説明

電波修正時計

【課題】従来技術は、時差のある地域へ移動しても、使用者が強制的に移動先の標準時刻電波を受信する動作をしないと、移動先の地域における標準時刻を表示することができないという問題があった。
【解決手段】それぞれ周波数の異なる複数の標準時刻電波の受信情報を記憶しており、これらの受信情報の中から1つを選択して時刻情報を取得する時刻情報取得手段と、気圧を検出する気圧検出手段と、気圧が変化した時間とその値から移動時間を算出し使用者が大きく移動したか否かを判断する移動判断手段とを有し、時刻情報取得手段は、移動判断手段の判断に基づいて、前回時刻情報を得た受信情報とは異なる別の受信情報を選択して時刻情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、標準時刻情報を持つ電波を受信して時刻情報を取得できる電波修正時計に関する。詳しくは、時差を持つ地域へ移動しても、使用者自身による特別な操作なしに速やかにその地域の標準時刻情報を取得する電波修正時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年より正確な時刻を知る手段として、標準時刻情報を持つ電波(以下、標準時刻電波)を受信することで時刻情報を取得する電波修正時計が利用されている。標準時刻情報は一般にセシウム原子時計を基準としており、これをもとに時刻を修正する電波修正時計も、極めて正確な時刻を示すことが知られている。
【0003】
このような電波修正時計は、例えば、日本やドイツ、英国、米国など各国ごとにその標準時刻電波の周波数や復号のためのプロトコル、タイムコードフォーマットが異なっているため、各国ごとに対応する電波修正時計が用意されることが多い。タイムコードフォーマットとは、データ長や年,月,時刻のデータの並び順やその形式などをいい、各国ごとに異なっている。
【0004】
近年、受信した標準時刻電波の種類に応じて適切な周波数とデータ形式を選択して時刻を修正する電波修正時計が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
特許文献1に示した従来技術は、使用者に周波数選択動作を強いることなく、複数の電波信号のなかから自動的に良好な受信状態の時刻情報信号を受信可能な時刻情報取得方法を提供する。また、特許文献2に示した従来技術は、標準時刻情報を含む異なる周波数の標準時刻電波から自動的に受信可能な周波数を選択し標準電波信号に応じて時刻修正可能な自動修正時計を提供する。
【0005】
特許文献1,特許文献2に示した従来技術を用いることで、複数の地域や国の周波数やデータ形式をその都度、適宜選択し、その国の標準時刻に修正、表示することができる。
【0006】
一方、電波修正時計の使用者が移動したことを検知して時刻の修正を行う技術も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
特許文献3に示した従来技術は、電波修正時計の使用者が航空機による移動を行ったときに、その気圧を測定することで移動した事実を認識し、さらにGPS(Global Positioning Syatem)による位置情報および時刻情報によりその地域や国の標準時刻を表示させる。
【0008】
【特許文献1】特開2002−296374号公報(第8頁、第1図)
【特許文献2】特開2003−75561号公報(第18頁、第2図)
【特許文献3】特開2005−221449号公報(第10頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、一般的な電波修正時計は、使用者の操作無しに自動的に標準時刻電波を受信し、時刻修正を行う。このとき、標準時刻電波を受信するために内蔵する受信回路を駆動するが、この受信回路はアンプ回路などを搭載しているため、その駆動時は比較的消費電力が高い。受信回路の駆動時に、外界のノイズの影響があると標準時刻電波の受信に失敗してしまうことが多く、受信のリトライ(再施行)を繰り返すと消費電力も増加してしま
う。
【0010】
外界のノイズとは、電子機器や乗り物、送電線などから発せられるものが知られており、通常、使用者が社会生活をおくる上では避けることが難しい。
このため、一般的な電波修正時計にあっては、使用者やその周囲のノイズ源が稼動していない時間帯、例えば、深夜などに標準時刻電波の受信を試みて時刻修正を行う。このようにすることで、外界のノイズの影響は受けにくくなり、リトライせずに標準時刻電波を受信できる。
【0011】
特許文献1,特許文献2に示した従来技術も同様であって、外界のノイズの影響を極力排除するために、一日に一度、深夜に時刻を修正する。このため、時計の使用者が日中に時差のある地域へ移動した場合、直前に時刻を修正してから24時間後にならないと自動で時刻修正しない。したがって、もとの地域の時刻を表示し続けることになる。
これを防ぐには、使用者自らが時計を操作して、移動した地域に提供されている標準時刻電波を強制的に受信させる必要があった。
【0012】
特許文献3に示した従来技術は、使用者の移動を気圧を測定することで検出し、さらに、GPSを搭載し時刻情報の更新を行うことが開示されているが、大きなアンテナを必要とするGPSの搭載により、時計自体が大型になったり、また、装置が高価となったりするなどの問題があった。
さらに、一般にGPSの衛星電波は屋内では受信が困難であることが知られており、実際にはその使用が制限されてしまうという問題があった。
【0013】
これらの問題を解決するために、本発明の目的は、時差のある地域に移動した場合にその移動を検知する手段と、移動を検知したことをきっかけに標準時刻電波の受信を自動的に行うことのできる手段とを備えた電波修正時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上のような問題を解決するために、本発明では以下に示す構成を採用する。
【0015】
標準時刻電波を受信し時刻情報を取得して時刻修正を行う電波修正時計であって、標準時刻電波を受信するための受信情報を複数記憶しており、受信情報の中から1つを選択して時刻情報を取得する時刻情報取得手段と、外部の気圧を検出する気圧検出手段と、検出した気圧とその検出を行ったときの時刻情報とから得られる移動時間に基づいて、使用者の移動の有無を判断する移動判断手段とを有し、時刻情報取得手段は、移動判断手段の判断に基づいて、前回時刻情報を得た受信情報とは異なる別の受信情報を選択して時刻情報を取得することを特徴とする。
【0016】
入力手段を設け、入力手段から個人情報を入力し、移動判断手段は、受信情報を選択するときに、個人情報も参照して選択することを特徴とする。
【0017】
気圧検出手段は、外部と密閉された構造を持つ時計本体に設ける圧電素子または歪センサ素子であり、外部の気圧の変化により発生する時計本体の一部の形状変化により発生する起電力の変化または静電容量値の変化を検出することで外部の気圧の変化として電気信号を出力することを特徴とする。
【0018】
圧電素子は、ブザー音発生用手段を兼ねることを特徴とする。
【0019】
歪センサ素子は、対向する2つの電極間に絶縁体または気体を挟持していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電波修正時計は、標準時刻電波の周波数情報やタイムコードフォーマットなどが異なる複数の標準時刻電波の受信情報を記憶しており、これらの受信情報の中から1つを選択して時刻修正を行う時刻情報取得手段と、気圧を検出する気圧検出手段と、気圧が変化した時間とその値から移動時間を算出し使用者が大きく移動したか否かを判断する移動判断手段とを有している。
時刻情報取得手段は、移動判断手段の判断に基づいて、前回時刻情報を得た受信情報とは異なる別の受信情報を1つ選択して時刻修正を行う。
使用者が特別な操作をすることなく、時差のある地域へ移動後、すみやかにその地域の時刻に時刻情報を更新することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[本発明の電波修正時計の構成の説明:図1]
本発明の電波修正時計は、複数の標準時刻電波に関する情報、例えば、同調周波数や復号のためのプロトコルなどを収容する記憶手段と、外気圧を取得する気圧検出手段と、外気圧検出部の出力から航空機による移動を判断する移動判断手段とを備えている。
気圧検出手段は、航空機による移動の際生じる減圧状態を把握するためのものであり、減圧状態を把握した移動判断手段は、航空機による移動が行われたとの判断を下し、時刻情報取得手段に標準時刻電波の受信を指示する。
この際、標準時刻電波を受信する時刻情報取得手段は、記憶手段の内容を参照することで、複数の標準時刻電波の同調を試み、最終的に適切な標準時刻電波を選択することができる。
さらに、その標準時刻電波の選択に際し、外気圧の圧力変化から類推される移動時間に対応する距離にある地域の標準時刻電波を上位におくことで、より効率的に標準時刻電波の選択を行うことができる。
【実施例】
【0022】
以下図面を用いて本発明の電波修正時計を実施する最良の形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明の電波修正時計を説明するブロック図である。100は時刻情報取得手段、101は気圧検出手段、102は移動判断手段、103は標準時刻電波情報記憶部、104は個人情報記憶部、105は時計内情報記憶部、106は入力手段、107は計時手段、108は記憶手段である。
【0024】
標準時刻電波情報記憶部103は、標準時刻電波を受信するための受信情報を記憶するものである。受信情報は、国の名称,識別信号,標準時刻電波周波数などを含むものであって、それぞれの地域や国ごとに異なるタイムコードフォーマットの情報も含んでいる。
個人情報記憶部104は、使用者の居所や使用者がよく行く外国の名称などのパーソナル情報を記憶する。
時計内情報記憶部105は、気圧検出手段101が計測した気圧情報や計時手段107が計時している時刻情報を記憶する。
記憶手段108は、標準時刻電波情報記憶部103と個人情報記憶部104と時計内情報記憶部105とを有しており、例えば、EEPROM(電気的に書き換え可能なROM)などを用いることができる。
なお、時刻を報知するための手段、アンテナ、受信回路など説明に必要ないものは省略してある。
【0025】
気圧検出手段101は、時計の外気の圧力を測定する手段である。気圧検出手段101は、通常知られている圧力センサなどを用いていることができる。圧力センサは、例えば
、半導体基板に設けたピエゾ抵抗素子が外気圧の変化に伴って変形する際に生じる抵抗値の変化を検出するものが知られている。
【0026】
一方、その他のセンサ方式の場合には、測定時に電圧を印加したり、電流を流したりする必要があるので、電池容量に制限のある時計では、常時圧力を測定すると、電池寿命が低下する恐れがある。その場合には、30分または1時間など、一定の間隔で外気圧を測定するアルゴリズムを採用すればよい。
【0027】
気圧検出手段101で検出された外気圧情報は、時計内情報記憶部105へ送られ記憶されるとともに、移動判断手段102へも送られる。
移動判断手段102は、一定の条件と満たすとき、標準時刻電波を受信するよう、時刻情報取得手段100へ指示を送る。
この一定の条件とは、時差を伴うような長距離の移動、例えば、航空機による移動が考えられる場合である。
【0028】
このような長距離の移動を判断する材料は、気圧の変化である。これは、航空機が飛行中、客室内の空気圧が乗客が不快に感じない範囲で減圧されていることを利用し、この減圧状態を検知して、航空機の移動と認識するものである。一般的には、客室内は0.8気圧程度に保たれている場合が多い。
【0029】
[時刻修正の手順の説明:図1]
次に、本発明の電波修正時計の時刻修正の手順を説明する。
まず、本発明の電波修正時計は、従来から知られている自動的に標準時刻電波を受信し、時刻修正を行う自動モードと、使用者が時計を操作して手動で標準時刻電波を受信し、時刻修正を行う手動モードとを搭載しているものとして説明する。
【0030】
まず、自動モード,手動モードに関わらず、前回時刻修正を行った際に用いた受信情報Inが記憶されている。受信情報Inについては後述する。
【0031】
入力手段106を操作して気圧検出手段101に気圧を測定させる。計測した気圧情報P0が時計内情報記憶部105に送られ、同時にそのときの時刻(現在時刻)T0が計時手段107から時計内情報記憶部105に送られ、記憶される。
【0032】
減圧状態が一定時間(例えば、10分間)継続すると、気圧検出手段101が気圧を検出し、計測した気圧情報P1が時計内情報記憶部105に送られ、同時にそのときの時刻T1が計時手段107から時計内情報記憶部105に送られ、記憶される。
その後、気圧検出手段101は、一定時間(例えば、60分)ごとに気圧を検出し、その一定時間ごとの気圧情報Pm1〜Pmendと、そのときに時刻Tm1〜Tmendを時計内情報記憶部105に送り記憶する。
【0033】
やがて、使用者が航空機を降りるなどして、使用者の周囲の気圧が上昇する。その状況を気圧検出手段101が検出する。気圧検出手段101により計測した気圧情報Pnが時計内情報記憶部105に送られ、同時にそのときの時刻Tnが計時手段107から時計内情報記憶部105に送られ、記憶される。
【0034】
移動判断手段102は、最初に減圧が一定時間経過したときの気圧情報P1を測定した時刻T1と、航空機を降りて気圧が上昇したときの気圧情報Pnを測定したときの時刻Tnとから減圧していた時間を求める。この減圧していた時間は、時刻Tm1〜Tmendから算出してもよい。
いずれにしても、気圧情報とそれに伴う時刻情報とから減圧状態が継続した時間を算出
し、その時間を移動時間Ttとする。この移動時間Ttの長さにより、標準時刻電波を受信するか否かの判断を行う。移動時間Ttは、時計内情報記憶部105に送られ、記憶される。
すなわち、移動時間Ttが長いほど、時差を伴うような長距離の移動である確率が高くなるから、現在時刻T0からずれて、時差も大きくなる可能性が高まると判断するのである。
【0035】
移動判断手段102により、移動時間Ttから「長距離を移動した」と認識され、その結果、「時刻情報を更新する必要がある」と判断されると、時刻情報取得手段100は、標準時刻電波の受信を試みる。
ところが、移動判断手段102により、「長距離を移動した」と判断されているから、使用者は、今まで滞在していた地域で受信していた標準時刻電波とは異なる標準時刻電波の地域に移動した可能性が高い。
そのため、時刻情報取得手段100は、複数の標準時刻電波を受信するために必要な受信情報を記憶している標準時刻電波情報記憶部103の内容を参照して、当該地域で提供されている標準時刻電波と整合するものを選択し、その受信情報をもとに標準時刻電波を受信する。
【0036】
ここでいう受信情報とは、標準時刻電波を受信するための同調周波数や、受信した信号を時刻情報に復号する際に用いられるプロトコルなどを示す。
標準時刻電波は、その周波数が仮に同じであっても、それぞれの地域や国ごとにタイムコードフォーマットが異なるために、それぞれの地域や国に対応した受信情報を持つ必要がある。この標準時刻電波情報記憶部103には、それらの受信情報が予め記憶してある。時刻情報取得手段100は、その受信情報を選択して、適する標準時刻電波を受信する。
【0037】
標準時刻電波情報記憶部103に記憶している受信情報の選択は、次のようにして行われる。
すなわち、時計内情報記憶部105に記憶している移動時間Ttから、移動先までの距離を算出する。例えば、移動時間Ttが60分ならば日本国内である可能性が高く、移動時間Ttが数時間であれば海外である可能性が高い。
そこで、移動時間Ttと到着する可能性のある地域または国と、そこで使用されている標準時刻電波を受信するために必要な受信情報とを標準時刻電波情報記憶部103に記憶し、利用する。その記憶されている受信情報を例示すると図2に示すようになる。
【0038】
図2に示す受信情報は、地域(または国)とそこで用いられている標準時刻電波の識別信号の種類とその周波数、またはタイムコードフォーマットなどが1つの受信情報として格納されており、それが複数ある様子を示している。
例えば、受信情報I1には、地域として日本、識別信号はJJY(登録商標)、その標準時刻電波周波数が40.0KHzであることが格納されている。そして、図示はしないが、この標準時刻電波の信号から時刻情報を得るためのタイムコードフォーマットも格納されている。
地域(または国)ごとに受信情報が必要なのは、すでに説明したように、たとえ同じ標準時刻電波の周波数であってもタイムコードフォーマットが異なるからである。
【0039】
[受信情報の入れ替え:図2]
時刻情報取得手段100は、通常は、図2に示す標準時刻電波情報記憶部103に記憶している受信情報を順番に選択し、受信を試みる。図2の例では、受信情報I1,I2,I3,I4,I5,I6,I7,I8と順番に受信情報を選択する。
しかし、より早く目的の受信情報を見つけるために、図2に示すような地域(または国
)別の受信情報に加えて、移動時間Ttと地域(または国)とを対応させておく。例えば、移動時間Ttが3時間であれば中国に到着する可能性が高いとしておく。このような関連情報も標準時刻電波情報記憶部103に記憶しておく。
【0040】
そして、到着可能性の高い地域(または国)で提供されている標準時刻電波を受信するため、時刻情報取得手段100は、受信情報を選択する順番を入れ替える。通常は、受信情報I1,I2,I3,...と順番に選択していくが、移動時間Ttによりその選択順番を入れ替えるのである。
上記の例でいえば、移動時間Ttが3時間の場合、中国にいる可能性が高いと関連付けられたとき、中国において標準時刻電波を受信するためには受信情報I3またはI4を用いる必要があるから、選択する受信情報の筆頭を受信情報I3,I4とし、その次からまた順番に選択し国内の情報である受信情報I1,I2は選択順番の最後にする。つまり、図2に示す例では、受信情報I3,I4,I5,I6,I7,I8,I1,I2の順番に受信情報を選択する。
【0041】
このように受信情報の選択順番を入れ替えることにより、標準時刻電波の受信に必要な受信情報をすばやく選択でき、短時間で時刻修正することができる。
【0042】
移動した使用者は、その地域(または国)にどのくらい長く滞在しているかわからない。そこで、新たに時刻修正する際は、自動モード,手動モードに関わらず、前回時刻修正に用いた受信情報Inを選択順番の筆頭にして時刻修正を試みる。
例えば、前回の標準時刻電波の受信に受信情報I3を用いたとすると、まず受信情報I3を筆頭にして標準時刻電波情報記憶部103に記憶している受信情報の選択順番を入れ替えるのである。
【0043】
また、使用者の個人情報を予め記憶しておくことで、さらに効率よく受信情報を選択することができる。入力手段106から使用者の居所、よく行く外国などの情報を個人情報記憶部104に記憶する。例えば、居所を「日本」とし、よく行く外国を「米国」として、これらの情報を個人情報PA1として記憶する。
【0044】
移動判断手段102により、移動時間Ttから「長距離を移動した」と認識され、その結果、「時刻情報を更新する必要がある」と判断されるとき、時刻情報取得手段100は、時計内情報記憶部105に記憶している移動時間Ttから、移動先までの距離を算出するが、このとき、個人情報記憶部104から上述の個人情報PA1を参照する。
個人情報PA1に居所が「日本」で、よく行く外国が「米国」と記憶されていると、例えば、移動時間Ttが8時間であっても、移動先を米国と仮定して、標準時刻電波情報記憶部103に記憶している受信情報の選択順番を入れ替え、受信情報I8を筆頭にする。もちろん、国内の情報である受信情報I1,I2は選択順番の最後にする。つまり、図2に示す例では、受信情報I8,I3,I4,I5,I6,I7,I1,I2の順番に受信情報を選択する。
【0045】
また、すでに説明したように、移動時間Ttと地域または国とを対応させておけば、これを利用して、航空機による同じような移動時間を有する国の受信情報の順番をさらに入れ替えることができる。つまり、上述の例にならえば、受信情報I8,I5,I6,I7,I3,I4,I1,I2の順番に受信情報を選択する。
【0046】
このように、時刻情報の更新に際して、個人情報も参照しつつ、用いる受信情報の選択順番を入れ替えることで、さらにすばやく時刻修正することができる。
【0047】
仮に、すでに説明したような、移動時間Ttから移動した地域または国を算出した結果
が間違っていても、必ず使用者がそもそもいた地域に対応する受信情報(説明では受信情報I1,I2)を用いて時刻修正を試みるため、実用上は問題はないのである。
また、登山などで山頂に長時間滞在した際など、移動時間Ttは長くなるが、実際はほとんど移動していない場合もある。このような場合においても、同様に実用上、なんら問題は起きない。
【0048】
なお、個人情報は、複数入力して記憶しておくことができる。その場合は、個人情報PA2,PA3,...として個人情報記憶部104に記憶され、それぞれ独立した個人情報として扱うことができる。本発明の電波修正時計の使用にあっては、入力手段106を用いて、個人情報PA1〜PAnを選択することもできる。
【0049】
[P0の設定の説明]
また、以上説明した構成では、入力手段106を操作して気圧検出手段101に気圧を測定させ、気圧情報P0を計測しているが、この気圧情報P0の計測は、入力手段106を操作しなくてもできる。計時手段107の時刻情報をもとにして、一定間隔で間欠的に気圧検出手段101を動作させ、常に気圧情報P0を更新しておけばよいのである。
【0050】
さらに、気圧検出手段101に用いるセンサによっては、そのセンサの検出信号を簡単に利用できる場合がある。例えば、圧電素子を用いる場合である。圧電素子に加わる気圧の変化による物理量から得られる信号をトリガにして、気圧検出手段101の動作とともに気圧情報P0を更新しておけばよい。気圧検出手段101に圧電素子を用いる例は、後述する。
【0051】
[電波修正時計の構成および気圧検出手段の説明:図3]
次に、本発明の電波修正時計の構成と気圧検出手段を図3を用いて説明する。図3は、本発明の電波修正時計の構成を説明する断面図であって、模式的に示す図である。
図3において、300は電波修正時計の本体、301はケース、302はムーブメント、303は風防ガラス、304は裏蓋、305は気圧検出手段であるセンサ素子、306は電気接点、307,308は指針、309は本体1の空隙である。
【0052】
センサ素子305は、例えば、圧電素子を用いることができる。センサ素子305は、本体300の内部に設けるとともに裏蓋304に接して設けてある。
【0053】
ムーブメント302は、図示していない電子回路を内蔵し、その電子回路の一部とセンサ素子305とは電気接点306によって接続されている。本体300に図示しないバンドを取り付け、使用者の腕に係止できるような構造にすれば、本体300は腕時計となる。また、本体300に図示しないスタンドを取り付けて卓上に置けるようにすれば、旅行などに携行できる置時計となる。
【0054】
図3(a)は、本発明の電波修正時計が常圧、つまり通常の大気圧の状況にある状態を示し、一方、図3(b)は、外気が減圧状態にある場合の様子を示している。外気が減圧状態とは、すなわち、航空機に搭乗している状態などに相当する。図3(b)に示すように、外気圧が減圧されているために、裏蓋304が変形(拡張)されており、ケース301内部の空隙309が大きくなっている。
【0055】
センサ素子305は、裏蓋304の変形に伴って、ともに変形している。このとき、センサ素子305は、圧電素子を用いているから、その変形に応じた起電力が発生し、この信号は、電気接点306を介してさらにムーブメント302に内蔵する図示しない電子回路に送られ、気圧として算出される。
【0056】
気圧検出手段として圧電素子を用いると、センサ自体のインピーダンスが高いことや、また歪による起電力による検出が可能であることから、常時圧力を測定状態にしても消費電力が少ないという特徴がある。
また、本発明の電波修正時計が、ブザー音発生機能を搭載していれば、この圧電素子をブザー音発生用手段として兼用して用いることもできる。そうすることによって、本発明の電波修正時計をさらに小型化することができる。
【0057】
さらにまた、すでに説明したとおり、気圧検出手段として圧電素子を用いると、圧電素子に歪が加わった際に生じる電圧をトリガとして、気圧情報P0を取得することができる。このようにすれば、例えば、航空機による移動を開始する際でも、スイッチ手段などを用いる必要はなく、使用者は何も操作をすることなく移動先で時刻修正ができるという効果がある。
【0058】
[気圧検出手段の説明:図3,図4]
次に、本発明の電波修正時計の気圧検出手段として歪センサ素子を用いた例を、図3,図4を用いて説明する。図4は、本発明の電波修正時計の気圧検出手段に用いられる歪センサ素子を説明する断面図であって、模式的に示す図である。
図4において、400は歪センサ素子、401は第1の電極、402は第2の電極、403は第1の電極401および第2の電極402の間隔を保持するためのスペーサ、404は第1電極401と第2の電極402との間の空隙である。405は、歪センサ素子400の中央部分である。
【0059】
第1の電極401と第2の電極402とは、特に限定しないが、金属箔で構成している。空隙404は、歪センサ素子400の変形を妨げないものであればよく、気体でも液体でもよい。もちろん、エラストマのような弾性材でもよい。スペーサ403は、この歪センサ素子に応力が印加されていない状態で空隙404が維持できるような強度を有していればよく、特に限定しないがプラスチックで構成することができる。
第1の電極401と第2の電極402には、図示しないリード線が設けてあり、同じく図示しない検出回路へと接続されている。
【0060】
歪センサ素子400を図3に示すセンサ素子305として用いるとき、歪センサ素子400は、本体300の内部に設けるとともに裏蓋304に接して設けてある。
図4(a)は、本発明の電波修正時計が常圧、つまり通常の大気圧の状態のときの歪センサ素子400を示し、一方、図4(b)は、外気が減圧状態にあるときの歪センサ素子400の様子を示している。すでに説明したように、外気が減圧状態とは、すなわち、航空機に搭乗している状態などに相当する。
【0061】
図4(b)に示すように、外気圧が減圧されているために、裏蓋304が変形(拡張)されており、ケース301内部の空隙309が大きくなり、歪センサ素子400は、裏蓋304の変形に伴って、ともに変形している。このとき、歪センサ素子400は、第1の電極401と第2の電極402との曲率の違いにより、図4(b)に示すように、両電極間の空隙404が減少する。特に、中央部分405の空隙404が狭くなっている。
このため、第1の電極401と第2の電極402との間の静電容量値も増加する。この静電容量値を観察すれば、裏蓋304の変形、すなわち外気圧の変化が検出できる。
つまり、外気圧の変化量を静電容量値の変化量として知りえることができる。これら双方の変化量との間には相関があるから、変換テーブルを用意すれば歪センサ素子400の静電容量値の絶対値をもって外気圧の絶対値を求めることもできる。
【0062】
すでに説明したように、センサ素子に圧電素子を用いる例と比較すると、圧電素子は変化した微分量のみが検出できるのに対し、歪センサ素子400は、かかる圧力の絶対値が
検出できるという長所がある。これは、間欠的に圧力を測定する場合に有効であり、しいては消費電力の低減に繋がるというメリットがある。
【0063】
[気圧検出手段の説明:図3,図5]
次に、本発明の電波修正時計の気圧検出手段として別の歪センサ素子を用いた例を、図3,図5を用いて説明する。図5は、本発明の電波修正時計の気圧検出手段に用いられる歪センサ素子を説明する断面図であって、模式的に示す図である。
図5において、500は歪センサ素子、501は上方電極、502は下方電極、503は上方501および下方電極502の間隔を保持するためのスペーサ、504は上方電極501と下方電極502との間の空隙である。505,506はシート状基板である。507は、金属配線である。508は、歪センサ素子500の中央部分である。
【0064】
上方電極501と下方電極402とは、特に限定しないが、金属箔で構成している。これらはシート状基板505,506にそれぞれ設けている。シート状基板505,506は、特に限定しないが、樹脂シートを用いることができる。空隙504は、歪センサ素子500の変形を妨げないものであればよく、気体でも液体でもよい。もちろん、エラストマのような弾性材でもよい。また、液晶を封入することもできる。スペーサ503は、この歪センサ素子に応力が印加されていない状態で空隙504が維持できるような強度を有していればよく、特に限定しないがプラスチックで構成することができる。
上方電極501と下方電極502は、シート状基板505,506の上部で金属配線507が接続しており、図示しない検出回路へと接続されている。
【0065】
歪センサ素子500を図3に示すセンサ素子305として用いるとき、歪センサ素子500は、本体300の内部に設けるとともに裏蓋304に接して設けてある。
図5(a)は、本発明の電波修正時計が常圧、つまり通常の大気圧の状態のときの歪センサ素子500を示し、一方、図5(b)は、外気が減圧状態にあるときの歪センサ素子500の様子を示している。すでに説明したように、外気が減圧状態とは、すなわち、航空機に搭乗している状態などに相当する。
【0066】
図5(b)に示すように、外気圧が減圧されているために、裏蓋304が変形(拡張)されており、ケース301内部の空隙309が大きくなり、歪センサ素子500は、裏蓋304の変形に伴って、ともに変形している。このとき、歪センサ素子500は、上方電極501と下方電極502との曲率の違いにより、図5(b)に示すように、両電極間の空隙504が減少する。特に、中央部分508の空隙504が狭くなっている。
このため、上方電極501と下方電極502との間の静電容量値も増加する。この静電容量値を観察すれば、裏蓋304の変形、すなわち外気圧の変化が検出できる。
つまり、外気圧の変化量を静電容量値の変化量として知りえることができる。これら双方の変化量との間には相関があるから、変換テーブルを用意すれば歪センサ素子500の静電容量値の絶対値をもって外気圧の絶対値を求めることもできる。
【0067】
すでに説明した図4に示す歪センサ素子400との違いは、上方電極501と下方電極402とがシート状基板505,506にそれぞれ設けてあり、上方電極501と下方電極402との耐久性が高いということである。
上方電極501と下方電極402とを特に薄い金属箔で構成しても、シート状基板505,506により、金属箔が断裂などを起すことはない。
【0068】
図3と図4,図5とを用いて説明した歪センサ素子400,500をセンサ素子として用いる例は、上述の説明に限定するものではない。歪センサ素子400,500は、図3に示す裏蓋304ではなく、例えば、風防ガラス303側に外気の気圧状態に応じて変形する手段を設け、それと接するように設けてもよい。大切なことは、気圧が変化したこと
による構造的な変形を歪センサ素子400,500に伝達するということである。
【0069】
また、歪センサ素子500をケース301の外側に設けてもよい。もちろん、ケース301との接続を仲介する仲介材を介して接続してもよい。
歪センサ素子500の内部の空隙504に空気を封止しておけば、外気圧の減少に伴って空隙504が広がり、上方電極501と下方電極502との間の静電容量値が減少する。この静電容量値を観察すれば、裏蓋304の変形、すなわち外気圧の変化を検出することができるのである。
【0070】
このような変形例は、空隙404,504内に封止する絶縁体や気体の材質や種類を変更することで自由に行うことができる。もちろん、シート状基板505,506の材質やその基板の厚さなどを変更することもできる。
【0071】
また、図示はしないが、静電容量値を記憶する容量値記憶手段を設けてもよい。歪センサ素子400,500は、その変形に応じて常にその静電容量値が変化している。このため、ある一定以上に静電容量値が変化しないとその静電容量値を採用しないなどの閾値としての静電容量値を設定し、記憶するのである。このようにすれば、その閾値との比較によって、気圧の低下を確実に知りえることができ、航空機への搭乗などを確実に検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の電波修正時計は、時差のある地域に移動しても簡単な操作または操作無しに時刻を移動先の標準時に合わせることができる。このため、長距離を移動する機会の多い使用者が持つ腕時計型電波修正時計に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の電波修正時計の構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明の電波修正時計の標準時刻電波情報記憶部に記憶している受信情報を説明する表である。
【図3】本発明の電波修正時計における気圧検出手段を説明する断面図である。
【図4】本発明の電波修正時計における気圧検出手段に歪センサ素子を用いる例を説明する断面図である。
【図5】本発明の電波修正時計における気圧検出手段に別の歪センサ素子を用いる例を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0074】
100 時刻情報取得手段
101 気圧検出手段
102 移動判断手段
103 標準時刻電波情報記憶部
104 個人情報記憶部
105 時計内情報記憶部
106 入力手段
107 計時手段
108 記憶手段
300 電波修正時計の本体
301 ケース
302 ムーブメント
303 風防ガラス
304 裏蓋
305 気圧検出手段であるセンサ素子
306 電気接点
307,308は指針
309 空隙
400,500 歪センサ素子
401 第1の電極
402 第2の電極
403,503 スペーサ
404,504 空隙
501 上方電極
502 下方電極
505,506 シート状基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準時刻電波を受信し時刻情報を取得して時刻修正を行う電波修正時計であって、
前記標準時刻電波を受信するための受信情報を複数記憶しており、該受信情報の中から1つを選択して時刻情報を取得する時刻情報取得手段と、
外部の気圧を検出する気圧検出手段と、
検出した前記気圧とその検出を行ったときの時刻情報とから得られる移動時間に基づいて、使用者の移動の有無を判断する移動判断手段とを有し、
前記時刻情報取得手段は、前記移動判断手段の判断に基づいて、前回時刻情報を得た前記受信情報とは異なる別の前記受信情報を選択して時刻情報を取得することを特徴とする電波修正時計。
【請求項2】
入力手段を設け、該入力手段から個人情報を入力し、
前記移動判断手段は、前記受信情報を選択するときに、前記個人情報も参照して選択することを特徴とする請求項1に記載の電波修正時計。
【請求項3】
前記気圧検出手段は、外部と密閉された構造を持つ時計本体に設ける圧電素子または歪センサ素子であり、
前記外部の気圧の変化により発生する前記時計本体の一部の形状変化により発生する起電力の変化または静電容量値の変化を検出することで前記外部の気圧の変化として電気信号を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の電波修正時計。
【請求項4】
前記圧電素子は、ブザー音発生用手段を兼ねることを特徴とする請求項3に記載の電波修正時計。
【請求項5】
歪センサ素子は、対向する2つの電極間に絶縁体または気体を挟持していることを特徴とする請求項3に記載の電波修正時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−107312(P2008−107312A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59714(P2007−59714)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】