説明

電波吸収内装材料

【課題】
外観及び耐久性に優れ、しかも、簡単に電波吸収層を製造できる電波吸収内装材料を提供する。
【解決手段】
導電性短繊維を0.08〜5重量%と非導電性短繊維とを含む不織布シートと、立毛部を有する非導電性繊維シートとを、樹脂を介して相互に固定している電波吸収内装材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は新規な電波吸収内装材料に関する。本願発明に係る電波吸収内装材料は、量産性、施工性、美観、耐久性などに優れ、無線LAN等の電磁波を発信する機器を設置した住宅やオフィスの壁面、床等に設置して電磁波環境をコントロールするために用いられる。
【背景技術】
【0002】
電波吸収体は、到来した電波を取り込んで減衰させるものであって、取り込んだ電波を材料の電気的損失や磁気的損失を利用して吸収するものである。
【0003】
従来の電波吸収体としては、炭素繊維メッシュを導電性ゴム体の中に入れてタイルカーペット基体とし、このタイルカーペット基体に導電性ゴム接着剤を介して毛足を織り込んだものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、導電性元素を含むセラミック繊維により構成されている電磁波吸収カーテンが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、炭素繊維メッシュと導電性ゴム体からなるカーペットでは、ゴムなどの樹脂基材に導電粉体を均一に混合するのは非常に手間がかかり、かつ炭素繊維と導電性ゴム基体とを導通状態で接合していることを確認する作業は品質管理上必須であるが、極めて手間のかかる作業であった。また、導電性セラミック繊維を用いる方法は、材料の製造が難しく製造コストを圧迫する原因となっていた。
【0004】
このように、従来の電波吸収内装材料は、製造・品質管理に非常に手間がかかったり、材料の製造が難しいために製造コストが高いなどの問題があった。
【特許文献1】特開平6−310891号公報
【特許文献2】特開2001−135135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来の電波吸収体の上述した問題点に鑑み、電波吸収層を簡単に製造でき、しかも量産性や施工後の美観及び耐久性に優れた電波吸収内装材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、導電性短繊維を0.08〜5重量%と非導電性短繊維とを含む不織布シートと、立毛部を有する非導電性繊維シートとを、樹脂を介して相互に固定している電波吸収内装材料を提供する。
【0007】
混合成型シートは、導電性短繊維と非導電性短繊維とを含む不織布シートであることが好ましい。さらに、混合成型シートは、複数の層から構成され、その層間に非導電層を有していることが好ましい。
【0008】
非導電性繊維シートは、有機繊維織物または有機繊維編物であると美観及び耐久性に優れており好ましい。
【0009】
有機繊維織物または有機繊維編物は、耐久性の面から、カーペット状の立毛形態を有していることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電波吸収性能を有する内装材料は、導電性を有する短繊維と非導電性を有する短繊維との混合成型シートと、非導電性繊維シートとを樹脂を介して相互に固定しているので、実施例からも明らかなように外観及び耐久性に優れ、しかも、簡単に電波吸収層を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1において、電波吸収内装材料は、電波の到来側から順に、非導電性繊維シート1と、接合樹脂層2と、導電性短繊維と非導電性短繊維とを含む混合成型シート3との層状構成を有する。混合成型シート3は、非導電性短繊維4と導電性短繊維5とが混合されている。混合成型シート3は、非導電性短繊維4と導電性短繊維5のみから構成されても良く、また強度を増すために非導電性短繊維4と導電性短繊維5とがゴムなどの樹脂中に混合固定されていても良いが、良く混合されていることが重要である。
【0012】
導電性を有する短繊維としては、炭素繊維、有機導電性繊維、金属繊維、金属メッキ繊維等を用いることができる。また、炭素繊維や炭化ケイ素繊維を製造する際の焼成温度を制御することによって得られる半導体繊維であってもよい。
【0013】
非導電性繊維シート1と、導電性短繊維と非導電性短繊維とを含む混合成型シート3とを接合する接合樹脂層は、ポリウレタン系、ポリ塩化ビニル系、ゴム系、エポキシ系、酢酸ビニル系等の接着剤や熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
【0014】
非導電性繊維シート1は、非導電性繊維からなる不織布、織物、編物のいずれでも良く、またはタフテットカーペットのように基布と立毛部とを有する複合繊維シートであっても良く、使用形態に応じて適宜選択することができる。内装材料としての美観を優先する場合には染色加工性が良く意匠性に優れる織物が望ましく、耐久性を優先する場合には立毛形態を取ることが好ましく、基布と立毛部を有する複合繊維シートが特に望ましい。有機繊維が立毛形態を取ることにより、より表面の耐久性が向上する。カーペット状の立毛形態を形成する方法としては、例えば公知のタフテットカーペット製造方法を用いることができる。すなわち、不織布や織物などのタフテッドカーペット基布に対し、有機繊維を当該基布を貫通するようにループ状に連続的に縫製して、有機繊維の半数以上が基布に対して立ち上がった立毛状態を有するカーペット状有機繊維シートを得ることができる。
【0015】
非導電性繊維シートは、有機繊維を含むことが好ましい。有機繊維の種類は特に限定されないが、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキザゾール繊維、ポリ乳酸繊維等を用いることができる。また、非導電性繊維の電気抵抗としては、体積抵抗率が、用いる導電性繊維の体積抵抗率よりも2桁以上大きいものを選択するのが好ましい。
【0016】
混合成型シート3は電気的損失により到来した電波を吸収する。具体的には、到来した電波の作用により混合成型シート内に微少な電流が流れ、最終的には熱に変換して電波エネルギーを減衰・吸収するものである。
【0017】
当該混合成型シートは、いろいろな方法によって製造することができるが、製造の容易さ及び導電性短繊維と非導電性短繊維との均一混合を得るために、混合が均一に進みかつ量産性に優れる湿式抄紙された混抄紙、あるいは導電性短繊維と非導電性短繊維とを混綿したものをカード機に通して得た乾式不織布であることが特に好ましい。
【0018】
混抄紙は、これらの導電性短繊維と非導電性短繊維とのそれぞれ少なくとも1種と水とを混合し、スラリーにして抄きあげる湿式抄紙法や、これらの導電性短繊維と非導電性短繊維とのそれぞれ少なくとも1種を空気中で攪拌、混合し、シート状に捕集する乾式抄紙法によって得ることができる。必要に応じて、水酸化アルミニウム等の無機結合材や、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、パラフィン、アクリル繊維等の有機結合材を添加してもよい。湿式抄紙法による場合、導電性短繊維としては、低比重であるために混抄しやすく、また、アスペクト比を大きくとれるために使用量が少なくてすむ炭素繊維を用いるのが好ましい。その場合、炭素繊維は、あまり短いと繊維同士が重なりにくくなって接点の数が減少するようになり、接点の減少を補おうとして使用量を増やすと製造コストが高くなる。また、平均繊維長が長くなると、一見、繊維同士の重なり合いが多くなって使用量が少なくてすむように思えるが、逆に折れやすくなるのでそれほど少量化できるわけでもないので、平均繊維長が1〜60mmの範囲内にあるものを使用するのが好ましい。また、混抄紙中における炭素繊維の含有量は、電波吸収層の電気的損失に影響を与える。極端に少ないと電気的損失が低くなって電波吸収性能が低下するようになるし、極端に多いと電気的損失は高くなるものの反射される電波も増えるようになるので、0.08〜5重量%の範囲内とするのが好ましい。
【0019】
混合成型シートは、また、上述した混抄紙や混合不織布をゴムや合成樹脂等のバインダと混ぜてシートとしたり、導電性短繊維と非導電性短繊維とを含む塗料を紙やフィルム、繊維等の基材に塗布したり含浸したりすることによっても得ることができる。また、混合成型シート内もしくは接合樹脂層内に、電波吸収性を増すために磁気的損失を担う材料、すなわち、材料のスピンの共鳴によって電波エネルギーを熱エネルギーに変換する材料を混合しても良い。磁気的損失材料としては、フェライト粉等を用いることができる。フェライトは、結晶構造により六方晶型、ガーネット型、スピネル型等があるが、いずれであってもよい。
【0020】
タフテットカーペット状に電波吸収内装材料を形成する場合は、タフテットカーペット基布として、混合成型シートを用いても良い。
【0021】
本発明の内装材料の裏面に金属箔などの電波反射層を配置して使用してもよい。電波反射層は、電波吸収層を通過した電波を電波吸収層に反射し、1回の通過では吸収しきれなかった電波を電波吸収層で再び吸収させるように作用するものである。そのような電波反射層は、たとえば、アルミニウム、銅、銀等の金属や、炭素繊維と樹脂との複合材料からなる板、シート、薄膜等で構成される。厚みは任意でよい。もっとも、この電波反射層は、電波吸収体を貼り付けたり装着したりする、いわゆる相手材が導電性をもっている場合には、それが電波反射層として作用するので、必須のものではない。
【0022】
本発明の電波吸収内装材料の構成として、図1のように、非導電繊維シート1と混合成型シート3とが接合樹脂層2を介して相互に離れていても良い。
【0023】
図2は、本発明の実施様態の一例を示したものである。混合成型シート3は、図1のように1層であっても良く、また図2のように混合成型シート層間に非導電性物質を配した多層構造を有していても良い。混合成型シートを多層に配置する場合は、電波が到来する側から順に体積抵抗値が低くなるように配すると、電波吸収性がより向上して望ましい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例および比較例に示す性能値は次の方法で測定した。
<反射損失>
大きさ30cm×30cmで1mm厚さのアルミ板に垂直に電波を当てた時の反射レベルを測定した後、同面積のサンプルに電波を当て、両者の差から反射損失(dB)を測定した。反射損失の測定は、アジレント・テクノロジー社製ネットワークアナライザ8719ES型の透過(S21)で測定した。
<実施例1>
図1を用いて具体的に示す。
【0025】
繊維長38mmの日本蚕毛染色(株)製、有機導電性繊維「サンダーロン(R)」と、繊維長76mmのポリエステル短繊維をそれぞれ0.5重量%、99.5重量%の割合で混綿したものを、カード機に通し、厚さ3mm、重量300g/mの短繊維不織布シート状の混合成型シート3を得た。次にナイロン繊維をパイル糸として、またポリプロピレンのスプリット糸平織り織物をタフテット基布としてそれぞれタフティング機に通し、パイル長4mmのタフテットカーペット1を得た。混合成型シート3の片面に、タフテットカーペット1をポリウレタン系樹脂層2を介して接着し、総厚み7mmの電波吸収内装材料を得た。
【0026】
タフテットカーペット側を表面とし、裏面に反射層として1mm厚のアルミ板を貼り付けて電波吸収体とした。前記吸収体について反射損失を測定したところ、2〜10GHzにおいて5〜8dBの吸収特性が得られた。
【0027】
また、タフテットカーペット側を表面として、床に6ヶ月敷いて歩行等による損傷の程度を確認したが、損傷は見られなかった。
<実施例2>
ポリアクリロニトリル系を原料とする繊維長が6mm、繊維直径が7μmの炭素繊維の短繊維、繊維長が20mmのポリエステル短繊維および平均繊維長が0.7mmの木質パルプを、それぞれの重量比が3重量%、77重量%、20重量%になるよう混合したものを湿式抄紙し、厚さ0.5mm、重量100g/mの短繊維不織布シート状混合成型シート(A)を得た。
【0028】
次に、ナイロン繊維をパイル糸として、また前記短繊維不織布シート状混合成型シート(A)をタフテット基布としてそれぞれタフティング機に通し、パイル長4mmのタフテットカーペットを得た。当該タフテットカーペットは、タフテット基布に導電性短繊維を有するタフテットカーペットである。
【0029】
このカーペット裏面にポリ塩化ビニル系の樹脂を塗厚さ1mmになるよう塗布し、さらに別の短繊維不織布シート状混合成型シート(A)と接合した。また、さらにその裏面にポリ塩化ビニル系の樹脂を塗厚さ1mmになるよう塗布し総厚み約7mmの電波吸収内装材料を得た。当該電波吸収内装材料は、2層の導電繊維と非導電繊維からなる混合成型シート層を有している。
【0030】
当該内装材料のタフテットカーペット側を表面とし、裏面に反射層として1mm厚のアルミ板を貼り付けて電波吸収体とした。前記吸収体について反射損失を測定したところ、2〜10GHzにおいて5〜8dBの吸収特性が得られた。
【0031】
また、タフテットカーペット側を表面として、床に6ヶ月敷いて歩行等による損傷の程度を確認したが、損傷は見られなかった。
<比較例1>
厚さ3mm、重量300g/mのポリエステル100%短繊維不織布シートの片面に、実施例1で用いたのと同様のパイル長4mmのタフテットカーペットをポリウレタン系の樹脂を介して接着し、総厚み7mmの内装材料を得た。タフテットカーペット側を表面とし、裏面に反射層として1mm厚のアルミ板を貼り付けて電波吸収体とした。前記吸収体について反射損失を測定したところ、2〜10GHzにおいて吸収量は0dBで吸収効果は認められなかった。
<比較例2>
繊維長38mmの日本蚕毛染色(株)製、有機導電性繊維「サンダーロン(R)」と、繊維長76mmのポリエステル短繊維をそれぞれ0.5重量%、99.5重量%の割合で混綿したものを、カード機に通し、厚さ3mm、重量300g/mの短繊維不織布シート状の混合成型シートを得た。本成型体は、電波吸収性能はあるものの、見た目が悪く内装材としては適用が難しかった。また、床材料として6ヶ月間敷いて歩行等による損傷の程度を確認したが、6ヶ月後材料の一部が千切れるなど大きな損傷が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る電波吸収内装材料の断面概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電波吸収内装材料の断面概略図である。
【符号の説明】
【0033】
1:非導電性繊維シート
2:樹脂層
3:導電性短繊維と非導電性短繊維からなる混合成型シート
4:非導電性短繊維
5:導電性短繊維
6:非導電性物質層
7:電波反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性短繊維を0.08〜5重量%と非導電性短繊維とを含む不織布シートと、立毛部を有する非導電性繊維シートとを、樹脂を介して相互に固定している電波吸収内装材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−138508(P2008−138508A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310425(P2007−310425)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【分割の表示】特願2003−140011(P2003−140011)の分割
【原出願日】平成15年5月19日(2003.5.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】