説明

電源回路

【課題】一次側と二次側とが絶縁された電源回路において、一次側からの電力供給が遮断された場合であっても、二次側に設けられた回路の誤動作を低コストで防止することのできる電源回路を提供すること。
【解決手段】絶縁電源回路14は、一次側と二次側が絶縁され、一次側から二次側に電力を供給する電源回路であって、トランス41と、トランス41の一次巻線に接続され一次側の直流電源VIGをスイッチングする電界効果トランジスタTR40と、電界効果トランジスタTR40のオンオフを制御する制御IC42と、トランス41の二次側に接続された高圧側マイコン31と、トランス41の二次側出力を監視してスイッチングの停止を検出するパルス検出回路5と、を備え、高圧側マイコン31は、パルス検出回路5がスイッチングの停止を検出した停止信号に合わせて機能を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路に関し、特にインバータ回路内の絶縁を介して2次側に設けられたゲート駆動回路を駆動させる電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーエレクトロニクスで用いるゲート駆動回路は、コントローラ回路が発生したパルスを、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などのパワートランジスタに伝達する役割を果たす。このゲート駆動回路が上記役割を果たす際に、以下の2つが重要な要素となる。1つは、ガルバニック絶縁性を保ちながら、コントローラ回路からの制御信号を伝達し、パワートランジスタをオン/オフさせるためのエネルギーを供給すること。もう1つは、必要な時間だけ、パワートランジスタをオンまたはオフの状態に維持することである。
また、ゲート駆動回路の主要部分はIC(Integrated Circuit)化されたものが多く、機能として電源電圧の監視機能や、IGBTを駆動するバッテリ電圧の監視、IGBTに流れる電流の監視、IGBTの温度の監視等が付加された製品もある。
【0003】
従来、インバータ制御モータにおいて、直流を交流に変換してモータに供給するインバータ部を駆動するためのゲート駆動回路に対して与えるPWM(Pulse Width Modulation)信号を遮断する安全停止回路が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の安全停止回路は、ゲート駆動回路とPWM発生回路との間に、PWM信号遮断回路が設けられており、モータ停止スイッチが押されたときに、PWM信号遮断回路がPWM信号を遮断することで、ゲートの駆動を停止する。
【0004】
また、ゲート電源回路が過負荷電流によって2次破壊することを防止する技術として、一次側と二次側が絶縁された装置において、一次側に設けられたゲート電源回路から二次側に電力を供給する方式の電源回路が知られている(特許文献2参照)。特許文献2に記載のゲート電源回路は、一次側から、必要に応じて、トランスの二次側に接続されたゲート制御回路への電源の供給を停止する旨の信号を送出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/132975号
【特許文献2】特開2005−110411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一次側の上位システムと二次側の下位システムとが絶縁されたシステムにおいて、下位システムの構成要素に故障が生じたとき、障害がシステム全体に波及しないような設計がなされる必要がある。例えば、インバータ制御モータにおいて、ゲート駆動回路の電圧が低下した場合や、インバータ部の温度が異常になった場合に、ゲート駆動回路を含む二次側の回路自体がPWM信号を遮断し、システムを停止する処理が行われる。この場合、緊急度が高ければ、下位システムの構成要素を含む一部のブロックが0−1のフェール信号を送ることで、この信号を受けた上位システムが該ブロックの動作を停止させ、その後、通信によって上位システムに対してフェールの内容を受け渡す方法も考えられる。例えば、上位システムは、一次側からの電力供給が遮断された場合、二次側からの通信が途絶えたことを検出して、「異常」と判定する方法をとることになる。しかしながら、この場合、フェールの詳細について検知することができない。
【0007】
また、絶縁を介した二次側に、電力を蓄えるコンデンサを備える場合、一次側からの電力供給が遮断されると、このコンデンサに残された残留電荷によって、二次側の回路が動作し続ける。すなわち、一次側は停止しているが、二次側は動作している状態が発生する。この場合、二次側は外来ノイズ等によって誤動作する可能性が否定できない。また、トランス等の絶縁素子を含むスイッチング電源が、一次側の不具合等の理由によって停止した場合においても、二次側のゲート駆動回路が停止できることが望ましい。そこで、一次側の上位システムからの二次側の下位システムへのシャットダウン制御を可能とする方策として、一次側と二次側の通信チャンネルを増加させることが考えられるが、この場合、フォトカプラ等の絶縁デバイスの増加によって製造コストが増加してしまう。
【0008】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、一次側と二次側とが絶縁された電源回路において、一次側からの電力供給が遮断された場合であっても、二次側に設けられた回路の誤動作を低コストで防止することのできる電源回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、本発明に係る電源回路は、一次側と二次側が絶縁され、一次側から二次側に電力を供給する電源回路であって、トランスと、前記トランスの一次巻線に接続され、一次側の直流電源をスイッチングするスイッチング用トランジスタと、前記スイッチング用トランジスタのオンオフを制御するスイッチング制御回路と、前記トランスの二次側に接続された二次側回路と、前記トランスの二次側出力を監視して前記スイッチングの停止を検出する停止検出回路と、を備え、前記二次側回路が、前記停止検出回路が前記電源の停止を検出した停止信号に合わせて機能を停止することを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、電源回路では、スイッチング制御回路によるスイッチング用トランジスタのオンオフ制御に用いられるパルス信号に対応して、トランスの二次側に、パルス状に電力が出力される。このパルス状の矩形波信号が観測(検出)される期間は、一次側から電源回路に電力が供給されている期間なので、電源回路において一次側のスイッチング制御回路が停止すると矩形波信号は停止することになる。したがって、本発明の電源回路では、二次側回路が、停止検出回路がスイッチングの停止を検出した停止信号に合わせて機能を停止することとしたので、前記矩形波信号が観測される期間を二次側の動作期間とすることができる。よって、電源回路に電力を供給する一次側の動作期間に対して、電源回路を含む二次側の動作期間を合わせることができる。つまり、一次側電源が停止すると、二次側回路も停止する。
【0011】
また、本発明に係る電源回路は、前記停止検出回路が、前記トランスの二次側出力電圧を示す矩形波電圧の変化が停止した場合に、前記スイッチングの停止を検出することが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、電源回路は、一次側のスイッチング制御回路がオンオフ制御の動作をしている期間では、トランスの二次巻線の直後の出力端に、パルス信号に対応した矩形波の電圧信号が観測される。この矩形波の電圧信号は、一次側電源に同期しているので、一次側電源が完全に停止しなくても電圧の低下が起こり始めた時点で電源電圧が低下傾向の状態にあることを検出することが可能である。
【0013】
また、本発明に係る電源回路は、前記トランスの二次巻線と前記二次側回路との間に接続され、前記二次側回路に向けて電流を流す整流素子を備え、前記停止検出回路が、前記トランスの二次側出力電流として前記整流素子に流れる電流を示す矩形波電流の変化が停止した場合に、前記スイッチングの停止を検出することが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、電源回路は、この電源回路の出力を整流するために二次巻線には整流素子が接続されるので、整流素子が例えば整流ダイオードであればカソード端子の地点では、パルス信号に対応した矩形波の駆動電流の形で観測される。なお、この場合、アノード端子の地点では矩形波の電圧信号が観測される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電源回路によれば、一次側電源が停止すると二次側回路も停止するので、二次側に設けられた回路の誤動作を低コストで防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路を含むモータ駆動システムの回路図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路を含むインバータ回路の回路図(その1)である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路を含むインバータ回路の回路図(その2)である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路が搭載されるプリドライブ基板を模式的に示す構成図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路に一部が含まれるゲートドライブ回路を模式的に示す構成図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路に一部が含まれる高圧側マイコン回路を模式的に示す構成図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路が主電源から切断するときの電圧変動を示すタイミングチャートであって、(a)は一次側の電圧変動、(b)は二次側の電圧変動をそれぞれ示している。
【図8】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路が備えるパルス検出回路の一例を模式的に示す回路図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路が備えるパルス検出回路の他の例を模式的に示す回路図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る絶縁電源回路に一部が含まれるゲートドライブ回路を模式的に示す構成図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る絶縁電源回路が備えるパルス検出回路の配置に関する第1の変形例を模式的に示す構成図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る絶縁電源回路が備えるパルス検出回路の配置に関する第2の変形例を模式的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態という)について図面を参照して詳細に説明する。
[モータ駆動システムの構成]
図1に示すモータ駆動システム1は、本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路14(図2および図4参照)を含むインバータ回路10を備える。インバータ回路10には、モータECU(Electronic Control Unit)100と、モータ110と、電源部12とが接続されている。インバータ回路10は、低出力電圧(低圧)側に配置されたモータECU100の駆動信号によって、モータ110を回転駆動する。
【0018】
(モータ)
モータ110は、負荷としての電力機器であり、例えば、ハイブリッド車両、燃料電池車両、または、電動車両などの車両に駆動源として搭載される三相ブラシレスモータなどである。このモータ110は、U相、V相、W相の各コイル端子を備え、各相のコイルに流れる三相の交流電流によって回転駆動する。また、モータ駆動システム1には、モータ110のU相、V相、W相の相電流に対応するアナログ信号をモータECU100に出力するために、電流センサ13(=13−1〜13−3)が設けられている。
【0019】
(モータECU)
モータECU100は、モータ110の駆動動作および回生動作を制御する。
モータECU100は、駆動信号であるPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力して、インバータ回路10に設けられたパワーモジュール11のIGBT素子11−1〜11−6を駆動する機能を有している。
モータECU100の出力側は、インバータ回路10に設けられたゲートドライブ回路20にフォトカプラPC21−n(nは1〜6の自然数)を介して接続されている(図5参照)。
モータECU100には、インバータ回路10に設けられた高圧側マイコン回路30の出力側がフォトカプラPC30を介して接続されている(図2、4、6参照)。
モータECU100には、インバータ回路10に設けられたゲートドライブ回路20の出力側がフォトカプラPC22−nを介して接続されている(図5参照)。
モータECU100は、例えばECU基板101上に設けられており(図2参照)、外部の1次側の主電源(イグニッション電源VIG)が供給される。
【0020】
(電源部)
電源部12は、例えば600ボルト程度の高出力の直流電圧を供給するための蓄電装置であり、複数のバッテリブロックが直列接続されている。ここで、バッテリブロックは、複数のリチウムイオン電池やニッケル水素電池などがモジュール化されて構成されている。しかし、これに限られず、電源部12は、キャパシタで構成してもよい。この電源部12の正極側端子PN+と負極側端子PN−との間には、平滑コンデンサC12が接続され、電源部12の出力電圧を平滑化している。
【0021】
(電流センサ)
電流センサ13(=13−1〜13−3)は、モータ110の相電流を検出するセンサであり、それぞれU相、V相、W相の相電流に対応するアナログ信号をモータECU100に出力する。
電流センサ13−1は、後記するパワーモジュール11のU相のアームとモータ110のU相との間に直列接続され、さらに、図示しないフォトカプラを介してモータECU100に接続されている。
同様に、電流センサ13−2は、後記するパワーモジュール11のV相のアームと、モータ110のV相との間に直列接続され、さらに、図示しないフォトカプラを介してモータECU100に接続されている。
電流センサ13−3は、後記するパワーモジュール11のW相のアームと、モータ110のW相との間に直列接続され、さらに、図示しないフォトカプラを介してモータECU100に接続されている。
【0022】
(インバータ回路)
インバータ回路10は、電源部12からの高出力電圧(高圧)をモータ110に供給するパワーモジュール11と、パワーモジュール11を作動させるゲートドライブ回路20と、高圧側マイコン回路30と、前記平滑コンデンサC12と、を有している。
【0023】
<パワーモジュール>
パワーモジュール11は、電源部12の正極側端子PN+と負極側端子PN−との間に接続された三相インバータ回路である。
パワーモジュール11は、バッテリなどの直流電力である電源部12から、三相ブラシレスであるモータ110を駆動するための交流電力に変換する機能と、モータ110より回生される交流電力を直流電力に変換する機能とを有している。
【0024】
パワーモジュール11は、スイッチング素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子11−1〜11−6と、フライホイールダイオードD11−1〜D11−6とを具備している。
パワーモジュール11において、IGBT素子11−1およびフライホイールダイオードD11−1は、U相の上アームを構成している。また、IGBT素子11−3およびフライホイールダイオードD11−3は、V相の上アームを構成し、IGBT素子11−5およびフライホイールダイオードD11−5は、W相の上アームを構成している。
【0025】
IGBT素子11−2及びフライホイールダイオードD11−2は、U相の下アームを構成している。また、IGBT素子11−4及びフライホイールダイオードD11−4は、V相の下アームを構成し、IGBT素子11−6及びフライホイールダイオードD11−6は、W相の下アームを構成している。
【0026】
IGBT素子11−1,11−3,11−5のコレクタ端子は、電源部12の正極側端子PN+に接続されている。
IGBT素子11−2,11−4,11−6のエミッタ端子は、電源部12の負極側端子PN−に接続されている。
各IGBT素子11−1〜11−6のコレクタ端子−エミッタ端子間は、コレクタ端子からエミッタ端子への方向と逆方向にフライホイールダイオードD11−1〜D11−6が並列接続されている。
【0027】
IGBT素子11−1〜11−6をパルス幅変調によりON/OFFするPWM信号(ゲート信号)がモータECU100よりIGBT素子11−1〜11−6のゲート端子に入力される。このPWM信号は、外部であるモータECU100から入力される駆動信号である。
IGBT素子11−1のエミッタ端子と、IGBT素子11−2のコレクタ端子とは、モータ110のU相のコイル端子に接続されている。
IGBT素子11−3のエミッタ端子と、IGBT素子11−4のコレクタ端子とは、モータ110のV相のコイル端子に接続されている。
IGBT素子11−5のエミッタ端子と、IGBT素子11−6のコレクタ端子とは、モータ110のW相のコイル端子に接続されている。
【0028】
[絶縁電源回路]
次に、絶縁電源回路の構成について図2を参照(適宜図1および図3参照)して説明する。図2および図3は、本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路を含むインバータ回路の回路図である。
図2に示す絶縁電源回路14は、一次側と二次側が絶縁され、一次側から二次側に電力を供給する電源回路である。絶縁電源回路14は、外部の1次側の主電源(イグニッション電源VIG)からなる低出力電圧(低圧)系統と、2次側の電源部12等の高圧系統とを絶縁する機能を有したスイッチング電源である。この絶縁電源回路14は、イグニッション電源VIGを2次側直流電圧に変換し、変換した電圧を電源電圧として、ゲートドライブ回路20と、高圧側を制御する高圧側マイコン回路30と、図示しないロジック回路や温度センサ回路や電圧検出回路などとに供給している。ここで、主電源であるイグニッション電源VIGは、例えばイグニッションキーをオンしたときに図示しないバッテリから供給される電源である。
【0029】
絶縁電源回路14は、図2に示すように、トランス41の絶縁を挟んで2次側にゲートドライブ回路20の一部と、高圧側マイコン回路30の一部と、を備え、絶縁の一次側には、スイッチング素子である電界効果トランジスタTR40と、制御IC42と、整流ダイオードD40と、平滑コンデンサC40と、負荷Z40とを有している。
【0030】
(トランス)
トランス41は、絶縁を挟んで1次側に、一次巻線および三次巻線(フィードバック巻線)を備え、絶縁を挟んで2次側に二次巻線を備える。なお、ここでは、算用数字により絶縁の両側を区別し、漢数字により巻線を区別することとした。
【0031】
トランス41の一次巻線の一端には、イグニッション電源VIGの電源供給ラインが接続されて、他端には電界効果トランジスタTR40のドレイン端子が接続されている。
トランス41の三次巻線(フィードバック巻線)は、トランス41の絶縁を挟んで1次側において負荷Z40に接続されている。この三次巻線は、トランス41の絶縁を挟んで1次側のフィードバック電圧Vfbを生成する。
【0032】
トランス41の二次巻線は、ゲートドライブ回路20の一部と高圧側マイコン回路30の一部とを構成している(図2、4参照)。また、トランス41の二次巻線は、ゲートドライブ回路20の一部を構成している(図2、4、5参照)。すなわち、トランス41は、ゲートドライブ回路20−1〜20−6に接続されている6個の二次巻線と、高圧側マイコン回路30に接続されている1個の二次巻線と、を備える。
【0033】
(絶縁の1次側構成)
スイッチング用トランジスタである電界効果トランジスタTR40のゲート端子は、制御IC42の出力に接続されている。電界効果トランジスタTR40のドレイン端子は、トランス41の一次巻線を介してイグニッション電源VIGに接続されている。電界効果トランジスタTR40のソース端子は、グランドに接続されている。
スイッチング制御回路である制御IC42は、電界効果トランジスタTR40のゲート端子に制御パルスを出力することで、電界効果トランジスタTR40によって生成されたスイッチング信号を、トランス41の一次巻線に入力して、トランス41を駆動する。
制御IC42は、電界効果トランジスタTR40のオンオフを制御する。これにより、電界効果トランジスタTR40は一次側の主電源であるイグニッション電源VIG(直流電源)をスイッチングする。
【0034】
トランス41の三次巻線は、順方向に接続された整流ダイオードD40を介して、平滑コンデンサC40と負荷Z40に並列に接続されている。この整流ダイオードD40のカソード端子は、さらに、制御IC42を介して電界効果トランジスタTR40のゲート端子に接続されている。
【0035】
(絶縁の2次側構成の概略)
絶縁電源回路14は、図2に示すように、2次側に、ゲートドライブ回路20の一部と、高圧側マイコン回路30の一部とを備えている。
ゲートドライブ回路20は、図2および図3に示すように、U相上アームのIGBT素子11−1を駆動するゲートドライブ回路20−1と、U相下アームのIGBT素子11−2を駆動するゲートドライブ回路20−2と、V相上アームのIGBT素子11−3を駆動するゲートドライブ回路20−3と、V相下アームのIGBT素子11−4を駆動するゲートドライブ回路20−4と、W相上アームのIGBT素子11−5を駆動するゲートドライブ回路20−5と、W相下アームのIGBT素子11−6を駆動するゲートドライブ回路20−6とを具備している。
【0036】
各ゲートドライブ回路20−n(nは1〜6の自然数)と、絶縁電源回路14と、を同じ基板に搭載した場合の一例を図4に示す。各ゲートドライブ回路20−nの詳細については、後記する。図4では、各ゲートドライブ回路20−nにおいて主要な構成として、二次側回路であるゲート駆動回路21−1〜6を図示した。各ゲートドライブ回路20−nの一部の構成は絶縁電源回路14に含まれている。図4では、高圧側マイコン回路30において主要な構成として、二次側回路である高圧側マイコン31およびパルス検出回路5を図示した。高圧側マイコン回路30の詳細については、後記する。
【0037】
[各ゲートドライブ回路の構成]
図5に示すように、各ゲートドライブ回路20−n(nは1〜6の自然数)は、整流ダイオードD20−nと、平滑コンデンサC20−nと、ゲート駆動回路21−nとを有し、それぞれトランス41の二次巻線に接続されている。ここで、整流ダイオードD20−nと、平滑コンデンサC20−nとは、絶縁電源回路14(図2参照)の二次側に含まれている。
【0038】
各ゲートドライブ回路20−nのトランス41の二次巻線は、順方向の整流ダイオードD20−nを介して、平滑コンデンサC20−nに接続され、絶縁電源回路14の二次側出力を構成している。平滑コンデンサC20−nの両端子間に発生する電圧は、電圧Vx−nである。この絶縁電源回路14の二次側出力は、ゲート駆動回路21−nに接続されている。
【0039】
ゲート駆動回路21−nは、モータECU100からのPWM信号によって駆動される駆動回路である。ゲート駆動回路21−nの出力側は、スイッチング素子であるIGBT素子11−n(図1参照)のゲート端子に接続されている。モータECU100のPWM信号端子は、フォトカプラPC21−nを介して、ゲート駆動回路21−nに接続され、ゲート駆動回路21−nにPWM信号を出力するように構成されている。
【0040】
ゲート駆動回路21−nのフェール信号端子は、フォトカプラPC22−nを介してモータECU100に接続されて、異常発生時に、モータECU100にフェール信号を出力するように構成されている。フェール信号は、シリアル通信で情報が送信される。モータECU100は、フェール信号に基づいた二次側回路の情報を取得し、過熱や短絡(過電流)や過電圧などを検知したとき、種々の制御素子の破壊を防止するためにモータ110を駆動停止する保護機能を有している。
【0041】
ゲート駆動回路21−nの出力側は、IGBT素子11−nのゲート端子と第1のエミッタ端子とに接続され、モータ110のU相、V相、W相ぞれぞれの駆動信号を発生する。IGBT素子11−nの第1のエミッタ端子は、抵抗R11−nを介してグランドに接続され、第2のエミッタ端子は、直接にグランドに接続されている。IGBT素子11−nのコレクタ端子と第2のエミッタ端子との間には、フライホイールダイオードD11−nが逆方向に接続されている。
【0042】
[高圧側マイコン回路の構成]
図6に示すように、高圧側マイコン回路30は、整流ダイオードD30と、平滑コンデンサC30と、高圧側マイコン31と、フォトカプラPC30と、パルス検出回路5とを有し、トランス41の二次巻線に接続されている。ここで、整流ダイオードD30と、平滑コンデンサC30とは、絶縁電源回路14の二次側の構成要素である。整流素子である整流ダイオードD30は、トランス41の二次巻線と、高圧側マイコン31との間に接続され、高圧側マイコン31に向けて電流を流す。
【0043】
高圧側マイコン回路30のトランス41の二次巻線は、順接続の整流ダイオードD30を介して、平滑コンデンサC30に接続され、絶縁電源回路14の二次側出力を構成している。この絶縁電源回路14の二次側出力は、高圧側マイコン31に接続されている。
【0044】
高圧側マイコン31には、図示しない温度センサが接続され、パワーモジュール11のIGBT素子11−1〜11−6(図3参照)の温度を測定可能に構成されている。
高圧側マイコン31には、ゲートドライブ回路20−6の整流ダイオードD20−6のカソード端子が接続され、ゲートドライブ回路20−6の電圧Vx−6(図5参照)を測定可能に構成されている。
さらに、他のゲートドライブ回路20−1〜20−5の整流ダイオードD20−1〜D20−5のカソード端子が接続され(不図示)、ゲートドライブ回路20−1〜20−5の電圧Vx−1〜Vx−5(図5参照)も測定可能に構成されている。
【0045】
高圧側マイコン31の出力端子は、フォトカプラPC30の入力端子に接続されている。フォトカプラPC30の出力端子は、モータECU100に接続され、ゲートドライブ回路20に発生している電圧(電圧Vx−n(図5参照))等の2次側状態を表すステータス信号をモータECU100に送信する。このステータス信号を送信する通信のことをここではIPUA通信(Intelligent Power Unitからの信号Aによる通信)と呼ぶ。IPUA通信には、例えば、IGBT素子11−n(図3参照)近傍にそれぞれ設けられた図示しない温度センサの出力、電源部12の電圧など、二次側回路に係る様々な情報を含む。
【0046】
パルス検出回路5は、トランス41の二次側出力を監視してスイッチングの停止を検出する停止検出回路である。
本実施形態では、パルス検出回路5は、トランス41の二次側出力電圧を示す矩形波電圧の変化が停止した場合に、電源の停止を検出することとした。
具体的には、パルス検出回路5は、トランス41の二次側出力電圧として、整流ダイオードD30のアノード端子と、トランス41の二次巻線との間の所定の二次側接続点P1の電圧を検出することとした。パルス検出回路5は、二次側接続点P1の電圧により、電源の停止を検出した場合、停止信号を、二次側回路である高圧側マイコン31に出力することとした。これにより、高圧側マイコン31は、パルス検出回路5が電源の停止を検出した停止信号に合わせて機能を停止する。
【0047】
[パルス検出回路の概要]
パルス検出回路5による電源の停止検出について図7を参照して説明する。
図7は、本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路が主電源から切断するときの電圧変動を示すタイミングチャートであって、(a)は一次側の電圧変動、(b)は二次側の電圧変動をそれぞれ示している。
【0048】
図7(a)に示すように、時刻Tにおいて、絶縁電源回路42の一次側(図2参照)が一次側の主電源VIG(ここでは定格の電圧値をVとする)に接続したものとする。その後、時刻Tを経て時刻Tまで、一次側電圧値は電圧値Vを維持したものとする。なお、実際には、制御IC42からのオンオフ駆動による電界効果トランジスタTR40(図2参照)のスイッチングによって、トランス41の一次巻線には、矩形波電圧が印加されることになる。電界効果トランジスタTR40のオン状態の電圧を図7(a)では時間軸に対して一直線の電圧値Vで表した。
【0049】
そして、図7(a)に示すように、時刻Tにおいて、絶縁電源回路42の一次側(図2参照)が主電源VIGから切断したものとする。この場合、一次側の電圧が定格の電圧値Vから所定の閾値電圧th1まで落ちた時刻Tに、スイッチングが停止することになる。一次側では、時刻Tを経て、やがて電圧値が0となる。
【0050】
この場合、二次側では、図7(b)に示すように、絶縁を介することによる所定の時間差があるので、時刻Tにおいて、絶縁電源回路42の二次側(図2参照)にスイッチング電源が起動したものとする(ここでは定格の電圧値をVとする)。その後、時刻Tを経て時刻Tまで二次側電圧値は電圧値Vを維持したものとする。なお、実際には、トランス41の二次巻線には、矩形波電圧が印加されることになる。図7(b)では、電界効果トランジスタTR40(図2参照)のオン状態の電圧がトランス41により変換された電圧を時間軸に対して一直線の電圧値Vで表した。
【0051】
そして、図7(b)に示すように、時刻Tにおいてスイッチングが停止する。この場合、パルス検出回路5は、時刻Tにおいてスイッチングの停止を検出し、停止信号を二次側回路である高圧側マイコン31に出力する。これにより、高圧側マイコン31は、時刻Tに機能を停止する処理を開始し、二次側電圧値が定格の電圧値Vから所定の閾値電圧th2まで落ちた時刻Tに高圧側マイコン31の動作が停止し、やがて、二次側電圧値が0となる。
【0052】
なお、高圧側マイコン31は機能を停止する処理において、一次側のモータECU100にIPUA通信によって、一次側電源の遮断によって機能を停止する旨を通知することができる。この場合、モータECU100は、二次側のフェール信号の詳細を知ることができる。
【0053】
一方、従来の電源回路のように、パルス検出回路5を備えない場合には、時刻Tにおいてスイッチングの停止を検出することができず、高圧側マイコン31は機能を停止する処理を即座に実行することはできないまま時刻Tに動作が停止する。
【0054】
[パルス検出回路の構成例]
図8に、パルス検出回路の一例を模式的に示す。パルス検出回路5a(5)は、図8に示すように、ダイオードD50と、コンデンサC50と、抵抗R51〜R57と、トランジスタTR1,TR2とを備えている。整流ダイオードD30のアノード端子と、トランス41の二次巻線との間の所定の二次側接続点P1には、分圧抵抗R51,R52が接続されている。分圧抵抗R51,R52の接続ノードは、順方向に接続された整流ダイオードD50と、抵抗R53、R55とを介して、トランジスタTR1のベース端子に接続されている。抵抗R53、R55の間には、一端がグランドに接続されたコンデンサC50と、一端がグランドに接続された抵抗R54とが接続されている。ここで、抵抗R53とコンデンサC50とはローパスフィルタLPFを形成している。トランジスタTR1のコレクタ端子は、高圧側マイコン31に接続されると共に、ツェナー電流制限抵抗R57を介して所定の電源電圧VCC(例えば5ボルト)に接続されている。トランジスタTR1のエミッタ端子は、トランジスタTR2のコレクタ端子に接続されている。トランジスタTR2のエミッタ端子は、グランドに接続されている。トランジスタTR2のベース端子は、抵抗R56を介して図示しないフォトカプラに接続されている。
【0055】
二次側接続点P1に、通常の定格電圧(例えば16.3ボルト)が印加されている場合、正常なので、パルス検出回路5aにおいて、抵抗R56を介して接続されている不図示のフォトカプラがオフしており、トランジスタTR2のベース端子にハイレベルの信号が入力する。同時に、この場合、パルス検出回路5aにおいて、トランジスタTR1のベース端子にハイレベルの信号が入力するので、電源電圧VCC(例えば5ボルト)が、ツェナー電流制限抵抗R57、トランジスタTR1,TR2を介してグランドに入力する。
【0056】
一方、一次側電源が遮断されて二次側接続点P1に通常の定格電圧(例えば16.3ボルト)が印加されていない場合、異常なので、パルス検出回路5aにおいて、抵抗R56を介して接続されている不図示のフォトカプラがオンしており、トランジスタTR2のベース端子にロウレベルの信号が入力する。同時に、この場合、パルス検出回路5aにおいて、トランジスタTR1のベース端子にロウレベルの信号が入力するので、電源電圧VCC(例えば5ボルト)が、ツェナー電流制限抵抗R57を介して高圧側マイコン31に入力する。すなわち、スイッチングが停止した場合、パルス検出回路5aは、停止信号として、例えば5ボルトの信号を高圧側マイコン31に供給することができる。
【0057】
図9に、パルス検出回路の他の例を模式的に示す。パルス検出回路5b(5)は、図9に示すように、ダイオードD50と、コンデンサC50と、抵抗R51〜R56,R57と、トランジスタTR1と、を備え、トランジスタTR2の代わりに整流ダイオードD51およびツェナーダイオードZDを備えている点がパルス検出回路5aとは異なっている。なお、パルス検出回路5aと同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。トランジスタTR1のコレクタ端子は、順方向に接続された整流ダイオードD51を介して高圧側マイコン31に接続されると共に、ツェナー電流制限抵抗R57を介して整流ダイオードD30のカソード端子に接続されている。ツェナー電流制限抵抗R57は高圧側マイコン31の電源部にも接続されている。トランジスタTR1のエミッタ端子は、グランドに接続されている。さらに、例えば5ボルトに制限するツェナーダイオードZDが順方向としてトランジスタTR1のエミッタ端子からコレクタ端子に向かう方向に接続されている。このツェナーダイオードZDのカソード端子は、ダイオードD51のアノード端子に接続されている。
【0058】
二次側接続点P1に、通常の定格電圧(例えば16.3ボルト)が印加されている場合、正常なので、パルス検出回路5bにおいて、トランジスタTR1のベース端子にハイレベルの信号が入力し、通常の定格電圧(例えば16.3ボルト)が、ツェナー電流制限抵抗R57およびトランジスタTR1を介してグランドに入力する。
【0059】
一方、一次側電源が遮断されて二次側接続点P1に通常の定格電圧(例えば16.3ボルト)が印加されていない場合、異常であり、パルス検出回路5bにおいて、トランジスタTR1のベース端子にロウレベルの信号が入力するので、二次側接続点P1と同じ電位の電圧が印加されるが、例えば5ボルトに制限するツェナーダイオードZDがあるため、例えば5ボルトに制限された信号が、整流ダイオードD51を介して高圧側マイコン31に入力する。すなわち、スイッチングが停止した場合、パルス検出回路5bは、停止信号として、例えば5ボルトの信号を高圧側マイコン31に供給することができる。
【0060】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態に係る絶縁電源回路の概要を模式的に示す構成図である。本発明の第2実施形態に係る絶縁電源回路では、パルス検出回路を高圧側マイコン回路30ではなく、各ゲートドライブ回路20−nに設けた点が第1実施形態と相違している。したがって、第1実施形態の絶縁電源回路と同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。なお、第2実施形態に係る絶縁電源回路の全体の構成図は省略する。
【0061】
図10に示す各ゲートドライブ回路20−nにおいて、パルス検出回路5−nは、トランス41の二次側出力電圧として、整流ダイオードD20−nのアノード端子と、トランス41の二次巻線との間の所定の二次側接続点P2−nの電圧を検出することとした。パルス検出回路5は、二次側接続点P2−nの電圧により、電源の停止を検出した場合、停止信号を、二次側回路であるゲート駆動回路21−nに出力することとした。これにより、ゲート駆動回路21−nは、パルス検出回路5が電源の停止を検出した停止信号に合わせて機能を停止することができる。ゲート駆動回路21−nが、停止機能を備えたICで構成されている場合には、入力された停止信号により、その停止機能を利用することができる。
【0062】
なお、ゲート駆動回路21−nは機能を停止する処理において、一次側のモータECU100に対して、フォトカプラPC22−nを介してフェール信号を送信することによって、一次側電源の遮断によって機能を停止する旨を通知することができる。この場合、モータECU100は、二次側のフェール信号の詳細を知ることができる。
【0063】
ここで、各ゲートドライブ回路20−nを構成するICに停止機能を備えることは必須ではない。各ゲートドライブ回路20−nにおいて、パルス検出回路5が出力する停止信号に基づいて機能を停止する他の方法としては、パルス検出回路5が出力する停止信号自体を、ゲート駆動回路21−nの機能停止に利用する方法もある。この方法を以下の変形例1,2として説明する。
【0064】
(変形例1)
図11は、本発明の第2実施形態に係る絶縁電源回路においてパルス検出回路を、ゲート駆動回路21−nとフォトカプラPC21−nとの間に配置した場合の構成例を示している。パルス検出回路5−nの一端は、二次側接続点P2−nに接続され、他端は、トランジスタTR3のベース端子に接続されている。このトランジスタTR3のエミッタ端子は、フォトカプラPC21−nを介してモータECU100に接続されている。また、トランジスタTR3のコレクタ端子は、ゲート駆動回路21−nのPWM信号入力端子に接続されている。
【0065】
この場合、パルス検出回路5−nの出力する停止信号は、トランジスタTR3のベース端子に供給される。これにより、停止信号が供給されていないとき、トランジスタTR3がオンするので、モータECU100からフォトカプラPC21−nを介してゲート駆動回路21−nのPWM信号入力端子にPWM信号が入力される。一方、停止信号が供給されるとき、トランジスタTR3がオフするので、ゲート駆動回路21−nへ入力するPWM信号が遮断される。つまり、ゲート駆動回路21−nは、パルス検出回路5−nから停止信号が出力されるとき、機能を停止することができる。
【0066】
(変形例2)
図12は、本発明の第2実施形態に係る絶縁電源回路においてパルス検出回路を、ゲート駆動回路21−nとIGBT素子11−nとの間に配置した場合の構成例を示している。パルス検出回路5−nの一端は、二次側接続点P2−nに接続され、他端は、トランジスタTR4のベース端子に接続されている。このトランジスタTR4のエミッタ端子は、ゲート駆動回路21−nのIGBT駆動信号出力端子に接続されている。また、トランジスタTR4のコレクタ端子は、IGBT素子11−nのベース端子に接続されている。
【0067】
この場合、パルス検出回路5−nの出力する停止信号は、トランジスタTR4のベース端子に供給される。これにより、停止信号が供給されていないとき、トランジスタTR4がオンするので、ゲート駆動回路21−nからIGBT駆動信号出力端子にIGBT駆動信号が入力される。一方、停止信号が供給されるとき、トランジスタTR4がオフするので、IGBT素子11−nへ入力するIGBT駆動信号が遮断される。つまり、ゲート駆動回路21−nは、パルス検出回路5−nから停止信号が出力されるとき、機能を停止することができる。
【0068】
以上説明したように、本発明の各実施形態の絶縁電源回路14は、トランス41の二次側出力を監視してスイッチングの停止を検出するパルス検出回路5を備え、スイッチングの停止を検出したときに、二次側回路である高圧側マイコン31またはゲート駆動回路21−nが機能を停止するように構成したので、一次側電源が停止すると、二次側回路も停止することができる。そのため、二次側に設けられた回路の誤動作を低コストで防止することができる。
【0069】
また、本発明の各実施形態の絶縁電源回路14によれば、トランス41の二次側出力を監視し一次側電源の動作状態を検出できるので、一次側電源が完全に停止しなくても電圧の低下が起こり始めた時点で電源電圧が低下傾向の状態にあることを検出できる。これにより、レア・ショートのように、電源のスイッチングは正常だが電圧の低下が生じた場合などの検出が可能となる。
【0070】
さらに、本発明の各実施形態の絶縁電源回路14によれば、一次側電源が遮断された場合にスイッチングは停止するが、二次側においてもスイッチングの停止を検出できるので二次側のコンデンサの残留電荷によって回路が動作する事態を防ぐこともできる。これによって、電源が遮断されたのに回路が動作している状態を無くすことができる。
【0071】
以上、本発明のインバータ回路の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではない。例えば、パルス検出回路5は、整流ダイオードD30のアノード端子と、トランス41の二次巻線との間の二次側接続点P1またはP2−nの電圧値を検出するものとしたが、整流ダイオードD30に流れる電流を示す矩形波電流の変化が停止した場合に、電源の停止を検出することとしてもよい。この場合、パルス検出回路5は、整流ダイオードD30のカソード端子側の所定の接続点の電流値を検出すれば、同様な効果を奏することができる。
【0072】
また、本実施形態では、モータECU100は、PWM信号を出力してモータ110を駆動させている。しかし、これに限られず、PAM(Pulse Amplitude Modulation:パルス振幅変調方式)信号、PFM(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)信号、PDM(Pulse Density Modulation:パルス密度変調)信号、PPM(Pulse Position Modulation:パルス位置変調)信号、PCM(Pulse Code Modulation:パルス符号変調)信号のいずれによって、モータ110を駆動してもよい。
【0073】
また、本実施形態では、パワーモジュール11は、スイッチング素子としてIGBT素子11−1〜11−6を用いている。しかし、これに限られず、大出力用途としてGTO(Gate Turn-Off thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)をスイッチング素子として用いてもよい。また、小出力用途としてパワーバイポーラトランジスタ、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などをスイッチング素子として用いてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 モータ駆動システム
2 プリドライブ基板
5(5a,5b,5−n) パルス検出回路(停止検出回路)
10 インバータ回路
11 パワーモジュール
11−1〜11−6 IGBT素子
12 電源部
13(13−1〜13−3) 電流センサ
14 絶縁電源回路(電源回路)
20 ゲートドライブ回路
20−1〜20−6(20−n) ゲートドライブ回路
21−1〜21−6(21−n) ゲート駆動回路(二次側回路)
30 高圧側マイコン回路
31 高圧側マイコン(二次側回路)
41 トランス
42 制御IC(スイッチング制御回路)
100 モータECU
101 ECU基板
110 モータ
C12 平滑コンデンサ
C20−n,C30,C40,C50 コンデンサ
D11−1〜D11−6 フライホイールダイオード
D11−n,D20−n,D30,D40,D50,D51 ダイオード
LPF ローパスフィルタ
PC21−n,PC22−n,PC30 フォトカプラ
R11−n,R51〜R57 抵抗
TR1〜TR4 トランジスタ
TR40 電界効果トランジスタ(スイッチング用トランジスタ)
Z40 負荷
ZD ツェナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側と二次側が絶縁され、一次側から二次側に電力を供給する電源回路であって、
トランスと、
前記トランスの一次巻線に接続され、一次側の直流電源をスイッチングするスイッチング用トランジスタと、
前記スイッチング用トランジスタのオンオフを制御するスイッチング制御回路と、
前記トランスの二次側に接続された二次側回路と、
前記トランスの二次側出力を監視して前記スイッチングの停止を検出する停止検出回路と、を備え、
前記二次側回路は、前記停止検出回路が前記電源の停止を検出した停止信号に合わせて機能を停止することを特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記停止検出回路は、
前記トランスの二次側出力電圧を示す矩形波電圧の変化が停止した場合に、前記スイッチングの停止を検出することを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記トランスの二次巻線と前記二次側回路との間に接続され、前記二次側回路に向けて電流を流す整流素子を備え、
前記停止検出回路は、
前記トランスの二次側出力電流として前記整流素子に流れる電流を示す矩形波電流の変化が停止した場合に、前記スイッチングの停止を検出することを特徴とする請求項1に記載の電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−5463(P2013−5463A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130498(P2011−130498)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】