説明

電源切替装置および電源切替方法

【課題】簡単な構成で、切替時に異常電圧、異常電流が生じることなく、瞬時に位相の異なる電源に切替えることが可能な電源切替装置、および電源切替方法を提供する。
【解決手段】電源切替装置1の制御部10は、既設電源A側の電圧線LA1,LA2と、対応する新設電源B側の電圧線LB1,LB2との電圧差が所定範囲内(ほぼ0)になるときを検出する。そして、電圧差が所定範囲内になったときに、半導体スイッチSW1〜SW3をオンからオフに切替えて、半導体スイッチSW4〜SW6をオフからオンに切替える。したがって、切替の前後で負荷C側の電圧線LC1,LC2に電圧の飛びがほとんど生じないので、既設電源Aから新設電源Bへスムーズな瞬時の切替を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設電源と負荷との接続を、既設電源と位相の異なる新設電源と負荷との接続へ瞬時に切替えることが可能な電源切替装置および電源切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配電線地中化工事などでは、既設電源から各家庭への給電を新設電源からの給電へと切替える必要が生じる。このとき、既設電源と新設電源とで位相が異なる場合には、通常、各家庭への給電を停止した停電状態で電源切替工事が行なわれる。
【0003】
ところが、近年、一般家庭へのコンピュータ機器の普及に伴い、インターネットの常時接続状態を維持するなどの理由で、停電を伴う工事を回避する要望が高まっている。夜間に工事を行なうことは人件費などの点で問題があるので、位相が異なる場合でも瞬時に電源切替を行なえることが望ましい。
【0004】
これまで、位相の異なる電源間での切替方法がいくつか提案されている。
たとえば、特許第2648777号公報(特許文献1)に開示される技術では、まず、遮断しようとしている既設電源側の停電を負荷側において検出する。その検出出力を確認した後、切替接続しようとしている新設電源の電源電圧が0になった瞬間(ゼロクロス点)を検出したときに、新設電源を負荷に接続する。
【0005】
また、特許第3664902号公報(特許文献2)に開示される技術では、新設電源からの交流を第1の変換器にて直流に変換し、この直流を第2の変換器にて交流に変換する。この時変換された交流は、同期制御回路により負荷機器に供給されている既設電源と同期をとるように運転する。次に、第2の変換器の出力側と負荷機器との間を開閉する第3のスイッチを投入し、同時に既設電源と負荷機器との間を開閉する第1のスイッチを開放する。この時、負荷機器には、第2の変換器のみから電力が供給される。この後、高速に第2の変換器の交流出力を第1の変換器の入力と同じ新設電源に、同期制御回路により同期させる。同期がとれたところで新設電源と負荷機器との間で電力を開閉する第2のスイッチを投入して新設電源から負荷機器へ電力が供給される。
【特許文献1】特許第2648777号公報
【特許文献2】特許第3664902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許第2648777号公報(特許文献1)に開示される技術の場合、既設電源側のスイッチを遮断して停電状態にしたとしても、負荷側の配線電圧はすぐには低下しない。したがって、新設電源側の電源電圧がゼロクロス点のときに新設電源を負荷に接続しても、新設電源と負荷側配線との間に電圧差が存在する。この電圧差によって、新設電源の接続時に異常な電流および電圧が生じて負荷機器を損傷させるおそれがある。これを避けるため、負荷側の配線電圧が所定の電圧まで低下するのを待ってから新設電源と接続すると、切替に時間がかかりすぎてコンピュータ機器の動作に支障をきたすことになる。
【0007】
また、前述の特許第3664902号公報(特許文献2)に開示される技術の場合、交流を直流に変換する第1の変換器(整流器)、および直流を交流に変換する第2の変換器(インバータ)が必要である。したがって、電源切替装置に多くの半導体素子を用いることになるので、装置構成が複雑で高価なものになる。
【0008】
本発明の目的は、簡単な構成で、切替時に異常電圧、異常電流が生じることなく、瞬時に位相の異なる電源に切替えることが可能な電源切替装置、および電源切替方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1、第2の電線が用いられる第1の交流電源と負荷との接続を、第1、第2の電線にそれぞれ対応する第3、第4の電線が用いられる第2の交流電源と負荷との接続へ切替える電源切替装置である。そして、電源切替装置は、第1、第2の電線にそれぞれ設けられ、第1の交流電源と負荷とを接続する第1、第2のスイッチと、第3、第4の電線にそれぞれ設けられ、第2の交流電源と負荷とを接続する第3、第4のスイッチと、第1の交流電源から供給された第1、第2の電線間の電圧の瞬時値を検出する第1の電圧検出部と、第2の交流電源から供給された第3、第4の電線間の電圧の瞬時値を検出する第2の電圧検出部と、電源切替条件が成立したときに、第1、第2のスイッチを導通状態から非導通状態に切替え、第3、第4のスイッチを非導通状態から導通状態に切替える制御部とを備える。ここで、電源切替条件は、第1、第2の電圧検出部の検出値の差が、予め定める範囲内であることを含む。
【0010】
本発明の一局面において、電源切替装置は、第1の交流電源と負荷とをさらに接続するための第5の電線に設けられ、第1の交流電源と負荷とを接続する第5のスイッチと、第5の電線に対応し、第2の交流電源と負荷とをさらに接続するための第6の電線に設けられ、第2の交流電源と負荷とを接続する第6のスイッチと、第1の交流電源から供給された第1、第5の電線間の電圧の瞬時値を検出する第3の電圧検出部と、第2の交流電源から供給された第3、第6の電線間の電圧の瞬時値を検出する第4の電圧検出部とをさらに備える。そして、制御部は、電源切替条件が成立したときに、第5のスイッチを導通状態から非導通状態にさらに切替え、第6のスイッチを非導通状態から導通状態にさらに切替える。また、電源切替条件は、第3、第4の電圧検出部の検出値の差が、予め定める範囲内であることをさらに含む。
【0011】
好ましくは、第1、第3の電線は、単相3線式の配電線の中性線であり、第2、第4〜第6の電線は、単相3線式の配電線の電圧線である。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、第1〜第4のスイッチの各々は、複数の半導体スイッチング素子を含む。そして、電源切替装置は、第1〜第4のスイッチとそれぞれ並列接続された第1〜第4の継電器をさらに備える。ここで、制御部は、切替命令が与えられると、第1〜第4のスイッチの切替前に第1、第2の継電器を導通状態から非導通状態に切替え、第1〜第4のスイッチの切替後に、第3、第4の継電器を非導通状態から導通状態に切替える。
【0013】
また、好ましくは、第1〜第4のスイッチの各々は、互いに逆方向に直列に接続された第1、第2の半導体スイッチング素子と、第1、第2の半導体スイッチング素子と逆方向で並列にそれぞれ接続された第1、第2の整流素子とを含む。
【0014】
また、好ましくは、第2の電圧検出部は、反転入力端子、非反転入力端子、および出力端子を有する演算増幅器と、第3のスイッチの第2の交流電源側の接続ノードと非反転入力端子との間に設けられる第1の抵抗素子と、第3のスイッチの負荷側の接続ノードと非反転入力端子との間に設けられる第2の抵抗素子と、第4のスイッチの第2の交流電源側の接続ノードと反転入力端子との間に設けられる第3の抵抗素子と、反転入力端子と出力端子との間に設けられる第4の抵抗素子とを含む。
【0015】
さらに、好ましくは、第1の電圧検出部は、第3のスイッチ素子の負荷側の接続ノードと第4のスイッチ素子の負荷側の接続ノードとの間に直列に設けられる第5、第6の抵抗素子を含む。
【0016】
また、本発明による電源切替方法は、第1、第2の電線が用いられる第1の交流電源と負荷との接続を、第1、第2の電線にそれぞれ対応する第3、第4の電線が用いられる第2の交流電源と負荷との接続へ切替える方法である。そして、電源切替方法は、第1の交流電源から供給された第1、第2の電線間の電圧の瞬時値、および第2の交流電源から供給された第3、第4の電線間の電圧の瞬時値を検出するステップと、検出するステップにおいて検出された第1の電線に対する第2の電線の電圧の瞬時値と、第3の電線に対する第4の電線の電圧の瞬時値との差が予め定める第1の範囲内にある電源切替条件を満たすか否かを判定するステップと、電源切替条件が満たされたときに、第1の交流電源と負荷との接続を遮断し、第2の交流電源と負荷とを接続するステップとを備える。
【0017】
好ましくは、本発明による電源切替方法は、第1の交流電源から供給された第1、第2の電線間の電圧の瞬時値、および第2の交流電源から供給された第3、第4の電線間の電圧の瞬時値を検出し、検出した瞬時値に基づいて第1、第2の電線間の電圧の実効値、および第3、第4の電線間の電圧の実効値を算出するステップと、第1、第2の電線間の電圧の実効値と第3、第4の電線間の電圧の実効値との差が予め定める第2の範囲内にないとき、接続するステップの実行を中止するステップとをさらに備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1の交流電源が供給する電圧の瞬時値と第2の交流電源が供給する電圧の瞬時値との差が予め定める範囲内(ほぼ0)になるときに、第1の交流電源と負荷との接続が第2の交流電源と負荷との接続に切替えられる。すなわち、電源切替は、第1の交流電源の電圧波形と第2の交流電源の電圧波形が交差するクロスポイントで行なわれることになる。したがって、電源切替の前後で負荷に印加される電圧に飛びが生じることがないので、電源切替に起因する異常電圧、異常電流が生じることなくスムーズな切替が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰り返さない。
【0020】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1としての電源切替装置1を用いた電源切替作業を説明するための図である。まず、図1を参照して、単相3線式の配電線の場合について、負荷C(家電機器)と接続を、既設電源Aから新設電源Bへ切替える切替作業の概略について説明する。
【0021】
なお、既設電源Aから新設電源Bへの切替の例として、架空線から地中線への配電線の切替、三相配電線に対する単相負荷の接続の切替、および配電系統と自家用発電機との相互の切替などを挙げることができる。
【0022】
図1の電源切替装置1は、6個の半導体スイッチSW1〜SW6と、2個の単相3線用のブレーカBR1,BR2と、既設電源Aから新設電源Bへの切替指示を与えるための切替スイッチSW0と、半導体スイッチSW1〜SW6のオン/オフを制御する制御部10(図2,図5に図示)とを含む。半導体スイッチSW1〜SW3の一方の端子はブレーカBR1と接続され、半導体スイッチSW4〜SW6の一方の端子はブレーカBR2と接続される。また、半導体スイッチSW1〜SW3の他方の端子と半導体スイッチSW4〜SW6の他方の端子とは、それぞれノード(接点)N1〜N3を介して接続される。
【0023】
電源切替工事前の初期状態では、既設電源A側から順に、単相3線式の既設配線2、積算電力計8、および単相3線式の負荷側配線4を経由して家電機器Cに至る経路で電力が家電機器Cに供給されている。また、この初期状態では、電源切替装置1のブレーカBR1,BR2は開放され、切替スイッチSW0は既設電源A側に投入された状態にある。切替スイッチSW0が既設電源A側の状態のとき、電源切替装置1の制御部10は、ブレーカBR1に接続される半導体スイッチSW1〜SW3を導通状態に設定し、ブレーカBR2に接続される半導体スイッチSW4〜SW6を非導通状態に設定する。
【0024】
電源切替作業では、まず、電源切替装置1のブレーカBR1と既設配線2とを接続電線5によって接続し、ブレーカBR2と新設配線3とを接続電線6によって接続する。さらに、ノードN1〜N3と負荷側配線4とを接続電線7によって接続する。
【0025】
接続後に、ブレーカBR1,BR2を投入する。そうすると、既設配線2から電源切替装置1のブレーカBR1と、半導体スイッチSW1〜SW3とを順に経由して負荷側配線4に至るバイパス経路が形成される。
【0026】
次に、積算電力計8の取付端子のところで既設配線2を取外す。これによって、家電機器Cは、電源切替装置1を介した上記バイパス経路のみで電力が供給される状態になる。
【0027】
この状態で、電源切替装置1の切替スイッチSW0が新設電源B側に切替えられると、電源切替装置1の制御部10は、半導体スイッチSW1〜SW3を非導通状態にし、半導体スイッチSW4〜SW6を導通状態にする。この結果、家電機器Cへの給電が、既設電源Aから新設電源Bへと切換わる。図2〜図7を参照して後述するように、この半導体スイッチSW1〜SW6の切替のタイミングが、制御部10によって適切に制御されることによって、位相の異なる電源A,B間でのスムーズな瞬時の切替が可能になる。
【0028】
この後、新設配線3の末端を積算電力計8の取付端子に取付けることによって、電源切替作業が完了する。
【0029】
図2は、実施の形態1の電源切替装置1の構成を示すブロック図である。
図2を参照して、電源切替装置1には、既設電源Aとの接続用に中性線LAnおよび2本の電圧線LA1,LA2が設けられ、新設電源Bとの接続用に中性線LBnおよび2本の電圧線LB1,LB2が設けらている。さらに、負荷Cとの接続用に中性線LCnおよび2本の電圧線LC1,LC2が設けれている。中性線LAn,LBn,LCnはノードN2で接続され、電圧線LA1,LB1,LC1はノードN1で接続され、電圧線LA2,LB2,LC2はノードN3で接続される。
【0030】
図1で説明したように、既設電源A側の電圧線LA1、LA2および中性線LAnには、半導体スイッチSW1、SW3、およびSW2がそれぞれ設けられる。また、新設電源B側の電圧線LB1、LB2および中性線LBnには、半導体スイッチSW4、SW6、およびSW5がそれぞれ設けられる。さらに、半導体スイッチSW1〜SW3と既設電源Aとの間には、ブレーカBR1が設けられ、半導体スイッチSW4〜SW6と新設電源Bとの間には、ブレーカBR2が設けられる。
【0031】
電源切替装置1は、さらに、ノイズフィルタ11,12,13と、半導体スイッチSW1〜SW6とそれぞれ並列に設けられる継電器Ry1〜Ry6と、電圧検出部VS1〜VS4とを含む。
【0032】
ノイズフィルタ11,12,13は、高周波ノイズを遮断するためのローパスフィルタである。ノイズフィルタ11,12,13は、半導体スイッチSW1〜SW3とブレーカBR1との間、半導体スイッチSW4〜SW6とブレーカBR2との間、およびノードN1〜N3と負荷Cとの間にそれぞれ設けられる。
【0033】
継電器Ry1〜Ry6は、半導体スイッチSW1〜SW6の通電による発熱を回避するために設けられている。既設電源A側の継電器Ry1〜Ry3は、初期状態では、制御部10によって導通状態に設定される。半導体スイッチSW1〜SW6の切替時には、制御部10は、継電器Ry1〜Ry3を非導通にしてから、半導体スイッチSW1〜SW6の切替を行う。半導体スイッチSW1〜SW6の切替後に、制御部10は、新設電源B側の継電器Ry4〜Ry6を導通させる。
【0034】
電圧検出部VS1は、ノードN1およびN2間の電圧の瞬時値を検出する回路であり、電圧検出部VS2は、ノードN2およびN3間の電圧の瞬時値を検出する回路である。また、半導体スイッチSW4,SW5,SW6が接続される新設電源B側のノードを、ノードN4,N5,N6とそれぞれ称すると、電圧検出部VS3は、ノードN4およびN5間の電圧の瞬時値を検出する回路である。電圧検出部VS4は、ノードN5およびN6間の電圧の瞬時値を検出する回路である。これらの電圧検出部VS1〜VS4の検出結果および切替スイッチSW0の状態に応じて、制御部10は、半導体スイッチSW1〜SW6および継電器Ry1〜Ry6のオン/オフを制御する。
【0035】
図3は、制御部10が電源切替を行なうタイミングを説明するための波形図である。図3で縦軸は電圧を示し、横軸は経過時間を示す。
【0036】
図2、図3を参照して、波形Aは、既設電源A側の電圧線LA1(または、LA2)の電圧を中性線LAnの電位を基準にして表したものである。また、波形Bは、対応する電源電圧B側の電圧線LB1(または、LB2)の電圧を中性線LBnの電位を基準にして表したものである。ここで、既設電源Aと新設電源Bとは位相が異なっているので、電圧波形AとBとは、半周期ごとに図3のクロスポイントCPの位置で交差する。クロスポイントCPでは、中性線LAnに対する電圧線LA1(または、LA2)の電圧と、中性線LBnに対する電圧線LB1(または、LB2)のとの差が0になる。
【0037】
したがって、電圧波形AとBとが交差する瞬間に(図3のクロスポイントCPで)、既設電源Aと新設電源Bとの切替を行えば、負荷Cの中性線LCnに対する電圧線LC1(または、LC2)の電圧は、切替前後で差が生じないことになる。この結果、電源切替に起因する異常電流、異常電圧を生じることなく、スムーズな瞬時の電源切替が可能になる。
【0038】
具体的に図2の電源切替装置1の場合、制御部10は、電圧検出部VS1およびVS3の検出電圧に基づいて、電圧線LA1および電圧線LB1の電圧波形のクロスポイントCPを検知する。また、制御部10は、電圧検出部VS2およびVS4の検出電圧に基づいて、電圧線LA2および電圧線LB2の電圧波形のクロスポイントCPを検知する。電圧検出部VS1〜VS4の回路構成によるが、電圧検出部VS1,VS2の検出電圧が中性線LAn上のノードN2の電位を基準にし、電圧検出部VS3,VS4の検出電圧が中性線LBn上のノードN5の電位を基準にしている場合には、電圧線LA1,LB1の電圧波形のクロスポイントCPは、電圧検出部VS1とVS3との検出電圧の差が所定電圧範囲内であることによって検知できる。同様に、電圧線LA2,LB2の電圧波形のクロスポイントCPは、電圧検出部VS2とVS4との検出電圧の差が所定電圧範囲内であることによって検知できる。単相100Vの場合、クロスポイントCPの判定の基準である所定電圧は、たとえば1.5ボルトに設定される。
【0039】
以下、図4〜図7を参照して、図2の電源切替装置1の各部の構成についてさらに詳しく説明する。
【0040】
図4は、図2の電源切替装置1の電圧検出部VS1,VS3の構成の一例を示す回路図である。以下の説明では、ノードN2の電位を基準電位とし、ノードN1,N2,N4,N5の電圧を、それぞれV1,V2=0,V4,V5とする。ここで、電圧検出部VS2,VS4の構成は、それぞれ電圧検出部VS1,VS3と同様である。そこで、図4では、電圧検出部VS1〜VS4を代表して、電圧検出部VS1,VS3の構成を示している。
【0041】
図4を参照して、電圧検出部VS3は、演算増幅器20と4個の抵抗素子21〜24を含む差動増幅回路である。図4に示すように、演算増幅器20の反転入力端子は、抵抗素子22を介してノードN4と接続される。また、演算増幅器20の非反転入力端子は、抵抗素子23を介してノードN2と接続され、抵抗素子24を介してノードN5と接続される。さらに、演算増幅器20の出力端子と反転入力端子とが、抵抗素子21を介して接続される。このとき、抵抗素子22,24の抵抗値をR1とし、抵抗素子21,23の抵抗値をR2とすると、演算増幅器20の出力端子のノードN2に対する電圧Vbは、次式(1)で与えられる。
【0042】
Vb=(V5−V4)・R2/R1 ・・・(1)
このように、ノードN5,N4の電圧は、抵抗比R2/R1倍に降圧されて演算増幅器20に入力される。演算増幅器20は、降圧後のノードN4に対するノードN5の電位差を制御部10に出力する。演算増幅器20を用いた上記回路構成にすることによって、ノードN4およびN5間の電位差を短時間で高精度に検出することができる。
【0043】
図4の電圧検出部VS1は、2個の抵抗素子25,26がノードN1およびN2間に直列に接続された分圧回路である。抵抗素子25の抵抗値をR1−R2に設定し、抵抗素子26の抵抗値をR2に設定すると、電圧検出部VS1の出力電圧Vaは、次式(2)で与えられる。
【0044】
Va=V1・R2/R1 ・・・(2)
このように、電圧検出部VS1は、ノードN1の電圧V1を抵抗比R2/R1倍に降圧して制御部10に出力する。
【0045】
図5は、図2の電源切替装置1の制御部10の構成の一例を示すブロック図である。
図5を参照して、制御部10は、半導体スイッチSW1〜SW6のオン/オフを切替えるための切替回路30と、マイクロコンピュータ36と、フォトカプラPC1〜PC6と、半導体スイッチSW1〜SW6を駆動するためのゲート駆動回路GD1〜GD6と、継電器Ry1〜Ry6を駆動するための駆動回路DR1〜DR6とを含む。ここで、フォトカプラPC1〜PC6およびゲート駆動回路GD1〜GD6は、半導体スイッチSW1〜SW6に対応して1個ずつ設けられる。また、駆動回路DR1〜DR6は、継電器Ry1〜Ry6に対応して1個ずつ設けられる。図5では図解を容易にするために、既設電源A側のフォトカプラPC1〜PC3、ゲート駆動回路GD1〜GD3、および駆動回路DR1〜DR3をそれぞれまとめて表示している。同様に、新設電源B側のフォトカプラPC4〜PC6、ゲート駆動回路GD4〜GD6、および駆動回路DR4〜DR6をそれぞれでまとめて表示している。
【0046】
図5の切替回路30は、2個の加算器31,32と、2個のウィンドウコンパレータ33,34と、AND回路35とを含む。
【0047】
加算器31は、図4の電圧検出部VS1および電圧検出部VS3の出力を加算して、ウィンドウコンパレータ33に出力する。前述の式(1),(2)を用いると、加算器31の出力は次式(3)で与えられる。
【0048】
Va+Vb=(V1−(V4−V5))・R2/R1 ・・・(3)
このように、加算器31からの出力は、中性線LAnに対する電圧線LA1の電圧と、中性線LBnに対する電圧線LB1の電圧との差を定数α(ただし、α=R2/R1)倍した値に等しい。加算器31は、たとえば、演算増幅器と複数の抵抗素子とを用いて構成することができる。
【0049】
加算器32は、加算器31と同様に、電圧検出部VS2および電圧検出部VS4の出力を加算して、ウィンドウコンパレータ34に出力する。加算器32の出力は、中性線LAnに対する電圧線LA2の電圧と、中性線LBnに対する電圧線LB2の電圧との差を定数α倍したものに等しい。
【0050】
ウィンドウコンパレータ33は、加算器31からの入力が所定範囲内のときにHレベルの信号を出力する。たとえば、単相100Vの電源切替を行なう場合、この所定入力範囲は、−1.5α(ただし、α=R2/R1)ボルトより大きく、1.5αボルトより小さい範囲に設定される。これによって、ウィンドウコンパレータ33は、電圧線LA1の電圧と電圧線LB1の電圧との差の絶対値が1.5ボルト以内であるか否かを判定していることになる。
【0051】
ウィンドウコンパレータ34も、ウィンドウコンパレータ33と同様の動作をする。ここで、ウィンドウコンパレータ33,34は、たとえば、2個のコンパレータ回路を用いてそれらの論理積を出力するように構成すればよい。
【0052】
AND回路35は、ウィンドウコンパレータ33,34の出力とマイクロコンピュータ36の切替信号CGとを受けて、これらの値が全てHレベルのときにフォトカプラPC1〜PC6にHレベルの信号を出力する。
【0053】
したがって、上記構成によれば、マイクロコンピュータ36からの切替信号CGがHレベルの状態で、電圧線LA1の電圧と電圧線LB1の電圧との差が所定範囲内にあり、電圧線LA2の電圧と電圧線LB2の電圧との差が所定範囲内にあるときに、切替回路30は、半導体スイッチSW1〜SW6のオン/オフを切替えるためのHレベルの電圧をフォトカプラPC1〜PC6に出力することになる。この結果、フォトカプラPC1〜PC6の出力を受けたゲート駆動回路GD1〜GD6によって、半導体スイッチSW1〜SW6のオン/オフが切替えられる。
【0054】
ここで、電源切替の完了後は、ノードN1とN4とは導通状態の半導体スイッチSW4で接続されて等電位になる。同様に、ノードN2とN5とが等電位になり、ノードN3とN6とが等電位になる。したがって、加算器31,32の出力が0になるので、ウィンドウコンパレータ33,34の出力はHレベルの状態が維持されることになる。
【0055】
また、既設電源Aの電圧と新設電源Bの電圧とが同相の場合は、常に、電圧線LA1とLB1との電圧差が所定範囲内にあり、電圧線LA2とLB2との電圧差が所定範囲内にあることになる。したがって、この場合、マイクロコンピュータ36から受信する切替信号CGがHレベルに活性化されるのと同時に、AND回路35の出力がHレベルに切替わる。
【0056】
図6は、図2の電源切替装置1のゲート駆動回路GD1,GD4、および半導体スイッチSW1,SW4の構成の一例を示す回路図である。ここで、電源切替装置1に用いられる6個の半導体スイッチSW1〜SW6、および6個のフォトカプラPC1〜PC6は、それぞれ共通の構成である。また、既設電源A側の3個のゲート駆動回路GD1〜GD3は共通の構成であり、新設電源B側の3個のゲート駆動回路GD4〜GD6は共通の構成である。図6は、これらを代表して、電圧線LA1,LB1に接続される半導体スイッチSW1,SW4と、それらに接続されるゲート駆動回路GD1,GD4およびフォトカプラPC1,PC4とを示している。
【0057】
図6を参照して、半導体スイッチSW1は、エミッタを共通電極として直列に接続された2個のNチャネルのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)Q1,Q2と、IGBTQ1,Q2とそれぞれ並列に接続された2個のダイオードD1,D2と、IGBTQ1,Q2と並列に接続されたバリスタVR1,VR2と、IGBTQ1,Q2のゲートにそれぞれ接続されたゲート抵抗RG1,RG2とを含む。ここで、ダイオードD1,D2のカソードは、IGBTQ1,Q2のコレクタにそれぞれ接続され、ダイオードD1,D2のアノードは、IGBTQ1,Q2のエミッタにそれぞれ接続される。
【0058】
IGBTQ1,Q2が導通状態の場合は、半導体スイッチSW1のいずれの方向にも電流が流れる。すなわち、IGBTQ1のコレクタが高電圧になり、IGBTQ2のコレクタが低電圧になる半サイクルでは、IGBTQ1とダイオードD2とを通過する経路で電流が流れる。また、IGBTQ2のコレクタが高電圧になり、IGBTQ1のコレクタが低電圧になる半サイクルでは、IGBTQ2とダイオードD1とを通過する経路で電流が流れる。一方、IGBTQ1,Q2が非導通状態の場合は、いずれの方向の電流も流れない。
【0059】
また、バリスタVR1,VR2は、IGBTQ1,Q2が非導通状態のときに異常な高電圧が印加された場合に、IGBTQ1,Q2およびダイオードD1,D2を保護するために設けられている。
【0060】
ここで、図6の場合と異なり、IGBTQ1,Q2をコレクタを共通電極にして直列接続してもよい。すなわち、NチャネルのIGBTQ1,Q2は、コレクタからエミッタに流れる主電流の方向が互いに逆方向になるように直列に接続される。このとき、IGBTQ1,Q2と並列に接続されるダイオードD1,D2の順方向は、IGBTQ1,Q2の主電流の方向と逆方向になる。
【0061】
また、半導体スイッチSW1〜SW6では、IGBTの代わりに、電力用のMOSFET(Metal-Oxide Silicon Field-Effect Transistor)またはバイポーラトランジスタなどを用いることもできる。
【0062】
ゲート駆動回路GD1は、IGBTQ1,Q2の絶縁ゲートを充放電するための駆動電流を流すための回路である。ゲート駆動回路GD1は、2個のNPN型バイポーラトランジスタTr1,Tr3と、2個のPNP型バイポーラトランジスタTr2,Tr4とを含む。トランジスタTr1およびTr2はエミッタを共通端子として直列に接続される。また、トランジスタTr1,Tr2のエミッタは、ゲート抵抗RG1を介してIGBTQ1のゲートに接続される。トランジスタTr1のコレクタは、電源ノードVCCに接続される。また、トランジスタTr2のコレクタは、接地ノードGNDに接続される。トランジスタTr3,Tr4とIGBTQ2との接続も同様である。
【0063】
フォトカプラPC1は、切替回路30とIGBTQ1,Q2とを絶縁するために設けられている。図6のフォトカプラPC1の場合、フォトダイオード40には、切替回路30の出力信号が抵抗素子42を介して入力される。また、出力端子であるフォトトランジスタ41のコレクタ端子は、負荷抵抗43を介して電源ノードVCCに接続される。したがって、フォトカプラPC1は、切替回路30の入力信号を反転して、トランジスタTr1〜Tr4のベースに出力する。
【0064】
このような構成のフォトカプラPC1およびゲート駆動回路GD1によれば、切替回路30の出力電圧がLレベルの場合、トランジスタTr1,Tr3が導通状態になって、IGBTQ1,Q2のゲート電極にHレベル(電源電圧VCC)の駆動電圧が供給される。この結果、IGBTQ1,Q2が導通状態になる。一方、切替回路30の出力電圧がHレベルに切替わると、トランジスタTr2,Tr4が導通状態になって、IGBTQ1,Q2のゲート電極はLレベル(接地電圧)になる。この結果、IGBTQ1,Q2は非導通状態に切替わる。
【0065】
ゲート駆動回路GD4は、トランジスタTr1〜Tr4の導電型をそれぞれ反対にしたバイポーラトランジスタTr5〜Tr8によって構成される。したがって、ゲート駆動回路GD2によれば、切替回路30の出力電圧がLレベルの場合、半導体スイッチSW4は非導通状態になる。切替回路30の出力電圧がHレベルのに切替わると、半導体スイッチSW4は導通状態に切替わる。
【0066】
なお、IGBTQ1,Q2のターンオン遅延時間とターンオフ遅延時間とが異なる場合は、半導体スイッチSW1が非導通状態に切替わるタイミングと、半導体スイッチSW4が導通状態に切替わるタイミングとが異なることになる。しかし、既設電源A側の電圧線LA1(または、LA2)の電圧と、対応する新設電源B側の電圧線LB1(または、LB2)の電圧とがそれぞれ等しいので、この切替タイミングのわずかな違いは問題にならない。
【0067】
図7は、図5のマイクロコンピュータ36の処理手順を示すフローチャートである。図5に示すように、マイクロコンピュータ36は、電圧検出部VS1〜VS4の出力、および切替スイッチSW0の状態に応じて、継電器Ry1〜Ry6の開閉を制御する。さらに、切替回路30に切替信号CGを出力する。以下、図2、図5、図7を参照して、マイクロコンピュータ36の処理手順について説明する。
【0068】
図7の処理手順の開始前の初期状態では、マイクロコンピュータ36は、図2の既設電源A側の継電器Ry1〜Ry3および半導体スイッチSW1〜SW3を導通状態に設定し、新設電源B側の継電器Ry4〜Ry6および半導体スイッチSW4〜SW6を非導通状態に設定する。
【0069】
ステップS1で、マイクロコンピュータ36は、切替スイッチSW0の状態を監視する。そして、マイクロコンピュータ36が、既設電源A側から新設電源B側に切替スイッチSW0が切替わったことを検知すると、次のステップS2に進む。
【0070】
ステップS2で、マイクロコンピュータ36は、電圧検出部VS1〜VS4で検出された電圧値を取得する。このとき、マイクロコンピュータ36は、内蔵のA/Dコンバータによって検出されたこれらの電圧値をデジタル変換して取得する。
【0071】
次のステップS3で、マイクロコンピュータ36は、交流の1サイクル分で取得した電圧値から、2乗平均値(実効値)を算出する。
【0072】
次のステップS4で、マイクロコンピュータ36は、電圧検出部VS1の検出電圧の実効値と、電圧検出部VS3の検出電圧の実効値とを比較して、それらの実効値の差が所定範囲内(たとえば、15ボルト以内)であることを判定する。実効値の差が15ボルトを超える場合は(ステップS4でNo)、処理を終了し、15ボルト以内の場合は(ステップS4でYes)、ステップS5に進む。
【0073】
ステップS5で、マイクロコンピュータ36は、電圧検出部VS2の検出電圧の実効値と、電圧検出部VS4の検出電圧の実効値とを比較して、それらの実効値の差が所定範囲内(たとえば、15ボルト以内)であることを判定する。実効値の差が15ボルトを超える場合は(ステップS5でNo)、処理を終了し、15ボルト以内の場合は(ステップS5でYes)、ステップS6に進む。以上のステップS4,S5で、マイクロコンピュータ36は、既設電源A側の電圧線LA1,LA2および中性線LAnと、新設電源B側の電圧線LB1,LB2および中性線LBnとの対応関係に間違いがないか(誤接続がないか)を確認していることになる。
【0074】
ステップS6で、マイクロコンピュータ36は、継電器Ry1〜Ry3を開路する。
次のステップS7で、マイクロコンピュータ36は、切替信号CGをHレベルに活性化する。活性化された後、切替回路30が、電圧線LA1,LB1の電圧波形のクロスポイントCPを検知するとともに、電圧線LA2,LB2の電圧波形のクロスポイントCPを検知すると、半導体スイッチSW1〜SW3が非導通状態に切替えられ、半導体スイッチSW4〜SW6が導通状態に切替えられる。
【0075】
次のステップS8で、マイクロコンピュータ36は、切替信号CGをHレベルに活性化してから所定時間が経過した後、継電器Ry4〜Ry6を閉路する。これによって、電源切替処理が終了する。ここで、活性化してからの所定時間として、切替回路30が電圧波形のクロスポイントCPを検知し、半導体スイッチSWのオン/オフの切替が完了するまでの時間が少なくとも必要である。たとえば、この所定時間は、交流電源の1周期に設定される。所定時間の経過を待つことに代えて、マイクロコンピュータ36は、電源検出部VS1〜VS4で検出された電圧値によって、新設電源B側の電圧線VB1,VB2の電圧と、対応する負荷C側の電圧線VC1,VC2の電圧とが一致することを確認してもよい。
【0076】
以上説明したように、実施の形態1の電源切替装置1によれば、電圧検出部VS1〜VS4の検出電圧に基づいて、既設電源A側の電圧線LA1,LA2と、対応する新設電源B側の電圧線LB1,LB2との電圧差が所定範囲内になるときが検出される。そして、電圧差が所定範囲内になったときに、半導体スイッチSW1〜SW6のオン/オフが切替わり、既設電源Aから新設電源Bへの切替が行なわれる。このため、切替の前後で負荷C側の電圧線LC1,LC2に電圧の飛びがほとんど生じないスムーズな瞬時の電源切替を実現することができる。この結果、切替時に異常電流、異常電圧が生じることがないので、負荷Cに損傷を与えることがない。
【0077】
また、電圧検出部VS1〜VS4で電圧を検出してから、半導体スイッチSW1〜SW6のスイッチング完了するまでに要する切替時間は、IGBTQ1,Q2のターンオンおよびターンオフ遅延時間、ならびに電圧検出部VS1〜VS4や切替回路30に用いられるIC(Integrated Circuit)の遅延時間などによって決まる。これら遅延時間を考慮すると、実施の形態1の電源切替装置1では、0.0001秒以内の切替が実現できている。したがって、一般家庭のパーソナルコンピュータをはじめ、他のコンピュータ応用機器などの動作にも障害とならない短時間での切替が可能になっている。
【0078】
また、実施の形態1の電源切替装置1による切替可能な電流容量、電圧容量は、半導体スイッチSW1〜SW6に用いられるIGBTQ1,Q2の電流容量、電圧容量によって決まる。したがって、電源切替装置1は、一般住宅1戸で用いられる10kVA程度の電源切替に十分適用可能である。大容量のIGBTを用いれば、電源切替装置1によって、変圧器のバンク単位の電源切替も可能になる。
【0079】
また、実施の形態1では、単相3線式の場合について説明したが、本発明は、単相2線式、または三相3線式などにも適用可能なものである。三相3線式の場合には、既設電源側と新設電源側とで、U相、V相、W相の各相間の電圧を比較して、電圧波形のクロスポイントCPを判定すればよい。
【0080】
[実施の形態2]
実施の形態1の図5に示す切替回路30による処理は、マイクロコンピュータ36を用いて実現することができる。この場合、図5の切替回路30に代えて、マイクロコンピュータ36からの切替信号CGがフォトカプラPC1〜PC6に与えられる。また、図7のフローチャートのステップS7の処理が以下のように変更される。
【0081】
図8は、図7のフローチャートのステップS7を変形したステップS7Aの処理を示すフローチャートである。
【0082】
図7のステップS6で、継電器Ry1〜Ry3が開路された後、図8のステップS11で、マイクロコンピュータ36は、図3の電圧検出部VS1〜VS4で検出された電圧値を取得する。
【0083】
次のステップS12で、マイクロコンピュータ36は、電圧検出部VS1の検出電圧と電圧検出部VS3の検出電圧とを加算する。この加算結果は前述の式(3)で表わされる。マイクロコンピュータ36は、この加算結果が所定範囲内であるかを判定する。所定範囲内のときは(ステップS12でYes)、ステップS13に進み、所定範囲外のとき(ステップS12でNo)は、ステップS11に戻る。これによって、電圧線LA1の電圧と電圧線LB1の電圧との差が所定範囲内か否かが判定されることになる。
【0084】
ステップS13で、マイクロコンピュータ36は、電圧検出部VS2の検出電圧と電圧検出部VS4の検出電圧とを加算する。マイクロコンピュータ36は、この加算結果が所定範囲内であるかを判定する。所定範囲内のときは(ステップS13でYes)、ステップS14に進み、所定範囲外のとき(ステップS14でNo)は、ステップS11に戻る。これによって、電圧線LA2の電圧と電圧線LB2の電圧との差が所定範囲内か否かが判定されることになる。
【0085】
ステップS14で、マイクロコンピュータ36はフォトカプラPC1〜PC6にHレベルの切替信号CGを送出する。ステップS14の後に、図7のステップS8が実行される。
【0086】
このような実施の形態2の電源切替装置1aによっても、マイクロコンピュータ36の動作が十分に高速であれば、コンピュータ機器に動作に障害とならないような短時間でのスムーズな電源切替が可能である。
【0087】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
実施例1では、図2の電源切替装置1を用いて、三相3線式の架空配電線による給電を地中線による給電へ瞬時に切替える実験を行なった。このとき、電源切替装置1の既設電源A側の電圧線LA2の電圧波形、負荷C側の電圧線LC1の電圧波形・電流波形、および電圧線LC2の電圧波形を測定した。電圧波形・電流波形の測定には波形観測装置(メモリハイコーダ)を用いた。
【0088】
図9は、実施例1における電源切替時の電圧波形・電流波形の測定結果を示すグラフである。図9で横軸は経過時間を示し、縦軸は電圧または電流を示す。
【0089】
図9を参照して、電源切替は、図中の−0.8msの時刻で起こっていることがわかる(切替点を図中にCPで表示)。切替前では、電圧線LA2の電圧波形と電圧線LC2の電圧波形は一致している。切替後には、負荷C側の電圧線LC1の電圧波形・電流波形および電圧線LC2の電圧波形の各位相が120°変化する。しかし、切替の前後で、これらの電圧波形・電流波形は位相以外の変化が生じていない。このことは、切替後では、電圧線LC1,LC2の電圧波形は、位相が120°の異なる新設電源B側の電圧線LB1,LB2に一致したことを意味している。また、切替の前後で既設電源A側の電圧線LA2の電圧波形には変化がない。
【0090】
以上によって、本発明の電源切替装置1を用いて、位相が異なる電源間でスムーズな瞬時の電源切替が実現されることが確認された。
【0091】
[実施例2]
実施例2では、電源切替装置1を用いて、既設配電線による給電を発電機による給電へ瞬時に切替える実験を行なった。このとき、電源切替装置1の既設電源A側の電圧線LA1の電圧波形、新設電源B側の電圧線LB1の電圧波形、負荷C側の電圧線LC1の電圧波形・電流波形を測定した。電圧波形・電流波形の測定には波形観測装置(メモリハイコーダ)を用いた。
【0092】
図10は、実施例2における電源切替時の電圧波形・電流波形の測定結果を示すグラフである。図10で横軸は経過時間を示し、縦軸は電圧または電流を示す。
【0093】
図10を参照して、電源切替は、図中の−0.6msの時刻で生じている(切替点を図中にCPで表示)。また、発電機の出力を示す電圧線LB1の電圧波形は、正弦波になっていないことがわかる。
【0094】
切替前では、負荷C側の電圧線LC1の電圧波形は、電圧線LA1の電圧波形と一致している。電源切替によって、電圧線LC1の電圧波形は、図中のクロスポイントCPのところで、電圧線LB1の電圧波形に一致するように連続的に変化する。このとき、電源切替に起因する電圧波形および電流波形の歪は観測されていない。
【0095】
以上によって、発電機などの不安定な電圧波形の場合にも、本発明の電源切替装置1を用いて、スムーズな瞬時の電源切替が実現することが確認された。
【0096】
[比較例]
実施例2の比較例として、既設配電線からの給電を発電機からの給電に切替える場合について、電源切替のタイミングを最適なタイミングから、わざとずらした実験を行なった。実施例2と同様に、波形観測装置(メモリハイコーダ)を用いて、既設電源A側の電圧線LA1の電圧波形、新設電源B側の電圧線LB1の電圧波形、負荷C側の電圧線LC1の電圧波形・電流波形を測定した。
【0097】
図11は、比較例における電源切替時の電圧波形・電流波形の測定結果を示すグラフである。図10で横軸は経過時間を示し、縦軸は電圧または電流を示す。
【0098】
図11を参照して、電源切替は、図中のほぼ0sの時刻で生じている。切替前では、負荷C側の電圧線LC1の電圧波形は、電圧線LA1の電圧波形と一致している。時刻0sの電源切替の瞬間には、電圧線LC1の電圧は、飛びが生じることによって不連続的に発電機側の電圧線LB1の電圧に一致する。電源切替に伴って、電圧波形には細かな振動が重畳して観測される。また、電源切替後の負荷C側の電圧線LC1を流れる電流は大きく増加する。
【0099】
このように、既設電源Aの電圧波形と新設電源Bの電圧波形が交差するクロスポイントCPと異なる時点で電源切替を行なうと、実施例2の場合と異なり、電源切替に起因する異常な電圧波形・電流波形が観測されることが確認された。
【0100】
今回開示された実施の形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態1としての電源切替装置1を用いた電源切替作業を説明するための図である。
【図2】実施の形態1の電源切替装置1の構成を示すブロック図である。
【図3】制御部10が電源切替を行なうタイミングを説明するための波形図である。
【図4】図2の電源切替装置1の電圧検出部VS1,VS3の構成の一例を示す回路図である。
【図5】図2の電源切替装置1の制御部10の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】図2の電源切替装置1のゲート駆動回路GD1,GD4、および半導体スイッチSW1,SW4の構成の一例を示す回路図である。
【図7】図5のマイクロコンピュータ36の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図7のフローチャートのステップS7を変形したステップS7Aの処理を示すフローチャートである。
【図9】実施例1における電源切替時の電圧波形・電流波形の測定結果を示すグラフである。
【図10】実施例2における電源切替時の電圧波形・電流波形の測定結果を示すグラフである。
【図11】比較例における電源切替時の電圧波形・電流波形の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0102】
1 電源切替装置、10 制御部、20 演算増幅器、21〜26 抵抗素子、30 切替回路、36 マイクロコンピュータ、A 既設電源、B 新設電源、C 負荷、D1,D2 ダイオード、LA1,LA2 電圧線(既設電源側)、LB1,LB2 電圧線(新設電源側)、LC1,LC2 電圧線(負荷側)、LAn 中性線(既設電源側)、LBn 中性線(新設電源側)、LCn 中性線(負荷側)、Q1,Q2 IGBT、Ry1〜Ry6 継電器、SW0 切替スイッチ、SW1〜SW6 半導体スイッチ、VS1〜VS4 電圧検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2の電線が用いられる第1の交流電源と負荷との接続を、前記第1、第2の電線にそれぞれ対応する第3、第4の電線が用いられる第2の交流電源と前記負荷との接続へ切替える電源切替装置であって、
前記第1、第2の電線にそれぞれ設けられ、前記第1の交流電源と前記負荷とを接続する第1、第2のスイッチと、
前記第3、第4の電線にそれぞれ設けられ、前記第2の交流電源と前記負荷とを接続する第3、第4のスイッチと、
前記第1の交流電源から供給された前記第1、第2の電線間の電圧の瞬時値を検出する第1の電圧検出部と、
前記第2の交流電源から供給された前記第3、第4の電線間の電圧の瞬時値を検出する第2の電圧検出部と、
電源切替条件が成立したときに、前記第1、第2のスイッチを導通状態から非導通状態に切替え、前記第3、第4のスイッチを非導通状態から導通状態に切替える制御部とを備え、
前記電源切替条件は、前記第1、第2の電圧検出部の検出値の差が、予め定める範囲内であることを含む、電源切替装置。
【請求項2】
前記電源切替装置は、
前記第1の交流電源と前記負荷とをさらに接続するための第5の電線に設けられ、前記第1の交流電源と前記負荷とを接続する第5のスイッチと、
前記第5の電線に対応し、前記第2の交流電源と前記負荷とをさらに接続するための第6の電線に設けられ、前記第2の交流電源と前記負荷とを接続する第6のスイッチと、
前記第1の交流電源から供給された前記第1、第5の電線間の電圧の瞬時値を検出する第3の電圧検出部と、
前記第2の交流電源から供給された前記第3、第6の電線間の電圧の瞬時値を検出する第4の電圧検出部とをさらに備え、
前記制御部は、前記電源切替条件が成立したときに、前記第5のスイッチを導通状態から非導通状態にさらに切替え、前記第6のスイッチを非導通状態から導通状態にさらに切替え、
前記電源切替条件は、前記第3、第4の電圧検出部の検出値の差が、予め定める範囲内であることをさらに含む、請求項1に記載の電源切替装置。
【請求項3】
前記第1、第3の電線は、単相3線式の配電線の中性線であり、
前記第2、第4〜第6の電線は、単相3線式の配電線の電圧線である、請求項2に記載の電源切替装置。
【請求項4】
前記第1〜第4のスイッチの各々は、複数の半導体スイッチング素子を含み、
前記電源切替装置は、前記第1〜第4のスイッチとそれぞれ並列接続された第1〜第4の継電器をさらに備え、
前記制御部は、切替命令が与えられると、前記第1〜第4のスイッチの切替前に前記第1、第2の継電器を導通状態から非導通状態に切替え、前記第1〜第4のスイッチの切替後に、前記第3、第4の継電器を非導通状態から導通状態に切替える、請求項1に記載の電源切替装置。
【請求項5】
前記第1〜第4のスイッチの各々は、
互いに逆方向に直列に接続された第1、第2の半導体スイッチング素子と、
前記第1、第2の半導体スイッチング素子と逆方向で並列にそれぞれ接続された第1、第2の整流素子とを含む、請求項1に記載の電源切替装置。
【請求項6】
前記第2の電圧検出部は、
反転入力端子、非反転入力端子、および出力端子を有する演算増幅器と、
前記第3のスイッチの前記第2の交流電源側の接続ノードと前記非反転入力端子との間に設けられる第1の抵抗素子と、
前記第3のスイッチの前記負荷側の接続ノードと前記非反転入力端子との間に設けられる第2の抵抗素子と、
前記第4のスイッチの前記第2の交流電源側の接続ノードと前記反転入力端子との間に設けられる第3の抵抗素子と、
前記反転入力端子と前記出力端子との間に設けられる第4の抵抗素子とを含む、請求項1に記載の電源切替装置。
【請求項7】
前記第1の電圧検出部は、前記第3のスイッチ素子の前記負荷側の接続ノードと前記第4のスイッチ素子の前記負荷側の接続ノードとの間に直列に設けられる第5、第6の抵抗素子を含む、請求項6に記載の電源切替装置。
【請求項8】
第1、第2の電線が用いられる第1の交流電源と負荷との接続を、前記第1、第2の電線にそれぞれ対応する第3、第4の電線が用いられる第2の交流電源と前記負荷との接続へ切替える電源切替方法であって、
前記第1の交流電源から供給された前記第1、第2の電線間の電圧の瞬時値、および前記第2の交流電源から供給された前記第3、第4の電線間の電圧の瞬時値を検出するステップと、
前記検出するステップにおいて検出された前記第1の電線に対する前記第2の電線の電圧の瞬時値と、前記第3の電線に対する前記第4の電線の電圧の瞬時値との差が予め定める第1の範囲内にある電源切替条件を満たすか否かを判定するステップと、
前記電源切替条件が満たされたときに、前記第1の交流電源と前記負荷との接続を遮断し、前記第2の交流電源と前記負荷とを接続するステップとを備える、電源切替方法。
【請求項9】
前記第1の交流電源から供給された前記第1、第2の電線間の電圧の瞬時値、および前記第2の交流電源から供給された前記第3、第4の電線間の電圧の瞬時値を検出し、検出した瞬時値に基づいて前記第1、第2の電線間の電圧の実効値、および前記第3、第4の電線間の電圧の実効値を算出するステップと、
前記第1、第2の電線間の電圧の実効値と前記第3、第4の電線間の電圧の実効値との差が予め定める第2の範囲内にないとき、前記接続するステップの実行を中止するステップとをさらに備える、請求項8に記載の電源切替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−124845(P2009−124845A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295567(P2007−295567)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】