)に変化させることで放熱させ、これによって熱媒(水)を加熱して高温の熱媒(温水)を得る。蓄熱体62で得た温水は、四方弁64を介し、蒸発/凝縮器54または吸着器58に供給される。そして、蒸発/凝縮器54または吸着器58からの媒体は四方弁66を介し、排熱回収器60に循環される。
【0036】
また、エンジンなどの冷却に用いるラジエターなどからなる外部冷却器68からの低温の冷媒(冷却水)は、蓄熱器70に貯留される。蓄熱器70は蓄熱できればどのようなものでもかまわず、この例では単に冷却水を貯留する。蓄熱器70からの冷却水は、四方弁64を介し、吸着器58または蒸発/凝縮器54に供給される。そして、吸着器58または蒸発/凝縮器54からの媒体は四方弁66、ポンプ72を介し、外部冷却器68に循環される。
【0037】
このように、本実施形態では、排熱回収器60を熱源とする温水ラインと、外部冷却器68を冷却源とする冷却水ラインを熱媒体(水)のラインと別に有しており、蒸発/凝縮器54および吸着器58を加温または冷却することができる。
【0038】
また、蓄熱器70は弁74を介し蓄熱体62に接続されており、蓄熱器70の熱を蓄熱体62に放熱できるようになっている。
【0039】
なお、温水の熱源は、排熱回収器60と、蓄熱体62を一例としてあげたが、燃焼器や電気値ネルギーから熱を生成してもよい。また、吸着器58は、化学反応に置き換えることもできる。
【0040】
「昇温モード」
このようなシステムにおいて、電池を昇温する昇温モードについて、図7に基づいて説明する。この場合、蒸発/凝縮器54は、蒸発器として機能する。従って、四方弁64は、蓄熱体62からの温水を蒸発/凝縮器54に供給する。蒸発/凝縮器54からの温水は、四方弁66を介し、排熱回収器60に循環する。
【0041】
従って、排熱回収器60において回収された熱が蒸発/凝縮器54に供給され、ここにおいて熱媒体が蒸発される。蒸発された熱媒体は、三方弁56を介し、凝縮/蒸発器50に供給され、ここで水になる。そして、得られた水が蒸発/凝縮器54に循環する。弁52は開いておく。これによって、蒸発/凝縮器54に供給された熱が、凝縮熱として電池収容体12を介し電池に供給され、電池10が加熱される。そして、蒸発/凝縮器54の熱媒体温度、圧力を管理することで、電池温度を所定のものに早期に設定できる。
【0042】
「冷却モード」
冷却モードについて図8に示す。冷却モードでは、蒸発/凝縮器54を凝縮器として利用し、ここで得られた液体の熱媒体(水)を凝縮/蒸発器50に供給する。弁52は開いておく。凝縮/蒸発器50では、水を蒸発し、水蒸気が得られ、水蒸気は三方弁56を介し吸着器58に導入される。吸着器58は、シリカゲルなどを有し、蒸気がシリカゲルに吸着される。この際、電池収容体12の表面は、吸着器58側の圧力に押送する温度まで冷却される。また、吸着器58では、上記を吸着した分だけ発熱を生じるがこれは、冷却水に排出される。また、冷却水の温度が高く、電池10の冷却が十分にできない際には、蓄熱体62と蓄熱器70の間の弁74を開き、蓄熱体62により吸熱することで蓄熱器70を放熱モードとし冷却水をより低温にして、吸着器58の圧力を下げることが好適である。
【0043】
なお、外部冷却器68において冷却された冷却水は、四方弁64を介し、吸着器58に供給され、これを冷却する。従って、吸着器58において発生した熱は冷却水によって除去される。なお、冷却水を蒸発/凝縮器54に供給して、ここも冷却してもよい。
【0044】
ここで、本実施形態では、凝縮/蒸発器50において発生した蒸気は吸着器58によって吸着され、蒸発/凝縮器54には循環されない。従って、凝縮/蒸発器50における蒸気温度を蒸発/凝縮器54における水の温度より低い温度にすることも可能となり、効果的な電池の冷却を行うことができる。
【0045】
「吸着器再生モード」
吸着器再生モードについて図9に示す。蓄熱体62からの温水を三方弁を介し吸着器58に供給する。これによって、吸着器58が加熱され、吸着されていた熱媒体(水)が水蒸気として脱離される。得られた水蒸気は三方弁を介し蒸発/凝縮器54に導入される。この際弁52は閉じておく。この蒸発/凝縮器54には、蓄熱器70からの冷却水が四方弁64を介し供給されており、ここで熱媒体(水蒸気)が液体(水)になる。このように、吸着器再生モードにおいて、蒸発/凝縮器54を冷却することで、熱媒体が凝縮するため、冷却モードにおいて蒸発/凝縮器54を冷却する必要はない。
【0046】
電池10を冷却する場合には、必要な時点で上記冷却モードを実行し、その終了後に吸着器再生モードを実行する。そして、必要に応じて両モードを繰り返し、必要なだけ冷却する。
【0047】
「電池の冷却」
電池10の冷却についての概要を図10に示す。この図10では、冷却について示しているため、凝縮/蒸発器50を蒸発器50、蒸発/凝縮器54を凝縮器54としている。
【0048】
凝縮器54において得られた凝縮水は、蒸発器50に供給される。この蒸発器50は、電池10を収容する電池収容体12の内部に熱媒体(水)が導入される空間として構成されている。従って、凝縮水がこの蒸発器50で蒸発することで、電池10が冷却され、蒸発された水蒸気は吸着器58に導入され吸着される。吸着器58に一旦吸着した後、熱源(排熱回収器)60からの熱を吸着器58に作用させることで、水蒸気が吸着剤から脱離しその水蒸気が凝縮器54に導入され、ここで凝縮される。吸着器58の温度・圧力は制御装置28に供給され、制御装置28は、電池10の温度から、冷却が必要かを判断すると共に、冷却が必要な場合に電池温度から電池の冷却に必要な冷却熱量を計算する。そして、吸着器58を冷却してここの圧力を下げる。所定の冷却が終了した後、吸着器58を蒸発器50と接続し、吸着器に熱源(排熱回収器)60からの熱を供給する。これによって、吸着器58から水蒸気が放出され、吸着器58が再生される。また、吸着器58からの水蒸気は凝縮器54に導入され、冷却されて水になる。
【0049】
このようにして、電池10について所望の冷却が達成される。必要であれば、上述の冷却と、吸着器の再生を繰り返せばよい。
【0050】
このように、この実施形態では、電池を冷却するための熱交換器として蒸発器50を有し、蒸発器50からの熱媒体を吸収もしくは吸着する吸着器58を有する吸着式冷凍機を有している。これによって、蒸発器50は、吸着器58における圧力に相当する温度まで冷却され、凝縮器54における温度より低い温度に設定することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 電池、12 電池収容体、14 凝縮器、16 蒸発器、18 熱源、20,22 温度計、24 圧力計、28 制御装置、30 弁、50 凝縮/蒸発器、54 蒸発/凝縮器、56 三方弁、58 吸着器、60 排熱回収器、62 蓄熱体、64,66 四方弁、68 外部冷却器、70 蓄熱器、72 ポンプ、74 弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を収容する電池収容体と、
電池収容体の表面に熱媒体が直接または間接的に接触されるように形成され、熱媒体を凝縮させる凝縮器と、
この凝縮器において凝縮した熱媒体を加熱蒸発する蒸発器と、
を含み、
蒸発器で蒸発した気体の熱媒体を前記凝縮器に循環する電池加温装置。
【請求項2】
電池を収容する電池収容体と、
電池収容体の表面に熱媒体が直接接触されるように形成され、熱媒体を凝縮させて電池収容体を介し電池を加温する熱交換器と、
この熱交換器において凝縮した熱媒体を加熱蒸発する蒸発器と、
を含み、
蒸発器で蒸発した気体の熱媒体を前記熱交換器に循環する電池加温装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電池加温装置において、
前記熱媒体は、水である電池加温装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−243309(P2011−243309A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111871(P2010−111871)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】