説明

電池モジュール

【課題】取扱いの容易な電池モジュールを提供する。
【解決手段】単電池30が積層されて直列又は並列に接続されたセルユニット20と、導電材で形成された二枚の導電板41が絶縁材40を介して積層された積層導電板42と、を有し、積層導電板は、単電池積層方向のセルユニット外側の少なくとも一方に配置され、積層導電板の一方の導電板は、セルユニットの正極出力端子14に接続され、他方の導電板は、セルユニットの負極出力端子15に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高出力を必要とする電気自動車やハイブリット自動車の電源として、単位ユニットをなす電池モジュールを、所望の電圧や容量に合わせて直列または並列に複数接続して構成される組電池が使用されている。
【0003】
組電池の単位ユニットである電池モジュールは、電池収納容器の中に扁平型の二次電池である単電池を複数収納したものが知られている。この単電池は、正極材と負極材と電解質を積層した発電要素を可撓性を有するラミネートフィルムで覆った構成を有し、軽量で薄板状であるため、複数積層するのに適している(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2006−92884
【特許文献2】特開2004−6122
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に搭載される電池モジュールにあっては、電池モジュールの交換作業時等において、鋭利な導電性の異物が単電池を貫通することが考えられる。
【0005】
導電性の異物が、単電池を貫通し単電池内部の正極材および負極材に接すると、導電性異物に電流が流れ、単電池内部が発熱する。この結果、例えば電池モジュールに付属して配置された制御部品に熱による影響を及ぼしたり、単電池の内圧が上昇して単電池が膨張し、電池モジュールを収納しているケースが変形したりする可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、取扱いの容易な電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、単電池が積層されて直列又は並列に接続されたセルユニットと、導電材で形成された二枚の導電板が絶縁材を介して積層された積層導電板と、を有し、前記積層導電板は、単電池積層方向のセルユニット外側の少なくとも一方に配置され、積層導電板の一方の導電板は、セルユニットの正極出力端子に接続され、他方の導電板は、セルユニットの負極出力端子に接続されることを特徴とする電池モジュールである。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、導電性の異物が電池モジュールを積層方向に貫通するとき、単電池を貫通する前に積層導電板を貫通するため、単電池の電力は単電池を導電性の異物が貫通する前に消費され、単電池内部での発熱を抑えることができる。従って、取扱いの容易な電池モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、組電池の単位ユニットである電池モジュールを示す斜視図、図2は、電池モジュールの分解斜視図、図3は、充放電を行うセルユニットを示す斜視図、図4は、セルユニットの構成部品の一部である単電池を示す斜視図、図5は、図2のV‐V線に沿う概略断面図、図6は、図2のVI‐VI線に沿う概略断面図である。
【0011】
電池モジュール10は、図1、図2に示すように、外装材であるロアケース12、アッパーケース13、充放電を行うセルユニット20及びセルユニット20に接続された積層導電板42を有する。
【0012】
ロアケース12およびアッパーケース13は、互いに締結され、セルユニット20や積層導電板42等を収容し、外部からの振動や衝撃から収容物を保護する。また、収容物から伝達される熱を放散する役割も果たす。このような役割を果たすため、ロアケース12およびアッパーケース13は、例えば比較的薄肉の鋼板又はアルミ板から形成される。
【0013】
実際に充放電を行うセルユニット20は、図3に示すように、電池の最小単位をなす複数の単電池30、単電池30の電極端子を保持し単電池30の各電極端子同士を絶縁する絶縁スペーサ21、セルユニット20と外部を電気的に接続する正極出力端子14及び負極出力端子15を有する。正極出力端子14及び負極出力端子15は、ロアケース12の周壁の一部に形成した切り欠き22を通して外部に導出される。
【0014】
単電池30は、図4に示すように例えば長方形形状であり、長手方向の対向する端部から、電極端子である正極タブ31、負極タブ32が導出されている。正極タブ31、負極タブ32は、単電池30内部に収容され実際に充放電を行う電池要素に接続されている。
【0015】
このように形成された単電池30は、図5、図6に示すように、セルユニット20において、正極タブ31と負極タブ32が相対するように積層される。なお、単電池30同士は、両面テープまたは接着剤によって、相互に固定されている。
【0016】
積層方向の最も外側の一方に配置された単電池30の正極タブ31は、正極出力端子14に接続され、積層方向の最も外側のもう一方に配置された単電池30の負極タブ32は、負極出力端子15に接続される。他の正極タブ31と負極タブ32は、相対するタブ同士で溶接等により接合され、結果として複数の積層された単電池30は、直列に接続される。
【0017】
本実施形態では4つの単電池30が積層され、直列に接続されたが、単電池30の積層数および接続方法は、これに限定されるものではなく、所望の電圧若しくは容量と単電池30の電圧若しくは容量の関係により決定される。
【0018】
単電池積層方向のセルユニット外側の両方には、導電性の板状部材である導電板41を絶縁材を介して積層した積層導電板42が、配置される。
【0019】
積層導電板42の2枚の導電板41は、例えば導線や導電性の板材のような接続手段43により、正極出力端子14に接続された正極タブ31および負極出力端子15に接続された負極タブ32にそれぞれ接続される。又は、導電板41を延長して形成したタブを前述の正極タブ31および負極タブ32に接続してもよい。
【0020】
導電板41の材質は、例えば銅やアルミニウムであり、導電板41の間の絶縁材は例えば、樹脂である。
【0021】
導電板41の厚さや材質は、2枚の導電板41を重ね合わせたものの抵抗が、単電池30の内部抵抗よりも小さくなるように決定される。
【0022】
このような構成により、例えば電池モジュール10の取扱時の不注意等により、鋭利な導電性の異物が、電池モジュール10を単電池30の積層方向から貫通したとき、異物が単電池30に到達する前に、異物によって、2枚の導電板41を電気的に接続し、異物を介して電流が流れ、単電池30内の電力を消費することができる。この結果、単電池30内部での発熱が抑えられ、単電池30の熱による膨張や電池モジュール10周辺に配置された制御部品への影響を軽減することができる。
【0023】
以上のように、第1実施形態は、取扱いの容易な電池モジュールを提供することができる。
【0024】
なお、本実施形態では、積層導電板42は、単電池積層方向のセルユニット外側の両方に配置されたが、例えばロアケース12又はアッパーケース13の一方が強固な部材で形成され、導電性の異物が貫通する可能性が低い場合等にはセルユニット外側の一方に配置されたものでもよい。
【0025】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係る電池モジュール23内の収容物のVI‐VI線に沿う概略断面図である。なお、図1〜6に示す部材と共通する部材には同一符号を使用し説明は省略する。
【0026】
本実施形態に係る電池モジュール23では、図7に示すように、単電池積層方向のセルユニット外側の両方に配置された積層導電板53の導電板51,52のうち、一方の導電板51同士が、一体の板状に形成され、単電池30と単電池30の間を通るように曲げられて配置される。
【0027】
導電板51は、単電池30と単電池30の間に配置されることで放熱板として機能し、電池モジュール23が作動しているとき若しくは導電性の異物が貫通したとき、単電池30から発生する熱を放散することができる。
【0028】
以上のように、第2実施形態は、取扱いの容易な電池モジュールを提供することができる。
【0029】
図7では、一体に形成した導電板51を示したが、これとは異なり、複数枚の独立した導電板51を、単電池30と単電池30の間に配置し、各導電板51を例えば導線や導電性の板材のような接続手段により電気的に接続したものであってもよい。
【0030】
<第3実施形態>
図8は、本発明の第3実施形態に係る電池モジュール33内の収容物のV‐V線に沿う概略断面図、図9は、電池モジュール33内の収容物のVI‐VI線に沿う概略断面図である。なお、図1〜7に示す部材と共通する部材には同一符号を使用し説明は省略する。
【0031】
本実施形態に係る電池モジュール33は、図8に示すように、積層導電板63が、単電池積層方向のセルユニット外側の両方及び単電池30と単電池30の間に配置される。単電池積層方向のセルユニット外側に配置された積層導電板63の導電板61,62は、それぞれ、正極出力端子14に接続された正極タブ31および負極出力端子15に接続された負極タブ32に接続される。
【0032】
単電池30と単電池30の間に配置された複数の積層導電板63の一方の導電板61は、図9に示すように、単電池積層方向のセルユニット外側に配置され正極タブ31に接続された導電板61とくし歯状に一体に形成される。同様に、単電池30と単電池30の間に配置された複数の積層導電板63のもう一方の導電板62は、単電池積層方向のセルユニット外側に配置され負極タブに接続された導電板62とくし歯状に一体に形成される。
【0033】
このような構成とすることで、導電性の異物が、電池モジュール33を貫通したとき、積層導電板63を貫通する可能性を増やすことができる。また、単電池30と単電池30の間に備えられた積層導電板63は、ヒートシンクとしての役割を果たし、電池モジュール33が作動しているとき若しくは導電性の異物が貫通したとき、単電池30から発生する熱を放散させることができる。
【0034】
以上のように、第3実施形態は、取扱いの容易な電池モジュールを提供することができる。
【0035】
第3実施形態では、複数の導電板61,62が、くし歯状に一体に形成されるが、このような一体の形状に限定されるものではなく、各々の導電板61,62が、例えば導線や導電性の板材などの接続手段により電気的に接続されたものであってもよい。
【0036】
<第4実施形態>
図10は、本発明の第4実施形態に係る電池モジュール44の収容物のV‐V線に沿う概略断面図、図11は、電池モジュール44の収容物のVI‐VI線に沿う概略断面図、図12は、本実施形態の変形例に係る電池モジュール45の収容物のV‐V線に沿う概略断面図である。なお、図1〜9に示す部材と共通する部材には同一符号を使用し説明は省略する。
【0037】
本実施形態に係る電池モジュール44は、図10,11に示すように、各単電池30の正極タブ31及び負極タブ32が、少なくとも1つの積層導電板73の導電板71および72にそれぞれ接続され、積層導電板73は、各々、各単電池30の積層方向に隣接して配置される。
【0038】
このような構成にすることで、各積層導電板73には、1つの単電池30の電圧のみが印加される。このため、導電性の異物が電池モジュール44を貫通したとき、積層導電板73内を流れる電流は、直列接続した複数の単電池30の電圧が積層導電板73に印加される場合に比べて少ない。従って、積層導電板73での発熱を抑えることができ、ロアケース12、アッパーケース13又は電池モジュール44周辺の制御部品への熱による影響を少なくすることができる。
【0039】
以上のように、第4実施形態においても、取扱いの容易な電池モジュールを提供することができる。
【0040】
また、図12に示すように、積層導電板84は、3枚の導電板80,81,82が絶縁材83を介して積層された構成にすることもできる。
【0041】
この積層導電板84の各導電板80,81,82は、直列接続されている2つの単電池30の正極タブ31、負極タブ32及び2つの単電池30を接続している正極タブ31又は負極タブ32に接続される。
【0042】
単電池30毎に積層導電板73を接続する場合、2つの単電池30には、4枚の導電板71,72が接続される。これに対し、上述のような構成とすることで、3枚の導電板80,81,82が、2つの単電池30に接続され、使用される導電板71,72の点数を削減でき、コスト的に有利となる。
【0043】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。例えば、上述の実施形態3,4では、全ての単電池30と単電池30の間に積層導電板63,73を配置したが、単電池30と単電池30の間の少なくとも1箇所に積層導電板63,73を配置することもできる。また、実施形態4の変形例において、積層導電板84と積層導電板73の導電板71,72,80,81,82のうち、同じ電位を有する導電板71,72,80,81,82同士を一体に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る電池モジュールを示す斜視図である。
【図2】電池モジュールの分解斜視図である。
【図3】本発明に係るセルユニットを示す斜視図である。
【図4】本発明に係る単電池を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るセルユニットと積層導電板のV‐V線に沿う断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るセルユニットと積層導電板のVI‐VI線に沿う断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るセルユニットと積層導電板のVI‐VI線に沿う断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るセルユニットと積層導電板のV‐V線に沿う断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るセルユニットと積層導電板のVI‐VI線に沿う断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るセルユニットと積層導電板のV‐V線に沿う断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るセルユニットと積層導電板のVI‐VI線に沿う断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態の変形例に係るセルユニットと積層導電板のV‐V線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0045】
14 正極出力端子、
15 負極出力端子、
20 セルユニット、
30 単電池、
41,51,52,61,62,71,72,80,81,82 導電板、
42,53,63,73,84 積層導電板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単電池が積層されて直列又は並列に接続されたセルユニットと、
導電材で形成された二枚の導電板が絶縁材を介して積層された積層導電板と、を有し、
前記積層導電板は、単電池積層方向のセルユニット外側の少なくとも一方に配置され、
前記積層導電板の一方の導電板は、セルユニットの正極出力端子に接続され、他方の導電板は、セルユニットの負極出力端子に接続されることを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記積層導電板は、単電池積層方向のセルユニット外側の両方に配置され、
前記セルユニットの正極出力端子または負極出力端子のうち、どちらか一方に接続された導電板は、セルユニットの単電池の間に延在されることを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
単電池積層方向のセルユニット外側に取付けられた前記積層導電板の導電板と、前記セルユニットの単電池間に延在された導電板は、一体の板状に形成され、つづら折状に曲げられて単電池間に配置されることを特徴とする請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記積層導電板は、単電池積層方向のセルユニット外側の両方に取付けられるとともに、更に、前記セルユニットの単電池間のうちの少なくとも一箇所に配置され、
単電池積層方向のセルユニット外側に配置された前記積層導電板の二枚の導電板は、セルユニットの正極出力端子および負極出力端子に接続され、
正極出力端子に接続された導電板と単電池間に配置された積層導電板の一方の導電板は、互いに接続され、負極出力端子に接続された導電板と単電池間に配置された積層導電板の他方の導電板は、互いに接続されることを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項5】
積層されて直列又は並列に接続された複数の単電池と、
導電材で形成された二枚の導電板が絶縁材を介して積層された少なくとも1つの積層導電板と、を有し、
前記積層導電板は、二枚の導電板が、それぞれ単電池の正極出力端子または負極出力端子に接続され、当該単電池の積層方向の少なくとも一方の面に配置されることを特徴とする電池モジュール。
【請求項6】
2つの前記積層導電板が隣接して配置され、隣接する前記積層導電板の導電板のうち、同じ電位を有する導電板が、一体に形成されたことを特徴とする請求項5に記載の電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−159328(P2008−159328A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344891(P2006−344891)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】