説明

電池モジュール

【課題】電池モジュールが、複数の角型セルを積層して構成されている場合に、スペース効率を低下させることなく、積層体の内部の温度のばらつきを抑制する。
【解決手段】電池モジュール10は、n個(n≧2)のセル12と、(n+1)個の断熱材(スペーサ30、エンドプレート22)と、を交互に積層したセル群14を備えている。断熱材は、それぞれが冷媒流路を有するとともに、セル群14の積層方向の中央から両端に向かうにつれて、熱伝導性が小さくなっている。セル群14の両端に配された断熱材の、JIS A 1412により測定した熱伝導率は、0.01〜10W/mKである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関し、より具体的には、二次電池を含む電池モジュールを長寿命化するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車の駆動用電源には、多数個の電池(二次電池)を直列に、あるいは並列と直列とを組み合わせて接続した電池集合体が用いられる。この電池集合体に、使用時の安全性を確保するための安全装置等を付加して1つにまとめたものを電池モジュールと呼ぶ。
【0003】
そのような電池モジュールには、スペース効率(電池モジュールの単位体積あたりの電池容量)を上げるために、扁平な角型の電池を複数個積層したものがある。そのような電池モジュールにおいては、積層方向の両端に配された電池は最も放熱しやすく、電池の充放電時の発熱による温度上昇を抑えることが比較的容易である。これに対して、内側に積層された電池は、放熱し難く、それに隣接する電池からの熱が伝わることもあって、温度上昇を抑えることが困難である。
【0004】
以上の結果、電池モジュールの内部に温度のばらつきが生じ、一部の電池が早期に劣化することがある。一部の電池が早期に劣化すると、電池モジュールは所期の性能を維持できなくなり、全体として短寿命化してしまう。
【0005】
この点に関連して、特許文献1では、積層された各々の電池の間に冷媒通路を形成するとともに、その通路の幅を、積層方向の中央寄りの通路ほど大きくすることが提案されている。これにより、積層方向の中央に近い冷媒通路の流量を大きくすることができ、中央部の電池をよりよく冷却できる。その結果、電池温度のばらつきを抑制することができる、と主張されている。
【0006】
特許文献2では、積層された各々の電池の間に断熱スペーサを配置するとともに、中央寄りに配置される断熱スペーサの断熱性を、端部寄りに配置される断熱スペーサの断熱性よりも大きくすることが提案されている。これにより、中央部の電池が、周囲の電池の発熱により加温されることが防止されるので、電池温度のばらつきを抑制することができる、と主張されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−331932号公報
【特許文献2】特開2005−317455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1では、電池積層体の中央寄りの冷媒通路の幅をかなり大きくする必要があり、電池モジュールの体積が全体として大きくなる。電池モジュールの無用な体積の増大は、スペース効率の悪化に直結するために、スペース効率の向上が求められている現状では、実施が困難である。
【0009】
一方、特許文献2で提案されている従来技術では、各電池の間に冷媒通路が無いために、外気温度が高いときには、特に中央部の電池が高温となり、電池モジュールの短寿命化が促進されるおそれがある。また、端部に配置された断熱スペーサの断熱性が小さいために、車載の電池モジュール等では、冬期の寒冷地等で、積層方向の端部の電池の温度が低くなりすぎて、十分な電力を車両に供給し得なくなることも考えられる。
【0010】
本発明は、電池モジュールが、複数の角型セルを積層して構成されている場合に、スペース効率を低下させることなく、積層体の内部の温度のばらつきを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面は、n個(n≧4)の角型セルと、(n−1)個の第1断熱材と、を交互に積層した積層体を備える電池モジュールであって、
前記(n−1)個の第1断熱材は、それぞれが冷媒流路を有するとともに、前記積層体の積層方向の中央から両端に向かうにつれて、JIS A 1412により測定した熱伝導率が小さくなっている、電池モジュールに関する。
【0012】
本発明の他の局面は、n個(n≧4)の角型セルと、(n−1)個の第1断熱材と、を交互に積層した積層体を備える電池モジュールであって、
前記(n−1)個の第1断熱材は、同じ材料から形成され、それぞれが冷媒流路を有するとともに、前記積層体の積層方向の中央から両端に向かうにつれて、熱伝導量が小さくなるようにそれぞれの厚みが調整されている、電池モジュールに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電池モジュールによれば、電池モジュールが、複数の角型セルを積層して構成されている場合に、スペース効率を低下させることなく、積層体の内部の温度のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る電池モジュールの外観を示す斜視図である。
【図2】図1の電池モジュールの内部構造を示す斜視図である。
【図3】拘束部材を示す斜視図である。
【図4】セル群の一部分を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、n個(n≧4)の角型セルと、(n−1)個の第1断熱材、もしくはスペーサと、を交互に積層した積層体を備える電池モジュールに関する。(n−1)個の第1断熱材は、それぞれが冷媒流路を有するとともに、積層体の積層方向の中央から両端に向かうにつれて、JIS A 1412により測定した熱伝導率が小さくなっている。
【0016】
二次電池は、加温された状態で充放電を行うと、劣化が促進される。二次電池(角型セル)を積層した積層体を有する電池モジュールでは、充放電に伴う電池の発熱により、積層方向の温度分布は、中央に近づくほどに高くなりやすい。このような温度のばらつきが発生すると、高温となった一部のセルの劣化が促進されて、電池モジュールが全体として短寿命化してしまう。
【0017】
そこで、各セルの間に配される第1断熱材の冷媒流路に、好ましくは外気温度等に基づいて流量を制御しながら冷媒を流通させることで、各セルの発熱による温度上昇を抑える一方で、各第1断熱材の断熱性を、積層体の中央から両端に向かうにつれて大きくする。これにより、端部寄りの電池ほど放熱しやすく低温となる傾向があるのを抑えることが可能となり、積層体の内部の温度のばらつきを抑えることができる。
【0018】
各第1断熱材の断熱性を変えていく態様は、中央から端に向かうにつれて各第1断熱材の熱伝導率が、1つずつ徐々に小さくなる態様とすることができる。または、隣接するいくつかの(例えば3個)第1断熱材の熱伝導率の平均をとれば、中央から端に向かうにつれて、その平均値が徐々に小さくなっているようにしてもよい。または、隣接するいくつかの第1断熱材を1つのグループとするように、全ての第1断熱材をグループ分けして、各グループの熱伝導率の平均値が、中央から端に向かうにつれて徐々に小さくなるようにしてもよい。
【0019】
ここで、積層体の両端に配された第1断熱材のJIS A 1412により測定した熱伝導率の好ましい範囲は、0.01〜10W/mKである。より好ましい熱伝導率の範囲は、0.2〜2W/mKである。ここで、熱伝導率は、常温(25℃)の環境下で測定した値である。
【0020】
本発明の一形態に係る電池モジュールにおいては、積層体の積層方向の両端の外側に、さらに一対の第2断熱材が配置されている。第2断熱材の熱伝導量は、積層体の両端に配された第1断熱材の熱伝導量よりも小さい。
【0021】
積層体の両端に配されたセルは、外気により冷却されやすい。このため、寒冷地等では、両端のセルの温度が低くなりすぎて、十分な電力を供給できなくなることもある。そこで、積層体の両端のさらに外側に、熱伝導量の小さい、つまり断熱性の大きい第2断熱材を配して、積層体の両端面を介した熱の出入りを抑制する。これにより、積層体の両端に配されたセルが過度に冷却されることが防止される。また、積層体の両端に配されたセルの積層体の両端面を介した放熱を抑えることで、積層体の両端に配されたセルと、積層体の中央に配されたセルとの温度差が大きくなるのを防止することができる。
【0022】
本発明の他の形態に係る電池モジュールは、n個(n≧4)の角型セルのうち、積層体の中央の角型セルの放熱係数K1と、積層体の両端に配された角型セルの放熱係数K2との比:X(=K1/K2)と、(n−1)個の第1断熱材のうち、積層体の中央に配された第1断熱材の熱伝導率κ1と、積層体の両端に配された第1断熱材の熱伝導率κ2との比:Y(=κ1/κ2)とが、
0.8≦X/Y≦1.2 (1)
の関係を満たしている。
【0023】
ここで、放熱係数Kは、以下のようにして求めることができる。
複数個の角型セルと、同一の熱伝導率を有する断熱材とで構成された電池モジュールを加温した後、所定温度(Ta)の環境下に設置し、かつ所定流量の空気を冷媒通路に流して冷却を行ったときの時間に対する各電池の温度(Tb)の変化率(dTb/dt)を測定する。また、電池の熱容量(Mb)を測定する。このとき下記式(2)が成り立つ。
(dTb/dt)=K(Tb−Ta)/Mb (2)
【0024】
上記式(2)を時間tで積分すると、Tb=Ta+A・exp((−K/Mb)t)となり(Aは積分定数)、これより下記式(3)が導かれる。
Ln(Tb−Ta)=Ln(A)−(K/Mb)t (3)
【0025】
そして、電池温度の変化を測定し、縦軸にLn(Tb−Ta)をとり、横軸に時間tをとったグラフにプロットすると、そのグラフの傾きαから、放熱係数Kを下記式(4)により求めることができる。
K=α・Mb (4)
【0026】
上記不等式(1)の関係を満たすように、各第1断熱材の熱伝導率を調整することによって、積層体の内部の温度のばらつきを効果的に抑えることができる。
【0027】
ここで、積層体の中央のセルとは、セルの個数が奇数であれば中央の1つのセルである。セルの個数が偶数であれば中央付近の2つのセルである。ここでいう放熱係数とは、当該セルと冷媒との間でやりとりされる単位時間あたりの熱量である。積層体の中央に配された第1断熱材とは、セルの個数が偶数であれば中央の1つの第1断熱材である。セルの個数が奇数であれば中央付近の2つの第1断熱材である。
【0028】
ここで、一対の第2断熱材は、それぞれ、複数の部材から構成することができる。電池モジュールは、積層体の両端の外側に、積層体を拘束するためのエンドプレートを備えるものが多い。また、セル間に配される断熱材は、各セルを互いに絶縁する絶縁スペーサとして配置される場合が多い。したがって、積層体の両端には、エンドプレートとスペーサとがともに配置される場合がある。例えばこのような場合には、エンドプレートとスペーサとが第2断熱材である。エンドプレートが単独で積層体の両端に配される場合は、エンドプレートだけが第2断熱材である。
【0029】
本発明のさらに他の形態に係る電池モジュールは、第1断熱材は、樹脂と、銅、アルミニウム、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭素よりなる群から選択される少なくとも1種を含むフィラーと、を含んでおり、その熱伝導率がフィラーの含有量により調整されている。樹脂には、GF−PET(ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PPS(ポリフェニリンサルファイド)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PA(ポリアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ABS(アクリルニトリルブタンエチレン-スチレン)等を使用することができる。
【0030】
この構成によれば、第1断熱材の材料に含ませるフィラーの含有量を調整するだけで、各第1断熱材の断熱性を調整することができる。よって、全ての第1断熱材を同じ厚みにすることができるので、スペース効率を向上させることができる。ここで、フィラーの体積含有率を、10〜80%の範囲で調整することにより、第1断熱材の断熱性を広い範囲で調整することが可能である。
【0031】
本発明のさらに他の形態に係る電池モジュールは、第1断熱材は、発泡樹脂を含んでおり、その熱伝導率が発泡樹脂の発泡倍率により調整される。発泡樹脂とは、発泡剤等により発泡させた樹脂であり、フィラー等を含む組成物であってもよい。樹脂には、GF−PET、PC、PPS、PP、PE、PA、PBT、ABS等を使用することができる。
【0032】
この構成によれば、第1断熱材の材料である発泡樹脂の発泡倍率を調整するだけで、各第1断熱材の断熱性を調整することができる。よって、全ての第1断熱材を同じ厚みにすることができるので、スペース効率を向上させることができる。
【0033】
本発明のさらに他の形態に係る電池モジュールにおいては、(n−1)個の第1断熱材は、同じ材料から形成され、それぞれが冷媒流路を有するとともに、積層体の積層方向の中央から両端に向かうにつれて、熱伝導量が小さくなるようにそれぞれの厚みが調整されている。
【0034】
この構成によれば、同じ材料から作製される第1断熱材の厚みを変えるだけで、各第1断熱材の断熱性を調整することができる。よって、材料の調達コストを低減することができ、コストダウンが可能となる。しかも、特許文献1で冷媒通路の幅を変えている場合と比べて小さい厚みの変化で断熱性を変えることができる。よって、スペース効率の低下を特許文献1よりも抑えることができる。この場合の第1断熱材の材料は、GF−PET、PC、PPS、PP、PE、PA、PBT、ABS等が考えられる。この場合にも、第2断熱材の熱伝導量は、積層体の両端に配された第1断熱材の熱伝導量よりも小さくするのが好ましい。
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
(実施形態1)
図1に、本発明の一実施形態に係る電池モジュールの外観を斜視図により示す。図2に、図1の電池モジュールの内部構造を斜視図により示す。
電池モジュール10は、所定数(図示例では10個)の扁平角型のセル(二次電池)12を、その厚み方向に1列に積層したセル群14を含む。セル群14の積層方向の両端の外側には、それぞれ、エンドプレート22が配置されている。
【0036】
一対のエンドプレート22は、それぞれ、略長方形の形状を有しており、セル群14を間に保持するように、棒状の4本の拘束部材24により四隅が互いに拘束されている。エンドプレート22の一対の長辺は、セル12の上下方向(後述の封口板36と、ケース34の底面とを臨む方向)と平行である。エンドプレート22の一対の短辺は、セル12の幅方向(セル12の厚み方向及び上下方向に垂直な方向)と平行である。
【0037】
さらに、一対のエンドプレート22は一対の長辺のそれぞれの中央部で棒状の連結部材26により連結されている。セル群14の、セル12の上下方向の端部は、カバー板46及び48によりそれぞれ覆われている。
【0038】
拘束部材24の素材には、例えば、GF−PETやPCのような、軽量かつ高強度のエンジニアリングプラスチックを使用するのが好ましい。連結部材26には、例えば、アルマイト加工したアルミニウムを使用することができる。
【0039】
図3に拘束部材の詳細を示す。拘束部材24は、軸方向に等ピッチで並ぶ、10個のセル係合部24aを有している。4本の拘束部材24の各セル係合部24aに、10個のセル12の四隅がそれぞれ係合することにより、10個のセル12が4本の拘束部材24により、一対のエンドプレート22の間で保持される。
【0040】
図4に、セル群の一部分を斜視図により示す。図4は、セル群14から、隣り合う2つのセル12を取り出したものである。
セル群14において、隣り合う2つのセル12の間には、セル12を互いに絶縁するためのスペーサ30が配置されている。
【0041】
セル12は、図示しない、正極、負極、およびこれらの間に介在させたセパレータで構成される発電要素を金属製の電池ケースに収納した二次電池である。このような二次電池としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池が挙げられる。ニッケル水素電池の場合、正極にオキシ水酸化ニッケル、負極に水素吸蔵合金、電解液に水酸化カリウム水溶液が用いられる。リチウムイオン電池の場合、正極にコバルト酸リチウム、負極に黒鉛などの炭素材料が用いられる。
【0042】
より具体的には、セル12は、一端部に開口を有する、有底角型のケース34と、その開口を封口する封口板36とを備えている。ケース34及び封口板36は、金属(例えば、アルミニウム)から形成されており、互いに導通されている。ケース34は発電要素の正極と接続されており、封口板36が、ケース34とともにセル12の正極端子として機能する。
【0043】
封口板36の表面には、負極と接続された負極端子38、注液口40及び薄肉部からなる防爆弁42が設けられている。封口板36と、負極端子38とは絶縁されている。
【0044】
セル12の容量は、3Ah〜100Ahとすることができる。より好適なセル12の容量の範囲は、5Ah〜30Ahであり、本発明は、そのような大型の二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)に好適に適用することができる。
【0045】
セル群14において、隣り合う2つのセル12は、負極端子38の設けられた封口板36が同じ方を向くように積層されている。そして、隣り合う2つのセル12のうち、一方のセル12の正極端子(封口板36)が、導体からなる接続板44により、他方のセル12の負極端子38と接続されており、これにより、セル群14の全てのセル12が直列に接続されている。
【0046】
セル群14において、セル12の積層方向の一端部のセル12は、負極端子38が負極外部端子52と接続され、他端部のセル12は、正極端子(封口板36)が正極外部端子54と接続されている。
【0047】
次に、スペーサ30を説明する。スペーサ30は、薄板状であり、その少なくとも一部に、波板状部32を有している。波板状部32は、セル12を冷却するための冷媒(例えば、空気)を流通させる、複数の平行な溝状の冷媒流路を有している。冷媒流路は、スペーサ30の両面に同じピッチで、かつ各面の間で位置が半ピッチだけずれるように形成されている。セル12は、溝状の冷媒流路と接しており、冷媒流路を流れる冷媒によって冷却される。このように、スペーサ30は、セル12を冷却する冷却装置を含んでいる。
【0048】
冷媒は、気体ポンプやファン等により冷媒流路に送ることができる。このとき、各セル12を適切に冷却し得るように、外気温度、及び電池モジュールに接続された負荷機器(例えば、電気自動車)の消費電力に基づいて、冷媒の流量を制御装置により制御するのが好ましい。そのような制御装置は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、MPU(Micro Processing Unit:マイクロプロセッサ)及びメモリから構成することができる。
【0049】
または、電池モジュール10を車両等に搭載する場合には、走行車両に掛かる風圧を利用して、冷媒を冷媒流路に送ってもよい。または、自然対流により、冷媒を冷媒流路に送ることもできる。
【0050】
さらに、電池モジュール10において、スペーサ30は、セル群14内部の温度のばらつきを抑制するように、各セル12間の熱の移動を調節する熱移動調節機能を有している。より具体的には、各スペーサ30は、セル群14におけるセル12の積層方向の中央から両端に向かうにつれて、伝熱性が徐々に小さく(断熱性が徐々に大きく)なっている。以下、この点を詳細に説明する。
【0051】
なお、スペーサ30は、図1及び図2に示すように、セル群14の積層方向の両端のセル12のさらに外側に配置することもできる。以下、各セル12の間に配置されるスペーサ30を、両端のセル12のさらに外側に配置されるスペーサ30と対比して、セル間スペーサ(第1断熱材)という。両端のセル12のさらに外側に配置されるスペーサ30は、外縁スペーサという。
【0052】
ここで、セル群14の中央に配置されたセル間スペーサ(セル12の個数が偶数であれば中央の1枚のスペーサ30であり、セル12の個数が奇数であれば中央付近の2枚のスペーサ30である。)の熱伝導率κ1(単位:W/m・K)と、セル群14の両端に最も近いセル間スペーサの熱伝導率κ2との比:Y(=κ1/κ2)を考える。
【0053】
また、セル群14の中央部に配置されたセル12(セル12の個数が奇数であれば中央の1つのセル12であり、セル12の個数が偶数であれば中央付近の2つのセル12である。)の放熱係数K1(単位:W/K)と、セル群14の両端のセル12の放熱係数K2との比:X(=K1/K2)を考える。
【0054】
電池モジュール10においては、上述したように、各セル間スペーサが、セル群14の積層方向の中央から両端に向かうにつれて、断熱性が大きくなっている。このとき、下記不等式(1)を満たすように各セル間スペーサの熱伝導率を調整することで、セル群14内部の温度のばらつきを効果的に抑制することができる。
0.8≦X/Y≦1.2 (1)
このとき、セル群14の両端のセル間スペーサのJIS A 1412により測定した熱伝導率は、0.01〜10W/mKとするのが好ましい。より好ましい熱伝導率は、0.2〜2W/mKである。
【0055】
さらに、セル群14の両端に配置される断熱材(以下、端部断熱材という)の断熱性を考える。端部断熱材(第2断熱材)は、外縁スペーサがある場合には、その外縁スペーサとエンドプレート22とを含む。外縁スペーサがない場合には、端部断熱材は、エンドプレート22だけを含む。端部断熱材がエンドプレート22だけを含む場合には、エンドプレート22は絶縁部材から形成する必要がある。また、エンドプレート22のセル群14と対向する面には、セル12を冷却する冷媒を流通させるための冷媒流路を設けるのが好ましい。
【0056】
そして、端部断熱材の熱伝導量は、セル群14の両端のセル間スペーサの熱伝導量よりも小さくするのが好ましい。このように、端部断熱材の断熱性を大きくすることにより、例え寒冷地であっても、両端部のセル12が低温になりすぎて、十分な電力が得られなくなるのを防止することができる。また、セル群14の両端に配されるセル12の、セル群14の両端面を介した放熱が抑えられるので、セル群14の両端に配されるセル12と、セル群14の中央に配されるセル12との間に大きな温度差が発生するのを防止することができる。よって、セル群14の内部の温度のばらつきを抑えることができる。
【0057】
スペーサ30の材料には、例えば、GF−PET、PC、PPS、PP、PE、PA、PBT、ABS等の樹脂と、銅、アルミニウム、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、及び炭素等から構成されるフィラーとの混合物を使用することができる。フィラーの含有量を調整することにより、スペーサ30(セル間スペーサ)の熱伝導率を調整することができる。ここで、フィラーの含有量は、10〜80%の範囲で調整することが可能である。
【0058】
セル間スペーサの熱伝導率は、スペーサ30を発泡樹脂から形成するとともに、その発泡倍率を調整することによって、調整することもできる。この構成によれば、材料の発泡樹脂の発泡倍率を調整するだけで、各スペーサの熱伝導率を断熱材の断熱性を調整することができる。
よって、スペーサの厚みを変える必要がないので、スペース効率を向上させることができる。
【0059】
なお、セル間スペーサを全て同じ材料から形成し、セル群14の積層方向の中央から両端に向かうにつれて、熱伝導量が小さくなるようにそれぞれの厚みを調整することによっても、各セル間の温度のばらつきを抑えることは可能である。この構成によれば、同じ材料から作製されるスペーサの厚みを変えるだけで、各スペーサの熱伝導量を調整することができる。よって、材料の調達コストを低減することができ、コストダウンが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の電源装置は、電気自動車、ハイブリッド自動車用電源などの大容量かつ高出力用途として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0061】
10…電池モジュール、
12…セル、
14…セル群、
34…電池ケース
36…封口板、
38…負極端子、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n個(n≧4)の角型セルと、(n−1)個の第1断熱材と、を交互に積層した積層体を備える電池モジュールであって、
前記(n−1)個の第1断熱材は、それぞれが冷媒流路を有するとともに、前記積層体の積層方向の中央から両端に向かうにつれて、JIS A 1412により測定した熱伝導率が小さくなっている、電池モジュール。
【請求項2】
積層体の両端に配された第1断熱材のJIS A 1412により測定した熱伝導率が、0.01〜10W/mKである、請求項1記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記積層体の積層方向の両端の外側に、さらに一対の第2断熱材が配置されており、
前記第2断熱材の熱伝導量が、積層体の両端に配された第1断熱材の熱伝導量よりも小さい、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記n個(n≧4)の角型セルのうち、前記積層体の中央の角型セルの放熱係数と、前記積層体の両端に配された角型セルの放熱係数との比:Xと、
前記(n−1)個の第1断熱材のうち、前記積層体の中央に配された第1断熱材の熱伝導率と、前記積層体の両端に配された第1断熱材の熱伝導率との比:Yとが、
0.8≦X/Y≦1.2
の関係を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記一対の第2断熱材が、それぞれ、複数の部材から構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記第1断熱材は、樹脂と、銅、アルミニウム、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭素よりなる群から選択される少なくとも1種を含むフィラーと、を含んでおり、その熱伝導率がフィラーの含有量により調整されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記第1断熱材の前記フィラーの体積含有率が、10〜80%である、請求項6記載の電池モジュール。
【請求項8】
前記第1断熱材は、発泡樹脂を含んでおり、その熱伝導率が前記発泡樹脂の発泡倍率により調整されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項9】
前記第1断熱材は、積層方向の厚みが全て同じである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項10】
n個(n≧4)の角型セルと、(n−1)個の第1断熱材と、を交互に積層した積層体を備える電池モジュールであって、
前記(n−1)個の第1断熱材は、同じ材料から形成され、それぞれが冷媒流路を有するとともに、前記積層体の積層方向の中央から両端に向かうにつれて、熱伝導量が小さくなるようにそれぞれの厚みが調整されている、電池モジュール。
【請求項11】
前記積層体の積層方向の両端の外側に、さらに一対の第2断熱材が配置されており、
前記第2断熱材の熱伝導量が、積層体の両端に配された第1断熱材の熱伝導量よりも小さい、請求項10記載の電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−14938(P2012−14938A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149871(P2010−149871)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発 要素技術開発 高耐久形高容量・高出力リチウム二次電池の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】