説明

電流検出回路

【課題】パルス状に与えられる電流に対する過電流検出において、ノイズの影響を確実に除去しながら、応答性にも優れたものとする。
【解決手段】入力される電流値を電圧信号に変換し、予め設定された第1のリミット値と比較する第1の比較部(11,Rin1,Ru1,Rd1)と、第1の比較部(11,Rin1,Ru1,Rd1)の出力を所定の時定数に基づいて維持する時定数付与部(Rup,Co)と、時定数付与部(Rup,Co)の出力信号のパルス数を積算して電圧値に変換する電圧変換部(RB,RBE,Q2,D,R1,R2,C1)と、電圧変換部(RB,RBE,Q2,D,R1,R2,C1)の出力を予め設定された第2のリミット値と比較してエラーパルスを出力する第2の比較部(12,Rin2,Ru2,Rd2,Rf,Rup)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス電流に対する過電流の検出を行なう電流検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脈動電流を発生する負荷や、パルス状のノイズの発生に対しても誤検出することがないようにした過電流検出回路を提供する技術が考えられている。(例えば、特許文献1)
この特許文献1では、電流検出抵抗の出力を、RC積分回路で構成されるフィルタ回路を介して比較回路に入力し、所定の電流値との比較により過電流を検出する。フィルタ回路では、フィルタ定数を条件に合わせて適宜設定することが可能となる。
【0003】
また、他の特許文献では、フィルタ回路を備える電流検出回路の遅延を解決して急峻な波形の電流変化を検出可能にした技術が考えられている。(例えば、特許文献2)
この特許文献2では、RCフィルタのR(抵抗)に並列接続されたダイオードによって、検出抵抗からの出力電圧の変化(負荷の電流変化)の大きさが、ダイオードのVf(順方向降下)電圧以上なら抵抗Rがパスされ、同Vf電圧以下なら抵抗Rが機能することによって、フィルタ定数が入力電圧の対象により2段階となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−341663号公報
【特許文献2】特開2009−159745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術では、設定によって程度の良否は異なるが、いずれにしても急峻なエラーには対応できず、検出しきれない。
【0006】
また、上記特許文献2の技術では、短いエラーパルスでも条件によっては検出可能とできるものの、電流のデューティによってフィルタ効果が変動し、パルス幅によって検出電圧が変わるという不具合を有する。
【0007】
図3は、上記各特許文献に共通する検出回路の基本構成の概念を示す。同図で、入力端子INがNチャンネルのFETQ1のドレインに接続され、同FETQ1のゲートにオン/オフ制御のためのPWM(パルス幅変調)信号が与えられる。同FETQ1のソースが、点Cを介して、電圧降下法で電流量を電圧量に変換し、電流の大きさを検出する抵抗RSの一端に接続され、同抵抗RSの他端が接地される。
【0008】
上記抵抗RSを含んで、過電流の検出対象となる電流ラインを図中に矢印CL1で示す。上記FETQ1のソース及び上記抵抗RSの一端に抵抗R1の一端が接続され、同抵抗R1の他端が、一端を接地したコンデンサC1の他端に接続されると共に、検出用の出力端子OUTとされる。上記抵抗R1とコンデンサC1とでRCローパスフィルタ回路を構成する。
【0009】
このような回路構成にあって、上記RCローパスフィルタ回路によるノイズ除去特性を上げると、確実にノイズ成分の除去が図れる反面、本来は検出しなければならない信号の一部も失われる。そのため、実際に過電流のピークが発生した場合の応答性が低下するという不具合がある。
【0010】
このようにパルス状の電流に対する過電流検出を考える場合、パルスのデューティとノイズフィルタ特性、及び過電流への応答性すべての最適な条件を与えることは非常に困難となる。
【0011】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、パルス状に与えられる電気信号に対する過電流検出において、ノイズの影響を確実に除去しながら、応答性にも優れた電流検出回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、入力される電流値を電圧信号に変換し、予め設定された第1のリミット値と比較する第1の比較部と、上記第1の比較部の出力を所定の時定数に基づいて維持する時定数付与部と、上記時定数付与部の出力信号のパルス数を積算して電圧値に変換する電圧変換部と、上記電圧変換部の出力を予め設定された第2のリミット値と比較してエラーパルスを出力する第2の比較部とを具備したことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記電圧変換部は、上記電圧変換部のコンデンサの充放電の時定数の差を用いて上記時定数付与部の出力信号のパルス数を積算して電圧値に変換することを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、上記請求項1または2記載の発明において、上記電圧変換部は、上記時定数付与部の出力信号のパルスが複数回連続して入力された場合、もしくは、左記複数回の積算量に見合う合計時間を超えた連続した信号が入力された場合にのみ、上記電圧変換部の出力電圧が上記第2のリミット値を超え、上記第2の比較部における比較回路出力が反転してエラー出力が出力される様に、上記時定数の差が調整されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、上記請求項1乃至3いずれか記載の発明において、上記時定数付与部は、コンデンサと、該コンデンサを充電するために直列に接続された時定数設定抵抗とにより構成されるCR時定数回路を備え、上記第1の比較部が、上記時定数設定抵抗の充電電流をキャンセルし、かつ、コンデンサの電荷を短時間で放電するオープンコレクターもしくはオープンドレイン出力で構成される事を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、パルス状に与えられる電気信号に対する過電流検出において、ノイズの影響を確実に除去しながら、応答性にも優れたものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る過電流検出回路の構成を示す図。
【図2】同実施形態に係る図1の回路の各部位における動作信号波形を示すタイミングチャート。
【図3】一般的な過電流検出の回路構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の一実施形態として、検出対象となる電流経路にパルス状の電流が流れている場合について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る過電流検出回路10の構成を示す。同図で、入力端子INがNチャンネルのFETQ1のドレインに接続され、同FETQ1のゲートにオン/オフ制御のためのPWM(パルス幅変調)信号が与えられる。同FETQ1のソースが、点aを介して、電圧降下法で電流量を電圧量に変換し、電流の大きさを検出するための抵抗RSの一端に接続され、同抵抗RSの他端が接地される。
【0020】
上記抵抗RSを含んで、過電流の検出対象となる電流ラインを図中に矢印CL11で示す。上記FETQ1のソース及び上記抵抗RSの一端に抵抗Rin1の一端が接続され、同抵抗Rin1の他端が、第1のコンパレータ(COMP1)11のマイナス入力端子に接続される。
【0021】
同コンパレータ11のプラス入力端子には、電圧VCC/接地間を抵抗Ru1,Rd1で分圧した第1の参照電位Vref1が与えられる。この第1のコンパレータ11の比較出力Voが点bに与えられる。
【0022】
第1のコンパレータ11と上記抵抗Rin1、抵抗Ru1、及び抵抗Rd1により比較回路を構成し、本回路10の電流リミット値としての第1の参照電位Vref1に対する比較を行なう。
【0023】
上記第1のコンパレータ11の出力端である点bは、抵抗Rupを介して電圧VCCが印加されると共に、コンデンサCoを介して接地される。これら抵抗Rup及びコンデンサCoで時定数回路を構成する。
【0024】
さらに、上記点bには、抵抗RBの一端が接続される。この抵抗RBの他端が点cとなり、同点cが、抵抗RBEを介して接地されると共に、NPNタイプのトランジスタQ2のベースと接続される。
【0025】
同トランジスタQ2のコレクタは、抵抗R1を介して電圧VCCが印加されるともに、ダイオードDのアノードが接続される。また、トランジスタQ2のエミッタは接地される。
【0026】
上記ダイオードDのカソードが点dとして、一端を接地したコンデンサC1の他端、一端を接地した抵抗R2、及び抵抗Rin2の一端に接続される。さらに、上記抵抗Rin2の他端が第2のコンパレータ(COMP2)12のプラス入力端子に接続される。
【0027】
上記抵抗RB,RBE、トランジスタQ2、ダイオードD、抵抗R1,R2、及びコンデンサC1は、コンデンサC1の充放電時定数の差を利用して、パルス数を積算して電圧レベルに変換する回路である。
【0028】
上記第2のコンパレータ12のマイナス入力端子には、電圧VCC/接地間を抵抗Ru2,Rd2で分圧した第2の参照電位Vref2が与えられる。この第2のコンパレータ12の比較出力は、抵抗Rfを介してプラス入力端子に帰還されると共に、一端に電圧VCCが印加される抵抗Rupの他端と接続され、検出用の出力端子OUTとされる。
【0029】
次に上記実施形態の動作を説明する。
図2は、上記図1の回路中の各部位における信号波形を示すタイミングチャートである。
【0030】
図2(A)に示すようにFETQ1のゲートに与えられるPWM信号によってFETQ1がスイッチング動作することにより電流ラインCL11には、パルス状の電流が流れる。抵抗RSが電流を電圧に変換することで、点aにおける電位は図2(B)に示すように、電流ラインCL11に流れる電流の大きさを表すパルス状の波形となる。
【0031】
この点aにおける電位が、第1のコンパレータ11を含む比較回路で、予め定めた過電流リミット値として設定されている第1の参照電圧AVref1と比較される。第1のコンパレータ11の出力形式はオープンコレクタとなっており、a点の電位が参照電圧を超えていない場合は、出力オープンとなり、コンデンサCoが抵抗Rupにより充電されb点の電圧は徐々に上昇する。
【0032】
よって、a点の電位が第1の参照電圧AVref1を超えていない初期の状態では、コンデンサCoが抵抗Rupにより充分に充電されており図の様に“H”レベルになっている。
【0033】
ここで電流ラインCL11に流れる電流が増加して、図に示す様にa点の電圧が徐々に増加して、参照電圧を超えてきた場合には、コンパレータ11の出力トランジスタがオンし、低抵抗で基準電位に接地されるため、コンデンサCoの電荷が急速に放電されるとともにb点が即座にGND電位となる。
【0034】
次にパルス電流がoffとなりa点の電位が検出電位より下がると、再びコンパレータ11の出力はオープンとなり、コンデンサCoが抵抗Rupにより充電されb点の電圧は徐々に上昇する。よって、第1のコンパレータ11の出力である点bでの電位は図2(C)に示すような波形となる。
【0035】
この第1のコンパレータ11の出力の動作と、上述した抵抗Rup及びコンデンサCoの時定数回路の働きにより、短い時間、電流リミット値を超えた場合でも、後段にある程度の“L”レベルの信号のパルス幅が保証される。
【0036】
図2(D)に示すようにトランジスタQ2のベースと接続された点cでは、抵抗RB,RBEの働きにより上記点bでの信号が分割され、トランジスタQ2の動作点電圧が調整される。
【0037】
トランジスタQ2では、上記点cでの信号に応じて図2(E)に示すようにオン/オフスイッチング動作する。このオン/オフ動作に応じ、トランジスタQ2がオフ状態では、抵抗R1とダイオードDの経路でコンデンサC1が充電される。その後にトランジスタQ2がオン状態となると、コンデンサC1に蓄積された電荷は抵抗R2によりゆっくりと放電される。
【0038】
この充放電時定数の差により、過電流検出されるピーク電流のパルスの数が多いほどコンデンサC1の電圧が上昇するように構成されている。点dでの電位を図2(F)に示すように、リミットを超えたピーク電流のパルスの数だけ、コンデンサC1の電圧が積算して順次上昇していく状態が理解できる。
【0039】
このような点dでの電位に対し、同じく図2(F)で示すように第2のコンパレータ12のマイナス入力端子に第2の参照電位Vref2が与えられる。この第2の参照電位Vref2は、電流リミット値を超えたパルスが連続して何回発生したか、その頻度を検出条件として設定された比較電位である。
【0040】
したがって、図2(G)に示すように第2のコンパレータ12では、上記コンデンサC1の電圧が第2の参照電位Vref2を超えた時点で比較出力が“H”レベルとなり、これが本過電流検出回路10の検出信号として後段の図示しない制御回路等へ出力される。
【0041】
以上詳述した如く本実施形態によれば、パルス状に与えられる電気信号に対する過電流検出において、意図した過電流レベルを超えたパルスは短時間でも取りこぼさず検出の対象波形として認識しつつも、意図した回数連続しないと過電流として判定されないため、偶然単発的に発生する短いノイズの影響を確実に除去しながら、応答性にも優れた過電流検出動作が可能となる。
【0042】
また上記実施形態では、抵抗RB,RBE、トランジスタQ2、ダイオードD、抵抗R1,R2、及びコンデンサC1により、コンデンサC1の充放電時定数の差を利用して、パルス数を積算して電圧レベルに変換する回路を構成するものとした。
【0043】
これにより、簡易な構成ながら過電流検出したパルス状の数をカウントして、第2のコンパレータ12で任意に設定可能な第2の参照電位Vref2と比較させることができるため、設定の自由度を高めることができる。
【0044】
上記実施形態では、過電流を検出する電流ラインにパルス状の電流が流れている場合について例について説明を行なったが、検出する電流が連続する場合に、その電流に乗るスパイク状のノイズの除去も同様に可能である。本発明は、意図したレベルを超えた信号と、それが複数回連続もしくは同等の時間連続する、という二つの条件が揃うことをエラー判定の条件とするため、不定期に発生する単発的な短いノイズ成分を確実に除外判定できる。
【0045】
なお上記実施形態では、具体的な回路素子の構成による一例を示したが、本発明は上記構成に限定することなく、他の回路素子を用いても同様に構成できる。
【0046】
その他、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組み合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件による適宜の組み合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0047】
10…過電流検出回路、11…第1のコンパレータ(COMP1)、12…第2のコンパレータ(COMP2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される電流値を電圧信号に変換し、予め設定された第1のリミット値と比較する第1の比較部と、
上記第1の比較部の出力を所定の時定数に基づいて維持する時定数付与部と、
上記時定数付与部の出力信号のパルス数を積算して電圧値に変換する電圧変換部と、
上記電圧変換部の出力を予め設定された第2のリミット値と比較してエラーパルスを出力する第2の比較部と
を具備したことを特徴とする電流検出回路。
【請求項2】
上記電圧変換部は、上記電圧変換部のコンデンサの充放電の時定数の差を用いて上記時定数付与部の出力信号のパルス数を積算して電圧値に変換することを特徴とする請求項1記載の電流検出回路。
【請求項3】
上記電圧変換部は、上記時定数付与部の出力信号のパルスが複数回連続して入力された場合、もしくは、左記複数回の積算量に見合う合計時間を超えた連続した信号が入力された場合にのみ、上記電圧変換部の出力電圧が上記第2のリミット値を超え、上記第2の比較部における比較回路出力が反転してエラー出力が出力される様に、上記時定数の差が調整されていることを特徴とする請求項1または2記載の電流検出回路。
【請求項4】
上記時定数付与部は、コンデンサと、該コンデンサを充電するために直列に接続された時定数設定抵抗とにより構成されるCR時定数回路を備え、
上記第1の比較部が、上記時定数設定抵抗の充電電流をキャンセルし、かつ、コンデンサの電荷を短時間で放電するオープンコレクターもしくはオープンドレイン出力で構成される事を特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の電流検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−70567(P2012−70567A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214343(P2010−214343)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】