説明

電流方式ローパスフィルタ

【課題】回路規模の小さい電流方式ローパスフィルタを提供する。
【解決手段】ローパスフィルタ10は、入力端子12と、出力電圧発生ノード16と、電源Vccから入力端子12に定電流Iconst1を供給する定電流源48と、電源Vccから出力電圧発生ノード16に定電流Iconst2を供給する定電流源50と、出力電圧発生ノード16に接続された入力を有するボルテージフォロワ回路34と、ボルテージフォロワ回路34の出力と入力端子12との間に接続された抵抗36と、出力電圧発生ノード16に接続された容量20と、ベース接地トランジスタ62と、カレントミラー回路28と、ボルテージフォロワ回路34の出力に接続された出力端子14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流方式ローパスフィルタに関し、さらに詳しくは、オーディオ機器のD/A(Digital to Analog)変換出力に挿入される電流方式ローパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オーディオ信号はアナログ方式からデジタル方式に変わってきているが、出力回路においてはD/A変換器(DAC;Digital to Analog Converter)によりデジタルオーディオ信号からアナログオーディオ信号に変換される。アナログオーディオ信号にはD/A変換時に発生するパルス性ノイズが大量に含まれ、これを除去するためにVLSC(Vector Linear Shaping Circuitry)(オンキヨー株式会社の登録商標)と呼ばれる回路が設けられる。
【0003】
VLSCに用いられるローパスフィルタは、特開2003−283299号公報(特許文献1)に開示されている。このローパスフィルタは、DACから出力されるアナログ信号と出力ノードから帰還される出力信号との差分値を求める差分演算回路と、差分演算回路の出力信号を受け、その電圧値を電流値に変換する電圧電流変換回路と、出力ノードに接続され、電圧電流変換回路から出力された電流により充電又は放電される容量とを備える。
【0004】
このローパスフィルタは電圧出力方式のDAC用に設計されているが、DACには電圧出力方式だけでなく電流出力方式も多数ある。このローパスフィルタを電流出力方式のDACに用いるためには、DACとローパスフィルタとの間に電流電圧変換回路を介在させる必要がある。この電流電圧変換回路の追加は、回路規模の増大、S/Nや歪み率の悪化、消費電力の増大という問題を引き起こす。
【0005】
特許第4026665号公報(特許文献2)にもVLSCに用いられる改良型ローパスフィルタが開示されているが、このローパスフィルタも電圧出力方式のDAC用に設計されているので、上記と同じ問題がある。
【特許文献1】特開2003−283299号公報
【特許文献2】特許第4026665号公報
【特許文献3】特開平4−273711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、回路規模の小さい電流方式ローパスフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明による電流方式ローパスフィルタは、演算回路と、容量と、電圧電流変換回路とを備える。演算回路は、入力電流と帰還電流とを演算して出力電流を供給する。容量は、演算回路からの出力電流に応じて電荷を蓄積することにより出力電圧を生成する。電圧電流変換回路は、出力電圧を帰還電流に変換する。
【0008】
本発明によれば、電流出力方式のDACに電流電圧変換回路を介在させることなく直接接続可能な電流方式ローパスフィルタを小さい回路規模で実現することができる。
【0009】
好ましくは、ローパスフィルタはさらに、演算回路からの出力電流に応じて充電電流を容量に供給するカレントミラー回路を備える。
【0010】
この場合、回路規模の小さいカレントミラー回路が設けられているため、出力電圧が入力側に出てしまうことはない。
【0011】
好ましくは、ローパスフィルタはさらに、演算回路からの出力電流を増幅してカレントミラー回路に供給するベース接地増幅回路を備える。
【0012】
この場合、ローパスフィルタはDACから出力される入力電流を0Vで受けることができる。
【0013】
好ましくは、演算回路は、連結ノードと、第1から第3までの配線を含む。第1の配線は、連結ノードに接続され、入力電流を供給する。第2の配線は、連結ノードに接続され、帰還電流を供給する。第3の配線は、連結ノードに接続され、出力電流を供給する。
【0014】
この場合、演算回路は単純な結線で構成されるので、ローパスフィルタの回路規模をさらに小さくすることができる。
【0015】
好ましくは、電圧電流変換回路は、ボルテージフォロワ回路と、抵抗とを含む。ボルテージフォロワ回路は出力電圧を受ける。抵抗は、第2の配線とボルテージフォロワ回路との間に接続される。
【0016】
この場合、電圧電流変換回路はボルテージフォロワ回路及び抵抗で構成されるので、ローパスフィルタの回路規模をさらに小さくすることができる。
【0017】
好ましくは、ボルテージフォロワ回路の出力電圧はローパスフィルタの出力電圧として出力される。
【0018】
この場合、ローパスフィルタの出力にボルテージフォロワ回路を追加しなくても出力インピーダンスを低くすることができる。
【0019】
本発明による他の電流方式ローパスフィルタは、入力端子と、出力電圧発生ノードと、第1及び第2の定電流源と、ボルテージフォロワ回路と、抵抗と、容量と、第1から第3までのトランジスタと、出力端子とを備える。第1の定電流源は、第1の電源から入力端子に定電流を供給する。第2の定電流源は、第1の電源から出力電圧発生ノードに定電流を供給する。ボルテージフォロワ回路は、出力電圧発生ノードに接続された入力を有する。抵抗は、ボルテージフォロワ回路の出力と入力端子との間に接続される。容量は、出力電圧発生ノードに接続される。第1のトランジスタは、接地されたベースと、入力端子に接続されたエミッタと、コレクタとを有する。第2のトランジスタは、第1のトランジスタのコレクタに接続されかつ相互に接続されたコレクタ及びベースと、第2の電源に接続されたエミッタとを有する。第3のトランジスタは、出力電圧発生ノードに接続されたコレクタと、第2のトランジスタのベースに接続されたベースと、第2の電源に接続されたエミッタとを有する。出力端子は、ボルテージフォロワ回路の出力に接続される。
【0020】
本発明によれば、電流出力方式のDACに電流電圧変換回路を介在させることなく直接接続可能な電流方式ローパスフィルタを実現することができる。また、第2及び第3のトランジスタで構成されるカレントミラー回路が設けられているため、出力電圧が入力側に出てしまうことはない。また、入力がベース接地トランジスタ(第1のトランジスタ)で構成されているため、ローパスフィルタはDACから出力される入力電流を0Vで受けることができる。また、出力端子はボルテージフォロワ回路の出力に接続されているため、ローパスフィルタの出力にボルテージフォロワ回路を追加しなくても出力インピーダンスを低くすることができる。また、このようなローパスフィルタを小さい回路規模で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
図1を参照して、本発明の実施の形態による電流方式ローパスフィルタ10は、入力端子12と、出力端子14と、出力電圧発生ノード16と、演算回路18と、容量20と、電圧電流変換回路22とを備える。このローパスフィルタ10は、前掲の特開2003−283299号公報(特許文献1)の図1に示されているローパスフィルタと同じ伝達関数を有する。
【0023】
入力端子12には電流出力方式のDAC(図示せず)から出力される入力電流Iinが供給される。出力端子14から出力電圧Voutが出力される。出力電圧発生ノード16は出力端子14に接続される。演算回路18は、入力電流Iinと帰還電流Ifbとの差を演算し、差電流Idif(=Iin−Ifb)を出力する。容量20は、出力電圧発生ノード16と接地24との間に接続され、差電流Idifに応じて電荷を蓄積することにより出力電圧Voutを出力電圧発生ノード16に生成する。電圧電流変換回路22は、出力電圧Voutを帰還電流Ifbに変換する。
【0024】
出力電圧Voutは出力電圧発生ノード16に発生するが、出力電圧Voutは入力端子12から出力され、DACに戻らないようにするのが好ましい。そこで、図2に示すように、差電流Idifに対し、電圧ブースタ26を追加する。電圧ブースタ26は、入力側の電圧と出力側の電圧とを分離し、かつ、差電流Idifと同じ大きさの充電電流Ichgを容量20に供給する。したがって、出力電圧Voutは入力側には出力されず、その結果、入力側の電圧は0Vに維持される。
【0025】
電圧ブースタ26は一般に回路規模が大きいため、図3に示すように、電圧ブースタ26の代わりにカレントミラー回路28を用いるのが好ましい。この場合、出力の位相が反転し、出力電圧−Voutが出力されるので、演算回路30は差ではなく和を演算し、和電流Iadd(=Iin+(−Ifb))を出力する。カレントミラー回路28は、和電流Iaddと同じ大きさの充電電流−Ichgを容量20に供給する。ここでは出力が反転するだけで、伝達関数は維持される。
【0026】
また、DACから出力される入力電流Iinを0Vで受けるために、図4に示すように、ベース接地増幅回路32を追加するのが好ましい。これにより、入力側の電圧が0Vに維持されるので、図5に示すように、電圧電流変換回路22をボルテージフォロワ回路34及び抵抗36だけで構成することができる。ボルテージフォロワ回路34はオペアンプ38を含む。オペアンプ38の非反転増幅端子(+)は出力電圧発生ノード16に接続され、反転増幅端子(−)は出力端子に接続され、出力端子は抵抗36に接続される。
【0027】
また、入力側の電圧が0Vに維持されるので、演算回路30を単純な結線だけで構成することができる。具体的には、演算回路30は、連結ノード40と、3本の配線42,44,46とで構成される。配線42は連結ノード40に接続され、入力電流Iinを供給する。配線44は連結ノード40に接続され、帰還電流−Ifbを供給する。配線46は連結ノード40に接続され、和電流Iaddを供給する。
【0028】
次に、ベース接地増幅回路32及びカレントミラー回路28の構成を簡単にするために、図6に示すように、定電流源48及び50を追加する。定電流源48は、電源Vccから連結ノード40(入力端子12)にバイアス用に定電流Iconst1を供給する。定電流源50は、電源Vccから出力電圧発生ノード16にバイアス用に定電流Iconst2を供給する。
【0029】
図6に示したローパスフィルタ10を実際の回路に展開すると、たとえば図7に示した回路となる。図7を参照して、このローパスフィルタ10は、入力端子12と、出力端子14と、出力電圧発生ノード16と、容量20と、電圧電流変換回路22と、カレントミラー回路28と、ベース接地増幅回路32と、連結ノード40と、定電流源48及び50とを備える。入力端子12には電流出力方式のDAC52から出力される入力電流Iinが供給される。
【0030】
カレントミラー回路28は、NPNトランジスタ54及び56と、抵抗58及び60とを備える。トランジスタ54のコレクタ及びベースは相互に接続(ダイオード接続)される。抵抗58は、トランジスタ54のエミッタと負電源−Vccとの間に接続される。トランジスタ56のコレクタは出力電圧発生ノード16に接続され、ベースはトランジスタ54のベースに接続される。抵抗60は、トランジスタ56のエミッタと負電源−Vccとの間に接続される。
【0031】
ベース接地増幅回路32はPNPトランジスタ62からなる。トランジスタ62のエミッタは連結ノード40(入力端子12)に接続され、ベースは接地24に接続され、コレクタはトランジスタ54のコレクタに接続される。
【0032】
定電流源48は、PNPトランジスタ64と、抵抗66と、ツェナーダイオード68と、抵抗70とを備える。ツェナーダイオード68及び抵抗70は、一定の基準電圧を発生する基準電圧発生回路を構成する。一定の基準電圧がトランジスタ64のベースに与えられるため、トランジスタ64は定電流Iconst1を連結ノード40(入力端子12)に供給する。
【0033】
定電流源50は、PNPトランジスタ72と、抵抗74と、ツェナーダイオード68と、抵抗70とを備える。定電流源48及び50は、ツェナーダイオード68及び抵抗70で構成される基準電圧発生回路を共用する。一定の基準電圧がトランジスタ72のベースに与えられるため、トランジスタ72は定電流Iconst2を出力電圧発生ノード16に供給する。
【0034】
出力端子14は、出力電圧発生ノード16ではなく、ボルテージフォロワ回路34の出力に接続される。
【0035】
以上のように、本発明の実施の形態によれば、電流出力方式のDAC52に電流電圧変換回路を介在させることなく直接接続可能な電流方式ローパスフィルタ10を実現することができる。また、カレントミラー回路28が設けられているため、出力電圧−Voutが入力側に出てしまうことはない。また、入力がベース接地トランジスタ62で構成されているため、ローパスフィルタ10はDAC52から出力される入力電流Iinを0Vで受けることができる。また、出力端子14はボルテージフォロワ回路34の出力に接続されているため、ローパスフィルタ10の出力にボルテージフォロワ回路を追加しなくても出力インピーダンスを低くすることができる。また、ローパスフィルタ10は、オペアンプ1個、抵抗6個、トランジスタ5個で実現することができる。
【0036】
なお、ツェナーダイオード68及び抵抗70は共用されているが、それぞれに1つずつ設けられていてもよい。また、エミッタ抵抗58,60は省略可能である。
【0037】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態による電流方式ローパスフィルタの基本構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1に示した基本構成に電圧ブースタを追加した構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図2中の電圧ブースタをカレントミラー回路に置き換えた構成を示す機能ブロック図である。
【図4】図3に示した構成にベース接地増幅回路を追加した構成を示す機能ブロック図である。
【図5】図4中の演算回路及び電圧電流変換回路を具体化した構成を示す機能ブロック図である。
【図6】図5に示した構成に定電流源を追加した構成を示す機能ブロック図である。
【図7】図6に示した構成を具体化した回路図である。
【符号の説明】
【0039】
10 電流方式ローパスフィルタ
12 入力端子
14 出力端子
16 出力電圧発生ノード
18,30 演算回路
20 容量
22 電圧電流変換回路
24 接地
26 電圧ブースタ
28 カレントミラー回路
32 ベース接地増幅回路
34 ボルテージフォロワ回路
36,58,60,66,70,74 抵抗
38 オペアンプ
40 連結ノード
42,44,46 配線
48,50 定電流源
54,56,62,64,72 トランジスタ
68 ツェナーダイオード
Iin 入力電流
Ifb 帰還電流
Idif 差電流
Iadd 和電流
Ichg 充電電流
Iconst1,Iconst2 定電流
Vout 出力電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電流と帰還電流とを演算して出力電流を供給する演算回路と、
前記演算回路からの出力電流に応じて電荷を蓄積することにより出力電圧を生成する容量と、
前記出力電圧を前記帰還電流に変換する電圧電流変換回路とを備えたことを特徴とする電流方式ローパスフィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の電流方式ローパスフィルタであってさらに、
前記演算回路からの出力電流に応じて充電電流を前記容量に供給するカレントミラー回路を備えたことを特徴とする電流方式ローパスフィルタ。
【請求項3】
請求項2に記載の電流方式ローパスフィルタであってさらに、
前記演算回路からの出力電流を増幅して前記カレントミラー回路に供給するベース接地増幅回路を備えたことを特徴とする電流方式ローパスフィルタ。
【請求項4】
請求項3に記載の電流方式ローパスフィルタであって、
前記演算回路は、
連結ノードと、
前記連結ノードに接続され、前記入力電流を供給する第1の配線と、
前記連結ノードに接続され、前記帰還電流を供給する第2の配線と、
前記連結ノードに接続され、前記出力電流を供給する第3の配線とを含む、ことを特徴とする電流方式ローパスフィルタ。
【請求項5】
請求項4に記載の電流方式ローパスフィルタであって、
前記電圧電流変換回路は、
前記出力電圧を受けるボルテージフォロワ回路と、
前記第2の配線と前記ボルテージフォロワ回路との間に接続された抵抗とを含む、ことを特徴とする電流方式ローパスフィルタ。
【請求項6】
請求項5に記載の電流方式ローパスフィルタであって、
前記ボルテージフォロワ回路の出力電圧は前記電流方式ローパスフィルタの出力電圧として出力される、ことを特徴とする電流方式ローパスフィルタ。
【請求項7】
入力端子と、
出力電圧発生ノードと、
第1の電源から前記入力端子に定電流を供給する第1の定電流源と、
前記第1の電源から前記出力電圧発生ノードに定電流を供給する第2の定電流源と、
前記出力電圧発生ノードに接続された入力を有するボルテージフォロワ回路と、
前記ボルテージフォロワ回路の出力と前記入力端子との間に接続された抵抗と、
前記出力電圧発生ノードに接続された容量と、
接地されたベースと、前記入力端子に接続されたエミッタと、コレクタとを有する第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタのコレクタに接続されかつ相互に接続されたコレクタ及びベースと、第2の電源に接続されたエミッタとを有する第2のトランジスタと、
前記出力電圧発生ノードに接続されたコレクタと、前記第2のトランジスタのベースに接続されたベースと、前記第2の電源に接続されたエミッタとを有する第3のトランジスタと、
前記ボルテージフォロワ回路の出力に接続された出力端子とを備えたことを特徴とする電流方式ローパスフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−218640(P2009−218640A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57028(P2008−57028)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】