説明

電源保護回路

【課題】車両に搭載されるECU等の負荷を、少ない半導体素子で過電流及びサージによる過電圧から保護し、暗電流を防止することも可能な電源保護回路を提供する。
【解決手段】本電源保護回路1は、電源2と負荷3との間に設けられ、通電信号SWにより負荷への通電を制御する第1トランジスタQ1と、これと電源との間に直列接続されている電流検出抵抗R1と、電源の電圧を検出する電圧検出回路11と、電流検出抵抗及び電圧検出回路にそのベースが接続され、その出力が第1トランジスタのベースに接続されている第2トランジスタQ2と、を備える。電流検出抵抗と電圧検出回路によりそれぞれ過電流と過電圧を検出して第2トランジスタをオンにし、更に第2トランジスタの出力が第1トランジスタのベースに逆バイアスをかけることにより、負荷への電源の供給を制御することによって、過電流と過電圧から負荷を保護することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は過電流及び過電圧から負荷を保護することができる電源保護回路に関する。詳しくは、車両に搭載されるECU等の負荷を、少ない半導体素子で過電流及びサージによる過電圧から保護する電源保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両では、直流電源から各装置に電源を供給する電源ラインにサージが生じることがあるため、車両に備えられるECU等の電子装置は、サージによる過電圧によって破損しないようにする必要がある。このため、例えば、ツェナーダイオードを用いた過電圧吸収回路が開示されている(特許文献1を参照。)。
特許文献1に記載された過電圧吸収回路は、電源が高電圧になったときにツェナーダイオード8が導通することにより電圧が制限されるため、負荷7を保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−257417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されているような過電圧吸収回路では、ツェナーダイオードの通電により過電圧が吸収されるので、サージの電圧が高い場合はツェナーダイオードを流れる電流が増加する。このため、ツェナーダイオードの定格電流を越える電流が流れた場合にはツェナーダイオードが破損してしまい、大きな電圧のサージに対する保護ができない。また、ツェナーダイオードのみでは、負荷に過電流が流れる場合に保護をすることができない。更に、暗電流が流れてしまうという問題もある。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、車両に搭載されるECU等の負荷を、少ない半導体素子で過電流及びサージによる過電圧から保護し、暗電流を防止することも可能な電源保護回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本第1発明の電源保護回路は、電源と負荷との間に設けられ、通電信号により前記負荷への通電をオンオフ制御する第1トランジスタと、前記電源と前記第1トランジスタとの間に直列接続されている電流検出抵抗と、前記電源の電圧を検出する電圧検出回路と、前記電流検出抵抗及び前記電圧検出回路にそのベースが接続され、その出力が前記第1トランジスタのベースに接続されている第2トランジスタと、を備え、前記電流検出抵抗の両端の電圧が所定値を越えるときに前記第2トランジスタがオンとなって、該第2トランジスタの出力が前記第1トランジスタのベースに逆バイアスをかけることにより負荷電流が制限され、前記電圧検出回路により検出される電圧が所定値を越えるときに前記第2トランジスタがオンとなって、該第2トランジスタの出力が前記第1トランジスタのベースに逆バイアスをかけることにより前記負荷への通電を遮断する、ことを要旨とする。
【0007】
本第2発明は、前記第1発明において、前記電圧検出回路は抵抗による分圧回路であり、前記分圧回路の通電と前記第1トランジスタのオンオフとを、前記負荷からの通電保持信号により制御する第3トランジスタを更に備え、前記第3トランジスタは、前記通電保持信号が出力されている間は、前記分圧回路に通電すると共に、前記第1トランジスタのベースにバイアスをかけて負荷への通電をオンに保つことを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電源保護回路によれば、電流検出抵抗と電圧検出回路によりそれぞれ過電流と過電圧を検出して第2トランジスタをオンにし、更に第1トランジスタによって負荷への電源の供給を制御することによって、過電流と過電圧から負荷を保護することができる。すなわち、過電流時は負荷電流が一定値を越えないように制限し、過電圧時においても負荷への電源供給を制限することができる。また、半導体素子としてトランジスタを2つ用いるのみで、負荷への通電制御と、過電流及び過電圧からの保護とを行うことができるため、少ない部品点数及び簡素な回路により複数の効果を得ることができる。更に、負荷の容量が大きい用途であっても、ツェナーダイオードよりも応答性がよく、且つ安価なトランジスタを利用することができる。
【0009】
また、前記電圧検出回路が抵抗による分圧回路であり、前記分圧回路の通電と前記第1トランジスタのオンオフとを、前記負荷からの通電保持信号により制御する第3トランジスタを更に備え、前記第3トランジスタは、前記通電保持信号が出力されている間は、前記分圧回路に通電すると共に、前記第1トランジスタのベースにバイアスをかけて負荷への通電をオンに保つ場合は、通電している負荷側からの制御によって、通電信号(例えば、電源スイッチの信号)の状態にかかわらず負荷の通電をオンに保持することができる。また、通電保持信号がオフして負荷に通電していないときは、第3トランジスタによって分圧回路に電流が流れないため、本電源保護回路によって電流(暗電流)が生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述によって更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】電源保護回路の回路図である。
【図2】過電流保護が働いたときの(a)A点、(b)B点及び(c)C点の電圧と、(d)C点の電流との変化を示すグラフ図である。
【図3】過電圧保護が働いたときの(a)A点、(b)B点及び(c)C点の電圧の変化を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜3を参照しながら本発明の電源保護回路を詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0012】
本電源保護回路は、図1に例示するように、電源2と負荷3との間に設けられ、通電信号SWにより負荷3への通電をオンオフ制御する第1トランジスタQ1と、電源2と第1トランジスタQ1との間に直列接続されている電流検出抵抗R1と、電源2の電圧を検出する電圧検出回路11と、第2トランジスタQ2と、を備えている。第2トランジスタQ2のベースには電流検出抵抗R1及び電圧検出回路11が接続され、第2トランジスタQ2の出力は第1トランジスタQ1のベースに接続されている。
【0013】
第2トランジスタQ2は、オンになったときに第1トランジスタQ1のベースに逆バイアスをかけるように接続されている。このため、第2トランジスタQ2がオンになると、第1トランジスタQ1のベース電流が減少し、負荷3に流れる電流を制限することができる。
第2トランジスタQ2は、電流検出抵抗R1により検出される負荷3の過電流時、又は電圧検出回路11により検出される電源2の過電圧時にオンとなって、負荷3に供給される電源(電流、電圧)を制限することができる。
【0014】
電流検出抵抗R1は、電源ライン(図1の点Aと点Cとの間)に直列に接続されているため、負荷3に流れる電流値に対応した電圧が両端に生じる。この電流値が過電流の基準となる所定値を越えて過電流状態になったときに第2トランジスタQ2がオンとなるようにすることができる。そして、第2トランジスタQ2がオンとなったとき、第2トランジスタQ2により加えられる逆バイアスによって、第1トランジスタQ1から負荷3に流れる電流が制限され、負荷3の過電流による破損を防ぐことができる。
【0015】
電圧検出回路11は、電源電圧が過電圧の基準となる所定値を越えて過電圧状態になったときに、第2トランジスタQ2をオンとするように設けられている。このような電圧検出回路11は、任意の回路により構成することができる。例えば、図1に示す抵抗R2、R3による分圧回路を挙げることができる。分圧回路によって電源電圧を分圧して得られる電圧が所定値以上になると、第2トランジスタQ2がオンとなる。
第2トランジスタQ2がオンとなったとき第1トランジスタQ1のベースに逆バイアスをかけるため、負荷3にかかる電圧が過電圧状態を維持しないように制限することができる。更に、逆バイアスとして流れる電流が多い場合、又は電源電圧が過電圧状態を維持している場合は、逆バイアスがより大きくなって第1トランジスタQ1がオフ状態となり、負荷3への通電を遮断することができる。
【0016】
更に、電圧検出回路11として抵抗による分圧回路を用いる場合、その分圧回路の通電と、第1トランジスタQ1のオン、オフとを、負荷3から出力される通電保持信号HOLDにより制御するための保持回路12を備えることができる。保持回路12には第3トランジスタQ3を具備し、通電保持信号HOLDが出力されている間は、第3トランジスタQ3により第1トランジスタQ1のベースにバイアスをかけて、負荷3への電源の供給を保つように構成することができる。
この通電保持信号HOLDは、通電信号SWがなくなっても負荷3に対して継続して通電し、負荷3が必要とするタイミングで解除される信号である。通電保持信号HOLDは、負荷3によって任意のタイミングで解除(オフ)するようにすることができる。
【0017】
このような電源保護回路1の動作を、図1に例示した回路に基づいて説明する。電源保護回路1は、直流電源2から負荷3(車両用のマイクロコンピュータであるECU)に供給される電源を制御する回路である。直流電源2の出力(+B)は、電流検出抵抗R1、第1トランジスタQ1及び電圧レギュレータ回路5を介して、負荷3の電源端子に接続されている。
【0018】
電源保護回路1は、スイッチ回路4から通電信号SWが出力される(オンになる)と、第1トランジスタQ1のベースにバイアスがかかってオンとなり、電流検出抵抗R1を介して負荷3に電流が流れる。また、通電された負荷3は、即座に通電保持信号HOLDを出力することで保持回路12をオンにする。保持回路12の第3トランジスタQ3は、電圧検出回路11に通電すると共に、第1トランジスタQ1にバイアスをかけ、通電信号SWがオフとなっても第1トランジスタQ1を継続してオンに保ち、負荷3への通電を継続させる。
【0019】
このとき、負荷3に流れる通常範囲の電流では、電流検出抵抗R1の両端に生じる電圧により第2トランジスタQ2がオンとならないように、電流検出抵抗R1の抵抗値が設定されている。且つ、電流検出抵抗R1の抵抗値は、負荷3に過電流が流れたとき、その両端に生じる電圧値によって第2トランジスタQ2がオンとなるように設定されている。
また、負荷3に加わる電圧が通常範囲の電圧であれば、電圧検出回路の抵抗R2、R3で分圧される電圧により第2トランジスタQ2がオンとならないように、抵抗R2及びR3の抵抗値が設定されている。且つ、抵抗R2及びR3の抵抗値は、負荷3に加わる電圧が過電圧状態になったとき、電圧検出回路の抵抗R2、R3で分圧される電圧により第2トランジスタQ2がオンとなるように設定されている。
これにより、負荷3に供給される電源が過電流又は過電圧となった場合は、第2トランジスタQ2がオンとなり、第1トランジスタQ1に逆バイアスをかけることとなるため、負荷3への通電を制限することができる。
【0020】
上記のように、負荷3への通電のオンオフ制御を行う第1トランジスタQ1に、第2トランジスタQ2を接続し、第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2により、過電圧及び過電流の双方に対する保護動作をさせることができる。また、第1トランジスタQ1、第2トランジスタQ2として、負荷電流が大きい用途であっても、一般的なツェナーダイオードよりも応答速度が速く、安価なトランジスタを使用することができる。
更に、負荷3への通電を行っていない期間は、保持回路12の第3トランジスタQ3により、電圧検出回路11の抵抗R2、R3に電流が流れないように遮断されるため、負荷3の非通電時において本電源保護回路によって生じる電流(暗電流)をなくすことができる。
【0021】
本電源保護回路1による過電流保護の例を図2に示す。図2は、負荷3が短絡したときにおける、(a)電源2と電流検出抵抗R1との間の配線上のA点、(b)第2トランジスタQ2の出力に接続されている配線上のB点、並びに(c)第1トランジスタQ1の出力と電圧レギュレータ回路5との間の配線上のC点、の3点における電圧の変化と、(d)C点の電流の変化を計測したグラフである。
C点と接地(GND)との間で短絡が生じる時点(図2の時点P1)以前は、図2(b)に示すようにB点の電圧は第1トランジスタQ1の通電が妨げられる電圧Eより低い。そして、C点と接地との間で短絡が生じる(時点P1以降)と、電流検出抵抗R1の両端間の電圧が上昇して第2トランジスタQ2がオンになり、B点の電圧が前記電圧Eよりも高くなる。これにより第1トランジスタQ1に流れる電流が制限される。その結果、図2(d)に示すように負荷3に流れる電流(C点の電流)が制限されることとなる。
尚、負荷3に流れる電流は、第1トランジスタQ1がオフになっていないため不完全な遮断になっているが、図2(d)に示すように、通常の電流に対して一定範囲(本例では、9倍程度)の増加に留まっている。これは、図2(a)に示すように、A点における電源2の電圧が維持されているにもかかわらず、図2(c)に示すように、C点の電圧が時点P1以降では電源2の電圧未満に下がっており、電源保護回路1が更なる過電流が流れることを制限しているためである。
【0022】
また、本電源保護回路1による過電圧保護の例を図3に示す、図3(a)〜(c)は、電源ライン(A点)に、通常の約8倍(約100V)の電圧をパルスで印加したときにおける、A〜C点における電圧の変化を計測したグラフである。
図3のグラフ(a)に示すように電源にサージパルスが印加される(図3の時点P2)と、電圧検出回路11で分圧される電圧が上昇して第2トランジスタQ2がオンになり、図3(b)に示すようにB点の電圧が上昇して第1トランジスタQ1に逆バイアスがかかる。これにより第1トランジスタQ1のベースに流れる電流が制限されて、図3(c)に示すように負荷3側に加わる電圧(C点の電圧)が制限される。そうすると、瞬間的に通常を超える電圧(本例では、約1.5倍)が負荷3側の電圧レギュレータ回路5にかかるが、その後に大きな電圧が加わることはなく、過電圧状態が抑制されていることがわかる。
このように、本電源保護回路によって過電流状態及び過電圧状態が抑制され、負荷3や電圧レギュレータ回路5が保護されることがわかる。
【0023】
尚、本発明においては、以上に示した実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した態様とすることができる。本電源保護回路は、例えば、室内照明(装飾目的を含む、ドアカーテシランプコントローラ、リーディングライトコントローラ)用の制御回路、ヒータ用の制御回路等の電源保護回路として使用することができる。また、本電源保護回路は高電圧のサージが発生しやすい車両用に特に適するが、この用途に限られず、屋外用の各種負荷(例えば照明や計測機器等)に用いてもよいし、屋内用の各種負荷に用いてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1;電源保護回路、11;電圧検出回路、12;保持回路、2;電源、3;負荷、4;スイッチ回路、5;電圧レギュレータ回路、Q1;第1トランジスタ、Q2;第2トランジスタ、Q3;第3トランジスタ、R1;電流検出抵抗、R2、R3;抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と負荷との間に設けられ、通電信号により前記負荷への通電をオンオフ制御する第1トランジスタと、
前記電源と前記第1トランジスタとの間に直列接続されている電流検出抵抗と、
前記電源の電圧を検出する電圧検出回路と、
前記電流検出抵抗及び前記電圧検出回路にそのベースが接続され、その出力が前記第1トランジスタのベースに接続されている第2トランジスタと、
を備え、
前記電流検出抵抗の両端の電圧が所定値を越えるときに前記第2トランジスタがオンとなって、該第2トランジスタの出力が前記第1トランジスタのベースに逆バイアスをかけることにより負荷電流が制限され、
前記電圧検出回路により検出される電圧が所定値を越えるときに前記第2トランジスタがオンとなって、該第2トランジスタの出力が前記第1トランジスタのベースに逆バイアスをかけることにより前記負荷への通電を遮断する、ことを特徴とする電源保護回路。
【請求項2】
前記電圧検出回路は抵抗による分圧回路であり、
前記分圧回路の通電と前記第1トランジスタのオンオフとを、前記負荷からの通電保持信号により制御する第3トランジスタを更に備え、
前記第3トランジスタは、前記通電保持信号が出力されている間は、前記分圧回路に通電すると共に、前記第1トランジスタのベースにバイアスをかけて負荷への通電をオンに保つ請求項1記載の電源保護回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−90367(P2013−90367A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226219(P2011−226219)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】