説明

電池用包装材料

【課題】 外装体として高度の防湿性を発現できるための電池用包装材料を提供する。
【解決手段】 電池本体を挿入し周縁部をヒートシールにより密封する電池の外装体を形成する包装材料が、少なくとも基材層、バリア層、化成処理層、接着層、シーラント層から構成される積層体であって、接着層に水分と反応する官能基を有する成分を含むことを特徴とする電池用包装材料であって、接着層は、ドライラミネート法、押出ラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出ラミネート法のいずれかの方法を用いて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防湿性、耐内容物性を有する、液体または固体有機電解質(高分子ポリマー電解質)を持つ電池、または燃料電池、コンデンサ、キャパシタ等の外装体に用いられるもので、特にその材質が高防湿包装となる電池用包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明における電池とは、化学的エネルギーを電気的エネルギーに変換する素子を含むもの、例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、燃料電池等や、または、液体、固体セラミック、有機物等の誘電体を含む液体コンデンサ、固体コンデンサ、二重層コンデンサ等の電解型コンデンサを示す。電池の用途としては、パソコン、携帯端末装置(携帯電話、PDA等)、ビデオカメラ、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星等に用いられる。前記電池の外装体としては、金属をプレス加工して円筒状または直方体状に容器化した金属製缶、あるいは、プラスチックフィルム、金属箔等のラミネートにより得られる複合フィルムからなる積層体を袋状にしたもの(以下、外装体)が用いられていた。電池の外装体として、次のような問題があった。金属製缶においては、容器外壁がリジッドであるため、電池自体の形状が決められてしまう。そのため、ハード側を電池に合せる設計をするため、該電池を用いるハードの寸法が電池により決定されてしまい形状の自由度が少なくなる。そのため、前記袋状の外装体を用いる傾向にある。前記外装体の材質構成は、電池としての必要な物性、加工性、経済性等から、少なくとも基材層、バリア層、シーラント層と前記各層を接着する接着層からなる。電池の前記構成の積層体からパウチを形成し、または、少なくとも片面をプレス成形して電池の収納部を形成して電池本体を収納し、パウチタイプまたは、エンボスタイプ(蓋体を被覆して)において、それぞれの周縁の必要部分をヒートシールにより密封することによって電池とする。前記シーラント層としては、シーラント層同士のヒートシール性とともにリード線(金属)に対してもヒートシール性を有することが求められ、金属接着性を有する酸変性ポリオレフィン樹脂をヒートシール層とすることでリード線部との密着性は確保される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電池の外装体は電池本体を保護するものであるが、特に電池本体は水分の浸入によりその機能を低下させるため、外装体は高度の防湿性が望まれる。外装体を形成する積層体構成において、バリア層として相応の厚みを有するアルミニウム箔等が用いられ、積層体としては、透湿度がゼロに等しい材料が提供されている。しかし、図12(a)および図12(b)に示すように、外装体5に電池本体2を収納し、その周縁をヒートシール等によりヒートシール部を形成して密封した包装体において、外装体5は高度の防湿性が要求されるが、外装体5の内部に水分が浸入することがある。水分の浸入経路としては、バリア層にピンホールが存在して、そのピンホールから水分が浸入する場合(W2)がある。この対策としては、前述の通り電池用包装材料のバリア層として厚みが20μm以上のアルミニウム箔が用いられる。また、包装後の振動等による折り曲げによりバリア層が傷つき、貫通孔等の発生により、該貫通孔部からの水分の浸入(W3)も考えられる。この対策として、電池用包装材料としては、基材層11として、2軸延伸ポリエステルフィルムあるいは2軸延伸ポリアミドフィルム等を用いている。また、前記接着層、シーラント層からなるシール部(13+14)の断面から外装体5の内部に水分が浸入(W1)することによって電池機能の低下、具体的には、サイクル性能の低下、ガス発生等による電池の信頼性を損なうことがある。従来の技術による電池用包装材料として、バリア層とシーラント層とをドライラミネート用接着剤で積層した電池用包装材料(A)と酸変性ポリオレフィンなどの接着樹脂を用いサンドイッチラミネート法で積層した電池用包装材料(B)との水分の浸入量を比較するとドライラミネート用接着剤で積層した電池用包装材料(A)の方が水分の浸入量は多くなり電池性能の低下が早い。例えば次の構成で比較すると
(A)ドライラミネート用接着剤で積層した電池用包装材料
ONy(厚み25μm)/DL1/ALM(40μm)/DL2(3μm)/PE(30μm)
(B)酸変性ポリオレフィンなどの接着樹脂を用いサンドイッチラミネート法で積層した電池用包装材料
ONy(厚み25μm)/DL1/ALM(40μm)/PEa(15μm)/PE(30μm)
[略号 ONy:2軸延伸ナイロンフィルム、DL:ドライラミネート接着剤、ALM:アルミニウム箔、PEa:酸変性ポリエチレン、PE:ポリエチレン、()内は層の厚さを示す。 なお、ドライラミネート接着剤は、DL1、DL2ともにポリオール成分とイソシアネート系成分からなり、DL2はポリオール成分の活性水酸基に対しイソシアネート系成分のイソシアネート基量が等量である。]
得られた電池用包装材料(A)と電池用包装材料(B)を用いて形成した外装体に電池本体を収納して密封した包装体を60℃、90%RHの条件に1440時間(2ケ月)保持した後、前記シール部(13+14)の断面から外装体内部に浸入した水分増加率は、
(A)4800ppm
(B)200ppm
であった。
通常のドライラミネート接着剤を用いてバリア層であるアルミニウムとポリオレフィン樹脂からなるシーラント層とをラミネートした積層体は、ドライラミネート用接着剤から水分を透過し易く、酸変性ポリオレフィンなどの接着樹脂を接着層として用いてポリオレフィンまたは酸変性ポリオレフィンをシーラント層とした積層体は、水分を透過し難くするが十分ではない。水分透過対策としてシーラント層14または接着層13を形成する樹脂にシリカゲルあるいは塩化カルシウム等の無機物質からなる吸湿物質を添加することも考えられるが、この方法では、電池用包装材料としては、前記シール部(13+14)において、シーラントに添加された吸湿物質が端面から浸入する水分を一旦は捕捉するが、長期間経過すると、捕捉した水分は、再び離脱して電池本体が収納された外装体の内部に浸入する。そこで、電池用包装材料の端面から浸入する水分が、外装体5の内部に浸入しない電池用包装材料が求められていた。
本発明の目的は、外装体として高度の防湿性を発現できるための電池用包装材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は、以下の本発明により解決することができる。すなわち、請求項1に記載した発明は、電池本体を挿入し周縁部をヒートシールにより密封する電池の外装体を形成する包装材料が、少なくとも、基材層、バリア層、化成処理層、接着層、シーラント層から構成される積層体であって、接着層に水分反応官能基を有する成分を含むことを特徴とする電池用包装材料からなる。請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の水分反応官能基が、イソシアネート基であることを特徴とするものである。請求項3に記載した発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の接着層を赤外吸収分光法で赤外吸収測定した時に、2270cm-1に吸収ピークが存在することを特徴とするものである。請求項4に記載した発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の官能基であるイソシアネート基を含むイソシアネート系成分とポリオール成分とからなる反応系において、イソシアネート系成分のイソシアネート基量がポリオール成分の活性水酸基量の1.2から3.0倍となる割合としたことを特徴とするものである。請求項5に記載した発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の接着層がドライラミネート法による接着剤層であることを特徴とするものである。請求項6に記載した発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の接着層が接着層が押出しラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出ラミネート法のいずれかによるアンカーコート剤層であることを特徴とするものである。請求項7に記載した発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の接着層がサンドイッチラミネート法または共押出ラミネート法による接着樹脂層であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は電池の外装体を構成する電池用包装材料のバリア層よりも内容物側に積層される層に水分反応官能基を有する成分を含ませることによって、外装体の端部から接着層あるいはシーラント層を通して浸入する水分を前記官能基と反応させて固定化し、電池の外装体の内部までの浸入を阻止することを可能とした。その結果、電池性能を、長期に亘って良好な状態に維持できる効果を奏するものである。また、外装体のバリア層(アルミニウム)の表面に施した化成処理によって、エンボス成形時、およびヒートシール時の基材層とアルミニウムとの間でのデラミネーションの発生を防止することができる。また、シーラント層を、ドライラミネート法、押出ラミネート法、サンドイッチラミネート法または共押出ラミネート法により形成した場合に、積層体の形成時の加熱、または積層体形成後の加熱によって、電池の電解質と水分との反応により発生するフッ化水素によるアルミニウム面の腐食を防止できることにより、アルミニウムとの内容物側の層とのデラミネーションをも防止できる電池用包装材料となった。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の電池用包装材料の実施例を説明する層構成を示す積層断面図である。
【図2】本発明の電池用包装材料における本発明の効果を説明する概念図で、(a)は、電池のシール部を含む部分断面図、(b)は、Y1部の拡大図である。
【図3】電池のパウチタイプの外装体を説明する斜視図である。
【図4】電池のエンボスタイプの外装体を説明する斜視図である。
【図5】エンボスタイプにおける成形を説明する、(a)斜視図、(b)エンボス成形された外装体本体、(c)X2−X2部断面図、(d)Y2部拡大図である。
【図6】本発明の電池用包装材料を製造するドライラミネート装置を説明する概念図である。
【図7】本発明の電池用包装材料を製造する押出ラミネート装置を説明する概念図である。
【図8】本発明の電池用包装材料を製造するサンドイッチラミネート装置を説明する概念図である。
【図9】本発明の電池用包装材料を製造する共押出ラミネート装置を説明する概念図である。
【図10】本発明の電池用包装材料を製造するアンカーコートタイプサンドイッチラミネート装置を説明する概念図である。
【図11】本発明の電池用包装材料を製造するアンカーコートタイプ共押出ラミネート装置を説明する概念図である。
【図12】包装された電池内部への水分の浸入を説明する(a)は概念図、(b)はY3部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の電池用包装材料は、電池本体を挿入し周縁部をヒートシールにより密封する電池の外装体を形成する包装材料が、少なくとも基材層、バリア層、化成処理層、接着層、シーラント層から構成される積層体であって、少なくとも接着層に水分反応官能基を有する成分を添加することによって電池の外装体から浸入する水分を捕捉反応させることによって外装体の内部への水分の浸入を防止し、その結果、電池の劣化を防止して、電池の性能を長期に維持可能とする効果を示すものである。
【0008】
図1は、本発明の電池用包装材料の実施例を説明する層構成を示す積層断面図である。図2は、本発明の電池用包装材料における本発明の効果を説明する概念図で、(a)は、電池のシール部を含む部分断面図、(b)は、Y1部の拡大図である。図3は、電池のパウチタイプの外装体を説明する斜視図である。図4は、電池のエンボスタイプの外装体を説明する斜視図である。図5は、エンボスタイプにおける成形を説明する、(a)は、斜視図、(b)は、エンボス成形された外装体本体、(c)は、X2−X2部断面図、(d)は、Y2部拡大図である。図6は、本発明の電池用包装材料を製造するドライラミネート装置を説明する概念図である。図7は、本発明の電池用包装材料を製造する押出ラミネート装置を説明する概念図である。図8は、本発明の電池用包装材料を製造するサンドイッチラミネート装置を説明する概念図である。図9は、本発明の電池用包装材料を製造する共押出ラミネート装置を説明する概念図である。図10は、本発明の電池用包装材料を製造するアンカーコートタイプサンドイッチラミネート装置を説明する概念図である。図11は、本発明の電池用包装材料を製造するアンカーコートタイプ共押出ラミネート装置を説明する概念図である。図12は、包装された電池内部への水分の浸入を説明する(a)は、概念図、(b)は、Y3部拡大図である。
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために、種々研究の結果、電池本体を挿入し周縁部をヒートシールにより密封する電池の外装体を形成する包装材料が、図1に示すように、基材層11、バリア層12、化成処理層15、接着層13、シーラント層14から構成される積層体10であって、少なくとも接着層13に水分反応官能基を有する成分を含有させることによって課題を解決することができることを見出して本発明を完成するに到った。
【0010】
前記水分反応官能基を有する成分としては、活性シラン基を有するポリマー、イソシアネート系成分等が挙げられるが、特にイソシアネート系成分が好ましい。ここでイソシアネート系成分とは、結合末端に少なくともイソシアネート基(−NCO)を持つものを示す。
【0011】
前記水分と反応するイソシアネート系成分としては、以下の1から4を用いることができる。
1.ジイソシアネートモノマーとしては、
トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等である。
2.ジイソシアネートモノマーの高分子量体であるポリイソシアネートとしては、
TDIのトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体やTDIのイソシアヌレート体などのTDIベースのポリイソシアネート、MDIのイソシアヌレート体やMDIのビウレット体などのMDIベースのポリイソシアネート、HDIのビウレット体、HDIのアダクト体、HDIのイソシアヌレート体、HDIのウレトジオン等のHDIベースのポリイソシアネート、TDIとHDIとのコポリマー、IPDIのイソシアヌレート体であるIPDIベースのポリイソシアネート等である。
3.これらのブロックイソシアネートとしては、
ε−カプロラクタム,ブタノンオキシムやフェノールでイソシアネート基をブロックし、温度上昇でブロック剤が解離し、再生されたイソシアネート基が水と反応するブロックイソシアネートである。
4.前記1,2,3のブレンド物である。
【0012】
本発明の電池用包装材料において、接着層に含有させるイソシアネート系成分のイソシアネート基は、包材を透過してくる水分(湿気)と反応し、ポリウレアまたはポリウレタンを生成することで水分を捕捉する。接着層がポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオールなどのポリオール成分とイソシアネート系成分とのウレタン結合を利用し、バリア層の化成処理層とシーラント層とを接着する場合、本発明では、バリア層の化成処理層とシーラント層との接着に寄与するイソシアネート系成分と、水分を反応捕捉するイソシアネート系成分が必要となるため、通常主剤のポリオール成分中の活性水酸基材と等量のイソシアネート基では十分な水分捕捉ができないため、ポリオール成分中の活性水酸基の1.2〜3.0倍のイソシアネート基に相当するイソシアネート系成分を添加する必要がある。この時、前記イソシアネート系成分のイソシアネート基の添加量が1.2倍未満の場合、捕捉可能な水分量が少なく、十分な防湿効果が得られず、また、前記イソシアネート基の添加量が3.0倍を超えると接着層のなかの尿素結合が多くなり、接着層が硬く脆くなり、接着層の厚さが3μm以上になった時、十分な接着強度を得ることができなくなる。
【0013】
本発明の電池用包装材料を用いて形成した外装体においては、図2(a)および図2(b)に示すように、外装体の端縁部に露出する接着層13、シーラント層14の断面から浸入する水分Wを捕捉し、捕捉された水分Wは、接着層13に尿素結合として反応して固定するため、電池本体2が収納されている外装体の内部には水分が浸入しない。
【0014】
本発明の電池用包装材料における接着層に、イソシアネート系成分を含有させ、次のような各種のラミネート方法によって形成することができる。
【0015】
水分反応官能基を含む成分を含む接着層は、ドライラミネート法による接着剤を水分反応官能基を含む成分から形成することができる。本発明を用いてバリア層の化成処理層とシーラント層とをドライラミネート法により貼り合せる方法においては接着層を形成させる接着剤を、前記水分と反応する水分反応官能基を含むイソシアネート系成分とポリオール成分とで構成することができる。
【0016】
前記イソシアネート系成分としては、以下の1から4を用いることができる。
1.ジイソシアネートモノマーとしては、
トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等である。
2.ジイソシアネートモノマーの高分子量体であるポリイソシアネートとしては、
TDIのトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体やTDIのイソシアヌレート体などのTDIベースのポリイソシアネート、MDIのイソシアヌレート体やMDIのオリゴマーとから合成されるMDIベースのポリイソシアネート、HDIのビウレット体、HDIのアダクト体、HDIのイソシアヌレート体、HDIのウレトジオン等のHDIベースのポリイソシアネート、TDIとHDIとのコポリマー、IPDIのイソシアヌレート体であるIPDIベースのポリイソシアネート等である。
3.これらのブロックイソシアネートとしては
ε−カプロラクタム,ブタノンオキシムやフェノールでイソシアネート基をブロックし、温度上昇でブロック剤が解離し、再生されたイソシアネート基が水と反応するブロックイソシアネートである。
4.前記1,2,3のブレンド物である。
また、接着層がポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオールなどのポリオール成分とイソシアネート系成分とのウレタン結合を利用し、バリア層の化成処理層とシーラント層とを接着する場合、本発明では、バリア層の化成処理層とシーラント層との接着に寄与するイソシアネート系成分と、水分を反応捕捉するイソシアネート系成分が必要となるため、通常主剤のポリオール成分中の活性水酸基材と等量のイソシアネート基では十分な水分捕捉ができないため、ポリオール成分中の活性水酸基の1.2〜3.0倍のイソシアネート基に相当するイソシアネート系成分を添加する必要がある。この時、前記イソシアネート系成分のイソシアネート基の添加量が1.2倍未満の場合、捕捉可能な水分量が少なく、十分な防湿効果が得られず、また、前記イソシアネート基の添加量が3.0倍を超えると接着層のなかの尿素結合が多くなり、接着層が硬く脆くなり、接着層の厚さが3μm以上になった時、十分な接着強度を得ることができなくなる。
【0017】
本発明の電池用包装材料の接着層をドライラミネート法により形成する際のラミネート方法は、図6に示すような装置を用い、基材層とバリア層とを貼り合わせ、バリア層のシーラント層とのラミネート面に化成処理層を設けた中間積層体10Kの化成処理層の面にロールコート等により水分反応官能基を有する成分からなる接着剤13dを塗布し、乾燥ゾーン32にて、溶媒を除去した後、接着層の面にシーラント層14となるフィルムを貼り合わせ圧着ロールにて加圧接着させて積層体10dとして巻き取る。
【0018】
水分反応官能基を含む接着層を押出ラミネート法によるアンカーコート剤層とすることができる。
アンカーコート剤層に用いられる水分反応官能基を含むイソシアネート系成分としては、以下の1から4を用いることができる。すなわち、
1.ジイソシアネートモノマーとしては、
トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等
2.ジイソシアネートモノマーの高分子量体であるポリイソシアネートとしては、
TDIのトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体やTDIのイソシアヌレート体などのTDIベースのポリイソシアネート、MDIのイソシアヌレート体やMDIのビウレット体などのMDIベースのポリイソシアネート、HDIのビウレット体、HDIのアダクト体、HDIのイソシアヌレート体、HDIのウレトジオン等のHDIベースのポリイソシアネート、TDIとHDIとのコポリマー、IPDIのイソシアヌレート体であるIPDIベースのポリイソシアネート等
3.これらのブロックイソシアネートとしては
ε−カプロラクタム,ブタノンオキシムやフェノールでイソシアネート基をブロックし、温度上昇でブロック剤が解離し、再生されたイソシアネート基が水と反応するブロックイソシアネート
4.前記1,2,3のブレンド物
等である。
また、アンカーコート剤層は、ドライラミネート法と同様にポリオール成分と前記水分反応官能基を含むイソシアネート系成分とにより構成することができる。この時、接着層であるアンカーコート剤はポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオールなどのポリオール成分とイソシアネート系成分とのウレタン結合を利用し、バリア層の化成処理層とシーラント層とを接着する。本発明では、バリア層の化成処理層とシーラント層との接着に寄与するイソシアネート系成分と、水分を反応捕捉するイソシアネート系成分が必要となるため、通常主剤のポリオール成分中の活性水酸基材と等量のイソシアネート基では十分な水分捕捉ができないため、ポリオール成分中の活性水酸基の1.2〜3.0倍のイソシアネート基に相当するイソシアネート系成分を添加する必要がある。この時、前記イソシアネート系成分のイソシアネート基の添加量が1.2倍未満の場合、捕捉可能な水分量が少なく、十分な防湿効果が得られず、また、前記イソシアネート基の添加量が3.0倍を超えると接着層のなかの尿素結合が多くなり、接着層が硬く脆くなり、接着層の厚さが3μm以上になった時、十分な接着強度を得ることができなくなる。
【0019】
本発明の電池用包装材料の接着層を押出ラミネート法により形成する際のラミネート方法は、図7に示すような装置40を用い、基材層とバリア層とを貼り合わせ、バリア層のシーラント層とのラミネート面に化成処理層を設けた中間積層体10Kの化成処理層の面にロールコート等により水分反応官能基を有する成分からなるアンカーコート13aを塗布し、乾燥ゾーン42にて、溶媒を除去した後、接着層の面にシーラント層14となる樹脂を押出し製膜して積層体10eとして巻き取る。シーラント層14としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂またはこれらの酸変性物を用いることができる。すなわち、ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等を用いることができる。また、ポリプロピレンとしては、ホモタイプポリプロピレン、ランダムタイプポリプロピレン、ブロックタイプポリプロピレンを用いることができる。また、シーラント層に用いる酸変性ポリプロピレン樹脂としては、不飽和カルボン酸がグラフトされたランダムタイプポリプロピレン、ホモタイプポリプロピレン、または、ブロックタイプポリプロピレンを用いることができる。また、酸変性ポリエチレン樹脂としては、不飽和カルボン酸がグラフトされた線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンまたは中密度ポリエチレン高密度ポリエチレンまたは中密度ポリエチレン、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体を含むエチレン共重合体等を用いることができる。
【0020】
本発明を用いてバリア層とシーラント層とを貼り合せる方法においては、水分反応官能基を含む接着層をサンドイッチラミネート法による接着樹脂層とすることができる。本発明を用いてバリア層とシーラント層とをサンドイッチラミネート法により貼り合せる方法においては、イソシアネート系成分を接着樹脂に添加するが、接着樹脂としては、酸変性ポリオレフィンを用いることが望ましい。酸変性ポリエチレン樹脂としては、不飽和カルボン酸がグラフトされたポリエチレンを用いることができる。また、酸変性ポリプロピレン樹脂としては、不飽和カルボン酸がグラフトされたランダムタイプポリプロピレン、ホモタイプポリプロピレン、または、ブロックタイプポリプロピレンを用いることができる。
【0021】
前記水分と反応するイソシアネート系成分としては、以下の1から4を用いることができる。すなわち、
1.ジイソシアネートモノマーとしては、
トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等
2.ジイソシアネートモノマーの高分子量体であるポリイソシアネートとしては、
TDIのトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体やTDIのイソシアヌレート体などのTDIベースのポリイソシアネート、MDIのイソシアヌレート体やMDIのビウレット体などのMDIベースのポリイソシアネート、HDIのビウレット体、HDIのアダクト体、HDIのイソシアヌレート体、HDIのウレトジオン等のHDIベースのポリイソシアネート、TDIとHDIとのコポリマー、IPDIのイソシアヌレート体であるIPDIベースのポリイソシアネート等
3.これらのブロックイソシアネートとしては
ε−カプロラクタム,ブタノンオキシムやフェノールでイソシアネート基をブロックし、温度上昇でブロック剤が解離し、再生されたイソシアネート基が水と反応するブロックイソシアネート
4.前記1,2,3のブレンド物
等であって、その添加量は、接着樹脂に対して0.1〜5.0重量%の範囲が適当である。
【0022】
本発明の電池用包装材料の接着層をサンドイッチラミネート法により形成する際のラミネート方法は、図8に示すような装置50を用い、基材層とバリア層とを貼り合わせ、バリア層のシーラント層とのラミネート面に化成処理層を設けた中間積層体10Kの化成処理層の面に押出ダイ53から接着樹脂層14となる水分反応官能基を含む成分を添加した接着樹脂13eを溶融押出し、シーラント層14となるフィルムをサンドイッチラミネートすることによって積層体10sとして巻き取る。
【0023】
水分反応官能基を含む接着層を共押出ラミネート法による接着樹脂層とすることができる。
【0024】
本発明の電池用包装材料の接着層を共押出ラミネート法により形成する際のラミネート方法は、図9に示すような装置60を用い、基材層とバリア層とを貼り合わせ、バリア層のシーラント層とのラミネート面に化成処理層を設けた中間積層体10Kの化成処理層の面に共押出ダイ63から接着樹脂層13となる水分反応官能基を含むイソシアネート系成分を添加した接着樹脂13eとシーラント層14となる樹脂14とを溶融共押出しラミネートすることによって積層体10cとして巻き取る。共押出ラミネート法により本発明の電池用包装材料を積層する場合に用いる接着樹脂および接着樹脂に添加するイソシアネート系成分は、前述のサンドイッチラミネート法の場合と同様である。
【0025】
また、押出ラミネート法におけるアンカーコート剤層を接着層として、サンドイッチラミネート法あるいは共押出ラミネート法を併用してもよい。すなわち、図10または図11に示すようなアンカーコートタイプサンドイッチラミネート装置あるいはアンカーコートタイプ共押出ラミネート装置を用いてバリア層12とシーラント層14と貼り合わせることができる。バリア層12の化成処理面に、水分反応官能基を含むイソシアネート系成分を含む接着層13aをアンカーコート剤層として形成後、サンドイッチラミネート法(図10)あるいは共押出ラミネート法(図11)によってアンカーコート剤層に中間樹脂層13zを溶融押出しまたは溶融共押出しして積層体を得ることができる。この時中間樹脂層13zには水分反応官能基を含むイソシアネート系成分を添加してもよいし、添加しなくてもよい。接着層13aとして用いられるアンカーコート剤層としては前述の押出ラミネート法で用いられるアンカーコート剤層を用いることができる。すなわち、水分反応官能基を含む接着層13aをサンドイッチラミネート法あるいは共押出ラミネート法によるアンカーコート剤層とすることができる。アンカーコート剤層に用いられる水分反応官能基を含むイソシアネート系成分としては、以下の1から4を用いることができる。すなわち、
1.ジイソシアネートモノマーとしては、
トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等
2.ジイソシアネートモノマーの高分子量体であるポリイソシアネートとしては、
TDIのトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体やTDIのイソシアヌレート体などのTDIベースのポリイソシアネート、MDIのイソシアヌレート体やMDIのビウレット体などのMDIベースのポリイソシアネート、HDIのビウレット体、HDIのアダクト体、HDIのイソシアヌレート体、HDIのウレトジオン等のHDIベースのポリイソシアネート、TDIとHDIとのコポリマー、IPDIのイソシアヌレート体であるIPDIベースのポリイソシアネート等
3.これらのブロックイソシアネートとしては
ε−カプロラクタム,ブタノンオキシムやフェノールでイソシアネート基をブロックし、温度上昇でブロック剤が解離し、再生されたイソシアネート基が水と反応するブロックイソシアネート
4.前記1,2,3のブレンド物
等である。
また、アンカーコート剤層は、ドライラミネート法と同様にポリオール成分と前記水分反応官能基を含むイソシアネート系成分とにより構成することができる。この時、接着層であるアンカーコート剤はポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオールなどのポリオール成分とイソシアネート系成分とのウレタン結合を利用し、バリア層の化成処理層とシーラント層とを接着する。本発明では、バリア層の化成処理層とシーラント層との接着に寄与するイソシアネート系成分と、水分を反応捕捉するイソシアネート系成分が必要となるため、通常主剤のポリオール成分中の活性水酸基材と等量のイソシアネート基では十分な水分捕捉ができないため、ポリオール成分中の活性水酸基の1.2〜3.0倍のイソシアネート基に相当するイソシアネート系成分を添加する必要がある。この時、前記イソシアネート系成分のイソシアネート基の添加量が1.2倍未満の場合、捕捉可能な水分量が少なく、十分な防湿効果が得られず、また、前記イソシアネート基の添加量が3.0倍を超えると接着層のなかの尿素結合が多くなり、接着層が硬く脆くなり、接着層の厚さが3μm以上になった時、十分な接着強度を得ることができなくなる。また、接着樹脂層13zとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレンを用いることができる。また、ポリプロピレンとしては、ホモタイプポリプロピレン、ランダムタイプポリプロピレン、ブロックタイプポリプロピレンを用いることができる。また、シーラント層に用いる酸変性ポリプロピレン樹脂としては、不飽和カルボン酸がグラフトされたランダムタイプポリプロピレン、ホモタイプポリプロピレン、または、ブロックタイプポリプロピレンを用いることができる。また、酸変性ポリエチレン樹脂としては、不飽和カルボン酸がグラフトされた線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンまたは中密度ポリエチレン高密度ポリエチレンまたは中密度ポリエチレン、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体を含むエチレン共重合体等を用いることができる。
【0026】
本発明の電池用包装材料は、その積層体構成において、接着層13を赤外吸収分光法分析した時に、イソシアネート基の吸収に由来する2270cm-1に吸収ピークが存在するものである。2270cm-1に吸収ピークがある場合、本発明の水分を捕捉反応できるイソシアネート系成分が残っていることを示す。
【0027】
本発明における電池用包装材料のシーラントは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、不飽和カルボン酸グラフト変性ポリエチレン、不飽和カルボン酸グラフト変性ポリプロピレン、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体を含むエチレン共重合体、アイオノマー等を用いることができる。また、シーラント層としては、これらの樹脂からなる単層でもよいし、また、これらの樹脂を2以上からなる多層であってもよい。本発明のシーラント層に用いるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等を用いることができる。また、ポリプロピレンとしては、ホモタイプポリプロピレン、ランダムタイプポリプロピレン、ブロックタイプポリプロピレンを用いることができる。また、シーラント層に用いる酸変性ポリプロピレン樹脂としては、不飽和カルボン酸がグラフトされたランダムタイプポリプロピレン、ホモタイプポリプロピレン、または、ブロックタイプポリプロピレンを用いることができる。また、酸変性ポリエチレン樹脂としては、不飽和カルボン酸がグラフトされた線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンまたは中密度ポリエチレン、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体を含むエチレン共重合体等を用いることができる。
【0028】
電池用包装材料は電池本体を包装する外装体を形成するものであって、その外装体の形式によって、図3に示すようなパウチタイプと、図4(a)、図4(b)または図4(c)に示すようなエンボスタイプとがある。前記パウチタイプには、三方シール、四方シール等およびピロータイプ等の袋形式があるが、図3は、ピロータイプとして例示している。エンボスタイプは、図4(a)に示すように、片面に凹部を形成してもよいし、図4(b)に示すように、両面に凹部を形成して電池本体を収納して周縁の四方をヒートシールして密封してもよい。また、図4(c)に示すような折り部をはさんで両側に凹部形成して、電池を収納して3辺をヒートシールする形式もある。電池用包装材料をエンボスタイプとする場合、図5(a)〜図5(d)に示すように、積層された包装材料10をプレス成形して凹部7を形成する。
【0029】
次に、電池の外装体5を形成する本発明の電池用包装材料10を構成する各層について説明する。
【0030】
電池用包装材料における前記基材層11は、延伸ポリエステルまたはナイロンフィルムからなるが、この時、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。またナイロンとしては、ポリアミド樹脂、すなわち、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。前記基材層11は、電池として用いられる場合、ハードと直接接触する部位であるため、基本的に絶縁性を有する樹脂層がよい。フィルム単体でのピンホールの存在、および加工時のピンホールの発生等を考慮すると、基材層は6μm以上の厚さが必要であり、好ましい厚さとしては12〜30μmである。
【0031】
基材層11は耐ピンホール性および電池の外装体とした時の絶縁性を向上させるために、積層化することも可能である。基材層を積層体化する場合、基材層が2層以上の樹脂層を少なくとも一つを含み、各層の厚みが6μm以上、好ましくは、12〜30μmである。基材層を積層化する例としては、次の1)〜8)が挙げられる。
1)延伸ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン
2)延伸ナイロン/延伸ポリエチレンテレフタレート
また、包装材料の機械適性(包装機械、加工機械のなかでの搬送の安定性)、表面保護性(耐熱性、耐電解質性)等を向上させ、また、2次加工として電池用の外装体をエンボスタイプとする際に、エンボス時の金型と基材層との摩擦抵抗を小さくする目的あるいは電解液が付着した場合に基材層を保護するために、基材層を多層化、基材層表面にフッ素系樹脂層、アクリル系樹脂層、シリコーン系樹脂層、ポリエステル系樹脂層、またはこれらのブレンド物からなる樹脂層等を設けることが好ましい。例えば、
3)フッ素系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート(フッ素系樹脂は、フィルム状物、または液状コーティング後乾燥で形成)
4)シリコーン系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート(シリコーン系樹脂は、フィルム状物、または液状コーティング後乾燥で形成)
5)フッ素系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン
6)シリコーン系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン
7)アクリル系樹脂/延伸ナイロン(アクリル系樹脂はフィルム状、または液状コーティング後乾燥で硬化)
8)アクリル系樹脂+ポリシロキサングラフト系アクリル樹脂/延伸ナイロン(アクリル系樹脂はフィルム状、または液状コーティング後乾燥で硬化)
【0032】
さらに、本発明では、バリア層により透湿度は実質的にゼロになるため、基材層とバリア層との間にはいかなる層構成も設けることができる。特に基材層とバリア層と接着性を良くするため接着性層を設ける場合があり、接着はラミネートにより好ましく行なわれる。基材層11とバリア層12とのラミネート方法は、電池の使用条件に耐える接着強度が得られるならば、如何なる方法であってもよいが、ラミネート加工適性、接着の安定性等からドライラミネート法が好ましい。
【0033】
前記バリア層12は、外部から電池の内部に特に水蒸気が浸入することを防止するための層で、バリア層単体のピンホール、および加工適性(パウチ化、エンボス成形性)を安定化し、かつ耐ピンホールをもたせるために厚さ15μm以上のアルミニウム、ニッケルなどの金属、または、無機化合物、例えば、酸化珪素、アルミナ等を蒸着したフィルムなども挙げられるが、バリア層として好ましくは厚さが20〜80μmのアルミニウムとする。ピンホールの発生をさらに改善し、電池の外装体のタイプをエンボスタイプとする場合、エンボス成形におけるクラックなどの発生のないものとするためには、バリア層として用いるアルミニウムの材質が、鉄含有量が0.3〜9.0重量%、好ましくは0.7〜2.0重量%とすることによって、鉄を含有していないアルミニウムと比較して、アルミニウムの展延性がよく、積層体として折り曲げによるピンホールの発生が少なくなり、かつ前記エンボスタイプの外装体を成形する時に側壁の形成も容易にできる。前記鉄含有量が、0.3重量%未満の場合は、ピンホールの発生の防止、エンボス成形性の改善等の効果が認められず、前記アルミニウムの鉄含有量が9.0重量%を超える場合は、アルミニウムとしての柔軟性が阻害され、積層体として製袋性が悪くなる。
【0034】
また、冷間圧延で製造されるアルミニウムは焼きなまし(いわゆる焼鈍処理)条件でその柔軟性・腰の強さ・硬さが変化するが、本発明において用いるアルミニウムは焼きなましをしていない硬質処理品より、多少または完全に焼きなまし処理をした軟質傾向にあるアルミニウムがよい。前記、アルミニウムの柔軟性・腰の強さ・硬さの度合い、すなわち焼きなましの条件は、加工適性(パウチ化、エンボス成形)に合わせ適宜選定すればよい。例えば、エンボス成形時のしわやピンホールを防止するためには、成形の程度に応じた焼きなましされた軟質アルミニウムを用いることが望ましい。
【0035】
電池用包装材料のバリア層12であるアルミニウムの表、裏面に化成処理を施すことによって、バリア層とシーラント層との安定した接着強度を有し、アルミニウムの表面に存在する酸化アルミの溶解、腐食を防止する等、包装材料として満足できる積層体とすることができる。前記化成処理とは、具体的にはリン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物等の耐酸性皮膜を形成することで、前記耐酸性皮膜形成物質のなかでも、フェノール樹脂、フッ化クロム(3)化合物、リン酸の3成分から構成されたものを用いるリン酸クロメート処理が良好である。または、少なくともフェノール樹脂を含む樹脂成分に、モリブデン、チタン、ジルコン等の金属、または金属塩を含む化成処理剤が良好であった。前記耐酸性皮膜が形成されることによってエンボス成形時のアルミニウムと基材層との間のデラミネーション防止と、電池の電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、アルミニウム表面の溶解、腐食、特にアルミニウムの表面に存在する酸化アルミが溶解、腐食することを防止し、かつ、アルミニウム表面の接着性(濡れ性)を向上させ、エンボス成形時、ヒートシール時の基材層11とアルミニウム12とのデラミネーション防止、電解質と水分との反応により生成するフッ化水素によるアルミニウム内面側でのデラミネーション防止効果が得られる。各種の物質を用いて、アルミニウム面に化成処理を施し、その効果について研究した結果、前記耐酸性皮膜形成物質のなかでも、フェノール樹脂、フッ化クロム(3)化合物、リン酸の3成分から構成されたものを用いるリン酸クロメート処理が良好であった。または、少なくともフェノール樹脂を含む樹脂成分に、モリブデン、チタン、ジルコン等の金属、または金属塩を含む化成処理剤が良好であった。
【0036】
アルミの化成処理は、外装体がパウチタイプである場合、ヒートシール層側のみの片側または基材層側とヒートシール層側の両面のどちらでもよい。電池の外装体がエンボスタイプの場合には、アルミニウムの両面に化成処理することによって、エンボス成形の際のアルミニウムと基材層との間のデラミネーションを防止することができる。
【0037】
本発明の電池用包装材料を積層する場合の、バリア層12に設けた化成処理層15とシーラント層14との接着は、例えば、リチウムイオン電池等における電解液と水分との反応により発生するフッ化水素酸などによるデラミネーション防止のために、以下に述べるラミネートおよび接着安定化処理を行うことが望ましい。
【0038】
安定したラミネート強度は、ドライラミネート法により得ることができる。少なくともシーラント層をラミネートする面に化成処理したバリア層12と基材層11とをドライラミネートした後、図6または図7に示すように、バリア層に設けられた化成処理層15とシーラント層14との接着法としてドライラミネート法により積層する。また、ドライラミネート法と同様にして得られた化成処理層15とシーラント層14との接着法として、化成処理層にイソシアネート系アンカーコート剤を塗布乾燥し、シーラント層を形成する樹脂を押出ラミネートしてもよい。
【0039】
また、次のようなラミネート方法によっても安定した接着強度が得られる。例えば、基材層11とバリア層12の片面とをドライラミネートし、バリア層12の他の面(化成処理層)に、酸変性ポリオレフィン13eを押出してシーラント層14をサンドイッチラミネートする場合、または、酸変性ポリオレフィン樹脂13とシーラント層とを共押出しして積層体とした後、得られた積層体を前記酸変性ポリオレフィン樹脂13eがその軟化点以上になる条件に加熱することによって、所定の接着強度を有する積層体とすることができた。前記加熱の具体的な方法としては、熱ロール接触式、熱風式、近または遠赤外線等の方法があるが、本発明においてはいずれの加熱方法でもよく、前述のように、接着樹脂がその軟化点温度以上に加熱できればよい。
【0040】
また、別の方法としては、前記、サンドイッチラミネートまたは共押出しラミネートの際に、アルミニウム12のシーラント層側の表面温度が酸変性ポリオレフィン樹脂の軟化点に到達する条件に加熱することによっても接着強度の安定した積層体とすることができる。
【0041】
本発明の電池用包装材料において、外装体を形成する積層体における前記の各層には、適宜、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性を向上、安定化する目的のために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理をしてもよい。
【0042】
本発明の電池用包装材料ついて、実施例によりさらに具体的に説明する。
(1)中間積層体
実施例、比較例ともに、特に記載のない限り基材層、接着層(1)、バリア層、化成処理層、接着層(2)、シーラント層の層構成とし(但し、外装体のタイプがエンボスタイプの場合はバリア層の両面に化成処理層を形成)、接着層(2)およびシーラント層およびラミネート法は、実施例、比較例の各条件を後述するが、基材層、接着層(1)、バリア層、化成処理層までの中間積層体は共通して次に示す構成とラミネート法とした。外装体がパウチタイプの場合は、バリア層であるアルミニウム(厚み20μm)の一方の面に化成処理を施し、化成処理を施さない面に基材層である延伸ポリエステルフィルム(厚み12μm)をドライラミネート法により貼り合わせて中間積層体とし、アルミニウムの化成処理層を施した面に、後述する条件により接着層およびシーラント層を積層する。外装体がエンボスタイプの場合は、バリア層であるアルミニウム箔(厚み40μm)の両面に化成処理を施し、化成処理を施した一方の面に基材層である2軸延伸ナイロンフィルム(厚み25μm)をドライラミネート法により貼り合わせて中間積層体とし、アルミニウムの他の化成処理層を施した面に、後述する条件により接着層およびシーラント層を積層する。この時、接着層(1)は、ポリオール成分がポリエーテルポリオール、イソシアネート系成分がトルエンジイソシアネートで、ポリオール成分の活性水酸基がイソシアネート系成分のイソシアネート基と等量となる様に形成した。
(2)化成処理層
外装体のバリア層に施した化成処理は、実施例、比較例ともに、処理液として、フェノール樹脂、フッ化クロム(3)化合物、リン酸からなる水溶液を、ロールコート法により、塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件において焼き付けた。クロムの塗布量は、1mg/m2(乾燥重量)である。
(3)外装体の形成
以下の、実施例および比較例において、パウチタイプの外装体としては、巾30mm巾、長さ50mm(いずれも内寸)とし、また、エンボスタイプの外装体の場合は、いずれも片面エンボスタイプとし、成形型の凹部(キャビティ)の形状を30mm×50mm,深さ3.5mmとしてプレス成形して成形性の評価をした。エンボスタイプの例においてはいずれも、積層体の成形しないものを蓋体として用いた。
(4)略号の説明
TDI:トルエンジイソシアネート
TMP:トリメチロールプロパン
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
MDI:ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート
【実施例1】
【0043】
外装体をパウチタイプとし、中間積層体の化成処理表面に、シーラント層として線状低密度ポリエチレンフィルム(厚み30μm)をドライラミネート法により形成して積層した。接着層となるドライラミネート用接着剤は、ポリオール成分をポリエーテルポリウレタンポリオール、イソシアネート系成分をTDIのTMPアダクト体として、イソシアネート系成分のイソシアネート基量は、ポリオール成分の活性水酸基の2.5倍とした。
得られた積層体を検体実施例1とした。
【実施例2】
【0044】
外装体をパウチタイプとし、中間積層体にランダムポリプロピレン樹脂(厚み30μm)を押出ラミネート法により形成して積層した。押出ラミネートの際に用いる接着層となるアンカーコート剤は、ポリオール成分をポリエーテルポリウレタンポリオール、イソシアネート系成分をHDIのヴュレット体として、イソシアネート系成分のイソシアネート基量は、ポリオール成分の活性水酸基の3.0倍とした。得られた積層体を検体実施例2とした。
【実施例3】
【0045】
外装体をパウチタイプとし、中間積層体の化成処理層面に、接着層として不飽和カルボン酸グラフト線状低密度ポリエチレン(厚み10μm)、シーラント層として線状低密度ポリエチレン樹脂(厚み30μm)を共押出ラミネート法により積層した。共押出ラミネートの際、中間積層体のバリア層のラミネート面を不飽和カルボン酸グラフト線状低密度ポリエチレンの軟化点以上の温度に加熱して積層した。接着層となる不飽和カルボン酸グラフト線状低密度ポリエチレンには、イソシアネート系成分としてTDIとHDIとのコポリマーを0.5%添加した。得られた積層体を検体実施例3とした。
【実施例4】
【0046】
外装体をエンボスタイプとし、中間積層体の化成処理層面に、シーラント層となるランダムポリプロピレン層/ブロックタイプポリプロピレン層/ランダムポリプロピレン層(層厚比1/8/1の多層で厚み30μm)をドライラミネート法により形成して積層した。また、この時、接着層側ランダムポリプロピレン層にはコロナ処理を施した。接着層となるドライラミネート用接着剤は、ポリオール成分をポリエーテルウレタンポリオール、イソシアネート系成分をTDIのTMPアダクト体として、イソシアネート系成分のイソシアネート基量は、ポリオール成分の活性水酸基の1.5倍とした。得られた積層体を検体実施例4とした。
【実施例5】
【0047】
外装体をエンボスタイプとし、中間積層体の化成処理層面にブロックポリプロピレン樹脂(厚み30μm)を押出ラミネート法により形成して積層した。なお、押出し時、押出樹脂面にオゾンを吹きつけた。押出ラミネートの際に用いる接着層となるアンカーコート剤は、MDIとした。得られた積層体を検体実施例5とした。
【実施例6】
【0048】
外装体をエンボスタイプとし、中間積層体の化成処理層面に、接着層として、ポリオール成分としてポリエステルポリウレタンポリオール、イソシアネート系としてHDIのイソシアヌレート体からなるアンカーコート剤層を形成後、アンカーコート剤層面に線状低密度ポリエチレン(厚さ10μm)を溶融押出しするとともにシーラント用フィルムとしてメタロセン系線状低密度ポリエチレン(厚さ30μm)をサンドイッチラミネート法を用いて積層した。この時押出し樹脂面にはオゾンを吹きつけた。接着層として用いてアンカーコート剤層は、イソシアネート系成分のイソシアネート基量は、ポリオール成分の活性水酸基の2倍としたる得られた積層体を検体実施例6とした。
【実施例7】
【0049】
外装体をエンボスタイプとし、中間積層体の化成処理層面に、接着層として不飽和カルボン酸グラフトランダムプロピレンとシーラント層となるブロックタイプポリプロピレン層/ランダムポリプロピレン層(層厚比5/20/5の多層で厚み30μm)を共押出ラミネート法により積層した。共押出ラミネートの際、中間積層体のバリア層のラミネート面を不飽和カルボン酸グラフトランダムポリプロピレンの軟化点以上の温度に加熱して積層した。接着層となる不飽和カルボン酸グラフトランダムプロピレンには、イソシアネート系成分としてMDIを0.2%添加した。得られた積層体を検体実施例7とした。
【実施例8】
【0050】
外装体をエンボスタイプとし、中間積層体の化成処理層面に、アンカーコートした後、接着樹脂として不飽和カルボン酸グラフトランダムポリプロピレン、シーラント層となるランダムポリプロピレン層(層厚比2/8の多層で厚み30μm)を共押出ラミネート法により積層した。共押出ラミネートの際に用いる接着層となるアンカーコート剤は、ポリオール成分をポリエーテルポリウレタンポリオールとし、イソシアネート系成分をTDIとMDIとのコポリマーとし、イソシアネート系成分のイソシアネート基量は、ポリオール成分の活性水酸基の2倍とした。得られた積層体を検体実施例8とした。
【0051】
[比較例1]
外装体をエンボスタイプとし、中間積層体の化成処理層面にシーラント層となるランダムポリプロピレン層/ブロックタイプポリプロピレン層/ランダムポリプロピレン層(層厚比1/8/1の多層で厚み30μm)を接着層でドライラミネート法により形成して積層した。この時、シーラント層の接着層側のランダムポリプロピレン層面にはコロナ処理を施した。接着層となるドライラミネート用接着剤は、ポリオール成分をポリエーテルウレタンポリオール、イソシアネート系成分をTDIのTMPアダクト体として、イソシアネート系成分のイソシアネート基量は、ポリオール成分の活性水酸基の1.0倍とした。得られた積層体を検体比較例1とした。
【0052】
[比較例2]
外装体をエンボスタイプとし、中間積層体の化成処理層面にシーラント層となるランダムポリプロピレン層/ブロックタイプポリプロピレン層/ランダムポリプロピレン層(層厚比1/8/1の多層で厚み30μm)を接着層でドライラミネート法により形成して積層した。また、シーラント層の接着層側のランダムポリプロピレン層にはコロナ処理を施した。接着層となるドライラミネート用接着剤は、ポリオール成分をポリエーテルウレタンポリオール、イソシアネート系成分をTDIのTMPアダクト体として、イソシアネート系成分のイソシアネート基量は、ポリオール成分の活性水酸基の5.0倍とした。
得られた積層体を検体比較例2とした。
【0053】
[比較例3]
外装体をエンボスタイプとし、バリア層であるアルミニウムのシーラント層をラミネートする面に化成処理層を設けないで、シーラント層となるランダムポリプロピレン層/ブロックタイプポリプロピレン層/ランダムポリプロピレン層(層厚比1/8/1の多層で厚み30μm)をドライラミネート法により形成して積層した。また、シーラント層の接着層側のランダムポリプロピレン層にはコロナ処理を施した。接着層となるドライラミネート用接着剤は、ポリオール成分をポリエーテルウレタンポリオール、イソシアネート系成分をTDIのTMPアダクト体として、イソシアネート系成分のイソシアネート基量は、ポリオール成分の活性水酸基の1.5倍とした。得られた積層体を検体比較例4とした。
【0054】
<評価方法>
(1)水分増加率
各検体の積層体を用いてパウチタイプ、エンボスタイプを形成し、内容物を充填密封した後、60℃、90%RHの条件で1440時間保存し、水分増加率をカールフィッシャーで測定した。
内容物:エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート(1:1:1)の混合液、充填量3g。
(2)バリア層であるアルミニウムとシーラント層とのラミネート強度
各検体のバリア層であるアルミニウムとシーラント層とのラミネート強度を測定した。
(3)デラミネーション
各検体の積層体を用いてパウチタイプ、エンボスタイプを形成し、内容物を充填密封した後、60℃で、7日間保存し、バリア層であるアルミニウムとシーラント間とのデラミネーションを触手で確認した。
内容物:電解液1M LiPF6となるようにしたエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート(1:1:1)の混合液、3g。
(4)イソシアネート基(NCO)のピークの有無
積層体形成後、40℃、3日放置後、バリア層であるアルミニウムとシーラント層を分離し、接着層を露出させた後、赤外吸収分光法により接着層の部分の赤外吸収を確認し、2270cm-1における吸収のピークの有無を確認した。
【0055】
<結果>
評価結果を表1に示す。
【表1】

【0056】
実施例1〜実施例8はいずれも、水分増加率においては、いずれも本発明の、水分反応官能基を含む成分を添加した効果が認められた。また、バリア層とシーラント層とのラミネート強度も十分あり、経時的なデラミネーションの発生もなかった。また、接着層の赤外吸収分光法分析において、2270cm-1にピークが存在することが確認された。比較例1においては、水分増加率が大きく、電池の安定性を維持することが懸念された。比較例2はイソシアネート基のピークは認められ、水分反応官能基を含む成分を添加した効果は認められたが、アルミニウムとシーラント間のラミ強度が小さくデラミネーションが懸念された。また、比較例3は、イソシアネート基のピークは認められ水分反応官能基を含む成分を添加した効果は認められたが、バリア層に化成処理をしていなかったため、60℃、7日間の保存でアルミニウムとシーラント間でデラミネーションが発生してしまった。
【符号の説明】
【0057】
W 水分
1 電池
2 電池本体
3 セル(蓄電部)
4 リード線(電極)
5 外装体
6 リード線用フィルム
7 凹部
8 側壁部
9 シール部
10 積層体(電池用包装材料)
10K 積層中間体(基材層+バリア層+化成処理層)
11 基材層
12 アルミニウム(バリア層)
13 接着層
13d ドライラミネート接着剤
13e 酸変性ポリオレフィン樹脂
13a アンカーコート剤
13z 中間樹脂層
14 シーラント層
15 化成処理層
16 接着層1
20 プレス成形部
21 オス型
22 メス型
23 キャビティ
30 ドライラミネート装置
31 コーティングロール
32 乾燥ゾーン
40 押出ラミネート装置
41 コーティングロール
42 乾燥ゾーン
43 押出ダイ
44 チルロール
45 加圧ロール
50 サンドイッチラミネート装置
53 押出ダイ
54 チルロール
55 加圧ロール
60 共押出ラミネート装置
63 押出ダイ
64 チルロール
65 加圧ロール
70 アンカーコートタイプのサンドイッチラミネート装置
71 コーティングロール
72 乾燥ゾーン
73 押出ダイ
74 チルロール
75 加圧ロール
80 アンカーコートタイプの共押出ラミネート装置
81 コーティングロール
82 乾燥ゾーン
83 押出ダイ
84 チルロール
85 加圧ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池本体を挿入し周縁部をヒートシールにより密封する電池の外装体を形成する包装材料が、少なくとも、基材層、バリア層、化成処理層、接着層、シーラント層から構成される積層体であって、接着層に水分反応官能基を有する成分を含むことを特徴とする電池用包装材料。
【請求項2】
水分反応官能基が、イソシアネート基であることを特徴とする請求項1に記載の電池用包装材料。
【請求項3】
接着層を赤外吸収分光法で赤外吸収測定した時に、2270cm-1に吸収ピークが存在することを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項4】
官能基であるイソシアネート基を含むイソシアネート系成分とポリオール成分とからなる反応系において、イソシアネート系成分のイソシアネート基量がポリオール成分の活性水酸基量の1.2から3.0倍となる割合としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項5】
接着層がドライラミネート法による接着剤層であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項6】
接着層が押出しラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出ラミネート法のいずれかによるアンカーコート剤層であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項7】
接着層がサンドイッチラミネート法または共押出ラミネート法による接着樹脂層であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電池用包装材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−212243(P2010−212243A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74153(P2010−74153)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【分割の表示】特願2002−202348(P2002−202348)の分割
【原出願日】平成14年7月11日(2002.7.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】