説明

電池の製造方法

【課題】平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる集電体を使用した電池の製造方法の量産性を改善する。
【解決手段】平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる正極集電体1及び正極活物質含有層2を含む複数の正極3と、平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる負極集電体4及び負極活物質含有層5を含む複数の負極6とを、セパレータ及び電解質層のうちの少なくとも一方の部材が介在されるように積層し、積層物の一辺において前記正極3の電流導出部1を前記負極6及び前記部材よりも突出させ、かつ前記積層物の反対側の辺において前記負極6の電流導出部4を前記正極3及び前記部材よりも突出させる工程と、前記正極3の前記電流導出部1を溶接により一体化して正極端子11を形成すると共に、前記負極6の前記電流導出部4を溶接により一体化して負極端子12を形成する工程とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質電池の製造に好適な電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などに代表される高出力に適した電池では、帯状の正極とセパレータと負極とを渦巻状にして電極表面積を大きくする技術が一般的に行われている。また、負極活物質が形成される負極集電体には、物理的加工強度の観点から銅を用いるのが一般的である。この渦巻き状に捲回された電極体を備えた円筒型リチウムイオン二次電池は、近年、電気自動車用としての開発がなされている。
【0003】
円筒型リチウムイオン二次電池における電極体からの集電方法として、例えば特許文献1には、アルミニウム箔からなる正極集電体と銅箔からなる負極集電体のうち、少なくとも一方の集電体にセパレータの端部から突出するように円弧状の電流取出部を形成し、その電流取出部が渦巻き電極体の径方向に並設されるように各周回毎に設けられており、これら電流取出部を重ねて溶着することにより端子を形成する技術が提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の二次電池では、負極集電体に銅箔が利用されているため、過放電により負極の電位が上昇した際に負極集電体が溶解し、放電容量が急激に低下する問題があった。
【0005】
そこで、非水電解質電池の過放電特性を改善するため、特許文献2に提案されているように、負極集電体に平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムまたはアルミニウム合金を使用することが行われている。
【0006】
この負極集電体を用いた積層型電極群は、以下に説明する方法で製造されている。まず、負極集電体に一端部を除いて負極活物質含有層を形成した後、この負極集電体の一端部に打ち抜き加工により負極タブを形成し、負極を得る。また、正極集電体に一端部を除いて正極活物質含有層を形成した後、この正極集電体の一端部に打ち抜き加工により正極タブを形成し、正極を得る。得られた正極と負極をその間にセパレータを介在させながら交互に積層することにより、電極群を得る。
【0007】
しかしながら、上述した負極集電体は、高容量化のために厚さを薄くすると十分な強度を得られなくなるため、打ち抜き加工の際に負極タブが折れ曲がったり、千切れ易く、量産性が低下するという問題点を生じる。
【特許文献1】特開平11−73995号公報
【特許文献2】特開2005−123183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる集電体を使用した電池の製造方法の量産性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電池の製造方法は、一端に電流導出部が形成され、平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも前記電流導出部を除いて形成された正極活物質含有層を含む複数の正極と、一端に電流導出部が形成され、平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも前記電流導出部を除いて形成された負極活物質含有層を含む複数の負極とを、前記正極活物質含有層と前記負極活物質含有層の間にセパレータ及び電解質層のうちの少なくとも一方の部材が介在されるように積層し、積層物の一辺において前記正極の前記電流導出部を前記負極及び前記部材よりも突出させ、かつ前記積層物の反対側の辺において前記負極の前記電流導出部を前記正極及び前記部材よりも突出させる工程と、
前記正極の前記電流導出部を溶接により一体化して正極端子を形成すると共に、前記負極の前記電流導出部を溶接により一体化して負極端子を形成する工程と、
得られた電極群を容器内に前記正極端子と前記負極端子が前記容器の外部に引き出されるように収納する工程と
を具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電池の製造方法は、一端に電流導出部が形成され、平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも前記電流導出部を除いて形成された正極活物質含有層を含む複数の正極と、一端に電流導出部が形成され、平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも前記電流導出部を除いて形成された負極活物質含有層を含む複数の負極とを、前記正極活物質含有層と前記負極活物質含有層の間にセパレータ及び電解質層のうちの少なくとも一方の部材が介在されるように積層し、積層物の一辺において前記正極の前記電流導出部を前記負極及び前記部材よりも突出させ、かつ前記積層物の反対側の辺において前記負極の前記電流導出部を前記正極及び前記部材よりも突出させる工程と、
前記正極の前記電流導出部及び前記負極の前記電流導出部それぞれを帯状に裁断する工程と、
前記正極の前記電流導出部を溶接により一体化して正極端子を形成すると共に、前記負極の前記電流導出部を溶接により一体化して負極端子を形成する工程と、
得られた電極群を容器内に前記正極端子と前記負極端子が前記容器の外部に引き出されるように収納する工程と
を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる集電体を使用した電池の製造方法の量産性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る電池の製造方法を図1〜3を参照して説明する。図1は、正極、セパレータ及び負極の製造過程を示す模式図で、図2は、正極、セパレータ及び負極を積層する工程を示す模式図で、図3は、第1の実施形態に係る方法で製造された積層型電極群を示す斜視図である。
【0013】
図1に示すように、平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる帯状の正極集電体の両面に長辺側の電流導出部1を除いて正極活物質含有層2を形成する。次いで、長辺方向と直交するように裁断することにより短冊状の正極3を複数枚得る。また、平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる帯状の負極集電体の両面に長辺側の電流導出部4を除いて負極活物質含有層5を形成する。次いで、長辺方向と直交するように裁断することにより短冊状の負極6を複数枚得る。さらに、多孔質シート7から袋状のセパレータ8を複数枚得る。袋状のセパレータ8は、所望の寸法に裁断された多孔質シート7を長辺に沿って折り返し、重なり合った長辺部分と一方の短辺部分を熱融着させることにより得られる。熱融着領域の境界を図1において点線8aで示す。多孔質シート7としては、合成樹脂製不織布、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルムなどを用いることができる。
【0014】
正極集電体及び負極集電体を平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムもしくは平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウム合金から形成することにより、非水電解質電池の過放電特性を向上することができる。より好ましい平均結晶粒子径は、3μm以下である。また、平均結晶粒子径の下限値は0.01μmにすることが望ましい。
【0015】
アルミニウムおよびアルミニウム合金の平均結晶粒子径は、以下に説明する方法で測定される。集電体表面の組織を金属顕微鏡観察し、1mm×1mmの視野内に存在する結晶粒子数nを測定し、下記(A)式より平均結晶粒子面積S(μm2)を算出する。
【0016】
S=(1×106)/n (A)
ここで、(1×106)で表わされる値は1mm×1mmの視野面積(μm2)で、nは結晶粒子数である。
【0017】
得られた平均結晶粒子面積Sを用いて下記(B)式から平均結晶粒子径d(μm)を算出する。このような平均結晶粒子径dの算出を5箇所(5視野)について行ない、その平均値を平均結晶粒子径とした。なお、想定誤差は約5%である。
【0018】
d=2(S/π)1/2 (B)
負極集電体の厚さは、高容量化のため、20μm以下が好ましい。より好ましい範囲は12μm以下である。また、負極集電体の厚さの下限値は、3μmにすることが望ましい。一方、正極集電体の厚さは、高容量化のため、20μm以下が好ましい。より好ましい範囲は15μm以下である。また、正極集電体の厚さの下限値は、3μmにすることが望ましい。
【0019】
負極活物質については、例えば、Nb25、LiTi24、Li4Ti512やLi含有珪素酸化物の様な酸化物、Li含有窒化物などが適用可能である。
【0020】
一方、正極活物質については限定されるものではなく、MnO2、V25、Nb25、LiTi24、Li4Ti512、LiFe24、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、コバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムなどの金属酸化物、あるいはフッ化黒鉛、FeS2などの無機化合物、あるいはポリアニリンやポリアセン構造体などの有機化合物などあらゆる物が適用可能である。ただし、この中で作動電位が高く、サイクル特性に優れるという点でコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムやそれらの混合物やそれらの元素の一部を他の金属元素で置換したリチウム含有酸化物がより好ましく、長期間に渡り使用されることもある非水電解質電池においては高容量で電解液や水分との反応性が低く化学的に安定であるという点でコバルト酸リチウムがさらに好ましい。
【0021】
以上説明した正極3、負極6及びセパレータ8を用いて電極群を作製する方法を以下に説明する。
【0022】
図2に示すように、複数の正極3及び負極6をその間にセパレータ8を介在させながら交互に積層する。積層方法を具体的に説明する。正極3及び負極6のうち一方の電極を袋状のセパレータ8に収納する。図2の場合、負極6を電流導出部4がセパレータ8の開口端から突出するように収納する。セパレータ8に収納された負極6に正極3を積層する。この際、正極3の正極活物質含有層2をセパレータ8を介して負極活物質含有層5と対向させる。また、正極3の電流導出部1を、電流導出部4が突出しているセパレータ短辺とは反対側に位置するセパレータ短辺(セパレータ8の底部)から突出させる。このようにして負極6と正極3とをセパレータ8を介して交互に積層した後、必要に応じて絶縁テープ9を用いて積層体を一つに束ねることにより、図3に示す積層型電極群10を得る。得られた積層型電極群10の一方の短辺から正極3の電流導出部1が負極6及びセパレータ8よりも突出しており、他方の短辺から負極6の電流導出部4が正極3及びセパレータ8よりも突出している。
【0023】
正極3の電流導出部1を溶接により一体化することにより、正極端子を得る。また、負極6の電流導出部4を溶接により一体化することにより、負極端子を得る。溶接方法は、電流導出部間の電気的接続が良好になる手法であれば特に限定されるものではないが、例えば、レーザ溶接、抵抗溶接、超音波溶接などを採用することができる。
【0024】
得られた積層型電極群10に非水電解質を保持させた後、この電極群10を容器内に正極端子及び負極端子が容器の外部に引き出されるように収納することにより、非水電解質電池を得る。
【0025】
第1の実施形態に係る方法によると、正極及び負極をセパレータもしくは電解質層を介して積層する際、相対する二辺から集電体の活物質非形成部(電流導出部)が突出するように積層し、その後、活物質非形成部を溶接により一体化して正負極端子を形成しているため、平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムもしくは平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウム合金からなる正負極端子の製造時の折れ曲がりや切断を回避することができる。その結果、製造歩留まりを向上することができ、量産性を改善することができる。また、正極端子と負極端子の幅が十分に広いため、急速充電時及び急速放電時の出力特性も改善することができる。
【0026】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る電池の製造方法を図4〜図6を参照して説明する。なお、図1〜3と同様な部材は同符号を付して説明を省略する。図4の(a)は、正極及び負極の電流導出部を裁断する工程を示す模式図で、図4の(b)は、正極及び負極の電流導出部を溶接により一体化する工程を示す模式図である。図5は、図4の積層型電極群が収納される容器を示した斜視図である。図6は、第2の実施形態に係る方法で製造された非水電解質電池を示す斜視図である。
【0027】
まず、第1の実施形態で説明したのと同様にして正極、負極及びセパレータを作製した後、これらを第1の実施形態で説明したのと同様にして積層し、積層型電極群10を得る。次いで、図4の(a)に示す通り、正極3の電流導出部1を帯状に裁断すると共に、負極6の電流導出部4を帯状に裁断する。その後、図4の(b)に示す通り、正極3の電流導出部1を溶接により一体化して正極端子11を形成する。また、負極6の電流導出部4を溶接により一体化して負極端子12を形成する。溶接方法は、第1の実施形態で説明した通りである。
【0028】
得られた積層型電極群が収納される容器を図5に示す。図5に示すように、容器13は、ラミネートフィルムに例えば深絞り加工あるいはプレス加工を施すことにより形成された矩形状の凹部からなる電極群収納部14と、ラミネートフィルムのうちの加工が施されていない平板部からなる矩形状の蓋体15とを有する。ラミネートフィルムを点線に沿って容器側に折り返すと、電極群収納部14に蓋体15を被せることができる。蓋体15の内面は、電極群収納部14の開口部周縁の三辺16a〜16cと例えば熱融着により接合される。図6は、蓋体15が電極群収納部14の開口部周縁の三辺16a〜16cに接合され、蓋体15を下にして配置された状態を示している。ラミネートフィルムには、例えば、熱可塑性樹脂層と樹脂層との間に金属層が配置されたラミネートフィルムを使用することができる。熱可塑性樹脂層が電極群収納部14及び蓋体15の内面に位置することによって、電極群収納部14に蓋体15を熱融着により接合することができる。熱可塑性樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等から形成される。金属層は、アルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔であることが好ましい。また、樹脂層は、金属層を補強するためのものであり、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子から形成することができる。
【0029】
積層型電極群10は非水電解質を保持した状態で容器13の電極群収納部14に収納される。図6に示すように、正極端子11は、電極群収納部14の開口部周縁の短辺16aと蓋体15との間から外部に引き出され、負極端子12は、電極群収納部14の開口部周縁の反対側の短辺16bと蓋体15との間から外部に引き出される。電極群収納部14の開口部周縁の長辺16cと蓋体15は、熱融着により接合された後、ほぼ垂直に折り曲げられている。
【0030】
第2の実施形態に係る方法によると、正極及び負極をセパレータもしくは電解質層を介して積層する際、相対する二辺から集電体の活物質非形成部(電流導出部)が突出するように積層し、その後、活物質非形成部を裁断後、溶接により一体化して正負極端子を形成しているため、平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる正負極端子の製造時の折れ曲がりや切断を回避することができる。また、活物質非形成部中に正負極端子として使用しない部分が含まれており、積層工程中、この部分を持って作業を行うだけで正負極端子への異物の付着や活物質の脱落を回避することができ、積層工程中の正負極の取り扱いをより容易にすることも可能である。これらの結果、製造歩留まりを向上することができ、量産性を改善することができるのである。
【0031】
また、活物質非形成部を帯状に裁断した後、溶接により一体化しているため、重ね合わされた活物質非形成部間の位置ずれを少なくすることができ、急速充電時及び急速放電時の出力特性に優れた電池を実現することができる。
【0032】
裁断工程は、正極端子11が容器13から引き出される方向L1と直交する方向の長さで規定される正極端子の幅A1及び負極端子12が容器13から引き出される方向L2と直交する方向の長さで規定される負極端子の幅A2が下記(1)、(2)式を満たすように行われることが望ましい。
【0033】
0.1≦(A1/B1)<1 (1)
0.1≦(A2/B2)<1 (2)
但し、B1は、正極端子11の幅A1と平行な電極群10の幅で、B2は負極端子12の幅A2と平行な電極群10の幅である。図4の場合、電極群の幅B1と電極群の幅B2は等しい値となる。
【0034】
(第3の実施形態)
前述した第2の実施形態では、電流導出部を帯状に裁断した後、溶接を行ったが、電流導出部を溶接により一体化した後、帯状に裁断しても良い。第3の実施形態に係る方法によると、第2の実施形態と同様に、正負極端子の製造時の折れ曲がりや切断を回避することができると共に、積層工程中の正負極の取り扱いをより容易にすることが可能である。さらに、電流導出部を溶接により一体化した後に裁断しているため、裁断をより簡単に行うことができる。
【0035】
第1〜第3の実施形態では、セパレータの代わりに電解質層を使用しても、セパレータに電解質層を併用しても良い。電解質層として固体電解質を用いた場合には、正極/固体電解質/セパレータ/負極、正極/セパレータ/固体電解質/負極、正極/固体電解質/セパレータ/固体電解質/負極などの応用が可能である。
【0036】
セパレータは、正極活物質含有層との対向面積または負極活物質含有層との対向面積の1.01倍以上、1.1倍以下の面積を有することが望ましい。
【0037】
また、電解質層のセパレータに対する面積比は、0.85以上、1以下であることが望ましい。
【0038】
[実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
(実施例1)
LiCoO2からなる正極活物質と、炭素からなる導電補助材と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなる結着剤とを溶媒を用いて混合し、スラリーを調製した。厚さ15μmで平均結晶粒子径が50μmのシート状のアルミニウム箔(純度99.99%)からなる正極集電体の両面にスラリーを塗布することにより、正極集電体の両面に正極活物質含有層が形成された正極を作製した。得られた正極を、矩形のシート状に裁断した。なお、正極集電体の短辺方向の一辺にはスラリーを塗布せず、電流導出部とした。
【0040】
Li4Ti512からなる負極活物質と、炭素からなる導電補助材と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなる結着剤とを溶媒を用いて混合し、スラリーを調製した。厚さ15μmで平均結晶粒子径が50μmのシート状のアルミニウム箔(純度99.99%)からなる負極集電体の両面にスラリーを塗布することにより、負極活物質含有層が形成された負極を作製した。得られた負極を矩形のシート状に裁断した。なお、負極集電体の短辺方向の一辺にはスラリーを塗布せず、電流導出部とした。
【0041】
次に、ポリエチレン多孔質フィルムからなる袋状のセパレータを用意し、この袋状セパレータに負極を収納した。袋状セパレータに収納された負極と正極を負極/セパレータ/正極の順で平行に重ね、絶縁テープで固定した。このとき負極活物質含有層および正極活物質含有層の面積は同じで、活物質を形成しない電流導出部の面積も同じとした。また、セパレータの幅は正・負活物質を全て覆うのには十分であるが、活物質を形成しない部分については全て覆うことのないようにした。正負極集電体とセパレータは平行であるものの、積層物の一方の短辺において正極の電流導出部を負極及びセパレータよりも突出させ、反対側の短辺において負極の電流導出部を正極及びセパレータよりも突出させた。
【0042】
正極の電流導出部をレーザ溶接により一体化し、正極端子を形成した。また、負極の電流導出部をレーザ溶接により一体化し、負極端子を形成した。以上の工程により、前述した図3に示す電極群を得た。
【0043】
このようにして得られた電極群に非水電解質を含浸させた後、容器内に密閉することにより、設計電池容量が300mAhのリチウムイオン二次電池を製造した。
【0044】
(実施例2〜3)
前述した実施例1の電極群製造工程において正負極の電流導出部をレーザ溶接により一体化する前に、正極の電流導出部を帯状に裁断し、また、負極の電流導出部を帯状に裁断した。次いで、正極の電流導出部をレーザ溶接により一体化し、正極端子を形成した。また、負極の電流導出部をレーザ溶接により一体化し、負極端子を形成した。以上の工程により、前述した図4(b)に示す電極群を得た。
【0045】
このようにして得られた電極群に非水電解質を含浸させた後、容器内に密閉することにより、前述した図6に示す構造を有し、設計電池容量が300mAhのリチウムイオン二次電池を製造した。
【0046】
(実施例4)
前述した実施例1の電極群製造工程において正負極の電流導出部をレーザ溶接により一体化した後、正極の電流導出部を帯状に裁断して正極端子を形成した。また、負極の電流導出部を帯状に裁断して負極端子を形成した。
【0047】
以上の工程により得られた電極群に非水電解質を含浸させた後、容器内に密閉することにより、前述した図6に示す構造を有し、設計電池容量が300mAhのリチウムイオン二次電池を製造した。
【0048】
(比較例)
図7の(a)に示すように、厚さ15μmで平均結晶粒子径が50μmのシート状のアルミニウム箔(純度99.99%)からなる正極集電体17の両端部18を除いた両面に、実施例1と同様にして調製したスラリーを塗布することにより、正極集電体17の両面に正極活物質含有層19が形成された正極を作製した。
【0049】
次いで、図7の(b)、(c)に示すように、短辺にタブ20を有する短冊状の正極21を打ち抜き加工により形成した。
【0050】
また、図8の(a)に示すように、厚さ15μmで平均結晶粒子径が50μmのシート状のアルミニウム箔(純度99.99%)からなる負極集電体22の両端部23を除いた両面に、実施例1と同様にして調製したスラリーを塗布することにより、負極集電体22の両面に負極活物質含有層24が形成された負極を作製した。
【0051】
次いで、図8の(b)、(c)に示すように、短辺にタブ25を有する短冊状の負極26を打ち抜き加工により形成した。
【0052】
次いで、図9に示すように、ポリエチレン多孔質フィルムからなる袋状のセパレータ27に、負極26をタブ25がセパレータ27の開口部から突出するように収納した。このセパレータ27に収納済みの負極26と、正極21とを交互に積層した。その際、積層物の一方の短辺において負極26のタブ25を正極21よりも突出させ、反対側の短辺において正極21のタブ20を負極26よりも突出させた。
【0053】
ひきつづき、正極21のタブ20をレーザ溶接により一体化し、また、負極26のタブ25をレーザ溶接により一体化した。得られた電極群は、絶縁テープ28により固定した。
【0054】
このようにして得られた電極群に非水電解質を含浸させた後、容器内に密閉することにより、設計電池容量が300mAhのリチウムイオン二次電池を製造した。
【0055】
得られた二次電池について、25±3℃、相対湿度70%以下の恒温室で1C電流で充放電を1回実施後、20C電流で急速放電し、そのときに放電された電気容量の対初期充電電気量との相対値を求めた。その結果を下記表1に示す。表中の評価結果は電池をそれぞれ6個ずつ作製したときの平均値である。
【0056】
また、電池製造中に端子やタブの切断を生じ、電池を製造することができなかった製造不良数を下記表1に併記する(母数が100個)。さらに、長さ比(A1/B1)及び(A2/B2)を下記表1に併記する。なお、電極群の幅B1は、電極群の幅B2と等しい値であった。
【表1】

【0057】
表1から明らかなように、実施例1〜3の製造方法では、正極と負極を積層した後に集電体の活物質非形成部を溶接により一体化して端子を形成しているため、製造中に正負極端子が変形・切断される不良が少なく、量産性に優れていることがわかる。これに対し、比較例の製造方法では、打ち抜き加工により正負極タブを形成した後、正極及び負極を積層して電極群を作製しているため、製造中に正負極タブが折れ曲がったり、千切れたりする不良が多発した。
【0058】
また、実施例2,4の比較から、集電体の活物質非形成部を帯状に裁断した後、溶接により一体化して端子を形成する実施例2の方が、初期充電電気量に対する相対値が高く、大電流特性に優れていることがわかった。
【0059】
以上説明のとおり、本発明によれば製造生産効率がよく、しかも高出力密度を向け電池の電極構造を提供できる。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】正極、セパレータ及び負極の製造過程を示す模式図。
【図2】正極、セパレータ及び負極を積層する工程を示す模式図。
【図3】第1の実施形態に係る方法で製造された積層型電極群を示す斜視図。
【図4】正負極端子を形成する工程を示す模式図。
【図5】図4の積層型電極群が収納される容器を示した斜視図。
【図6】第2の実施形態に係る方法で製造された非水電解質電池を示す斜視図。
【図7】比較例の電池における正極の製造過程を示す斜視図。
【図8】比較例の電池における負極の製造過程を示す斜視図。
【図9】比較例の電池における電極群の作製工程を示す斜視図。
【符号の説明】
【0062】
1,4…電流導出部、2…正極活物質含有層、3…正極、5…負極活物質含有層、6…負極、8…セパレータ、9…絶縁テープ、10…積層型電極群、11…正極端子、12…負極端子、13…容器、14…電極群収納部、15…蓋体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に電流導出部が形成され、平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも前記電流導出部を除いて形成された正極活物質含有層を含む複数の正極と、一端に電流導出部が形成され、平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも前記電流導出部を除いて形成された負極活物質含有層を含む複数の負極とを、前記正極活物質含有層と前記負極活物質含有層の間にセパレータ及び電解質層のうちの少なくとも一方の部材が介在されるように積層し、積層物の一辺において前記正極の前記電流導出部を前記負極及び前記部材よりも突出させ、かつ前記積層物の反対側の辺において前記負極の前記電流導出部を前記正極及び前記部材よりも突出させる工程と、
前記正極の前記電流導出部を溶接により一体化して正極端子を形成すると共に、前記負極の前記電流導出部を溶接により一体化して負極端子を形成する工程と、
得られた電極群を容器内に前記正極端子と前記負極端子が前記容器の外部に引き出されるように収納する工程と
を具備することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項2】
前記電極群を前記容器に収納する工程の前に、前記正極端子及び前記負極端子それぞれを帯状に裁断する工程を具備することを特徴とする請求項1記載の電池の製造方法。
【請求項3】
一端に電流導出部が形成され、平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも前記電流導出部を除いて形成された正極活物質含有層を含む複数の正極と、一端に電流導出部が形成され、平均結晶粒子径が50μm以下のアルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも前記電流導出部を除いて形成された負極活物質含有層を含む複数の負極とを、前記正極活物質含有層と前記負極活物質含有層の間にセパレータ及び電解質層のうちの少なくとも一方の部材が介在されるように積層し、積層物の一辺において前記正極の前記電流導出部を前記負極及び前記部材よりも突出させ、かつ前記積層物の反対側の辺において前記負極の前記電流導出部を前記正極及び前記部材よりも突出させる工程と、
前記正極の前記電流導出部及び前記負極の前記電流導出部それぞれを帯状に裁断する工程と、
前記正極の前記電流導出部を溶接により一体化して正極端子を形成すると共に、前記負極の前記電流導出部を溶接により一体化して負極端子を形成する工程と、
得られた電極群を容器内に前記正極端子と前記負極端子が前記容器の外部に引き出されるように収納する工程と
を具備することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項4】
前記裁断工程は、前記正極端子が前記容器から引き出される方向と直交する方向の長さで規定される前記正極端子の幅A1及び前記負極端子が前記容器から引き出される方向と直交する方向の長さで規定される前記負極端子の幅A2が下記(1)、(2)式を満たすように行われることを特徴とする請求項2または3記載の電池の製造方法。
0.1≦(A1/B1)<1 (1)
0.1≦(A2/B2)<1 (2)
但し、B1は前記正極端子の幅A1と平行な前記電極群の幅で、B2は前記負極端子の幅A2と平行な前記電極群の幅である。
【請求項5】
前記負極集電体の厚さは20μm以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の電池の製造方法。
【請求項6】
前記セパレータは、前記正極活物質含有層との対向面積または前記負極活物質含有層との対向面積の1.01倍以上、1.1倍以下の面積を有することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の電池の製造方法。
【請求項7】
前記電解質層の前記セパレータに対する面積比が0.85以上、1以下であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−305383(P2007−305383A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131709(P2006−131709)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000003539)東芝電池株式会社 (109)
【Fターム(参考)】