説明

電池パック、電力システムおよび電動車両

【課題】電池パックの内部にて、電池の温度が所定の温度領域に含まれる場合に、充電電圧を低減して電池パックの安全性と長期信頼性を高める。
【解決手段】1または複数の電池と、電池の充放電を制御する制御部と、電池の温度を測定し、測定された温度情報を制御部に供給する温度検出部と、電池に対する電流路に配され、制御部によってそれぞれ制御される放電制御用スイッチおよび充電制御用スイッチとを備える。制御部は、検出された温度が充電の制御を必要とする温度領域に含まれる場合に、電池に対する充電電圧を通常充電時に比して低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば二次電池の電池パックと、電池パックを使用する電力システムおよび電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池を含む電池パックは、電動工具、モバイル電子機器、電動車両、バックアップ電源等として広く使用されている。電池パックは、1または複数の二次電池と、電池の電圧、電流、温度を検出する検出部を含む保護回路とがラミネートフィルム、合成樹脂ケース等の外装によって一体化されている構成と定義される。電池パックは、認証回路を有する場合もある。
【0003】
リチウムイオン電池の長所は、小型、軽量、高電圧、高エネルギー密度等である。一方、満充電電圧がニッケル・カドミウム電池のように自己で定まらないので、印加した電圧の分だけ電池電圧が上昇する特性を持つ。過大な充電を行なうと放電容量が劣化し、極端な過充電は安全性の問題を生じる可能性がある。逆に、過放電においても急激に劣化が進む。これら短所を補うために、リチウムイオン電池パックの内部に保護回路を設け、充電や放電を制御することが一般的である。
【0004】
さらに、電池パックの安全性と長期信頼性(長寿命化)を高めるために、充電時の温度環境が異常とならないように、使用温度に関連する要求の厳しさが増してきている。異常温度環境とは、リチウムイオン電池パックの指定する充電温度範囲を外れた温度領域を言う。一部の安全規格では、現時点ではガイドラインとして充電時の充電温度制御を行うことが推奨されている。
【0005】
特許文献1には、ダイオードを利用した電圧降下による充電の安全性を確保することが記載されている。特許文献1に記載の技術は、複数のセルを使用した組電池において、セルバランスが崩れた場合の過充電に対する安全性の確保を目的としている。制御方法は最大セル電圧が規定の電圧以上となり、更に直列に接続したセル間のバラツキが大きくなったときに動作する。この結果、外付けダイオードを介して充電することで充電電流を小さくすることができセル間に生じている電圧差は抑制され、安全に充電を完了することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−199717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は電池パックの推奨する温度範囲での充電条件を満たすことを目的とし、安全性と長期信頼性(長寿命)を確保することが可能である。セル電圧の状態やセル間のバラツキに関わらず、セル温度の状態によってのみ制御を行う。本開示では、FETの寄生ダイオードや外付けのダイオードにより、セルに印加される充電電圧自体を下げることを可能とする制御を行っている。かかる本開示は、特許文献1に記載のものと相違している。
【0008】
さらに、コンスーマー向けの製品の場合は、充電回路と電池パックの組み合わせで設計がなされ、製品サイクルも比較的短く、充電器(充電回路)と電池パックの組み合わせを製品と対応させることが比較的容易である。しかしながら、製品サイクルの長い製品や、製品がシリーズ化しているために充電器を変更せずに使い回す場合では、充電器と電池パックの組み合わせと製品の対応関係が変化する。
【0009】
特に業務向けの製品などの場合、5年以上の製品サイクルがしばしばあり、10年以上生産する製品も存在する。このような場合、コンスーマー向けのように充電器と電池パックとの組み合わせを入れ替えることは、費用的にも物理的にも負担が大きくなる。しかしながら、消耗品である電池パックのみの交換で良ければ、負担が最小限に抑えられる。
【0010】
したがって、本開示の目的は、電池パックに対して最小限の部品追加によって、異常温度環境において充電電圧を強制的に低減することを可能とする電池パック、電力システムおよび電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の装置は、11または複数の電池と、
電池の充放電を制御する制御部と、
電池の温度を測定し、測定された温度情報を制御部に供給する温度検出部と、
電池に対する電流路に配され、制御部によってそれぞれ制御される放電制御用スイッチおよび充電制御用スイッチとを備え、
制御部は、温度検出部によって検出された温度が充電の制御を必要とする温度領域に含まれる場合に、放電制御用スイッチをオフにし、充電制御用スイッチをオンし、
放電制御用スイッチに対して並列に接続されたダイオードの順方向電圧降下を利用して電池に対する充電電圧を通常充電時に比して低下させる電池パックである。
【0012】
本開示の装置は、上述した電池パックが再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって充電される電力システムである。
本開示の装置は、上述した電池パックから、電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、電池パックに関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。
本開示の装置は、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部を備え、
送受信部が受信した情報に基づき、上述した電池パックの充放電制御を行う電力システムである。
本開示の装置は、上述した電池パックから、電力の供給を受け、発電装置または電力網から電池パックに電力を供給する電力システムである。
【発明の効果】
【0013】
実施の形態によれば、電池パックの安全性と長期信頼性(長寿命化)を高めることができる。本開示によれば、充電器(充電回路)の仕様に関わらず、リチウムイオン電池パックの内部で充電の温度保護の制御をすることで、新しい充電回路(充電器)との組み合わせを購入することを不要とし、安全にリチウムイオン電池パックの使用を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示を適用できる電池パックの一例のブロック図である。
【図2】本開示を適用できる電池パックの一例のブロック図である。
【図3】温度保護機能を有する電池パックおよび充電器の第1の例のブロック図である。
【図4】温度保護機能を有する電池パックおよび充電器の第2の例のブロック図である。
【図5】温度保護機能を有する電池パックおよび充電器の第3の例のブロック図である。
【図6】温度保護機能を有する電池パックのブロック図である。
【図7】電池パックの一実施の形態の説明に用いる略線図である。
【図8】一実施の形態の説明に用いるフローチャートである。
【図9】電圧降下を生じさせる構成の説明に用いる接続図である。
【図10】一実施の形態の充電動作の説明に用いる略線図である。
【図11】電圧降下を生じさせる構成の説明に用いる接続図である。
【図12】電圧降下を生じさせる構成の説明に用いる接続図である。
【図13】電池パックの応用例を説明するためのブロック図である。
【図14】電池パックの応用例を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0016】
<本開示を適用できる電池パックの概要>
図1に本開示を適用できる一般的なリチウムイオン電池パックの回路ブロック構成を示す。電池パックは、リチウムイオン二次電池等の電池(単位電池、セルとも呼ばれる)1a、1bと回路部2aとを有する。回路部2aは、共通のプリント配線基板上に実装されている。電池1aおよび1bは、直列接続されたものである。但し、2個の電池の直列接続に限らず、1または複数の電池を直列および/または並列に接続した構成に対しても本開示を適用できる。
【0017】
電池パックの正極端子3aおよび負極端子3bがそれぞれ充電器または電子機器(製品)の正極端子および負極端子と接続可能とされる。電子機器は、携帯電話、ノートPC(パーソナルコンピュータ)等である。さらに、後述するように、携帯機器以外に電動車両、家庭内電力システムと接続される場合もある。
【0018】
回路部2aは、保護IC(Integrated Circuit)4と、放電制御用スイッチ(以下、放電スイッチと適宜称する)5と、充電制御用スイッチ(以下、充電スイッチと適宜称する)6とから構成されている。これらのスイッチとしては、例えばFET(Field Effect Transistor)が使用される。保護IC4は、電池1a、1bのそれぞれの電圧値を受け取っ
て、放電スイッチ5および充電スイッチ6のオン/オフを制御して、電池1a、1bが安全な領域の中で動作するようにしている。
【0019】
充電時には、電池パックの正極端子3aおよび負極端子3bがそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。電池パックにおいて、電池電圧が過充電検出電圧となったことが検出されると、保護IC4によって充電スイッチ6がオフとされ、電池1a,1bの電流経路に充電電流が流れないように制御される。充電スイッチ6のオフ後は、放電のみが可能となる。
【0020】
放電スイッチ5は、電池電圧が過放電検出電圧となった場合にオフとされ、電池1a,1bの電流経路に放電電流が流れないように保護IC4によって制御される。放電スイッチのオフ後は、充電のみが可能となる。放電スイッチ5のオフ後は、充電のみが可能となる。ここで、リチウムイオン二次電池の単体で、過充電検出電圧が例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧が例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0021】
図2に示すように、図1に示される回路部2aにMCU(Micro Controller Unit)7を
追加した回路部2bによって、電子機器本体や充電器との通信機能を有する電池パックが知られている。MCU7は、一つの集積回路にコンピュータシステムをまとめた、組み込み用のマイクロプロセッサのことである。MCU7は、一般的なマイクロプロセッサと異なり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ、I/O関連等の多くの周辺機能をMCU自体に搭載している。
【0022】
電池パックには、MCU7と接続された通信用端子3cが設けられ、電子機器本体は、必要な電池パックの状態情報を通信で受け取ることが可能となる。受け取った情報を用いてエンドユーザに電子機器本体の使用可能時間を表示することができる。さらに、電池パック単体においても、LED(Light Emitting Diode)等により残量レベル表示やアラーム警告表示を行い、ユーザの使い勝手を向上させることが行われる。
【0023】
さらに、電流検出抵抗8が設けられ、充電電流または放電電流が検出される。検出された電流値がMCU7に供給される。充電時に大電流が流れた場合に、保護IC4によって充電スイッチ6がオフとされ、電池1a,1bの電流経路に流れる充電電流を遮断するように、制御される。さらに、放電時に大電流が流れた場合に、保護IC4によって放電スイッチ5がオフとされ、電池1a,1bの電流経路に流れる放電電流を遮断するように、制御される。放電スイッチ5および充電スイッチ6は、保護IC4とMCU7の両者によって制御することが可能とされている。
【0024】
なお、MCU7の代わりに、CPU(Central Processing Unit )、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などにより構成されるマイクロコンピュータを使用しても良い。さらに、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory )等の不揮発性メモリを電池パックに設けるようにしても良い。
【0025】
<電池パックにおける温度異常時の制御>
既存の電池温度異常時の制御について説明をする。
図1に示すように、MCUを搭載していない電池パックの場合の構成例を図3に示す。図3に示す回路部2cは、図1の構成と異なり、1個の電池1を備え、放電スイッチ5および充電スイッチ6が電池1の負側のラインに挿入されている。さらに、電池パックと充電器とが正極端子3a、負極端子3b、サーミスタ端子3dを介して接続される。
【0026】
充電器は、充電電源を電池パックの正極端子3a、負極端子3bに対して供給される充電電源を制御する充電制御回路11を有する。充電制御回路11は、充電電源と充電を制御する制御部とから構成されている。充電電源は、例えば商用電源を整流し、所定の直流電圧を発生するDC−DCコンバータの構成とされる。さらに、充電電源の供給をオン/オフするための電源制御スイッチ12とプルアップ抵抗13とを有する。電池パックのサーミスタ端子3dと負極側との間に温度検出素子例えばNTC(Negative Temperature Coefficientサーミスタ9が接続される。プルアップ抵抗13とサーミスタ9とによって分
圧された温度検出電圧が充電制御回路11に供給される。温度検出電圧は、電池パックの温度に応じて変化する値となる。
【0027】
サーミスタ9と電子機器本体側の充電制御回路11との組み合わせによって、充電と共に温度保護動作がなされ、制御が電子機器本体側でなされる。すなわち、充電電圧、充電電流、充電完了等に関する制御を行う充電制御回路11が充電中の電池パックの温度を監視して、温度異常の無いことを確認しながら充電を行う。充電制御回路11がサーミスタ9の抵抗値(温度検出電圧)を監視して、温度異常を検出した場合には、充電制御スイッチ12をオフとして充電を停止させる。
【0028】
図4に示すように、電池パックの回路部2dにサーミスタ9を設けず、充電器11にサーミスタ14を設ける場合もある。電子機器本体側において、サーミスタ14が電池パックに近接して設けられる。図4の構成は、電池パックと充電器との接続に必要な端子数が3個から2個に減少する点で有利である。しかしながら、電池パック内にサーミスタを搭載した場合と比較して電池温度の検出精度が落ちる。このため温度補正が必要となる場合がある。
【0029】
電池パックがMCU7を搭載している構成(図2参照)には、図5に示すように、サーミスタ9により検出された温度情報(状態情報)が通信端子3cを通じて充電器の充電制御回路11に伝えられる。
【0030】
充電器の充電制御回路11に対してアラーム表示部15が接続されている場合には、充電制御回路11がMCU7と通信を行い、充電時に電池パックにて温度異常を検出した際は、アラーム表示部15によってエンドユーザに知らせる警告表示を行う。警告表示後の対応は、ユーザに頼ることになる。
【0031】
充電器の充電制御回路11に対して充電制御スイッチ12が接続されている場合には、充電制御回路11がMCU7と通信を行い、充電時に電池パックにて温度異常を検出した際は、充電スイッチ12によって充電を停止する。電池パックの状態情報から充電器側でどのような制御をするかを判断できるので、より細かい設定が可能である。充電器側での制御であることから電池異常とすることなく充電を完了できる。
【0032】
充電時に電池パックにて温度異常を検出した際は、MCU7が電池パックの充電スイッチ6を強制的にオフにして充電を停止する。電池パック側で強制的に充電が停止するため、充電器側で電池異常となる。但し、充電器の充電制御スイッチ12による制御と併用することによって二重保護を行うことができる。具体的には、充電器側の充電停止の温度の設定値以上の電池パック側の充電停止の温度を設定することで、正常動作時にはエンドユーザに違和感無く充電を完了させることができ、充電回路側の異常時には強制的に充電停止を行うことができる。
【0033】
上述したように、既存技術においては、充電制御回路11によって温度環境に応じて電圧や電流を制御する必要があり、電池パック単体としては、アラーム表示をしてエンドユーザの対応に頼る構成程度しかできなかった。したがって、充電器と電池パックとの対応関係をとる必要があり、電池パックを交換する場合には、充電器も一緒に交換する必要があった。
【0034】
電池パック内に充電制御回路21および充電制御用スイッチ22を搭載した例を図6に示す。MCU7が充電制御回路21に対して内部通信によって温度情報を伝える。充電制御回路21が充電制御用スイッチ22のオン/オフ等の温度制御を温度情報に基づいて行う。この構成は、一番確実な制御方法である。但し、次のデメリットがある。
【0035】
・電池パック内部での回路規模が大きくなり、コストアップとなる。
・充電と放電と別のラインが必要である。または図6に示すように、切替スイッチ22が必要とされる。切替スイッチ22は、充電時にオフで、放電時にオンとなるように、充電制御回路21によって制御される。
・電池パック内部の回路部2fの消費電力が大きくなる。
・充電制御回路21に含まれる電源回路によって充電時の内部損失の発生とそれに伴う内部発熱が増大する。さらには、内部発熱による熱分布の偏りによるセル劣化のバラツキが発生する。
・充電制御回路21に含まれる電源回路がDC−DCコンバータの構成とされるので、電池パックが発振回路を持つ。その結果、電池パック単体でのEMC(Electro-Magnetic
Compatibility)管理が生じ、開発費が大きくなる。
【0036】
<本開示による電池パック>
本開示は、以上の構成の問題点を解決するものである。本開示では、電池パック単体において温度保護動作を行うようにする。充電時の温度保護動作としては、下記の3通り方法がある。
【0037】
1.充電を停止する。
2.充電電圧を小さくする。
3.充電電流を小さくする。
本開示は、2番目の充電電圧を小さくする保護方法であり、充電時に電池に印加される電圧を電池パック内部で容易に制限するものである。
【0038】
図7に示すように、一実施の形態では、電池パックは、4本のリチウムイオン二次電池1a,1b,1c,1dが直列接続された電池部と、回路部2gとから構成されている。回路部2gは、共通のプリント配線基板上に実装されている。電池1a〜1dは、直列接続されたものである。但し、2個の電池の直列接続に限らず、1または複数の電池を直列および/または並列に接続した構成に対しても本開示を適用できる。
【0039】
電池パックの正極端子3aおよび負極端子3bがそれぞれ充電器または電子機器(製品)の正極端子および負極端子と接続可能とされる。電子機器は、携帯電話、ノートPC(パーソナルコンピュータ)等である。さらに、後述するように、携帯機器以外に電動車両、家庭内電力システムと接続される場合もある。
【0040】
回路部2gは、放電スイッチ5を構成する放電FETQ1と充電スイッチ6を構成する充電FETQ2と、MCU7と、電流検出抵抗8と、サーミスタ9とから構成されている。電流検出抵抗8によって、充電電流または放電電流が検出され、検出された値がMCU7に供給される。サーミスタ9は、例えばNTCサーミスタであって、温度変化に対して負の温度係数を有する。サーミスタ9の抵抗値(温度情報)がMCU7に供給される。
【0041】
放電FETQ1および充電FETQ2は、MCU7によって制御される。MCU7は、電池1a〜1dのそれぞれの電圧値と、電流検出抵抗8によって検出された電流値と、サーミスタ9により検出された温度情報とを受け取る。MCU7がこれらの電圧値、電流値および温度情報を監視し、放電FETQ1および充電FETQ2のオン/オフを制御して、電池1a〜1dが安全な領域の中で動作するようにしている。
【0042】
充電時には、電池パックの正極端子3aおよび負極端子3bがそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。電池パックにおいて、電池電圧が過充電検出電圧となったことが検出されると、MCU7によって充電FETQ2がオフとされ、電池1a〜1dの電流経路に充電電流が流れないように制御される。充電電流が過大の場合にも充電FETQ2がオフとされる。充電FETQ2のオフ後は、放電FETQ1および寄生ダイオードD2を通じて放電のみが可能となる。
【0043】
放電FETQ1は、電池電圧が過放電検出電圧となった場合にオフとされ、電池1a〜1dの電流経路に放電電流が流れないようにMCU7によって制御される。放電スイッチのオフ後は、充電のみが可能となる。放電電流が過大の場合にも放電FETQ1がオフとされる。放電FETQ1のオフ後は、充電FETQ2および寄生ダイオードD1を通じて充電のみが可能となる。ここで、リチウムイオン二次電池の単体で、過充電検出電圧が例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧が例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0044】
MCU7は、一つの集積回路にコンピュータシステムをまとめた、組み込み用のマイクロプロセッサのことである。MCU7は、一般的なマイクロプロセッサと異なり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ、I/O関連等の多くの周辺機能をMCU自体に搭載している。
【0045】
電池パックには、MCU7と接続された通信用端子3cが設けられ、充電器または電子機器本体は、必要な電池パックの状態情報を通信で受け取ることが可能となる。電子機器は、受け取った情報を用いてエンドユーザに電子機器本体の使用可能時間を表示することができる。さらに、電池パック単体においても、LED(Light Emitting Diode)等により残量レベル表示やアラーム警告表示を行い、ユーザの使い勝手を向上させることが行われる。
【0046】
なお、MCU7の代わりに、CPU(Central Processing Unit )、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などにより構成されるマイクロコンピュータを使用しても良い。さらに、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory )等の不揮発性メモリを電池パックに設けるようにしても良い。
【0047】
一実施の形態の保護動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。このフローチャートの制御は、MCU7が行うものである。
【0048】
ステップA(スタート)を起点として、ステップB(セット)に制御が移行する。ステップBは、電池パックを充電器に接続することである。ステップBは、充電動作に移行することを示している。ステップBの後のステップCにおいて、電池温度、電流(充電/放電)および電圧の測定を開始し、MCU7が測定値を受け取る。そして、MCU7が現在の状態を判定する。
【0049】
ここで、充電温度保護の制御をするために、状態として、充電電流が流れているか否かの状態と、電池温度がどの温度領域にあるかの状態とが使用される。温度領域は、一例として下記のように設定される。Tcellは、サーミスタ9によって検出された電池1a〜1dの温度である。
【0050】
通常温度領域:10℃≦Tcell≦45℃
充電の制御を必要とする温度領域:0℃≦Tcell<10℃ または
45℃<Tcell≦60℃
充電を禁止する温度領域:Tcell<0℃ または Tcell>60℃
【0051】
ステップCの判定の結果、以下のような処理がなされる。
充電電流が流れていない場合(すなわち、無負荷や放電中である場合)
充電時の温度保護を動作させる必要がない。したがって、ステップCからステップEに処理が移行する。ステップEは、「正常充電時、放電時、または放置状態」であり、この状態では、放電FETQ1および充電FETQ2がオンとされる。
【0052】
そして、FETの状態が確定したところで、ステップG(各種演算処理)に移行する。ステップGでは、電池パックの残容量算出処理や、ステップCの測定結果の履歴などの記録処理がなされる。ステップC→ステップE→ステップGの一連の処理は、電池パックの状態の変化が生じない限り設定した時間(例えば1秒乃至数秒)毎に繰り返し行われ、この間、FETQ1およびFETQ2の状態が最前の状態が保持される。この場合の電池パックの状態の変化とは、電流の流れる方向が充電方向に変化することを意味する。
【0053】
充電中(充電電流>0[A]の場合には、充電温度保護を働かせる必要がある。ステップCで測定された電池の温度Tcellの属する温度領域に応じた処理がなされる。
・通常温度領域:10℃≦Tcell≦45℃
ステップEにおいて放電FETQ1および充電FETQ2がオンとされ、通常の充電を行う。制御シーケンスの流れは、上述した充電電流が流れていない場合と同様である。但し、設定時間毎に繰り返し行われるステップCの測定でセル温度が通信温度領域から外れたとき、ステップEのFETの状態は、ステップCの測定結果の条件に合った状態へ移行する。
【0054】
・充電を禁止する温度領域:Tcell<0℃ または Tcell>60℃
ステップCにおいて、Tcellが充電を禁止する領域に含まれると判定される場合、ステップDにおいて、充電FETQ2がオフとされ、放電FETQ1がオンとされ、充電が禁止される。ステップCの選定時間毎の測定において、電池の温度状態が変化しない限り、FETの状態が保持され続ける。
【0055】
・充電の制御を必要とする温度領域:0℃≦Tcell<10℃ または
45℃<Tcell≦60℃
ステップCにおいて、Tcellが充電の制御を必要とする温度領域に含まれると判定される場合、ステップFの充電温度保護状態において、充電FETQ2がオンとされ、放電FETQ1がオフとされる。ステップCの選定時間毎の測定において、電池の温度状態が変化しない限り、FETの状態が保持され続ける。放電FETQ1がオフされるので、充電電流が充電FETQ2および寄生ダイオードD1を経由して流れる。
【0056】
図9に示すように、放電FETQ1がオフの状態は、放電スイッチ5がオフで、放電スイッチ5と並列に寄生ダイオードD1が接続される状態と等価である。したがって、寄生ダイオードD1の順方向電圧VFによる電圧降下が生じ、電池1a〜1dに印加される充電電圧は、順方向電圧VF分だけ小さくなる。この電圧降下は抵抗器と異なり、充電電流(順方向電流)が小さくなっても大きく変化をしない。具体的な特性例において、25℃において、順方向電流が60mAのときに、VFが0.6Vとなる。
【0057】
VF=0.6[V]の例では、電池一段あたり、0.6V/4=0.15Vの電圧降下となる。通常充電時の充電電圧が1本の電池当たりで、4.20Vであれば、4.05Vに充電電圧を低下させることができる。
【0058】
このように、ダイオードD1を介して充電を行ったときの充電特性を図10に示す。充電初期と充電末期にて充電電圧と組み電池総電圧との電圧差(=VF)が大きく変化せず、安定していることが分かる。
【0059】
ステップFの充電温度保護状態において、充電しているときに、電池温度が変化して例えば通常温度領域に入ったとすると、ステップEの正常充電状態となり、放電FETQ1がオン状態となる。このため、寄生ダイオードD1による電圧降下が発生せず、電圧(4.20V)でもって電池が充電される。
【0060】
逆に、ステップEの正常充電状態から充電制御を必要とする温度領域に電池の温度が変化した場合には、ステップFの充電温度保護状態に移行する。この場合、充電電圧(4.20V)と電池電圧との電位差にVFを加えた電圧によって充電電流が決まってくる。仮に充電完了間際にあるときに、(充電電圧 < 電池電圧+VF)となり意図した電圧に下げることができなかったとしても、充電電流は充電回路の定電圧制御により十分に絞られた小さい電流値となる。よって前述の充電時の温度保護方法の3番目の充電電流を小さくする制御と同じ働きになる。
【0061】
さらに、温度保護の動作中に電池パックが充電器から切り離されたときは、充電電流がゼロとなる。この場合では、ステップCの測定後直ぐに、ステップE(正常時、放電時、放置状態)(放電FETQ1および充電FETQ2がオンした状態)に移行し、放電可能な状態になる。エンドユーザは、違和感無く電池パックを使用することが可能である。
【0062】
<変形例>
以上、本願の実施形態について具体的に説明したが、上述の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば電圧降下を発生させるための構成については、上述したもの以外の構成が可能である。
上述した例では、充電電圧を下げるために、放電FETQ1の寄生ダイオードD1が使用される。これは必要とする電圧降下がFETQ1の寄生ダイオードひとつ分で賄えることによる。電池の直列数が2〜5程度の場合である。そして、充電電流値がそのFETQ1の許容損失値を超えないことが必要である。
【0063】
若し、5直列を超えるような多直の場合や大電流仕様の場合には、寄生ダイオードと別のダイオードにより電圧降下を発生する必要がある。上述の問題の対応方法として、図11に示すように、充電FETQ2と並列に外付けダイオードD12、D13とFETQ3を接続する。ダイオードD12およびD13と切替スイッチSWとしてのFETQ3のドレイン・ソースとが直列に接続される。FETQ3の電流許容条件は、充電電流に流すことができるように設定されている。
【0064】
通常充電時には、FETQ3がオフとされ、放電FETQ1および充電FETQ2がオンとされ、充電電流がFETQ1およびFETQ2を通じて電池に流れる。温度保護動作時には、FETQ3がオンとされ、FETQ1およびFETQ2が共にオフとされる。充電電流がFETQ3と外付けダイオードD12およびD13と寄生ダイオードD1とを通じて流れる。したがって、電圧降下としては、図11に示すように、(VF1+VF2+VF3)となる。
【0065】
電圧降下させたい電圧値によってダイオードの選定の基準(個数、種類等)が変化する。1個のダイオード、複数のダイオードの直列接続、ショットキーバリアダイオードや整流ダイオードなどの順方向電圧降下VFの異なるダイオードによって、電圧降下の値が調整される。特に、充電電流値によっては部品選定以外に更に放電FETQ1の制御方法も変わってくる。
【0066】
上述したように、1個の寄生ダイオードD1のVF1では、電圧降下が不足する場合には、図11に示すように、充電FETQ2と並列に必要な個数の外付けダイオードが接続される。2個分の電圧降下が必要であれば、放電FETQ1の寄生ダイオードD1に直列に接続される外付けダイオード1個の追加で対応が可能となる。3個分の電圧降下が必要であれば、充電FETQ2と並列に配したダイオードの数を増やすことで対応が可能となる。例えば10直列に電池を接続した電池パックにおいて、充電温度保護機能を持つために、0.15V/cell以上の電圧降下を必要としたとき、ダイオードによる電圧降下が1.5V以上必要となる。
【0067】
図11において、放電FETQ1および充電FETQ2をオフに制御し、切替FETQ3をオンに制御する。この場合では、(VF1+VF2+VF3)が例えば1.8Vとなる。10直列では、0.18V/cellとなる。通常充電時に4.20Vで充電している場合、充電温度保護動作が働くと、充電電圧を4.02V/cellへ抑えることが可能となる。
【0068】
充電電流値が一つのFETの許容損失以上である場合には、図12に示すように対応する。放電FETQ1と並列に放電FETQ4が接続される。放電FETQ4も寄生ダイオードD4を有する。充電温度保護動作を働かせた場合、放電FETQ1およびFETQ4がオフとされる。並列接続の寄生ダイオードD1およびD4に電流が流れる。
【0069】
しかしながら、寄生ダイオードD1およびD4に電流を流した場合、順方向電圧降下VFのバラツキのため、より小さいVFの箇所に偏って電流が多く流れることがある。充電電流値がひとつのFETの許容損失を超えない大きさならば寄生ダイオードを使用しても問題無い。しかしながら、充電電流値がひとつのFETの許容損失を超える場合には、異常発熱から破壊に至る可能性がある。従って並列接続の場合は、そのFETの寄生ダイオードを使うことは止める判断が必要となる場合がある。
【0070】
したがって、この場合には、充電FETQ2(充電スイッチ6)のみをオフとし、放電FETQ1およびFETQ4がオンとされる。その結果、放電FETQ1およびFETQ4の寄生ダイオードの電圧降下が含まれないので、(VF2+VF3)が電圧降下となる。
【0071】
上述した本開示による電池パックは、以下のような利点を有する。
・電池パックのみで充電温度保護の制限ができ、充電時の安全性と長期信頼性を確保できる。
・不特定多数の充電器に接続される電池パックでも充電温度保護をすることができる。
・MCUによって充電/放電保護制御している場合は、既存回路のままで、ソフトウェアのみを変更することで対応できる。
・放電制御用FETの寄生ダイオードを利用することで安価に対応ができる。
・大電流充電もしくは並列接続使用をするFETの場合などの寄生ダイオードを使えない状況では、通常のダイオードと組み合わせることで、最小の回路変更で対応できる。
【0072】
<応用例>
本開示は、上述した電池パックが再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって充電される電力システムである。
本開示は、上述した電池パックが再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって充電される電力システムである。
本開示は、上述した電池パックから、電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、電池パックに関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。
本開示は、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部を備え、
電力情報送受信部が受信した情報に基づき、上述した電池パックの充放電制御を行う電力システムである。
本開示は、上述した電池パックから、電力の供給を受け、発電装置または電力網から電池パックに電力を供給する電力システムである。
【0073】
「応用例としての住宅における蓄電システム」
本開示を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図13を参照して説明する。例えば住宅101用の蓄電システム100においては、火力発電102a、原子力発電102b、水力発電102c等の集中型電力系統102から電力網109、情報網112、スマートメータ107、パワーハブ108等を介し、電力が蓄電装置103に供給される。これと共に、家庭内発電装置104等の独立電源から電力が蓄電装置103に供給される。蓄電装置103に供給された電力が蓄電される。蓄電装置103を使用して、住宅101で使用する電力が給電される。住宅101に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0074】
住宅101には、発電装置104、電力消費装置105、蓄電装置103、各装置を制御する制御装置110、スマートメータ107、各種情報を取得するセンサー111が設けられている。各装置は、電力網109および情報網112によって接続されている。発電装置104として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置105および/または蓄電装置103に供給される。電力消費装置105は、冷蔵庫105a、空調装置105b、テレビジョン受信機105c、風呂105d等である。さらに、電力消費装置105には、電動車両106が含まれる。電動車両106は、電気自動車106a、ハイブリッドカー106b、電気バイク106cである。
【0075】
蓄電装置103に対して、上述した本開示の電池パックが適用される。蓄電装置103は、二次電池又はキャパシタから構成されている。例えば、リチウムイオン電池によって構成されている。リチウムイオン電池は、定置型であっても、電動車両106で使用されるものでも良い。スマートメータ107は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網109は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせても良い。
【0076】
各種のセンサー111は、例えば人感センサー、照度センサー、物体検知センサー、消費電力センサー、振動センサー、接触センサー、温度センサー、赤外線センサー等である。各種センサー111により取得された情報は、制御装置110に送信される。センサー111からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置105を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置110は、住宅101に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0077】
パワーハブ108によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置110と接続される情報網112の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transceiver:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェー
スを使う方法、Bluetooth、ZigBee、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0078】
制御装置110は、外部のサーバ113と接続されている。このサーバ113は、住宅101、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ113が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表
示されても良い。
【0079】
各部を制御する制御装置110は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置103に格納されている。制御装置110は、蓄電装置103、家庭内発電装置104、電力消費装置105、各種センサー111、サーバ113と情報網112により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていても良い。
【0080】
以上のように、電力が火力102a、原子力102b、水力102c等の集中型電力系統102のみならず、家庭内発電装置104(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置103に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置104の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置103に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置103に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置103によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0081】
なお、この例では、制御装置110が蓄電装置103内に格納される例を説明したが、スマートメータ107内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0082】
「応用例としての車両における蓄電システム」
本開示を車両用の蓄電システムに適用した例について、図14を参照して説明する。図14に、本開示が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれを電池に一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0083】
このハイブリッド車両200には、エンジン201、発電機202、電力駆動力変換装置203、駆動輪204a、駆動輪204b、車輪205a、車輪205b、電池208、車両制御装置209、各種センサ210、充電口211が搭載されている。電池208に対して、上述した本開示の電池パックが適用される。
【0084】
ハイブリッド車両200は、電力駆動力変換装置203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置203の一例は、モータである。電池208の電力によって電力駆動力変換装置203が作動し、この電力駆動力変換装置203の回転力が駆動輪204a、204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ210は、車両制御装置209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどが含まれる。
【0085】
エンジン201の回転力は発電機202に伝えられ、その回転力によって発電機202により生成された電力を電池208に蓄積することが可能である。
【0086】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置203により生成された回生電力が電池208に蓄積される。
【0087】
電池208は、ハイブリッド車両の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0088】
図示しないが、二次電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置などがある。
【0089】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれを電池に一旦貯めておいた電力を用いて、モーターで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモーターの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モーターのみで走行、エンジンとモーター走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本開示は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本開示は有効に適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1、1a〜1d・・・電池
2a〜2g・・・回路部
5・・・放電スイッチ
6・・・充電スイッチ
7・・・MCU
8・・・電流検出抵抗
9・・・サーミスタ
Q1・・・放電制御FET
Q2・・・充電制御FET
D1,D2・・・寄生ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の電池と、
前記電池の充放電を制御する制御部と、
前記電池の温度を測定し、測定された温度情報を前記制御部に供給する温度検出部と、
前記電池に対する電流路に配され、前記制御部によってそれぞれ制御される放電制御用スイッチおよび充電制御用スイッチとを備え、
前記制御部は、前記温度検出部によって検出された温度が充電の制御を必要とする温度領域に含まれる場合に、放電制御用スイッチをオフにし、充電制御用スイッチをオンし、
前記放電制御用スイッチに対して並列に接続されたダイオードの順方向電圧降下を利用して前記電池に対する充電電圧を通常充電時に比して低下させる電池パック。
【請求項2】
前記放電制御用スイッチを第1のFETによって構成し、前記充電制御用スイッチを第2のFETによって構成し、
前記電池に対する充電電圧を低下させるために、前記第1のFETをオフし、前記第2のFETをオンし、前記第1のFETの寄生ダイオードの順方向電圧降下を利用する請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記放電制御用スイッチを第1のFETによって構成し、前記充電制御用スイッチを第2のFETによって構成し、
前記第2のFETと並列に第3のFETおよびダイオードの直列回路を接続し、
前記電池に対する充電電圧を低下させるために、前記第2のFETをオフすると共に、前記第3のFETをオンし、
前記第2のFETに対して並列接続されたダイオードの順方向電圧降下を利用する請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
前記放電制御用スイッチを第1のFETによって構成し、前記充電制御用スイッチを第2のFETによって構成し、
前記第2のFETと並列に第3のFETおよびダイオードの直列回路を接続し、
前記電池に対する充電電圧を低下させるために、前記第2のFETをオフすると共に、前記第3のFETをオンし、
前記第1のFETの寄生ダイオードの順方向電圧降下と、前記第2のFETに対して並列接続されたダイオードの順方向電圧降下との和の電圧を利用する請求項1に記載の電池パック。
【請求項5】
前記充電の制御を必要とする温度領域は、充電禁止の温度領域と、通常充電の温度領域との間に設定される請求項1に記載の電池パック。
【請求項6】
前記制御部がソフトウェア処理によって保護動作を制御する請求項1に記載の電池パック。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の電池パックが再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって充電される電力システム。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかに記載の電池パックから、電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、前記電池パックに関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両。
【請求項9】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部を備え、
前記電力情報送受信部が受信した情報に基づき、請求項1〜6の何れかに記載の電池パックの充放電制御を行う電力システム。
【請求項10】
請求項1〜6の何れかに記載の電池パックから、電力の供給を受け、発電装置または電力網から前記電池パックに電力を供給する電力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−227986(P2012−227986A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90576(P2011−90576)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】