説明

電池用電解液封止感熱接着シート

【課題】 電解液と接液した状態でも被着体との良好な接着性を保持し、電解液を好適に封止できる感熱接着シートを提供する。
【解決手段】 重量平均分子量が5万〜100万のオレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体を主成分として含有する接着剤組成物からなり、前記オレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体中の分子量3万以下の低分子量成分の含有量が20重量%以下である感熱接着シートにより、ポリイミドフィルムに対する強固な接着性と、優れた耐電解液性を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱接着シートに関する。詳しくはセパレータ間に電解液を封止する際に電解液の漏液が生じない、接着性と耐電解液性に優れる感熱接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型パソコンや携帯電話、電気自動車等の各種製品の電源としてリチウム二次電池が広く用いられている。こうした製品の使用範囲が広がるに従い、これらの電源となるリチウム二次電池(以下、単に電池ということがある)の性能と安全性に対する要求は高まっている。特に最近では、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウム二次電池に注目が集まっており、大出力を確保するために、複数の単電池層を直列に接続したラミネート型電池が提案されている。
【0003】
ラミネート型電池は、電解液を含む高分子電解質を電解質層に用いることで、優れたイオン伝導度、良好な電池のエネルギー密度や出力密度を有するものであるが、電解質部分から電解液が染み出した場合には、他の電池層の電極や電解質層と接触し、短絡を起こすという問題が生ずる。このため、電極の周囲に封止材を設け、短絡を防止する必要がある。
【0004】
電池に用いられる封止材としては、アルミニウムなど金属の外装体や電池ケースを熱接着により封止する接着剤が提案されている(特許文献1−2参照)。しかし、これらの接着剤は染み出してきたごくわずかな電解液が漏れないように封止するためのものであり、上記用途のように直接電解液を封止するには特性が不十分であった。また、接着剤による封止方法では、接着剤の塗布、硬化工程が必須となり、電池製造コストがかさむため、接着剤を用いない封止方法が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開平9−268277号公報
【特許文献2】特開2001−278956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電解液と接液した状態でも被着体との良好な接着性を保持し、電解液を好適に封止できる感熱接着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、重量平均分子量が5万〜100万のオレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体を主成分として含有する接着剤組成物からなり、前記オレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体中の分子量3万以下の低分子量成分の含有量が20重量%以下である感熱接着シートにより、ポリイミドフィルムに対する強固な接着性と、優れた耐電解液性を実現できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の感熱接着シートは、電解液と接液した状態でも被着体との良好な接着力を保持でき、電解液を好適に封止できることから、リチウム二次電池の電極周囲の接着固定、特にセパレータ間に電解液を保持する際のセパレータ間の封止に好適に適用できる。また、本発明の感熱接着シートは、接着し難いポリイミドフィルムに対しても好適な接着力を有し、電解液接液後も好適に接着力を保持できることから、ポリイミドからなるセパレータを使用したリチウム二次電池におけるセパレータ間の封止に特に好適に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の感熱接着シートは、二次電池の電解液封止に使用され、重量平均分子量が5万〜100万のオレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体を主成分として含有する接着剤組成物からなり、前記オレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体中の重量平均分子量3万以下の低分子量成分の含有量が20重量%以下の感熱接着シートである。
【0010】
[接着剤組成物]
本発明に使用する接着剤組成物は、オレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体を使用することで、ポリイミドフィルムへの強固な接着性が得られる。また、重量平均分子量が5万〜100万、かつ分子量が3万以下の含有量が20質量%以下、好ましくは15重量%の共重合体を使用することで、本発明の接着剤組成物の耐電解液性を高めることができる。
【0011】
本発明に使用するオレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体は、オレフィンのモノマーユニット含有量が共重合体中の少なくとも50重量%であり、また(メタ)アクリル酸アルキルモノマーのモノマーユニット含有量は10〜30重量%であることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸グリシジルモノマーのモノマーユニット含有量は2〜20重量%であることが好ましい。(メタ)アクリル酸グリシジルモノマー及び(メタ)アクリル酸アルキルモノマーの含有量を上記範囲とすることで、被着体、特にポリイミドへの接着性が特に良好となり、また好適な耐電解液性も実現できる。
【0012】
本発明に使用するオレフィン系モノマーとしては、エチレン、プロピレン、イソプレンなどの2重結合を有する脂肪族炭化水素類がある。
【0013】
本発明に使用する(メタ)アクリル酸アルキルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸誘導体類がある。
【0014】
本発明に使用する(メタ)アクリル酸グリシジルとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどがある。
【0015】
本発明に使用するオレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体の調製は公知慣用の方法で実施することができる。代表的には低密度ポリエチレンを合成する高圧反応装置が使用できる。すなわち、圧縮したオレフィンモノマーおよびそれと共重合し得る(メタ)アクリル酸アルキルモノマーおよび(メタ)アクリル酸グリシジルモノマーを槽型あるいは連続式の反応容器に供給し、さらに別の供給口からラジカル重合開始剤を供給することにより、共重合体を調製することができる。その際反応条件としては、圧力は50MPa〜300MPaの範囲が一般的であり、温度は100℃〜350℃の範囲が一般的である。オレフィン系モノマーがプロピレンの場合はラジカル重合によっては高分子量のポリマーが得にくいため、チーグラー・ナッタ触媒系(塩化マグネシウムを担持した四塩化チタンなど)を用いて1〜6MPaの圧力下、60〜100℃の温度範囲で配位重合により調製される場合が一般的である。
【0016】
本発明に使用できる重合開始剤は周知慣用のラジカル重合用のものが使用できるが、代表的なものを挙げると、過酸化水素、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシピバレート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエートなどの過酸化物類、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリルなどのアゾ化合物類がある。
【0017】
また、本発明には連鎖移動剤として、エタン、プロパン、ブタン、ヘプタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの環式脂肪族炭化水素類、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1などのオレフィン類、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類なども使用できる。
【0018】
[溶媒]
本発明の接着剤組成物に使用する溶媒は特に限定されるものではないが、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が溶解性良好であり、好適に用いられる。
【0019】
本発明の接着剤組成物は、上記オレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体を主成分とする組成物であり、接着剤組成物中の溶媒を除く成分中の80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上が、上記オレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体であることが好ましい。
【0020】
[添加剤]
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で上記共重合体以外の共重合体や他の添加材を含有してもよい。当該添加材としては、例えば、硬化剤、充填剤、軟化剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、無機フィラー、粘着付与樹脂、繊維類、可視用時間延長剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、増粘剤、可塑剤、顔料などの着色剤、充填剤などの添加剤を必要に応じて使用することが出来る。また、硬化反応を調節するため公知の触媒、添加剤などを使用することが出来る。
【0021】
[感熱接着シート]
本発明の感熱接着シートは、上記接着剤組成物から形成される接着剤層のみからなる基材を有さない接着シートであっても、基材表面の少なくとも一方に上記接着剤組成物から形成される接着剤層が積層された接着シートであってもよい。基材を有さない接着シートは、シートの薄型化に適しているため好ましく使用できる。一方、基材を有する接着シートは、シートのコシや厚みの調整を容易に行うことができる。リチウム二次電池の電解液封止用途においては、特に基材を有さない感熱接着シートを好ましく使用できる。
【0022】
基材を有する感熱接着シートの場合には、基材の一面に接着剤層を有する片面接着シートであっても、基材の両面に接着剤層を有する両面接着シートであっても良い。いずれの場合においても、基材に積層する接着剤層は、基材表面の全面に積層しても良いし、一部でも良い。
【0023】
基材を有する感熱接着シートに使用する基材としては、フィルム基材などを適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0024】
また、フィルム基材には、接着剤層との密着性を向上させる目的で、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面処理を施すことができる。
【0025】
また、基材には、その他配合材料として帯電防止剤を添加し帯電防止機能を付与することができる。ノニオン系としてポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸グリセリンエステル、アルキルポリエチレンイミン等を挙げることができる。カチオン系としてアルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩、アルキルイミダゾリン誘導体等を挙げることができる。またエチレンオキサイドを骨格に持つアクリレート化合物なども使用することができる。導電性高分子としてポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン及びこれらの誘導体を使用することができる。金属酸化物としてアンチモンドープ型酸化錫(ATO)、錫ドープ型酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ型酸化亜鉛、アンチモン副酸化物などを使用することができる。またその他にリチウムイオンなどの金属イオンを混合するイオン伝導型の帯電防止剤も用いることができる。
【0026】
本発明の感熱接着シートは、厚さが5〜100μm、好ましくは10〜80μm、より好ましくは20〜50μmである。当該範囲の感熱接着シートを使用することで、接着力を低下させること無く、加熱圧着時の接着剤変形を少なくすることが容易になる。
【0027】
本発明の感熱接着シートは、一般的に使用されている方法で作成できる。例えば、フィルム基材または離型シート上に接着剤層を形成して製造することができる。具体的には、接着剤の組成物を基材フィルムに直接塗布し乾燥または硬化・重合するか、或いは、いったん離型シート上に塗布し、乾燥し、接着剤層を形成後、同様にして離型シート上に作成した接着剤層又は基材フィルムに貼り合わせる方法などにより製造できる。
【0028】
本発明の感熱接着シートを用いて固定する被着体の材質としては、特に制限無く用いることができる。例えば、樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ABSなどを用いることができる。また、樹脂中に各種添加剤、ビーズ、フレーク、不織布、フィルムなどを混入させることができる。耐熱性確保のため、ガラスフレークを樹脂中に混入させた材料は耐熱性の観点から好適に使用することが出来る。また、金属材料としては、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム含有合金、アルミニウム含有合金などが使用できる。
【0029】
本発明の感熱接着シートは電解液の封止用途で、高い耐電解液性が求められる箇所に利用することができる。特に、リチウム二次電池や太陽電池などの電解液の封止材として好適に利用することができる。
【0030】
セパレータ間で電解液を封止する用途については、片面に正極材層、他の面に負極材層を配した集電体を、電解液を含む電解質層を保持したセパレータではさみ、セパレータ同士をシール材で固定するラミネート型リチウム二次電池などが好ましく挙げられる。
【0031】
上記リチウム二次電池のセパレータとしては、ポリイミドフィルムを用いることが好ましい。セパレータに耐熱性のよいポリイミドを用いることで、シール材の加熱圧着時等のセパレータの熱変形を小さくすることができ、電池の耐久性を高めることができる。本発明の感熱接着シートは、ポリイミドに対する好適な接着性を有し、かつ電解液との接液後も好適にポリイミドへの接着性を保持できることから、ポリイミドを使用したセパレータ間に電解液を保持する際のセパレータ間の電解液封止用として、特に好適に適用できる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例により本発明を具体的に説明する。
【0033】
〔オレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体Aの調製〕
反応装置(反応容器1の内容積50リットル、L/D=12)において、圧縮機で150MPaに圧縮されたエチレン(連鎖移動剤としてプロパンを対エチレン比2.5モル%含有)を流量200Kg/hrで、また高圧ポンプ4で150MPaに昇圧されたメタクリル酸グリシジル(GMA)とアクリル酸エチル(EA)の混合物(重量混合比:GMA/EA=20/80)を流量2.5Kg/hrで送液し、これらをライン中で混合後反応容器1に送入した。また同時に別の供給ライン5よりターシャリーブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを流量10g/hrで反応容器1に送入し、反応温度190℃で連続的に重合反応を行なった。その結果、重合体中のGMAが6重量%、EAが23重量%、重量平均分子量が225000、分子量30000以下の含有量が23重量%、かつMFR(melt flow rate)が8(g/10分)であるオレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体Aを得た。
【0034】
〔オレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体Bの調製〕
メタクリル酸グリシジル(GMA)とアクリル酸エチル(EA)の混合物(重量混合比:GMA/EA=20/80)に替えて、メタクリル酸グリシジル(GMA)とアクリル酸エチル(EA)の混合物(重量混合比:GMA/EA=10/90)を使用した以外は共重合体Aと同様にして、重合体中のGMAが3重量%、EAが26重量%、重量平均分子量が202000、分子量30000以下の含有量が28重量%、かつMFRが11(g/10分)であるエチレン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体Bを得た。
ここにMFR(melt flow rate)は、単位時間あたりの樹脂の溶融吐出量を表し、メルトインデクサーF−F01((株)東洋精機製)を用い、温度190℃、加重2160gの条件で測定した値を示す(JISK7210:1999準拠)。
【0035】
本発明においては、共重合体の分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。具体的には、GPC測定装置として、商品名「HLC−8320GPC」(東ソー株式会社製)を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPC測定条件で測定して求めることができる。
<GPC測定条件>
サンプル濃度:0.5重量%(テトラヒドロフラン溶液)
サンプル注入量:100μL
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流量(流速):1mL/min
カラム温度(測定温度):40℃
カラム(以下の順に通過):「TSKguardcolumnHXL−H/TSKgelGMHHR−H(20)/TSKgelGMHHR−H(20)」
【0036】
〔実施例1〕
〔感熱接着シートの作製〕
共重合体Aを、重量が共重合体の100倍程度の40℃ジエチルカーボネート電解液(DEC)中に10日間投入し、共重合体中の低分子量成分をDEC中に溶出させた。DECから取り出した後の共重合体A’の重量平均分子量は281000、分子量30000以下の含有量が14重量%であった。この共重合体A’をトルエンで希釈し、固形分比が15%となるように調整した。この感熱接着組成物を棒状の金属アプリケータを用いて、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ75μmのPETフィルムの剥離処理面上に乾燥後の厚さが30μmになるように塗工し、100℃の乾燥機に5分間投入し乾燥した後、シリコーン化合物で片面を剥離処理した38μmのPETフィルムを貼り合わせた。こうして厚さ30μmの感熱接着シートを得た。
【0037】
〔実施例2〕
共重合体Bを、重量が100倍程度の40℃ジエチルカーボネート(DEC)電解液中に10日間投入し、共重合体中の低分子量成分をDEC中に溶出させた。DECから取り出した後の共重合体B’の重量平均分子量は244000、分子量30000以下の含有量が15重量%であった。あとは実施例1と同様にして感熱接着シートを得た。
【0038】
〔比較例1〕
共重合体Aをトルエンで希釈し、固形分比が15%となるように調整した。この感熱接着組成物を棒状の金属アプリケータを用いて、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ75μmのPETフィルムの剥離処理面上に乾燥後の厚さが30μmになるように塗工し、100℃の乾燥機に5分間投入し乾燥した後、シリコーン化合物で片面を剥離処理した38μmのPETフィルムを貼り合わせた。こうして厚さ30μmの感熱接着シートを得た。
【0039】
〔比較例2〕
接着剤組成物として共重合体Bを用いること以外は、比較例1と同様にして感熱接着シートを得た。
【0040】
〔比較例3〕
三菱化学株式会社製「YL7750」(変性エポキシ樹脂、固形分40%)98.4部に、硬化剤としてDIC株式会社製「エピクロンB−570H」(酸無水物硬化剤、固形分100%)を0.9部、硬化促進剤として四国化成株式会社製「2E4MZ」(イミダゾール硬化剤、固形分50%)を0.7部配合し、10分攪拌した後、1時間放置し泡抜けさせた。この感熱接着組成物を棒状の金属アプリケータを用いて、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ75μmのPETフィルムの剥離処理面上に乾燥後の厚さが30μmになるように塗工し、100℃の乾燥機に5分間投入し乾燥した後、シリコーン化合物で片面を剥離処理した38μmのPETフィルムを貼り合わせた。こうして厚さ30μmの感熱接着シートを得た。
【0041】
〔比較例4〕
三菱化学株式会社製「JER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固形分45%)98.2部に、硬化剤としてDIC株式会社製「エピクロンB−570H」(酸無水物硬化剤、固形分100%)を0.7部、硬化促進剤として四国化成株式会社製「2E4MZ」(イミダゾール硬化剤、固形分50%)を1.1部配合し、10分攪拌した後、1時間放置し泡抜けさせた。この感熱接着組成物を棒状の金属アプリケータを用いて、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ75μmのPETフィルムの剥離処理面上に乾燥後の厚さが30μmになるように塗工し、100℃の乾燥機に5分間投入し乾燥した後、シリコーン化合物で片面を剥離処理した38μmのPETフィルムを貼り合わせた。こうして厚さ30μmの感熱接着シートを得た。
【0042】
上記にて得られた感熱接着シートにつき、以下の評価方法に基づいて、接着強度を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0043】
〔接着強度評価〕
厚さ0.05mm、幅25mm、長さ50mmのポリイミドフィルム2枚に、幅20mm、長さ40mmの感熱接着シートを挟み込み、熱プレス条件150℃、10分、100N/cmで加熱圧着した。この試験片のポリイミドフィルム端部を引張速度50mm/分で引っ張り、Tの字形になる様に剥がして接着強度を測定した。
【0044】
〔DEC72時間浸漬後の接着強度評価〕
厚さ0.05mm、幅25mm、長さ50mmのポリイミドフィルム2枚に、幅20mm、長さ40mmの感熱接着シートを挟み込み、熱プレス条件150℃、10分、100N/cmで加熱圧着した。この試験片を40℃のジエチルカーボネート電解液(DEC)中に72時間投入し、取り出してから室温30分放置後の試験片のポリイミドフィルム端部を引張速度50mm/分で引っ張り、Tの字形になる様に剥がして接着強度を測定した。
【0045】
【表1】

【0046】
上記表1のとおり、本願発明の実施例1〜2の感熱接着シートは、ポリイミドフィルムに対して強固な接着力を有し、かつDECに72時間浸漬させた後も接着力の低下がなく、優れた耐電解液性を有するものであった。一方、比較例1〜3の感熱接着シートは、ポリイミドフィルムに対して強固な接着力を有するものの、DECに72時間浸漬させた後に接着力が大幅に低下し、耐電解液性に劣るものであった。また、比較例4の感熱接着シートは、ポリイミドフィルムに接着しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の電解液封止に使用する感熱接着シートであって、
重量平均分子量が5万〜100万のオレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体を主成分として含有する接着剤組成物からなり、前記オレフィン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体中の分子量3万以下の低分子量成分の含有量が20重量%以下であることを特徴とする感熱接着シート。
【請求項2】
セパレータ間で電解液を保持するラミネート型リチウム二次電池のセパレータ間の電解液封止に使用する請求項1に記載の感熱接着シート。
【請求項3】
前記共重合体中のオレフィンモノマーユニットの含有量が50重量%、(メタ)アクリル酸アルキルモノマーユニットの含有量が10〜30重量%、(メタ)アクリル酸グリシジルモノマーユニットの含有量が2〜20重量%である請求項1又は2に記載の感熱接着シート。

【公開番号】特開2013−23614(P2013−23614A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160872(P2011−160872)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】