説明

電源システムと電子機器と電源供給装置および電源供給方法

【課題】電源や負荷を統合的な環境で利用できるようにする。
【解決手段】バッテリ4、一時電源5、ACアダプタ6、負荷7が電源バスライン1、接地バスライン2およびデータバスライン(バスシステム)に接続されている。バスシステムに接続されている各ブロックは自らをオブジェクトとして記述し、各ブロックのオブジェクトが、アドレス設定プロセスとアドレス確認プロセスから構成されるアドレス設定モードで設定されたアドレスを用いて、データバスラインを介して電源仕様のやり取りを行う。バッテリ4等の電源供給装置からの電力で負荷の駆動が可能と判別したときに、バスラインを介して電源供給装置から負荷に電力の供給を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、種々の電源や負荷を統合的に管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリー等を電源とする、ポータブル機器の発展にともない、複数のバッテリー搭載機器を同時に使用する機会が増加しつつある。例えば、モバイルコンピュータの画像をHMD(ヘッドマウンテッド・ディスプレイ)で観測する場合や、モバイルコンピュータをモデムカードを仲介として携帯電話に接続する場合などである。この様な場合においても、現在のところモバイルPC(パーソナル・コンピュータ)にはそれ専用の、またHMDや携帯電話にはそれら専用のバッテリーが用いられ、お互いの間でのエネルギーの融通は無い。
【0003】
また、PCやその周辺機器の発展に伴いウエアラブルPCが提唱され、いくつかの商品化例も見られる様になった。この場合でも、電源に関しては専用に設計されたものが使用され、例え手近に満充電された二次電池があろうとも互換性が無いため流用できない。
【0004】
一方、ウエアラブルPCを含むモバイル機器では、いかに電源を確保するかというのは切実な問題であり、場合によっては手回し発電機の様な機器さえ必要になる。
【0005】
しかしながら、現在では、各種電源や各種負荷(機器)の間で統一的に電源を制御するアーキテクチャは無く、二次電池やACアダプタ、簡易発電機等を設計するにしてもある特定の機器専用となってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に述べた不具合を解決するため、電源供給源と電源消費者という考えに基づいて、それらを抽象化し、統一的に定義し、複数の電源供給源(バッテリーやACアダプタ等)、複数の電源消費者が一つの共通バスライン上に柔軟に着脱可能となるシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上述の目的を達成するために、特許請求の範囲に記載のとおりの構成を採用している。ここでは、特許請求の範囲の記載について補足的に説明をしておく。
【0008】
すなわち、この発明では、アドレス設定プロセスとアドレス確認プロセスから構成されるアドレス設定モードで設定されたアドレスを用いてバス接続ポートと接続される1つのバスラインを介して、最低供給可能電圧を示す情報が含まれた電圧仕様と最大出力電流を示す情報が含まれた電流仕様を含む電源仕様の通信を行い、該情報の通信によって電源供給装置からの電力で負荷の駆動が可能と判別したときに、バスラインを介して電源供給装置から電力の供給を行う。
【0009】
この構成においては、設定されたアドレスを用いてバスラインを介して、最低供給可能電圧を示す情報が含まれた電圧仕様と最大出力電流を示す情報が含まれた電流仕様を含む電源仕様の通信が行われるので、送受信するデータに基づいて最適な状態で(予め設定された基準の基づく)バスラインを介して電源の供給や消費を行え、また、バスシステムを用いて統合的に電源供給・消費やデータの送受信を行える。したがって、種々の機器間で電源供給・消費について融通し会うことができる。
【0010】
また、バスシステムが、データバス管理のためにアドレス信号を周期的に発生し、そのアドレス信号に対応する情報は、バスに接続されるブロックが発信するようにしてもよい。
【0011】
この場合、発生するアドレス信号が、システム上可能な最大数までとすることが好ましい。
【0012】
また、発生するアドレス信号が、バス上にあるブロックの数+1としてもよい。
【0013】
単一のデータバスラインを用いて、それに接続される複数のブロックのアドレスの設定および、データ通信の双方を行うようにすることが好ましい。
【0014】
また、単一のデータバスラインを用いてそれに接続される複数のブロックのアドレスの設定および、データ通信を二つの段階に分けて行うようにしてもよい。
【0015】
単一のデータバスラインに複数のブロックが接続され、それら複数のブロックのアドレス付与の方式が以下の特徴を持つことが好ましい。
【0016】
アドレス設定開始タイミングがすべてのブロックに対して同時(半導体素子のばらつきや回路のディレイ等による差はここでは含まない)であり、
各ブロックはランダムに発生したデータを同じタイミングでデータバスに出力し、従って、データバスライン上にはそれらのオア信号が発生し、
データバスライン上の情報と各ブロックが発生した信号を比較する事で、他のブロックが発生したデータを知る事なく、一つのブロックが特定でき、
特定されたブロックにユニークなアドレスを割り当て、この一連の動作を繰り返す事で最終的にはすべてのブロックにユニークなアドレスが割り当てられる。
【0017】
また、アドレス付与後に、以下に示すユニークアドレス確認を行うことが好ましい。
データバス管理手段が発生するアドレスに対し、そのアドレスの固有データをデータバス上に出力する事で、オア信号を発生し、
各ブロックが自分の固有データとバス上のデータを照合する事で、自分以外に同じアドレスが存在する事を認識し、
同じアドレスが存在するときには、再度、同位置のアドレスを有するブロックの範囲で、上述のアドレスバス付与を行ないアドレスを振り直す。
【0018】
また、データバスライン上の特定アドレスに対するブロック属性が消滅した事でブロックの削除を認識し、逆にブロック属性が存在していなかった特定アドレスに対して、ブロック属性を新規検出する事で、ブロックの接続を認識するようにしてもよい。
さらに、バスラインに接続された任意のブロックの間で、双方向のデータ通信が可能であり、かつ、この通信により任意のブロックが(自身を含む)任意のブロックの制御、情報読み出し、情報かき込みが可能なようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、以下のような効果を実現できる。
1 モバイル機器、ウエアラブル機器に対して、共通の電源管理アーキテクチャを提供し、バッテリや電源の共通化がはかれる。
2 異なった種類の電源(一次電池、二次電池、ACアダプター、DCアダプター、発電機)や異なった機器(負荷)の間で、お互いの状況を通信する共通の通信手段および言語体系を提供し、複数の機器間で共通に使用可能な電源関連機器設計ができる。
3 各種の電源供給源を共通のアーキテクチャの中で定義する事により、幅広いエネルギー供給源を機器の電源に使用可能となり、機器使用環境が飛躍的に拡大する。
4 複数の異なった種類の電源が共通のバスラインに論理的に並列接続が可能となり、バスラインに接続する電源の数を増やすだけで、電源容量を上昇できる。
5 本電源管理アーキテクチャはスケーラブルであり、比較的小電力のものから、オブジェクト数が多く、かつ大電力を扱うものまで同一の考えで設計できる。
6 本アーキテクチャに基づいて設計する事により、電源関係ブロックの標準化が可能で、電源システム設計の大幅な省力化が可能である。
7 オブジェクトエミュレータにより、例えばPCなどにより電源の動作状態をモニターする事ができ、信頼性の高い電源システムを容易に構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施例の構成を全体として示す図である。
【図2】上述実施例の電源オブジェクトの構成例を説明する図である。
【図3】上述実施例の一時エネルギーストレージオブジェクトの構成例を説明する図である。
【図4】上述実施例の負荷オブジェクトの構成例を説明する図である。
【図5】上述実施例のバス管理手段を説明する図である。
【図6】上述実施例のアドレス付与を説明する図である。
【図7】上述実施例のアドレス付与を説明する図である。
【図8】上述実施例のアドレス付与を説明する図である。
【図9】上述実施例のアドレス付与を説明する図である。
【図10】上述実施例のアドレス付与を説明する図である。
【図11】上述実施例のアドレス付与を説明する図である。
【図12】上述実施例のアドレス付与を説明する図である。
【図13】上述実施例のアドレス付与を説明する図である。
【図14】上述実施例のデータ通信フォーマットを説明する図である。
【図15】上述実施例のデータ通信フォーマットを説明する図である。
【図16】上述実施例のデータ通信フォーマットを説明する図である。
【図17】上述実施例のコマンドの発信、回答を説明する図である。
【図18】上述実施例を具体例をあげて説明するずである。
【図19】図18の負荷の構成を説明する図である。
【図20】図18および図19の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明を実施するための形態について説明する。
【0022】
本発明は、ハードウエアとして、電源およびデータバスとそのバスコントローラ、それらバスに接続される電源構成ブロック、ソフトウエアとして電源構成ブロックのオブジェクトモデル化および、バスコントローラの動作メカニズム、電源構成ブロック間の通信フォーマットを包含する一つのアーキテクチャに関するものである。
【0023】
ここでは内容が多岐にわたるため、次の3部構成で説明する。
第1部:電源構成ブロックをどの様にオブジェクトモデル化するかについて説明。第2部:電源オブジェクトモデルを使用して実際の電源バスシステムをいかに構築するかについて説明する。
第3部:構築された電源バスシステム上で各オブジェクトモデルがどの様に動作するかについて説明する。
【0024】
[第1部 電源に使用されるブロックのオブジェクトモデル化]
1.電源に使用されるブロックの整理
現在電源関係に使用されている、あるいは可能性のあるブロックは概略以下のものである。
(1)電源供給源
:一次電池(乾電池等)
:ACアダプタ(商用ラインからDCを発生させ、機器の電源または二次電池の充電に用いる)
:DCアダプタ(カーバッテリ等のDC電源からターゲット機器に適するDCを発生させ、ACアダプタと同様の用途に用いる)
:簡易発電機(エンジン付の発電機から、手動発電機まで)
:太陽電池
:空間の電磁波からエネルギーを発生するもの(例えば、特開平10−146077号公報)
:その他各種燃料電池、生体からエネルギーを取り出すもの
(2)電源消費者(負荷)
:各種機器(一般に、この部分が実ユーザに対して何らかの利便性を提供する)
(3)電源供給、消費源
:二次電池(NiCd電池、Ni水素電池、リチウム電池、リチウムイオン電池、鉛電池等)
(電動自転車におけるモータの様に通常は電力を消費するものだが、制動時に電力発生の可能性をもつブロック(回生制動機能をもつもの)は、後述する理由により(3)ではなく(2)負荷に分類するのが適当である。)
つまり、電源関係で使用されるブロックを、高いレベルで抽象化すると上記3つにわけられ、さらに(3)は(1)と(2)の機能を共通にもつものと考えられる。またこれらを抽象化するには主としてコンピュータプログラミング分野で用いられている考えであるオブジェクトが有効である。従って、以下上記(1)、(2)、(3)をオブジェクトとして定義していくが、最初に簡単にオブジェクトとは何かについて説明する。
【0025】
2.オブジェクトの説明
オブジェクトとは、通常はコンピュータのプログラミング手法で用いられる用語であって、ある機能を実現する部分をブラックボックスとして扱い、ユーザ(プログラマ)にはその外部から見た仕様のみを与え、プログラミングの効率化を図る事を主目的とする。
【0026】
オブジェクトは、その機能ブロックの仕様を示すデータ、そしてそれらのデータを変更したり、何らかの機能を実現する関数群から構成される。
【0027】
オブジェクト指向そのものは特定のプログラム言語専有のものではないが、ここではもっとも一般的なC++言語により説明する。
オブジェクトはC++においてはクラスとして定義され、例えば次の様なものである。(以下、山下 他著、C++プログラミングスタイル、p147、オーム社より引用)
【表1】


この例では、Turtle(亀)クラスを定義し、そのデータとして位置座標x、yと方向direction、クラスに対する動作を定義するものとして関数forward(int),turnleft(),turnright()を定義している。つまり、Turtleというオブジェクトを、その現在位置、進行方向、左回り動作、右回り動作、前進動作というデータおよび機能で規定している。
【0028】
3.電源に使用されるブロックのモデル化
(3−1)電源システムに使用されるブロックの抽象化
図1は一般的な電源の供給、消費システムを示したもので、1、2、3はそれぞれ電源、GND、信号のためのバスラインである。3の信号バスについては、GND2を共通帰線とする単一の線の場合、電源ラインとは独立に複数の線により構成される場合、さらに電源バス(1)に重畳され物理的には存在しない場合もある。4はバッテリー(ニッケル水素やリチウムイオンの様な二次電池、マンガンやアルカリ等の一次電池を問わない)、5は電気二重層コンデンサを貯蔵源とする様な一時電源、6はACアダプタ(チャージャと兼用の場合もある)、7は負荷となる一般電気機器である。これらバスに接続されるもの(以降でオブジェクトとして定義する)の数は問わない。いずれのブロックもパワーバスラインに必ずしもすべてが同時に物理的に接続されるものではなく、各ブロックとパワーバスラインとの間にスイッチ(実用的には半導体スイッチ)が挿入されている。
【0029】
電源システムを構成する要素としては上記の様に各種考えられるが、これらの要素を抽象化すると、電源供給源となるもの(一次、ACアダプタ、DCアダプタ等)および、これらから電源を供給される消費者(負荷)に大別できる。オブジェクト指向の特徴の一つは、共通機能を持つ新しいオブジェクトをその元となるオブジェクトから派生させることが可能な点にある。従って、ここでもこのフィロソフィーに従い、まず本電源バスシステムに接続されるオブジェクトを定義し、それより電源供給源オブジェクトと負荷としてのオブジェクトを派生する。ACアダプタや一次電池などは電源供給源オブジェクトから派生させる。電気機器そのものは、本システムからみれば単に負荷オブジェクトとして抽象化される。また1で述べた(3)項に相当するものは電源供給源、および負荷の機能を継承して生成される。実用機器で主要な電源となる二次電池はこの(3)項に属すると考えるのが適当である。
【0030】
また、二次電池に対する充電方式はそのバッテリーの種類(NiCdかリチウムイオンか等)により異なるし、電気二重層コンデンサを用いた一時電源の充電の仕方はバッテリーとも異なる。しかし、これらの相違点もオブジェクト指向の大きなフィロソフィーであるポリモ−フィズムにより統一的に扱え、単にユーザ(この場合は、本アーキテクチャに基づいて電源関係機器を設計する設計者)からは同一のインターフェースで扱える。
【0031】
(3−2)電源オブジェクト、負荷オブジェクトの投入、切断
図1に示すシステムにおいて、電源供給オブジェクト(図2)、負荷オブジェクト(図4)とも電源バスラインに対してスイッチを有している。電源供給オブジェクト、負荷オブジェクトとも1個の時は、それぞれに電源に対するスイッチを有するのは冗長であるが、複数の電源オブジェクトや負荷オブジェクト、さらには、電源または負荷となるオブジェクトを考慮するとこういう構造にするのが適当である。
【0032】
この様な構造で、いったい誰がどのオブジェクトの(電源バスに対する)スイッチを投入するかについて以下の様に規定する。
電源供給オブジェクトのスイッチは、複数の電源供給オブジェクトが同じバスライン上に存在するときに、それらのうち一つのみを有効にするために用いる。 複数の電源供給オブジェクトから一つを選択する際には、次のプライオリティー付けに従う。
【0033】
1 ACアダプタ
2 DCアダプタ
3 二次電池
4 一次電池
5 一時エネルギーストレージ
即ち、最も長時間エネルギーが供給できそうなものの順とする。また、同じレベルの電源供給オブジェクトが存在する場合は、例えばその容量順とかアドレス順とする(これはシステムの実装上の問題である)。
負荷オブジェクトのスイッチ投入は、負荷の先に存在するセットの要求により制御されるのが原則であるので、負荷自身が制御する。この時、制御命令を自分自身に対して発信するようにする。こうすれば、バスライン上のほかのオブジェクトも情報共有ができる。
【0034】
4.電源供給源ブロックのオブジェクトモデル化
(4−1)最上位オブジェクトモデル
以下、本実施例に示す電源システムに接続されるブロックのオブジェクトモデル化について説明する。
【0035】
最初に、本電源システムに接続されるすべてのもの(バス管理手段を除く)を含むクラスを定義し、すべてのオブジェクトはこれから派生ないし継承で生成する。従って、このモデルがすべてのクラスの原型となる。
【表2】


上記クラスの定義の中で、データとしてアドレスは存在するが、関数としてアドレスを読み出すものはない。これは、本システムの構造上、オブジェクトに対してアドレスを問い合わせる事はできない(つまり、データ問い合わせのベースとなるのがアドレスであるので)からである。
【0036】
(4−2)電源供給源のモデル化
バッテリーやACアダプタ等の電源供給源の基本モデルとなるものである。このモデルは電源供給源として必要な情報、およびそれに関連する機能をまとめたものである。
【0037】
図2において、10はDC電源であり、これがバッテリーであるかACを整流した直流電源であるかは問わない。11は電流検出のための抵抗、12は電力バス(16)との接続を行うためのスイッチ、19はこの物理装置を論理的なオブジェクトとするためのマイクロプロセッサ(即ち、情報バスライン17から見込むとこの物理装置は論理的オブジェクトに見える)であり、具体的にはDC電源の電圧や出力電流の測定、スイッチ12のコントロール、自分自身のバス上のアドレス設定や他のオブジェクトとデータ通信を行う。
【0038】
この様な一般的な電源供給源のオブジェクトモデル例を以下に示す。
【表3】


また、以下に内部データに対するコードの割り当て例を示す。上記モデルだけでは二次電池は対象外であるが、二次電池は上記オブジェクトモデルと負荷オブジェクトモデルを継承して生成されるので、PowerTypeのコード割り当てに二次電池や一時電源もいれておく。0xは16進数を表す。
【表4】

【0039】
(4−3)エネルギーチャージオブジェクト
これは、エネルギーストレージオブジェクトの充電、および電源供給を担当するものである。このオブジェクトはACアダプターであってもいいし、カーバッテリからチャージする様なDC入力のもの、あるいは、環境に存在する電磁波を電圧に変換する様な他の手段によるものでもいい。チャージャはそのターゲットとするものによってチャージの方式までの異なるので、それらを一まとめにした一般的なモデル例を以下に示す。実際のオブジェクトはこれからさらに派生させて詳細データを定義していく。またそれら個々のチャージャはその実現方式によって、使用するコマンドやパラメータが異なる(例えばNiCd電池の充電においても、充電電圧の変化を検出する方式や、電池の温度変化を検出する方式、電池の状態を見ずに微少な電流で充電するいわゆるトリクル充電など種々の方式がある)ので、一般的にコマンド体系を定義するのは困難であるし、また適当ではない。そこで、この様な装置に固有なコマンドに対応するために、本発明報告のコマンド体系には、機器固有コマンドを送受するメカニズムが用意されている(第3部 7−3参照)。
【表5】


チャージャの型のコード割付例を示す。(PowerTypeの割付例参照)
【表6】

【0040】
5.負荷オブジェクトのモデル化
(5−1)基本負荷オブジェクトのモデル化
基本的な負荷モデルに必要な情報および機能をまとめてモデル化する。実際のユーザにサービスを提供する製品は、本オブジェクト指向電源アーキテクチャにとっては負荷オブジェクトモデルの先に存在するもので、負荷オブジェクトの中に埋没し、それがどの様なものかは関与しない。
【0041】
図4において16、17、18はそれぞれ電源バス、データバスおよびGNDである。50は本来の負荷57(これが実際はユーザに利便性を提供する部分である)を入り切りするためのスイッチ、55は負荷オブジェクトを生成するマイクロプロセッサである。消費電流は抵抗51により検出する事を基本とするが、57の電流消費状況は既知であるので、その57を制御するマイクロプロセッサ58より通信路56を介してデータを入手してもいい。また、55と58が同一のプロセッサの場合も当然存在する。59は電源バス16の瞬断や、電源供給オブジェクトの交換時の急激な電圧変化を緩和するためのコンデンサで、電気二重層コンデンサや補助的二次電池等が使える。また省略可能な場合もある。
【0042】
以下にオブジェクト例を示す。
【表7】

【0043】
(5−2)発電負荷オブジェクト
例えば、最終負荷としてモータを考える。モータがトルクを発生している特は、負荷オブジェクトは純粋に負荷であって、そこから電力が生まれてくる事はない。しかしながら、モータを外部より強制的に回転させる力が働くとき(例えば、電動自転車で、モータには電力供給をせずに、慣性力により逆にモータを駆動するとき)には、負荷オブジェクトが回生制動をサポートしているならば、このオブジェクトは電源供給オブジェクトとも成り得る。しかしながら、この様なオブジェクトの実用化には次の問題がある。
【0044】
即ち、電源バスシステムは、システムのアドレスポーリングタイミングに同期してのみ、電源供給オブジェクトの切り替えを行う事が可能で、システムに非同期に電力発生モードになる訳にはいかない。従って、該当オブジェクト内にこれを解決する手段が要るが、これは具体的には補助充電池や電気二重層コンデンサの様な蓄電手段を設けることになろう。しかもこの補助電源による電力はこのオブジェクト内で使用する様な構築とするのが実用的であるので、単に負荷オブジェクトとして定義するのが最適である。
【0045】
ただし、電源供給オブジェクト、負荷オブジェクトからの継承で生成できないと言う訳ではない。
【0046】
6.オブジェクトの継承
(6−1)二次電池のモデル化
二次電池や一時ストレージ等、ある時は電源供給源となるが、ある時は電力消費者(負荷)となるものは電源供給オブジェクトと負荷オブジェクトよりそれぞれの性質を継承して生成するのが適当である。
【0047】
図2において、DC電源10をバッテリーと考えると、この図はそのままバッテリーオブジェクトの内部構成をとなる。この他にバッテリーの保護回路としてのヒューズや温度検出素子等、すでに実用化されている各種構成要素が含まれるが、本発明の趣旨に無関係なので省略する。
【0048】
以下にオブジェクトモデル例を示すが、これ以外の定義の仕方も存在するし、また新データや新機能をつけ加える事もある。
【表8】


ここで、関数の中身(実装方式)は設計項目でありその具現化方式そのものは本発明とは直接の関係はなく、例えばバッテリー残量計算や表示アルゴリズムはすでにカムコーダなどで実現されている。
【0049】
バッテリーをこの様なクラスとして定義すると、負荷オブジェクトは以下の情報を知る事ができる。
{1} 現負荷に対してバッテリーが使用可能か
{2} 現在のバッテリーの残容量
{3} 現在使用しているバッテリーの(期待)寿命。
【0050】
また、バッテリーの型名等は負荷オブジェクトには興味ない事がらであるが、バスラインに電源ブロックエミュレータを接続すれば、各ブロックの情報を読み出せ、サービス等に役立てる事も可能となる。従って、これらの補助情報をオブジェクトに持たせる場合もある。
【0051】
(6−2)一時エネルギーストレージオブジェクト
これは、電気二重層コンデンサ等の大容量コンデンサを使用した、一時的に電圧を貯える事を主機能とするオブジェクトである。図3にブロック図を示すが、DC電源の部分が電気二重層コンデンサ20に置き換わっただけで、他は図2と変わらない。マイクロプロセッサ19は14より電源が常に供給されるが、もちろん20に貯えられている電力が放電すれば動作を停止する。そのため21の様に電力ラインから電力供給を受けるルートを用意しておく。また、電気二重層コンデンサ20は16を経由して充電されることも可能であるが、16を経由せずに、全く別の経路で外部より充電される場合(例えば、電磁誘導により電力バス16を介さずに)もある。
【0052】
電気二重層コンデンサの容量は現在、0.1F程度から100F程度が容易に入手できるが、この部分は用途によっては通常の電解コンデンサも使用可能であり、この時は容量は10μF程度から、数千μFであろう。従って、容量範囲が広いのでμFを単位として、その係数を別途定義しておく。
【0053】
これをオブジェクトとして抽象化したものを次の例に示す。
【表9】

【0054】
[第2部 電源オブジェクトモデルによる電源バスシステムの構築]
1.基本システムの構築
前項までで、電源の各ブロックのオブジェクトモデル化は完了したが、これを実際のバスライン上にインプリメントするためには、さらに次の様な機能を定義する必要がある。
【0055】
まず始めに、今回のバスシステム(電源、GND、データの3線式を仮定する)に電源の各ブロックを任意のタイミングで接続、切断を行う方式を説明する。
【0056】
図5において、63はバスライン上に用意されたバス管理手段である。このバス管理手段は本報告でいうオブジェクトとは別のものである。この部分は実際にはマイクロプロセッサで構成され、電源は電源バスから供給される。すなわち、バスライン上に電源供給オブジェクトが接続されない限り動作は開始しない。61はデータラインのプルアップ抵抗、62はマイクロプロセッサよりのアドレス管理データをデータバスに出力するためのもので、データラインは各電源オブジェクトとの間でワイアードオアとなっている。64は電源オブジェクトの一例である(ここでは、データラインがワイアードオアとなっているのを図示するのが目的なので詳細は省略する)。
【0057】
バス管理手段63は、それに電源が供給され動作を開始すると図6に示す様に、ある決まった数N(Nの詳細については第3部、1、アドレスフォーマット参照)のアドレスパルスを、サイクリックに発生する。アドレスパルスと次のアドレスパルスの間にはそれらのアドレスに対応するデータをデータバス上に出力する時間tが割り当てられている。図7は実際のデータパルス波形を示す。図ではアドレスに4ビット分を割り当てているが、最初は常に0で、アドレスのスタートを表現するため、最大アドレス数は8である。なお、アドレス数の最大はもちろん8に制限されないし、またバス管理手段にはリチウム電池等のバッテリーをあらかじめ装着しておいてもいい。
【0058】
以上の様な準備をしておいて、次に実際のアドレスの割り当ておよび通信の方式を示す。
【0059】
(1)アドレス設定モード
バスの状態には大きく分けて、各オブジェクトのアドレスを設定中の状態と、アドレスが確定してオブジェクト間でデータ通信を行っている状態がある。前者をアドレス設定モード、後者をデータ通信モードと定義する。アドレス設定モードは後述する様にアドレス設定プロセスとアドレス確認プロセスから構成される。
【0060】
アドレス設定モードは負荷オブジェクトがすでに接続された電源バスシステムに電源供給源オブジェクトが始めて接続された場合や、オブジェクトからエラー信号が発生され、再度電源システムの再構築が必要な場合に発生する。バスシステムがデータ通信モード中に新規オブジェクトが追加あるいは取り外しをされた場合には、アドレス設定はデータ通信モードの中で可能なので、アドレス設定モードとならない。(ただし、アドレス設定モードにする様にインプリメントする事はもちろん可能である。)詳細は後述する。
【0061】
(1−1)アドレス設定プロセス
バスライン上に接続されたオブジェクトにアドレスが定義されていない状態で、電源が入りアクティブになったとき、最初に各オブジェクトにアドレスが定義される。これをアドレス設定プロセスと呼ぶ事にする。
【0062】
ここで実施しようとしているのは、全く同じタイミングに全く同じアルゴリズムを持った各オブジェクトが、一本のデータバスラインを共有しながら、それぞれを区別しようとするものである。このためには、共通のバスラインに何個のオブジェクトが接続されているかの判定と、それらの区別が必要である。これを例えばアナログ的に実施するならば、プルアップされたデータラインに各オブジェクトが同一のインピーダンスでプルダウンし、データラインのDCレベルを観測する方式が考えられる。(すなわち、オブジェクトの数に対応したDCレベルが観測される。)これを認識し、オブジェクトを一つずつ切り離していき、最後に残ったものに、まず一つのアドレスを与え、その既存アドレスを得たオブジェクト以外のオブジェクトに対して同じ事を繰り返す。この場合でも、同一アルゴリズムを持ったオブジェクトでは、どれを切り離すかの判定が(各オブジェクト自身)できない。そのため、各オブジェクトに乱数を発生させる機能を用意し、その値によってどのオブジェクトを切り離すか(あるいは残すか)をオブジェクト自身に判断させる。つまり、オブジェクト間で一種じゃんけんをして決める方式である。
【0063】
このような考えを、完全にディジタル的に実施したものを以下に述べる。
【0064】
ここでは、最大8個の電源オブジェクトのアドレス設定について説明するが、もちろんこの数は8に制限される訳ではない。図8に示すようにすべてのアドレスパルスのあとには固定長lの後b0からb7まで8ビット分のアドレス投票区間が用意される。バスラインに接続されているすべての電源オブジェクトは、8ビット長のうちだだ1ビットのみが“1”であるパルス(即ち、データとしては1,2,4,8,16,32,64,128のうちの一つ)をランダムに発生し、この区間で同時に投票(出力)する。
【0065】
図9はその様な投票例であり、オブジェクト1から8までがそれぞれ、b6、b4、b5,b3,b2、b0、b0、b7に投票した場合である。従って、これらのオア出力は最下段に示す様に、11111101となる。さて、各オブジェクトはこのオア出力と自分が投票した出力をたよりにアドレスを設定していく。図9のオア出力をみれば、LSB側に一番近いビットで“1”になった場所(この場合はb0でLSBそのもの)がわかる。ここに投票したオブジェクトをアドレスmに設定するため、次のアドレスパルス発生タイミング(この時mをインクリメントしてもかまわないが、ここでは簡単のため最終的にアドレスが決定されるまでは、アドレスのインクリメントは行わないとする。つまりアドレスmが設定完了するまで、アドレスmがバス管理手段により出力される。)の投票権をこれらのオブジェクトだけに与える(投票権を自分が有しているかどうかは各オブジェクト自身が知る事ができ、しかも他のオブジェクトがどう投票したかについて一切知らなくていい点が重要である)。この場合オブジェクト6と7が投票権を得て、図10に示す様に、再度投票する。この時はb2、b4にそれぞれ投票し、オア出力は00010100が得られた。ここでオア出力にはまだ2ビット以上“1”が存在するので、以前と同様にLSB側に一番近いビットで“1”になった場所に対応するオブジェクトが次回の投票権を得る。この投票の様子を示したのが図11で、ここではオブジェクト6のみが投票をし、オア出力とオブジェクトの投票ビット位置が一致する。この段階で暫定的にオブジェクト6にアドレスmを付与する。
【0066】
ここで暫定的というのは、各オブジェクトが発生する投票場所は全く確率的なもので、たとえば図9でオブジェクト6、7が同じビットに投票すると、6、7に同じアドレスmを付与してしまう。そこで、この問題をさけるためのアドレス確認プロセスを入れるが、これについては後述する。
【0067】
さて、確認プロセスも通過して、上記の様に、オブジェクト6のアドレスがmに確定すると投票権が消滅し、オブジェクト6を除く1から8について、アドレスm+1、m+2・・・において同様の操作を行う。これを繰り返す事で、最終的にすべてのオブジェクトのアドレスが確定する。
【0068】
アドレス設定プロセスである事は、バス管理手段がアドレス0のタイミングで発行するデータ中の値で判別する(コマンド=0x00)。詳細は後述する。
【表10】

【0069】
(1−2)アドレス確認プロセス
オブジェクトにアドレスmが暫定割り当てされたならば、アドレス確認プロセスに入る。このプロセスでは、バス管理手段により発生させられたアドレスmに対して、それぞれ自分のデータを出力し、データバス上の情報(オアデータ)と自分自身のデータを比較する。(図12参照)
アドレス確認プロセスであることはバス管理手段のアドレス(0)の後にバス管理手段より発行される以下のデータにより判別できる(コマンド0x01がアドレス確認プロセスを示す)。(データのフォーマットについては第3部参照。)
【表11】


各パケットは、この情報により現在のバスのモードを知る事ができ、暫定アドレスを取得したオブジェクトは、自分の暫定アドレスに続いて自分のデータを出力する。
【0070】
この時のフォーマットはつぎのとおりである。
【表12】


宛先アドレスは自分自身のアドレスであり(この様に決めておく)、コマンドはアドレス確認プロセスである事を示す値(0x01)であるが、パラメータに関しては、自分に固有のものを出力する。例えば、パラメータとしてシリアル番号を出力すれば、二つ以上のオブジェクトの固有データのオアを見ることで、自分以外に同時に出力した別オブジェクトの存在が認識できる。
【0071】
ここで、アドレス重複が検出されたならば、再度アドレス設定プロセスを通過させる。
【0072】
上記(1−1)、(1−2)のアドレス設定、確認プロセスのフローチャートを図13に示す。なお、図13の動作はその記述内容から容易に理解できるので詳細な説明は省略する。
【0073】
(2)データ通信モード
上記(1−1)、(1−2)項のプロセスを経る事で、各電源オブジェクトのアドレスは一義的にきまる。この後バス管理手段プロセッサは、アドレスを定期的に発行し、それに対応するオブジェクトは自分の存在を示すため、データをバスライン上に出力する。これにより、アドレスが一巡すると、バスライン上にあるすべてのオブジェクトは他のオブジェクトの属性とアドレスを共有する。また、このモードではオブジェクト間同士の通信が行われる。この状態をデータ通信モードと定義する。データのフォーマット等詳細については3部で詳述する。
2.オブジェクトの追加、削除(システムの動的再構築)
オブジェクトが電源バスに追加されたときに、そのデータラインを見る事によって、現在他のアドレスがすべて確定しているか、あるいは確定中かがわかる。すべて確定しているならば、空いているアドレス(つまり、アドレスのあとのデータ部分が空)に続けて、自分のデータを出し始めるだけでいい。バス管理手段プロセッサや、他のオブジェクトは、アドレスのあとにデータが入ってきたのを見て、オブジェクトの追加を認識する。確定中ならば、確定するまで待って、その後同様の動作を開始する。
【0074】
これ以降は各オブジェクトが必要に応じて、情報の要求、自発的送信を行う。
【0075】
オブジェクトの削除により、そのアドレスに対応するデータが無くなる(ただし、唯一の電源供給オブジェクトが削除されたときは、システムはそのまま停止する)と、各オブジェクトはこれにより、そのアドレスに付随するオブジェクトの消滅を検出する。この時、管理機能プロセッサはアドレス詰めを行ってもいいし、とりあえずそのアドレスを空きにしておいてもいい(アドレスを現在のオブジェクト数+1だけポーリングする実装では、アドレス詰めが必須。しかしすべてのアドレスをポーリングする実装ではどちらでもいい)。いずれにしても、オブジェクトの情報はサイクリックにバス上に出力されるので、すべてのオブジェクトは情報の共有が可能である。
【0076】
[第3部 電源バスシステムの制御体系]
これまでに、第1部で電源を構成する主要ブロックのオブジェクト化について述べ、第2部で実際の電源システムが如何に構築、維持され、また動的に再構築されるかの概要を説明した。第3部では、これらの構築、維持に使用されるコマンド体系(API群)およびそのフォーマットについて説明する。
【0077】
なお、以下に示すコード類で総バイト数や宛先アドレスについて、チェックサムを別にしているので注意されたい。
【0078】
1.アドレスフォーマット
各オブジェクトのアドレスはバス管理機能プロセッサよりサイクリックに発生され、その長さは7ビット(従って、最大アドレス数は128であるが、バス管理プロセッサのアドレスを0、ブロードキャストアドレスを127と定義する)。このアドレスの間に各オブジェクトが自分のデータをバスラインに乗せる事ができる。この部分のフォーマットを図14に示す。
【0079】
図において100はバス管理機能プロセッサが発生するアドレスであり、先頭(MSB)は常に0、そのあと7ビットのアドレスが続く。なお、このアドレス部はアドレス設定モード以外は、単純にインクリメントされていくのでチェックサムは用意していない。
【0080】
このアドレスの値については次の規定を設ける。
アドレス0(0x00);これはバス管理機能プロセッサのアドレスと定義する。
アドレス127(0x7F);これはブロードキャストアドレス。すべてのオブジェクトはこれに続くデータに反応するようになっている。
【0081】
従って、実際にオブジェクトに使用可能なアドレスは1から126までの126個である。
【0082】
また、バス管理手段が発生するアドレスは0から126まですべてサイクリックに発生する方式と、アドレス設定モード内のみ、すべてのアドレスを発生し、データ通信モードでは実際に接続されているオブジェクトの数+1(つまり、新規追加オブジェクトの追加空きスペース)として周期を短くする方式がある。
【0083】
2.パケットの最大値
1パケットを次の様に定義する。
【表13】


このパケットが一つのアドレスのデータ部分に、最小1個(3バイト)、最大127個(381バイト)存在する。この3バイトを一単位とする総パケット数を各オブジェクトおよびデータバス管理手段プロセッサが発信するデータの先頭に置く。(図14の101)この値を見ることで、何個のコマンドパケットが存在するか分かるとともに、この数でパケットの同期を取る。
【0084】
3.アドレス発生周期の最大値
図15において101以降が、各オブジェクトが発信するデータである。
【0085】
その基本単位は最小3バイトによるパケットであり、パケット数、通信先のアドレス、通信先に対するコマンド、そしてコマンドの引数(パラメータ)より構成される。
【0086】
アドレスで指定されたオブジェクトがいくつのパケット数を送信するかを示すのが、101のパケット数表示バイトであり、LSBをチェックサムとしているため、最小1、最大127である。
【0087】
図16に一サイクルの通信形態と、100kbpsの速度で通信した場合の概略時間を示す。情報パケットの最小は3バイト(パケット数、宛先アドレス、コマンド)であるから、同期のための空白ビット等のオーバーヘッドを無視すると最小 4x127(最大アドレス数)=509バイト
最大 (1+3x127)x127=48.5Kバイト
となり、100Kbpsの通信速度なら、一サイクルは
最小 41mS
最大 約3.8秒
となる。最大値は、すべてのアドレスをポーリングし、すべてのアドレスがおのおの127バイトのデータを有するときの値であるので、実用的にはこれより十分短い。
【0088】
4.コマンド発生形態
図17に各オブジェクトからのコマンドの発信状況および、コマンドに対する回答状況を示す。すべてのコマンドの発信とその回答は1対1になる様に設計され、必ずハンドシェークとなる。アドレスの発生周期1、2、3はこの順に連続している。例えばオブジェクト1(アドレス1をアサインされたオブジェクト)がnに対してコマンドを発行(204)すると、オブジェクトnはこの内容を発行直後に(つまり、例えば206のタイミングまで待たずに)認識できる。そこでこれに対する回答を用意しておき、自分のデータ発信タイミング(これが206)で実際に情報発信を行う。また、オブジェクトnは複数のアドレスにデータを送信できるので、例えばオブジェクト2に対する回答(207)やオブジェクト3に対するコマンド発信(208)が、自分の割り当てタイミング(つまりアドレスnを受け取ったあと)の中で可能である。
【0089】
命令や情報要求(これらはすべてコマンドと総称する)に対する、動作完了や回答時に使用するコマンドは、返答コマンドとして定義した。(コード0x26)
また、同一宛先に対して複数の命令を送る事も可能で、この時は宛先アドレス−コマンド−パラメータのシーケンスを繰り返し、また回答はコマンド順に発生すると定義する。(212、213)
コマンドに対する回答のペアはネストを禁止してあり、コマンド−回答の間でエラーが発生した場合には、再度コマンドを発行する等で対処する。また、コマンドを自分自身に対して発行する事も可能であり、例えば負荷オブジェクトをオンするコマンドを負荷オブジェクト自身が発行すれば、バスラインに接続されている他のオブジェクトもこの情報が共有できる。これにより電源供給源オブジェクトは、電流が増えた事を検出せずに、負荷が接続されて事が知れる。
【0090】
5.バスのモード
電源バスには上述した様に、アドレス設定モードとデータ通信モードがあるが、これの違いはバス上で以下の様に表明される。
【0091】
アドレス0はバス管理機能プロセッサのアドレスであり、その後に最小3バイトのデータパケットが存在する。(この形式は他のオブジェクトと同じ)。
【0092】
このデータパケットを用いて、上記モードの表明を行う。
【表14】


これらのモードの遷移は一サイクル(すべてのアドレスポーリング完了まで)単位となる。
【0093】
6.オブジェクト属性発信体系
電源バスがデータ通信モードになると、各オブジェクトは自身の属性をブロードキャストする。この時のデータの形式は以下の様になる。
【表15】


各オブジェクトはアドレスとそれに付随するコマンド、パラメータを読む事により、現在の電源バスライン上にどのような属性のものが接続されているかが知れる。さらに詳しい情報は必要なオブジェクトが相手先に問い合わせ、認識できる。
【0094】
7.コマンド体系および使用例
本明細書はコマンド体系全体についての仕様書ではないので、いくつかの使用例におけるコマンド(API)群について記述する。なお、ここでいうコマンドは広い意味であり、内容的には情報要求命令、要求情報回答、動作命令、モード表明等を含んでいる。
【0095】
(7−1)データバス管理コマンド
データバス管理コマンドとしてはつぎのものがある。
【表16】

【0096】
(7−2)データ通信モード中に使用されるコマンド
データ通信モード中に使用されるコマンドとしてはつぎのようなものがある。
【表17】

【0097】
(7−3)例外コマンド
本アーキテクチャのフォーマットに準拠しない、固有のデータやコマンド等を通信するためのラッパとして次のものを定義する。
【表18】


以下、実際の応用例である
【表19】


パラメータ中に固有情報を挿入するが、その長さはmパケット(3mバイト)となるように調節し、最大127パケット(3x127バイト)である。
【0098】
(7−4)データ通信モード中での他のオブジェクトに対する情報要求例
(第1部4−1参照)
負荷オブジェクト(アドレス8)がバスライン上の電源供給オブジェクト(アドレス2)に対し、その詳細情報要求例を示す。
【表20】


ここに、コマンド0x14はオブジェクトに対するスイッチデータ情報要求、パラメータ0x00は単にスペースを埋めるためのもの、電源供給オブジェクトが発行したコマンドは0x15でコマンドに対する返事を表現し、パラメータ0x00は、スイッチがオフである。
【0099】
8.クラス一覧
以下、クラスの一覧を示す。
【0100】
(8−1)基本クラス
基本クラスはつぎのように記述される。
【表21】

【0101】
(8−2)電源供給オブジェクト
電源供給オブジェクトはつぎのように記述される。
【表22】

【0102】
(8−3)チャージャ
チャージャはつぎのように記述される。
【表23】

【0103】
(8−4)負荷
負荷はつぎのように記述される。
【表24】

【0104】
(8−5)二次電池
二次電池はつぎのように記述される。
【表25】

【0105】
(8−6)一時電源
一時電源はつぎのように記述される。
【表26】


つぎに、電源および負荷が1つずつの最も基本的な例を用いて具体的に説明する。
【0106】
図18において、バスコントローラ301に電源バスライン302、GNDバスライン303およびデータバスライン304が接続されている。これらバスラインにコネクタ307および308を介して電源305および負荷306がそれぞれ接続されている。
【0107】
各部の動作状況を説明する。
【0108】
(1)電源の内容
PowerSourceクラスに属する電源の仕様は以下のものであるとする。
Power_type=0x00(二次電池でさらにNiCd電池であることを示す)
catalog_voltage=6(公称出力電圧=6V)
max_va=6(公称容量=6VA)
output_voltage=7(現在の出力電庄=7V)
alarm_voltage=5.6(最低供給可能電圧=5.5V)
上記データの中で、現在出力電圧が公称出力電圧より高いが充電直後はこの様になるのが普通である。また最低供給可能電圧5.5Vは、例えば、これより低い電圧になるまで電池が使用されると電池が痛むという値である。
【0109】
(2)負荷の内容
一方loadクラスに属する負荷のデータは以下のものと仮定する。
max_voltage=8V(入力許容最大電圧=8V)
min_voltage=4V(動作可能最小電圧=4V)
max_current=1A(入力最大電流=1A)
【0110】
(3)電源システムの動作
図18に示すようなブロックで、電源305がバスに接続された後、負荷306がバスに接続される場合を想定する。(負荷が先に接続されても、何も起こらない)
図2に示すように電源オブジェクトの中のマイクロプロセッサ19はDC電源10がある値以上であればつねに動作している。
【0111】
従って電源305がバスに接続されると、バス管理手段(バスコントローラ301)が動作を開始し、まずアドレス設定モードでシステムが動作する。これにより図13に示すフローチャートに基づき、電源オブジェクト(電源305)のアドレスが決定する(アドレス1となる)。
【0112】
アドレスが決定された時点で、このバスには他に電源が接続されていない事(実際には他には何も接続されていない事)がわかるので、バスシステムを使用可能とするため、電源オブジェクトのメインスイッチ(12)を投入する。
【0113】
つぎに負荷オブジェクト(負荷306)が接続されると、再度アドレスの調停を行い、負荷オブジェクトのアドレスが決定(アドレス2)する。
【0114】
以上のプロセスを経て、電源バスシステムは動作準備が整う。
(4)実際のオペレーション例
電源バスシステムがどの様に使われるかは本発明の趣旨であるアーキテクチャの上のアプリケーションプログラムで決定されるものであるが、以下に一例をしめす。
【0115】
負荷として上記の様に(上記(2)項)仮定したが、実際の状況ではこの負荷の先にラジオであるとか、PDAであるとかの製品が存在する。ここでは一番簡単にするため、オンオフ機能のみ付いている製品で例えばフラッシュライトとする。
【0116】
フラッシュライトの場合の負荷オブジェクトの構造を図19に示す。309がマイクロプロセッサ、310はメインスイッチで、例えばMOSFET、312はランプ、311がランプのコントロールスイッチ、313はアラーム表示LEDである。
【0117】
コネクタ308がバスシステムに接続され、負荷オブジェクトのアドレス調停が完了した時点で、マイクロプロセッサは次の様な動作を始める。この動作を図20に示す。なお、図20の動作は基本的に図から容易に理解できるので、ここでは簡単に説明を行うのみとする。
【0118】
電源電圧の問い合わせ;CatalogVoltage()関数を使用して電源オブジェクトに対して公称出力電圧を問い合わせ、これと自分自身の最大許容電圧を比較し、電源電圧が適正かどうか判断する。公称電庄はもちろん実際電圧とは異なるが、これがわかればおよその判断は可能である。もし、非常に厳密な判断が必要なら、そのようなデータや問い合わせAPIを定義すればいい。
【0119】
電源の種類問い合わせ;電源電圧は適正でも自分が必要な電流容量を判断するために、電源の種類から判断する。フラッシュライトで最大1Aならば、ほとんどの一次、二次電池は使用可能である。これも電流容量が正確に知りたいならばそのようなAPIを用意すればいい。
【0120】
ここまでで、電源の電圧とおよその供給電流が知れたので、フラッシュライトのコントロールスイッチを検出する。ここでスイッチがオンされちならば、電球112に電力を供給する。この後はバッテリー残量を適宜問い合わせ(フローチャートでは、この辺の時間のウェイトをかける部分は省略)、バッテリー残量が少なくなったならば、電球を切り、アラームLEDを点灯する。
【0121】
アラームLEDは、フラッシュライト使用中にバッテリが少なくなった時のみでなく、バスシステムに接続されている電源との相性が悪いときにも点灯させて、ユーザに状況を表示するためのものである。
【符号の説明】
【0122】
1 電源バスライン
2 GND(接地)バスライン
3 データ(信号)バスライン
4 バッテリー
5 一時電源
6 ACアダプタ
7 負荷(一般電気機器)
10 DC電源
11 電流検出用抵抗
12 スイッチ
13、14、15、21 マイクロプロセッサの入出力
16 電力バスライン
17 情報バスライン
18 接地バスライン
19 マイクロプロセッサ
20 電気二十層コンデンサ
50 スイッチ
51 消費電流検出用抵抗
52、53、54 マイクロプロセッサ55の入出力
55 マイクロプロセッサ
56 通信路
57 本来の負荷
58 負荷57のマイクロプロセッサ
59 コンデンサ
60 マイクロプロセッサ
61 プルアップ抵抗
62 データ出力用トランジスタ
63 バス管理手段(バスコントローラ)
64 電源オブジェクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源供給装置との通信と負荷の駆動を行う電子機器と、
電力の供給と前記電子機器との通信を行う電源供給装置とを有し、
前記電子機器は、前記電源供給装置との接続を行うバス接続ポートを備え、
前記電源供給装置は、前記電子機器との接続を行うバス接続ポートを備え、
前記電子機器と前記電源供給装置は、アドレス設定プロセスとアドレス確認プロセスから構成されるアドレス設定モードで設定されたアドレスを用いて前記バス接続ポートと接続される1つのバスラインを介して、最低供給可能電圧を示す情報が含まれた電圧仕様と最大出力電流を示す情報が含まれた電流仕様を含む電源仕様の通信を行い、該情報の通信によって前記電源供給装置からの電力で前記負荷の駆動が可能と判別したときに、前記バスラインを介して前記電源供給装置から電力の供給を行う
ことを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記電子機器と前記電源供給装置は、前記設定されたアドレスを用いて自身の属性を前記通信の相手先に送信する
ことを特徴とする請求項1記載の電源システム。
【請求項3】
前記電子機器または前記電源供給装置は、前記設定されたアドレスを用いて前記電源仕様の問い合わせを行う
ことを特徴とする請求項1記載の電源システム。
【請求項4】
電源供給装置との接続を行うバス接続ポートと、
アドレス設定プロセスとアドレス確認プロセスから構成されるアドレス設定モードで設定されているアドレスを用いて、前記バス接続ポートと接続される1つのバスラインを介して、最低供給可能電圧を示す情報が含まれた電圧仕様と最大出力電流を示す情報が含まれた電流仕様を含む電源仕様の通信を前記電源供給装置とで行い、該通信によって前記電源供給装置からの電力で負荷の駆動が可能と判別されて前記電源供給装置から供給された電力で前記負荷を駆動する制御部とを有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
前記制御部は、前記設定されたアドレスを用いて自身の属性を前記電源供給装置へ送信する
ことを特徴とする請求項4記載の電子機器。
【請求項6】
前記制御部は、前記設定されたアドレスを用いて前記電源仕様の問い合わせを行う
ことを特徴とする請求項4記載の電子機器。
【請求項7】
電力の供給を行う電源部と、
電子機器との接続を行うバス接続ポートと、
アドレス設定プロセスとアドレス確認プロセスから構成されるアドレス設定モードで設定されているアドレスを用いて、前記バス接続ポートと接続される1つのバスラインを介して、最低供給可能電圧を示す情報が含まれた電圧仕様と最大出力電流を示す情報が含まれた電流仕様を含む電源仕様の通信を前記電子機器とで行い、該通信によって前記電源部からの電力で前記電子機器における負荷の駆動が可能と判別したとき前記電源部から電力の供給を行う制御部とを有する
ことを特徴とする電源供給装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記設定されたアドレスを用いて自身の属性を前記電子機器へ送信する
ことを特徴とする請求項7記載の電源供給装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記設定されたアドレスを用いて前記電源仕様の問い合わせを行う
ことを特徴とする請求項7記載の電源供給装置。
【請求項10】
バス接続ポートを備えた電子機器と電源供給装置が、アドレス設定プロセスとアドレス確認プロセスから構成されるアドレス設定モードで設定されたアドレスを用いて、前記バス接続ポートと接続される1つのバスラインを介して、最低供給可能電圧を示す情報が含まれた電圧仕様と最大出力電流を示す情報が含まれた電流仕様を含む電源仕様の通信を行うステップと、
前記電源供給装置が、前記通信によって前記電源供給装置からの電力で前記電子機器における負荷の駆動が可能と判別したときに、前記電子機器に対して電力の供給を行うステップと
を有することを特徴とする電源供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−84308(P2013−84308A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−15297(P2013−15297)
【出願日】平成25年1月30日(2013.1.30)
【分割の表示】特願2010−74800(P2010−74800)の分割
【原出願日】平成12年4月20日(2000.4.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】